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中村昂太郎
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三年 中村昂太郎
1 小市民シリーズ(アニメ)監督:神戸守
【概要】
平穏で慎ましい小市民を目指すという約束をした小鳩常悟朗と小佐内ゆきは、無事同じ高校に入学した。ところが、小佐内からいちごタルトを買いに行こうと誘われた四月のある日、小鳩は校内で盗まれたというポシェットの捜索に駆り出されてしまう。いきなり事件に遭遇した小鳩たちは、穏やかな放課後を過ごせるのだろうか。
【考察】
BGMを多用せず、環境音や会話だけで構成されているシーンが多く、キャラクターの生活や会話に自然と目が行くように作られていた。また、主人公の小鳩が推理を披露したり、重要な会話が挟まれるシーンではキャラが立っている場所ではなく、あえて舞台となっている岐阜市の景色を背景にしたりと、会話内容や表情だけでなく、画面全体を使ってキャラ同士の関係性や心情を表現しており、会話劇がほとんどの構成だったにも関わらず、視聴者が視覚的にも楽しめる工夫が多く仕込まれていた。
2期からは一話完結の構成から、全体を通して事件を追う構成になっており、さらに視聴に没入できるようになっていた。しかし、それもただ事件の謎を解いていくだけではなく、小鳩と小山内のパーソナリティが1期よりも深く理解できるようになっていたり、二人が知り合うきっかけとなった事件を回想で振り返りながら、徐々に過去と現在の事件の繋がりが明らかになるようなつくりとなっていた。これらを経て、二人が出した作中で「小市民になることはできない」という結論に、視聴者も納得できるようになっている。
2 ウマ娘 シンデレラグレイ(アニメ)監督:みうらたけひろ
【概要】
寂れた地方のカサマツトレセン学園。
そこでトレーナーを務める北原穣は、活気を失いつつある地方レースの現状に対してどうにもできない日々を送っていた。
そんなある日、1人のウマ娘と出会う。
芦毛の髪をなびかせて走るその姿を見た時、彼は長年待ちわびていた『スター』が現れたと直感する——。
【考察】
初めはただ走れればそれでいいと思っていた主人公が、地元のライバルや仲間たちなど、様々な人の想いを背負っていった結果、レースに勝ちたいという欲求が生まれるまでが、1期の範囲内では様々な人物の視点で描かれていた。主人公のオグリキャップのシンデレラストーリーであると同時に、同じ時代を生きたウマ娘とトレーナーの群像劇として見ることもできた。
実際の競走馬をモデルにストーリーが作られていることによって、視聴者が現実と重ね合わせて作品を見ることができ、史実を知っているが故に先の展開を予想できる人でも、迫力あるレースの作画と擬人化された競走馬たちのドラマを楽しめるようになっている。特性上、未成年や興味のない人間には触れづらい競馬という競技を、キャッチーに脚色し誰でも気軽に触れられるコンテンツにしたことで、実際に競馬業界にも良い影響が出ていることから、アプリ版と合わせてこのコンテンツは、今後も競馬界にとって重要な立ち位置を持つことになると考える。
3 TRICK(ドラマ)監督:堤幸彦
【概要】
自称天才マジシャン・山田奈緒子と、日本科学技術大学物理学教授・上田次郎コンビが、超常現象や奇怪な事件に隠されたトリックを解決していくミステリードラマ。
【考察】
インチキ霊能力者のトリックを暴き、事件を解決するストーリーではあるが、作中では本物の霊能力が存在する。さらに、シーズン1の終盤に主人公の山田が霊能力者の血を引いている事が明らかになり、シーズン2からは、敵となる霊能力者たちは山田のマジックの腕や推理力には触れず、霊能力者として高く評価する者が増えていき、実際に山田が未来を予知しているようなシーンも差し込まれており、作中で最も霊能力を否定してきた山田が屈指の霊能力を持っているという皮肉な構図が作り出されている。また、トリックを暴いたからといって事態が好転する訳ではなく、さらに犠牲者が増えたり、霊能力者を信奉していた人たちを絶望させてしまったりと、ハッピーエンドで終わる話は非常に少ない。しかし、山田と上田や矢部刑事たちのコミカルな会話を通して事件を解決していくことで、どうにか視聴者に重い雰囲気を引きずらせないように作られている。かつて大ヒットした要因はこのギャグとシリアスのバランスとコントラスト故であると考える。
トリックを見破ることは得意だが教養が無い山田と、頭脳と戦闘力を持っているが臆病で視野が狭い上田のバディとしての完成度の高さも、この作品の魅力の一つである。先述したようにシリアスな空気を緩和できるコミカルな二人のやり取りはもちろん、この二人はお互いがお互いの能力を補完し合っているため、キャラが中々ストーリーを動かさないことによる視聴者のストレスが少ない状態で楽しむことができる。どちらかが何かしらの出来事で使い物にならない時は、もう一方がしっかりと活躍してストーリーを動かせるようになっており、非常に使い勝手の良いバディとなっている。この二人さえ揃っていればいくらでも続編を作ることが可能であり、さらにこの二人に関する事前に知っておくべき設定なども少ないため、シリーズが続いても敷居が低く、長く広い世代に愛される所以であると考える。
4 ヴァチカンのエクソシスト(映画)監督:ジュリアス・エイヴァリー
【概要】
1987年7月――サン・セバスチャン修道院。
アモルト神父はローマ教皇から直接依頼を受け、憑依されたある少年の《悪魔祓い》(エクソシズム)に向かう――。変わり果てた姿。絶対に知りえないアモルト自身の過去を話す少年を見て、これは病気ではなく“悪魔”の仕業だと確信。若き相棒のトマース神父とともに本格的な調査に乗り出したアモルトは、ある古い記録に辿り着く。中世ヨーロッパでカトリック教会が異端者の摘発と処罰のために行っていた宗教裁判。その修道院の地下に眠る邪悪な魂――。
全てが一つに繋がった時、ヴァチカンの命運を握る、凄惨なエクソシズムが始まる――
【考察】
ベテランエクソシストと新米司祭が協力して強力な悪魔を倒す、バディ物としてもエンタメ映画としても完成度の高い作品だった。悪魔とエクソシストというわかりやすい対立構造と、悪魔を倒すために二人の司祭が自身の罪を受け入れて成長するという王道の展開がクオリティの高いCGで見応えのあるものになっていた。しかし、キリスト教が過去に犯した罪を悪魔のせいであるとして、その悪魔を祓うことで解決したようにしてしまうことは、エンタメ映画であるということを差し引いても、あまり誠実ではないと考える。
5 ミーガン(映画)監督:ジェラルド・ジョンストン
【概要】
おもちゃ会社で優秀な研究者として働くジェマは、人間のようなAI人形「M3GAN(ミーガン)」の開発を行っている。ある日、交通事故によって両親を失い、孤児となってしまった姪のケイディを引き取ることになったジェマは、子どもにとっては最高の友だちに、親にとっては最大の協力者となるようにプログラムされたミーガンに対し、あらゆる出来事からケイディを守るように指示を出す。だがその行動がやがて、想像を絶する事態を引き起こす。
【考察】
人工知能が段々と自我を獲得していき、人のために行動していたものが最終的には自分のために行動し始めるまでが、ジャンプスケアを多用せずに、演出でゾワっとするような恐怖を見ている者に植え付けるようなつくりだった。
ミーガンが最後に逆らえないはずの少女に手をあげたシーンは、私はそこでミーガンはロボットから「人間」になったのだと考える。映画の中盤にて、ミーガンが死について思考するシーンがあり、ミーガンはその思考を経て、自身の死を意識し、死にたくないと思ってしまった。それゆえに、主人となるユーザーを少女から自身へと書き換え、自分が生きる上で障害となる人物を殺して回るという行為をするに至ったのだ。また、ミーガンが作中で殺めてきたものたちは、全てミーガンに危害を加えたものであるということから、初めからミーガンは自身の安全を最優先に行動していたとも考えることができる。
6 ウェンズデー(ドラマ)監督:ティム・バートン
【概要】
「アダムス・ファミリー」に登場する長女ウェンズデーが主人公のNetflixオリジナルドラマ。ティム・バートンが監督・制作総指揮を担当した。奇妙な寄宿学校、ネヴァーモア学園でウェンズデーが一族にまつわる超常現象や殺人事件に巻き込まれていく推理ミステリー。
【考察】
スピンオフのような作品ではあるが、アダムスファミリーについての知識が視聴するにあたって必要になるわけではなく、むしろ初めて触れる人が他のシリーズにも興味を持てるような内容の作品だった。
アダムスファミリーのようなコメディとホラーが融合したようなものではなく、それぞれ特別な能力を持った“のけ者”と呼ばれる種族の青春ミステリー作品だった。主人公のウェンズデーが徐々に学園に馴染んでいく過程は日本の学園モノの漫画やアニメの構成にとても近く、日本人の方がむしろ楽しみやすいものになっていたと考える。
ホラー映画では本来得体の知れない恐怖演出となるものが、全て“そういう能力”であるという理由がつけられてしまったため、ホラー作品としての魅力が完全に無くなってしまったが、それ故にミステリーのタネに幅ができ、視聴者が全く予想できない展開を作り出すことができていた。また、世間とは隔絶した世界に住んでいるように見えていたキャラクターたちが、警察に捕まったりカウンセリングを受けたりしているシーンは、現実世界とキャラクターの格好とのアンバランスさがむしろ笑いを誘うギャグシーンのように楽しむことができた。
7 機動戦士ガンダム GQuuuuuuX(アニメ)監督:鶴巻和哉
【概要】
スペース・コロニーに住む女子高生アマテは、偶然運び屋のニャアンと出会い、非合法なジャンク屋に関わってしまう。正体不明のモビルスーツ 赤いガンダムを捕縛しようとする軍警察の横暴を許せないアマテは、目の前に横たわる最新鋭モビルスーツ ジークアクスに飛び乗る。
【考察】
ファンの間では不可侵の聖域のようになっていた初代ガンダムシリーズを大胆に作り変え、パラレルワールドとして物語を進めていた。これまでに無い発想で原型が無いほどに展開が変わっているが、キャラクターデザインや声優を一新することで、あくまで別の物語であることを強調し、視聴者、特に初代ガンダムファンにとって受け入れられやすいように作られていたと考える。
8 サンダーボルツ(映画)監督:ジェイク・シュライアー
【概要】
〈サンダーボルツ*〉よ、集結せよ——アベンジャーズに代わって世界を救え!人類消滅の危機…アベンジャーズ全員を合わせた以上のパワーを持つセントリーの襲来で、ニューヨークは闇にのまれ、人々が影だけ残して消されていく。この危機を阻止するため集められたのは、〈超クセ強な無法者〉たち!?「最強でも、ヒーローでもない—でも、やるしかない!」ヒーローになれなかった奴らの人生逆転をかけた【敗者復活戦】が始まる!型破りなマーベルの新チーム“*ニュー・アベンジャーズ”誕生を見届けろ!
【考察】
これまでのマーベル映画で敵としてヒーローに立ちはだかったキャラクターたちが、ヒーローとして再起する作品だった。物語全体を通して“やり直す”ことをテーマとして扱っており、ヴィランとして犯した過ちと向き合いやり直すこと、また、エレーナとアレクセイの血の繋がっていない親子関係を新たにやり直すことなど、それぞれのキャラクターの抱える問題を浮き彫りにした上で、最終的にチームでそれらを乗り越えるという構成だった。
ヒーローチームの不在により勢いが無くなっていたマーベルシリーズにとって、新たなスタートを切る作品としての役割があると考える。しかし、メインのキャラクターは過去作品に登場した敵となっているため、視聴者が過去作を全て知っている前提で話が進むため、初めてマーベル作品に触れる人には若干のハードルの高い作品となっている。
9 ファンタスティックフォー(映画)監督:マット・シャクマン
【概要】
宇宙ミッション中の事故で特殊能力を得た4人のヒーロー・チームは、その力と正義感で人々を救い、“ファンタスティック4”と呼ばれている。 世界中で愛され、強い絆で結ばれた彼ら“家族”には、間もなく“新たな命”も加わろうとしていた。 しかし、チームリーダーで天才科学者リードのある行動がきっかけで、惑星を食い尽くす規格外の敵”宇宙神ギャラクタス”の脅威が地球に迫る! 滅亡へのカウントダウンが進む中、一人の人間としての葛藤を抱えながらも、彼らはヒーローとして立ち向かう。 いま、全人類の運命は、この4人に託された——。
【考察】
今まで存在する過去作品が膨大すぎることから敬遠されることがマーベル作品の弱点だったが、この作品は要求される事前知識が全く必要のない、まさしく新世代のマーベル作品と言えるものだった。四人のヒーローが家族として一緒に暮らしている様子はホームドラマのような作りになっており、敵と戦うアクションシーンとは違う魅力があった。また、ヒーローたちが能力を得たきっかけや現在の世界での立ち位置などをダイジェストで初めに流しておくことで、その後の展開にしっかりと時間を使うことができていた。
家族がテーマとなっているため、古き良き家族の形が描かれており、とても懐かしく感じた。特に子を産み、母となった女性の強さがこれでもかと描かれていて、昨今ハリウッドなどで多く登場する“強い女性”とは違い、強いことに納得感がありつつ、強さが世界をまとめ上げるカリスマや敵を追い詰める強さに繋がっており、今の時代の流れから少し外れつつも古臭さを感じさせない描写となっていた。
10 恋する寄生虫(小説)作者:三秋縋
【概要】
失業中の青年・高坂賢吾と不登校の少女・佐薙ひじり。一見何もかもが噛み合わない二人は、社会復帰に向けてリハビリを共に行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる。しかし、幸福な日々はそう長くは続かなかった。彼らは知らずにいた。二人の恋が、<虫>によってもたらされた「操り人形の恋」に過ぎないことを……。
【考察】
設定の斬新さはありながらも、主な魅力はキャラ同士のかけ合いとなっており、三秋縋から生まれたキャラクターであることははっきりとわかるにもかかわらず、しっかりと口調や価値観などでそれぞれのキャラが立っていた。主人公とヒロインがお互いに惹かれ合う過程がとても丁寧に描かれており、だからこそ中盤で真相が明かされた際に読者と主人公の思考が一致し、より感情移入することができるつくりになっていた。作中には合理よりも感情を優先するキャラが多く、しかし先述したようにこの作品はキャラへの感情移入がとてもしやすいつくりになっているので、読者を俯瞰した位置からキャラの視点まで引きずり込み、読者の中でノイズが生まれることを防いでいると考える。
ただ、読み進めるうちに寄生虫の設定が描きたい展開のためのものであると読者が分かってしまい、斬新な設定に惹かれて読み始めた者にとっては肩透かしを食らったように感じてしまうと考える。しかし、斬新な設定と世界観で等身大の男女の出会いと別れを描くのが三秋縋作品の魅力であるので、三秋にはそのままでいて欲しい。
11 るろうに剣心 the final(映画)監督:大友啓史
【概要】
日本転覆を企てた志々雄真実との死闘を終えた剣心たちは、神谷道場で平穏な日々を送っていた。そんなある日、何者かが東京中心部を相次いで攻撃。やがて剣心は、ある理由から剣心に強烈な恨みを持つ上海の武器商人・縁との戦いに身を投じていく。キャストには緋村剣心役の佐藤健、神谷薫役の武井咲、相楽左之助役の青木崇高、高荷恵役の蒼井優、斎藤一役の江口洋介らおなじみの俳優陣が再結集。新たなメンバーとして、シリーズ史上最恐の敵となる縁役を新田真剣佑、かつての剣心の妻で、剣心が不殺の誓いを立てる理由となった女性・雪代巴役を有村架純がそれぞれ演じる。
【考察】
戦いの規模や危機感などは前作よりも下がっているが、その分アクションシーンのクオリティは前作から経った年数の分だけ上がっているため、見ている内にそれが気になることは無いようになっている。るろうに剣心のアクションの醍醐味である多対一の戦闘だけでなく、一対一の戦闘も、前作を超えるレベルに仕上げられており、総決算として相応しい出来であったと考える。
敵である縁を演じる新真剣佑の演技が素晴らしく、マフィアのボスとしての底知れなさ、悪辣さと、一人の姉を想う弟としての幼さという正反対の性質を別人ではなく同一人物として演じ切ることができていた。初めはバランス良く保たれていたその性質が、戦闘が長引くごとにバランスが崩れ、ぐちゃぐちゃに混ざっていく様が描かれ、視聴者側は縁を敵ではなく遺された可哀想な弟として認識してしまうような作りとなっていた。
12 来る(映画)監督:中島哲也
【概要】
恋人の香奈との結婚式を終え、幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に謎の来訪者が現れ、取り次いだ後輩に「知紗さんの件で」との伝言を残していく。知紗とは妊娠した香奈が名づけたばかりの娘の名前で、来訪者がその名を知っていたことに、秀樹は戦慄を覚える。そして来訪者が誰かわからぬまま、取り次いだ後輩が謎の死を遂げる。それから2年、秀樹の周囲で不可解な出来事が次々と起こり、不安になった秀樹は知人から強い霊感を持つ真琴を紹介してもらう。得体の知れぬ強大な力を感じた真琴は、迫り来る謎の存在にカタをつけるため、国内一の霊媒師で真琴の姉・琴子をはじめ、全国から猛者たちを次々と召集するが……。
【考察】
前半の完成度の高いホラー演出から、一気に霊能力者バトルに変わっていく様がとても爽快で、エンタメ映画として非常に満足度の高いものとなっていた。霊能力者たちのキャラが、すぐに出番が無くなる者であってもしっかりと立てられており、少ない出番でも視聴者に強烈なインパクトを残せられるようになっていた。
13 ゴールデンカムイ(ドラマ)監督:久保茂昭
【概要】
明治末期の北海道。日露戦争を生き抜いた元軍人・杉元(山﨑賢人)は、アイヌの少女・アシ(リ)パ(山田杏奈)、網走監獄の脱獄囚・白石(矢本悠馬)とともに、金塊のありかを示す暗号を彫られた24人の“刺青囚人”を探していた。だが、「第七師団」を率いる鶴見(玉木宏)や尾形(眞栄田郷敦)、元新撰組「鬼の副長」こと土方(舘ひろし)も囚人たちを狙う。杉元たちは旅路で、アシ(リ)パの父の古き友のキロランケ(池内博之)、アイヌの女 ・インカ(ラ)マッ(高橋メアリージュン)、「札幌世界ホテル」の女将(おかみ)の家永(桜井ユキ)、元ヤクザの若衆の夏太郎(塩野瑛久)など、腹の中が読めない者たちと出会う。
さらには、鶴見の忠臣・鯉登(中川大志)、網走監獄典獄の犬童(北村一輝)、伝説的な熊撃ち、“煌めき”を追い求める男、ヤクザの親分、天才剝製職人、詐欺師などクセ者たちが次々に現われる!波乱の金塊争奪戦が幕を開ける!
【考察】
ただ原作を再現するだけでなく、漫画と実写の媒体の違いを活かし、実写ならではのアクションと演出が多く使われていた。中盤にて谷垣が旅立ちを決意するシーンでは、漫画には無かった朝日が差し込む演出を採用し、画としての見応えを増し、谷垣の心情をよく描写することができていた。
原作でよく語られているギャグシーンは、漫画の誇張表現をそのまま再現することはせず、あくまでそれがメインにはならないような工夫がされていたように感じた。
14 九龍ジェネリックロマンス(アニメ)監督:岩崎良明
【概要】
人々の活気とどこか懐かしい空気に溢れる街・九龍城砦で鯨井令子は、不動産会社 “旺来地産” に勤めている。先輩の工藤発は遅刻の常習犯にして何事にも大雑把な性格だが、九龍の街をこよなく愛している。
ある日、九龍から懐かしさは特に感じないと言う令子に、その魅力を伝えるため街に連れ出した工藤。最後にたどり着いた「金魚茶館」という工藤行きつけの不思議な喫茶店で、令子は店員のグエンに工藤の恋人と間違われる。人々の活気とどこか懐かしい空気に溢れる街・九龍城砦くーろんじょうさいで鯨井令子は、不動産会社 “旺来地産” に勤めている。先輩の工藤発は遅刻の常習犯にして何事にも大雑把な性格だが、九龍の街をこよなく愛している。
ある日、九龍から懐かしさは特に感じないと言う令子に、その魅力を伝えるため街に連れ出した工藤。最後にたどり着いた「金魚茶館」という工藤行きつけの不思議な喫茶店で、令子は店員のグエンに工藤の恋人と間違われる。
【考察】
実際に存在する九龍城塞を舞台にしており、背景はかなり現実と近いものになっており、制作のこだわりを感じさせるものとなっていた。また、九龍で暮らす人々も止め画だけでなくしっかりと描写することで、緻密な背景も合わせて物語への没入を促す役割を担っていた。まず、再現された九龍が舞台で主人公が死んだ人間のコピーであるという設定が斬新で、先の展開を予想させず、視聴者を飽きさせないようになっていた。
アニメの放送期間が終わった直後に実写映画を公開するというマーケティングも、今までにないもので興味を引くようになっていた。しかし、アニメの視聴者がそのまま実写映画を見てくれるとは少し考え難く、このマーケティングが正しいものであるとは現状では言えないと考える。
15 パンティ&ストッキングwithガーターベルト(アニメ)監督:今石洋之
【概要】
神と悪魔の狭間の街、ダテンシティ。
今日も人知れず恐ろしい悪霊<ゴースト>たちが街を蝕む。
そんな時、人々の欲望や怨念の魂たる悪霊<ゴースト>を、人知の及ばぬ光をもって消し去る者達がいた。
その名は、天使 パンティ&ストッキング!!
地上に蔓延る闇を祓う使命を託された堕天使姉妹。
その正体は果たして神の使いか…悪魔の僕しもべか…。
【考察】
海外のカートゥーンのような絵柄のキャラがどぎつい下ネタを叫ぶというギャップが見ていて面白く、所々に挟まれる様々な作品のオマージュがカオスさを呼び、この作品でしか味わえない魅力が生まれていた。1期では全体的に品がない下ネタが多く、視聴者を選ぶものとなっていたが、振り切った下ネタが作品特有の魅力となり15年経っても2期を望むファンが多くいたことの理由の一つとなった。
2期からは下ネタもさらに下品になり、さらに毎話必ずオマージュが差し込まれるようになり、そのオマージュも有名なものから日本人がほとんど知らないものまで様々なバリエーションがあり、さらに登場キャラも増えたため、見応えという意味では1期から大幅に進化したものであると言える。
16 無職転生 ~異世界行ったら本気だす~(アニメ)監督:岡本学
【概要】
34歳・童貞・無職の引きこもりだった男は車に撥ねられ、その一生を終える……はずだった。しかし、男が次に目を覚ましたとき、そこは剣と魔法の異世界であった。少年・ルーデウスとして転生した男は考える、この世界ならば、自分も本気で生きていくことができるかもしれない……と。
【考察】
転生もののテンプレをなぞりながらも、転生してからの人生を丁寧に描いているため、視聴者が主人公を成人男性としてではなくその世界の子供として認識するようになり、子供の中身が中年男性であることへの嫌悪感をあまり抱かせないつくりになっていたと考える。全体を通して“家族”をテーマにしており、転生者として異世界の住人としての自覚が薄かった主人公が、家族との交流を経てその自覚を持つまでを描いており、中世ヨーロッパに近い世界観であるがゆえに、家族との繋がりを重視するある意味前時代的な物語でも違和感なく展開できている。
また、アニメではそれぞれの種族で独自の言語を使用していることを表現するために一から言葉を作っており、異世界としてのリアリティが出ると同時に、主人公が日本語を話すシーンではそれを上手く活かした演出をしていた。
幼少期から青年期までを丁寧に描いているため、主人公へ感情移入しやすくなる作りとなっていた。
17 負けヒロインが多すぎる!(アニメ)監督:北村翔太郎
【概要】
ライトノベル好きの達観系ぼっち・温水和彦は、ある日偶然クラスの人気女子・八奈見杏菜が幼馴染の男子生徒に振られている現場を目撃してしまい、その後立て続けに、陸上部の焼塩檸檬、文芸部の小鞠知花という負け感漂う女子たちと関わりを持つようになる。
負けヒロイン――マケインたちになぜか絡まれる温水の謎の青春が、ここに幕を開ける!
