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2年 山本凜 RES
1.「ハコヅメ」
あらすじ
新人警察官・川合麻依は、違反者や一般市民から日々言われる文句、想像以上の激務という警察官の仕事に嫌気がさし、辞表を提出しようとしていた。そこへ新たな指導員として配属されてきたのは、元刑事課のエースで、後輩へのパワハラで左遷されてきたという藤聖子巡査部長。
初日にして連続窃盗犯を捕まえるなど、藤の鋭い観察眼や取り調べ能力を目の当たりにする川合。藤の優しく、時に厳しい指導の下、川合は警察官としての職務や心得を学び、少しずつ仕事に対する自信を持つようになる。
考察
警察官を題材にしているが、事件を追うサスペンスではなく警察官の女の子が不器用ながらも警察官として、人として成長していく物語で気楽に観ることができた。コメディ要素が強く笑いながら観ることができ面白かった。

2.「過保護のカホコ」
あらすじ
ヒロインのカホコこと根本加穂子は、全ての行動を親任せにする過保護の性格を持つ箱入り娘で、外泊はおろか買物すらしたことがない。そんなカホコとは性格が全く反対な青年・麦野初との出逢いで、人生観が一変する。
考察
過保護に育てられた主人公のカホコが、全く住んできた環境が違う男子大学生に出会う事で成長していく姿が面白かった。22歳にもなって親に今日着る服を選んでもらったり、送り迎えをしてもらったりと驚くことも多かったが、それ以上にカホコの純粋な優しさに驚いた。人よりも不器用だが誰よりも真っ直ぐで優しいカホコが周囲を温かくするということがこの作品の魅力だなと思った。

3.「全ては君に会えたから」
あらすじ
男女10人が織りなすクリスマスの物語を群像劇風に描いたオムニバスストーリーで、それぞれの愛の形を描いたヒューマンラブストーリー。
考察
クリスマスの日に6つのストーリーがあり、登場人物が多く、それぞれ繋がる部分もあり、恋愛以外に家族愛なども描かれていて日本版ラブ・アクチュアリーのような作品だった。

4.「前科者」
あらすじ
ある出来事をきっかけに、罪を犯した者の更生を助ける保護司となった28歳の女。コンビニのアルバイトで生計を立てる傍ら、更生を目指す前科者たちに寄り添い、彼らの居場所を見つけるために奔走する。彼女が受け持つ男は殺人を犯して服役した後に、自動車修理工場でまじめに働いていた。ところが、ついに迎えた最後の面談の日、男は姿を消してしまう。折しも連続殺人事件が発生し、彼女は中学時代の同級生だった刑事から、男が警察に追われていることを聞く。
考察
まず罪を犯した者の更生を助ける保護司というものをこの映画で初めて知った。何より驚いたのは保護司というのは国家公務員とされていながらボランティアであるということだ。罪を犯した者がまた罪を犯すことがないように、社会でやり直せるように助けるのは犯罪者相手にとても難しいことであるし、被害者を思うと葛藤もある難しいボランティアであると感じた。また、罪を犯した者にもこちらが同情してしまうような背景もあり、罪を犯したことは変わらないが「更生」という存在に大きく救われるのだと思った。

5.「強運の持主」
あらすじ
ショッピングセンターの片隅で占い師を始めたルイーズ吉田は、元OL。かつて営業職で鍛えた話術と、もちまえの直感で、悩む人たちの背中を押してあげるのが身上だが、手に負えないお客も千客万来。「お父さんとお母さん、どっちにすればいいと思う?」という小学生。何度占いがはずれてもやって来る女子高生。「俺さ、物事のおしまいが見えるんよ」という大学生まであらわれて、ルイーズはついに自分の運勢が気になりだす…。ほっこり優しい気持ちになる連作短篇集。
考察
一人を好んで占い師になった主人公が、占い師として様々な老若男女と交流することで今までは気づかなかったことに気づき、人をより大切に感じるようになっているなと感じた。心温まるエピソードが多く、特に、母親を幼い頃亡くした小学生男子の話が、父と息子それぞれの優しさを感じ素敵だった。

6.「月の満ち欠け」
あらすじ
事故で愛する家族を亡くした堅。そんな彼の前に、ある過去を持つ哲彦という男性が現れる。それを機に、堅は数奇な運命をたどっていく。
考察
「愛し合っていた一組の夫婦」と「許されざる恋に落ちた恋人たち」という全く関係ないように思われる2つの物語が実は繋がっていて、その繋がり方が「前世」という設定が面白かった。自分の大切な人が実は誰かの生まれ変わり(というより乗り移っている)ということをその人が死んだ後に知ったら、自分が愛していたのは誰だったのかわからなくなりそうだなと思ったし、少し恐怖も感じた。月の満ち欠けのように、人も死んだのではなく、消えてまた現れるということなのだろうかと思った。

7.「ある男」
あらすじ
亡くなった夫・大祐の身元調査をしてほしいと弁護士の城戸に依頼する谷口里枝。大祐の兄から彼女は、夫が素性を偽っていたことを聞く。早速、調査に乗り出した城戸は、大祐の正体とその理由に迫っていく。
考察
結婚した人の名前が違う誰かだったということがその人が死んでから知るというのは、もし自分が同じ目にあったら怖いなと思った。最初は、男が違う名前で生きていてそれを妻や子どもに隠しているということは犯罪者なのかと思ったが、家庭環境によって変え、苦しんで生きてきたことがわかり、死ぬ前3年間だけでも妻と子どもと幸せに暮らせて良かったなと思った。名前はアイデンティティでもあるので、名前を変えてアイデンティティを守る、または消そうとしたのではないかと思った。

8.「聲の形」
あらすじ
親分肌の少年・石田将也は、転校生の少女・西宮硝子と出会って退屈な日常を忘れる。しかし、ある出来事をきっかけに周囲から孤立し、心を閉ざしていく将也。そして5年後、高校生になった彼は別の学校に通う硝子のもとを訪れる。
考察
いじめのシーンが結構辛かった。いじめていた男の子は心から反省しているようであったが、私的にはそれでもいじめをしていた人だということが頭をよぎり、良い話だけでは終わらないと思った。話の繋げ方やカットの仕方が好きだったし、深く考えられそうな作品だったのでもう一度観たいし、原作も読みたいと思った。

9.「星の子」
あらすじ
大好きな父と母の愛情を一身に浴びて育った中学3年生のちひろ。両親は病弱だった彼女を救いたい一心で神秘の力を宿しているという水にすがり、次第に「あやしい宗教」にのめり込んでいった。たとえ親友が疑念を口にしても、ちひろの心が揺らぐことはなかった。思春期を迎え、新任の教師に恋をし、授業中にせっせと似顔絵を描き続けていたちひろは、次第に周囲が抱く違和感に気づき、初めての葛藤に直面していく。
考察
両親が新興宗教にハマっている主人公の、一緒に宗教にハマりきれない様子、かといって姉のように両親と縁を切りたいという否定的な考えはない様子など宗教2世の心情をこの作品で感じることができた。親戚や学校の先生などの主人公家族を異様な目でみるのが一般的な目線であり、それに寄って傷つく様子など宗教2世にしかわからない痛みや葛藤があるのだと感じた。また、最後のシーンは平和に星を見て終わるのか、教祖に洗脳されて家族の無理心中で終わるのかわからず怖かった。

10.「コーヒーが冷めないうちに」
あらすじ
親のない20代の女性・時田数(かず)と叔父が営む古い喫茶店。この喫茶店の特定の席に座ると過去にタイムスリップ出来るとの都市伝説がある。その伝説を聞きつけて店の常連になる大学生の新谷亮介。しかしタイムスリップするには複雑なルールがあった。
考察
過去に行っても起きたことは変わらないが、過去に戻った人全員前向きに人生を生きていけるようになって感動的な話だった。妻が認知症である夫婦の話が役者の演技力もあって大号泣だった。もともと喫茶店が好きなことと有村架純さんが好きなので観るのは4回目だったが4回目でも楽しく映画を観ることができた。

11.「フォルトナの瞳」
あらすじ
幼少時に飛行機事故で家族を失った男。人々に迫る死の兆候を見抜く力を持つ彼は、苦悩の中で1人の女と運命的な出会いを果たす。やがて幸せな交際の日々が始まるが、彼は周囲の者に次々と死の兆候が現れていることに気づく。
考察
死を目前にした人がわかるのに、その人を助けようとして運命を変えてしまうと自分が死ぬことになってしまうというのは非常に辛いことであるなと思った。

12.「高嶺の花」
あらすじ
石原さとみ主演、野島伸司脚本の純愛エンターテインメント。容姿端麗で家柄も良く、圧倒的な才能があり、全てを持ち合わせる華道家・月島もも(石原)の結婚が、婚約者の二股交際によって破談に。孤独で繊細なももは男性不信になり、挫折を味わう中、平凡な自転車店店主の風間直人(峯田和伸)と運命的に出会う。
考察
華道界の深窓の令嬢と自転車屋の2人の恋愛がとても素敵で小学生のころから何度も観た作品である。高嶺の花である令嬢は、華道の才能に溢れ、芸術家故の苦悩や恋愛に情熱的で、強い一方で本当は繊細で傷つきやすく感受性豊かな女性が良い女性だなと思った。

13.「メタモルフォーゼの縁側」
あらすじ
冴えない高校生活を送る17歳のうららは、アルバイト先の本屋で、BL漫画を堂々と買っていく老婦人・雪と出会う。夫に先立たれ、孤独な毎日を送る雪は、BLの意味も知らぬまま、きれいな表紙に惹かれて思わず手に取っただけだった。ところが、思いがけずBLに魅了された雪は再び本屋へ向かい、BLに詳しいうららと意気投合する。そして、2人はいつしか年の差を忘れて友情を育んでいく。
考察
年の差58歳のおばあさんと女の子がBLを通して仲良くなる様子が、世代問わず仲良くなれること、好きなものを好きといえる素晴らしさを感じて心温まる作品だった。また、おばあさんの家に行くとカレーの匂いがするなど日常を感じることができて良かった。

14.「SUNNY」
あらすじ
専業主婦の奈美は、高校時代の親友・芹香と再会する。1990年代、彼女らは友人6人でグループを作り、女子高生生活を謳歌していた。そんな中、芹香の余命が短いことを知った奈美は、かつてのメンバーを集めようと奔走する。
考察
青春時代を共に過ごした親友たちは、一度疎遠状態になっても何かがきっかけになってまた集まるようになり、そのメンバーでしか味わえない青春を何歳になっても味わえるのだと思った。大人になってそれぞれに問題を抱えていても昔を思い出して、昔の仲間と会うというのは素晴らしいことだなと思った。

15.「新しい上司はど天然」
あらすじ
上司からのパワハラで精神と胃をやられ、広告代理店の営業職に転職した桃瀬。しかし過去のトラウマが原因で「新しい上司もまたパワハラ上司だったらどうしよう…」と、初日早々に胃痛で動けなくなってしまう。そんな時、一緒に外回り中だった新しい上司・白崎がとった行動とは……?!予想外の上司の「ど天然」に、きっとあなたも癒される──!!
考察
仕事ができる上司なのにど天然で優しい人柄に癒されてばかりだった。ブラック企業を辞めて新しく入った会社は登場人物全員優しくてこんな会社で働きたいと思った。

16.「柚木さん家の四兄弟」
あらすじ
2年前に両親を亡くした柚木家は、男だけで暮らす4人兄弟。親代わりをしている長男・隼は23歳で教職に就いている。しっかり者の次男・尊とやんちゃな三男・湊はどちらも中学一年生。尊は4月生まれで湊は3月に生まれたため、年子だが同じ学年となった。四男・岳は小学一年生だが、落ち着いていてとても大人びた子供だ。彼らは不満や寂しさ、嫉妬など、それぞれの気持ちを抱えながらも、お互いを思いやり、助け合って生きていく。
考察
両親を亡くし、4人で暮らしている男兄弟だが、悲しい、暗いという雰囲気ではなくて平和な日常で癒される作品だった。4人兄弟全員キャラが違うのが面白く、それぞれに家族のために頑張って、時には空回りすることもあるけど4人全員がお互いを想いあって支えていて良い兄弟だなと思った。

17.「最愛」
あらすじ
2006年、梨央が青春時代を過ごしていたのどかな田舎町で失踪事件が起きた。 15年後、時代を牽引する実業家となった梨央の前に事件の関係者が現れたことにより、当時の記憶とともに封印したはずの事件が再び動き出す。 過去の失踪事件が現在の殺人事件へと繋がっていく… その事件の真相に迫る姿を完全オリジナルで描く。
考察
恋人、兄弟、親子、片想い、信頼、それぞれの人間関係を繊細に描いた切ないドラマだった。それぞれの愛の形があり、それがそれぞれの「最愛」なのだと思った。その最愛と宇多田ヒカルの主題歌がぴったり合っていて良かった。

18.「にじいろカルテ」
あらすじ
東京の大病院の救命救急の現場で、夢と誇りを持ちながら働いていた医師・紅野真空(高畑)に、ある日突然、“ある病”が発覚する。しかし、医者だからといってお金もないし、仕事も続けたいし……と困った彼女は、偶然知った山奥の小さな村の診療所で、病を隠して働くことに。同じく東京からやってきた、ヘンテコな外科医・浅黄朔(井浦)と看護師・蒼山太陽(北村)と共同生活を送りながら、虹ノ村診療所で新生活をスタートさせるのだが……。さらに、村の住人も妖怪のように個性豊かな人たちばかり。時に笑い、泣き、喧嘩しながらも、熱く命と向き合って成長していく。
考察
病気になり救命救急医を辞めて東京から虹の村という小さな村に内科医として暮らし始めた主人公が温かい村の人に囲まれて病気と向かい合いながら幸せな日々を送り、心が温まる作品だった。

19.「アンナチュラル」
あらすじ
石原さとみ主演のTBS系連続ドラマ『アンナチュラル』。不自然死究明研究所、通称UDIラボで働く法医解剖医たちが死体を解剖することで不自然死=アンナチュラルデスを解明していく医療ドラマ。
考察
病気や怪我を治したり、死にそうな人を助けたりと”生きている人”を扱う医者に比べて、遺体を解剖し、死因を究明する“死んだ人”を扱う法医解剖医は知っている人も憧れる人も多くはないと思うが、法医解剖医がいないと不自然死のまま亡くなる人や病死とされていた人が他殺であったということが分からないままになってしまい無くてはならない仕事であるのだと知った。法医学が未来に繋がる、未来のための仕事というのを知り、イメージが変わった。

20.「そしてバトンは渡された」
あらすじ
血のつながらない親のもとを転々としてきた高校生・森宮優子は、今では料理上手な義理の父親・森宮さんとの2人暮らしに落ち着いていた。一方、何度も夫を取り替えるように奔放に生きる魔性の女・梨花は、ある日突然、愛娘を残して姿を消す。そして、優子のもとに届いた一通の手紙。それをきっかけに、彼らが隠していた嘘や秘密が、それぞれの人生を交差させるように導いていく。
考察
4回も苗字が変わり、血の繋がった家族だけが家族じゃないのだと改めて感じた。主人公が母親に振り回されているように感じたが、父親が全員良い人でよかった。この母親や父親のように愛し方も様々にあるのだなと思った。

21.「かがみの孤城」
あらすじ
学校での居場所をなくし部屋に閉じこもっていた中学生・こころ。ある日突然部屋の鏡が光り出し、吸い込まれるように中に入ると、そこにはおとぎ話に出てくるようなお城と見ず知らずの中学生6人が。さらに「オオカミさま」と呼ばれる狼のお面をかぶった女の子が現れ、「城に隠された鍵を見つければ、どんな願いでも叶えてやろう」と告げる。期限は約1年間。戸惑いつつも鍵を探しながら共に過ごすうち、7人には一つの共通点があることがわかる。互いの抱える事情が少しずつ明らかになり、次第に心を通わせていくこころたち。そしてお城が7人にとって特別な居場所に変わり始めた頃、ある出来事が彼らを襲う――――
果たして鍵は見つかるのか?なぜこの7人が集められたのか?
それぞれが胸に秘めた〈人に言えない願い〉とは?
考察
不登校の女子中学生にとって鏡の中の世界は自分の居場所となったのだと思い、学生は学校と家の狭い世界でしか過ごさないことが多いが、他に居場所を作ることはとても大切なことだと思った。私にとってそれは習い事やバイト、ボランティアであり、様々な場所で様々な人と交流することを大切にしたいと思った。

22.「流浪の月」
あらすじ
10歳の少女・更紗 (さらさ)は、引き取られた伯母の家に帰ることをためらい、雨の公園で孤独に時間を持て余していた。そこに現れた孤独な大学生の文 (ふみ)は、少女の事情を察して彼女を自宅に招き入れる。文の家でようやく心安らかな時を過ごし、初めて自分の居場所を手にした喜びを実感する更紗。しかし2ヵ月後、文が誘拐犯として逮捕され、2人の束の間の幸せは終わりを告げる。15年後、恋人と同棲生活を送っていた更紗は、カフェを営む文と偶然の再会を果たす。
考察
事実と真実は違うとはこのことかなとこの本を読んで感じた。先入観や世間からの同情などレッテルを貼られて生きている主人公の気持ちを繊細に表現されている作品だと思った。他の人からみたら変であってもその人にとってはそれが普通であることがあり、受け入れられなくても否定しないように心がけようと思った。

23.「阪急電車」
あらすじ
隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった……。片道わずか15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。恋の始まり、別れの兆し、途中下車――人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。ほっこり胸キュンの傑作長篇小説。
考察
一つ一つは短い話だが濃密で面白く、心温まる作品だった。登場人物全員阪急電車の乗客なので個人の話が所々繋がる部分も多く、キャラも様々で面白かった。登場人物全員、人生を前向きに肯定的に捉えていたことと、些細なきっかけで自分の運命を変えるなど私自身もそんなふうに生きていけたらいいなと思った。

24.「コウノドリ」
あらすじ
男性産科医、鴻鳥サクラが、出産とそれのまつわる様々なトラブルに出会い、当事者たちの不安や悩みに寄り添い、幸せになるための手助けをしていく人間模様を描いたドラマ。出産の身体的リスク、人の命を奪う中絶という行為とその意義、出産に関する無理解、子供が産まれることによる幸せ、親の喜びなど、様々な角度から命の大切さ、家族の絆を問いかけている。
考察
妊娠も出産も生まれてからも様々に命懸けの問題があり、本当に子どもが生まれるというのは奇跡なのだということを感じさせられた。私にとってまだ出産は程遠いように感じるが、このドラマによって学ぶことが多かった。命の尊さと母親への感謝を感じる良いドラマ出あると思った。

25.「中学聖日記」
あらすじ
かわかみじゅんこの同名漫画を有村架純主演でドラマ化。片田舎の中学校で働く教師・末永聖(有村)が、自分を大切にしてくれる婚約者がいながらも、不思議な魅力を持つ10歳年下の中学生・晶に引かれていってしまう“禁断の恋”を描くヒューマンラブストーリー。
考察
中学生と教師という禁断の恋を繊細に描いていて良かった。周りから非難されても結局は好きの気持ちを無くすことはできず、二度離れても最後に結ばれるのはそういう運命だったのだと思った。話自体も面白いが、物語の繊細な雰囲気を夏の夕陽や虫の音、サントラによって美しく表現されていてドラマの雰囲気がとても好きだった。

26.「コンビニ人間」
あらすじ
36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。
考察
「普通」とは何かが問われる作品だった。社会や人間関係に上手く馴染めない主人公にとってコンビニのバイトはそんな自分でも「人間」になれる場所で、そのコンビニバイトという存在は主人公にとって非常に大切な場所なのだと思った。

27.「SPY×FAMILY」
あらすじ
スパイの父、超能力者の娘、殺し屋の母の3人が、とあることをきっかけに「仮初の家族」となって過ごす日常を描いたスパイアクションホームコメディ。
考察
全員血も繋がらないし、嘘をついている家族だけど上手くバランスがとれていて、本当の家族ではないと思いつつも家族愛を感じるほっこりするアニメだった。とにかくアーニャが可愛いかった。

28.「18/40~ふたりなら夢も恋も〜」
あらすじ
青春と引き換えに勉強やバイトに孤軍奮闘する18歳未婚の妊婦と、恋愛素人であるアラフォー独身の2人の女性が、年の差を超えたシスターフッド(女性同士の絆)を築き、それぞれ訳あり男子と恋に落ちるオリジナルのラブストーリー。 主人公2人の目線で、現代の女性の悩みや葛藤も描かれる。
考察
現実的にはありえないけど、全く関わりのない32歳も歳が離れた2人の間にある、友達でもない先輩後輩でもない名前のない強い絆で結ばれている関係性が面白かった。

29.「失恋ショコラティエ」
あらすじ
製菓学校生小動爽太は、高校時代から憧れ続けた高橋紗絵子のため丹精込めて作り上げたチョコをバレンタインデーに渡すが、振られてしまう。 爽太は彼女を振り向かせるためだけに、フランス・パリの老舗店で修行を積み、一人前のショコラティエになる。 修行仲間のオリヴィエと帰国後、自分の店ショコラヴィを開く。
考察
甘いだけの恋ではなく、苦さもあるまさにチョコレートのような恋愛が切なくて美しかった。サエコさんは主人公を振り回す小悪魔だけど、考えは誰よりも大人であって、強い人だと思った。サエコさんを演じる石原さとみさんが可愛いのと、サントラが観てきたドラマの中で1番好きで音楽も役者も込みで好きな作品だった。

30.「窓際のトットちゃん」
あらすじ
第2次世界大戦末期。小学1年生のトットちゃんは落ち着きがないという理由で退学になってしまう。母親はトットちゃんのために、ユニークな校風のトモエ学園を見つける。通い始めたトットちゃんは小林先生に出会い、元気いっぱいの学校生活を送るようになる。
考察
子どもの、その人の個性を大事にしている校長先生が非常に良い人で、この人こそが教育者であると思った。現代でも少ないなかで戦時中にこのような子どもが持つ可能性を広げることに特化した学校があるのはすごいことであるなと思った。黒柳徹子さんの朗読バージョンを聞けて、本人の声で聴くことでさらに世界観に入ることができた。
2024/09/24(火) 09:08 No.2064 EDIT DEL
2年 河原拓未 RES
1『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(映画、2014)
【あらすじ】
幼くして地球から誘拐され、宇宙をまたにかけるトレジャー・ハンターとなったピーター・クイル。彼がハイテク武器と一緒に肌身離さず持っているのは、亡き母の形見の70年代ヒット曲入りウォークマン。そんな彼がある日、巨万の富を夢見てパワーストーン<オーブ>を盗み出す。だが、銀河を滅亡させるほどの恐ろしい力を持つオーブを狙う悪党たちから追われる羽目になってしまう。そして、それをきっかけに、賞金稼ぎのアライグマのロケットとその相棒の樹木型ヒューマノイドのグルート、妻子の復讐を誓う狂暴な男ドラックス、そして美しく危険な暗殺者ガモーラたちと出会う。
【考察】
本作はインフィニティストーン、サノスといったアベンジャーズシリーズの世界に重要な要素を踏まえつつ、独特の色を持った作品である。技術的な面では、アバンタイトル以外は全編cgで作られている点があげられる。やはり特筆すべきは、クイルの持つウォークマンから流れる音楽を劇中歌として用いていることだろう。これによってクイルの軽い性格や、音楽に対する思い、ドライブミュージックであることでムードの変化を同時に演出している。音楽を重視した作品だからか、編集もリズム、テンポを重視している印象を受けた。例えば、クイルが盗みに入った廃墟で「Come and Get your Love」のボーカルの入りに合わせてタイトルが大きく出るシーンには鳥肌が立った。また、監獄に捕まったシーンでは黒澤明の音と映像の対位法のような使われ方もしていて面白かった。

2『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(映画、2017)
【あらすじ】
たまたま出会ったノリで結成された銀河一の“落ちこぼれ”チーム<ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー>。小遣い稼ぎに請けた仕事をきっかけに、“黄金の惑星”の艦隊から総攻撃を受けることに。 間一髪、彼らを救ったのは“ピーターの父親”と名乗る謎の男エゴと、触れただけで感情を読み取れるマンティスだった。ピーターの出生に隠された衝撃の真実とは?
【考察】
前作に続いて軽快なシーンもありつつ、今作ではよりキャラクターの中身を描くことを重視していた。前作のラストでインフィニティストーンに焼かれずに済んだ真相であるクイルの血、生まれてから一度も会ったことのない父親に、母を亡くしたクイルは家族の希望を見る。本作のキーパーソンは、幼いころかクイルを育てて来たラヴェジャーズのヨンドゥである。仲間割れによって一時ロケットと行動を共にすることで、ロケットの内面的成長が描かれた。クイルとは「育ての親」のように感じていたため、実父であるエゴの本心との対比が面白かった。ラストシーンの楽曲『Father And Son』は泣くこと間違いなし。

3『アナと雪の女王』(映画、2013)
【あらすじ】
凍った世界を救うのは—真実の愛。ふたりの心はひとつだった。姉エルサが“秘密の力”に目覚めるまでは…。王家の姉妹、エルサとアナ。触れたものすべてを凍らせてしまう“禁断の力”を隠し続けてきた姉エルサは、その力を制御できずに王国を冬にしてしまう。雪や氷から大切な姉と王国を取り戻すために、妹アナは山男のクリストフとスヴェン、“心温かい雪だるま”のオラフと共に、エルサの後を追って雪山へ向かう。アナの思いは凍った心をとかし、凍った世界を救うことができるのか? そして、すべての鍵を握る“真実の愛”とは…?
【考察】
ディズニープリンセスに名を連ねる本作品はこれまでのプリンセス観とは異なった構造であると同時にミュージカル・アニメーション作品としての表現方法を取り入れることで作品としてのまとまりが生まれている。従来のプリンセス観と最も異なることは、プリンセスが二人登場することだろう。「美女と野獣」のような従来のプリンセス対ヴィランという構図ではなく、「生まれて初めて」(For the First Time in Forever)のようなエルサの戴冠式のために門が開けられ、大勢の人々に会うことへのエルサの否定的反応とアナ肯定的な反応が見られるナンバーや恋愛観に見られるようなプリンセス同士の対立が描かれている。

4『アナと雪の女王2』(映画、2019)
【あらすじ】
かつて、真実の愛によって姉妹の絆を取り戻したエルサとアナ。3年の歳月が過ぎ、アレンデール王国の女王となったエルサは、アナ、クリストフ、そしてオラフと共に幸せな日々を過ごしていた。だが、エルサにしか聞こえない不思議な“歌声”に導かれ、姉妹はクリストフとオラフを伴い、アレンデール王国を離れて未知なる世界へ。それは、エルサの“魔法の力”の秘密を解き明かす、驚くべき旅の始まりだった…。
【考察】
ディズニープリンセス的、ジェンダー観的に特異であった前作に続き、時代に合わせた作品作りが重視されていると感じた。アナとエルサの母親の秘密に迫る中で、精霊たちの対処に苦闘するアナはクリストフに頼ることなく自身の気力によって解決法を見つけ出した。一方クリストフは、物語序盤から終盤までアナを追いかける側の演出がされる。従来のプリンセスとは違う自立した女性を描いたことで独特の物語を獲得できたのではないだろうか。

5『無職転生Ⅱ』(アニメ)(2023)
【あらすじ】
34歳・無職・引きこもりの男は、ある日家族から家を追い出された際に交通事故に遭い死亡…と思った瞬間、剣と魔法の異世界でルーデウスとして転生。前世での経験と後悔を糧に、今度こそ本気で生きていこうと誓う。ある日転移事件により魔大陸に飛ばされ、故郷に戻るため過酷な旅を続けたルーデウス。故郷に辿り着くもエリスとの別れでまた独りとなり絶望するが、行方不明の母・ゼニスを探すために再び歩み始める。
【考察】
タイトルにもある通りいわゆる転生ものである本作は、その他の転生ものと比較して「転生」という物語を鮮明に描いている作品である。「転生」は「転移」と違い、その世界での生みの親が存在する。主人公ルーデウスは前世での家族関係をやり直そうと決意するが、どこか俯瞰した態度をとっていた。母親を救出するための戦いで父・パウロに窮地を救われることで「自分がパウロの子供じゃないと思っていたのに、パウロは俺の父親だったのだ」と気づく。転生者ならではの感覚とその世界で暮らす人々も人間であるという気づきがこのセリフだけで表現されていて「転生」の良さを引き出していると考えた。

6『インサイド・ヘッド』(映画)(2015)
【あらすじ】
普段は少女の頭の中の司令室で、彼女の幸せのために尽くすヨロコビ、イカリ、ムカムカ、ビビリ、カナシミという5人の感情たち。ところが引っ越しで環境が変わり、少女の気持ちが不安定になってしまう。彼女の頭の外へ吸い出されてしまったヨロコビとカナシミは、司令室に戻ろうと必死に少女の後を追いかける。
【考察】
脳内の感情、記憶をキャラクター化するというディズニーらしさが光る作品である。悲しさを共有することができるカナシミとの対比構造として、困難にぶつかっても終始楽観的なヨロコビは自己(ライリー)中心的で共感力に欠けたキャラクターとして描くことで、カナシミの必要性を観客に理解しやすくしていると感じた。

7『負けヒロインが多すぎる!』(アニメ、2024)
【あらすじ】
自称「背景キャラ」の温水和彦は、ある日偶然クラスの人気女子・八奈見杏菜が同級生で幼馴染の男子生徒に振られている現場を目撃してしまう。それ以降、和彦は杏菜を含めた複数の負けヒロインたちと関わっていくこととなる。
【考察】
主人公の周りに女の子がたくさんいるというラブコメ、ラノベの基本は同じだが、ヒロイン達が一度失恋しているのが斬新だった。アニメーションの観点からも特異なことに、一つ目のエンディングではサザエさん以来10年ぶりのセルアニメーションを使っている。A-1pictureのアニメーション技術に対するリスペクトや継承の意思を感じた。
8『不滅のあなたへ』(漫画)
【あらすじ】何者かによって“球”がこの地上に投げ入れられた。
情報を収集するために機能し、姿をあらゆるものに変化させられるその球体は死さえも超越する。
ある日、少年と出会い、そして別れる。光、匂い、暖かさ、痛み、喜び、哀しみ……刺激に満ちたこの世界を彷徨う永遠の旅が始まった。これは自分を獲得していく物語。
【考察】
意識のない球であった「フシ」がはじめは自分を手に入れるため、その次は他人を守るために能力を使っていくがすべては観測者の役目を継ぐためにやらされていたという目的のすり替えが上手いと感じた。また、人間ではないフシ(不死)の目線から世界を見せることで人間とは何か、生きるとは何かを考えさせる効果があるのではないか。
9『機動戦士ガンダムユニコーンRE:0096』 (アニメ、2016)
【あらすじ】
『シャアの反乱』から3年、一年戦争から続く戦乱の世は、表面上には平穏を取り戻しているかのように見えた。工業スペースコロニー〈インダストリアル7〉に住む少年バナージ・リンクスは、ある日、オードリー・バーンと名乗る謎の少女と出会う。彼女は、ビスト財団とネオ・ジオン残党軍『袖付き』による『ラプラスの箱』の取引を止めようと、単身行動を起こしたのだ。彼女に対し、協力するバナージ。だが、同じく取引を妨害するため乗り込んだ地球連邦軍と『袖付き』との戦闘により、コロニーは戦場と化してしまう。オードリーを探して戦火を走り抜けるバナージは、『ラプラスの箱』の鍵となる純白のモビルスーツ、ユニコーンガンダムとの運命的な出会いを果たす。
【考察】
「ニュータイプ」という特別な感応波を感じ取ることができる人々を中心にキャラクターの内面を鮮明に描出している作品。バナージとリディとの衝突がマリーダ・クルスという女性との感応によって解消することで「ニュータイプ」の希望を表していると感じた。

10『86』(アニメ、2021)
【あらすじ】
星歴2148年。サンマグノリア共和国は隣国ギアーデ帝国が投入した完全自律型無人兵器「レギオン」の侵攻に対し、少数派民族は共和国85行政区の外へ追いやられた人型の家畜、「エイティシックス」と蔑まれながら絶死の戦場を戦い続けていた。そんな中、白系種でありながら軍内で差別政策撤廃の活動を行う士官ヴラディレーナ・ミリーゼは、管制担当者に多数の退役者や自殺者を出し「死神」と呼ばれるエイティシックスが居る部隊の管制を任され、自国が目を背け続けていたレギオンの真実を知る事になる。
【考察】
迫害、差別を主題にした作品は多いが、86を人ではなく無人兵器と同列と考え存在を透明化していることや、共和国を離れても別の迫害が待ち受けていることが創作の中でも真に迫るものがあると感じた。
11『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(映画、2011)
【あらすじ】
彼を突き動かすのは、人々を救いたい、という信念。第2次世界大戦の最中、兵士として不適格とされた貧弱な青年、スティーブ・ロジャースは、軍の極秘実験「スーパーソルジャー計画」に身を捧げ、<キャプテン・アメリカ>として生まれ変わる。身体能力を極限にまで高めた強靭な肉体を手にし、同時に正義感に溢れる彼の魂も、極限まで高められる。戦う敵は世界征服を目論むレッド・スカル率いる悪の組織ヒドラ。捕らえられた仲間を救うため、彼は敵地に向かっていく…。
【考察】
キャプテン・アメリカをドーピングと同列に語る人がいたが、血清の真の効果は心にあるというメッセージを見逃していると思う。スティーブからはひたむきに一途な心が学べるだろう。
12『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』(映画、2014)
【あらすじ】
アベンジャーズ抹殺計画、始動。アベンジャーズの戦いから2年。アベンジャーズのメンバーであるキャプテン・アメリカ、ニック・フューリー、ブラック・ウィドウは、これまで共に戦ってきた仲間である国際平和維持組織シールドから、突然生命を狙われる。巨大な包囲網を逃れ、逃亡者となった彼らであったが、謎の暗殺者“ウィンター・ソルジャー”が立ちはだかる…。誰が味方なのか、そして真の敵は誰なのか?正義をかけた究極の戦いが幕を開ける。
【考察】
前作の王道ヒーロー作品の躍進とは変わり、正義への思いや後悔を抱えるスティーブの内面を描いている。前作で戦いを共にしたバッキーと思しき敵と戦うことをためらうスティーブから、正義とは何かを考えさせられる作品になっている。
13『アイアンマン』(映画、2008)
【あらすじ】
アフガニスタンで自社兵器のデモ実験に参加したトニー・スタークは、テロ組織に襲われ拉致されてしまう。胸に深い傷を負い捕虜となった彼は、組織のために最強兵器の開発を強制される。トニーは装着することで、圧倒的な破壊力とパワーを発揮できる戦闘用パワードスーツを敵の目を盗み開発。敵地からの脱出に成功するが、奇跡的に生還したトニーは、ある事実を知り愕然とする・・・。自らが社長を務める会社が開発した兵器がテロ組織に使用されていたのだ。トニーはその償いをすべく、テロ撲滅に命を捧げることを決断。最先端の技術を駆使し、新たなパワードスーツの開発に着手する。
【考察】
MCUシリーズの始まりの作品である本作の功績は計り知れない。ほかのマーベルヒーローと比較すると彼はスーツがなければただの一般人であるが、自身で作り上げたスーツによってヒーローに成ることがスタークのプライドや意味なのではないだろうか。
14『アイアンマン2』(映画、2010)
【あらすじ】
ヒーローになった男、トニー・スターク。次なる試練。自らアイアンマンであることを告白した大企業スターク・インダストリーのCEO、トニー・スターク。そんな彼に新たな危機が迫っていた。まず、米国政府がパワードスーツの没収を命令。そして、彼に恨みを抱く謎の男“ウィップラッシュ”が一撃で車を真っ二つにする電流ムチを携えて現れ、ライバルの武器商人ハマーも独自のパワードスーツを開発する。そんな中、胸に埋め込んだエネルギー源“リアクター”の影響でトニーの体は蝕まれていき…。
【考察】
スーツによって慢心するスタークは外的や自らのリアクターにも追い込まれることになる。本作は、科学技術の危険性と進歩の可能性を見せ、技術を正しく使うことの難しさ、重要性を観客に伝えていると感じた。
15『アイアンマン3』(映画、2013)
【あらすじ】
『アベンジャーズ』の戦いから1年…トニー・スタークは見えざる敵の脅威におびえ、一心不乱に新型パワードスーツの開発をしていた。心身ともに追いつめられたトニーはある日、世界転覆を企む謎の男マンダリンから攻撃を受け、全てを奪われてしまうが…。アイアンマン“最後”にして“最大”の戦いが始まる――。
【考察】
パワードスーツや素晴らしい頭脳があっても、一人の人間であるスタークの精神的な苦悩を描く本作では、秘書ペッパーとの関係などアイアンマンとしてではなくトニー・スタークの成長を描いていると感じた。シリーズの最終作でいったんゼロの状態に戻すことによって内面の成長がより感じられる構成になっていて上手いなと思った。
16『マイティ・ソー』(映画、)
【あらすじ】
神の国<アスガルド>で無敵の強さを誇る戦士ソー。だがあまりの傲慢さゆえに神々の王である父の怒りに触れ、最強の武器“ムジョルニア”と全ての力を奪われて人間界へ追放されてしまう。地球に落ちたソーは、天文学者のジェーンら人々に出会い人間の弱さや痛みに触れ、徐々に真の強さを学んでゆく。
【考察】
本作は強さゆえの慢心から試練を課されたソーの、王にふさわしい好青年への成長を描くと同時に、敵種族であるのにも関わらず兄ソーとともに育てられたロキの葛藤を描いている点にほかのMCU映画とは異なる人間味や魅力が生まれていると感じた。
17『マイティ・ソー ダークワールド』(映画、2013)
【あらすじ】
『アベンジャーズ』の戦いから1年 ― 全宇宙をも征服する“闇の力”から地球を救うため、アベンジャーズ最強の男ソーは、宿敵ロキとともに立ち上がる。はたしてロキは敵か味方か?
【考察】
アベンジャーズのインフィニティストーンとつながる設定を出しつつ、うまくソーの物語としてまとめているという印象。前作よりもロキの内面を描く割合が多くなっていた。母フリッガの死を知り牢の中で暴れまわったロキが、ソーには幻影を見せて取り繕うなど、純粋な悪ではないことが度々示されていた。男女や仲間の絆ではなく家族の愛と理解が、ソーを真の英雄へと導く重要な要素であることが強調されている。
18『冴えない彼女の育てかた』(アニメ、)
【あらすじ】
オタク高校生の「安芸倫也」は桜舞い散る坂道で、ある少女と運命的な出会いをする。インスピレーションを受けた倫也は、その少女をメインヒロインにしたギャルゲーの制作を思いつき、同学年の美術部エース「澤村・スペンサー・英梨々」と学年一位の優等生の先輩「霞ヶ丘詩羽」をスタッフに迎えようと邁進する。そんなある時、倫也は運命的な出会いをした少女が、特に目立たない普通のクラスメイトの女子「加藤恵」だったことを知り、愕然とする。倫也は加藤恵をゲーム中で絶対的なヒロインにしようと決意するのだが…。
【考察】
ラブコメアニメの入門編といってもいいほどスタンダードな作品である。ツンデレ幼馴染、文学系先輩、妹系後輩など「テンプレ」キャラがたくさん登場する。しかし一人ひとりのキャラが埋まることはなく軽快なセリフで見やすいため初心者にお勧めできる作品である。
19『SSSS.GRIDMAN』(アニメ、2018)
【あらすじ】
ツツジ台に住む高校1年生の響裕太は、ある日目覚めると記憶喪失になっていた。
そして裕太は古いパソコンに映る『ハイパーエージェント・グリッドマン』と出会う。
【考察】
1993年から放送された「電光超人グリッドマン」をアニメ化するプロジェクトから始まる本作のメインテーマは「救い」だろう。怪獣を使って世界を支配せざるをえない少女アカネ、人間と怪獣の間で揺れるアンチなど、敵キャラであっても救済があることで一種のヒーローものとしてだれでも見やすくなっている。
20『SSSS.DYNAZENON』(アニメ、2021)
【あらすじ】
フジヨキ台高校一年生の麻中蓬はある日の帰り道、『怪獣使い』を名乗る謎の男ガウマと出会う。突如現れる怪獣と巨大ロボット ダイナゼノン。その場に居合わせた南夢芽・山中暦・飛鳥川ちせと共に怪獣との戦いに巻き込まれていく。
【考察】
21『グリッドマン・ユニバース』(アニメ、2023)
【あらすじ】
2年生に進級し、六花と別のクラスになった裕太は告白を決意する。 そんな平和になった世界で過ごす彼らの日常は、轟音と共に崩れ始めた。裕太に訪れる危機の最中、突如現れるグリッドマンは語りかける。「この世界のバランスが崩れようとしている」やがて真紅の強竜ダイナレックスや、グリッドマンの協力者である新世紀中学生、そして別世界の住人、麻中蓬たちも裕太の前に次々と現れる。六花への想いを秘めたまま、裕太の非日常が始まった。
【考察】
原作「電光超人グリッドマン」の聖地が地元にあるため、見慣れた景色が作中に登場したり、ロケハンで通ったことのある道が出てきたりして親近感があった。全体としてSSSSシリーズを見ていたファン向けの作品となっていた。原作の主人公が登場するなど39の小ネタが仕込んでいるリスペクトぶりも熱量を感じる。
22『天元突破グレンラガン』(アニメ、2007)
【あらすじ】
村を広げるための穴掘りをしていた少年・シモンは、ある日、掘り進んだ先で偶然、不思議に光る小さなドリルを見つける。そして、シモンの兄貴分である青年・カミナ。彼は、村の上には「地上」があることを信じ、グレン団というチンピラグループを率いて天井を突き破って外へ出ようと目論んでいた。
【考察】
荒々しい作画と迫力のある演出でロボットアニメとして満点の作品である。もちろんそれだけではなく、地下で穴を掘るだけだったシモンが、カミナに連れられて外を知ることでの成長や、ひたむきに努力するシモンのカッコよさを学ぶことができる。
23『ダーリン・イン・ザ・フランキス』(アニメ、2018)
【あらすじ】
高いエネルギー効率をもつ「マグマ燃料」の採掘によって地殻変動や環境破壊が進んだ世界。荒廃した地上で生き抜くため、人類は巨大移動要塞都市を建造し、その中で生活していたが、謎の巨大生物叫竜(きょりゅう)が出現し、平和を脅かしていた。これに対抗するため、天才科学者集団「APE」はフランクスという男女二人乗りの巨大兵器を開発。そのパイロットであるパラサイトとするためだけに、名前ももたないコドモ達を育成していた。
【考察】
コドモたちはオトナが不必要と捨てた生殖本能や、雌雄が存在する。それによって自分たちだけで子供を作ることはいけないことなのかといった葛藤を抱えることになる。一方叫竜の血を引く少女ゼロツーはダーリンというある少年とともにいるために、人間になろうともがく。少年少女特有の悩みをうまく表現した作品である。
24『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』(漫画)
【あらすじ】
100人の女性に告白しては振られてきた愛城恋太郎。中学卒業の日に彼は神社の神様からお互いが好きで好きでたまらなくなる“運命の人”が100人いると告げられる。高校生になった恋太郎は早速2人の“運命の人”と出会い、その2人から告白される。一転して嬉しくも悩ましい立場に置かれた恋太郎だが、「“運命の人”と出会った人間は、その相手と愛し合って幸せになることができなければ色々不幸な目に会ったあとに死ぬ」運命を辿ることを知る。
【考察】
いわゆるハーレムもののラブコメでは最終的に一人に決めることが多いと思うが、この作品では100人100色の恋愛が見られる。キャラクターは現在30人に達するが一人として冷遇されるキャラはいない。各話に必ず一コマにすし詰め状態で全彼女が登場するほどである。今までキャラかぶりもないため作画、原作の先生方の能力の高さを感じる。
25『2.5次元の誘惑』(漫画、)
【あらすじ】
ある高校の、たった一人しか部員がいない漫画研究(漫研)部部長・奥村正宗のもとに、新入生の天乃リリサが入部する。共に漫画のキャラクター「リリエル」が好きな二人は意気投合し、リリサの趣味であるコスプレ撮影を始める。そこに、奥村の幼馴染で現役人気モデルの橘美花莉が現れ、リリサと二人で併せ撮影を行う。
【考察】
コスプレイヤーのリアリティの高さから取材の量を推し量ることができるほど、イベント、コスプレに対する理解度が高い。この作品の見どころは、骨格などから考え抜かれた女の子のデザインと「熱血青春コスプレ漫画」ともいわれるほどに熱い展開のストーリーである。王道ジャンプ作品(ワンピースなど)顔負けの熱い展開が続く演出の上手さに着目してほしい。
26『レディ・プレイヤー・ワン』(映画、)
【あらすじ】
2045年。環境汚染や気候変動、政治の機能不全により世界は荒廃していた。そのためスラム街で暮らさざるを得ない状況に陥った地球上の人類の多くは、「オアシス」というVR世界に現実逃避して入り浸っていた。現在オアシス内では、創始者であるジェームズ・ハリデー亡き後公表された彼の遺言により、ゲーム内に隠された3つの鍵を手に入れた勝者にはオアシスの所有権と5000億ドル(日本円で約56兆円[5])相当のハリデーの遺産が授与される「アノラック・ゲーム」が開催されていた。
【考察】
全ゲームプレイヤーが夢見るような世界によって観る人すべてを魅了する作品である。ソードアートオンラインのようなフルダイブ技術ではなくVR 機器とコントローラ替わりの全身スーツというより現実味のある設定によって没入感も損なわれずに演出がなされている。
27『トランスフォーマー』(映画、2007)
【あらすじ】
未知の惑星から、あらゆる機械に変形できる金属生命体が地球に侵入。ジェット機や車、デジカメ、携帯電話などに姿を変え潜伏した彼らは、やがてロボット状の体型にトランスフォーム(変身)し、人類への攻撃を開始する。
【考察】
MCUの始まりであるアイアンマンのCG制作に影響を与えたと言われている本作品は、日本のロボット玩具をもとにしたハリウッドの作品である。実写ならではのスーパーカーのカッコよさ、爆発を多用する派手な演出で何度見ても楽しめる作品である。当時のコンピューターからすると異常な作業を強いているため、たびたびクラッシュするなどのトラブルがあったという製作の声が聞こえるほどCGのクオリティが高い。
28『ダンジョン飯』(アニメ、2024)
【あらすじ】
ダンジョン飯。 それは、"食う"か"食われる"か――― ダンジョン深奥で、レッドドラゴンに妹が喰われた!命からがら地上へ生還した冒険者のライオス。再びダンジョンへ挑もうとするも、お金や食糧は迷宮の奥底……。妹が消化されてしまうかもしれない危機的な状況の中、ライオスは決意する。「食糧は、迷宮内で自給自足する!」スライム、バジリスク、ミミック、そしてドラゴン!襲い来る魔物たちを食べながらダンジョン踏破を目指せ、冒険者よ!
【考察】
一度全滅した状態からダンジョン攻略が始まる王道展開だが、モンスターを食料として考えるという発想はなかったため新鮮であった。タイトル通り各回必ずモンスターを食べるが、その時のライオス、センシ以外の仲間の反応が面白い。ただ食べるだけでなくしっかり攻略も進めるのでダンジョンものとしても楽しめるだろう。
29『Charlotte』(アニメ、2015)
【あらすじ】
思春期の少年少女のごく一部に発症する特殊能力。人知れず能力を駆使し、順風満帆な学園生活を送る乙坂有宇。そんな彼の目の前に突如現れる少女、友利奈緒。彼女との出会いにより、暴かれる特殊能力者の宿命。それは麻枝 准が描く青春を駆け巡る能力者たちの物語―――。TVアニメ『Angel Beats!』放送開始から5年。麻枝 准が原作・脚本を手掛ける、完全新作オリジナルアニメーションが遂に始動。
【考察】
思春期の子供にのみ発言する能力といういかにも中二病的設定からは考えられないほど感動的なストーリーになっている。はじめはカンニングや覗きに能力を使っていた有宇が、ほかの能力者を救うためにぼろぼろになって世界中を旅するまでに成長する過程が面白い。
30『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』(ゲーム、2023)
【概要】
本作は前作のエンディングからしばらく経った後のハイラル王国が舞台であり、前作からフィールドやキャラクターなど多くを継承している。その一方、操作キャラクターであるリンクの使える能力は一新され、フィールドにも空島や洞窟などが追加されるなど、前作から変化した点や追加された点も多くある。また本作は「手と手」が大きなテーマとなっており、リンクの使う能力はすべて手から発せられ、ストーリーでも重要な役割を果たしている。
【考察】
まず驚いたのが、空、地上、地下の世界がロードを経ずにシームレスにつながっていることである。あれだけ広大なフィールドをどうやって表示しているのか疑問に思った。そして一番驚いた点が、ストーリーの導線がしっかりしているのでどの方向に行っても何から達成しても辻褄が合うようにセリフなどが用意されていることである。このように、ゼルダシリーズのシナリオのすばらしさと合わせて、ゲームシステム面からも優れたゲーム体験を提供しようという気概が感じられる。
2024/09/24(火) 04:40 No.2063 EDIT DEL
3年 青山 凜香 RES
1.「KING OF PRISM -Dramatic PRISM.1-」
歌とダンスとプリズムジャンプを組み合わせた総合エンタテインメントショー「プリズムショー」に魅了された個性豊かな少年たちが、観客をもっともときめかせる「プリズムスタァ」を目指して奮闘する姿を描く人気アニメ「KING OF PRISM」シリーズの約4年ぶりとなる劇場版。2019年に劇場公開&テレビ放送された「KING OF PRISM Shiny Seven Stars」シリーズに新規パートを加えて再構成し、プリズムショーの魅力を最大限に映し出す。
友人からの誘いで事前情報も全くないまま視聴したが、観客と映画の一体感が今まで見てきた映画の中でピカイチだった。自分たちが作中の観客になっている没入感が非常によく味わえる作品だと感じた。この映画をきっかけに「KING OF PRISM」シリーズを見てみたくなった。