【考察】
負けヒロインという立ち位置をコメディチックに描きながらも、キャラクターが失恋と向き合い、新たに前を向くまでの過程はしっかりと真面目に描くため、メリハリのきいたつくりになっている。アニメの範囲では主人公は傍観者の立ち位置を貫いており、主人公と視聴者の視点が一致し、視聴者の気持ちを代弁するという役割も持っていると考える。
18 ダンジョン飯(アニメ)監督:宮島善博
【概要】
ダンジョン深奥で、レッドドラゴンに妹が喰われた! 命からがら地上へ生還した冒険者のライオス。 再びダンジョンへ挑もうとするも、お金や食糧は迷宮の奥底……。 妹が消化されてしまうかもしれない危機的な状況の中、ライオスは決意する。
「食糧は、迷宮内で自給自足する!」 スライム、バジリスク、ミミック、そしてドラゴン! 襲い来る魔物たちを食べながらダンジョン踏破を目指せ、冒険者よ!
【考察】
常に食べることをテーマにしており、西洋風の世界観で日本的な「食」の価値観が掲示されることによるアンバランスさがあると初めは感じたが、すぐに気にならなくなるほど作品の雰囲気に馴染んでいた。
細かな設定がとても練られており、その世界の言語や魔法などにおいて、通常では考えないようなところまで設定があり、その上で作中で細かな設定をひけらかすようなシーンが無いことによって、設定がそのまま作品のリアリティの向上に繋がっている。
19 うずまき(アニメ)監督:長濱博史
【概要】
女子高生の五島桐絵と恋人の斉藤秀一が暮らす町が、異様なうずまきに汚染され始める。町の誰もがうずまきの呪いに侵されるなか、桐絵と秀一は果てしない恐怖と絶望にのみ込まれてゆく。
【考察】
「うずまき」をテーマに一つの町を舞台にして一話完結形式で物語が進められていく。どんな怪奇現象が起きても舞台となっている町そのものが崩壊することは無かったが、物語が進むごとに町にも被害が及ぶことが多くなり、次第に怪奇現象が一つの災害となって町を襲うことになる。話のスケールがどんどん大きくなっていき、最後にはジャンルがホラーから変わってしまっているように感じたが、最後まで「うずまき」が何なのか視聴者には明かされず、正体不明の恐怖がずっと続いているため、ホラーという軸から逸脱してはいなかったと考える。
20 マン・オブ・スティール(映画)監督:ザック・スナイダー
【概要】
無敵の能力を備えながらも、それゆえに苦悩して育った青年クラーク・ケントが、いかにしてスーパーマンとして立ち上がったのか、これまで描かれてこなかったスーパーマン誕生の物語を描く。
【考察】
ヒーローとしてのスーパーマンと言うよりは、圧倒的強さを持った“最強”としてのスーパーマンを描いた作品だった。スーパーマンのルーツを初めに掲示しつつ、彼がどういう思いで地球で育ったのかは中盤まで明確にしないことで、スーパーマンの真意が気になるつくりになっている。
クリプトン星人との戦いで街を破壊しまくるシーンは迫力満点で緊迫感あふれるシーンであると同時に、視聴者がスーパーマンの強すぎる力を恐れてしまい、作中のアメリカ国民と同じ気持ちになるようになっている。そしてこのつくりが次作以降の展開へと繋がっていくため、DCUの始まりに位置する作品として非常に完成度の高いものとなっている。
21 寄生獣 ザ・グレイ(ドラマ)監督:岩明均
【概要】
人間を宿主として寄生し、全身を支配しようとする正体不明の寄生生物が人間社会に混乱をもたらし始めたこの邪悪な存在の台頭を阻止すべく立ち上がる人間と寄生生物の戦いを描く SF スリラー。
【考察】
原作のテーマである「寄り添い生きる獣」という意味での寄生獣というものは全体を通して一貫しているように感じたが、主人公に寄生した寄生生物があまりにも初めから主人公に対して友好的すぎるように思えた。そのため原作にあった寄生生物と宿主の人間との交流によって生まれるドラマが無く、人間と寄生生物の戦いを描くモンスターパニックアクション作品としての魅力が主だったと考える。
カメラワークやCGが現代の最新技術を駆使したものとなっており、とても見応えのあるものとなっていた。特にドローンを使用したカーチェイスシーンのカメラワークは疾走感あふれるシーンもなっていて、主な戦闘シーンがCGメインであったことが惜しく思えるほどだった。
22 CITY(アニメ)監督:石立太一
【概要】
実況は黒部五郎がお伝えします。
何かが芽吹いて参りました、ここCITY。
誰が信じましょう! まさかのカバンに固焼きそばがダイビング!!
まつりとえっちゃんの大冒険! 楽しいが渋滞しております。
鬼カマボコ、ネタの代わりに出てきたのは涙だー!!
とかく前代未聞! それがCITY!
【考察】
タイトルの通り、一つの町に住む人々の生活を描いたコメディ作品だった。原作者のあらゐけいいちの代表作である『日常』のエッセンスを感じながらも、スポットライトがより広く多くの人物に当たるようになっており、また当時より作画も進化しており、京都アニメーションにおける『日常』の正統進化と言える作品だった。
多くの人物に焦点を当てながらも、メインとなる三人のパーソナリティはしっかりと描き、視聴者に愛着を持たせられるようにつくられており、また、その他の登場人物も少ない出番で強烈な印象を残すキャラであったり、何度もギャグを繰り返す「天丼」を駆使したりなどで、より多くのキャラを視聴者に覚えてもらえる取り組みがされていた。
23 銀河特急ミルキーサブウェイ(アニメ)監督:亀山陽平
【概要】
銀河道路交通法違反で逮捕された強化人間の
チハルとサイボーグのマキナ。
同じタイミングで警察に捕まった、強化人間のアカネとカナタ、サイボーグのカートとマックスらクセのあるコンビを集め、警察官・リョーコが全員に課したのは、奉仕活動として惑星間走行列車・通称”ミルキー☆サブウェイ”の清掃をすること。
簡単な任務だったはずが、突如暴走し始める”ミルキー☆サブウェイ”!
車内で慌てふためくメンバーたちは、やがて大事件に巻き込まれていってしまう!
【考察】
CGが他にない独特な味を出しており、不気味の谷現象などによる視聴前のハードルの高さなど、CGアニメーションで発生する問題が発生しづらくなっているように感じた。キャラクターの動きや表情がとても自然で、アニメーションではなく実写の映像を見ているような気にさせるほどであり、また、声優の演技も実際の日常会話になるべく近づけた自然なものとなっているため、SFという世界観でありながらも、リアリティのある空気感が生まれていた。
24 メイドインアビス(アニメ)監督:小島正幸
【概要】
巨大な大穴『アビス』の縁に築かれた街、『オース』で暮らす探窟家見習いの少女・リコ。ある日、探窟中に孤児院の仲間の少年・ナットが巨大な蛇状の生物「ベニクチナワ」に襲われているところに遭遇する。とっさの機転で注意を逸らしたリコだったが、今度は自分がベニクチナワに襲われてしまう。絶体絶命のその瞬間、突然辺りが閃光と轟音に包まれて・・・。
【考察】
メインとなる登場人物たちが、一度入れば戻って来られないかもしれないアビスに潜ることへの葛藤が全く無く、まだ見ぬ冒険への浪漫を全面に出しているため、視聴者も命の危険などはあまり気にせず同じ気持ちで視聴することができた。ただ、アビスへ潜ってからは主人公の女児がかなりの頻度で酷い目に遭わされるため、アビスを甘く見ていた主人公と同様に視聴者にもアビスの厳しさを思い知らせられるつくりになっていた。そのような目に遭わされても、先述されたように主人公が冒険を恐れたり諦めようとすることは無く、段々と視聴者が主人公の精神の異常性に気づくようになっている。
また、アビス内の生態系は細かに設定されており、それらに翻弄され、時には利用するやり方でキャラの個性が演出されている。アビスに初めて入った主人公と視聴者の視点が重なり、物語が進むごとに先の景色が気になるようになっている。
25 メダリスト(アニメ)監督:山本靖貴
【概要】
スケーターとして挫折した⻘年・明浦路司が出会ったのは、フィギュアスケートの世界に 憧れを抱く少⼥・結束いのり。
リンクへの執念を秘めたいのりに突き動かされ、司は⾃らコーチを引き受ける。
才能を開花させていくいのりと、指導者として成⻑していく司。
タッグを組んだ⼆⼈は栄光の“メダリスト”を⽬指す−−−!
【考察】
躍動感や迫力あふれる見開きや表情などで魅せていた原作から、演出面では多くの変更があった。演技シーンでは実際のプロスケーターの動きをモーションキャプチャで取り入れているため、映像作品ならではの魅力が生まれている。また、その結果、演技中のキャラのセリフなども削られ、表情や息づかいでその時の感情を表現する演出となっていた。その他にも、原作が月刊誌での連載であり、アニメが1クールしかないという問題から、話の構成も変更が加えられており、原作とアニメではほぼ別作品と言っていいほどとなっていた。しかし、原作にあった夢を追う少年少女とコーチたちの熱い様などはそのままにアニメに落とし込んでいるため、作品の軸となる部分は変わらないままにできていたと考える。
26 パシフィック・リム(映画)監督:ギレルモ・デル・トロ
【概要】
13年に突如、太平洋の深海から巨大生命体が出現し、世界中の大都市は次々と破壊され、人類は絶滅の危機にさらされる。そこで人類は巨大生命体と戦うために英知を結集し、人型巨大兵器“イェーガー”を開発。一時は巨大生命体の侵攻を食い止める事に成功するが、再び彼らの猛威にさらされる事に。
【考察】
初めにダイジェスト方式で作品の世界観を説明していたが、怪獣と巨大ロボのバトル、またそのロボの設定もかなり複雑という非現実的な題材であるにもかかわらず、クオリティの高いCGによってリアリティが増しており、視聴者はすんなりと設定を受け入れることができるようになっていた。また、その説明パートで主人公の過去を同時に開示するため、現代のパートに尺を存分に使うことができていた。
敵となる怪獣を意思のない化け物とすることによって、メインとなる主人公二人の掘り下げが十分に行われており、感情移入が容易となっていた。また、サブキャラの掘り下げはあまり行われていなかったが、その分佇まいや使っているロボの見た目や性能でどのような性格なのかある程度予想できるようになっており、画面上に写っているもの全てを活用してキャラの掘り下げをしていたと考える。
27 デッドマウント・デスプレイ(漫画)原作:成田良悟
【概要】
はるか遠い異世界――世界を救うため、「災厄潰し」と呼ばれる英雄シャグルアは希代の死霊使い(ネクロマンサー)「屍神殿」に立ち向かう。
熾烈な戦いの末にシャグルアが屍神殿を打倒したかに見えたその時、魔術が発動し周囲は光に包まれる。
その瞬間、魂は遠い異世界へ転移し現代の新宿で「四乃山ポルカ」という少年の体で目覚めていた。
喉を切り裂かれ、殺害されたばかりの体で新宿の街をさまよっていた彼は、一人の少女に救われる。
崎宮ミサキと名乗ったその少女と対峙しているうちにポルカの記憶が徐々に蘇ってくる。
四乃山ポルカを殺害したのは目の前の少女、「崎宮ミサキ」だった。
再びポルカを殺そうと、彼女は襲いかかってくる。
【考察】
まず異世界の住人が日本の新宿に転生するというアイデアが斬新で目を引くものとなっており、またそれが単なる出オチで終わらず、しっかりとその後の展開に深く関わってくるようになっている。異世界の住人だからといって新宿でいわゆる無双をするというわけではなく、新宿の住人たちがパワーバランスとしては上で、主人公は彼らがしらない魔法を使うことで対等になっているという状況で、それも斬新な設定となっている。
登場人物がとても多く、ジャンルは群像劇と言えるのだが、各キャラのデザインや性格が個性的なので、名前を覚えられなくても展開についていくことができるようにつくられていた。
28 ヴァニタスの手記(漫画)作者:望月淳
【概要】
吸血鬼(ヴァンピール)の青年 ノエは師から頼まれ、吸血鬼に呪いを振り撒くという魔導書“ヴァニタスの書”を探しにパリへ向かっていた。
パリへ向かう飛空船の中で、ある事件に巻き込まれたノエは、吸血鬼の専門医を自称する人間 青い瞳の青年ヴァニタスと出会う。
【考察】
メインのヴァニタスとノエがバディとしてひとまず形におさまるまで相当な時間を使っており、これは初めにメイン二人の行動原理をはっきりさせておくことで、その後の群像劇へと移行する際に、話を展開させやすいようにするためと、より多くのキャラに尺を使えるようにするためであると考える。
人間と吸血鬼という二つの種族の物語であるため、人間から吸血鬼への差別などが初めは描かれるが、物語が進んでいくにつれて吸血鬼の間にも差別が存在することがわかり、被差別種族の中にもさらに被差別種族が存在するという、リアルな展開となっている。また、作中で人格者とされているキャラも自然と差別を行うなど、差別描写に関してはとてもリアリティのある描写がされている。
29 君が死ぬまであと100日(漫画)作者:右腹
【概要】
津田林太郎は一見普通の高校生。彼は幼稚園の頃からの幼なじみ・神崎うみに片想い中。何度告白しても、うまく伝わらなかった想い…しかし!人生4度目の告白で、やっと彼女からOKが!長年の恋がついに実った、その瞬間…彼の普通ではない能力が発動してしまう。「…うみ。余命が見える。」100日限定で生きものが死ぬまでの余命が、林太郎には見えてしまうのだ。長年の恋が実った瞬間から、愛しい彼女の余命のカウントダウンが始まってしまった。
【考察】
タイトルにもある通りのわかりやすいテーマがあり、終盤まで一貫して寄り道することなく100日を超えることを目標としているため、とてもわかりやすく読みやすいようにまとまった物語となっている。ただ、終盤からなぜか林太郎が記憶喪失になり、うみが記憶を取り戻させるために奔走するというパートになり、お互いがお互いを助け合うことで二人が対等な関係であることの表現であると考えられるが、うみの寿命を延ばすパートに比べて、林太郎の記憶を取り戻すパートは少々短く、運命に抗うことをテーマにしているならば、もう少し尺を使って劇的に描くべきだったと考える。
キャラ同士のかけあい、特にワードチョイスが独特で、この作品特有の魅力であると考える。基本的にゆるめの絵柄だが、キャラが感情を吐露するシーンでは細かな表情が描かれており、キャラの感情が直に伝わるようになっている。
30 夢と魔法の国のリドル(小説)作者:七河迦南
【概要】
楽しい遊園地デートになるはずだった杏那と優。しかし二人は突如別々の世界に引き裂かれた。杏那は異世界を魔王から救う役目を担わされ、残された優は遊園地で起きた密室殺人事件の謎を解く羽目に……。現実と夢の国、二つの密室、パズルと魔法の謎を解き、二人は再会できるのか? 紙とペンを用意して読んでも必ず欺される、異色の新感覚本格ミステリ。
【考察】
作中に登場する謎が絵として載せられており、読者も一緒に謎解きに挑戦することができた。自分で答えが分からなくても、読み進めれば解説してくれるので不都合がある訳ではなく、謎解きが得意な人も不得意な人も楽しめる作品となっていた。
現実と異世界の両方で同時に物語が進められるが、分かりづらさや冗長さは全く無く、読みやすい文章でありつつ、先が気になるようにつくられていた。また、主人公の性格が初めから完成しており、未熟さから発生する問題などが無く、物語としても読者としても、謎解きに集中することができていた。
1 小市民シリーズ(アニメ)監督:神戸守
【概要】
平穏で慎ましい小市民を目指すという約束をした小鳩常悟朗と小佐内ゆきは、無事同じ高校に入学した。ところが、小佐内からいちごタルトを買いに行こうと誘われた四月のある日、小鳩は校内で盗まれたというポシェットの捜索に駆り出されてしまう。いきなり事件に遭遇した小鳩たちは、穏やかな放課後を過ごせるのだろうか。
【考察】
BGMを多用せず、環境音や会話だけで構成されているシーンが多く、キャラクターの生活や会話に自然と目が行くように作られていた。また、主人公の小鳩が推理を披露したり、重要な会話が挟まれるシーンではキャラが立っている場所ではなく、あえて舞台となっている岐阜市の景色を背景にしたりと、会話内容や表情だけでなく、画面全体を使ってキャラ同士の関係性や心情を表現しており、会話劇がほとんどの構成だったにも関わらず、視聴者が視覚的にも楽しめる工夫が多く仕込まれていた。
2期からは一話完結の構成から、全体を通して事件を追う構成になっており、さらに視聴に没入できるようになっていた。しかし、それもただ事件の謎を解いていくだけではなく、小鳩と小山内のパーソナリティが1期よりも深く理解できるようになっていたり、二人が知り合うきっかけとなった事件を回想で振り返りながら、徐々に過去と現在の事件の繋がりが明らかになるようなつくりとなっていた。これらを経て、二人が出した作中で「小市民になることはできない」という結論に、視聴者も納得できるようになっている。
2 ウマ娘 シンデレラグレイ(アニメ)監督:みうらたけひろ
【概要】
寂れた地方のカサマツトレセン学園。
そこでトレーナーを務める北原穣は、活気を失いつつある地方レースの現状に対してどうにもできない日々を送っていた。
そんなある日、1人のウマ娘と出会う。
芦毛の髪をなびかせて走るその姿を見た時、彼は長年待ちわびていた『スター』が現れたと直感する——。
【考察】
初めはただ走れればそれでいいと思っていた主人公が、地元のライバルや仲間たちなど、様々な人の想いを背負っていった結果、レースに勝ちたいという欲求が生まれるまでが、1期の範囲内では様々な人物の視点で描かれていた。主人公のオグリキャップのシンデレラストーリーであると同時に、同じ時代を生きたウマ娘とトレーナーの群像劇として見ることもできた。
実際の競走馬をモデルにストーリーが作られていることによって、視聴者が現実と重ね合わせて作品を見ることができ、史実を知っているが故に先の展開を予想できる人でも、迫力あるレースの作画と擬人化された競走馬たちのドラマを楽しめるようになっている。特性上、未成年や興味のない人間には触れづらい競馬という競技を、キャッチーに脚色し誰でも気軽に触れられるコンテンツにしたことで、実際に競馬業界にも良い影響が出ていることから、アプリ版と合わせてこのコンテンツは、今後も競馬界にとって重要な立ち位置を持つことになると考える。
3 TRICK(ドラマ)監督:堤幸彦
【概要】
自称天才マジシャン・山田奈緒子と、日本科学技術大学物理学教授・上田次郎コンビが、超常現象や奇怪な事件に隠されたトリックを解決していくミステリードラマ。
【考察】
インチキ霊能力者のトリックを暴き、事件を解決するストーリーではあるが、作中では本物の霊能力が存在する。さらに、シーズン1の終盤に主人公の山田が霊能力者の血を引いている事が明らかになり、シーズン2からは、敵となる霊能力者たちは山田のマジックの腕や推理力には触れず、霊能力者として高く評価する者が増えていき、実際に山田が未来を予知しているようなシーンも差し込まれており、作中で最も霊能力を否定してきた山田が屈指の霊能力を持っているという皮肉な構図が作り出されている。また、トリックを暴いたからといって事態が好転する訳ではなく、さらに犠牲者が増えたり、霊能力者を信奉していた人たちを絶望させてしまったりと、ハッピーエンドで終わる話は非常に少ない。しかし、山田と上田や矢部刑事たちのコミカルな会話を通して事件を解決していくことで、どうにか視聴者に重い雰囲気を引きずらせないように作られている。かつて大ヒットした要因はこのギャグとシリアスのバランスとコントラスト故であると考える。
トリックを見破ることは得意だが教養が無い山田と、頭脳と戦闘力を持っているが臆病で視野が狭い上田のバディとしての完成度の高さも、この作品の魅力の一つである。先述したようにシリアスな空気を緩和できるコミカルな二人のやり取りはもちろん、この二人はお互いがお互いの能力を補完し合っているため、キャラが中々ストーリーを動かさないことによる視聴者のストレスが少ない状態で楽しむことができる。どちらかが何かしらの出来事で使い物にならない時は、もう一方がしっかりと活躍してストーリーを動かせるようになっており、非常に使い勝手の良いバディとなっている。この二人さえ揃っていればいくらでも続編を作ることが可能であり、さらにこの二人に関する事前に知っておくべき設定なども少ないため、シリーズが続いても敷居が低く、長く広い世代に愛される所以であると考える。
4 ヴァチカンのエクソシスト(映画)監督:ジュリアス・エイヴァリー
【概要】
1987年7月――サン・セバスチャン修道院。
アモルト神父はローマ教皇から直接依頼を受け、憑依されたある少年の《悪魔祓い》(エクソシズム)に向かう――。変わり果てた姿。絶対に知りえないアモルト自身の過去を話す少年を見て、これは病気ではなく“悪魔”の仕業だと確信。若き相棒のトマース神父とともに本格的な調査に乗り出したアモルトは、ある古い記録に辿り着く。中世ヨーロッパでカトリック教会が異端者の摘発と処罰のために行っていた宗教裁判。その修道院の地下に眠る邪悪な魂――。
全てが一つに繋がった時、ヴァチカンの命運を握る、凄惨なエクソシズムが始まる――
【考察】
ベテランエクソシストと新米司祭が協力して強力な悪魔を倒す、バディ物としてもエンタメ映画としても完成度の高い作品だった。悪魔とエクソシストというわかりやすい対立構造と、悪魔を倒すために二人の司祭が自身の罪を受け入れて成長するという王道の展開がクオリティの高いCGで見応えのあるものになっていた。しかし、キリスト教が過去に犯した罪を悪魔のせいであるとして、その悪魔を祓うことで解決したようにしてしまうことは、エンタメ映画であるということを差し引いても、あまり誠実ではないと考える。
5 ミーガン(映画)監督:ジェラルド・ジョンストン
【概要】
おもちゃ会社で優秀な研究者として働くジェマは、人間のようなAI人形「M3GAN(ミーガン)」の開発を行っている。ある日、交通事故によって両親を失い、孤児となってしまった姪のケイディを引き取ることになったジェマは、子どもにとっては最高の友だちに、親にとっては最大の協力者となるようにプログラムされたミーガンに対し、あらゆる出来事からケイディを守るように指示を出す。だがその行動がやがて、想像を絶する事態を引き起こす。
【考察】
人工知能が段々と自我を獲得していき、人のために行動していたものが最終的には自分のために行動し始めるまでが、ジャンプスケアを多用せずに、演出でゾワっとするような恐怖を見ている者に植え付けるようなつくりだった。
ミーガンが最後に逆らえないはずの少女に手をあげたシーンは、私はそこでミーガンはロボットから「人間」になったのだと考える。映画の中盤にて、ミーガンが死について思考するシーンがあり、ミーガンはその思考を経て、自身の死を意識し、死にたくないと思ってしまった。それゆえに、主人となるユーザーを少女から自身へと書き換え、自分が生きる上で障害となる人物を殺して回るという行為をするに至ったのだ。また、ミーガンが作中で殺めてきたものたちは、全てミーガンに危害を加えたものであるということから、初めからミーガンは自身の安全を最優先に行動していたとも考えることができる。
6 ウェンズデー(ドラマ)監督:ティム・バートン
【概要】
「アダムス・ファミリー」に登場する長女ウェンズデーが主人公のNetflixオリジナルドラマ。ティム・バートンが監督・制作総指揮を担当した。奇妙な寄宿学校、ネヴァーモア学園でウェンズデーが一族にまつわる超常現象や殺人事件に巻き込まれていく推理ミステリー。
【考察】
スピンオフのような作品ではあるが、アダムスファミリーについての知識が視聴するにあたって必要になるわけではなく、むしろ初めて触れる人が他のシリーズにも興味を持てるような内容の作品だった。
アダムスファミリーのようなコメディとホラーが融合したようなものではなく、それぞれ特別な能力を持った“のけ者”と呼ばれる種族の青春ミステリー作品だった。主人公のウェンズデーが徐々に学園に馴染んでいく過程は日本の学園モノの漫画やアニメの構成にとても近く、日本人の方がむしろ楽しみやすいものになっていたと考える。
ホラー映画では本来得体の知れない恐怖演出となるものが、全て“そういう能力”であるという理由がつけられてしまったため、ホラー作品としての魅力が完全に無くなってしまったが、それ故にミステリーのタネに幅ができ、視聴者が全く予想できない展開を作り出すことができていた。また、世間とは隔絶した世界に住んでいるように見えていたキャラクターたちが、警察に捕まったりカウンセリングを受けたりしているシーンは、現実世界とキャラクターの格好とのアンバランスさがむしろ笑いを誘うギャグシーンのように楽しむことができた。
7 機動戦士ガンダム GQuuuuuuX(アニメ)監督:鶴巻和哉
【概要】
スペース・コロニーに住む女子高生アマテは、偶然運び屋のニャアンと出会い、非合法なジャンク屋に関わってしまう。正体不明のモビルスーツ 赤いガンダムを捕縛しようとする軍警察の横暴を許せないアマテは、目の前に横たわる最新鋭モビルスーツ ジークアクスに飛び乗る。
【考察】
ファンの間では不可侵の聖域のようになっていた初代ガンダムシリーズを大胆に作り変え、パラレルワールドとして物語を進めていた。これまでに無い発想で原型が無いほどに展開が変わっているが、キャラクターデザインや声優を一新することで、あくまで別の物語であることを強調し、視聴者、特に初代ガンダムファンにとって受け入れられやすいように作られていたと考える。
8 サンダーボルツ(映画)監督:ジェイク・シュライアー
【概要】
〈サンダーボルツ*〉よ、集結せよ——アベンジャーズに代わって世界を救え!人類消滅の危機…アベンジャーズ全員を合わせた以上のパワーを持つセントリーの襲来で、ニューヨークは闇にのまれ、人々が影だけ残して消されていく。この危機を阻止するため集められたのは、〈超クセ強な無法者〉たち!?「最強でも、ヒーローでもない—でも、やるしかない!」ヒーローになれなかった奴らの人生逆転をかけた【敗者復活戦】が始まる!型破りなマーベルの新チーム“*ニュー・アベンジャーズ”誕生を見届けろ!