2.「ジョジョの奇妙な冒険 第5部 黄金の風」
舞台は2001年のイタリア、主人公はなんとDIOの息子ジョルノ・ジョバァーナ。親の愛情を受けられず育ったジョルノは、幼少期に人間の尊厳を教えてくれたギャングに憧れ、ギャング組織・パッショーネに入団。DIO譲りのカリスマ性、ジョースターの血統から受け継いだ誇り高い精神で仲間を魅了していくジョルノ。しかし、組織の真実を知ったことから、過酷な運命に巻き込まれていく。
第5部のテーマは「運命」。悲しい境遇に生まれた主人公たちが力強く運命と対峙し、生き抜く群像劇が描かれる。
最初は濃い絵柄で敬遠していたのだが、話のテンポの良さとストーリーに惹きこまれていった。ギャグ要素も多いのだが、決めるシーンは決めてくる、ギャップがある作品だと感じた。多くの人々に長い間愛されているのも納得だった。

3.「XX」
この物語は、BAR XXが舞台となって進んでいく。
看板をださない隠れ家バーとして営業しているXXで働くナナとダニ。そこへ、業界ナンバーワンのバーを経営するナナの元親友ルミがナナをスカウトに。二人は学生時代こそ親友であったものの、あることがきっかけで現在の関係は最悪な状態。過去の二人の間に何があったのか、そしてまさかの再会をした二人はどうなっていくのか?この再会がきっかけで様々なことに巻き込まれていくダニとジョンドゥン。そしてだんだんと距離が縮まっていくナナとダニ。
韓国のウェブドラマ「XX」最初はYouTubeで全話無料で見ることが出来る手軽さに惹かれて見たのだが、登場人物の綺麗さに驚いた。大人気韓国アイドル「EXID」のメンバーだったハニが出演しており、KPOPが好きな私は驚いた。しかし、ハニの演技力は非常に高く、一切違和感を感じることなく見終わった。他の俳優陣も流石の演技力で最初は気難しいルミにイライラしていたものの、ルミの事情を知ってからだんだんと感情移入していき、最後のシーンは非常にスカッとした。一話一話が短いため、スキマ時間に見ることができるのもおすすめポイントである。

4.「BANANA FISH」
1980年代のアメリカ、ニューヨーク。主人公のアッシュ・リンクスは絶世の美貌と統率力を併せ持ち、不良少年たちのカリスマとして熱狂的に崇拝されていた。そんなアッシュには兄のグリフィンがいますが、ベトナム戦争のPTSDで廃人化しており、現在は弟に養われている状態である。イタリアンマフィアのボス・ゴルツィネはアッシュの後見人兼愛人で、子供の頃から彼の面倒を見ていた。
ある時ゴルツィネが差し向けた刺客が男を射殺した。その場に居合わせたアッシュに謎の言葉「バナナフィッシュ」を伝え、ロケットペンダントを託して息を引き取った。
兄のグリフィンもまた「バナナフィッシュ」と繰り返し呟いていたのを思い出したアッシュは、バナナフィッシュの意味を探し始める。
これもまた友人に勧められて見た作品なのだが、ラストのシーンでは涙が止まらなかった。友人は私に勧めてくるとき「BANANA FISHを見ずに楽に生きるより、BANANA FISHを見た痛みを知って生きる方が100倍良い人生になる」と言っていたのだが、まさにその通りだと思う。この作品を通じて自分がいかに幸せに生きているのかを痛感した。

5.「NANA」
矢沢あいによる音楽と恋愛を描いた長編漫画。実写映画化、アニメ化もされた人気作。
大雪で足止めされた新幹線の中で、同じ名前で同い年の2人が偶然隣り合わせる。それぞれ目的を抱え東京へ向かっていた2人だったが、ひょんなことから同居することになるのだった。恋愛に生きる奈々と音楽に生きるナナのふたりを中心に、喜びや悲しみ、挫折と成功を繰り返す「夢の実現」と「現実の厳しさ」を感じさせる作品である。
初めは最近よく見かけるから、という理由で見始めた作品だったが、自分の心のうちを言語化したようなセリフに心を奪われてどんどんと読み進めてしまった。生まれや境遇の違うふたりの「ナナ」が奮闘する様は思わず応援したくなりつつも、現実の厳しさを痛感する作品であると感じた。

6.「ピンクとハバネロ」
「私だって彼氏がほしい!」 恋愛経験ゼロで男子とのコミュ力皆無の麦が高校で出会ったのは、めっちゃイケメンなのに女子に超無愛想な黒瀬彗。あまりに失礼な態度でムカつく麦だけど、偶然、黒瀬の秘密のバイト先を知ってしまい……。 痺れて悶えるラブコメディー。
可愛い絵柄に惹かれて見始めた作品だが、ツンデレな彗とまっすぐでかわいい麦との対比が可愛くて仕方がない作品だった。麦のまっすぐで人のことをしっかりと見て本質を見抜くことが出来るところには、私も好きになってしまうなあと感じた。

7.「どうせ泣くなら恋がいい」
「ふたりしかいないんだから、いっぱい泣けば?」高校の入学式の朝。穂高は、マンションの隣の部屋から出てきた同じ高校に通うであろう男子と運命的な…いや、絶望的に最悪な出会いをして!? やがて全員一方通行の恋でもだえることになる大恋愛。
最初の出会いから衝撃的な作品。内容も少し重めなテーマで、関係もこじれにこじれており、読むのに力がいるが、読者の私もハッとさせられることが多く、恋愛について学ぶことができる作品だと感じた。

8.「四畳半のいばら姫」
どん底の人生を変える運命の出会い……。 貧乏、親なし、友達なしの小林しんらは、ある日、学校の人気者の雷(らい)から「友達になってよ」と声をかけられる。興味本位で近づこうとする雷に反発するしんらだったが、どん底の人生から抜け出すため、もっと打算的になろうと雷と協力関係を結ぶことを決めて……。
広告で見かけて気になったため、読んでみたがあまりにも不幸な主人公に同情してしまう。そんな中、様々な生い立ちのイケメン三人組が、しんらの一生懸命で時には予想外の行動をして必死に生きる姿に突き動かされて助けていく様はシンデレラのようだなと感じた。

7.「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール ディアルガVSパルキアVSダークライ」
ポケモンコンテストに参加するため、アラモスタウンへ向かったサトシたち一行は、アリスという可憐な女性と出会う。彼女に町の中を案内してもらい、すっかり観光気分になっていた矢先、彼らの前に幻のポケモン、ダークライが姿を現す。
10周年を迎えた劇場版に、“ポケモン”の新シリーズ『ポケットモンスター ダイヤモンド&パール』が新たに登場。ポケモンマスターを目指す少年さとし&ピカチュウらおなじみのキャラクターたちの冒険の旅を軸に、神と呼ばれる2体のポケモン、ディアルガとパルキア、そして幻のポケモンと呼ばれるダークライが現れ、史上空前の壮絶バトルが繰り広げられる。
夏休みを利用して昔の映画を見ようという友人の誘いから、ポケモンの有名作のひとつであるこの映画を見ることに。昔ながらの懐かしい絵柄やポケモンたち、サトシたちがいつものように旅を楽しんでいると、突然ディアルガやパルキアが戦っており、その弊害で街が消えかけるといったなんとも恐ろしい展開。最初はダークライが悪役かと思われたが、自分の身を挺して街を守るダークライに感動せざるを得なかった。

8.「劇場版ポケットモンスター 水の都の護神 ラティアスとラティオス」
美しい水の都、アルトマーレを訪れたサトシとピカチュウは、秘宝“心のしずく”を守る兄妹ポケモンのラティオスとラティアスに出会う。ところがそこに秘宝を狙う怪盗ザイナーとリオンが現れ、彼らは思わぬ事件に巻き込まれる。
今や世界的人気を誇るピカチュウ・ムービー最新作。釈由美子や神田うのらが声優で特別出演、優香がナレーションを務めるなど多彩なゲストが顔を揃え話題満載。新キャラクターにも注目。
友人にポケモンの映画を見るならこれだけは見てほしいと言われ、視聴した。ダントツでストーリーと音楽が良い映画だったと感じた。内容も何かを得るには何かを捧げなければならないというメッセージが込められており、子供向け作品でありながら、強いメッセージ性が含まれており、こどもでももちろん楽しむことが出来るが、大人になってもう一度みることで、幼いころには気付かなかったことに気付くことが出来てより楽しむことが出来ると思う。

9.「HUNTER×HUNTER」
大自然に囲まれた「くじら島」に住む、主人公の少年ゴン=フリークス。物心ついた時から両親はおらず、父親は死んだと聞かされ、育ての親であるミトと暮らしています。 そんなゴンは、8歳の時に森で獣に襲われ、ハンターのカイトに助けられる。
実は、カイトはゴンの父親ジン=フリークスの知り合いで、カイトはゴンに父親のことを話した。ジン=フリークスは偉大なハンターであること、ジンは今でも生きていることを知ることになる。 父親に会いたい思いが募り、ハンターにも憧れを抱いたゴンは、自分もハンターになろうと決心する。こうして、難しいハンター試験を受けるために故郷の「くじら島」を旅立ち、ゴンの冒険物語が幕を開ける。
私は今回アニメでこの作品を視聴したが、一話一話のテンポが良く、どんどんと次の話に進んでいくことが出来た。今回はハンター試験編まで視聴したが、冒頭から既に面白いと感じた。クラピカやレオリオ、キルアなどの様々な濃い性格のキャラクターがおり、みんなで成長していく様がとても面白いと感じた。続きも非常に楽しみだ。

10.「アニメ「ポケットモンスター」第1話「ポケモン!きみにきめた!」(アニポケセレクション)」
本作は、ポケモンマスターを目指す少年・サトシとその相棒・ピカチュウが、行く先々でポケモンたちとの出会いや交流、そして別れや、激しいジムバトルを通して絆を深めていく様子を笑いあり、涙ありの物語として描いたテレビアニメシリーズの第1弾。今回、公開されたエピソードはサトシとピカチュウの出会いを描く、始まりの物語である第1話『ポケモン!きみにきめた!』を皮切りに、第2話~第5話、第11話、第14話、第20話が“アニポケセレクション”として投稿されている。
サトシとピカチュウとのはじまりの物語。ポケモンのアニメをあまり見たことがなかったが、かわいいピカチュウや随所に詰め込まれているギャグや言い回しが独特で非常に面白かった。なかなか懐かないピカチュウとなんとかピカチュウと旅をしようと頑張るサトシの姿を応援したくなった。

10.「アニメ「ポケットモンスター」第1話「ポケモン!きみにきめた!」(アニポケセレクション)」
本作は、ポケモンマスターを目指す少年・サトシとその相棒・ピカチュウが、行く先々でポケモンたちとの出会いや交流、そして別れや、激しいジムバトルを通して絆を深めていく様子を笑いあり、涙ありの物語として描いたテレビアニメシリーズの第1弾。今回、公開されたエピソードはサトシとピカチュウの出会いを描く、始まりの物語である第1話『ポケモン!きみにきめた!』を皮切りに、第2話~第5話、第11話、第14話、第20話が“アニポケセレクション”として投稿されている。
サトシとピカチュウとのはじまりの物語。ポケモンのアニメをあまり見たことがなかったが、かわいいピカチュウや随所に詰め込まれているギャグや言い回しが独特で非常に面白かった。なかなか懐かないピカチュウとなんとかピカチュウと旅をしようと頑張るサトシの姿を応援したくなった。

11.「アニメ「ポケットモンスター」第2話「たいけつ!ポケモンセンター!」(アニポケセレクション)」
傷ついたピカチュウを抱えたサトシは、ジュンサーに導かれ、ポケモンセンターに駆け込み、そこでジョーイに叱られながらもピカチュウを治療させようとする。だが、そこにロケット団であるムサシとコジロウとニャースがポケモンを奪おうと襲来してきた。カスミや預けられていた他のポケモンやピカチュウの活躍でなんとかロケット団を撃退したサトシは、ピカチュウの治療を終えると旅を再開し、トキワのもりに入ってキャタピーを捕まえようとする。
これもまた随所に入れこまれた言い回しが非常に面白く、思わずクスっと笑ってしまう。ここでおなじみのロケット団が登場し始め、不穏な空気が漂い始める。ここではじめてサトシとピカチュウが協力して戦うシーンを見ることが出来て胸が熱くなる。停電した際の色使いが独特でこれもまた面白い。

12.「ALIENSTAGE」
前回のシーズン、大盛況のうちに幕を下ろした新生オーディション番組『エイリアン・ステージ』が、新シーズンとして戻ってきた。『エイリアン・ステージ』は人間ペット同士を競わせるサバイバルオーディション番組で、優勝した人間ペットの飼い主は ÇÑ ±â´ÉÀで悠々と暮らすことができる。最初はありふれたバラエティー番組と思われていた『エイリアン・ステージ』は、シーズンを重ねるうちにだんだんと評判になっていった。それは音楽専門幼稚園である「アナクトガーデン」ができるほどであり、人間ペットたちの入園競争は日に日に厳しさを増していった。個性の強い人間ペットたちのパフォーマンスと美しい鳴き声が合わさり、多くのセゲインを惹きつける『エイリアン・ステージ』。 果たしてどんな人間ペットが優勝するのか多く外界人たちの注目を集めている。
2038年、外界侵略で植民地化した地球。侵略者セゲインのペットになった人間たちが、『ALIEN STAGE』というサバイバルオーディション番組で歌い、闘うSFアニメ。登場人物が喋るわけではなく、ただ人間たちがステージで歌う姿と回想がひたすら映像として流れ続ける。原作者が韓国の方であり、歌も韓国語であるため、とっつきにくくはあるが、韓国語の勉強にもなるため視聴を始めた。親友だった女の子たちが戦うことになり、敗北した方が目のまえで射殺されるなどショッキングなシーンが多いが、セリフではなく映像だけで悟らせるスタイルが珍しく面白い。

13.「アニメ「ポケットモンスター」第3話「ポケモンゲットだぜ!」(アニポケセレクション)」
トキワのもりにやってきたサトシとカスミ。キャタピーを発見したサトシは早速ゲットしたものの、虫ポケモンが嫌いなカスミはキャタピーを好きになれない。その夜、キャタピーはピカチュウにバタフリーに進化する夢を語る……。
ポケモンに対する知識がないサトシはピジョンに対してキャタピーを出す。案の定負けてしまうキャタピー。そこでポケモンバトルは相性が大事だと怒るカスミと、そんなの気合でなんとかなると言うサトシ。これからポケモンを知ることが大事だと語るカスミ。そこにあらわれるロケット団。「キャタピー… さっきのバトルで傷付いた君を……おれは……出せない!!」などポケモンに対して優しいココロを持つサトシの言葉にうるっとした。さっきの言葉もポケモンたちを信じているからこそなのだと感じた。

14.「正反対な君と僕」
元気いっぱいだけど周りの目を気にしてしまう鈴木は、自分の意見を言える物静か男子・谷くんに絶賛片思い中。だが周りの目が気になって普通に接することができず、いつも谷くんにダル絡みばかり……。しかしある日勇気を出して、一緒に帰ろうと誘ってみたところ……!? 共感マックスの等身大ラブコメ。
「氷の城壁」の作者さんということもあり、読む前から期待大だった作品。今作も期待を裏切らない、ストーリーの良さだった。人間の心の動きを描くのが本当に上手であるとあらためて感じた。今作は前作に比べ人の温かさがよく感じられる作品に仕上がっていると思った。

15.「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」

地主による喫煙者男女の恋愛漫画である。物語は主人公・佐々木がいきつけのスーパーの店員・山田の笑顔の接客を心の癒しとしているところから始まる。ブラック企業に勤めている冴えないサラリーマンの佐々木は、日々の理不尽な残業や上司からの叱責に心身共に疲れていた。そんな佐々木を唯一癒してくれる存在が、行きつけのスーパーSの2番レジにいる店員の山田であった。ある時上司からの叱責で疲弊した心を癒すために2番レジに並ぶも山田はおらず、仕方なく煙草を吸うことで気を紛らわせようとする。周囲からの喫煙者に対する冷たい視線に傷ついて吸うのを躊躇っていると、スーパーの裏の喫煙所にいた女性・田山に喫煙所に誘われる。それをきっかけに田山と親しくなり、佐々木は喫煙所に通うようになる。実は佐々木は気づいていないが、田山と山田は同一人物なのだ。彼女の2面性を軸に進んでいくシガレットラブストーリー。
元々Twitterで度々拝見していた漫画だったが、夏休みをきっかけに一気読みした。正体がいつバレるのかとハラハラしながら読んでいた。自分も近所のコンビニで落ち込んでいた大雨の日に店員さんから優しく声をかけられて元気を出した経験があるので、重なる部分も多く、共感しやすい作品だと感じた。

16.「逃げ上手の若君」
舞台は1333年の鎌倉。主人公の北条時行は、幕府の跡継ぎながらも「逃げる隠れる」を得意とし、才の目立たない日陰者だった。期待されていなくても、生まれ育った鎌倉を愛し人々が笑顔で平和に暮らしていければいいと考えていた中、未来予知ができると言う信濃の国の神官・諏訪頼重に出会い、「十歳のときに天を揺るがす英雄となる」と告げられる。すぐに逃げた時行だが、一か月後に事件が起き……。
これも話題となっていたため気になって視聴した作品。まず細かく美しい描写に驚かされた。また、個性豊かなキャラクター、ギャグ要素も多く歴史を題材としていながら飽きさせない作品であると感じた。

17.「マッシュル-MASHLE-」
魔法使いが支配する「魔法界」に生まれながら、まったく魔法を使うことのできないマッシュ・バーンデッドは、家族と平穏な暮らしのできる世界を作るためにイーストン魔法学校へ入学する。そんなマッシュが、鍛え上げた肉体だけを武器に闇の魔法組織と戦う姿を描いたアブノーマル魔法ファンタジー。
魔法学校が舞台でありながら、魔法が使えない主人公。従来の作品は実は隠れた能力があり、強力な魔法が使えるというのがセオリーだったが、それを肉体で解決するという意外性のある作品。キャラクターデザインがゆるっとした感じであることから、なんとなくギャグもあるのだろうと予想していたが、まさにその通りでゆるく非常に面白いギャグ要素も多く、サクサクと見ることが出来た。

18.「わたしの幸せな結婚」

名家に生まれた美世は、実母が早くに儚くなり、継母と義母妹に虐げられて育った。
嫁入りを命じられたと思えば、相手は冷酷無慈悲と噂の若き軍人、清霞。大勢の婚約者候補たちが三日と持たずに逃げ出したという悪評の主だった。
斬り捨てられることを覚悟して久堂家の門を叩いた美世の前に現れたのは、色素の薄い美貌の男。初対面で辛く当たられた美世だけれど、実家に帰ることもできず日々料理を作るうちに、少しずつ清霞と心を通わせていく―。
これは、少女があいされて幸せになるまでの物語。
こちらも友人におすすめされて見た作品。王道のシンデレラストーリーだった。そこに和風要素が加わり、とても読みやすく展開もスピード感があり非常に読みやすい作品だと感じた。

19.「ここは今から倫理です。」

ドラマ『ここは今から倫理です。』の原作漫画。
「倫理」とは人倫の道であり、道徳の規範となる原理。学ばずとも将来、困る事はない学問。しかし、この授業には人生の真実が詰まっている。クールな倫理教師・高柳が生徒たちの抱える問題と独自のスタンスで向かい合う。新時代、教師物語。
倫理を題材とした珍しい作品。少し大人向けな描写も多いが、冒頭の「役に立つものではないが、いずれ必要になる」というセリフが、話が進んでいくにつれて、「こういうことだったんだな」と強く実感した。思い悩むことが多い現代、10代後半20代にぜひ読んでほしい作品だと思った。

20.「ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ」

なんか小さくてかわいいやつ=通称「ちいかわ」は、たまに現れるちょっと怖い存在におびえたりしながら、労働に精を出す日々を送っている。小さくてかわいくて、いつも一生懸命。もちろん、なんでもうまくいくわけじゃなくて、ちいかわの日々は、辛いこと、悲しいこと、危険なこととも隣り合わせ。でも、大好きなみんなと一緒に、明日も笑って「くらしたい」。
今や大人気キャラクターとなった「ちいかわ」一話が短くサクっと見ることが出来るとおすすめされて見た作品。噂通り、なんだかゆるっとしていて憎めないちいかわ。しかし、妙に現実的な設定や、たまに来るダークな展開に目が離せなくなる。

21.「犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい」

100万リツイート突破の話題作! ツイッターで大人気の『犬と猫どっちも飼ってると』シリーズがついに単行本化。天真爛漫な犬くんと、魔王のように凶悪ながら愛らしい猫さま。どっちも飼えば100倍たのしい、笑いありホロリありのエッセイコミック。
私は犬も猫も好きで、癒しを求めて手に取った漫画。犬くんはハイテンションで人懐っこく、猫さまはニヒルで時に凶悪。その違いが非常におもしろく、そして愛らしく描かれており、癒される作品。

22.「暗殺教室」

舞台は、学園の落ちこぼれクラス「3年E組」。彼らに突如与えられたのは、クラス担任の「殺せんせー」を暗殺するという使命だった。殺せんせーは月を7割破壊し人類に脅威をもたらした謎の生物。1年以内の暗殺を命じられる生徒たち。型破りな設定のもと、笑いと涙の感動物語が幕を開ける。
個性豊かでかわいいキャラクターたちが時に対立し、時に助け合いながら、徐々に絆を深めていく様子、中学生らしい元気いっぱいな姿にまぶしさを感じるとともに、殺せんせーからの指導を経て、人間的に成長していくみんなの様子が本当に感動ものです。一度は見てほしい作品。

23.「僕のヒーローアカデミア」

総人口の約8割が超常的な能力・個性を持つ世界。その個性を悪用する者は〈ヴィラン〉、その個性を活かし人々を助ける者は〈ヒーロー〉と呼ばれていた。主人公の緑谷出久(みどりやいずく)は、ヒーローに憧れる少年。しかし、彼は生まれつき個性を持たない無個性の人間だった。
ある日、帰宅途中だった出久は、逃亡中のヴィランに襲われてしまう。苦しみ藻掻く彼を救ったのは、画風がそことなく違う人気No.1ヒーロー〈オールマイト〉でした。この偶然の出会いが、出久の運命を大きく変えていく。
アメコミ風の珍しい絵柄と、緑谷出久が成長していく様を見て応援したくなる作品。努力し続ける緑谷出久の姿、子供も大人も楽しめる内容のアクションバトルが詰まっており、幅広い年代の方におすすめしたい作品。

24.「モブサイコ100」

まるで物語の”モブ”のような地味さを持つ少年・影山茂夫。見た目のままモブと呼ばれる彼だが、実は凄まじいほどのパワーがある超能力者。〈霊とか相談所〉を営む「自称」霊能力者・霊幻新隆(れいげんあらたか)は、そんな彼の力を見込み、弟子として時給300円で雇う。
ある日、地元の自治会から相談所に一件の依頼が舞い込む。それは、有名な心霊スポットである〈骨井戸トンネル〉の除霊をしてほしいという案件だった。ただならぬ雰囲気に、内心怖気づく霊幻。果たして彼らは、無事に生きて帰ることができるのか。モブ、爆発まで27%。
テンポが良い日常シーンのギャグが多く、思わず笑ってしまう場面が多い。主要なキャラクターだけでなく、登場する敵キャラも個性豊かなのが魅力。バトルシーンの作画も良く、目が離せない作品。

25.「ワンパンマン」

就職活動がうまくいかず、自暴自棄になっていた主人公のサイタマ。怪人に狙われていた子供を命がけで救ったことをきっかけに、ヒーローを目指すようになる。ハゲてしまうほどに激しい特訓を経た結果、彼はどんな敵でも一撃で倒してしまう最強のヒーローに。あまりにも強くなってしまった彼は、張り合いのない戦いに退屈さを感じ始める。果たして、彼の一撃に耐えうる怪人はいるのだろうか。
笑える作品が見たくなって視聴し始めた作品。期待通り、意外性に富んでいながらしっかりと笑いをとってくる作品だった。
26.「弱虫ペダル」

一見ただのオタクな高校生・小野田坂道。彼は大好きなアニメグッズを買うために、アキバまで往復90kmの道のりをママチャリで通っていた。電車を使わない理由は、「自転車ならアキバまでタダで行けるから」。ロードレーサーの今泉俊輔は、〈激坂〉と呼ばれる急勾配な坂をラクラク駆けていく彼に、驚愕の色を隠せない様子。小野田が本当に激坂を登る実力があるのかを確かめるため、今泉は勝負を挑む。
主人公の小野田がロードレースと出会い、部員と共にインターハイを目指す物語が描かれたスポ根作品。オタクだからこそ誰にも負けない熱量であきらめない心を持った小野田坂道。そんな彼がロードレースで戦う様は思わず応援したくなる。

27.「ブルーロック」

勝ったら全国大会という大事な試合に臨む主人公・潔世一。華麗なドリブルで歩を進め、ゴールを目前にした潔は、自らその足でシュートを決めようとするも、味方の「フリーだ」という声を聞きパスを出す。しかしその結果、味方はシュートを外し敗退。全国への道を絶たれてしまう。
あの場面で、もし自分がシュートを打っていれば。押し寄せる後悔に、激しく慟哭する潔。そんな失意のなかにいる彼の元へ、1通の手紙が届く。内容は、潔が〈強化指定選手〉に選出されたというもの。集合場所であるビルに足を踏み入れると、そこには潔と同じ高校生サッカー選手、それも全員FWを担当している選手が300人いた。
不思議がっていると、壇上に1人の男性が現れる。名を絵心甚八という彼は、日本をワールドカップ優勝に導くため、”世界一のストライカー”を作るための実験を行うと宣言した。集められた選手は、〈ブルーロック〉という施設で共同生活を送ることになります。299人を蹴散らし、最後の1人になれば世界最強のストライカーになれる。潔は、過酷な世界へ足を踏み入れた。
サッカーというチームスポーツでありながら、自分の「エゴ」が一番強いものを決め、他人を蹴落とすことが当たり前で選考に落ちてしまえば、一生日本代表にはなれなくなるという厳しい条件のもとストーリーが進んでいく。非常にハラハラする展開が続くスリリングな作品だった。

28.「けいおん!」

桜が舞う季節。ハツラツとした性格の女子高生・田井中律は、幼なじみの親友・秋山澪を連れて軽音楽部を見学する。しかし、部室はもぬけの殻。これまで部を支えていた先輩が卒業したことにより、部員の数は0名になっていた。4名にならなければ廃部という危機のなか、おっとりぽわぽわな同級生・琴吹紬を迎えることに成功。残り1名を探し求める彼女らのもとに、軽音を口笛などの”軽い音楽”と勘違いして見学しにきた平沢唯が訪れる。
軽音楽を題材とした女子高生の青春ストーリー。基本的にはほのぼのとしたシーンが多く、のんびりと日常系を楽しみたい方におすすめな作品。しかし、だんだんと上手くなっていく彼女たちの演奏は最終的にプロレベルの上手さであり、思わず聞き惚れてしまう。

29.「小林さんちのメイドラゴン」

「今日からメイドとして働かせてください!」。玄関前でそう申し出たのは、直前まで巨大なドラゴン、今はメイドの姿をした女性。突然のことに慌てふためく主人公の小林は、話を整理するために一旦彼女を家へ招き入れた。〈トール〉と名乗ったその女性から話を聞くと、昨晩酔った勢いで意気投合し、小林自ら自宅へ誘ってしまったという事情が発覚。小林は頭を抱えるも、人を雇う余裕はないと断る。
悲しげに立ち去る彼女を見て心を痛めたのもつかの間。小林は、会社に遅刻しそうな時間帯であることに気づく。外へ出ようとするトールに一言、「飛べる?」。人間とドラゴンの奇妙な物語の始まり。
ドラゴンと人間の共同生活というなんとも斬新な作品。しかし、基本的には日常系特有のゆるい雰囲気で進んでいくため、癒しが欲しい方におすすめな作品だと思う。

30.「東京喰種」

舞台は東京。主人公の金木研は、人に紛れ人を喰らう〈喰種(グール)〉が潜む街に住んでいた。ある日、お気に入りの喫茶店〈あんていく〉で、一際目を惹く女性・神代利世に出会う。偶然、好きな小説作家が一緒だったこともあり、本屋でデートをすることに。慣れないながらも、つつがなくデートを終えた帰り道。カネキは意を決して自分の思いを伝える。彼に寄り添い、「私もあなたのことが好き」という言葉を発するリゼ。喜びの表情を浮かべるカネキは、次の瞬間肩に強烈な痛みを感じ……。
人間と喰種の狭間で生きるカネキの葛藤を描いた作品。グロテスクな表現も多く、目をそむけたくなるような場面が多々あるが、「食べる」「生きる」とは何かをじっくり考える機会になった。
2024/09/24(火) 01:44 No.2062 EDIT DEL
3年 清水雄大 RES
1.『この素晴らしい世界に祝福を!3』(アニメ)
原作:暁なつめ 監督:安部祐二郎 制作:ドライブ
紅魔の里での魔王軍幹部との戦いを終えてアクセルに帰還したカズマ達。そんな彼らのもとに手紙が届く。その内容は王女アイリスがカズマ達の冒険譚を聞きたいというものであった。アクセルの街を訪れ、カズマ達パーティーとの対面を終えたアイリスはカズマに懐き、王都に連れて行ってしまう。カズマは王城での生活が気に入り、滞在を決めるが王都では義賊が暗躍する事件が起きていた。

7年ぶりの新作アニメということで非常に楽しみにしていた作品。作画がきれいなことが高評価につながるこの時代で作画崩壊としか表現できないほどの顔芸や、変わらないテンポのいい会話、声優さんのアドリブなども多く非常に楽しめた。
今回は貴族や王族という身分に縛られた人にフォーカスした話が多く、政略結婚や王族ならではの外の世界への憧れが描かれている。アイリスの冒険譚を聞きたいというのは外への憧れの典型的な例であり、王女という身分に囚われない年相応の好奇心でもあると考えられる。
また、カズマのキャラクター性も本作における大きなポイントである。自堕落ではあるが、仲間のためなら行動を起こすタイプであるカズマは今回も厄介ごとに首を突っ込んでいく。そんなカズマはかっこいいが、かっこ悪いというキャラクターであり、矛盾する要素を両立させるのは非常に難しいと考える。しかし、仲間を助けに行って逃げる時に窓を割れず激突する、救ったあとに仲間から折檻を受ける等、途中までかっこいいが、最後に締まらないことが多い。しかしながら、かっこ悪すぎるということもなく、この絶妙なバランスがカズマの愛されるキャラクター性に大きく貢献していると考えた。

2.『転生したらスライムだった件 第三期』(アニメ)
原作:伏瀬 監督:中山敦史 制作:エイトビット
魔王クレイマンを倒し、正式に魔王と認められたリムル。魔王たちの宴を終え、支配領域はジュラの大森林全体に広がった。その関係で各種族の代表者たちが挨拶に来ると考えたリムルは魔王としてのお披露目と新規住民獲得を兼ねた開国祭を思いつく。一方、魔物を敵視する神聖法皇国ルべリオスでは聖騎士団長のヒナタがリムルからのメッセージを受け取っていた。そのメッセージを見たヒナタはテンペスト連邦国に向かう。同じ頃、部下からテンペストにヒナタが向かっていると報告を受けたリムルはある決断を下す。

第二期と比較すると会議の場面が非常に多く戦闘描写が激減した。それゆえに動きが少なく、視聴していても面白いと感じられない部分が多かった。しかし、これはリムルが魔王になったことで連邦国を取り巻く環境が激変し、人魔共栄を目指すために各国と友好的な関係を築いていく必要性があることを考えると、6話にもわたる長い会議は前作の内容の確認も含めて避けることのできない展開であったと思われる。
魔王就任によってジュラの大森林にすむ魔物たちによる挨拶、各国代表との会談があるが、リムルの人柄や功績を知っている者が多いために魔王でありながらも敵視されている描写が非常に少ない。一方で神聖法皇国の老師や後半から登場する勇者パーティーはリムルを敵視または下に見るような描写が多い。この対照的な描写は魔王という存在が作中世界で本来であれば恐れられるということを伝え、人魔共栄の難しさも体現していると考えられる。また、ジュラテンペスト連邦国を敵視する者たちは魔物を嫌っているというよりはリムルが魔王になったことそのものが気に食わないというようにも感じられる。

3.『無職転生Ⅱ ~異世界行ったら本気出す~ 第2クール』(アニメ)
原作:理不尽な孫の手 監督:渋谷亮介 制作:スタジオバインド
シルフィと結ばれ、新たな生活のスタートを切ったルーデウス。披露宴を終え、ノルンとアイシャも合流。ノルンとはひと悶着あったものの問題を解決し順風満帆に近い生活を送っていた。しかし、ギースから一通の手紙が届く。その内容はゼニスが迷宮内で見つかったが救出が困難なため、至急救援を求めるというものであった。諸事情が重なり救出に行くかどうか迷いを見せるルーデウスであったが、ノルンのある姿を見たことで救出に向かうことを決断する。

ノルンの問題、ゼニス救出で共通して描写されていたのは前世との繋がりである。いじめを受けて不登校になった自分、引きこもり続けて親の葬式に顔を出さなかったほど向き合えなかった家族との関係性が描かれている。ノルンの一件でルーデウスが前世での後悔を含めてアドバイスをする姿は今世こそ後悔しないように本気で生き抜くというこの作品のテーマを体現していると感じた。
一方、ゼニス救出から派生する家族との向き合いにはルーデウスの出自が大きく関係しており、問題の複雑さの原因にもなっている。彼は転生者であるために肉体の年齢と精神の年齢に大きな差がある。これは大人から転生し、乳幼児から人生がスタートする異世界転生特有の状態であるが、この状態が息子という意識を希薄化させていると考えられる。これらは父が亡くなるまで息子という自覚を持てていない描写や母の救出に必死になる父とは対照的な冷静な態度や母親という存在の疑問視によって強調されている。両親に対してはどこか家族という意識が薄かった彼が、父の死を通して、今世と前世の家族関係と向き合い新たな家庭を築く姿からは精神的成長が感じられた。

4.『夜のクラゲは泳げない』(アニメ)
監督:竹下良平 脚本:屋久ユウキ 制作:動画工房
何者かになりたいという願いを持ちながらも、周囲に合わせて意見を言うことしかできない量産型女子高校生、光月まひる。ある日、ハロウィンが迫る渋谷で不思議な少女、山ノ内花音と出会う。自分にとってトラウマの象徴であるクラゲの絵を好きと言ってくれる花音に戸惑いながらもどこか惹かれるまひる。匿名シンガーとして活動している花音はこの出会いをきっかけにまひるを自身の音楽制作の仲間に誘う。悩むまひるだったが花音の傍にいれば特別な何かになれると感じ、申し出を了承する。

何者かになりたいという願いを抱えていながらも空気を読んでしまいがちな面やインスタグラムやXを活用した化粧品の情報収集を行うまひるは作中において他キャラよりも女子高生らしさが強調されている。まひるとキウイは活動に際して別名を名乗っており、花音もアイドル時代の呼称が度々出てくるが、それらは序盤において現実の自分と切り離された存在であるように描かれている。しかし、後半になると同一視するような台詞が出てきており、そこから自分に自信を持てるようになったという成長が感じられた。
本作における音楽制作は基本的に顔出しをしないということもあり、アイドルの偶像性に近いものがあると考えられる。例として挙げられるのが第8話で花音のスキャンダルが露呈したときにはライブを行うことが困難になってしまうというエピソードである。顔出しをしていなかったことと過去のアイドル活動が重なり猛批判を受ける様子には、素晴らしい人が歌っているだろうという匿名シンガーへの偶像性があると考えられる。また、ライブの際に現実の人が誰であったとしても自分たちが好きになったJELEEという歌手を信じるファンの人たちは好きという感情を現実から切り離していると思われる。

5.『陰の実力者になりたくて!』(アニメ)
原作:逢沢大介 監督:中西和也 制作:Nexus
幼いころから陰の実力者に憧れ、体現するために修練を続けてきた高校生、影野実。彼は修練の途中、トラックに轢かれてしまい命を落とす。目を開けてみればそこは病院ではなく異世界。素晴らしいことに前世にはなかった魔力まで存在していた。この世界なら前世で成し遂げられなかった陰の実力者ができると考えた彼は秘密裏に準備を進めていく。第一段階として仲間を増やし咄嗟に考えた悪の教団の存在を仄めかすが、その教団は実在していた。

主人公であるシド・カゲノ―は主人公であるにも関わらず、人格がいいとは言えない人物である。目的を達成するためなら手段を選ばない性格のためお金欲しさに盗賊を襲う、悪魔憑きと化していた少女を保護して人体実験を行うなど非人道的な行いが非常に多く、言動もかなりはじけている。しかし、これらはすべて彼が目標とする陰の実力者になるために必要なことである。そのため、行為そのものは目標に至るためのプロセスと捉えながら言動は一種のコメディとして楽しめると考えられる。
本作における魔力と魔法の考え方が他の異世界転生の作品と比較した際に特徴的だと個人的に思った。多くの作品では魔法と言われると炎や氷、風などの属性が存在し、相手に向けて放つものや日常的に使われていることが多い。しかし、本作では魔力や魔法は身体能力やその他感覚を上昇させるものであり、治癒に用いることや炎や氷を放つ場面はほとんどなかった。それゆえに近接戦闘が非常に多く、特に剣の戦闘が多い。この点は他の異世界転生とやや差別化できる部分であると考えられる。また、戦闘描写は引きのアングルを活用しながら見せることで作画の枚数を抑えつつ、迫力のあるものになっていた。


6.『陰の実力者になりたくて!2nd Season』(アニメ)
原作:逢沢大介 監督:中西和也 制作:Nexus
「血の女王」「妖狐」「暴君」の三勢力が統治する無法都市へとやってきたシド。そこはならず者がはびこる弱肉強食の世界であった。吸血鬼の支配者「血の女王」討伐に姉のクレアが奔走するなか、シドはまたとない「陰の実力者」の機会に心を躍らせる。しかし、「血の女王」をめぐる陰謀が動き出し、無法都市は勢力が入り乱れる事態に陥ってしまう。クレアも騒乱に巻き込まれ、シャドウガーデンも独自に行動を開始する。混沌を極める中、シドも人知れずシャドウとしての暗躍を開始する。

無法都市での騒乱において姉であるクレアを助けておきながら、姉に似た人を助けた程度の認識で次の行動を起こす、シャドウガーデンの活動資金として作り上げられた商会を自身の野望のために潰そうとするなど、自己満足を優先する行動が第一期よりも多くなっているように感じた。
本作の特徴の一つとしてシリアスコメディが挙げられる。シャドウ本人が七陰を友達と認識している割には話を聞かないところがあり、話の内容を明後日の方向に解釈することが多い。しかし、部下たちは助けてもらった恩義があることからシャドウを崇拝しており、シャドウの行動や言葉を好意的に解釈してしまう。解釈が異なっているにも関わらず、最後には全てが丸く収まっているという理解しがたい現象はまさにシリアスでありながらコメディだと考える。第二期では貨幣騒動の話が当てはまり、裏切っていたにも関わらず守るためと勘違いされた挙句、隠していた資金を部下に回収されたことを知らずに探すシャドウは主人公らしからぬ滑稽さがあった。

7.『転生王女と天才令嬢の魔法革命』(アニメ)
原作:鴉ぴえろ 監督:玉木慎吾 制作:ディオメディア
パレッティア王国王女、アニスフィア・ウィン・パレッティアには前世の記憶がある。魔法が当たり前に存在する世界に転生し、魔法使いにあこがれるアニスフィアが夢見たのは、魔法で空を飛ぶという、破天荒で非常識なことであった。しかし、魔法が使えないアニスフィアは日夜、キテレツ王女とあだ名されながら、怪しげな研究に明け暮れる。ある夜、お手製魔女帚で空へ飛び立ったアニスフィアが暴走し、飛び込んだのは貴族学院の夜会。そこでは魔法の天才と称される公爵令嬢ユフィリアが婚約破棄を宣言されていた。

王宮百合ファンタジーと謳っている本作だが、ベースの要素として悪役令嬢ものがあると考えられる。公爵令嬢であるユフィリアが婚約者の好きな人に嫌がらせをしたとして婚約破棄を言い渡される場面は悪役令嬢系の物語では典型的な場面であり、要素として象徴的な場面だと考える。その後アニスフィアによって救出されるが、一度悲劇に見舞われた彼女がアニスフィアと関わっていく中で変化していく様子は悪役令嬢系から離れた魅力であると考える。
また、アニスフィアとユフィリアは主人公でありながら性格も能力も対極にいる人物のように描かれている。魔法が使えないアニスに対して、ユフィは魔法に愛された少女と形容されるほど優れた魔法使いであり、常識に囚われない発想をし、破天荒なことでも実行するアニスに対して国家への影響等を考えてしまうユフィは正反対である。最初こそ衝突が多いが、話が進むにつれてお互いに持っていないものに対する羨望が強め、相手にこうあってほしいと考える姿は研究者と助手という枠を超えた関係性へと変化していることを示していると考えた。

8.『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』(アニメ)
原作:燦々SUN 監督:伊藤良太 制作:動画工房
私立征嶺学園。この学園には孤高のお姫様がいた。彼女の名はアリサ・ミハイロヴナ・九条。生徒会に所属する彼女はその美貌と近寄り難さから1年生の二大美人と称されていた。そんな彼女の隣の席に座っているのは、学園一怠惰な生徒、久世政近。彼に対していつも冷ややかな目を向けるアリサだったが、ふとした瞬間にロシア語でデレてくる。伝わっていないと思っている彼女だが、政近はネイティブレベルでそのデレを聞き取ってしまっていた。
気づいていないと思いデレるアリサと気づきながらも平静を装う政近。果たして二人の恋模様はどうなるのか。

本作を視聴していて感じたのは主人公である久世正近が主人公らしくないということである。アーリャとの恋愛関係においては確かに主人公であるのだが、生徒会関係となると途端に一歩引いたような発言が目立つ。特に次期生徒会会長に関する話ではアーリャを立てることが多く裏方に徹していることが多い。政近の立ち位置は陰の主人公といったところであり、あまり表に出ずヒロインを支える姿は珍しい主人公像であると感じた。しかしながら、出しゃばってくるときもありキャラクター像が不明瞭な部分があるとも言える。
また、本作ではキャラクターのギャップが凄まじい。アーリャがロシア語でデレるのもそうだが、異彩を放つのは政近の妹・有希である。彼女は学校では政近の幼馴染として淑女然とした振る舞いをしているが、家で二人きりになれば妹としての立場を全力でアピールし、アーリャと政近が会議をしている時には、ラスボスのような立ち振る舞いをして一人満足するなど、初登場時からは考えられない一面を見せてくる。しかし、このギャップはキャラクターを魅力的に見せるとともに物語にも緩急をつけてくれるものであり、ラブコメというジャンルにおける甘さ回避にも作用していると考えられる。

9.『声優ラジオのウラオモテ』(アニメ)
原作:二月公 監督:橘秀樹 制作:CONNECT
高校生にして新人声優の歌種やすみはオーディションに落ちて気分が落ち込んでいた。そんな彼女のもとにある日、ラジオの話が舞い込む。その内容は偶然にも同じ高校、同じクラスの声優である歌種やすみと夕暮夕陽が教室の空気を届けるというものであった。憧れの夕暮夕陽との共演にテンションが上がるやすみだったが、実際の夕陽はイメージと全く違っていた。オモテとウラで正反対の二人。互いに嫌悪し、嫌味と罵りの嵐を吹き荒らしながら、彼女たちは今日もプロ根性で世界を騙す。

声優の世界の厳しさ、難しさを描いた作品。前半では特に普段の自分と声優としての自分の乖離が多く描かれていた。主人公である二人は普段の生活の自分では売れることが難しいという考えから、違う自分を演じている。ラジオの回数を重ねるにつれて、偽りの自分を演じていていいのか、本当の自分を見せたらファンを失望させてしまうのではないかという苦悩に陥っていくがその様子からは声優という職業への誇りやプロ意識があると感じられる。夕暮夕陽が自分のことをアイドル声優と呼ばれることを嫌い悩む姿はその象徴であり、同時に多くのことを求められるようになった声優という職業の大変さも表していると考えられる。
ライバルに差をつけられたことによる焦燥感やキャスティングの都合によってのオーディションの合格、事務所間の問題など声優の世界で起きる出来事をリアルに描いているが、後半からは成長がメインテーマとなっているように感じる。その結果、自分の実力不足に悩みながらも声優界で生きていくといった感じの物語になり、世界を騙すという最初のコンセプトから逸れてしまったため、面白さが半減していると思った。