【考察】
これまでのマーベル映画で敵としてヒーローに立ちはだかったキャラクターたちが、ヒーローとして再起する作品だった。物語全体を通して“やり直す”ことをテーマとして扱っており、ヴィランとして犯した過ちと向き合いやり直すこと、また、エレーナとアレクセイの血の繋がっていない親子関係を新たにやり直すことなど、それぞれのキャラクターの抱える問題を浮き彫りにした上で、最終的にチームでそれらを乗り越えるという構成だった。
ヒーローチームの不在により勢いが無くなっていたマーベルシリーズにとって、新たなスタートを切る作品としての役割があると考える。しかし、メインのキャラクターは過去作品に登場した敵となっているため、視聴者が過去作を全て知っている前提で話が進むため、初めてマーベル作品に触れる人には若干のハードルの高い作品となっている。
9 ファンタスティックフォー(映画)監督:マット・シャクマン
【概要】
宇宙ミッション中の事故で特殊能力を得た4人のヒーロー・チームは、その力と正義感で人々を救い、“ファンタスティック4”と呼ばれている。 世界中で愛され、強い絆で結ばれた彼ら“家族”には、間もなく“新たな命”も加わろうとしていた。 しかし、チームリーダーで天才科学者リードのある行動がきっかけで、惑星を食い尽くす規格外の敵”宇宙神ギャラクタス”の脅威が地球に迫る! 滅亡へのカウントダウンが進む中、一人の人間としての葛藤を抱えながらも、彼らはヒーローとして立ち向かう。 いま、全人類の運命は、この4人に託された——。
【考察】
今まで存在する過去作品が膨大すぎることから敬遠されることがマーベル作品の弱点だったが、この作品は要求される事前知識が全く必要のない、まさしく新世代のマーベル作品と言えるものだった。四人のヒーローが家族として一緒に暮らしている様子はホームドラマのような作りになっており、敵と戦うアクションシーンとは違う魅力があった。また、ヒーローたちが能力を得たきっかけや現在の世界での立ち位置などをダイジェストで初めに流しておくことで、その後の展開にしっかりと時間を使うことができていた。
家族がテーマとなっているため、古き良き家族の形が描かれており、とても懐かしく感じた。特に子を産み、母となった女性の強さがこれでもかと描かれていて、昨今ハリウッドなどで多く登場する“強い女性”とは違い、強いことに納得感がありつつ、強さが世界をまとめ上げるカリスマや敵を追い詰める強さに繋がっており、今の時代の流れから少し外れつつも古臭さを感じさせない描写となっていた。
10 恋する寄生虫(小説)作者:三秋縋
【概要】
失業中の青年・高坂賢吾と不登校の少女・佐薙ひじり。一見何もかもが噛み合わない二人は、社会復帰に向けてリハビリを共に行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる。しかし、幸福な日々はそう長くは続かなかった。彼らは知らずにいた。二人の恋が、<虫>によってもたらされた「操り人形の恋」に過ぎないことを……。
【考察】
設定の斬新さはありながらも、主な魅力はキャラ同士のかけ合いとなっており、三秋縋から生まれたキャラクターであることははっきりとわかるにもかかわらず、しっかりと口調や価値観などでそれぞれのキャラが立っていた。主人公とヒロインがお互いに惹かれ合う過程がとても丁寧に描かれており、だからこそ中盤で真相が明かされた際に読者と主人公の思考が一致し、より感情移入することができるつくりになっていた。作中には合理よりも感情を優先するキャラが多く、しかし先述したようにこの作品はキャラへの感情移入がとてもしやすいつくりになっているので、読者を俯瞰した位置からキャラの視点まで引きずり込み、読者の中でノイズが生まれることを防いでいると考える。
ただ、読み進めるうちに寄生虫の設定が描きたい展開のためのものであると読者が分かってしまい、斬新な設定に惹かれて読み始めた者にとっては肩透かしを食らったように感じてしまうと考える。しかし、斬新な設定と世界観で等身大の男女の出会いと別れを描くのが三秋縋作品の魅力であるので、三秋にはそのままでいて欲しい。
11 るろうに剣心 the final(映画)監督:大友啓史
【概要】
日本転覆を企てた志々雄真実との死闘を終えた剣心たちは、神谷道場で平穏な日々を送っていた。そんなある日、何者かが東京中心部を相次いで攻撃。やがて剣心は、ある理由から剣心に強烈な恨みを持つ上海の武器商人・縁との戦いに身を投じていく。キャストには緋村剣心役の佐藤健、神谷薫役の武井咲、相楽左之助役の青木崇高、高荷恵役の蒼井優、斎藤一役の江口洋介らおなじみの俳優陣が再結集。新たなメンバーとして、シリーズ史上最恐の敵となる縁役を新田真剣佑、かつての剣心の妻で、剣心が不殺の誓いを立てる理由となった女性・雪代巴役を有村架純がそれぞれ演じる。
【考察】
戦いの規模や危機感などは前作よりも下がっているが、その分アクションシーンのクオリティは前作から経った年数の分だけ上がっているため、見ている内にそれが気になることは無いようになっている。るろうに剣心のアクションの醍醐味である多対一の戦闘だけでなく、一対一の戦闘も、前作を超えるレベルに仕上げられており、総決算として相応しい出来であったと考える。
敵である縁を演じる新真剣佑の演技が素晴らしく、マフィアのボスとしての底知れなさ、悪辣さと、一人の姉を想う弟としての幼さという正反対の性質を別人ではなく同一人物として演じ切ることができていた。初めはバランス良く保たれていたその性質が、戦闘が長引くごとにバランスが崩れ、ぐちゃぐちゃに混ざっていく様が描かれ、視聴者側は縁を敵ではなく遺された可哀想な弟として認識してしまうような作りとなっていた。
12 来る(映画)監督:中島哲也
【概要】
恋人の香奈との結婚式を終え、幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に謎の来訪者が現れ、取り次いだ後輩に「知紗さんの件で」との伝言を残していく。知紗とは妊娠した香奈が名づけたばかりの娘の名前で、来訪者がその名を知っていたことに、秀樹は戦慄を覚える。そして来訪者が誰かわからぬまま、取り次いだ後輩が謎の死を遂げる。それから2年、秀樹の周囲で不可解な出来事が次々と起こり、不安になった秀樹は知人から強い霊感を持つ真琴を紹介してもらう。得体の知れぬ強大な力を感じた真琴は、迫り来る謎の存在にカタをつけるため、国内一の霊媒師で真琴の姉・琴子をはじめ、全国から猛者たちを次々と召集するが……。
【考察】
前半の完成度の高いホラー演出から、一気に霊能力者バトルに変わっていく様がとても爽快で、エンタメ映画として非常に満足度の高いものとなっていた。霊能力者たちのキャラが、すぐに出番が無くなる者であってもしっかりと立てられており、少ない出番でも視聴者に強烈なインパクトを残せられるようになっていた。
13 ゴールデンカムイ(ドラマ)監督:久保茂昭
【概要】
明治末期の北海道。日露戦争を生き抜いた元軍人・杉元(山﨑賢人)は、アイヌの少女・アシ(リ)パ(山田杏奈)、網走監獄の脱獄囚・白石(矢本悠馬)とともに、金塊のありかを示す暗号を彫られた24人の“刺青囚人”を探していた。だが、「第七師団」を率いる鶴見(玉木宏)や尾形(眞栄田郷敦)、元新撰組「鬼の副長」こと土方(舘ひろし)も囚人たちを狙う。杉元たちは旅路で、アシ(リ)パの父の古き友のキロランケ(池内博之)、アイヌの女 ・インカ(ラ)マッ(高橋メアリージュン)、「札幌世界ホテル」の女将(おかみ)の家永(桜井ユキ)、元ヤクザの若衆の夏太郎(塩野瑛久)など、腹の中が読めない者たちと出会う。
さらには、鶴見の忠臣・鯉登(中川大志)、網走監獄典獄の犬童(北村一輝)、伝説的な熊撃ち、“煌めき”を追い求める男、ヤクザの親分、天才剝製職人、詐欺師などクセ者たちが次々に現われる!波乱の金塊争奪戦が幕を開ける!
【考察】
ただ原作を再現するだけでなく、漫画と実写の媒体の違いを活かし、実写ならではのアクションと演出が多く使われていた。中盤にて谷垣が旅立ちを決意するシーンでは、漫画には無かった朝日が差し込む演出を採用し、画としての見応えを増し、谷垣の心情をよく描写することができていた。
原作でよく語られているギャグシーンは、漫画の誇張表現をそのまま再現することはせず、あくまでそれがメインにはならないような工夫がされていたように感じた。
14 九龍ジェネリックロマンス(アニメ)監督:岩崎良明
【概要】
人々の活気とどこか懐かしい空気に溢れる街・九龍城砦で鯨井令子は、不動産会社 “旺来地産” に勤めている。先輩の工藤発は遅刻の常習犯にして何事にも大雑把な性格だが、九龍の街をこよなく愛している。
ある日、九龍から懐かしさは特に感じないと言う令子に、その魅力を伝えるため街に連れ出した工藤。最後にたどり着いた「金魚茶館」という工藤行きつけの不思議な喫茶店で、令子は店員のグエンに工藤の恋人と間違われる。人々の活気とどこか懐かしい空気に溢れる街・九龍城砦くーろんじょうさいで鯨井令子は、不動産会社 “旺来地産” に勤めている。先輩の工藤発は遅刻の常習犯にして何事にも大雑把な性格だが、九龍の街をこよなく愛している。
ある日、九龍から懐かしさは特に感じないと言う令子に、その魅力を伝えるため街に連れ出した工藤。最後にたどり着いた「金魚茶館」という工藤行きつけの不思議な喫茶店で、令子は店員のグエンに工藤の恋人と間違われる。
【考察】
実際に存在する九龍城塞を舞台にしており、背景はかなり現実と近いものになっており、制作のこだわりを感じさせるものとなっていた。また、九龍で暮らす人々も止め画だけでなくしっかりと描写することで、緻密な背景も合わせて物語への没入を促す役割を担っていた。まず、再現された九龍が舞台で主人公が死んだ人間のコピーであるという設定が斬新で、先の展開を予想させず、視聴者を飽きさせないようになっていた。
アニメの放送期間が終わった直後に実写映画を公開するというマーケティングも、今までにないもので興味を引くようになっていた。しかし、アニメの視聴者がそのまま実写映画を見てくれるとは少し考え難く、このマーケティングが正しいものであるとは現状では言えないと考える。
15 パンティ&ストッキングwithガーターベルト(アニメ)監督:今石洋之
【概要】
神と悪魔の狭間の街、ダテンシティ。
今日も人知れず恐ろしい悪霊<ゴースト>たちが街を蝕む。
そんな時、人々の欲望や怨念の魂たる悪霊<ゴースト>を、人知の及ばぬ光をもって消し去る者達がいた。
その名は、天使 パンティ&ストッキング!!
地上に蔓延る闇を祓う使命を託された堕天使姉妹。
その正体は果たして神の使いか…悪魔の僕しもべか…。
【考察】
海外のカートゥーンのような絵柄のキャラがどぎつい下ネタを叫ぶというギャップが見ていて面白く、所々に挟まれる様々な作品のオマージュがカオスさを呼び、この作品でしか味わえない魅力が生まれていた。1期では全体的に品がない下ネタが多く、視聴者を選ぶものとなっていたが、振り切った下ネタが作品特有の魅力となり15年経っても2期を望むファンが多くいたことの理由の一つとなった。
2期からは下ネタもさらに下品になり、さらに毎話必ずオマージュが差し込まれるようになり、そのオマージュも有名なものから日本人がほとんど知らないものまで様々なバリエーションがあり、さらに登場キャラも増えたため、見応えという意味では1期から大幅に進化したものであると言える。
16 無職転生 ~異世界行ったら本気だす~(アニメ)監督:岡本学
【概要】
34歳・童貞・無職の引きこもりだった男は車に撥ねられ、その一生を終える……はずだった。しかし、男が次に目を覚ましたとき、そこは剣と魔法の異世界であった。少年・ルーデウスとして転生した男は考える、この世界ならば、自分も本気で生きていくことができるかもしれない……と。
【考察】
転生もののテンプレをなぞりながらも、転生してからの人生を丁寧に描いているため、視聴者が主人公を成人男性としてではなくその世界の子供として認識するようになり、子供の中身が中年男性であることへの嫌悪感をあまり抱かせないつくりになっていたと考える。全体を通して“家族”をテーマにしており、転生者として異世界の住人としての自覚が薄かった主人公が、家族との交流を経てその自覚を持つまでを描いており、中世ヨーロッパに近い世界観であるがゆえに、家族との繋がりを重視するある意味前時代的な物語でも違和感なく展開できている。
また、アニメではそれぞれの種族で独自の言語を使用していることを表現するために一から言葉を作っており、異世界としてのリアリティが出ると同時に、主人公が日本語を話すシーンではそれを上手く活かした演出をしていた。
幼少期から青年期までを丁寧に描いているため、主人公へ感情移入しやすくなる作りとなっていた。
17 負けヒロインが多すぎる!(アニメ)監督:北村翔太郎
【概要】
ライトノベル好きの達観系ぼっち・温水和彦は、ある日偶然クラスの人気女子・八奈見杏菜が幼馴染の男子生徒に振られている現場を目撃してしまい、その後立て続けに、陸上部の焼塩檸檬、文芸部の小鞠知花という負け感漂う女子たちと関わりを持つようになる。
負けヒロイン――マケインたちになぜか絡まれる温水の謎の青春が、ここに幕を開ける!
【考察】
負けヒロインという立ち位置をコメディチックに描きながらも、キャラクターが失恋と向き合い、新たに前を向くまでの過程はしっかりと真面目に描くため、メリハリのきいたつくりになっている。アニメの範囲では主人公は傍観者の立ち位置を貫いており、主人公と視聴者の視点が一致し、視聴者の気持ちを代弁するという役割も持っていると考える。
18 ダンジョン飯(アニメ)監督:宮島善博
【概要】
ダンジョン深奥で、レッドドラゴンに妹が喰われた! 命からがら地上へ生還した冒険者のライオス。 再びダンジョンへ挑もうとするも、お金や食糧は迷宮の奥底……。 妹が消化されてしまうかもしれない危機的な状況の中、ライオスは決意する。
「食糧は、迷宮内で自給自足する!」 スライム、バジリスク、ミミック、そしてドラゴン! 襲い来る魔物たちを食べながらダンジョン踏破を目指せ、冒険者よ!
【考察】
常に食べることをテーマにしており、西洋風の世界観で日本的な「食」の価値観が掲示されることによるアンバランスさがあると初めは感じたが、すぐに気にならなくなるほど作品の雰囲気に馴染んでいた。
細かな設定がとても練られており、その世界の言語や魔法などにおいて、通常では考えないようなところまで設定があり、その上で作中で細かな設定をひけらかすようなシーンが無いことによって、設定がそのまま作品のリアリティの向上に繋がっている。
19 うずまき(アニメ)監督:長濱博史
【概要】
女子高生の五島桐絵と恋人の斉藤秀一が暮らす町が、異様なうずまきに汚染され始める。町の誰もがうずまきの呪いに侵されるなか、桐絵と秀一は果てしない恐怖と絶望にのみ込まれてゆく。
【考察】
「うずまき」をテーマに一つの町を舞台にして一話完結形式で物語が進められていく。どんな怪奇現象が起きても舞台となっている町そのものが崩壊することは無かったが、物語が進むごとに町にも被害が及ぶことが多くなり、次第に怪奇現象が一つの災害となって町を襲うことになる。話のスケールがどんどん大きくなっていき、最後にはジャンルがホラーから変わってしまっているように感じたが、最後まで「うずまき」が何なのか視聴者には明かされず、正体不明の恐怖がずっと続いているため、ホラーという軸から逸脱してはいなかったと考える。
20 マン・オブ・スティール(映画)監督:ザック・スナイダー
【概要】
無敵の能力を備えながらも、それゆえに苦悩して育った青年クラーク・ケントが、いかにしてスーパーマンとして立ち上がったのか、これまで描かれてこなかったスーパーマン誕生の物語を描く。
【考察】
ヒーローとしてのスーパーマンと言うよりは、圧倒的強さを持った“最強”としてのスーパーマンを描いた作品だった。スーパーマンのルーツを初めに掲示しつつ、彼がどういう思いで地球で育ったのかは中盤まで明確にしないことで、スーパーマンの真意が気になるつくりになっている。
クリプトン星人との戦いで街を破壊しまくるシーンは迫力満点で緊迫感あふれるシーンであると同時に、視聴者がスーパーマンの強すぎる力を恐れてしまい、作中のアメリカ国民と同じ気持ちになるようになっている。そしてこのつくりが次作以降の展開へと繋がっていくため、DCUの始まりに位置する作品として非常に完成度の高いものとなっている。
21 寄生獣 ザ・グレイ(ドラマ)監督:岩明均
【概要】
人間を宿主として寄生し、全身を支配しようとする正体不明の寄生生物が人間社会に混乱をもたらし始めたこの邪悪な存在の台頭を阻止すべく立ち上がる人間と寄生生物の戦いを描く SF スリラー。
【考察】
原作のテーマである「寄り添い生きる獣」という意味での寄生獣というものは全体を通して一貫しているように感じたが、主人公に寄生した寄生生物があまりにも初めから主人公に対して友好的すぎるように思えた。そのため原作にあった寄生生物と宿主の人間との交流によって生まれるドラマが無く、人間と寄生生物の戦いを描くモンスターパニックアクション作品としての魅力が主だったと考える。
カメラワークやCGが現代の最新技術を駆使したものとなっており、とても見応えのあるものとなっていた。特にドローンを使用したカーチェイスシーンのカメラワークは疾走感あふれるシーンもなっていて、主な戦闘シーンがCGメインであったことが惜しく思えるほどだった。
22 CITY(アニメ)監督:石立太一
【概要】
実況は黒部五郎がお伝えします。
何かが芽吹いて参りました、ここCITY。
誰が信じましょう! まさかのカバンに固焼きそばがダイビング!!
まつりとえっちゃんの大冒険! 楽しいが渋滞しております。
鬼カマボコ、ネタの代わりに出てきたのは涙だー!!
とかく前代未聞! それがCITY!
【考察】
タイトルの通り、一つの町に住む人々の生活を描いたコメディ作品だった。原作者のあらゐけいいちの代表作である『日常』のエッセンスを感じながらも、スポットライトがより広く多くの人物に当たるようになっており、また当時より作画も進化しており、京都アニメーションにおける『日常』の正統進化と言える作品だった。
多くの人物に焦点を当てながらも、メインとなる三人のパーソナリティはしっかりと描き、視聴者に愛着を持たせられるようにつくられており、また、その他の登場人物も少ない出番で強烈な印象を残すキャラであったり、何度もギャグを繰り返す「天丼」を駆使したりなどで、より多くのキャラを視聴者に覚えてもらえる取り組みがされていた。
23 銀河特急ミルキーサブウェイ(アニメ)監督:亀山陽平
【概要】
銀河道路交通法違反で逮捕された強化人間の
チハルとサイボーグのマキナ。
同じタイミングで警察に捕まった、強化人間のアカネとカナタ、サイボーグのカートとマックスらクセのあるコンビを集め、警察官・リョーコが全員に課したのは、奉仕活動として惑星間走行列車・通称”ミルキー☆サブウェイ”の清掃をすること。
簡単な任務だったはずが、突如暴走し始める”ミルキー☆サブウェイ”!
車内で慌てふためくメンバーたちは、やがて大事件に巻き込まれていってしまう!
【考察】
CGが他にない独特な味を出しており、不気味の谷現象などによる視聴前のハードルの高さなど、CGアニメーションで発生する問題が発生しづらくなっているように感じた。キャラクターの動きや表情がとても自然で、アニメーションではなく実写の映像を見ているような気にさせるほどであり、また、声優の演技も実際の日常会話になるべく近づけた自然なものとなっているため、SFという世界観でありながらも、リアリティのある空気感が生まれていた。
24 メイドインアビス(アニメ)監督:小島正幸
【概要】
巨大な大穴『アビス』の縁に築かれた街、『オース』で暮らす探窟家見習いの少女・リコ。ある日、探窟中に孤児院の仲間の少年・ナットが巨大な蛇状の生物「ベニクチナワ」に襲われているところに遭遇する。とっさの機転で注意を逸らしたリコだったが、今度は自分がベニクチナワに襲われてしまう。絶体絶命のその瞬間、突然辺りが閃光と轟音に包まれて・・・。
【考察】
メインとなる登場人物たちが、一度入れば戻って来られないかもしれないアビスに潜ることへの葛藤が全く無く、まだ見ぬ冒険への浪漫を全面に出しているため、視聴者も命の危険などはあまり気にせず同じ気持ちで視聴することができた。ただ、アビスへ潜ってからは主人公の女児がかなりの頻度で酷い目に遭わされるため、アビスを甘く見ていた主人公と同様に視聴者にもアビスの厳しさを思い知らせられるつくりになっていた。そのような目に遭わされても、先述されたように主人公が冒険を恐れたり諦めようとすることは無く、段々と視聴者が主人公の精神の異常性に気づくようになっている。
また、アビス内の生態系は細かに設定されており、それらに翻弄され、時には利用するやり方でキャラの個性が演出されている。アビスに初めて入った主人公と視聴者の視点が重なり、物語が進むごとに先の景色が気になるようになっている。
25 メダリスト(アニメ)監督:山本靖貴
【概要】
スケーターとして挫折した⻘年・明浦路司が出会ったのは、フィギュアスケートの世界に 憧れを抱く少⼥・結束いのり。
リンクへの執念を秘めたいのりに突き動かされ、司は⾃らコーチを引き受ける。
才能を開花させていくいのりと、指導者として成⻑していく司。
タッグを組んだ⼆⼈は栄光の“メダリスト”を⽬指す−−−!
【考察】
躍動感や迫力あふれる見開きや表情などで魅せていた原作から、演出面では多くの変更があった。演技シーンでは実際のプロスケーターの動きをモーションキャプチャで取り入れているため、映像作品ならではの魅力が生まれている。また、その結果、演技中のキャラのセリフなども削られ、表情や息づかいでその時の感情を表現する演出となっていた。その他にも、原作が月刊誌での連載であり、アニメが1クールしかないという問題から、話の構成も変更が加えられており、原作とアニメではほぼ別作品と言っていいほどとなっていた。しかし、原作にあった夢を追う少年少女とコーチたちの熱い様などはそのままにアニメに落とし込んでいるため、作品の軸となる部分は変わらないままにできていたと考える。
26 パシフィック・リム(映画)監督:ギレルモ・デル・トロ
【概要】
13年に突如、太平洋の深海から巨大生命体が出現し、世界中の大都市は次々と破壊され、人類は絶滅の危機にさらされる。そこで人類は巨大生命体と戦うために英知を結集し、人型巨大兵器“イェーガー”を開発。一時は巨大生命体の侵攻を食い止める事に成功するが、再び彼らの猛威にさらされる事に。
【考察】
初めにダイジェスト方式で作品の世界観を説明していたが、怪獣と巨大ロボのバトル、またそのロボの設定もかなり複雑という非現実的な題材であるにもかかわらず、クオリティの高いCGによってリアリティが増しており、視聴者はすんなりと設定を受け入れることができるようになっていた。また、その説明パートで主人公の過去を同時に開示するため、現代のパートに尺を存分に使うことができていた。
敵となる怪獣を意思のない化け物とすることによって、メインとなる主人公二人の掘り下げが十分に行われており、感情移入が容易となっていた。また、サブキャラの掘り下げはあまり行われていなかったが、その分佇まいや使っているロボの見た目や性能でどのような性格なのかある程度予想できるようになっており、画面上に写っているもの全てを活用してキャラの掘り下げをしていたと考える。
27 デッドマウント・デスプレイ(漫画)原作:成田良悟
【概要】
はるか遠い異世界――世界を救うため、「災厄潰し」と呼ばれる英雄シャグルアは希代の死霊使い(ネクロマンサー)「屍神殿」に立ち向かう。
熾烈な戦いの末にシャグルアが屍神殿を打倒したかに見えたその時、魔術が発動し周囲は光に包まれる。
その瞬間、魂は遠い異世界へ転移し現代の新宿で「四乃山ポルカ」という少年の体で目覚めていた。
喉を切り裂かれ、殺害されたばかりの体で新宿の街をさまよっていた彼は、一人の少女に救われる。
崎宮ミサキと名乗ったその少女と対峙しているうちにポルカの記憶が徐々に蘇ってくる。
四乃山ポルカを殺害したのは目の前の少女、「崎宮ミサキ」だった。
再びポルカを殺そうと、彼女は襲いかかってくる。
【考察】
まず異世界の住人が日本の新宿に転生するというアイデアが斬新で目を引くものとなっており、またそれが単なる出オチで終わらず、しっかりとその後の展開に深く関わってくるようになっている。異世界の住人だからといって新宿でいわゆる無双をするというわけではなく、新宿の住人たちがパワーバランスとしては上で、主人公は彼らがしらない魔法を使うことで対等になっているという状況で、それも斬新な設定となっている。
登場人物がとても多く、ジャンルは群像劇と言えるのだが、各キャラのデザインや性格が個性的なので、名前を覚えられなくても展開についていくことができるようにつくられていた。
28 ヴァニタスの手記(漫画)作者:望月淳
【概要】
吸血鬼(ヴァンピール)の青年 ノエは師から頼まれ、吸血鬼に呪いを振り撒くという魔導書“ヴァニタスの書”を探しにパリへ向かっていた。
パリへ向かう飛空船の中で、ある事件に巻き込まれたノエは、吸血鬼の専門医を自称する人間 青い瞳の青年ヴァニタスと出会う。
【考察】
メインのヴァニタスとノエがバディとしてひとまず形におさまるまで相当な時間を使っており、これは初めにメイン二人の行動原理をはっきりさせておくことで、その後の群像劇へと移行する際に、話を展開させやすいようにするためと、より多くのキャラに尺を使えるようにするためであると考える。
人間と吸血鬼という二つの種族の物語であるため、人間から吸血鬼への差別などが初めは描かれるが、物語が進んでいくにつれて吸血鬼の間にも差別が存在することがわかり、被差別種族の中にもさらに被差別種族が存在するという、リアルな展開となっている。また、作中で人格者とされているキャラも自然と差別を行うなど、差別描写に関してはとてもリアリティのある描写がされている。
29 君が死ぬまであと100日(漫画)作者:右腹
【概要】
津田林太郎は一見普通の高校生。彼は幼稚園の頃からの幼なじみ・神崎うみに片想い中。何度告白しても、うまく伝わらなかった想い…しかし!人生4度目の告白で、やっと彼女からOKが!長年の恋がついに実った、その瞬間…彼の普通ではない能力が発動してしまう。「…うみ。余命が見える。」100日限定で生きものが死ぬまでの余命が、林太郎には見えてしまうのだ。長年の恋が実った瞬間から、愛しい彼女の余命のカウントダウンが始まってしまった。
【考察】
タイトルにもある通りのわかりやすいテーマがあり、終盤まで一貫して寄り道することなく100日を超えることを目標としているため、とてもわかりやすく読みやすいようにまとまった物語となっている。ただ、終盤からなぜか林太郎が記憶喪失になり、うみが記憶を取り戻させるために奔走するというパートになり、お互いがお互いを助け合うことで二人が対等な関係であることの表現であると考えられるが、うみの寿命を延ばすパートに比べて、林太郎の記憶を取り戻すパートは少々短く、運命に抗うことをテーマにしているならば、もう少し尺を使って劇的に描くべきだったと考える。
キャラ同士のかけあい、特にワードチョイスが独特で、この作品特有の魅力であると考える。基本的にゆるめの絵柄だが、キャラが感情を吐露するシーンでは細かな表情が描かれており、キャラの感情が直に伝わるようになっている。
30 夢と魔法の国のリドル(小説)作者:七河迦南
【概要】
楽しい遊園地デートになるはずだった杏那と優。しかし二人は突如別々の世界に引き裂かれた。杏那は異世界を魔王から救う役目を担わされ、残された優は遊園地で起きた密室殺人事件の謎を解く羽目に……。現実と夢の国、二つの密室、パズルと魔法の謎を解き、二人は再会できるのか? 紙とペンを用意して読んでも必ず欺される、異色の新感覚本格ミステリ。
【考察】
作中に登場する謎が絵として載せられており、読者も一緒に謎解きに挑戦することができた。自分で答えが分からなくても、読み進めれば解説してくれるので不都合がある訳ではなく、謎解きが得意な人も不得意な人も楽しめる作品となっていた。
現実と異世界の両方で同時に物語が進められるが、分かりづらさや冗長さは全く無く、読みやすい文章でありつつ、先が気になるようにつくられていた。また、主人公の性格が初めから完成しており、未熟さから発生する問題などが無く、物語としても読者としても、謎解きに集中することができていた。
市川諒斗
RES
8、近畿地方のある場所について 背筋
「あらすじ」
ライターである背筋が編集者で友人である小沢くんが消息を絶ったため、情報提供を募るために
書かれた小説。
ページをめくる毎に読者は新しい情報を得られる。それと同時に恐怖の全貌が段々と露わになる。
音も無く映像もないが確かに近づく恐怖が感じられる。音楽であれば「jaws」のテーマの」ような。
9、穢れた聖地巡礼について 背筋
「あらすじ」
これは俺が出会った、くだらない幽霊の話
これは僕が出会った、恐ろしい幽霊の話
これは私が出会った、ただの幽霊の話
心霊も何も人が一番恐ろしい。
10、口に関するアンケート 背筋
「あらすじ」
とある男女の肝試しの話。それを読んだ後、アンケートへの協力を求められる。
たった60ページ、本の暑さも大きさもスマートフォンよりも小さい。それなのに圧倒的な満足感。
口は災いのもと、呪いも心霊も人の口から生まれる。人の口から生まれた時には確かに嘘だったはずなのに気づくと事実になっていた。何もかも誰もかれもが勘違いをしている。全ては口から生まれている。
「あらすじ」
ライターである背筋が編集者で友人である小沢くんが消息を絶ったため、情報提供を募るために
書かれた小説。
ページをめくる毎に読者は新しい情報を得られる。それと同時に恐怖の全貌が段々と露わになる。
音も無く映像もないが確かに近づく恐怖が感じられる。音楽であれば「jaws」のテーマの」ような。
9、穢れた聖地巡礼について 背筋
「あらすじ」
これは俺が出会った、くだらない幽霊の話
これは僕が出会った、恐ろしい幽霊の話
これは私が出会った、ただの幽霊の話
心霊も何も人が一番恐ろしい。
10、口に関するアンケート 背筋
「あらすじ」
とある男女の肝試しの話。それを読んだ後、アンケートへの協力を求められる。
たった60ページ、本の暑さも大きさもスマートフォンよりも小さい。それなのに圧倒的な満足感。
口は災いのもと、呪いも心霊も人の口から生まれる。人の口から生まれた時には確かに嘘だったはずなのに気づくと事実になっていた。何もかも誰もかれもが勘違いをしている。全ては口から生まれている。
佐藤 清大
RES
2年 佐藤清大 夏休み課題
1.ヴァージン・パンク/Clockwork Girl 監督:梅津泰臣
[あらすじ]
西暦2099年、医療用人工人体技術「ソーマディア」を違法に改造した犯罪者と、彼らの殺処分を行うバウンティハンターのいる世界。
児童養護施設出身の神永羽舞は、とある事件からバウンティハンターのMr.エレガンスと因縁を持つ。やがてバウンティハンターとなった羽舞の前に再び現れたMr.エレガンスの手によって、彼女の運命は狂いはじめる。
[考察]
令和に顕現した梅津作画の超大作。YouTubeに載っているティザーPVだけでもぜひ見ていただきたい。10年という長い期間を制作に費やしたとのことで、梅津監督のフェチズムを多分に含んだキャラクター描写と近未来SFの世界で繰り広げられる圧巻のバトルが、きわめてリアルで繊細かつ大胆な作画・演出によって表現されている。30分という短い尺にもかかわらず長編作品を見たと錯覚するような、濃密なストーリーと誰しもが満足する映像表現が素晴らしい。今作も「殺し屋の少女×キモオヤジ」という梅津が長らく用いてきたプラットフォームのストーリー設定であるが、今作におけるキモオヤジ枠、Mr.エレガンスは、前作までの同ポジションのキャラクターと比較して、主人公となる少女へ求めるものが肉欲的なものからより精神的な、愛情ともいえる要素へ傾向しているように感じた。
2.タコピーの原罪(アニメ) 監督:飯野慎也
[あらすじ]
ハッピーを広めるため地球に降り立ったハッピー星人のタコピーは人間の女の子しずかと出会う。ピンチを救ってもらったタコピーは、しずかの笑顔を取り戻すため不思議な力を持つハッピー道具で奔走する。しかし、しずかはおうちと学校で何か事情を抱えているようで…。これは、ぼくときみの最高にハッピーな物語――。
[考察]
視聴後は想像以上に心がえぐられてしまって、さすが配信のみでの公開というだけあるなと感じた。全6話という視聴ハードルの低さも、この泥沼に足を踏み入れるきっかけとして大いに機能している。
この作品のキーパーソンであるタコピーの存在は、人間のコミュニティに介入する上でその複雑で込み入った事情を汲み取ろうとせず、無邪気に“ハッピー”をふりまこうとする底なしの明るさがストーリーやキャラクターの置かれた状況の暗さ・重さと不協和音を奏で、その温度差から不気味さを発生させるものである。
さらにこのアニメでは、広角レンズによってパースが強調されたシーンが多く用いられている。広角レンズは映す対象の形を歪ませ、不安定感を演出することができるとともに、GoProで撮影された映像などを例に挙げると、映像の視聴者がその場にいるような臨場感やダイナミックさ・迫力を演出することもできる。本作で多分に用いられている広角レンズによる映像表現は、ストーリーが描くキャラクターの不安感、怒りや絶望といったネガティブな感情を強調する意味があると考えられる。
3.帰ってきた あぶない刑事 監督:原廣利
[あらすじ]
刑事を定年退職したのち、横浜で探偵業を始めたタカとユージ。ある女性の依頼を受けることになった2人は、やがて巨大な陰謀に巻き込まれていく。
[考察]
あぶない刑事最新作!ほぼカーアクション目当てで観たわけだが、年を重ねて白髪交じりになったタカ&ユージが現役さながらにアクションをこなし、見る側の期待する“お約束”要素も含め曲も車もTVドラマの再現やオマージュがふんだんに盛り込まれており、どの要素をとってもファンの心を刺激しまくるいい作品だと感じた。それと同時に、前作から約10年の時を経てさらに“老い”が明確に強調された部分も多く、それでもなおダンディーで、セクシーであり続ける2人の姿は、この作品とともに年を重ねてきたであろう中年ファンにとって、「年を取ることへの道しるべ」のように映ったのかもしれないと考えた。
4.新幹線大爆破 監督:樋口真嗣
[あらすじ]
新青森から東京へ向けて定刻どおり出発した新幹線「はやぶさ60号」。車掌の高市和也は、いつもと変わらぬ思いで乗客を迎える。そんな中、1本の緊迫した電話が入る。その内容は、はやぶさ60号に爆弾を仕掛けたというものだった。爆弾は、新幹線の時速が100キロを下回ると即座に爆発するという。高市は極限状況の中、乗客を守り、爆発を回避すべく奔走する。一方、犯人は爆弾解除のかわりに1000億円を要求してくる。はやぶさ60号の乗務員・乗客はさまざまな窮地と混乱に直面し、事態は鉄道会社や政府、警察、国民をも巻き込み、犯人とのギリギリの攻防戦へと展開していく。
[考察]
前期の作品紹介で興味を持ち鑑賞するに至ったが、JR東日本全面協力というだけあって映像のクオリティが高く、臨場感があった。矢継ぎ早に指令が飛び交い現場の人間が奮闘する、そういうシーンが大好きなので終始満足感があった。
5.よふかしのうた(アニメ) 監督:板村智幸
[あらすじ]
女子がニガテな中学2年生の夜守コウはただ今、なんとなく不登校中。さらには、夜に眠れない日々が続いている。そんなある日、コウは初めて夜に、誰にも言わずに外に出た。夜風が気持ちよく、どこまでも自由で、昼間とちがう世界。コウは夜に居場所を見つける。そこに突如、謎の美少女・七草ナズナが現れる。彼女は、夜の住人・吸血鬼。コウに、夜の楽しさを教えてくれるナズナ。「今日に満足できるまで、夜ふかししてみろよ。少年」。夜に、そしてナズナに魅了されていくコウは、彼女に頼み込む。「俺を吸血鬼にしてください」。ナズナは吸血鬼になる条件を教える。照れながら。それは……。「人が、吸血鬼に恋をすること!」。果たして恋を知らないコウは、ナズナと恋をして、晴れて吸血鬼になれるのか!? ふたりぼっちの、特別な「よふかし」が始まる――。
[考察]
夜の表現が素晴らしい。コウが夜を未知にあふれた輝かしい世界と捉えていることを、アニメーションでしか表現できない鮮やかで彩度の高いグラフィックによって演出し、基本的にはそこに主要キャラ以外の人間が描かれることはない。全話を通して、主人公たちが主役となれる舞台としての夜を描くことに徹底していた。
6.よふかしのうた season2 監督:板村智幸
[あらすじ]
“夜はまだ終わらない”吸血鬼になることへの戸惑いを乗り越え、ナズナを“好き”になることを決めたコウと、コウに“惚れさせる”決意をしたナズナ。「恋」が一体なんなのか、わからないまま二人の夜は加速していく。吸血鬼を殺そうと企む探偵・鶯 餡子の手が、すぐそこまで迫る。吸血鬼の弱点は「人間時代に思い入れの強かったもの」。その弱点を予め処分しようとするが、ナズナには人間時代の記憶が一切ない。ナズナの隠された過去とは?なぜ餡子は吸血鬼を殺すようになったのか?そして、ナズナと餡子に交錯する“秘密”とは——?コウ、ナズナ、餡子……楽しい「よふかし」では終わらない、新たな“夜”がはじまる!
[考察]
1期においてコウが続けていた、自問自答の「自分探しの旅」という普遍的なテーマが、今度はナズナに焦点を当て、より直接的な意味でキャラクターが自身の過去と向き合い、今まで明かされてこなかったいくつもの過去が、テンポよく進むストーリーの中で徐々にはっきりとした形で表れてくる。
ナズナの営む「添い寝屋」は夜における悩み・不安のあらゆる解決策の提示を行う。10年をかけた餡子の自殺劇が、大まかな部分はハッピーエンドという形で失敗におわり、コンコルド効果によって餡子が積み重ねてしまった10年間という月日と、彼女に重くのしかかる喪失感や無力感を、物語のスタート地点とも言える「添い寝屋」の仕事によって緩和する、という綺麗にまとまった結末だと感じた。
そしてオリジナルストーリーとなった2期最終回では、コウが餡子の家庭を崩壊へと追いやった原因となる吸血鬼を探すこと、それによって餡子を救うことをこれ以降の第二目標として提示している。
7.今夜、世界からこの恋が消えても 著者:一条岬
[あらすじ]
無気力に生きる高校生の神谷透は、人気者の真織に無謀な嘘の告白をする。ところが意外にも本気で好きにならないことを条件に告白は受け入れられ、2人は付き合うことになる。
[考察]
前向性健忘の真織を好きになった透は彼女をその絶望の渦中から救おうとする。その時その一瞬を懸命に生きている真織を毎日あの手この手で楽しませようとする透の姿が丁寧に描かれたあと、彼は突然の死を迎え、透との約束通り泉が彼の記録を真織のもとからすべて消し去ってしまう。そこまでで描かれていたのは記録することでしか維持できない真織の記憶のはかなさであるが、それでも、真織が前向性健忘から立ち直ったあと透の存在に気付いたきっかけとなったのは、彼の提案によって絵を描き始めた真織の体が学習した記憶“手続き記憶”であり、そんな救いを提示してくれる儚くも清々しく慈愛にあふれた落とし方は、喜怒哀楽のどれにも当てはめられない不思議な感情を呼び起こさせる。
8.ミギとダリ(アニメ) 監督:まんきゅう
[あらすじ]
舞台は、1990年神戸市北区。アメリカの郊外をモデルに造られたニュータウン、オリゴン村。裕福な住民が暮らすこの町に、“ひとりの”少年が養子としてやってくる。 少年の名は秘鳥(ひとり)。 美しく聡明な少年・秘鳥に、園山夫婦は魅了されるが、 秘鳥には、大きな秘密と目的があった――。秘密とは、秘鳥は実は一人ではなく、双子の兄弟(ミギとダリ)であること。一人として生活し、学校へも 通う。そして二人はすり替わりながら協力して母の死の真相を探っていく。しだいに明かされる秘密と真実とは?