10.『負けヒロインが多すぎる!』(アニメ)
原作:雨森たきび 監督:北村翔太郎 制作:A-1pictures
ライトノベル好きの達観系ぼっち・温水和彦は、ある日偶然クラスの人気女子・八奈見杏菜が幼馴染の男子生徒に振られている現場を目撃してしまう。素知らぬふりをしようとする彼だったが、八奈見に見つかってしまい彼女の惚気と愚痴を聞かされる。ファミレス代金を立て替えたことで密かに八奈見と関わりを持つようになった彼だが、その後立て続けに、陸上部の焼塩檸檬、文芸部の小鞠知花という負け感漂う女子たちとも関わることになってしまう。

ラブコメ作品において想い人と結ばれなかった少女たちに焦点をあてた作品。振られた後も相手のことを想い、その幸せを願いながらも隙あらば奪い取ろうなどと考える姿はまさしく負けヒロインである。そしてその姿をさらに強調するのが勝ちヒロインの存在であると考える。本作では振られた女子が自分のことを振った相手と付き合っている女子と絡む描写が多い。一緒にカラオケに行き、付き合い立てカップルの親密さを見せつけられて悔しがる姿や、同窓会での阿吽の呼吸を見て怒り狂う姿、日数が経過してから振られた事実を受け入れて泣く姿などを描くことで負けヒロインであることが丁寧に表現されている。振った振られた後の関係をどうするかという点や付き合い始めた人の悩みや羨望、抱き続けていた好意をどこに向けるかも描かれており高校生らしい青春模様が非常にリアルである。
演出も凝っており、八奈見さんに呼び出された温水のはやる鼓動を路面電車のスピードで表現されている。目のハイライトの消え方やちょっとした仕草で登場人物たちの印象を操作していると感じた。
また、本作の特徴として会話が挙げられる。八奈見さんの少しずれた発言や想定外の言葉に心の中で的確に突っ込み、ある時は小鞠と学校の水道水について熱く語り合う姿が印象的だった。独自のこだわりや発言に対する返答が10年くらい前のライトノベルによくあった会話に近く、その頃の作品をよく見ていた人、読んでいた人にも刺さるようになっていると感じる。

11.『妹さえいればいい。』(アニメ)
原作:平坂読 監督:大沼心 制作:SILVER LINK.
妹という存在に異常に執着し、妹モノの作品ばかりを書き続けている妹バカの小説家・羽島伊月。彼の周囲には同業者の不破春斗と可児那由多、友人の白川京、弟の千尋、税理士にイラストレーター、編集者と様々な人物が集まっている。それぞれ悩みを抱えながらも、ある時はゲームに興じ、ある時はお酒を飲んで酔いつぶれ、またある時は確定申告でダメージを負うという賑やかな日常を送っていた。しかし、そんな彼らを温かく見守る千尋には大きな秘密があった。

作家業というクリエイティブな職種の苦しさ、大変さが描かれている。どうしてもよい描写が書けないときに動物園や水族館に足を運ぶ姿や取材と称して沖縄や北海道へ旅行する姿は自由業の良い点であると同時に、それだけのことをしなければいい作品を作ることが難しいということでもあると考えられる。
本作では作家を大別して二種類いるとしており、市場の傾向を分析して計算して売れる作品を作る凡人と己の感性を武器にして書き続ける天才に分けられている。凡人が天才に焦がれるように、天才も自分の上をいく天才に焦がれることが描かれており、どんな世界でも才能の有無の残酷さがあると感じた。
作中でアニメ化に関する話があり、その際に作画崩壊や新人声優の棒読み演技をSNSで批判されている描写はリアルだった。クリエイターの視点からあえて描くことで消費者側にはない作品への思い入れや熱量が伝わってくる。クリエイターが主人公の物語でこの切り口を用いることでコンテンツあふれるこの世の中で一つの作品に消費者たちがどう向き合うかという問題を暗示していると考えられる。

12.『ロクでなし魔術講師と禁忌経典』(アニメ)
原作:羊太郎 監督:和卜湊 制作:ライデンフィルム
一年間無職で親の脛をかじりながら生活してきた青年グレン・レーダス。堪忍袋の緒が切れた母親によって彼はかつて自分が通っていた帝国学院の非常勤講師に任ぜられてしまう。やる気のない彼は授業もせず寝ているばかりであったが、ある出来事をきっかけに真面目に行うようになる。授業遅れ解消のために学会開催の最中でも行われる授業だったがグレンが姿を現さない。心配する生徒たちだったが、やがて教室の扉が開かれる。しかし姿を現したのは学院に侵入してきたテロリストであった。

学院が主な舞台ということもあって魔法と魔術という、似ているようで異なるものが混同することなく分けられている。それに加えて魔術を世界法則や理論を交えて説明する様子から世界観が練られている作品だと感じた。しかし戦闘となると、その設定を活かしきれていないのがやや残念である。
本作では魔術を扱うことが多いにも関わらず、学生が戦闘に慣れている描写が非常に少ない。そのため、魔術の華々しい一面に憧れを持っている学生が非常に多く、魔術を扱えることの意味を考えていない様子や華々しさの裏に隠された暗黒面を知ったことで怯えを抱く様子が散見される。特に命に関わる戦闘となった瞬間に生きる世界が違うと感じ、恐れ慄き逃げ出す姿はまだ様々な世界を知らない学生という身分を強調していると考える。それと同時に学生たちの無知さは成長を感じさせてくれる要素でもあり、一歩間違えれば道を踏み外す可能性を持つ魔術にどう向き合うかや日の当たる日常と暗く非情な戦闘の世界の境界線を跨げるかという精神面に特に作用していると考えられる。

13.『ホリミヤ』(アニメ)
原作:HERO・萩原ダイスケ 監督:石浜真史 制作:CloverWorks
美人で成績も良く学校ではクラスの中心的存在である堀京子。そんな彼女は家に帰ると、家事や年の離れた弟の面倒に勤しむ毎日を送っていた。ある日、怪我をした弟の創太を見知らぬ男が家に送り届けてきた。お礼のために家に上げて話していると男の正体は同じクラスの根暗男子、宮村伊澄であることが発覚。その姿はクラスにいるときとは全くの別人であった。こうして誰にも知られていない一面の共有者となった二人は徐々に交流を深めていくようになる。

登場人物たちの感情の動きを言葉ではなく、鮮やかな色を使って演出しているのが非常に印象的だった。使用される色に一定の法則が見られず、解釈の方向性が人によって異なりやすい作品だと感じる。
誰しも他人には見せない一面を持っているというのは現実でも同じであるが、その多くは他人に失望されたくない、あるいは関わりたくないというものである。堀の場合が前者に当てはまり宮村は後者に当てはまると考えられる。特に宮村は中学生の時の出来事が尾を引いているせいかどこか近寄り難い雰囲気を纏っていた。後にこれがスクールカーストの問題につながっていくが、その際に宮村が他人と関わるリスクを犯してでも堀のために自分を変えたのは大きな変化だと感じた。
個人的な意見だが、堀さんが普段優しい宮村に罵倒されたいという欲求を抱いている点や宮村が馴染めない学校生活に反発するかのようにピアスを開け刺青を掘っているのは、嫌な自分を隠したい衝動や似合わないことをやらせたらどうなるのかという好奇心を表していると考えた。

14.『君と僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』(アニメ)
原作:細音啓 監督:湊未來・大沼心 制作:SILVER LINK.
科学技術が高度に発達した機械仕掛けの理想郷「帝国」。超常の力を駆使し、“魔女の国”と恐れられる「ネビュリス皇庁」。百年にわたる戦争を続けてきた両国には帝国最高戦力のイスカと“氷禍の魔女”の異名を持つアリスリーゼがいた。戦場で巡り合った二人は命を賭して戦う宿敵となる。国を、家族を、仲間を守るため譲れない矜持をぶつけ合う。しかし、互いの素顔に触れた二人は、お互いの理想に惹かれてしまう。共に歩むことを許されない運命に翻弄されながら、少年と少女は想いを募らせる。

技術で発展してきた帝国と超常の力で発展してきた皇庁は真逆の存在である。帝国側からすれば、技術があれば超常の力は必要なく、皇庁側からすればその逆となる。どこまでも交わることが許されない国家間において惹かれ合う二人はロミオとジュリエットのような状態と表現できる。また、イスカとアリスリーゼは対立する立場に居るが、互いに嫌悪感を抱いてはいない。しかし、国の最高戦は力であり戦場においてはある意味国家の代表となってしまうことがお互いを苦しめていると考える。二人とも理想として戦争を終わらせることを掲げており、実現すれば両国の親交の象徴となると考えられるが、現実はその真逆であり対立の象徴として祭りあげられてしまっている。個人としては歩み寄りを図りたいが、国としては許されることではないという事実が戦争の終わりの難しさと両国における差別の根深さを窺わせる。
その一方でイスカが所属している小隊の面々は敵対しているものの関わるうちに魔女に対しての嫌悪感は薄れていく様子が描かれており、差別意識は国から植え付けられたものであり個々人における敵対の解消は可能であることが示されていると考える。

15.『ひきこまり吸血鬼の悶々』(アニメ)
原作:小林湖底 監督:南川達馬 制作:project No.9
ムルナイト帝国の名門貴族ガンデスブラッド家の令嬢、テラコマリ・ガンデスブラッドは吸血鬼であるが、血が飲めない体質であった。そのため、魔法が使えない、運動ができない、背が伸びないという三重苦に悩まされていた。そんなある日、父親がとんでもない職業を見つけてくる。それは帝国の猛者しかなれない「七紅天将軍」。コマリは断ろうとするが、皇帝直々の任命により断ることはおろか辞めることもできなくなってしまう。本当の実力が露見することも許されない状況のなかコマリはしぶしぶ任務を開始する。

吸血鬼なのに血が飲めないというのはどういうことかと疑問に思ったが、ちゃんとした設定があり納得できた。基本的にコマリが戦うことは少なく、部下が倒していくことで物語は進行していく。しかし、あらかじめ落とし穴を掘って相手をはめる等は、本来の実力がばれないようにするハッタリにしては度が過ぎているようにも感じた。
臆病かつ戦いを好まないコマリは戦闘そのものを苦手としており、戦場での爆発音や剣戟の音が聞こえるだけで委縮してしまうほどである。しかし、部下を従えることや他人を味方につける等の才には恵まれており、他の将軍が一匹狼気質ということもあって大きなアドバンテージになっていると考えられる。また、自分の戦果を挙げることに目が行きがちな将軍たちに比べて、困っている人を助けたいという想いが強いのも他キャラにはない魅力だと考える。
また、コマリは異性よりも同性から好かれている描写が非常に多い。個人的にこの点はライトノベルが原作ということに加えてその中で流行りつつあるガール・ミーツ・ガールの要素を前面に押し出したものではないかと考えた。

16.『落第騎士の英雄譚』(アニメ)
原作:海空りく 監督:大沼心 制作:SILVER LINK.、Nexus
己の魂を魔剣に変えて戦う現代の魔法使い≪魔動騎士≫。その育成を目的とする学園において黒鉄一輝は能力の低さから≪落第騎士≫と呼ばれていた。そんな彼は10年に一人の天才と呼ばれる≪A級騎士≫の異国の皇女、ステラ・ヴァーミリオンから決闘を申し込まれる。承諾した一輝は周囲の予想に反して勝利。彼は魔法ではなく、剣技を極めた異端の実力者であった。騎士の頂点を争う戦いの中で強敵を倒し、駆け上がり始めた一輝は学園の騎士たちから注目されるようになる。

剣を用いた戦いが主であるが、使用する剣には能力があるため迫力のある戦闘シーンを作り出しやすい作風だと思った。特に第12話で学園最強と戦った際の赤い燐光や迸る稲妻は緊迫感と迫力が相まって素晴らしい作画だと感じた。
能力を駆使して多くの生徒が戦う中で剣技を用いる主人公は異端であるのは確かである。しかし、主人公が勝っていく姿は剣技を究極まで突き詰めれば、魔動騎士としての能力が著しく劣っていても戦場においては問題ないということを証明していると考えられる。見方を変えればアイデンティティを奪われかねない問題であり、作品の根幹を揺るがすものであるが、能力と剣技の両方を持ち合わせていなければ本当の意味で魔動騎士ではないと考えることもできる。見下していた存在が学園の成長に大きな影響を与えるという点では実力から学内地位の成り上がり要素もあると考えられる。
設定はファンタジーであるが、実在する国名や起きた事件の名称が登場していることから、ジャンルとしてはロー・ファンタジーに近いとされる。あくまで学園ものであるため、現実世界に近い空気感を出したかったのではないかと思う。

17.『神様のメモ帳』(アニメ)
原作:杉井光 監督:桜美かつし 制作:J.C.STAFF
幼少期から転校を繰り返してきた高校生・藤島鳴海は何の期待も抱かずにこの街へ越してきた。そんな彼は入学した高校で出会った篠崎彩夏に連れてこられたラーメン屋でニートたちと知り合う。その矢先、彼は店主からビルの上の階の一室への配達を頼まれる。その部屋の扉にはNEET探偵事務所と書かれていた。出迎えたのは自らをニート探偵と名乗る少女・アリス。彼女は部屋から出ずにネットを駆使して真実を暴く探偵であった。部屋に入るとモニターにはなぜか数日前、鳴海が居合わせた事件現場が映されていた。

ネットで情報を集めるNEET探偵の元に集まっているせいかニートという職業に対する誇りが非常に強い。主人公の鳴海にまでニートにならないかと誘う、プライドもなく金を貸してほしいなどと頼む人達は筋金入りと言える。
探偵とNEET探偵にきっちりとした区分があり、アリスは探偵と括られることを嫌っている節があるように感じる。それは情報をネットで探すという部分に固執しているからであり、その背景には自分の力で救えたものが世界のどこかにいたという考え方が影響していると考えられる。また、アリスの部屋は外界との物理的接触を絶っている場所でありながら、電子の海で外界と繋がっているという矛盾を抱える場所であると考える。
NEET探偵を自称するだけあり、弁の立つアリスは迂遠な言い回しをすることが多い。個人的に小説という媒体なら素通りしかねないものであると思っているがアニメという媒体において、引っ掛かりを感じるような言い回しをあえて用いることでアリスの立ち位置を不明瞭にし、興味を持たせるようにもなっていると考えた。

18.『お隣の天使様にいつのまにか駄目人間にされていた件』(アニメ)
原作:佐伯さん 監督:王麗花 制作:project.No.9
高校進学をきっかけに一人暮らしを始めた藤宮周はある日、雨の中でずぶ濡れになっている少女を見つける。彼女の名前は椎名真昼。周と同じマンションの隣の部屋に住んでいる少女であった。心配になった周は彼女に傘を貸すが、風邪をひいてしまう。そこから二人の交流は始まった。自堕落な生活を送る周を見かねて、真昼は食事を作り、部屋を掃除し、何かと世話を焼く。隣同士で暮らす二人はゆっくり、少しずつお互いの心を通わせていく。

お互いが関係を進めていくことに慎重であるゆえに進展がスローテンポすぎると感じてしまう。しかし、そのスローテンポはある意味じれったくもあり、本作のような純愛に近い作品ではよい効果を発揮していると考える。
二人の関係性が進展していかない要因の一つとしてお互いの家庭環境と中学生の時の出来事が関係している。真昼の場合は両親が愛のない結婚をした結果、愛情を注がれておらず、自己肯定感が低くなってしまっていること、周は中学生の時に友達だと思っていた同級生によって人間不信及び自信を喪失したことが主な原因である。自分に自信を持つことができない人間同士が関わったため、一歩先に踏み込むことができない状況が出来上がってしまったと思われる。
関係性は進展していかないが、真昼が周に対して安心感を抱いている描写は非常に多い。例えば周の部屋で眠りこけてしまう、耳かきをして甘やかす、さらには周のベッドで眠ってしまうなどがある。付き合っている男女と勘違いされかねない距離感で生いていながら付き合っていないという事実は先述したじれったさにも大きな効果を発揮していると考えられる。

19.『トラぺジウム』(劇場アニメ)
原作:高山一実 監督:篠原正寛 制作:Clover Works 公開:2024年5月10日
高校一年生の東ゆうはアイドルになるために自らに4箇条を課して高校生活を送っていた。半島地域「城州」の東に位置する高校に通うゆうは、他の3つの方角の高校へと足を運び、3人の可愛い女の子と友達になる。その裏には、アイドルグループを結成する目的があった。イベントをこなしながら結束を深めていく4人。そしてついにアイドルデビュープロジェクトの話が舞い込む。順調に夢に向かって階段を登り続けていくが、ゆうはある問題に直面してしまう。

アイドルという職業に対する主人公の憧れやイメージというものが多くの場面で感じられた。彼氏がいてはならない、皆に笑顔を届けることができるという発言はその象徴であり、ハイライトの消えた瞳による演出がアイドルへの妄信を強固にしていると考えられる。
物語の序盤において仲良くなる目的がアイドルであることを明かさない点は亀裂を生む要素であり、それがいつ爆発するのかというのを楽しみにさせる効果も担っていると考えられる。また、ボランティア番組での些細なすれ違いや仕事をするなかでの意識の違いが丁寧に描かれている。これによって順調に進んでいる表に対して裏では亀裂が確実に深まっていることがよくわかり、決壊した際の不和により説得力をもたらしている。
本作では星空が多く登場していた。その理由はタイトルであるトラペジウムがオリオン星雲の中にある四つの重星のことであり、東西南北のメンバーを重ね合わせていたからだと考えられる。
鑑賞後、主人公は友人を利用してアイドルになろうとしたという印象が強く残っていたが悪印象として捉えてない自分がいた。それは、主人公が人は結局自分のために動く生き物と利己的な面の本質を突く想いや後悔して涙を流す場面があったからだと考える。

20.『夏へのトンネル、さよならの出口』(劇場アニメ)
原作:八目迷 監督:田口智久 制作:CLAP 公開:2022年9月9日
ウラシマトンネル。そのトンネルに入ったらどんなほしいものでも手に入るという。しかし、その引き換えに何かを失う。そんな噂が学校で流れていた。つかみどころがないように見えて、過去の事故で心に傷を負っている塔野カオルはその噂に触発されて、トンネルに行ってしまう。そこには偶然にも転校してきたばかりの花城あんずもいた。お互いの欲しいものを手に入れるために二人は協力関係を結ぶ。これは、とある片田舎で起こる郷愁と疾走の夏の物語。

ウラシマトンネルの不気味さが原作よりも強調されているように感じた。壊れた木の柵や、赤い紅葉の道、夕暮れによって周囲も赤くなったトンネル、入って息を吐いたら白くなっているなど、現実とは切り離された場所であることが演出されている。トンネルと表現されているが、実際は洞窟に近い入口をしていたことも不気味さを駆り立てるのに一役買っているように思えた。
終盤、塔野がトンネルに入る日時を8月2日と話し合って決めた際に、部屋のカレンダーが映しだされる。しかし、そのカレンダーは2日以降が破り捨てられている。ほんの一瞬だが、あえて映すことで失ったものを取り戻すまで絶対に帰ってこないという強い意志があるような演出になっている。
花城あんずという少女は他人との接触を嫌い、はっきりとした物言いをするため自分に自信がある人物であるような印象を持つ。しかし、漫画に関しては弱気な一面を持っており、塔野に自分が描いた漫画を読んでもらっている際の貧乏ゆすりや小さなガッツポーズは普段あまり見えない彼女の感情と、高校生らしさが描いてくれていると考えた。

21.『五等分の花嫁*』(劇場アニメ)
原作:春場ねぎ 監督:神保昌登 制作:バイブリーアニメーションスタジオ
公開:2024年9月20日
「落第寸前」「勉強嫌い」の美少女五つ子をアルバイト家庭教師として見事「卒業」まで導いた風太郎。それぞれの道へと歩みを進め、夢を叶えた彼女達だったが新たな問題にぶつかっていた。そんな中、風太郎と五つ子は新婚旅行を兼ねたハワイ旅行を計画する。順調に準備が進んでいたが、ある事件が発覚したことで大慌ての事態に。さらに旅行先のハワイでもトラブルに巻き込まれてしまう。

恋愛や人間関係で悩んでいた高校生の時に比べて、仕事に関する悩みが多くなり成長を感じた。特に旅行中でも上司から度々連絡が入り、返信していた五月は社会人という立場が強調されていると考えた。また、風太郎に関することも各々が折り合いをつけたようで、高校生の頃のように取り合いに発展することもなく、変わらない仲良しな五つ子が描かれていた。
四葉と風太郎の距離感が大きく変わっており、原作終了の時にはどこか遠慮があったのだが、風太郎のことを「面倒くさい」と言ってしまえるくらいに距離感が縮まっている。良好な夫婦関係の証であるのだが、個人的には自己犠牲の精神のもとで行動し続け本心を隠す癖があった四葉がはっきりとした想いを打ち明けたことに成長を感じた。
旅先でのトラブルは五つ子たちの得意分野に応じて解決を試みていくことになるが、それは五つ子という特徴を活かして協力すればどんなことも解決できるということである。自分たちの抱えている問題にも同じことが言えるが、旅先での言葉を胸に自分に自信を持って解決する姿は叶えた夢の先を実現する一歩を踏み出したと捉えることができる。このように家族で、姉妹で協力して乗り越える機会が減っていくのが大人への成長と考えられるが、それは離れ離れになっていくということでもあり、少し寂しく感じてしまった。

22.『義妹生活』(ライトノベル)
作者:三河ごーすと イラスト:Hiten
親の再婚によって一つ屋根の下で一緒に暮らすことになった浅村悠太と綾瀬沙季。両
親の不仲を見てきたため男女関係に慎重な価値観を持つ二人は、歩み寄りすぎず、対立もせず、適度な距離感を保とう約束を交わす。家族の愛情に飢え孤独に努力を重ねてきたために甘え方を知らない沙季と彼女の兄としてどう振る舞えばいいか戸惑う悠太。どこか似た者同士であった二人は次第に互いとの生活に居心地の良さを感じ始めてしまう。

本作は恋愛生活小説と謳われていることもあり、日常的な場面が多く書かれている。毎日の食事の風景やアルバイト先での出来事、登下校の際のモノローグなど現実の高校生も経験すると思われる描写が多く、「日常」の質が高いと感じる。その中での二人の心情の変化も丁寧に書かれており、恋愛という部分に付けて先に進ませようという感じがあまりない。これも「日常」の質の高さの一因と考えられる。
二人の関係の変化を書くため、物語は二人の視点で展開されていくが別々の出来事を書くというわけではなく同じ日の同じ出来事が書かれている。そのため浅村悠太の視点では未解消であった綾瀬沙季の心情が綾瀬沙季の視点になると詳細に語られるという構図になる。これはある意味、作中で二人が行っている価値観を共有することが読者に対しても行われていると考えることができ、読者の皆様、勘違いしないでくださいというメッセージであり、突飛な展開に至らない安心感がある。
義妹に対して、義理の兄に対して特別な感情を抱きかねないことを両者ともにインモラルなこととして捉えている節がある。親のことを思慮する面や社会的にどうなのかを考えているのはその証左であり、そんな二人の距離がどう縮まっていくのか今後も注目である。