[考察]
前半はミステリアスな雰囲気とシリアスな空気の中で幾度となく繰り返されるシュールなギャグが癖になる。徐々に彼らの過去や“ふたりでひとり”を演じる理由が明るみになり、後半では2人の確執や一条家の真相といった、シリアスというか半ばホラーのような要素も加わる、
ミギとダリが2人であることが明るみになった最終話で、一連の出来事から3年後、ダリは進学校へ通うために列車に乗り込み旅立つ。真相へたどり着きカルマとも言える呪縛から解放され、ダリの負った火傷痕などから“ふたりでひとり”ではいられなくなった彼らが、互いに別々の人生を歩めるようになる結末には感動した。
9.MIU404
[あらすじ]
警視庁の働き方改革の一環で作られたという架空の設定の臨時部隊「警視庁刑事部・第4機動捜査隊」。機動力と運動神経はピカイチだが機捜経験がなく、考える前に身体が動いてしまう“野生のバカ”伊吹藍(綾野剛)と、観察眼と社交力に長けているものの、自分も他人も信用しない理性的な刑事志摩一未(星野源)がバディを組み、“第4機捜”のメンバーと共にさまざまな事件に臨む姿を描く。
[考察]
これは「誰かが最悪の事態になる前に止められる」、いわば「未来を担う」機捜隊員たちのストーリーである。彼らが見せる、単に善悪という物差しでの判断に限らず「罪を犯していようが救うべきところは救う」という姿勢は、3話にて虚偽通報をした犯罪者でありながら伊吹とともに仲間を救う選択をとった勝俣が、続編「ラストマイル」に伊吹の後輩の機捜隊員として登場していることに表れている。
最終話、現実となることを回避した最悪のエンド、志摩の死を経験した世界線ではコロナパンデミックは発生せず、東京オリンピックが正常に開催される。しかし、真のエンドは伊吹と志摩は死ぬことなく久住を逮捕するハッピーエンドにおわり、コロナ禍によってオリンピックは正常には開催されていない世界線である。そしてこの差を引き起こしたトリガーは伊吹の犯したシンプルで小さい過ちにすぎない。私たちの生きる現実の世界線につながる結末を真のエンドとすることには、時には絶望へもたどり着く選択不可能な「未来」を変えうる些細なきっかけは日常のあらゆる選択の中に潜んでいることを描き、「あおり運転」「留学生や技能実習生のトラブル」「薬物依存」「SNSの脅威」といった、あらゆる“身近に起こりうる危険”をはらんだ現実世界を取り扱った本作だからこそ、これらの脅威を現実世界の時間軸上のストーリーで取り扱うことで“リアルな脅威”の警告として機能させる意味があると考えられる。
10.ラストマイル 監督:塚原あゆ子
[あらすじ]
大手ショッピングサイトの荷物に次々と爆発物が仕掛けられる謎の連続爆破事件が発生。巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナは、未曽有の危機に立ち向かっていく。
[考察]
我々消費者は日々便利な通販サイトを使い商品が指定日通りに届くことを当たり前とし、そうでない場合は不平不満を口にする。そんな利便性と効率を追求した現代社会に仕込まれた爆弾は、ラストワンマイルの運送を担う、顧客一人一人を大切に思うかつて熟練ドライバーとして働いていた軽バン配達員と、消費社会の現代では時代遅れとなった堅牢で高い耐久性を持つ洗濯機によって、最後には最小限の被害をもって処理された。止まらない効率化のアンチテーゼとして機能する“非効率を大切にするベテランの精神”を伏線にとんだ巧みな脚本で描いている。
真犯人であるまりかの死によって明らかになった最後の爆弾が届けられたのは404号室、本作と世界観を共有しているMIU404のタイトルを差し込んできているとともに、それが最後まで見つかるのことなかった、「404 Not found」な爆弾であったことを示していると考えられる。
11.機動戦士ガンダム SEED FREEDOM 監督:福田己津男
[あらすじ]
独立運動や侵攻により、いまだ終結しない争い。やがてキラたちは、沈静化のために創設された世界平和監視機構に参加し、戦闘に加わっていく。
[考察]
美しさや才能だけが愛を構成するのではない。優れた人類“コーディネイター”と自然状態の人類“ナチュラル”という優劣をつけられた異人種間で、コーディネイターらによって定められた運命にキラとラクスは互いの立場から“愛”をもって抗おうとする。
12.デイライト 監督:ロブ・コーエン
[あらすじ]
かつて緊急医療班の隊長を務めていた男。現在はタクシー運転手を職についていた彼だったが、あるとき凄惨なトンネル事故の現場に遭遇する。過去の経験に突き動かされ、彼はトンネル内部への進入を決行。中に閉じこめられた生存者たちを救い出すべく、命懸けで奔走する。
[考察]
スタローン主演のディザスター映画。冒頭のトンネル爆破シーンの撮影ではおそらくミニチュアモデルを使用したのだろうと考えられるが、生々しい崩落の映像と次々に車両を襲う火炎の勢いには圧倒される。
映画のラストシーンでは、公開当初(96年)まだ悲劇に襲われていなかったWTCビルが背景に映し出される。9.11のテロ攻撃でビルを襲った猛火と崩落はそこにいた多くの人の命を奪った。悲劇の中の救出劇をテーマにした本作の締めとしてカメラに収められたWTCビルの存在は、現実にはスタローンのようなヒーローは不在であり、予測できない脅威から犠牲者を増やしてしまう、そんな救われない悲惨な結末を思い出させる。
13.機動警察パトレイバー2 the Movie 監督:押井守
[あらすじ]
2002年、謎の戦闘機が横浜ベイブリッジを爆破、公には自衛隊機であったと報道され、日本は緊張状態に陥る。厳戒態勢の中、警視庁特車二課の後藤は、この事件の容疑者に、1999年のPKFで東南アジアに於いて行方不明になっている元自衛隊員、柘植を挙げて捜索を始めるが、その頃ある飛行船が首都に向かっていた。
[考察]
荒川の指摘した“戦争でない”というだけの偽りの平和、その空虚な平和は実体を持った戦争によって埋め合わされるが、私たちはその成果だけを受け取り、モニターの向こうに戦争を押しやって、自分たちがその戦線のただ後方にいるに過ぎないことを忘れてしまう。現代の戦争およびその報道は、生身の人間を殺戮する現実味のない異常な世界観を安全圏にいる私たちに見せつける。21世紀に入っても変わることのなかったこの問題を提起した本作は、戦争映画とは全く違った視点でその脅威を私たちに伝えてくれる。
14.GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊 監督:押井守
[あらすじ]
西暦2029年。公安の精鋭による特殊部隊「攻殻機動隊」が、国際手配中のハッカー「人形使い」が日本に現れるとの情報を掴む。そんな折に搬送されてきた、事故に遭ったというサイボーグ。その体には、危険な秘密が隠されていた。
[考察]
物語前半にて登場するゴミ収集車の男が犯罪に加担したのは、人形遣いにより改竄された記憶に基づいて、そこに生じた問題を解決しようとした結果であり、これは、記憶のもろさ・記憶を操作されるこの世界がはらんだ危険性を示している。
物語の中盤、船上で素子がバトーとの会話の中で口にしたのは、アイデンティティは自らの身体によってではなく、周囲の情報によっても規定され、意識を作り出すという彼女の立てた仮設であり、自分を規定するアイデンティティの在り方への執着がうかがえる。その後彼女は、謎の義体“人形遣い”の登場にその疑問を解決する糸口を見つける。
人形遣いの電脳に潜り込み、電脳がゴーストを生み出しているのか、そうでないのかを調べることで、素子が悩んでいた自らのアイデンティティが電脳と義体から作り出されたものではないか、という疑問を払拭することができる。しかし人形遣いと同期する形でコミュニケーションを取った結果は、人形遣いと素子の双方が抱いていた進化への欲求のもと、2人が融合して新たな生命体となるものであった。この結末が素子にどのような答えを与えたのかは作中に明記されていない。
15.僕だけがいない街(アニメ) 監督:伊藤智彦
[あらすじ]
漫画家としてデビューするも、いまひとつ結果を出せずに毎日を過ごす青年・藤沼悟。彼は、彼の身にしか起こらない、ある不可思議な現象に不満を感じていた。 ――再上映(リバイバル)。何か「悪い事」が起こる直前まで時が巻き戻る現象。それは、その原因が取り除かれるまで何度も繰り返される。……まるで、誰かに「お前が防げ」と強制されているかのように。しかし、ある日起きた事件をきっかけに、その現象に大きな変化が訪れる。自らの過去に向き合う時、悟が目撃する真実とは?
そして、悟の未来は――?
[考察]
“リバイバル”の能力によってかつて救えなかった加代の命を誘拐殺人犯から死守しようとする悟。その行動は結果としてその犯人八代学をも救う結果となった。タイムリープモノの作品の中でも結末の丸め方が綺麗でストレスを感じずに見れた。展開が少し異なる原作も読んでみたいと感じた。
16.Catch Me If You Can 監督:スティーヴン・スピルバーグ
[あらすじ]
高校生のフランク・W・アバグネイルは尊敬する父が母と離婚すると聞き、ショックで衝動的に家を飛び出してしまう。そして、生活のため偽造小切手の詐欺を始めるようになる。最初はなかなかうまくいかなかったが、大手航空会社のパイロットに成りすますと誰もがもののみごとに騙された。これに味をしめたフランクは小切手の偽造を繰り返し巨額の資金を手に入れるのだった。一方、巨額小切手偽造詐欺事件を捜査していたFBI捜査官カール・ハンラティは、徐々に犯人に迫っていくのだったが...。
[考察]
家族愛から犯罪に手を染め、大胆な選択と自信満々の行動で逃げ続ける。そんな天才詐欺師の配役にレオナルド・ディカプリオは最適だと感じた。彼を追うFBI捜査官はトム・ハンクスが演じており、この2人の関係性は手に汗握る逃走劇にどこか安心感を感じさせるものがある。これが実話をもとにした作品であるという点、さらに主人公はその能力が買われて後にFBIの下で働くこととなった点は驚くべきポイントだ。
17.ダイ・ハード4.0 監督:レン・ワイズマン
[あらすじ]
コンピュータを狂わすサイバー・テロの猛威により都市部の信号は消え、政府の機能が麻痺するなど、全米がパニックに陥ってしまう。偶然にも事件に巻き込まれてしまったマクレーン刑事は、テロリスト集団に迫ってゆく。
[考察]
スキンヘッドになったマクレーン刑事がワシントンを守るべくオタク少年と大奮闘。サイバー犯罪という新たな脅威に上層部フル無視で敵陣に単身乗り込み組織を壊滅させる。頑固オヤジが魅せるタフなガン&カーアクションはハリウッド映画の醍醐味である。
本作では過去の作品ではあまり前面に押し出されなかった“親子の絆”の要素が追加されており、マクレ-ンの勝利に際し娘が一役買ったシーンがこれにあたる。そしてこの絆の物語は、次作『ダイ・ハード/ラスト・デイ』において最も強化されることとなる。
18.サマーゴースト 監督:loundraw
[あらすじ]
ネットで知り合った高校生の友也、あおい、涼。彼らは、それぞれ家族や友人、将来について悩みを抱えていた。そんなある時、3人は夏にだけ現れると噂されていた若い女性の幽霊「サマーゴースト」に会おうと思い立つ。
[考察]
主人公らはみな、生きることに関する悩みを抱えており、死に近い人間だけが見ることのできる幽霊と会話し、接することができる。涼は病気により余命を宣告され、生きる願望に対し不条理な死が待ち受けている。あおいはスクールカーストによりいじめを受け、死を辛い現実からの解放と見ている。友也は2人とは異なり、優秀さから大人に期待される自らの“生”の状態に対して漠然とした死を望む。そんな3人が“サマーゴースト”に自らの人生の一歩を踏み出すきっかけを求め、結果はサマーゴーストを“精神的な死の世界”から解放するという成功に終わる。
ストーリーの帰結するポイントが若干あいまいな点など少し粗も感じるが、一番に評価できる点は作品全体に透き通るような空気感を演出する美しい背景美術だと感じる。勇気を出して一歩を踏み出してみる、という青春と成長をテーマにした作品にありがちなメッセージを秘めてはいるが、美しい色彩の背景とシンプルかつ空気感の感じられるライティング、レンズフレアなど光の演出には観る側を画面に引き付け、そのテーマを死と生、影と光という二項対立により強調している。若者に共感されやすいキャラクター設定と理解しやすい起承転結のストーリーは30分ほどの尺にキレイに収まっていた。
19.逃亡者(映画) 監督:アンドリュー・デイヴィス
[あらすじ]
シカゴに住む優秀な外科医の男は、妻殺しの容疑で逮捕される。彼は帰宅時に、家から逃げ出す片腕の男を目撃後、瀕死の妻を発見していた。無実を訴えるも死刑判決を受けた彼は、護送中の事故に乗じて逃亡。連邦保安官に追われる身となりつつも、真犯人を探し出そうとする。
[考察]
妻殺しの濡れ衣を着せられた寡黙な医師リチャード・キンブルが、潔白の証明のため逃亡を続ける。
キンブル医師は逃げた先々で医者としての責任から人の命を救いつつ持ち前の信頼と人脈で犯人の手掛かりを探し、連邦保安官のジェラードは迅速で抜かりのない捜査とあくまで真実の究明を目的とした執念の追跡で犯人を特定する。2人のプロフェッショナルが逃げる・追うの関係から共に犯人を追う関係へと変化し、結末はハッピーエンドに終わる。2時間の尺の間まったく退屈させないテンポの良さ、追う側も逃げる側も頭の回転が速くもどかしさを一切感じない構成が素晴らしい。
20.ファイナル・デスティネーション 監督:ジェームズ・ウォン
[あらすじ]
修学旅行で飛行機に乗った高校生が、離陸直前に眠りに落ち、その機体が爆発する夢を見る。彼は混乱し、パニック状態で機内から脱出。彼を連れ戻そうとした6人を残して飛行機は離陸し、そして本当に爆発する。しかしそれは、さらなる悲劇の序章に過ぎなかった。
[考察]
このシリーズが革新的だったのは、主人公らに襲い掛かる敵は見ることのできない“死の運命”である点だ。本シリーズでキーワードとなる“死の順番”は実に秩序立って運命にあらがおうとする登場人物たちを殺しにかかり、そこに目的は存在しない。非情な死が繰り返されるこの映画の見どころは、ピタゴラスイッチのように緻密に計算された殺害方式と、抵抗むなしく死の順番が近づくことにおびえる彼らと同じように、観る側の私たちもその恐怖におびえることができる点だ。“次は俺の番だ!”
21.デッドコースター 監督:デヴィッド・エリス
[あらすじ]
友人との旅行で自分の車が大事故に巻き込まれる予知夢を見たキンバリー。実際の事故からは間一髪で危機を逃れた彼女だったが、夢によって救われた人々は運命に追われるように、次々と不可解な死をとげていく。
[考察]
シリーズ2作目。最初のハイウェイでの事故シーンは交通安全ビデオにしても良いくらいよくできている。
前作の生存者とのつながりから得られた情報やや“死の順番”の新たなパターンの展開など前作から内容を発展させつつ、よりテンポよく物語が進んでいくのでシリーズ中でも見やすい1作。
22.ファイナル・デッドブリッジ 監督:スティーヴン・クォーレ
[あらすじ]
会社でチャーターしたバスで遭遇した巨大吊り橋崩落事故。事故直前に橋崩壊の映像が頭の中に浮かんだサムのおかげで、8人が大惨事から生き残った。だが、謎の男から「死は決して騙されない」と宣告され、事故の生存者が次々に悲惨な死をとげていく。だが、“他人に死を贈る”ことで“死の運命”から逃れられることが判明する。
[考察]
シリーズ5作目の本作は3D映画初のR-18指定を受けている。そのぶん死亡描写の気持ち悪さは大幅にアップしていて評価は分かれるだろう。死の連鎖を止めようと奮闘する登場人物の姿もおなじみのものであり、謎の助言者の存在も変わらない。最終的に物語の結末はシリーズ第一作、ファイナル・デスティネーションの冒頭とつながり、本作での生存者は飛行機事故にて死亡する。これは、2011年の映画にしては画面に映る車両がやたら古めかしい事からも示されていた。
23.ラッシュアワー 監督:ブレット・ラトナー
[あらすじ]
愛娘を誘拐された在ロサンゼルスの中国領事が、香港から生え抜きの刑事を呼び寄せる。それが目障りなFBIは、ロス市警きっての破天荒な刑事を監視役として派遣する。最初は反目しあっていた2人だったが次第に結束を固め、やがて意外な黒幕を突き止める。
[考察]
序盤に出てきた2階建てバスでのアクションシーンは、ジャッキーチェンが数多くの香港映画において2階建てバスをアクションの舞台としてきたことを意識していると考えられるし、彼が得意とする“飛び移る”アクションが他のハリウッド作品に比べ多用されていたことも考えると、この映画は今までに出演したハリウッド作品であまりキャラクターが活かされず伸び悩んだ過去をもつジャッキーチェンを、本国作品と同じように輝かせる目的を持った、“ハリウッドの舞台でジャッキーチェンを改めてもてなす映画”としての役割も持っていたのではないかと考えられる。
しかしながら、本作はジャッキーチェン単独ではなくバディものの映画のため、アクションシーンにおいて相方役を務めるクリスタッカーにカメラを向けたショットが度々挟まり、香港映画時代のように比較的長いショットでジャッキーチェンのアクションの巧みさを魅せるようなシーンが少ないようにも感じた。
24.オットーという男 監督:マーク・フォースター
[あらすじ]
妻を亡くして以来、不幸な日々を送るオットー。しかし、近くに引っ越してきた若い家族と出会い、機転の利くマリソルとの友情が、彼の人生を大きく変えることになる。
[考察]
アメリカの隣人文化や各キャラクターの味付け、アメリカ特有の自動車文化など、オリジナルのスウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』をハリウッド映画としてうまく再構築させている。
本作は前期教科書内容との被りが見られ、妻の死や仲たがいしたままコミュニケーションの取れなくなった親友はの存在を原因として自殺願望を抱くようになった彼の心は「治癒なき主体」を形成し、彼の偏屈な人間性をディスアビリティへと変えている。そしてそれは新しい隣人たちとのコミュニケーションにより解消される。
25.チェンソーマン レゼ篇 監督:𠮷原達矢
[あらすじ]
雇い主の裏切りにより命を落としたデンジは、「チェンソーの悪魔」であるポチタとの契約により“チェンソーマン”として蘇り、マキマのスカウトで公安対魔特異4課に所属する。憧れのマキマとのデートで浮かれているなか、雨宿りをしていると、カフェで働く謎の少女レゼと出会う。デンジはなぜか自分に興味津々なレゼを気になり始める。
[考察]
MAPPAの映像美。原作と比較できる点は、漫画の尺よりも繊細に描かれた場面転換と、キャラクターの表情管理の巧みさ、そこから最大限に引き出されるレゼの可愛らしさだと感じた。また、漫画よりも自由なカメラアングルはギャグとシリアスをより効果的に描き、場面にメリハリが生まれていた。
レゼとデビルハンターの戦闘シーンはまるで漫画を見ているかのようなカッティングが用いられ、レゼとデンジの戦闘シーンでは圧倒される大爆発の連続とグラフィカルな一枚絵に魅せられた。レゼがデビルハンターに襲われる直前、天使の悪魔が口パクでなにかを呟くシーンが差し込まれていたが、原作には無い演出であり非常に気になった。
26.宝島(映画) 監督:大友啓史
[あらすじ]
1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民らに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。そんな戦果アギヤーとして、いつか「でっかい戦果」をあげることを夢見るグスク、ヤマコ、レイの幼なじみの若者3人と、彼らにとって英雄的存在であるリーダー格のオン。しかしある夜の襲撃で“予定外の戦果”を手に入れたオンは、そのまま消息を絶ってしまう。残された3人はオンの影を追いながら生き、やがてグスクは刑事に、ヤマコは教師に、そしてレイはヤクザになり、それぞれの道を歩んでいくが、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境で、思い通りにならない現実にやり場のない怒りを募らせていく。そして、オンが基地から持ち出した“何か”を追い、米軍も動き出す。
[考察]
目玉のひとつである旧車を大胆に用いた原作再現を目的に鑑賞したが、それに加え音楽の演出や時間の推移とともに様々に変容するヒューマンドラマ、ラストに明らかになる“あの日”の真相など、3時間の鑑賞中も飽きさせることのない濃い映画だった。原作小説をまだ読んでいないので、読破後にもう一度見比べたいと思った。
27.グリーンブック 監督:ピーター・ファレリー
[あらすじ]
時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無学だが、腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていた。ある日、トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。彼の名前はドクター・シャーリー、カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいた。二人は、〈黒人用旅行ガイド=グリーンブック〉を頼りに、出発するのだが─。
[考察]
60年代のアメリカ南部において起きていた黒人差別は、当時の人間にとっては当たり前のことで、バーの人間・警官・ホテルの支配人など職種問わず差別意識を持っていた。そして現代では、人種差別に加えあらゆるマイノリティへの差別意識が表面化してきている。この作品においては上記の双方の差別が描かれ、それを主人公トニーは最終的には容認する。ドン・シャーリーは自身が被差別の身であることを理解し、その上で自らの才能を評価されようとした。
差別意識を持った人間の言う“差別される理由”は、その人のある一面にしかすぎず本質をとらえられていない。だが盲目な彼らにはそれを認識することはできない。私たちは盲目な人間に成り下がっていないだろうか、そんな問いをこの映画は提示してくれる。
28.マイ・インターン 監督:ナンシー・マイヤーズ
[あらすじ]
ニューヨークに拠点を置く人気ファッションサイトのCEOを務めるジュールスは、仕事と家庭を両立させるという誰もが羨むような人生を歩んでいた。
ところが彼女は仕事と家庭それぞれで問題が発生し、人生最大の試練に立ち向かっていた。
そんな折、会社の福祉事業で雇われたシニアインターンの40歳以上年上のベンが、ジュールスのアシスタントに就く。
初めは年上のベンの言葉など聞き入れようとしなかったジュールズだが、
人生の大先輩であるベンの言葉や行動から次第に一目置くようなり、心を通わせていく…。
[考察]
ロバート・デ・ニーロ演じるベンのユーモアにあふれた柔和な雰囲気は、本作が“老人から学べ”という説教じみた作品でないことを示してくれる。
ベンがシニアインターンに参加する理由は「誰かに必要とされたい」からであり、老後を過ごす多くの高齢者は同じ悩みを抱えている。シニア世代のワークフェアは、この映画が公開された2015年と比較して一般的に認知されるようになったが、高齢者を孤立させない、孤独にさせない社会の実現への道のりは、少なくとも日本においてはまだ遠いように感じる。
29.ターミナル 監督:スティーヴン・スピルバーグ
[あらすじ]
東欧の小国からニューヨークに訪れた男性ビクター・ナボルスキーはジョン・F・ケネディ空港に到着すると祖国クラコウジアがクーデターによって消滅したことを伝えられる。祖国の消滅によりパスポートを使用することができなくなったビクターはニューヨークに降り立つことも祖国クラコウジアに戻ることもできなくなり足止めを喰らってしまうことに。英語もまともに話せないビクターだったが空港のターミナル内で生活を始める。
[考察]
空港で足止めを食らい、そこで生き延びることを決心したビクターは、アメリカへの入国を待ち続けた。この「待つ」行為は、客室乗務員アメリアがが浮気性の彼氏を待ち続けたことにも当てはまる。この2人は望みが叶う時を平すら待っていたのだ。ただ、ビクターは待っている間にも仲間を増やし、収入を得て、英語も学んでいる。そんな努力があったからこそのアメリカ入国であり、結局は彼氏の元へと戻ったアメリアとは対比して描かれている。
また、今作の内容は教科書の“ディスアビリティ”の項目とつながる点があり、主人公ビクターにおいて、空港に通訳がいないために起こる言語の障壁はディスアビリティと言えるのではないかと考えた。
30.藁の楯 監督:三池崇史
[あらすじ]
孫娘を惨殺された政財界のドンが、容疑者の首に10億円の懸賞金を懸ける。身の危険を感じたその容疑者は、福岡で自首。そして金目当てに全国民から命を狙われる彼を、5人のSPが48時間以内に警視庁に護送することになる。
[考察]
邦画なのにスケールの大きいストーリー構成と迫力のあるアクションシーンが魅力の一つ。藤原竜也のクズ役演技は見ている側を不快感を植え付けてくるほどによくハマっていたと感じた。
それでもなお、警察サイドの詰めの甘さやタイミングの良すぎる被害者の登場など突っ込みどころは多く、この作品にリアリティを求めるのはナンセンスだと感じた。それでも、積み重なった社会不安や私人逮捕系YouTuberに代表される自警意識、昨今の要人警護で起きる事件を鑑みると、このフィクションにそういった社会性の批判を見出すこともできなくはないのかなと考えた。
1.ヴァージン・パンク/Clockwork Girl 監督:梅津泰臣
[あらすじ]
西暦2099年、医療用人工人体技術「ソーマディア」を違法に改造した犯罪者と、彼らの殺処分を行うバウンティハンターのいる世界。
児童養護施設出身の神永羽舞は、とある事件からバウンティハンターのMr.エレガンスと因縁を持つ。やがてバウンティハンターとなった羽舞の前に再び現れたMr.エレガンスの手によって、彼女の運命は狂いはじめる。
[考察]
令和に顕現した梅津作画の超大作。YouTubeに載っているティザーPVだけでもぜひ見ていただきたい。10年という長い期間を制作に費やしたとのことで、梅津監督のフェチズムを多分に含んだキャラクター描写と近未来SFの世界で繰り広げられる圧巻のバトルが、きわめてリアルで繊細かつ大胆な作画・演出によって表現されている。30分という短い尺にもかかわらず長編作品を見たと錯覚するような、濃密なストーリーと誰しもが満足する映像表現が素晴らしい。今作も「殺し屋の少女×キモオヤジ」という梅津が長らく用いてきたプラットフォームのストーリー設定であるが、今作におけるキモオヤジ枠、Mr.エレガンスは、前作までの同ポジションのキャラクターと比較して、主人公となる少女へ求めるものが肉欲的なものからより精神的な、愛情ともいえる要素へ傾向しているように感じた。
2.タコピーの原罪(アニメ) 監督:飯野慎也
[あらすじ]
ハッピーを広めるため地球に降り立ったハッピー星人のタコピーは人間の女の子しずかと出会う。ピンチを救ってもらったタコピーは、しずかの笑顔を取り戻すため不思議な力を持つハッピー道具で奔走する。しかし、しずかはおうちと学校で何か事情を抱えているようで…。これは、ぼくときみの最高にハッピーな物語――。
[考察]
視聴後は想像以上に心がえぐられてしまって、さすが配信のみでの公開というだけあるなと感じた。全6話という視聴ハードルの低さも、この泥沼に足を踏み入れるきっかけとして大いに機能している。
この作品のキーパーソンであるタコピーの存在は、人間のコミュニティに介入する上でその複雑で込み入った事情を汲み取ろうとせず、無邪気に“ハッピー”をふりまこうとする底なしの明るさがストーリーやキャラクターの置かれた状況の暗さ・重さと不協和音を奏で、その温度差から不気味さを発生させるものである。
さらにこのアニメでは、広角レンズによってパースが強調されたシーンが多く用いられている。広角レンズは映す対象の形を歪ませ、不安定感を演出することができるとともに、GoProで撮影された映像などを例に挙げると、映像の視聴者がその場にいるような臨場感やダイナミックさ・迫力を演出することもできる。本作で多分に用いられている広角レンズによる映像表現は、ストーリーが描くキャラクターの不安感、怒りや絶望といったネガティブな感情を強調する意味があると考えられる。
3.帰ってきた あぶない刑事 監督:原廣利
[あらすじ]
刑事を定年退職したのち、横浜で探偵業を始めたタカとユージ。ある女性の依頼を受けることになった2人は、やがて巨大な陰謀に巻き込まれていく。
[考察]
あぶない刑事最新作!ほぼカーアクション目当てで観たわけだが、年を重ねて白髪交じりになったタカ&ユージが現役さながらにアクションをこなし、見る側の期待する“お約束”要素も含め曲も車もTVドラマの再現やオマージュがふんだんに盛り込まれており、どの要素をとってもファンの心を刺激しまくるいい作品だと感じた。それと同時に、前作から約10年の時を経てさらに“老い”が明確に強調された部分も多く、それでもなおダンディーで、セクシーであり続ける2人の姿は、この作品とともに年を重ねてきたであろう中年ファンにとって、「年を取ることへの道しるべ」のように映ったのかもしれないと考えた。
4.新幹線大爆破 監督:樋口真嗣
[あらすじ]
新青森から東京へ向けて定刻どおり出発した新幹線「はやぶさ60号」。車掌の高市和也は、いつもと変わらぬ思いで乗客を迎える。そんな中、1本の緊迫した電話が入る。その内容は、はやぶさ60号に爆弾を仕掛けたというものだった。爆弾は、新幹線の時速が100キロを下回ると即座に爆発するという。高市は極限状況の中、乗客を守り、爆発を回避すべく奔走する。一方、犯人は爆弾解除のかわりに1000億円を要求してくる。はやぶさ60号の乗務員・乗客はさまざまな窮地と混乱に直面し、事態は鉄道会社や政府、警察、国民をも巻き込み、犯人とのギリギリの攻防戦へと展開していく。
[考察]
前期の作品紹介で興味を持ち鑑賞するに至ったが、JR東日本全面協力というだけあって映像のクオリティが高く、臨場感があった。矢継ぎ早に指令が飛び交い現場の人間が奮闘する、そういうシーンが大好きなので終始満足感があった。
5.よふかしのうた(アニメ) 監督:板村智幸
[あらすじ]
女子がニガテな中学2年生の夜守コウはただ今、なんとなく不登校中。さらには、夜に眠れない日々が続いている。そんなある日、コウは初めて夜に、誰にも言わずに外に出た。夜風が気持ちよく、どこまでも自由で、昼間とちがう世界。コウは夜に居場所を見つける。そこに突如、謎の美少女・七草ナズナが現れる。彼女は、夜の住人・吸血鬼。コウに、夜の楽しさを教えてくれるナズナ。「今日に満足できるまで、夜ふかししてみろよ。少年」。夜に、そしてナズナに魅了されていくコウは、彼女に頼み込む。「俺を吸血鬼にしてください」。ナズナは吸血鬼になる条件を教える。照れながら。それは……。「人が、吸血鬼に恋をすること!」。果たして恋を知らないコウは、ナズナと恋をして、晴れて吸血鬼になれるのか!? ふたりぼっちの、特別な「よふかし」が始まる――。
[考察]
夜の表現が素晴らしい。コウが夜を未知にあふれた輝かしい世界と捉えていることを、アニメーションでしか表現できない鮮やかで彩度の高いグラフィックによって演出し、基本的にはそこに主要キャラ以外の人間が描かれることはない。全話を通して、主人公たちが主役となれる舞台としての夜を描くことに徹底していた。
6.よふかしのうた season2 監督:板村智幸
[あらすじ]
“夜はまだ終わらない”吸血鬼になることへの戸惑いを乗り越え、ナズナを“好き”になることを決めたコウと、コウに“惚れさせる”決意をしたナズナ。「恋」が一体なんなのか、わからないまま二人の夜は加速していく。吸血鬼を殺そうと企む探偵・鶯 餡子の手が、すぐそこまで迫る。吸血鬼の弱点は「人間時代に思い入れの強かったもの」。その弱点を予め処分しようとするが、ナズナには人間時代の記憶が一切ない。ナズナの隠された過去とは?なぜ餡子は吸血鬼を殺すようになったのか?そして、ナズナと餡子に交錯する“秘密”とは——?コウ、ナズナ、餡子……楽しい「よふかし」では終わらない、新たな“夜”がはじまる!
[考察]
1期においてコウが続けていた、自問自答の「自分探しの旅」という普遍的なテーマが、今度はナズナに焦点を当て、より直接的な意味でキャラクターが自身の過去と向き合い、今まで明かされてこなかったいくつもの過去が、テンポよく進むストーリーの中で徐々にはっきりとした形で表れてくる。
ナズナの営む「添い寝屋」は夜における悩み・不安のあらゆる解決策の提示を行う。10年をかけた餡子の自殺劇が、大まかな部分はハッピーエンドという形で失敗におわり、コンコルド効果によって餡子が積み重ねてしまった10年間という月日と、彼女に重くのしかかる喪失感や無力感を、物語のスタート地点とも言える「添い寝屋」の仕事によって緩和する、という綺麗にまとまった結末だと感じた。
そしてオリジナルストーリーとなった2期最終回では、コウが餡子の家庭を崩壊へと追いやった原因となる吸血鬼を探すこと、それによって餡子を救うことをこれ以降の第二目標として提示している。
7.今夜、世界からこの恋が消えても 著者:一条岬
[あらすじ]
無気力に生きる高校生の神谷透は、人気者の真織に無謀な嘘の告白をする。ところが意外にも本気で好きにならないことを条件に告白は受け入れられ、2人は付き合うことになる。
[考察]
前向性健忘の真織を好きになった透は彼女をその絶望の渦中から救おうとする。その時その一瞬を懸命に生きている真織を毎日あの手この手で楽しませようとする透の姿が丁寧に描かれたあと、彼は突然の死を迎え、透との約束通り泉が彼の記録を真織のもとからすべて消し去ってしまう。そこまでで描かれていたのは記録することでしか維持できない真織の記憶のはかなさであるが、それでも、真織が前向性健忘から立ち直ったあと透の存在に気付いたきっかけとなったのは、彼の提案によって絵を描き始めた真織の体が学習した記憶“手続き記憶”であり、そんな救いを提示してくれる儚くも清々しく慈愛にあふれた落とし方は、喜怒哀楽のどれにも当てはめられない不思議な感情を呼び起こさせる。
8.ミギとダリ(アニメ) 監督:まんきゅう
[あらすじ]
舞台は、1990年神戸市北区。アメリカの郊外をモデルに造られたニュータウン、オリゴン村。裕福な住民が暮らすこの町に、“ひとりの”少年が養子としてやってくる。 少年の名は秘鳥(ひとり)。 美しく聡明な少年・秘鳥に、園山夫婦は魅了されるが、 秘鳥には、大きな秘密と目的があった――。秘密とは、秘鳥は実は一人ではなく、双子の兄弟(ミギとダリ)であること。一人として生活し、学校へも 通う。そして二人はすり替わりながら協力して母の死の真相を探っていく。しだいに明かされる秘密と真実とは?
[考察]
前半はミステリアスな雰囲気とシリアスな空気の中で幾度となく繰り返されるシュールなギャグが癖になる。徐々に彼らの過去や“ふたりでひとり”を演じる理由が明るみになり、後半では2人の確執や一条家の真相といった、シリアスというか半ばホラーのような要素も加わる、
ミギとダリが2人であることが明るみになった最終話で、一連の出来事から3年後、ダリは進学校へ通うために列車に乗り込み旅立つ。真相へたどり着きカルマとも言える呪縛から解放され、ダリの負った火傷痕などから“ふたりでひとり”ではいられなくなった彼らが、互いに別々の人生を歩めるようになる結末には感動した。
9.MIU404
[あらすじ]
警視庁の働き方改革の一環で作られたという架空の設定の臨時部隊「警視庁刑事部・第4機動捜査隊」。機動力と運動神経はピカイチだが機捜経験がなく、考える前に身体が動いてしまう“野生のバカ”伊吹藍(綾野剛)と、観察眼と社交力に長けているものの、自分も他人も信用しない理性的な刑事志摩一未(星野源)がバディを組み、“第4機捜”のメンバーと共にさまざまな事件に臨む姿を描く。
[考察]
これは「誰かが最悪の事態になる前に止められる」、いわば「未来を担う」機捜隊員たちのストーリーである。彼らが見せる、単に善悪という物差しでの判断に限らず「罪を犯していようが救うべきところは救う」という姿勢は、3話にて虚偽通報をした犯罪者でありながら伊吹とともに仲間を救う選択をとった勝俣が、続編「ラストマイル」に伊吹の後輩の機捜隊員として登場していることに表れている。
最終話、現実となることを回避した最悪のエンド、志摩の死を経験した世界線ではコロナパンデミックは発生せず、東京オリンピックが正常に開催される。しかし、真のエンドは伊吹と志摩は死ぬことなく久住を逮捕するハッピーエンドにおわり、コロナ禍によってオリンピックは正常には開催されていない世界線である。そしてこの差を引き起こしたトリガーは伊吹の犯したシンプルで小さい過ちにすぎない。私たちの生きる現実の世界線につながる結末を真のエンドとすることには、時には絶望へもたどり着く選択不可能な「未来」を変えうる些細なきっかけは日常のあらゆる選択の中に潜んでいることを描き、「あおり運転」「留学生や技能実習生のトラブル」「薬物依存」「SNSの脅威」といった、あらゆる“身近に起こりうる危険”をはらんだ現実世界を取り扱った本作だからこそ、これらの脅威を現実世界の時間軸上のストーリーで取り扱うことで“リアルな脅威”の警告として機能させる意味があると考えられる。
10.ラストマイル 監督:塚原あゆ子
[あらすじ]
大手ショッピングサイトの荷物に次々と爆発物が仕掛けられる謎の連続爆破事件が発生。巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナは、未曽有の危機に立ち向かっていく。
[考察]
我々消費者は日々便利な通販サイトを使い商品が指定日通りに届くことを当たり前とし、そうでない場合は不平不満を口にする。そんな利便性と効率を追求した現代社会に仕込まれた爆弾は、ラストワンマイルの運送を担う、顧客一人一人を大切に思うかつて熟練ドライバーとして働いていた軽バン配達員と、消費社会の現代では時代遅れとなった堅牢で高い耐久性を持つ洗濯機によって、最後には最小限の被害をもって処理された。止まらない効率化のアンチテーゼとして機能する“非効率を大切にするベテランの精神”を伏線にとんだ巧みな脚本で描いている。
真犯人であるまりかの死によって明らかになった最後の爆弾が届けられたのは404号室、本作と世界観を共有しているMIU404のタイトルを差し込んできているとともに、それが最後まで見つかるのことなかった、「404 Not found」な爆弾であったことを示していると考えられる。
11.機動戦士ガンダム SEED FREEDOM 監督:福田己津男
[あらすじ]
独立運動や侵攻により、いまだ終結しない争い。やがてキラたちは、沈静化のために創設された世界平和監視機構に参加し、戦闘に加わっていく。
[考察]
美しさや才能だけが愛を構成するのではない。優れた人類“コーディネイター”と自然状態の人類“ナチュラル”という優劣をつけられた異人種間で、コーディネイターらによって定められた運命にキラとラクスは互いの立場から“愛”をもって抗おうとする。
12.デイライト 監督:ロブ・コーエン
[あらすじ]
かつて緊急医療班の隊長を務めていた男。現在はタクシー運転手を職についていた彼だったが、あるとき凄惨なトンネル事故の現場に遭遇する。過去の経験に突き動かされ、彼はトンネル内部への進入を決行。中に閉じこめられた生存者たちを救い出すべく、命懸けで奔走する。
[考察]
スタローン主演のディザスター映画。冒頭のトンネル爆破シーンの撮影ではおそらくミニチュアモデルを使用したのだろうと考えられるが、生々しい崩落の映像と次々に車両を襲う火炎の勢いには圧倒される。
映画のラストシーンでは、公開当初(96年)まだ悲劇に襲われていなかったWTCビルが背景に映し出される。9.11のテロ攻撃でビルを襲った猛火と崩落はそこにいた多くの人の命を奪った。悲劇の中の救出劇をテーマにした本作の締めとしてカメラに収められたWTCビルの存在は、現実にはスタローンのようなヒーローは不在であり、予測できない脅威から犠牲者を増やしてしまう、そんな救われない悲惨な結末を思い出させる。
13.機動警察パトレイバー2 the Movie 監督:押井守
[あらすじ]
2002年、謎の戦闘機が横浜ベイブリッジを爆破、公には自衛隊機であったと報道され、日本は緊張状態に陥る。厳戒態勢の中、警視庁特車二課の後藤は、この事件の容疑者に、1999年のPKFで東南アジアに於いて行方不明になっている元自衛隊員、柘植を挙げて捜索を始めるが、その頃ある飛行船が首都に向かっていた。
[考察]
荒川の指摘した“戦争でない”というだけの偽りの平和、その空虚な平和は実体を持った戦争によって埋め合わされるが、私たちはその成果だけを受け取り、モニターの向こうに戦争を押しやって、自分たちがその戦線のただ後方にいるに過ぎないことを忘れてしまう。現代の戦争およびその報道は、生身の人間を殺戮する現実味のない異常な世界観を安全圏にいる私たちに見せつける。21世紀に入っても変わることのなかったこの問題を提起した本作は、戦争映画とは全く違った視点でその脅威を私たちに伝えてくれる。
14.GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊 監督:押井守
[あらすじ]
西暦2029年。公安の精鋭による特殊部隊「攻殻機動隊」が、国際手配中のハッカー「人形使い」が日本に現れるとの情報を掴む。そんな折に搬送されてきた、事故に遭ったというサイボーグ。その体には、危険な秘密が隠されていた。
[考察]
物語前半にて登場するゴミ収集車の男が犯罪に加担したのは、人形遣いにより改竄された記憶に基づいて、そこに生じた問題を解決しようとした結果であり、これは、記憶のもろさ・記憶を操作されるこの世界がはらんだ危険性を示している。
物語の中盤、船上で素子がバトーとの会話の中で口にしたのは、アイデンティティは自らの身体によってではなく、周囲の情報によっても規定され、意識を作り出すという彼女の立てた仮設であり、自分を規定するアイデンティティの在り方への執着がうかがえる。その後彼女は、謎の義体“人形遣い”の登場にその疑問を解決する糸口を見つける。
人形遣いの電脳に潜り込み、電脳がゴーストを生み出しているのか、そうでないのかを調べることで、素子が悩んでいた自らのアイデンティティが電脳と義体から作り出されたものではないか、という疑問を払拭することができる。しかし人形遣いと同期する形でコミュニケーションを取った結果は、人形遣いと素子の双方が抱いていた進化への欲求のもと、2人が融合して新たな生命体となるものであった。この結末が素子にどのような答えを与えたのかは作中に明記されていない。
15.僕だけがいない街(アニメ) 監督:伊藤智彦
[あらすじ]
漫画家としてデビューするも、いまひとつ結果を出せずに毎日を過ごす青年・藤沼悟。彼は、彼の身にしか起こらない、ある不可思議な現象に不満を感じていた。 ――再上映(リバイバル)。何か「悪い事」が起こる直前まで時が巻き戻る現象。それは、その原因が取り除かれるまで何度も繰り返される。……まるで、誰かに「お前が防げ」と強制されているかのように。しかし、ある日起きた事件をきっかけに、その現象に大きな変化が訪れる。自らの過去に向き合う時、悟が目撃する真実とは?
そして、悟の未来は――?
[考察]
“リバイバル”の能力によってかつて救えなかった加代の命を誘拐殺人犯から死守しようとする悟。その行動は結果としてその犯人八代学をも救う結果となった。タイムリープモノの作品の中でも結末の丸め方が綺麗でストレスを感じずに見れた。展開が少し異なる原作も読んでみたいと感じた。
16.Catch Me If You Can 監督:スティーヴン・スピルバーグ
[あらすじ]
高校生のフランク・W・アバグネイルは尊敬する父が母と離婚すると聞き、ショックで衝動的に家を飛び出してしまう。そして、生活のため偽造小切手の詐欺を始めるようになる。最初はなかなかうまくいかなかったが、大手航空会社のパイロットに成りすますと誰もがもののみごとに騙された。これに味をしめたフランクは小切手の偽造を繰り返し巨額の資金を手に入れるのだった。一方、巨額小切手偽造詐欺事件を捜査していたFBI捜査官カール・ハンラティは、徐々に犯人に迫っていくのだったが...。
[考察]
家族愛から犯罪に手を染め、大胆な選択と自信満々の行動で逃げ続ける。そんな天才詐欺師の配役にレオナルド・ディカプリオは最適だと感じた。彼を追うFBI捜査官はトム・ハンクスが演じており、この2人の関係性は手に汗握る逃走劇にどこか安心感を感じさせるものがある。これが実話をもとにした作品であるという点、さらに主人公はその能力が買われて後にFBIの下で働くこととなった点は驚くべきポイントだ。
17.ダイ・ハード4.0 監督:レン・ワイズマン
[あらすじ]
コンピュータを狂わすサイバー・テロの猛威により都市部の信号は消え、政府の機能が麻痺するなど、全米がパニックに陥ってしまう。偶然にも事件に巻き込まれてしまったマクレーン刑事は、テロリスト集団に迫ってゆく。
[考察]
スキンヘッドになったマクレーン刑事がワシントンを守るべくオタク少年と大奮闘。サイバー犯罪という新たな脅威に上層部フル無視で敵陣に単身乗り込み組織を壊滅させる。頑固オヤジが魅せるタフなガン&カーアクションはハリウッド映画の醍醐味である。
本作では過去の作品ではあまり前面に押し出されなかった“親子の絆”の要素が追加されており、マクレ-ンの勝利に際し娘が一役買ったシーンがこれにあたる。そしてこの絆の物語は、次作『ダイ・ハード/ラスト・デイ』において最も強化されることとなる。
18.サマーゴースト 監督:loundraw
[あらすじ]
ネットで知り合った高校生の友也、あおい、涼。彼らは、それぞれ家族や友人、将来について悩みを抱えていた。そんなある時、3人は夏にだけ現れると噂されていた若い女性の幽霊「サマーゴースト」に会おうと思い立つ。
[考察]
主人公らはみな、生きることに関する悩みを抱えており、死に近い人間だけが見ることのできる幽霊と会話し、接することができる。涼は病気により余命を宣告され、生きる願望に対し不条理な死が待ち受けている。あおいはスクールカーストによりいじめを受け、死を辛い現実からの解放と見ている。友也は2人とは異なり、優秀さから大人に期待される自らの“生”の状態に対して漠然とした死を望む。そんな3人が“サマーゴースト”に自らの人生の一歩を踏み出すきっかけを求め、結果はサマーゴーストを“精神的な死の世界”から解放するという成功に終わる。
ストーリーの帰結するポイントが若干あいまいな点など少し粗も感じるが、一番に評価できる点は作品全体に透き通るような空気感を演出する美しい背景美術だと感じる。勇気を出して一歩を踏み出してみる、という青春と成長をテーマにした作品にありがちなメッセージを秘めてはいるが、美しい色彩の背景とシンプルかつ空気感の感じられるライティング、レンズフレアなど光の演出には観る側を画面に引き付け、そのテーマを死と生、影と光という二項対立により強調している。若者に共感されやすいキャラクター設定と理解しやすい起承転結のストーリーは30分ほどの尺にキレイに収まっていた。
19.逃亡者(映画) 監督:アンドリュー・デイヴィス
[あらすじ]
シカゴに住む優秀な外科医の男は、妻殺しの容疑で逮捕される。彼は帰宅時に、家から逃げ出す片腕の男を目撃後、瀕死の妻を発見していた。無実を訴えるも死刑判決を受けた彼は、護送中の事故に乗じて逃亡。連邦保安官に追われる身となりつつも、真犯人を探し出そうとする。
[考察]
妻殺しの濡れ衣を着せられた寡黙な医師リチャード・キンブルが、潔白の証明のため逃亡を続ける。
キンブル医師は逃げた先々で医者としての責任から人の命を救いつつ持ち前の信頼と人脈で犯人の手掛かりを探し、連邦保安官のジェラードは迅速で抜かりのない捜査とあくまで真実の究明を目的とした執念の追跡で犯人を特定する。2人のプロフェッショナルが逃げる・追うの関係から共に犯人を追う関係へと変化し、結末はハッピーエンドに終わる。2時間の尺の間まったく退屈させないテンポの良さ、追う側も逃げる側も頭の回転が速くもどかしさを一切感じない構成が素晴らしい。
20.ファイナル・デスティネーション 監督:ジェームズ・ウォン
[あらすじ]
修学旅行で飛行機に乗った高校生が、離陸直前に眠りに落ち、その機体が爆発する夢を見る。彼は混乱し、パニック状態で機内から脱出。彼を連れ戻そうとした6人を残して飛行機は離陸し、そして本当に爆発する。しかしそれは、さらなる悲劇の序章に過ぎなかった。
[考察]
このシリーズが革新的だったのは、主人公らに襲い掛かる敵は見ることのできない“死の運命”である点だ。本シリーズでキーワードとなる“死の順番”は実に秩序立って運命にあらがおうとする登場人物たちを殺しにかかり、そこに目的は存在しない。非情な死が繰り返されるこの映画の見どころは、ピタゴラスイッチのように緻密に計算された殺害方式と、抵抗むなしく死の順番が近づくことにおびえる彼らと同じように、観る側の私たちもその恐怖におびえることができる点だ。“次は俺の番だ!”