23.『誰が勇者を殺したか』(ライトノベル)
作者:駄犬 イラスト:toi8
勇者は魔王を倒した。しかし同時に帰らぬ人となってしまった。
魔王が倒されてから四年の歳月が過ぎた。平穏を手にした王国は亡き勇者を称えるために数々の偉業を文献に編纂する事業を立ち上げる。かつて仲間であった剣聖・レオン、聖女・マリア、賢者・ソロンから勇者の過去と冒険話を聞き進めていく中で、全員が勇者の死の真相について言葉を濁す。
「何故、勇者は死んだのか?」
勇者を殺したのは魔王か、それとも仲間なのか。

勇者の生き様が非常に素晴らしい作品。かつての仲間各々の視点から語られる勇者の成長と努力が美しいと感じた。
それぞれの章にミスリード的な要素があり、そのすべては最終章に集約されている。そのため、ファンタジーでありながらミステリーとしても楽しむことができる。勇者に対する予言も特定個人を指す言葉ではなく、抽象的であるため文字通りに意味を察すれば、その先の展開をさらに楽しめると思った。
作中における断章1は勇者の視点で物語が語られており、それ以外の章は該当する人物による一人称視点で語られる。断章1では勇者の努力と覚悟が語られ、それ以外では周囲の人物による勇者への印象や評価、自分が抱える悩みが回想される。基本的に断章1と仲間の章を交互に繰り返す構成が取られており、先に勇者側を語り、その後に仲間の章にすることで勇者の生き様や周囲の人間への影響などを印象付けていると考えられる。また、断章1ではあえて詳細に語らない仲間との関わりの変化を、仲間それぞれが語る章で詳細に書いている点は読者の興味をより引くことに作用していると考えた。

24.『シャーロック・アカデミー』(ライトノベル)
作者:紙城境介 イラスト:しらび
増加する凶悪犯罪に対抗し、探偵という職業の必要性が飛躍的に高まった現代。日本で唯一「国家探偵資格」を取得できる超難関校・真理峰学園に今年、とある少年と少女が入学した。一人はかつて〈犯罪王〉と称された男の孫・不実崎未咲。もう一人は〈探偵王〉の養女・詩亜・E・ヘーゼルダイン。宿敵とも呼べる存在がまさかの邂逅を果たす。そして始まる学園生活。早速入学式から模擬事件が発生。しかも得点は一番先に正解した詩亜よりも不実崎の方が高かった。

現在、ライトノベル界隈で流行しつつあるジャンル・ミステリーを軸に置いた作品。読者を楽しませようという努力が散りばめられていた。その最たる例が太字の活用と考える。本作における太字は事件を解決するうえで手掛かりとなるものを指している。これによって読者も情報を抽出しながら事件を推理することが可能となっており、叙述トリックやどんでん返しを共に味わい、物語に没入することができる。その情報も見方を変えれば活用できるものが多く、多角的な思考・視点や物事の本質を見通す力が必要な点はまさに推理そのものであり、作者の練り込みが素晴らしいと思った。
詩亜は〈探偵王〉に育てられ、不実崎は〈犯罪王〉の孫と対極に位置する二人だが、精神的な強さや推理の方向性も真逆である。詩亜に足りない視点や知識は不実崎が補う形が取られており、宿敵でありながら協力している様子はこの先の化学反応がどうなるか楽しみにさせてくれる。不実崎が自分に対する世間の目を変えるために探偵を目指し競うのが表のテーマとするなら、犯罪者という存在を深く知り詩亜が成長していくのが裏のテーマだと考える。

25.『経学少女伝』(ライトノベル)
作者:小林湖底 イラスト:あろあ
世界最難関・男性のみ受験可能な試験、科挙。
雷雪蓮は少女でありながら男装して科挙合格を目指す受験生。自分以外にそんなことをする者はいないと思ったが、試験会場でどう見ても女の子である受験生・耿梨玉を発見してしまう。仲良くなった二人は悪徳官僚に支配された世界を正すため、手を取り合い試験地獄へ挑むことにする。性別がばれてしまえば失格、その上試験問題は難問揃い。さらには殺人事件やカンニングの横行など様々なトラブルも発生してしまう。

昔の中国が舞台ということもあり、男尊女卑の考え方が非常に根強い。科挙の試験場が女の来る場所でないという描写や女ではないかという疑惑から正体を暴こうとするなどからもよく伝わってくる。現代では認めがたい価値観であるが、それが逆に昔であることを忠実に演出してくれているとも考えられる。
科挙という試験の難しさを物語るかのように、試験中に暴れだす受験生や一週間ちかい時間をかけての試験が描かれている。なかには不正を働く受験生もおり、そこまでして合格を勝ち取ろうとする描写から当時は大変名誉なことであったことが窺え、リアリティがあると感じた。
二人の目標は悪徳官僚を一掃し、世界を変えることであるがその過程は真逆になると考えられる。雷雪蓮が邪魔な人間をどんな手を使っても蹴落とそうとするのに対して、耿梨玉は悪人すら包み込み許そうとする人間である。雷雪蓮の語りで話が進むため彼女の冷酷さが強調され男性らしい面が際立っているが、耿梨玉は慈愛に溢れた女性的な面が強調されている。この対照的な面が目指すものが同じでも決して道が交わらないと感じさせ、同時にいつかぶつかる不穏さを醸し出していると考えた。

26.『リコリス・リコイル Recovery days』(ライトノベル)
作者:アサウラ イラスト:いむぎみる
リコリス。それは花の名前にして日本の平和を守るエージェントの少女たちの名称。それに所属する井ノ上たきなと錦木千束。彼女たちの昼の顔は喫茶店の看板娘。しかし依頼が入れば、エージェントに大変身する。そんな彼女たちの非日常を綴った原案者自らの書き下ろしノベル。

TVアニメと比較すると日常的な描写が多い印象を受けた。千束がたきなを映画に連れていくために任務をこなしながら奔走する章や風邪を引いた際に看病してもらうなど、DAという部分を抜きにした年相応の少女らしい部分が強調されていると考えた。その一方で任務をこなす話もしっかり存在し、1話を丸ごと使った短編集ならではの緩急のつけ方があると感じた。キャラもそう変わっておらず、千束は常にたきなを振り回し、たきなは仕事中毒のような発言が見受けられ、ミズキは婚活に勤しみ、クルミはマイペースにネットと関わるなどアニメからの地続き感も良かった。
個人的にアニメの方であまりフォーカスされることがなかった喫茶リコリコを訪れる客たちの仕事内容や悩みは書き下ろし特有の要素だと感じた。千束とたきなが事情を聞いて解決に手を貸す姿からは物語の中心が二人であると感じられる。任務なしで話を動かすときには喫茶リコリコの客が関わっており、この点は日常を描こうとする小説ならではと考えた。

27.『私の初恋は恥ずかしすぎて誰にも言えない』(ライトノベル)
作者:伏見つかさ イラスト:かんざきひろ
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、金持ちの家に生まれ美人な姉妹までいる、順風満帆な人生を送る八隅千秋。そんな彼にはある悩みがあった。それは生まれてから一度も恋をしたことがないというもの。高校では女子にちやほやされる日常を送ると誓った翌日、千秋は女の子になってしまっていた。自慢の外見を失って落ち込むも、可愛い容姿に喜ぶ千秋。妹にも見せびらかしに行く千秋だったが、女子にモテモテな双子の妹・楓の身にもとんでもない異変が起きていた。

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』、『エロマンガ先生』を手掛けた作者の新たな作品。三作連続で妹を軸に置いた作品を展開していることから作者のこだわりや業の深さを感じる。
千秋を語り手として話が進んでいくが、読者に語り掛けるかのような語り口や自画自賛する文から自信家である一面や切り替えの早さが窺える。性別が変わろうと自身の目標を揺るがず達成しようとするその姿勢は、性転換が物語の根幹の要素である本作においてシリアスな雰囲気になりかねないものを軽減してくれているのではないかと考える。また、女性になったことで同性と親しい距離で接することも可能になった。いわば千秋が目標にしていた女子にちやほやされる生活に近づいたことになる。しかし、あくまでも男としてちやほやされたいのであり、女性としてでは意味がないという言動を度々繰り返している。このような点からは肉体は女性でも精神的には男性のままであることがわかる。
自身と同じように性転換してしまった妹に対して恋愛感情を抱きかけることをいけないこととして考えているような描写からは、倫理観がしっかりしていることも窺えるが、自分の初恋の相手が妹になってしまう事実を認めたくない複雑な男心も絡んでいるように感じた。

28.『消せる少女』(ライトノベル)
作者:あまさきみりと イラスト:Nagu
ありふれた人生を嫌い、現実逃避のように漫画家という夢を追いかけていた中学生・塔谷北斗。そんな彼の前にユリと名乗る一人の女性が現れた。北斗の漫画のファンを名乗る彼女の感想に励まされ、取材と称して疑似恋愛をしてみる日々を送る中で北斗はいつの間にか励まされていた。同時に嫌っていたはずのありふれた幸せの尊さも知る。しかしある時、彼女の記憶も、想いも、大切なものが少しずつ消えていることを知ってしまう。ありふれた幸せ、ありふれた人生。この残酷な世界で下す決断とは。

教室で意味もなくお喋りに興じるクラスメイト達を見下しているような描写が目立つ北斗は、自分は他人と違うと言い聞かせることで小さな自己を保っていると捉えられる。そしてその一つの形が漫画だったと考えられる。漫画を褒めてくれるユリは自分が思う特別を肯定してくれる存在であり、北斗にとってその存在が大きくなるのは当然と言える。同時にありふれた幸せ、人生とは縁遠い彼女と関わったことや平穏が崩れかけたことは北斗の人生観にも影響を与えている。この点からユリとの関わりは特別に浸らせてくれるものでありながら、自身が否定したありふれた幸せを考え直す意味を持っていたと考えられる。
中盤から終盤にかけてユリとの再会を書く際に余計な描写をせず、時間を飛ばされていた。回想すら挟まないのは時が経過する中で北斗のユリに対する感情が変化していないことを表したのだと考えられる。また、ほとんど明かされることがなかったユリの感情を終盤にすべて持ってきたことで北斗との関わりでユリという存在が大きく変わったことが表現され、読者の心を揺さぶる効果も持っていたと考えられる。
ありふれた幸せや人生の尊さは失った人にしかわからないとよく言われているが、本作における北斗と姉の関係性の変化はまさにそのことを示していると感じた。

29.『ミリは猫の瞳のなかに住んでいる』(ライトノベル)
作者:四季大雅 イラスト:一色
瞳を覗き込むことで過去を読み取る能力を持つ大学生・紙透窈一。退屈な大学生活を送る彼はある日、野良猫の目を通じて未来視の能力を持つ少女・柚葉美里と出会う。猫の瞳越しに過去の世界と会話が成立することに驚くのもつかの間、美里は未来の話を告げる。それはこれから起きる事件と運命を変えるための依頼であった。調査の過程で絆を深めていく二人だったが…。
過去と未来と現在、真実と虚構が交錯する猫の瞳のなかで見えるものとは。

過去と未来と現在が交錯する中で進んでいく物語と窈一と美里の設定が複雑であり、一つ一つの出来事をかみ砕き整理しながら読み進めるのが非常に大変だった。これだけ複雑な物語を終幕に向けてまとめる技量は『私はあなたの涙になりたい』、『バスタブで暮らす』を書いたこの作者ならではのものと感じた。
作中において演劇という要素が深く関わっている。演劇は窈一と美里にとっては互いを繋ぐ欠片の一つとして機能しており、作品全体においては入り乱れる時間軸の象徴に近い感じがある。また、謎を着るという表現やエチュードの内容からは役になりきって物語を創るというよりは謎を解くための舞台装置としての側面があると捉えることもできる。
個人的にボーイ・ミーツ・ガールだけでなく、ミステリーとしての完成度も高いと思った。情報を後出しするタイミングが抜群にうまく、絶望と驚愕を少し落ち着いたところで与えてくる。比喩的かつ抽象的な言い回しはそれらを魅力的にし、読者を混乱へ導いてくれていると考えた。

30.『どうせ、この夏は終わる』(ライトノベル)
作者:野宮有 イラスト:びねつ
人類滅亡の危機が発表されてから二年が経った。人々は恐怖することに疲弊し、どうしようもない現実を忘れて怠惰な日々を送っていた。そんな人類最後の夏休み。夢を投げ出した少年は幼馴染との距離感がわからず戸惑い、スランプ中の文芸部部長は場末のゲームセンターでゾンビを蹴散らす少女に出会い、やさぐれ全開の女子高生は転校生を尾行し、重大な秘密を抱える少女は廃墟マニアの恋人と最後のデートに臨み、ひねくれ者の少年は女子高生監督に弱みを握られて人類最後の映画を撮っていた。

もう二度と訪れないかもしれない夏休み。そんな中で必死にもがき生きようとする高校生たちの物語。個人個人にスポットが当たるため内容に連続性はないが前の章に名前が出てきた人物が次の章では中心になって動くため、章ごとの繋がりを常に意識して読むことができる。その先の最終章にすべての要素が収束していく構成は読者を物語のなかにより引き込むと考えた。
人類が滅ぶということもあってか、多くの人物が精一杯生きることに対して臆病になっている。それは一種の諦観であり、賢く生きるのであれば間違いない選択と言える。しかし、何かに一生懸命になっている人を見て心を奮い立たせる場面や、絶望が希望に変わることを願う描写などからは個々人の未練や焦燥が伝わってくる。これはどの人物でも変わらず描かれているものであり、自分のやりたいこと、生きることあるいは友情を登場人物たちが問い直すのが本作のテーマであると考えられる。
作者が青春を過ごした長崎県が舞台ということもあり、土地や道に関する言及も多い。登場人物たちの青春を描く中で作者自身の青春をどこか重ね合わせているようにも感じた。
2024/09/24(火) 01:04 No.2061 EDIT DEL
加藤隆介 RES
2年 加藤隆介 

1.人形たちの白昼夢 コットンパール
小説 2017年 著者:千早茜

あらすじ
 嘘がつけない男が出会った、嘘ばかりつく女。彼女は、男の持つ人形が見てきたという夢の話を次々に語り始め──。残酷な美しさに彩られた、幻想的な12篇のショートストーリー。

 1作目。コットンパール(Cotton pearl)。

考察
 今作は十二篇にわたる短編集の一作目である。それにあたってこの作品では、これから先のお話を読む心構えを教えてくれていると考える。

 今作には嘘をつけない男と嘘ばかりつく女がいる。女は一晩中作り話をするが、男はそれが嘘であることを気にしない。それが嘘でもその嘘には女の考えや記憶が宿っている。これは小説と同じだと考えた。嘘でできているが、作者の過去やメッセージはある。嘘は女にとっての小説で人形が男にとっての小説だと感じた。それは自分の身を守りながら他者と繋がるための手段である。


2.人形たちの白昼夢 モノクローム
小説 2017年 著者:千早茜

あらすじ
 同上。

 6作目。モノクローム(Monochrome)。

考察
 今作からは言葉を使うことの大切さが感じられる。

 囚人であり永遠に決められたことを繰り返していた罪人たちは全員同じ存在だった。主人公のようにそれぞれ考えていることはあったかもしれないが、それを言葉や文字にすることはない。心の中は違っても同じ存在として働いていた。しかし、男が文字を教えるようになってから違いが表面化した。一度変わりだした罪人たちは言葉を通じて更に変わっていく。自分はこう思う、あいつとは違うといった言葉を使い違いを確認する。

 言葉や文字を使って表さないと、何を考えていても同じものとして扱われてしまう。その怖さとそれに対抗するための言葉の大切さが伝わる作品である。


3.人形たちの白昼夢 マンダリン
小説 2017年 著者:千早茜

あらすじ
 同上。

 9作目。マンダリン(Mandarin)。

考察
 この作品を読むと世間から変だと思われている人の孤独さが想像できる。

 主人公は物を壊すことや死んだ人に対して綺麗だと感じる。人と違う感覚を持った主人公は孤独で、同じく孤独な人の小説を書いている。きっと主人公にとっての芽衣は皇帝にとっての小鳥と同じなのだろう。芽衣はそのうち自分と離れてしまう。しかし、芽衣のことを殺したら一緒にいれるかわりに二度と話せなくなる。主人公の感覚が理解できない読者からするととても恐ろしいことのように感じるが、自分が到底理解できない感覚だからこそ彼の孤独さを想像できる。


4.人形たちの白昼夢 モンデンキント
小説 2017年 著者:千早茜

あらすじ
 同上。

 11作目。モンデンキント(Moon child)。

考察
 今作は自分の好きなものを信じることを肯定してくれる作品である。

 二人が塾と部活をサボって一緒に帰る場面がある。ここで翠は「なんでこんなことになるのかな」という台詞で、教室での生活に不満を漏らしている。たしかに、翠とりっちゃんが二人でいることを良しとせずからかってくる教室は居心地の悪い世界であろう。しかし、りっちゃんは自分にとって綺麗な音楽と翠を信じて生きている。翠は本とりっちゃんを信じきれずに教室での喧騒をまともに受け止めてしまう。

 どんなに情報や雑念が多いときでも一番に信じられる軸を作ること、それ以外のことに惑わされないこと。後悔しないように生きていくには大事なことだと感じた。


5.放課後
小説 1985年 著者:東野圭吾

あらすじ
 校内の更衣室で生徒指導の教師が青酸中毒で死んでいた。先生を2人だけの旅行に誘う問題児、頭脳明晰の美少女・剣道部の主将、先生をナンパするアーチェリー部の主将――犯人候補は続々登場する。そして、運動会の仮装行列で第2の殺人が……。乱歩賞受賞の青春推理。

考察
 本作は著者のデビュー作ということもあり、いかにもミステリーらしい展開になっている。当然、立て続けに起こる事件パートとそれらが繋がる推理パートは本作の面白さを担っている。

 しかし、この作品独特の魅力は女子高という舞台設定にあると考える。本文では、大人の事件の動機を「色と欲と金」、女子高生の事件の動機を「美しいもの、純粋なもの、嘘のないもの」と表現している。その具体例として友情、恋愛、肉体、顔、思い出、夢を挙げている。彼女たちとは歳も性別も違う警察には「なぜこんなことで」と感じるような憎しみ、共鳴が女子高生たちの間に渦巻いている。このことが事件を複雑化させてミステリー的な魅力を高めるのと同時に、女子高生の繋がり意識や脆さ、透明感を与えて個性的な作品になっていると考える。


6.きみの色
映画 2024年 監督:山田尚子
        脚本:吉田玲子

あらすじ
 人のことが色で見えるトツ子は、学校で見かけた美しい色を放つ少女と、古書店で出会った少年とひょんなことからバンドを組むことになる。それぞれ人に言えない悩みを抱える3人は、音楽を通して心を通わせていく。

考察
 話としての面白さよりも、主人公たちの心情を自分に当てはめて前向きになれることがこの作品の魅力だと考える。

 本作は物語の展開がシンプルなだけに、テーマが複数回にわたって強調されている。「ニーバーの祈り」は作中何度も唱えられ、主人公たち三人がそれぞれテーマに沿った行動をする。三人の悩みは極端にされているが、学生が抱えやすい悩みであり共感しやすい。

 自分から動き出す、秘密をうちあけるという点は若い年代に響きそうなテーマだが、「ニーバーの祈り」は過去を沢山積んで年を取った大人たちにこそ響くものじゃないかと感じた。


7.きみの色
小説 2024年 著者:佐野晶

あらすじ
同上
原作である映画を元にノベライズされたもの。

考察
 映画のような映像表現ができない分、小説特有の一人称視点による心情描写が多く、映画で理解できなかったことが深まる。

 映画だとルイときみに比べてトツ子の悩みがあまり深刻に感じられなかった。対して、小説では「色」が他人に伝わらないことの辛さ、バレエへの苦い思い出がトツ子の心情として語られている。これによってトツ子にとっての聖書の言葉の重さや、ルイときみに「色」を話して二人の前でバレエをすることの意味が強く感じられた。

 また、同じ場面を別の人物の視点で再度語ることによって各人物ごとの考えの違いなども分かる。


8.島はぼくらと
小説 2013年 著者:辻村深月

あらすじ
 瀬戸内海に浮かぶ島、冴島。朱里、衣花、源樹、新の四人は島の唯一の同級生。フェリーで本土の高校に通う彼らは卒業と同時に島を出る。ある日、四人は冴島に「幻の脚本」を探しにきたという見知らぬ青年に声をかけられる。淡い恋と友情、大人たちの覚悟。旅立ちの日はもうすぐ。別れるときは笑顔でいよう。

考察
 この作品の魅力は青年たちが自分の力で悩みを解決することだと考える。

 源樹が島の外から来た人間であることは変えようがなく、周りの大人に特殊な家の子供と扱われるのも変えられない。そんな源樹を受け入れるために、幼かった朱里は源樹に「兄弟」になろうと言った。「兄弟」は男同士がなるものなのにも関わらず。衣花が綱元の家の子供で、島から出られないことも変えられない。衣花はそれでも朱里と繋がっていたくて、朱里に「兄弟」になりたいと言った。実際に衣花は村長として島に残りながら、島のルールを変えて朱里と「兄弟」になる。島を守るために制限が多い環境だからこそ、自分たちの力で助け合う四人に勇気をもらえる作品である。


9.天空の蜂
小説 1995年 著者:東野圭吾

あらすじ
 奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき……。驚愕のクライシス、圧倒的な緊追感で魅了する傑作サスペンス。

考察
 作品として魅力を上げるなら一番にメッセージ性をあげたい。しかし、人に読ませるという点で緊張感こそがこの小説の魅力だと感じた。

 今作は文庫にして622ページという厚さながら、作品世界での時間経過は一日に満たない。序盤は事件に関係する各所で話し合いが行われるので、むしろ重大事件の割にゆったりしているといった印象を受けるかもしれない。だが、時間が迫っていくにつれて全ての視点で緊張が高まっていく。警察、航空会社、消防、ヘリコプター技師、犯人の恋人。そんな中で犯人だけは驚くほど冷静である。これから原爆を攻撃するなんて嘘のように犯行を進める。それが正しい行為だと信じている。だからこそ彼のメッセージ性が強調される。

 きっと犯人は他の人物のように慌てふためく時期をとうに超えている。全て他人事だと思っている群衆にどうにか忘れさせないために事件を起こした。最後のセリフを読んてしまうとどうしても「犯行が成功していれば」と思ってしまう。


10.時ひらく
小説 2024年 著者:辻村深月
        著者:伊坂幸太郎
        著者:阿川佐和子
        著者:恩田陸
        著者:柚木麻子
        著者:東野圭吾

あらすじ
 350年の時を刻む老舗デパート『三越』

楽しいときも、悲しいときも
いつでも、むかえてくれる場所

物語の名手たちが奏でる6つのデパートアンソロジー
文庫オリジナル!