21.デッドコースター 監督:デヴィッド・エリス
[あらすじ]
友人との旅行で自分の車が大事故に巻き込まれる予知夢を見たキンバリー。実際の事故からは間一髪で危機を逃れた彼女だったが、夢によって救われた人々は運命に追われるように、次々と不可解な死をとげていく。
[考察]
シリーズ2作目。最初のハイウェイでの事故シーンは交通安全ビデオにしても良いくらいよくできている。
前作の生存者とのつながりから得られた情報やや“死の順番”の新たなパターンの展開など前作から内容を発展させつつ、よりテンポよく物語が進んでいくのでシリーズ中でも見やすい1作。
22.ファイナル・デッドブリッジ 監督:スティーヴン・クォーレ
[あらすじ]
会社でチャーターしたバスで遭遇した巨大吊り橋崩落事故。事故直前に橋崩壊の映像が頭の中に浮かんだサムのおかげで、8人が大惨事から生き残った。だが、謎の男から「死は決して騙されない」と宣告され、事故の生存者が次々に悲惨な死をとげていく。だが、“他人に死を贈る”ことで“死の運命”から逃れられることが判明する。
[考察]
シリーズ5作目の本作は3D映画初のR-18指定を受けている。そのぶん死亡描写の気持ち悪さは大幅にアップしていて評価は分かれるだろう。死の連鎖を止めようと奮闘する登場人物の姿もおなじみのものであり、謎の助言者の存在も変わらない。最終的に物語の結末はシリーズ第一作、ファイナル・デスティネーションの冒頭とつながり、本作での生存者は飛行機事故にて死亡する。これは、2011年の映画にしては画面に映る車両がやたら古めかしい事からも示されていた。
23.ラッシュアワー 監督:ブレット・ラトナー
[あらすじ]
愛娘を誘拐された在ロサンゼルスの中国領事が、香港から生え抜きの刑事を呼び寄せる。それが目障りなFBIは、ロス市警きっての破天荒な刑事を監視役として派遣する。最初は反目しあっていた2人だったが次第に結束を固め、やがて意外な黒幕を突き止める。
[考察]
序盤に出てきた2階建てバスでのアクションシーンは、ジャッキーチェンが数多くの香港映画において2階建てバスをアクションの舞台としてきたことを意識していると考えられるし、彼が得意とする“飛び移る”アクションが他のハリウッド作品に比べ多用されていたことも考えると、この映画は今までに出演したハリウッド作品であまりキャラクターが活かされず伸び悩んだ過去をもつジャッキーチェンを、本国作品と同じように輝かせる目的を持った、“ハリウッドの舞台でジャッキーチェンを改めてもてなす映画”としての役割も持っていたのではないかと考えられる。
しかしながら、本作はジャッキーチェン単独ではなくバディものの映画のため、アクションシーンにおいて相方役を務めるクリスタッカーにカメラを向けたショットが度々挟まり、香港映画時代のように比較的長いショットでジャッキーチェンのアクションの巧みさを魅せるようなシーンが少ないようにも感じた。
24.オットーという男 監督:マーク・フォースター
[あらすじ]
妻を亡くして以来、不幸な日々を送るオットー。しかし、近くに引っ越してきた若い家族と出会い、機転の利くマリソルとの友情が、彼の人生を大きく変えることになる。
[考察]
アメリカの隣人文化や各キャラクターの味付け、アメリカ特有の自動車文化など、オリジナルのスウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』をハリウッド映画としてうまく再構築させている。
本作は前期教科書内容との被りが見られ、妻の死や仲たがいしたままコミュニケーションの取れなくなった親友はの存在を原因として自殺願望を抱くようになった彼の心は「治癒なき主体」を形成し、彼の偏屈な人間性をディスアビリティへと変えている。そしてそれは新しい隣人たちとのコミュニケーションにより解消される。
25.チェンソーマン レゼ篇 監督:𠮷原達矢
[あらすじ]
雇い主の裏切りにより命を落としたデンジは、「チェンソーの悪魔」であるポチタとの契約により“チェンソーマン”として蘇り、マキマのスカウトで公安対魔特異4課に所属する。憧れのマキマとのデートで浮かれているなか、雨宿りをしていると、カフェで働く謎の少女レゼと出会う。デンジはなぜか自分に興味津々なレゼを気になり始める。
[考察]
MAPPAの映像美。原作と比較できる点は、漫画の尺よりも繊細に描かれた場面転換と、キャラクターの表情管理の巧みさ、そこから最大限に引き出されるレゼの可愛らしさだと感じた。また、漫画よりも自由なカメラアングルはギャグとシリアスをより効果的に描き、場面にメリハリが生まれていた。
レゼとデビルハンターの戦闘シーンはまるで漫画を見ているかのようなカッティングが用いられ、レゼとデンジの戦闘シーンでは圧倒される大爆発の連続とグラフィカルな一枚絵に魅せられた。レゼがデビルハンターに襲われる直前、天使の悪魔が口パクでなにかを呟くシーンが差し込まれていたが、原作には無い演出であり非常に気になった。
26.宝島(映画) 監督:大友啓史
[あらすじ]
1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民らに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。そんな戦果アギヤーとして、いつか「でっかい戦果」をあげることを夢見るグスク、ヤマコ、レイの幼なじみの若者3人と、彼らにとって英雄的存在であるリーダー格のオン。しかしある夜の襲撃で“予定外の戦果”を手に入れたオンは、そのまま消息を絶ってしまう。残された3人はオンの影を追いながら生き、やがてグスクは刑事に、ヤマコは教師に、そしてレイはヤクザになり、それぞれの道を歩んでいくが、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境で、思い通りにならない現実にやり場のない怒りを募らせていく。そして、オンが基地から持ち出した“何か”を追い、米軍も動き出す。
[考察]
目玉のひとつである旧車を大胆に用いた原作再現を目的に鑑賞したが、それに加え音楽の演出や時間の推移とともに様々に変容するヒューマンドラマ、ラストに明らかになる“あの日”の真相など、3時間の鑑賞中も飽きさせることのない濃い映画だった。原作小説をまだ読んでいないので、読破後にもう一度見比べたいと思った。
27.グリーンブック 監督:ピーター・ファレリー
[あらすじ]
時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無学だが、腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていた。ある日、トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。彼の名前はドクター・シャーリー、カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいた。二人は、〈黒人用旅行ガイド=グリーンブック〉を頼りに、出発するのだが─。
[考察]
60年代のアメリカ南部において起きていた黒人差別は、当時の人間にとっては当たり前のことで、バーの人間・警官・ホテルの支配人など職種問わず差別意識を持っていた。そして現代では、人種差別に加えあらゆるマイノリティへの差別意識が表面化してきている。この作品においては上記の双方の差別が描かれ、それを主人公トニーは最終的には容認する。ドン・シャーリーは自身が被差別の身であることを理解し、その上で自らの才能を評価されようとした。
差別意識を持った人間の言う“差別される理由”は、その人のある一面にしかすぎず本質をとらえられていない。だが盲目な彼らにはそれを認識することはできない。私たちは盲目な人間に成り下がっていないだろうか、そんな問いをこの映画は提示してくれる。
28.マイ・インターン 監督:ナンシー・マイヤーズ
[あらすじ]
ニューヨークに拠点を置く人気ファッションサイトのCEOを務めるジュールスは、仕事と家庭を両立させるという誰もが羨むような人生を歩んでいた。
ところが彼女は仕事と家庭それぞれで問題が発生し、人生最大の試練に立ち向かっていた。
そんな折、会社の福祉事業で雇われたシニアインターンの40歳以上年上のベンが、ジュールスのアシスタントに就く。
初めは年上のベンの言葉など聞き入れようとしなかったジュールズだが、
人生の大先輩であるベンの言葉や行動から次第に一目置くようなり、心を通わせていく…。
[考察]
ロバート・デ・ニーロ演じるベンのユーモアにあふれた柔和な雰囲気は、本作が“老人から学べ”という説教じみた作品でないことを示してくれる。
ベンがシニアインターンに参加する理由は「誰かに必要とされたい」からであり、老後を過ごす多くの高齢者は同じ悩みを抱えている。シニア世代のワークフェアは、この映画が公開された2015年と比較して一般的に認知されるようになったが、高齢者を孤立させない、孤独にさせない社会の実現への道のりは、少なくとも日本においてはまだ遠いように感じる。
29.ターミナル 監督:スティーヴン・スピルバーグ
[あらすじ]
東欧の小国からニューヨークに訪れた男性ビクター・ナボルスキーはジョン・F・ケネディ空港に到着すると祖国クラコウジアがクーデターによって消滅したことを伝えられる。祖国の消滅によりパスポートを使用することができなくなったビクターはニューヨークに降り立つことも祖国クラコウジアに戻ることもできなくなり足止めを喰らってしまうことに。英語もまともに話せないビクターだったが空港のターミナル内で生活を始める。
[考察]
空港で足止めを食らい、そこで生き延びることを決心したビクターは、アメリカへの入国を待ち続けた。この「待つ」行為は、客室乗務員アメリアがが浮気性の彼氏を待ち続けたことにも当てはまる。この2人は望みが叶う時を平すら待っていたのだ。ただ、ビクターは待っている間にも仲間を増やし、収入を得て、英語も学んでいる。そんな努力があったからこそのアメリカ入国であり、結局は彼氏の元へと戻ったアメリアとは対比して描かれている。
また、今作の内容は教科書の“ディスアビリティ”の項目とつながる点があり、主人公ビクターにおいて、空港に通訳がいないために起こる言語の障壁はディスアビリティと言えるのではないかと考えた。
30.藁の楯 監督:三池崇史
[あらすじ]
孫娘を惨殺された政財界のドンが、容疑者の首に10億円の懸賞金を懸ける。身の危険を感じたその容疑者は、福岡で自首。そして金目当てに全国民から命を狙われる彼を、5人のSPが48時間以内に警視庁に護送することになる。
[考察]
邦画なのにスケールの大きいストーリー構成と迫力のあるアクションシーンが魅力の一つ。藤原竜也のクズ役演技は見ている側を不快感を植え付けてくるほどによくハマっていたと感じた。
それでもなお、警察サイドの詰めの甘さやタイミングの良すぎる被害者の登場など突っ込みどころは多く、この作品にリアリティを求めるのはナンセンスだと感じた。それでも、積み重なった社会不安や私人逮捕系YouTuberに代表される自警意識、昨今の要人警護で起きる事件を鑑みると、このフィクションにそういった社会性の批判を見出すこともできなくはないのかなと考えた。
市川諒斗
RES
5、変な家 雨穴
「あらすじ」
知人が購入を検討している都内の中古一軒家。開放的で明るい内装のごくありふれた物件に思われたが、「謎の空間」が存在していた。知り合いの設計士に間取り図を見せると、この家は、そこかしこに
「奇妙な違和感」が存在するという。不可解な間取りの真相とは。
全てを読んで初めてこの本のタイトルが「変な家」である意味が分かった。「怖い家」や他の言葉では
誤りになる。あくまで「変」であること、それがなによりも大切である。普通では無い、しかしそこにたしかにあるのは間違いなく家族を思う「愛」だと思う。この本において家とは家族を思う愛の形として描かれている。
6、変な家2 雨穴
「あらすじ」
フリーライターの「筆者」と設計士・栗原のコンビが、新たな謎に挑む間取りミステリー第二弾。
11枚の間取り図を出され、11枚目にたどり着く頃には共通点と共におぼろげにもこの謎の答えが見えてくる。その過程は一枚の紙に書かれたテストを解いている気分になった。
7、変な絵 雨穴
「あらすじ」
見れば見るほど、何かがおかしい?不穏なブログ、消えた男児、惨殺死体、補導少女
「奇妙な絵」に秘められた衝撃の真実とは。
絵をにはその絵を描いた人の心が映されている。心の奥に秘めた口に出せないことすら
映し出してくれる。
「あらすじ」
知人が購入を検討している都内の中古一軒家。開放的で明るい内装のごくありふれた物件に思われたが、「謎の空間」が存在していた。知り合いの設計士に間取り図を見せると、この家は、そこかしこに
「奇妙な違和感」が存在するという。不可解な間取りの真相とは。
全てを読んで初めてこの本のタイトルが「変な家」である意味が分かった。「怖い家」や他の言葉では
誤りになる。あくまで「変」であること、それがなによりも大切である。普通では無い、しかしそこにたしかにあるのは間違いなく家族を思う「愛」だと思う。この本において家とは家族を思う愛の形として描かれている。
6、変な家2 雨穴
「あらすじ」
フリーライターの「筆者」と設計士・栗原のコンビが、新たな謎に挑む間取りミステリー第二弾。
11枚の間取り図を出され、11枚目にたどり着く頃には共通点と共におぼろげにもこの謎の答えが見えてくる。その過程は一枚の紙に書かれたテストを解いている気分になった。
7、変な絵 雨穴
「あらすじ」
見れば見るほど、何かがおかしい?不穏なブログ、消えた男児、惨殺死体、補導少女
「奇妙な絵」に秘められた衝撃の真実とは。
絵をにはその絵を描いた人の心が映されている。心の奥に秘めた口に出せないことすら
映し出してくれる。
市川諒斗
RES
1、春期限定いちごタルト事件 米澤穂信
「あらすじ」
小鳩君と小山内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。二人は今日も手に手をとって清く慎ましい小市民を目指す。
まずこの小説はミステリではあるが出てくる謎や事件はどれも客観的にみても日常において大した問題ではない。大げさに言って事件ではある。無くしたポシェットを見つけるその程度のことだ。しかし、何故それは起きたのか、周りを取り巻く環境、関係者の言動、すべてを合わせた時に「その程度」のことと考えていたことが紛れも無いミステリに思えてくる。
2、夏期限定トロピカルパフェ事件 米澤穂信
「あらすじ」
小市民シリーズの第二弾。高校二年になった小鳩君と小山内さん。小市民を目指す二人の夏の話。
今作では小鳩君と小山内さん二人の関係に変化が起こる。小市民を目指すという共通の目的のもと結んでいた互恵関係を解消することとなる。これに至るにあたってもそれを未然に防ぐことが出来た。しかし、小鳩君は出来なかった。さらに二人のこの関係についての考え方の違いも間接的に感じられる。言葉を詰まらせながら話す小鳩君とあっさり淡々としている小山内さん。互恵関係に少しの以上を求めていた小鳩君が見て取れる。
3、秋期限定栗きんとん事件 上下 米澤穂信
「あらすじ」
小市民シリーズ第三弾。互恵関係解消した小鳩君と小山内さん。今作では主に小鳩君と新たに登場した堂島という二人の視点で進む。
今作では主に堂島が連続放火魔に挑む過程が描かれる。しかし、最終的に事件は小鳩君の推理によって暴かれる。真相が解明されるシーンにおいて堂島は犯人を捕まえることを急ぐあまり誤った推理を披露してしまうが、謎を解くことに重点を置いた小鳩君は冷静に推理を行う対比が描かれる。
小鳩君と小山内さんの互恵関係にも新たな変化が見える。
4、冬期限定ボンボンショコラ事件 米澤穂信
「あらすじ」
小市民シリーズ第四弾。高校三年になった小鳩君はある日ひき逃げに遭い、病院に運ばれる。
小鳩君と小山内さんの出会いから事件までを描く。
今作では主に病室のベッドの上で物語が進行する。事件の後犯人を突き止めると同時に二人が出会うきっかけとなった事件を回想するシーンが交互に語られる。きっかけとなった事件と今回の交通事故との関係が明かされたシーンでは手に汗握るものになった。
また、互恵関係でしかなかった二人の関係にも変化がおとずれ、やがてその存在を求めあうような関係に変わる。
「あらすじ」
小鳩君と小山内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。二人は今日も手に手をとって清く慎ましい小市民を目指す。
まずこの小説はミステリではあるが出てくる謎や事件はどれも客観的にみても日常において大した問題ではない。大げさに言って事件ではある。無くしたポシェットを見つけるその程度のことだ。しかし、何故それは起きたのか、周りを取り巻く環境、関係者の言動、すべてを合わせた時に「その程度」のことと考えていたことが紛れも無いミステリに思えてくる。
2、夏期限定トロピカルパフェ事件 米澤穂信
「あらすじ」
小市民シリーズの第二弾。高校二年になった小鳩君と小山内さん。小市民を目指す二人の夏の話。
今作では小鳩君と小山内さん二人の関係に変化が起こる。小市民を目指すという共通の目的のもと結んでいた互恵関係を解消することとなる。これに至るにあたってもそれを未然に防ぐことが出来た。しかし、小鳩君は出来なかった。さらに二人のこの関係についての考え方の違いも間接的に感じられる。言葉を詰まらせながら話す小鳩君とあっさり淡々としている小山内さん。互恵関係に少しの以上を求めていた小鳩君が見て取れる。
3、秋期限定栗きんとん事件 上下 米澤穂信
「あらすじ」
小市民シリーズ第三弾。互恵関係解消した小鳩君と小山内さん。今作では主に小鳩君と新たに登場した堂島という二人の視点で進む。
今作では主に堂島が連続放火魔に挑む過程が描かれる。しかし、最終的に事件は小鳩君の推理によって暴かれる。真相が解明されるシーンにおいて堂島は犯人を捕まえることを急ぐあまり誤った推理を披露してしまうが、謎を解くことに重点を置いた小鳩君は冷静に推理を行う対比が描かれる。
小鳩君と小山内さんの互恵関係にも新たな変化が見える。
4、冬期限定ボンボンショコラ事件 米澤穂信
「あらすじ」
小市民シリーズ第四弾。高校三年になった小鳩君はある日ひき逃げに遭い、病院に運ばれる。
小鳩君と小山内さんの出会いから事件までを描く。
今作では主に病室のベッドの上で物語が進行する。事件の後犯人を突き止めると同時に二人が出会うきっかけとなった事件を回想するシーンが交互に語られる。きっかけとなった事件と今回の交通事故との関係が明かされたシーンでは手に汗握るものになった。
また、互恵関係でしかなかった二人の関係にも変化がおとずれ、やがてその存在を求めあうような関係に変わる。
2年 成瀬
RES
①『国宝』(映画)
【あらすじ】
任侠の一門に生まれた喜久雄は15歳の時に抗争で父を亡くし、天涯孤独となってしまう。喜久雄の天性の才能を見抜いた上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎は彼を引き取り、喜久雄は思いがけず歌舞伎の世界へ飛び込むことに。喜久雄は半二郎の跡取り息子・俊介と兄弟のように育てられ、親友として、ライバルとして互いに高めあい、芸に青春を捧げていく。そんなある日、事故で入院した半二郎が自身の代役に俊介ではなく喜久雄を指名したことから、2人の運命は大きく揺るがされる。
【考察】
芸を極めることの代償、なにが正解なのかわからない世界でもがき苦しみ、それでも舞台に立ち続ける。伝統文化である歌舞伎において重要視される血に振り回されつつも、空っぽでなにもなかった喜久雄がどんどん吸収していき、言い方は悪いが怪物のようになるのが印象的だった。人間国宝の役で出てきた万菊の喜久雄や俊介に対する温かさと圧倒的な存在感が素晴らしいなと思った。あと玉三郎さんのような目を惹くような鷺娘に感動した。
②『いつかは賢いレジデント生活』(ドラマ)
【あらすじ】
『賢い医師生活』に登場したユルジェ病院の分院・鍾路ユルジェ病院の産婦人科を舞台に、レジデント(専攻医)1年目の4人が悪戦苦闘しながらも成長していく姿を描く。
【考察】
賢い医師生活のスピンオフ版として配信されているもので、レジデントと言っているように研修医たちの話になる。うまく行かず失敗を繰り返して、辞めたいや逃げたいなど、たくさんの弱音を吐きながらも成長していく姿に勇気をもらった。人間らしさマックスで見やすい作品だった。
③『ロマンティックキラー』(アニメ)
【あらすじ】
恋愛に全く興味がない女子高生・星野杏子が、魔法使いリリによって「恋愛エネルギー」を生み出すプロジェクトに強制参加させられる物語。大好きなゲーム、チョコ、猫という「三大欲求」をリリに没収された杏子は、次々と現れるイケメン男子たちからの「ロマンティック・トラップ」を回避するために奮闘しますが、その過程で彼らにも変化が訪れる。
【考察】
少女漫画のあるある展開がたくさん、でも全く靡かない杏子とイケメンたちと魔法使いリリの掛け合いのテンポが良かった。薄いイケメンではなく、キャラ設定がしっかりしてあるクセの強いイケメンばかり、今の所は誰にも落ちていないが果たして誰かと恋をするのか気になるところではある、映画に期待
④『エミリー、パリへ行く』(ドラマ)
【あらすじ】
シカゴのマーケティング会社で働くエミリー・クーパーが、 上司の代理でフランス・パリのサヴォワールに転勤することになり、夢のパリ生活を開始する物語。エミリーはアメリカとフランスの文化の違いに戸惑いながらも、フランス語が話せないことや、現地の同僚の反発に直面しながらも、SNS戦略の刷新に奮闘。さらに、隣人のシェフ、ガブリエルとのロマンスや、歌手を目指す友人ミンディーとの友情を築きながら、仕事と恋愛、友情に情熱を燃やす姿が描かれる。