制服の採寸に訪れて感じたある予感。ライオンに跨る必勝祈願の言い伝えを試して見えたもの。老いた継母の買い物に付き合ってはぐれてしまった娘。命を宿した物たちが始めた会話。友達とプレゼントを買いに訪れて繋がった時間。亡くなった男が最後に買った土産。歴史あるデパートを舞台に、人気作家6人が紡ぐ心揺さぶる物語。

考察
 実際に存在するデパート三越日本橋店をテーマに著名作家六人が短編を寄せている。どれも個性的な作品だが、三越日本橋店というテーマの特殊性を一番活かしているのは柚木麻子の『七階から愛をこめて』だと考える。

 三越のシンボルであるライオン像にまつわる逸話を採用した作品は他にもある。しかし、その逸話と三越の長い歴史を掛け合わせ過去と現在を繋いだ発想は独創的だった。国内でも国際的にも問題の多い世界だが、これでも少しずつ変わってきている。これからも変えていこうと前向きになれる作品である。


11.氷菓
小説 2001年 著者:米澤穂信

あらすじ
 省エネを信条とする高校一年生、折木奉太郎は、ひょんなことから廃部寸前のクラブ「古典部」に入部することに。 「古典部」で出会った好奇心旺盛なヒロイン、千反田える、中学からの腐れ縁、伊原摩耶花と福部里志。 彼ら4人が神山高校を舞台に、数々の事件を推理していく青春学園ミステリ。

考察
 一般的に考えて、この作品で面白いところは登場人物の小気味よい会話と日常ミステリーだろう。しかし、個人的には角川文庫版p180からの独白が印象的だった。

 この独白で奉太郎は自分のスタイルと合わない熱狂的な生き方に価値を見出す。十年後に過去を思い返して後悔しないように。だが、その後の推理で熱狂的なスタイルのせいで過去に事件があったことを知る。

 奉太郎は省エネな人間から熱を持った人間に変化する機会があった。物語としてはそうなった方が綺麗である。しかし、事件の真相を知った結果奉太郎は今のスタイルも悪くないと感じる。主人公が変化しかけたのに、それを止めたまま終わらせる。これによってとても続きが気になる終わりになっていると感じた。


12.儚い羊たちの祝宴 
小説 2011年 著者:米澤穂信

あらすじ
 夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。

考察
 本作品一番の面白さは、やはりミステリーらしいどんでん返しだろう。だが、そこには他の作品にはない不気味さがある。

 普通であれば、展開が進むごとにゆっくり証拠が集められ、最後に驚きのトリックと犯人が明かされる。対してこの作品では、物語中盤から登場人物の怪しい動きや犯行過程が暗示されていく。読者は誰が何をしようとしているのか次第に察しながら、それを見守ることしかできない。夜中に一人で怖い話を読むようにただ不気味なページを捲っていく。結末も明確に描かれないまま終わってしまう。

 それでいて全部が全部バッドエンドというわけでもない。残酷でありながら主人公の願いが叶う作品として『玉野五十鈴の誉れ』はぜひ読んでほしい。


13.ぼくのメジャースプーン
小説 2006年 著者:辻村深月

あらすじ
 ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった――。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に1度だけ。これはぼくの闘いだ。

考察
 私がこの作品を読んで受けたメッセージは「分かり合えない人と無理に関わる必要はない」ということである。

 一見ひどく消極的で閉鎖的な考えに見える。しかし今作を読んだあとにはとても前向きな選択だと思える。たしかに「分かり合う」というのは時間がかかるものだが、話すたびに離れていくような相手と関わり続けるのは前向きに見えて何も変化しない。分かり合えない人と正面から戦うのではなく、距離をとってそれぞれのやり方で行きていくしかない。

 状況を好転させるには目の前ことを諦めるのも方法の一つだと感じた。

 動物虐待にあたる描写があるので注意。


14.スロウハイツの神様 上 下
小説 2007年 著者:辻村深月

あらすじ
 人気作家チヨダ・コーキの小説で人が死んだーー

あの事件から10年。
アパート「スロウハイツ」ではオーナーである脚本家の赤羽環とコーキ、そして友人たちが共同生活を送っていた。
夢を語り、物語を作る。
好きなことに没頭し、刺激し合っていた6人。
空室だった201号室に、新たな住人がやってくるまでは。

考察
 沢山の魅力がある作品だが、最終章が面白すぎて全部飛んでしまった。

 私は絵や小説など一つのことをずっと続けて何かを完成させたことがない。そういう努力をしたことがある人間なら共感できることが多くて更に楽しめるかもしれない。幼い頃に持った憧れを信じ続けることの大切さを教えてくれ、努力を後押ししてくれる作品だと考える。

 仮にそのような努力をしたことがなくても、つまり作品を享受している側でも出来ることがある。最終章ではそう感じさせる納得感がある。


15.嘘をもうひとつだけ
小説 2000年 著者:東野圭吾

あらすじ
 「嘘をもうひとつだけ」「冷たい灼熱」「第2の希望」「狂った計算」「友の助言」の5編からなる短編集。

考察
 あらすじにある通り、この作品の面白さは人間の悲哀である。大切なものを守るためにそれが犯罪と分かっていながら嘘をつく。ミステリーはそれを描く手段だと考えられる。

 本作はミステリーの短編集でありながら、全て犯人の視点で語られる。とはいえ最初から視点主が犯人だとは分からず、段階的に察せられる。最後に探偵役の加賀によって全てが明らかにされることで、視点主は犯行を認める。このような作りによって犯人が守ろうとするものの大切さ、守るための稚拙ながら懸命な犯行が犯人の心情とともに伝わってくる。これは普通のミステリーのように探偵役が淡々と真相を述べるだけでは生まれない面白さだろう。

 人間の悲哀というテーマを自分の得意なミステリーという形式で表現するために、視点を犯人に設定するという工夫が面白さを生んでいると考えられる。


16.春季限定いちごタルト事件
小説 2004年 著者:米澤穂信

あらすじ
 小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校1年生。きょうも2人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、2人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に駆られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星をつかみとることができるのか? 新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし。

考察
 この作品の魅力は主人公たちの過去・本性を探ることだろう。コメディタッチな学園ものと日常ミステリーは当然人気だが、それは作品の特徴よりも作者の特徴と言える。

 物語で大切なのは心理的な変化・成長だと言われる。小市民シリーズとしても主人公たちの変化は大きな魅力である。しかし、シリーズ初作品である今作は主要人物の深掘りが中心となる。「小市民」とはなにか、なぜそれを目指すのか、二人の約束とはなにか。日常ミステリーを展開しながらこれらの謎を明らかにしていくことで、ただのミステリーに物語が生まれる。今シリーズの基礎となる作品だと考えられる。


17.夏季限定トロピカルパフェ事件
小説 2006年 著者:米澤穂信

あらすじ
 小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。賢しらに名探偵を気取るなどもってのほか。諦念と儀礼的無関心を心の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を! そんな高校2年生・小鳩君の、この夏の運命を左右するのは〈小佐内スイーツセレクション・夏〉!? 待望のシリーズ第2弾。

考察
 この作品の魅力はやはり衝撃的なラストである。衝撃的とはいっても犯罪が起きるわけではなく、二人はつとめて冷静である。

 小鳩君にとって最大の謎は小山内さんのいつもと違う言動だった。わけもなくスイーツめぐりに連れていき、ルール違反である謎解きを扇動する。その謎を暴き小山内さんのルール違反を指摘するが、謎を暴くこと自体が小鳩君のルールに反しており矛盾をかかえてしまう。

 今作では主人公たちに大きな転機が訪れる。それは誘拐という一大事ではなく二人の関係解消である。このことからもシリーズ通しての魅力がミステリーより主人公たちの変化・成長であることがうかがえる。それは青春小説らしさとも言えるだろう。


18.秋季限定栗きんとん事件 上
小説 2009年 著者:米澤穂信

あらすじ
 あの日の放課後、手紙で呼び出されて以降、ぼくの幸せな高校生活は始まった。学校中を二人で巡った文化祭。夜風がちょっと寒かったクリスマス。お正月には揃って初詣。ぼくに「小さな誤解でやきもち焼いて口げんか」みたいな日が来るとは、実際、まるで思っていなかったのだ。――それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを繰り広げてしまい……シリーズ第3弾。

考察
 今作の魅力は小鳩君と小山内さんの変化である。

 前作で関係解消していた二人はそれぞれに小市民の道を歩きだしている。その第一歩として、当然告白を断ることはない。小鳩君は恋人と過ごすことで小市民的な生活を送っていた。しかし、解きたがりな性格が変わることはなく彼女とのすれちがいが生まれる。あれだけ小市民を目指していたが、いざ現実になるとやっぱり謎を解いてしまう。今作では事なきを得たが、コンボの件で小鳩君が現状に限界を感じていることが分かる。
 

19.秋季限定栗きんとん事件 下
小説 2009年 著者:米澤穂信

あらすじ
 ぼくは思わず苦笑する。去年の夏休みに別れたというのに、何だかまた、小佐内さんと向き合っているような気がする。ぼくと小佐内さんの間にあるのが、極上の甘いものをのせた皿か、連続放火事件かという違いはあるけれど……ほんの少しずつ、しかし確実にエスカレートしてゆく連続放火事件に対し、ついに小鳩君は本格的に推理を巡らし始める。小鳩君と小佐内さんの再会はいつ?

考察
 上巻に続いて今作の魅力も小鳩君と小山内さんの変化と言える。

 上巻で感じていた通り小鳩君は彼女と別れることになる。その時の心象は「賽の河原で石を積む夢」として表現されている。民間信仰と異なるのは、石を崩すのが鬼ではなく自分という点である。これは、小市民になるべく嘘を重ねておきながら結局推理してしまうことへの自省だと考えられる。

 自分の性質を無理に変えようとせずに、受け入れてくれる人と共にいるべきというメッセージが感じ取れる。


20.巴里マカロンの謎
小説 2020年 著者:米澤穂信

あらすじ
 11年ぶり、シリーズ最新刊!創元推理文庫オリジナル
そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を。
謎に遭遇しがちな小佐内さんと、結局は謎解きに乗り出す小鳩君。
手に手を取って小市民を目指すふたりの高校生が帰ってきました!

考察
 今作の魅力は純粋な日常ミステリーだと言える。

 主人公の変化・成長が無い理由は、今作が四つの短編からなる番外編だからである。これが番外編であることは時系列が『春季限定いちごタルト事件』と『夏季限定トロピカルパフェ事件』の間に遡っていることから分かる。しかし、本文でそのような注釈が一切なく、作中での時間も九月半ばとなっているため最初は『秋季限定栗きんとん事件』の続きだと思ってしまう。これを単なる説明不足としては面白くない。本文から時系列を推測できる要素を読み取り、納得していくのが本シリーズの読み方だろう。


21.冬季限定ボンボンショコラ事件
小説 2024年 著者:米澤穂信

あらすじ
 小市民を志す小鳩君はある日轢き逃げに遭い、病院に搬送された。目を覚ました彼は、朦朧としながら自分が右足の骨を折っていることを聞かされる。翌日、手術後に警察の聴取を受け、昏々と眠る小鳩君の枕元には、同じく小市民を志す小佐内さんからの「犯人をゆるさない」というメッセージが残されていた。小佐内さんは、どうやら犯人捜しをしているらしい……。冬の巻ついに刊行。

考察
 今作の魅力はやはり主人公たちの変化である。

 これまで暈されていた、二人が小市民を目指すきっかけとなった事件がついに明らかになる。小鳩君は三年ぶりに過去に向き合うことになった。考えてみれば、主人公の変化・成長を書くためには過去の話も重要となる。それを単なる回想ではなく現在の事件と繋げるところはミステリーを活かした面白さがある。

 これまで小鳩君は過去の失敗に囚われ、ネガティブな意味で小市民を目指していた。しかし、過去に区切りをつけて小山内さんとの関係も変わってきた今、前向きな目標に変わるだろう。


22.推し、燃ゆ
小説 2020年 著者:宇佐見りん

あらすじ
 逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を”解釈”することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し――。デビュー作『かか』が第33回三島賞受賞。21歳、圧巻の第二作。

考察
 本文で明言されてはいないが、主人公の描写にはADHDや境界知能へのイメージが浮かんだ。メモしているのに、借りたものを返すことも宿題も忘れる。一、二、三と一画ずつ増えてくのに、四から崩れるのが理解できず覚えられない。バイトでは情報量の多さに圧倒され、床にはものが散らかっている。自分はここまで酷くない、と思いながら共感できるところも多かった。主人公には煩わしいことが多い。切っても切っても伸びてくる爪と毛。自分の思いどおりにしたがる母と姉。偏らない平等な人間関係。そういった煩わしいものに対する不満や反発が、自分が面倒くさいと思ってきたことにも繋がると感じた。多数派の常識をあたかも正解のように押し付けられるのが嫌になりながら、みんなと同じように何かに熱中しないといけないという焦燥が推し活に行き着いたのではないかと考える。


23.月は無慈悲な夜の女王
小説 1966年 著者:ロバート・A・ハインライン
        翻訳:矢野徹

あらすじ
 2076年7月4日、圧政に苦しむ月世界植民地は、地球政府に対し独立を宣言した! 流刑地として、また資源豊かな植民地として、月は地球から一方的に搾取され続けてきた。革命の先頭に立ったのはコンピュータ技術者マニーと、自意識を持つ巨大コンピュータのマイク。だが、一隻の宇宙船も、一発のミサイルも持たぬ月世界人が、強大な地球に立ち向かうためには……ヒューゴー賞受賞に輝くハインライン渾身の傑作SF巨篇。

考察
 私がこの物語から感じたのは、植民地戦争や人種差別などの地球上で起きる諸問題が宇宙規模に拡大されていることであった。わざわざ宇宙規模になっているところには人間の性質の不変さを読み取れる。結局小さな国でも広大な宇宙でも人間がやることは変わらない。

 また、月で起きた革命の首謀者はたった三人であり、劇的な速度で進められた。そんな革命での意思統一の難しさや分裂など多くの問題が描かれている。


24.アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
小説 1968年 著者:フィリップ・K・ディック
        翻訳:浅倉久志

あらすじ
 第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を持っているかどうかが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しかもっていないリックは、本物の動物を手に入れるため、火星から逃亡してきた〈奴隷〉アンドロイド8人の首にかけられた莫大な懸賞金を狙って、決死の狩りをはじめた! 現代SFの旗手ディックが、斬新な着想と華麗な筆致をもちいて描きあげためくるめく白昼夢の世界!
リドリー・スコット監督の名作映画『ブレードランナー』原作。

考察
 この本は他人の心を考えすぎることを止めてくれると感じた。

 今作は海外のSFを読み慣れていない私にとってとても複雑で難解だった。
登場人物が非常に多く、人間もアンドロイドも出てくる上にアンドロイドは自分のことを人間だと思っている。結果的に誰が人間で誰がアンドロイドだったのか全く思い出せなくなっている。しかし、そんな状況こそ今作の世界に入り込めていると言っていいのかもしれない。

 誰が人間で誰がアンドロイドか全く分からないような世界なら、むしろ何も疑う必要がないと考えられる。本音や建前に疲れがちな現代に刺さる作品かもしれない。


25.華氏451度
小説 1953年 著者:レイ・ブラッドベリ
        翻訳:伊藤典夫

あらすじ
 華氏451度──この温度で書物の紙は引火し、そして燃える。451と刻印されたヘルメットをかぶり、昇火器の炎で隠匿されていた書物を焼き尽くす男たち。モンターグも自らの仕事に誇りを持つ、そうした昇火士(ファイアマン)のひとりだった。だがある晩、風変わりな少女とであってから、彼の人生は劇的に変わってゆく……

考察
 今作は平民が上層に対抗するための本だと考える。

 一つの国があったときに、国のトップは知っているのに平民は知らないことというのは沢山ある。トップはその地位を維持するために構造を複雑化させる。平民が理解できないように。同時に平民の理解力を衰退させれば都合が良い。平民の記憶、好奇心がなくなってしまえばトップはずっとトップでいられる。平民にそのことを忘れさせないため、知識と好奇心を忘れないための本が今作だと考えた。現実にファイアマンがいたら真っ先に燃やされそうな本であるが、すでに暗記している人が沢山いるだろう。


26.夜の床屋
小説 2014年 著者:沢村浩輔

あらすじ
 慣れない山道に迷い、無人駅での一泊を余儀なくされた大学生の佐倉と高瀬。だが深夜、高瀬は一軒の理髪店に明かりがともっていることに気がつく。好奇心に駆られた高瀬が、佐倉の制止も聞かず店の扉を開けると……。第4回ミステリーズ!新人賞受賞作「夜の床屋」をはじめ、奇妙な事件に思いがけない結末が待ち受ける、全7編を収録。新鋭による不可思議でチャーミングな連作ミステリ。

考察
 この作品の魅力はとことんまでミステリーというところである。

 一般にミステリー小説というとまず一見解決不可能な事件がある。それを名探偵が論理的に解明するというものである。しかし、実際ミステリーというのは謎である。謎というのは解決しないから謎といえる。今作でも、主人公は謎に近づいて解き明かそうとする。謎は少しずつ解決してきたと思いきや新たな謎を残していく。不思議な法則や関連を残して近づくたびに離れていく。

 謎本来の好奇心を掻き立てる神秘性が存分に出ているのが今作の魅力だろう。


27.変身
小説 1991年 著者:東野圭吾

あらすじ
 平凡な青年・成瀬純一をある日突然、不慮の事故が襲った。そして彼の頭に世界初の脳移植手術が行われた。それまで画家を夢見て、優しい恋人を愛していた純一は、手術後徐々に性格が変わっていくのを、自分ではどうしょうもない。自己崩壊の恐怖に駆られた純一は自分に移植された悩の持主(ドナー)の正体を突き止める。

考察
 人間の死生観や意識について考えざるを得ない作品である。

 今作のように実際に誰かの脳が自分の中で生きることはなくとも、人に大きな影響を受けることは多々ある。東野圭吾が今ここにいないとしても、私がこの本を読み死生観について考えるときに東野圭吾がいないというのは直感的に否定したくなる。

 同時に、他人の意識に影響を与えることが重大なことだという感覚も生まれてきた。言葉や文章が人に与える影響を軽視するとひどい目にあう。パワハラやSNSでの中傷を見ていてもそう感じる。


28.ツナグ
小説 2012年 著者:辻村深月

あらすじ
 死者は、残された生者のためにいるのだ。

一度だけ、逝った人との再会を叶えてくれるとしたら、何を伝えますか――。死者と生者の邂逅がもたらす奇跡。心に染み入る感動の連作長編小説。

考察
 今作の魅力は歩美の変化であるが、その変化をそのまま読者も味わえるのが面白いと感じた。

 結局消えてしまう死者の側からしたら亡くなったあとに会うなんて無意味かもしれないが、生者からすればそれでもなんとか行きていくしかない。大事なのは進むことである。

 この魅力を生んでいるのは何よりも構成である。最後に歩美の視点を持ってくる発想は自分が何かを作るときにも活かせそうだと感じた。


29.猫町
小説 1935年 著者:萩原朔太郎

あらすじ
 東京から北越の温泉に出かけた「私」は,ふとしたことから,「繁華な美しい町」に足を踏みいれる.すると,そこに突如人間の姿をした猫の大集団が…….

考察
 普段見ているものを別の視点から見てみることの面白さが感じられる作品である。

 主人公は道に迷ううちに、いつも歩いているU町に反対の入口から入ってきた。そのせいで自分がU町にいるのを認識できないばかりか、そこがとても風情のある美しい町だと感じる。だが、だんだんとその町全体が非常に繊細で今にも崩れそうだと感じる。これは最初に錯覚した美しい町と、心の中で無意識に浮かんでくるU町との乖離が進むことによる違和感だと考えた。そして何かのきっかけ──今作の場合は黒いネズミをきっかけにここがU町だと気づく。

 気付いたあとにはガッカリするかもしれないが、普段見るものを別の視点から見ることは手軽に新しい発見ができる行為だと知れた。


30.まほろ駅前多田便利軒
小説 2006年 著者:三浦しをん

あらすじ
 まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生・行天春彦が転がり込み、二人は様々な依頼に精を出す。ペット預かりに塾の送迎、納屋の整理……ありふれた依頼のはずが、このコンビにかかると何故かきな臭い状況に。

考察
 この作品で魅力的なのは主人公の悪意だと考えた。

 最初は行天が変人で多田がまともという認識で読んでいた。実際多田はまともな人間だろう。だからこそ多田が悪意を自白するとき妙にリアリティがあった。まともな人間が主人公であるということはそれなりの悪意もあるものだと。しかも多田の悪意は結果が惨事だったとしてもやったことは大したことではなかった。それを結果の悲惨さに怯み、一生引きずっているのがいかにもまともな人間らしい。

 最後には昔悪意の矛先であった行天に影響されて変わりだすのが綺麗な終わり方だと感じた。
2024/09/24(火) 01:04 No.2060 EDIT DEL
中村 果凜 RES
3年 中村 果凜

1. 怪獣8号(アニメ)
怪獣が日常を脅かす世界。民間清掃会社で働く日比野カフカは、後輩である市川レノとの出会いをきっかけに、諦めかけていた日本防衛隊に入隊するという夢を叶える決意をする。その矢先、謎の生物に寄生されたことで、怪獣8号へ変身する力を身につけてしまう。 32歳である主人公が若者に負けるどころか、1番目標に向かって挑み続ける姿勢は、非常に主人公らしく、みている側が応援したくなると感じる。いつ主人公が怪獣8号であると明かさられるのかというドキドキと、主人公の見せる最強演出への期待が1期のストーリーを通して続いていて、飽きさせない展開であった。オープニング映像でかなりグロさが強調されていたため、そこに嫌悪感を抱く視聴者もいるかと思うが、本編はオープニングほどそのような演出がなかった。第2期が放送決定しているので、続きを楽しみに待ちたいと思う。

2. 新しい上司はど天然(アニメ)
上司からのパワハラで精神と胃をやられ、広告代理店の営業職に転職した桃瀬。しかし過去のトラウマが原因で「新しい上司もまたパワハラ上司だったらどうしよう……」と、初日早々に胃痛で動けなくなってしまう。そんな時、一緒に外回り中だった新しい上司・白崎がまさかの行動をとる。予想外の上司の「ど天然」行動に癒されるお仕事コメディ。 仕事が早く、人、動物に優しく思いやりのある白崎主任の格好良さと行動の可愛さ面白さがギャップとなり、短編の物語全てがほっこりしたものになっている。理想的な職場、人間関係が描かれ、ほのぼのするストーリーのなかには感動する場面、笑える場面があり、楽しみながら視聴した。このような職場で働きたい、こんな上司がいたらいいなと思う反面、パワハラ上司に苦しめられたらどうしよう、ブラック企業で働くことになるかもしれないという不安を持ったが、これは就活中である今みたからであると思われる。

3. 鬼滅の刃 柱稽古編(アニメ)
刀鍛冶の里にて上弦の鬼二体の強襲にあった炭治郎たち。玄弥や二人の柱との共闘でこれらを撃退した戦いは、禰豆子が太陽を克服し収束した。鬼として初めて日の光を浴びても消滅しない存在となった禰豆子は、炭治郎の禰豆子を人間に戻す念願に近づいたと同時に、太陽の克服を目論む鬼の元凶、鬼舞辻無惨の標的となったことを意味する。これを受けて鬼殺隊は、来る無惨たち鬼との戦いに備え全鬼殺隊員を招集した大規模な訓練、柱稽古を開催する。炭治郎たち隊員は、柱たちによる厳しい稽古に身を 投じることとなる。 全8話のなかで、柱がメインに描かれており、そのなかには今までのシリーズであまり登場していなかった悲鳴嶼行冥をはじめとするキャラクターが多く活躍していた。また、冨岡義勇の過去や善逸の覚醒など、短い話数ながらも内容は盛りだくさんであった。特に8話のお館様と鬼舞辻の邂逅のシーンや、無限城の作画、演出のクオリティが凄まじい。マンガでは9話分とのことで、若干見ていて引き伸ばしているという風に感じる部分があったものの、修行シーンが入ることで、決戦に向かっていると感じるものとなったと考える。
4. 着信アリ (映画)
携帯電話に不気味な着信音がなり、本人の死を予告する謎のメッセージが入る。 女子大生の由美を取り巻く友人たちに次々と呪いの着信が入り、恐怖が広がっていく。 携帯電話の着信という身近なものが題材となっており、リアルな恐怖心が沸いた。現代のものがトリガーとなるというのは、画期的であると感じる。説明不足である点や理解に時間がかかる箇所があったため、どうしてそうなったのだろうという疑問が残る場面がいくつかあった。また、ポルターガイスト現象が序盤は多かったが、最後の方は物理的なものに変わっていった点がホラー要素を感じられず少し残念だった。しかし、含みのある最後は先の展開を予想させられ、面白いと感じた。

5. 東京リベンジャーズ 聖夜決戦編
戻った未来で稀咲鉄太に撃たれたタケミチこと花垣武道は、羽宮一虎に助けられる。一虎は稀咲の暴力・黒龍の金がマイキーを巨悪にしたと言う。過去に戻った途端、タケミチは東卍の弍番隊副隊長・柴八戒と意気投合。だが八戒の兄は黒龍十代目の総長・柴 大寿であり、成り行きで側近2人であるココ、イヌピーと大寿本人に絡まれてしまう。八戒はタケミチを助けるために「東卍をやめる」と宣言。また、八戒は大寿のDVが続くと確信し「大寿を殺す」と心に決める。納得行かないタケミチと千冬は、不本意ながら稀咲と半間 修二と一時的に手を組み、八戒による大寿殺害を阻止することに。クリスチャンの大寿が年に1回だけ単独行動を取る12月25日の深夜、渋谷の宇田川キリスト教会にて決戦が行われる。 今までのシリーズとは違って、チームの対立がメインではなく、家族がテーマであった。また、決戦が始まり、主人公たちがボロボロになった終盤でようやくマイキーが登場したことから、設定的に強すぎるのではないかと感じた。シリーズのなかで、聖夜決戦編のみが死者が出ないという点について、テーマが家族という部分が強く関わっているのではないかと考えた。

6. 東京リベンジャーズ 天竺編
変わり果てた東京卍會を救うため、 12年前にタイムリープして黒龍との 聖夜決戦を勝利に導いた花垣武道。 裏切り者の稀咲鉄太を除名することにも成功したが、 なぜか現代の状況は悪化する一方だった。 決意を新たに再びタイムリープしたある日、 東京卍會は天竺と名乗るチームの襲撃を受けてしまう。 混乱するタケミチの前に現れたのは、 天竺の特攻服を纏った稀咲だった。 東卍史上最大にして“最後”の抗争に向けて、 リベンジは続く。 天竺総長の黒川イザナが、最後の最後に自分の大切なものに気づくことができた、というストーリーは良かったと思うが、稀咲をはじめとした天竺幹部の行動があまりにも酷いという印象を受けた。特に、怪我の具合や死者が3人も出るというのは、話がかなり重くなったと感じさせる。稀咲の動機や結末が呆気ないと感じた。また、稀咲がいなくなった今後の展開が非常に気になる。
7. ブルーロック エピソード凪 (アニメ映画)
「めんどくさい」が口グセの高校2年生・凪誠士郎は、日々を無気力に生きていた。 W杯優勝を夢見る同級生の御影玲王が、その才能を見つけだすまでは。 玲王に誘われるがままにサッカーを始めた凪は、圧倒的なサッカーセンスを発揮。 ある日、ブルーロック(青い監獄)プロジェクトの招待状が届く。 そこで待ち受けていたのは、全国から集められた選りすぐりのストライカーたちとの出会いだった。 玲王とはじめた世界一への挑戦が、凪をまだ見ぬ世界へと連れて行く。 テレビ版のブルーロックの凪視点の話であった。原作よりもテンポよく話が進むため、アニメ版のダイジェストとしてもみることができるのではないだろうか。凪と玲王の始まりから仲違いまでが多く描かれており、ある意味では、恋愛ストーリーのようなものなのではないかと感じた。主題歌であるNissyとSKY-HIによる『Stomy』は、それぞれが凪視点、玲王視点を歌っており、話の内容とかなり合致していた。

8. ロストワールド/ジュラシック・パーク(洋画)
ジュラシック・パークでの悲劇から4年。イアン・マルコム博士はインジェン社の会長ハモンドに呼び出され、ジュラシック・パークに恐竜を供給するための遺伝子工場「サイトB」がイスラ・ソルナ島にあることを知らされる。閉鎖されたまま放置された島では、恐竜たちが繁殖・野生化しているという。ハモンドから島の調査を依頼されたイアンは危険であることを理由に断ろうとするが、恋人である古生物学者サラが既に現地入りしていることを知り、彼女を助けに行くことに。しかしハモンドの甥ルドローはパークの再建を企てており、島に恐竜ハンターたちを送り込んでいた。 1作目よりもアクションが少なく、あまりハラハラする展開がなかったことが残念だった。Tレックスの親子の絆を描くことにより、恐竜も命ある動物であるという印象付けがなされているように感じ、また、そこに感動があるように思う。前作から続いて登場する俳優の方がいたことで、繋がりをより強く感じた。雨が降っていたり密林であったり夜であったりする場面が非常に多く、全体的に暗かったため、何をしているのかよく分からないシーンがあった。

9. ジュラシックワールド(洋画)
恐竜と触れ合うことができるテーマパーク「ジュラシック・ワールド」がオープンし、連日多くの観光客で賑わっていた。施設の監督官であるクレアは、自身の甥であるザックとグレイが来園するも、新種の恐竜の準備のために多忙で相手ができない。そんな中、遺伝子組み換え操作によって創り出された巨大で凶暴な恐竜インドミナス・レックスが逃げ出し、未曾有の緊急事態となる。 叔母であるクレアは、最初、恐竜や甥達への関心が非常に薄いとわかるような場面が強調的に描かれるものの、話が進むにつれて興味、愛情が沸いていくのが伝わる。また、ザックとグレイも兄弟の絆や、オーウェンとラプトルの絆が描かれ、アクションや恐竜の迫力だけでない面白さがあった。

10. 傷物語 (アニメ映画)
高校二年生と三年生の狭間である春休み。阿良々木暦は、血も凍るような美女と遭遇する。彼女は自らを、鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと名乗った。四肢を失い死に瀕していたキスショットは、暦に助けを求める。恐怖と混乱、そして葛藤の末に、暦は彼女を救うため自らの血を与える。そして次に目が覚めたとき、暦はキスショットの眷属となっていた。暦は吸血鬼から人間に戻りたいと望む。 だが、そのためにはキスショットが力を完全に取り戻す必要があった。交渉人をつとめる忍野メメが間に立ち、暦は失われた彼女の四肢を奪い返すべく、吸血鬼退治の専門家三人に挑むことになる。 総集編ということもあり、原作である西尾維新による小説や、アニメ、三部作として公開された映画とは異なり、様々な場面がカットされていた。特に、吸血鬼退治の専門家との戦闘シーンがかなり短縮されており、その分最初の出会う前のシーンがかなり長くなっているように感じた。ギャグシーンもほぼ省略されていたため、全体的にシリアスなイメージが強く残る映画であるという印象を受ける。また、主人公の同級生である羽川翼のイメージが、原作や他のシリーズを知っているかどうかでかなり変わる作品だった。どうして主人公に協力するのか等、謎が残るような話の流れだったため、もう少し主人公との絡みや説明があっても良かったのではないかと考える。

11. 彼女と彼女の猫 (アニメ映画)
ある夏の一番暑い日、彼女と飼い猫である“僕"の暮らしが始まった。彼女は短大の卒業を控え就職活動に追われる中、家族、友達、将来…いろいろなことがうまくいかず、立ち止まってしまいそうになる。そんな彼女を“僕”は見守っていたいと思っていた…。 猫である"僕"視点で話が進み、出会いと別れが描かれる。彼女と"僕"は言葉が通じないものの、幼い頃から傍にいて心配しながら見守っているという温かさが、音楽と共に伝わる。その一方で飼い主である彼女の状況がかなり悪く、心配になるほどであった。猫の動きや年齢と共に変わっていく様子が、非常にリアルに描かれていた。また、短編映画だからこそ、猫の寿命の短さをより感じた。犬や猫等のペットを飼っている人はさらに感情移入できるのではないだろうか。

12. つみきのいえ(アニメ)
海面が上昇したことで水没しつつある街にひとり人残り、まるで塔のようにそびえ立った家で暮らしている老人がいた。彼は家が沈みかけるたびに、積み木のように上へ上へと家を建て増しすることで難をしのぎつつも穏やかに暮らしていた。そんなある日、彼はお気に入りのパイプを海中へと落としてしまう。それを拾うために彼はダイバー姿になって海中へと潜っていくが、やがて彼はかつて共に暮らしていた家族との思い出を回想していく。 一切セリフがないが、音楽によっておじいさんの感情が伝えられる。おじいさんの人生と共に積み上げられたつみきのいえと共に思い返される記憶が、悲しげな音楽と美しい絵によって描かれ、心が揺さぶられる作品だった。思い出に対しておじいさんがどのような気持ちであるのかということがしっかりと伝えられていることに驚いた。自分で重ねてきたつみきのいえごと思い出を大切にするおじいさんの姿に切なさや感動を感じる。

13. 准教授・高槻彰良の推察(小説)
大学生である主人公深町と民俗学を研究している准教授高槻のサスペンスファンタジー。 深町は人の嘘を聞き分けられる能力を持ち、故に人を信じられない。そんな彼が出会ったのは全く嘘をつかない准教授だった。 高槻は研究の為に日々妖怪話を集めその真偽を確かめるも、どれも嘘や人が起こした事件であり本物の怪異に出会うことが無かった。しかし深町と高槻はそれぞれに人の所業では無い、怪異としか言い表しようのない体験を過去に持つ。自分達が過去に体験した原因は怪異か人か、実際は何だったのか。それを知る為に奔走する2人の物語。 作中の怪談の殆どが人によるものであり、ホラーかと背筋をぞくぞくとさせながら読むと最後人の狂気に当てられる。シリーズ物であり1冊のページ数が少ない為手軽に他と違う読後感を感じられる小説だ。

14. わたしは壁になりたい(漫画)
契約結婚した無性愛者の妻と同性愛者の夫の同棲生活をほのぼのとした柔らかいタッチで描いた漫画。 世間とのギャップに苦しみながらお互いを支え合い同棲生活をする様を描くことで、性的マイノリティの生きづらさとそのなかで出会う人々の温かさを感じさせている。他人との同居の難しさに四苦八苦しながらも、笑って日々を過ごせるように努力する彼らから、恋愛観に関係なく人との付き合いの大切さを学べるだろう。

15. 青に、ふれる。(漫画)
生まれつきの大きなアザを顔に持つ女子高生と、人の顔を判別できない相貌失認の担任教師の話。 自分自身であると共に周りから気を使われる対象であったアザを持つ主人公が人の機微に聡く高度な対人会話スキルを育てていたり、人の顔が分からない為に教師であるのに人とコミュニケーションをとる以前の問題を山のように抱えていたり。自分に足りないものを持っていて完璧に思えるような人間もその他の所で欠陥や問題を抱えて悩んでいる。お互いに不安を正直に打ち明け、補い合っていくことが大切であると読者に再認識させるストーリーである。

16. ちいかわ(アニメ)
ちいかわとその友達のハチワレ、うさぎが送る日常を一話完結という形で描いた物語。近くに沸くお菓子などの食べ物に関する話が多いが、仕事で収入を得て暮らしているという点や、ちいかわ達が命の危険に遭う話が描かれるという点において、シビアな世界観であることがわかる。個性の強いキャラクターのかわいさやほのぼのとした絵柄、とはギャップのある世界の根幹に関わる長編シリーズがあり、ただの可愛いキャラクターによるほのぼのするストーリーというという点が、人気の理由なのではないかと考える。

17. すみっコぐらし (アニメ)
ねこ、とんかつ・えびふらいのしっぽ、とかげ、しろくま、ぺんぎん?のそれぞれの過去のエピソードや、どんな風に出会ってすみっこにあつまってきたのかなど、すみっコたちの気持ちと空模様をリンクしながら綴られる。 隅にいるだけのキャラクターだと思いきや、重い過去を持っていたり、目標があったりとすみっこ達のかわいい意外な設定を知ることができる。一切セリフがなく、ナレーションにより優しく語られるストーリーは、時に感動するようなシーンがあり、少し考えさせられた。

18. すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ (アニメ映画)
ある日すみっコたちは、お気に入りのおみせ「喫茶すみっコ」の地下室で、古くなった一冊のとびだす絵本をみつける。 絵本を眺めていると、突然しかけが動き出し、絵本に吸い込まれてしまうすみっコたち。すると、どこからきたのか、自分がだれなのかもわからない、ひとりぼっちのひよこと出会う。新しいなかまのおうちを探すために、すみっコたちはひとはだ脱ぐことを決意する。 絵本の世界をめぐる旅が今始まる。 人魚姫や桃太郎、マッチ売りの少女などの様々な童話の世界が登場する。65分の映画のなかで、すみっコ達のセリフは一切なく、少々のナレーションで話が進む。しかし、効果音や表情で簡単に読み取ることができ、また、子供向けのためということもあり、かなりわかりやすいストーリーである。長い間、すみっコ達のかわいらしい姿にほのぼのするという話の展開が続くが、終盤になると、ひみつのコであるひよこの謎が明らかになると共に、すみっコ達の決断に感動させられる。終わりの切なさがあるものの、双方納得のいく形での結末と、心温まるひよこへ向けたすみっこ達の行動は、良い結末であった。

19. トリマニア (漫画) トリマニア共和国。そこは世界で唯一、背中に翼を持つ人々が住まう国。そんな国に留学に来た少女・あかりを中心に、一途な愛を貫くカラス、自身の恋に素直になれないカモメ、恋を傍観しすぎて前に進めないハトなど、トリマニアの人々は人生に悩みながら生きていく。 シュールな設定のキャラクターと複雑な人間関係が描かれる、とても不思議な世界観の漫画。キャラクターの鋭い指摘は、夢や希望が全くないことが多く、その毒気が心に刺さる。ただの日常系漫画ではなく、少女漫画要素も強くあることに、更なる面白さがあるのではないかと考える。

19. PUI PUI モルカー (アニメ)
アニメの舞台は、モルモットの車「モルカー」がいる世界で、人間とモルカーが共存している様を描いた日常系アニメとなっている。 ナレーションなどは一切なく、終始動きのみで話が展開され、ふわふわのフェルト生地で作られた 「モルカー」の人形を、1コマずつ撮影するストップモーションアニメの手法で制作されている。 1話ごとに変わるメインのモルカーによる、ダイナミックな展開、社会風刺とも取れる皮肉など、面白さが多く、視聴者を飽きさせない。また、フェルト生地だからこそのふわふわ感が非常にかわいらしく、どんな行動を取っていてもあまり憎めないような演出に繋がっていると感じた。

20. トナリはなにを食う人ぞ(漫画)
都内の大学へ進学し、一人暮らしを始めた稲葉すずな。大学デビューを目指してはりきるも、生活力のなさから上京早々金欠で行き倒れかける。そこを救ってくれたのが、マンションのお隣で大学のクラスメイト・瀬戸晴海。以来、すずなは瀬戸に料理を教わる日々を送る。 料理の腕前と女子力を向上させながら瀬戸と親交を深めていく、癒し系ラブストーリー。 料理を作るシーンや食べるシーンが多い。また、レシピや見た目までかなり詳しく説明されており、イラストの再現度も高いため、読んでいるだけでお腹がすいてくる。少女漫画でグルメがメインの物語はあまり見かけないため、新鮮な気持ちで読むことができる。また、あまり恋愛要素がそこまで強くないというのもこの漫画の魅力であると考える。

21. HUNTER × HUNTER38巻 (漫画)
暗黒大陸を目指す船内での三つ巴のマフィア抗争は激化。2つの組が共闘し、さらにヒソカを追う幻影旅団も抗争に加わり、エイ=イ一家を狩り始める。その最中、ノブナガは幻影旅団結成のいきさつを追懐する。 幻影旅団とは、2話、18話と序盤から名称が登場する盗賊の集団であり、主人公の仲間であるクラピカの宿敵である。2000年〜2001年に連載されたヨークシン編で活躍した彼らの過去が、20年以上の時を経てようやく明かされる。幻影旅団は、極悪非道の集団として説明されるが、作中に登場する彼らは根っからの悪人ではないような印象があり、どのような過去があるのかというのはファンの間で謎とされていた。それがようやく明かされ、今後の展開が期待される。また、主人公であるゴンが表紙に描かれているが、作中で一切登場しないという点について、作者からも本書で言及されているが、いつになったら再登場するのか気になるところである。

22. 『世界でいちばん透きとおった物語』 杉井光(小説)
出会った事も無い父親の遺作を探すとある青年を描いた小説。主人公が遺作を探す中で読者はいくつもの謎に包まれる事になるが貴方はそれを全て解けるだろうか。 ネタバレ厳禁、電子書籍化不可能と銘打つこの作品。単行本化もされておらず紙の文庫本だけの販売。ネタバレ厳禁なので内容を説明することも自分が感動した話をすることも出来ない。それでも40万部売れている事はこの作品の人気を表していると言えるだろう。授業内の作品紹介で知り、ネタバレもされたうえで読んだが、内容を知った上で改めて秘密について考えるというのも面白かった。
23. 北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし(小説)
極寒の地を治める伯爵・リツハルド。男前の元軍人・ジークリンデ。彼女の鋭い眼差しに心奪われたリツハルドは、思わずプロポーズをする。一目惚れからはじまる、1年間のお試し婚。ソリを駆ってトナカイを狩り、解体・仕分け・熟成。ベリーを摘み、保存食に蝋燭、伝統工芸品も作る合間に、凍結湖で魚釣り。自給自足な狩猟民族的スローライフを通して、奥手な2人は無事、正式な夫婦になれるのか。オーロラ輝く辺境ではじまる、不器用夫婦(仮)のほのぼの物語。 日本最大級のライトノベルコンテストである「第3回なろう(小説家になろう)コン大賞、金賞受賞作。雪国の暮らしが非常に丁寧に描かれる。料理がとても美味しそうであったり、自給自足の辛さとだからこその達成感がしっかりと描かれたりしているところから、読了後にじゅうぶんな満足感がある。また、移住してくるヒロインが軍人であるからこそ、極寒の地に耐えられるというストーリーの始まりによく納得できるため、なろう小説でよくある矛盾設定ではないので、とても理解しやすく納得できるものである。2人の関係がどんどん深まっていく様子が伝わり、非常に暖かい気持ちになる物語である。

25. 18trip(ゲーム) リベル・エンタテインメントとポニーキャニオンが共同で開発した、近未来の横浜「HAMA18区」を舞台に、"旅"をテーマにしたおもてなしアドベンチャーゲーム。 完全フルボイスのメインストーリーは、LIVE2Dでキャラクターがいきいきと動き、キャラクターの感情がリアルに伝わるのも相まって、感情移入しやすいものになっている。コメディとシリアスの差が激しく、質も量も申し分ない内容である。各観光区の区長達が時にいがみ合い時に協力して目標を達成し、絆を深めていくが、そこに至るまでの障害の癖が強く、読んでいて非常に面白い。また、旅というテーマに合わせ、現実の観光地とリンクした場所やものが登場するため、聖地巡礼を楽しむことができる点も魅力である。視覚や聴覚、そして現実世界を楽しませるゲームとなっており、ゲーム内に登場する観光客だけでなく、プレイヤーである私たちもおもてなしされている気分を味わうことができる。

26. 『ゆびさきと恋々』(漫画)
聴覚障害をもつ女子大生雪と世界を駆け巡る男子大学生逸臣の恋愛漫画。 生活を送る中で聞こえないことによる初対面の人に感じる壁が逸臣には無かった。それはおそらく逸臣がこれまで言語に関係なくコミュニケーションをとってきた経験からなのだろう。純粋な少女漫画と同じように恋愛を楽しみながら、ギャップのある人間同士の認識のすり合わせや歩み寄る意識の大切さを感じられる作品だ。聴覚障害というテーマが無かったとしても面白い作品だからこそ、ストーリーの中に上手く取り入れられてることで私達が人と関わる上でぶつかる壁と聴覚障害は何ら変わりのないものなのだと思わせてくれる。興味関心の無かった人にも広く周知してくれる作品になっている。

27. ネト充のススメ(アニメ)
会社を辞めて、自らニートになることを決意した盛岡森子、30歳。現実よりもネット世界を充実させるべく、イケメンキャラの“林”としてネトゲを開始する。自称“エリートニート”森子のネト充生活が始まる。 ゲーム内の世界と現実世界が徐々に交錯していくストーリーは、少し無理やりなところが感じられたが、もしかして、と思わせるような演出がみられ、ワクワクした。現実世界では女性だがゲーム内では男性、現実世界では男性だがゲーム内では女性のそれぞれのキャラクターが恋に落ちるのは、面白い展開であった。現実とゲームでは異なる関係性や距離感にもどかしい気持ちになりながらも、ドキドキする場面が多く、心が動かされながらみることができる作品であった。

28. Ib (ゲーム)
kouri氏による美術館を舞台とした探索ホラーアドベンチャーゲーム。両親とゲルテナ展を観に美術館に訪れた少女のイヴ。様々な作品を観ていたイヴだが、ふと気がつくとひとりぼっちになっていた。誰かいないか探し回っていると、次々に美術館に異変が起こる。 プレイヤーはイヴとなり、美術館から脱出するため探索していくことになる。そこには無数のギミックが仕掛けられており、周辺を調べて必要なアイテムを見つけ出し、パズルのようなギミックを解きながら先へと進んでいく。道中では、ギャリーとメアリーのふたりと出会う。彼らとともに行動することになるが、会話や行動の選択肢によって結末が変わっていく。 難易度の絶妙な謎解きの作り込みの数々や、不気味な雰囲気がありつつ可愛らしいピクセルアート、美しい音楽によって、プレイヤーは引き込まれる。エンディングが複数あったり、周回向けの要素があったりする点も魅力である。

29. 星屑の王子様(漫画)
不夜城・新宿歌舞伎町。欲望渦巻くこの街にきらめく、愛と狂騒を金に換えるホストと呼ばれる男たち。空前のホストブームのさなか、ナンバーワンたちの日常は、常識も倫理も超越した事件やトラブルで溢れている。シャンパンの泡のように刹那的で煌びやかで、時に残酷で狂気に満ちた男たちの生き様を描く、超新宿系サディスティックコメディ。 歌舞伎町のきらびやかな面だけでなく非常にダークな現実がしっかりとわかりやすく描かれている。救いようのないほどに性格が悪いキャラクターが大勢登場する。内容は重すぎることは全くないが、軽いタッチで生々しく描かれるホストを中心とした世界は、この世界の厳しさを伝え、安易な気持ちで近づいてはいけないことを教えてくれる。

30. 魔道具士ダリヤはうつむかない(小説)
交易と魔法技術で栄えるオルディネ王国。その王都に居を構える魔導具師のダリヤ・ロセッティは、亡き父の弟子で婚約者のトビアス・オルランドから、結婚前日に一方的に婚約破棄を迫られる。トビアスには既に新しい恋人がおり、新居にも出入りしていたのだ。予期せぬ出来事に愕然とするダリヤだったが、周囲の助けもありトビアスとの婚約を破棄、さらには生活と魔導具開発のため自身の商会を立ち上げる。そんなある日、素材の採取に森を訪れたダリヤの前に、負傷した血塗れの男が現れる。彼は王国騎士団魔物討伐部隊で最も危険な役割を担う「赤鎧」のヴォルフレード・スカルファロットであった。 様々な魔道具の発明に取り組む主人公の姿にカッコ良さを感じ、また、それを手助けするヴォルフレードとの関係性が、恋愛要素を少しずつ含んでいく過程を楽しむことができる。しかし、恋愛要素をメインとするにはあまりにも2人の進展が遅いため、魔道具の制作が本筋なのであろうと考える。転生モノではあるものの、転生要素がかなり少ないため、異世界物語を普通に楽しむことができる。今後の2人の恋愛面での展開に期待したい。
2024/09/24(火) 00:13 No.2059 EDIT DEL
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