【考察】
アメリカとフランスの文化の違いから起こる問題に戸惑いながらも時には楽しむ。仕事ではエミリーの斬新なアイデアに興味を惹かれ、どんどん仕事を任されていく姿や、時に恋も仕事もうまく行かず悩んでいる姿がリアルだと思ったし、なによりどこを切り取っても映える街並みなのに、シリーズ1ではまるで拒絶されているように感じているところに苦しさを感じた。シリーズを重ねていくごとにパリを本当に好きになっていくエミリーが素敵だった。見た後はどこかスッキリできる作品
⑤『気象庁の人々 社内恋愛は予測不可能!?』(ドラマ)
【あらすじ】
気象庁で働く優秀な予報官チン・ハギョンが、結婚を控えていた恋人の浮気で破談になり社内恋愛を避けると誓うが、天気にしか興味がない自由奔放な新入社員イ・シウと出会い、再び予測不能な恋に落ちるというラブコメディです。
【考察】
韓国ドラマあるあるのぶっ飛んだ設定ではなく、ありそうな現実味のあるストーリー。気象庁を舞台に進む話でこういうところをみて予報出しているんだと勉強になった。社内恋愛の難しさ、仕事と家庭の両立など本当に現実的な考えさせられる場面が多かった。天気を各話のタイトルに模してるのも粋
⑥『グランメゾン東京』(ドラマ)
【あらすじ】
木村拓哉演じる型破りなシェフ・尾花夏樹が、パリで二つ星を獲得するも慢心から全てを失った後、鈴木京香演じる女性シェフ・早見倫子と出会い、日本で三つ星レストラン「グランメゾン東京」をオープンして世界最高峰のミシュラン三つ星獲得を目指す物語
【考察】
大人が真剣に夢を追いかけるってかっこいいと思った。展開はまあ読めるがそれでもそこに辿り着くまでの努力がすごい。
⑦『ロストケア』(映画)
【あらすじ】
老人と訪問介護センターの所長の死体が早朝の民家で発見された。容疑者として浮上したのは亡くなった所長が勤めていたセンターで介護士として働く斯波宗典。検事の大友秀実は彼が働き始めてから亡くなった介護センターの利用者が40人を超えていることを突き止める。真実を明らかにしようと斯波を追い詰めていく大友に、彼は自分のしたことは「殺人」ではなく「救い」であったと主張する。
【考察】
人の命を奪う権利は誰にもないことはわかっているが、それでも介護の辛さや、誰にもわかってもらえない孤独、今まで自分たちが目を背けていた問題なのではないかと思わされた。綺麗事を並べるだけでは解決できない自分の気持ちをどこに仕舞えばいいのかがわからなくなるような作品であった。斯波を演じた松山ケンイチの優しい雰囲気があったからこそより裏切られた気持ちが強く感じた。
⑧『ダンダダン』(アニメ)
【あらすじ】
霊媒師の家系に生まれた女子高生・モモ(綾瀬桃)と、宇宙人を信じ幽霊を信じないオカルト好きの同級生・オカルン(高倉健)が、互いの信じる存在を証明するために向かった怪異スポットで、理解を超えた宇宙人と怪奇現象に遭遇し、窮地の中で秘めた力に目覚め、呪いの力を手にした二人が迫りくる怪異に立ち向かうオカルティックバトル&青春物語
【考察】
大胆でユーモア溢れるテンポ感でサクサク進む。ラブコメ、オカルト、バトルといった合わさることのなさそうな組み合わせだからこそカオスだけどそこに魅力を感じるのだと思った。
⑨『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』(映画)
【あらすじ】
鬼となった妹・禰󠄀豆子を人間に戻すため鬼狩りの組織《鬼殺隊》に入った竈門炭治郎。入隊後、仲間である我妻善逸、嘴平伊之助と共に様々な鬼と戦い、
成長しながら友情や絆を深めていく。そして炭治郎は《鬼殺隊》最高位の剣士である《柱》と共に戦い、「無限列車」では炎柱・煉󠄁獄杏寿郎、「遊郭」では音柱・宇髄天元、「刀鍛冶の里」では、霞柱・時透無一郎、恋柱・甘露寺蜜璃と共に激闘を繰り広げていった。その後、来たる鬼との決戦に備えて、隊士たちと共に《柱》による合同強化訓練《柱稽古》に挑んでいる最中、《鬼殺隊》の本部である産屋敷邸に現れた鬼舞辻󠄀無惨。お館様の危機に駆けつけた《柱》たちと炭治郎であったが、 無惨の手によって
謎の空間へと落とされてしまう
【考察】
獪岳、童磨、猗窩座の鬼となった過去が明かされたが、そこに尺を取りすぎなように感じた。猗窩座の回想シーンでは小雪の柔らかさがより伝わって良かった。そこからの現実もどってからの干渉に浸る間がなくて怒涛すぎて感情が忙しかった。
⑩『ストレンジャー・シングス 未知の世界』
【あらすじ】
姿を消した少年、人目を忍び行われる数々の実験、破壊的な超常現象、突然現れた少女。すべての不可解な謎をつなぐのは、小さな町に隠された恐ろしい秘密。
【考察】
ホラー要素ありつつもウィルが生き続けてると信じて行動するジョイスや勇敢に突き進むナンシー
普通に戻ることはないかもしれないが、表と裏の世界が合わさっているSF感がたまらなかった
⑪池袋ウエストゲートパーク(ドラマ)
【あらすじ】
池袋に住む青年「マコト」が、街に渦巻くストリート犯罪やヤクザの抗争、そして当時の社会問題に直面しながら、持ち込まれるトラブルを次々と解決していくストリート・サスペンスドラマ(または小説シリーズ)。主人公マコトは、ヤクザ絡みの難事件を解決する「池袋のトラブルシューター」として知られ、その活躍を通じて都会の裏側で生きる人々の人間ドラマが描かれる。
【考察】
めんどくせえが口癖のマコトに多くのトラブルが舞いこんでくる。2000年放送で、その時代の雰囲気、若者文化、ストリートギャング、都市空間の危うさなどを、ドラマ構成・演出・セリフで巧みに描き出している。池袋西口公園(ウエストゲートパーク)を「若者たちの起点・人間模様の交差点」として扱うことで、都市の切れ目・リアルな生活感が画面に滲み出るようになっている
⑫『火垂るの墓』(映画)
【あらすじ】
昭和20年、神戸。14歳の少年と4歳の妹は、空襲で母が入院することになり、叔母のもとに身を寄せる。やがて母が死ぬと、叔母は兄妹を邪険に扱うようになり、2人は家を出ることにする。誰もいない防空壕で、新たな生活を始める子供たち。しかし、そこには厳しい現実が待っていた。
【考察】
見る年齢によって感じ方が変わる作品。幼少期には
おばさんの理不尽さにしか目がいかなかったが、おばさんの立場からしたらカンタたちの態度が悪くも感じるからこそ、何度でも見るべき映画だと思う
⑬『TOKYO MER 走る緊急救命室』(ドラマ)
【あらすじ】
物語の舞台となるのは、都知事の命で新設された「TOKYO MER」という救命救急のプロフェッショナルチーム。“MER”とは、モバイル・エマージェンシー・ルームの略称で、彼らの使命は最新の医療機器とオペ室を搭載した大型車両(ERカー)で、危険極まりない重大事故・災害・事件の現場に駆けつけ、負傷者にいち早く救命処置を施すこと。“一人も死者を出さないこと”が、彼らに課されたミッションである。
【考察】
1話1話各話メンバーを絞って焦点を当てていくスタイルで王道的な話ではあるが、鈴木亮平演じる喜多見の命を本当の意味で平等に扱っていて、まるでヒーローだった。しかし組織としては認められないこともある中で命とは何かを問うていると思った。
⑭『空飛ぶ広報室』(ドラマ)
【あらすじ】
元戦闘機パイロットの夢を怪我で絶たれた空井大祐と、取材で航空自衛隊の広報室を訪れた情報番組ディレクターの稲葉リカが出会い、お互いの挫折や葛藤を乗り越えながら、広報の仕事を通して航空自衛隊の魅力を伝え、成長していく物語
【考察】
恋愛要素だけではなく、夢を一度は諦めた者たちがどのようにして向き合ってまた立ち上がるのかそこに視点をおいて見た時にこの作品がより輝くと思った。3.11の描写を入れたりして、戦闘集団のようなイメージではなく、一人一人の人間である上でステレオタイプを打ち崩す効果があるように感じた。航空祭やブルーインパルスといった、リアルな描写、防衛省の協力があってこそできているから映像に新鮮さを感じさせた。
⑮『母性』(映画)
【あらすじ】
ある日、女子高生の遺体が発見された。しかし、事件がなぜ起きたのかはわからないままだった。この事件の証言者として話を聞かれることになったのは、ルミ子と清佳という、娘を愛せない母とそんな母に愛されたい娘の2人。同じ時刻に起きた同じ出来事を思い浮かべているはずの2人の証言は食い違い、彼女たちの抱える複雑な関係性や秘密が浮き彫りになっていく。
【考察】
小説と同様に母の視点と娘の視点で語られることでお互いの主観で語られる分、ずれがや矛盾が生じ、独特の不穏な雰囲気を出していると思った。戸田恵梨香演じるルミ子の周りには母から愛されている時は色とりどりになっているが、清佳に母として接する時には色があまりないことに気づいた。そこにはルミ子の心情もあったように思う。
⑯『死刑にいたる病』(映画)
【あらすじ】
大学生の雅也は、24人もの少年少女を殺害したとして世間を震撼させている稀代の連続殺人鬼・榛村 (はいむら)から1通の手紙を受け取る。すでに一審で死刑判決を受けている榛村。一方、雅也は中学時代に地元でパン屋の店主をしていた彼をよく知っていた。
【考察】
榛村のぶれないサイコパスを見事に表現していると思った。本来の自分を見つめ、大切なものとは何かを探す中で自分を見失ってしまったから絶望の中で、人を殺すという答えになったと思った。雅也も自分の状況から目を逸らして現実を見ないようにしていたために、榛村を信仰し、自分と同一視してしまったのではないかと思った。なかなかゾッとする結末であった。
⑯『恋わずらいのエリー』(映画)
【あらすじ】
学校イチのさわやか王子・オミくん(宮世琉弥)を眺めつつ、彼との妄想を“恋わずらいのエリー”の名前でSNS上でつぶやくのが日課の妄想大好き女子・エリー(原 菜乃華)。
ところが、パーフェクトだと思っていたオミくんは、実は口が悪いウラオモテ男子だった!
しかも、超恥ずかしい妄想が彼にバレてしまい、絶体絶命の大ピンチ…のはずが、「その妄想、叶えてあげてもいーよ?」と、オミくんはエリーを面白がり、まさかの急接近!
最初こそオミくんの裏の顔にショックを受けたエリーだったが、彼の飾らない素の部分を知っていくうちに恋心も妄想も、さらに膨らんでいく。
そんなある日、ちょっと変わったクラスメイト・要くん(西村拓哉)に“恋わずらいのエリー”であることがバレてしまう。
エリーに興味を持った要くんは、急に距離を詰めて「友達になって」と迫り、まさかの三角関係…?!
果たして、オミくんとエリーの恋の行方は…?
【考察】
いわゆる典型的なラブストーリーではあるが、妄想ツイートを垂れ流して、恋する乙女が一度は想像したことのある妄想だらけで、なぜか少し共感してしまうところがあった。直接言葉では伝えられないもどかしさも含めて甘酸っぱい作品。
⑰『あたしの!』(映画)
【あらすじ】
素直すぎて嘘がつけない高校2年生のあこ子は、新学期の初日、全校女子の人気者である直己が留年したことで同じ学年になる。ひと目で恋に落ちたあこ子は彼に告白するが、彼女を作る気はないと言われふられてしまう。直己の親友である成田から彼女を作らない理由を聞き、好きでい続けようと心に決めるが、あこ子とは小学校からの親友である充希が直己に近づき始める
【考察】
恋と友情どっちを取るのかという一生悩ましい問題を抱えて、傷つきながら成長している様子を見れた。ポップで明るい部分もあれば、トーンを下げた映像で見られる恋愛と友情の葛藤シーンはあち子と充希の隔たりをうまく表現している。最後の空港のシーンだけでもすごく胸がときめく。
⑱『2人のローマ教皇』(映画)
【あらすじ】
カトリック教会の方針に不満を抱くベルゴリオ枢機卿は、ベネディクト教皇に辞任を申し入れる。ところが、スキャンダルに直面して信頼を失っていたベネディクト教皇はそれを受け入れず、彼をローマへ呼びつける。ベネディクト教皇はベルゴリオから激しい批判を受けるも、彼を後継者と見定め、ある秘密を打ち明ける。やがて考えのまったく異なる2人は、カトリック教会の未来のために対話を重ね、理解を深めていく。
【考察】
カトリック教会にとって歴史的な転換点であった出来事を取り扱っている。カトリック教会のトップに立つことの重み、孤独そして教会の外にいる人々に人生をどのようにして生きるのかを問うていると思った。言いづらいことはラテン語で、というのが面白かった。
⑲『ちはやふる-めぐり-』(ドラマ)
【あらすじ】
「今どき部活なんてタイパ悪すぎでしょ」――梅園高校2年生のめぐる(當真あみ)は、競技かるた部の幽霊部員。目の前の青春よりも、将来への投資!何事もタイパ重視のめぐるは、学校が終わればバイト、からの学習塾、隙間時間にスマホアプリで積み立て投資。部活に入っていれば内申点に有利という理由だけでかるた部に在籍しているものの、一度も部活に出たことがなく、競技かるたのルールもチンプンカンプン。そんなめぐるの高校生活が、新たに競技かるた部の顧問になった古典オタクの非常勤講師・大江奏(上白石萌音)との出会いで変わり始め…。
【考察】
『ちはやふる』の瑞沢高校が舞台ではなく、梅園高校が舞台になる。かるたなんて、といったタイパ重視と言ったどちらかと言えば現代的な考えをしていて、かるた馬鹿と称されていた千早とはまた違った魅力に溢れていた。しかし千早のような周りを巻き込んで大きくなっていく、影響を与えながら強くなっていく姿や、瑞沢OB、OGとして前シリーズまでで出演していたメンバーたちが再登場し、10年の年月を感じさせるように成長しているのにも感動した。
⑳『今際の国のアリス』(ドラマ)
【あらすじ】
漫然と生きていたゲーマーが、友人2人と迷い込んだ異次元の東京。そこで次から次へと理不尽なゲームを突きつけられた彼らは、生きるか死ぬかの戦いを強いられる
【考察】
選ぶことの責任や、なぜ生きたいと思うのか。一度は考えたことがあるようなことだが、いざこの場面に置かれたら自分は生き残ろうとするのか。正常な世界があるのかわからない中で仲間が死んでしまうのを見ながら正常でいられるのかを常に考えながら見た。自己犠牲の上で成り立つゲームもあって、アリス自身の自己優先から他者のために命をかける姿に成長も見てとれた。
㉑『SPEC 警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』(ドラマ)
【あらすじ】
ずば抜けたIQを有する型破りな刑事と左遷された元特殊部隊の司令塔。未詳事件特別対策係でコンビを組んだ2人は、常識では計り知れない能力"SPEC"を持つ犯罪者たちに立ち向かっていく。
【考察】
『SPEC』シリーズはただの超能力アクション/ミステリーではなく、「能力とは何か」「真実と記憶」「個と国家」「正義とは何か」といった重めの問いを娯楽として昇華させる作品だ。視聴者を飽きさせないキャラクターの魅力、多層的な構造、映像演出、そして謎解きのスピード感・衝撃には強い中毒性がある。異常を感じさせる演出は今のドラマなどでも使われるスローにして光が線になる演出などがあって、視覚的にも楽しめる。
㉒『薫る花は凛と咲く』(アニメ)
【あらすじ】
底辺男子校・千鳥高校の紬 凛太郎と、お嬢様学校・桔梗女子の和栗 薫子が出会い、惹かれ合う青春ラブストーリー。隣接する二校の溝の深さに反発し、互いへの偏見がない薫子に心を許していく凛太郎と、彼を「怖い」と思わない薫子が、距離を縮めながら周囲の人々にも心を開いていく物語
【考察】
薫子のふわっとした雰囲気が漫画で見ていた時よりも強調されていて、髪の毛の動きなどでも薫子の気持ちが表現されていて、かわいくてあざといけど計算されていない初心な可愛さで溢れていた。隣の校舎ながらも近くて遠い距離感だからこそ生まれる、凛太郎の不器用さや心理的距離と物理的距離が交錯していた。
㉓『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』
【あらすじ】
主人公の芦屋瑞稀が、男子に憧れる佐野泉をもう一度跳ばせたい一心で、男のふりをして全寮制男子校に編入する物語で、若手俳優が多数出演し、学園でのドキドキの共同生活や、男装するヒロインが女子であるとバレないかというハラハラする展開、そして登場人物たちの恋愛模様が描かれる、究極の学園青春ラブコメディ
【考察】
女性が“男装”して男子校に潜入するという設定自体が、性別の境界や社会的な“役割”を揺らす要素を含んでおり、視聴者に「性別・性というものをどう見るか」を無意識に問いかける。
キャストがものすごく豪華であることを前提としているが、青春ドラマ・ラブコメのテンプレートのひとつとなったことで、その後のドラマに“学園男装もの”“寮生活もの”“恋愛と友情の混合”といった要素が増えるきっかけになったと思われる
㉔『涙の女王』(ドラマ)
【あらすじ】
財閥の娘ホン・ヘインと、彼女の夫である田舎出身の弁護士ペク・ヒョヌが、結婚3年目の危機を経て再び愛を育むラブコメディ。離婚を決意したヒョヌが、ヘインの余命3ヶ月の脳腫瘍という衝撃的な事実を知ったことから物語は展開し、夫婦の愛と絆を取り戻す過程が描かれる。
【考察】
離婚の危機に直面しながらも愛を取り戻していく姿に胸キュンするところが多かった。対話すること、相手への尊敬の念があれば愛はいくらでも取り戻せると思った。いい瞬間に曲が入るのが韓国ドラマを感じさせる。スローのキスシーンとか
㉕『愛の不時着』(ドラマ)
【あらすじ】
パラグライダー中に思わぬ事故に巻き込まれ、北朝鮮に不時着してしまった韓国の財閥令嬢。そこで出会った堅物の将校の家で、身分を隠して暮らすことになるが...
【考察】
実際には絶対と言っていいほどあり得ない状況ではあるが、「運命」をめぐるラブストーリーではあるが、選択が一つでも違えば死んでいたかもしれない中で、出会うことの奇跡を感じた。当たり前に皆人間で温かさを持っているから、人生って彩りがあると思った。
㉖『ウェンズデー』 (ドラマ)
【あらすじ】
「アダムス・ファミリー」に登場する長女ウェンズデーが主人公のNetflixオリジナルドラマ。ティム・バートンが監督・制作総指揮を担当した。奇妙な寄宿学校、ネヴァーモア学園でウェンズデーが一族にまつわる超常現象や殺人事件に巻き込まれていく推理ミステリー。
【考察】
後半のシリーズになるにつれ、少しずつ感情が人間らしくなってくるウェンズデーが次第に明らかになってくるのが、シリーズ物の醍醐味を感じさせる。
自分本位だったウェンズデーがイーニッドのために、など行動する理由が自分から友達を守るために変わっていくのが普通の女の子で可愛いらしく感じる。
㉗『ブラッシュアップライフ』(ドラマ)
【あらすじ】
交通事故で死亡した女性は死後の世界に送られるが、生前の人生を最初からやり直すチャンスをつかみ取る。来世のために徳を積むべく、彼女の2周目の人生が幕を開ける。
【考察】
バカリズム脚本作品は、リアルを追求しているからこそセリフにあるあると言いたくなるような共感するところが多い。人生を何度もやり直すがやり直すたびに新しい問題が生まれて、完璧な人生なんて送れないけど前向いて生きることが大切なんだと思った。
㉘『コンジアム』(映画)
【あらすじ】
世界7大心霊スポットのひとつに選出されたコンジアム精神病院へ潜入し、ライブ配信する7人の男女。恐る恐る院内に足を踏み入れた一行は、次々と不気味な現象をカメラに収める。やがてアクセス数を順調に伸ばしていったが、想定していた以上の怪奇事件が続発する。
【考察】
配信視点から見ることが多く、YouTubeを映画にしたような印象を受けるが、カメラという肉眼では気づきづらいこともフィルターを通すことでわかりやすくなっていると思った。現代的なホラー作品である。白目で出てくるのが一般的だが、黒目も怖いと改めて思った。
㉙『呪詛』
【あらすじ】
かつてある宗教施設で禁忌を破り、呪いを受けたリー・ルオナン。そして6年後、あの時の呪いが今度は自分の娘に降りかかったと知り、必死で我が子を守ろうとする。
【考察】
ただのホラー映画のようなお化けが出てきてきゃーではなく、じわじわと蝕んでいくような怖さに包まれる。カルト宗教なだけあって異質でドキュメンタリー風な視点で進むから臨場感も味わえる。見る人によってはトラウマになると思うが、その気持ち悪さが醍醐味だと思った。
㉚『となりのMr.パーフェクト』(ドラマ)
【あらすじ】
人生をやり直すために韓国に戻ってきた女性が幼なじみと再会。そんなふたりの間には、かなり複雑な過去があり...。
【考察】
ラブコメではあるが、人生にミスを犯したり、迷いがある登場人物にとって「再び立ち上がること」「自分が本当に望む道に戻ること」などのリセットをモチーフにしつつも、明るく前に進んでいるとと思った。
【あらすじ】
任侠の一門に生まれた喜久雄は15歳の時に抗争で父を亡くし、天涯孤独となってしまう。喜久雄の天性の才能を見抜いた上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎は彼を引き取り、喜久雄は思いがけず歌舞伎の世界へ飛び込むことに。喜久雄は半二郎の跡取り息子・俊介と兄弟のように育てられ、親友として、ライバルとして互いに高めあい、芸に青春を捧げていく。そんなある日、事故で入院した半二郎が自身の代役に俊介ではなく喜久雄を指名したことから、2人の運命は大きく揺るがされる。
【考察】
芸を極めることの代償、なにが正解なのかわからない世界でもがき苦しみ、それでも舞台に立ち続ける。伝統文化である歌舞伎において重要視される血に振り回されつつも、空っぽでなにもなかった喜久雄がどんどん吸収していき、言い方は悪いが怪物のようになるのが印象的だった。人間国宝の役で出てきた万菊の喜久雄や俊介に対する温かさと圧倒的な存在感が素晴らしいなと思った。あと玉三郎さんのような目を惹くような鷺娘に感動した。
②『いつかは賢いレジデント生活』(ドラマ)
【あらすじ】
『賢い医師生活』に登場したユルジェ病院の分院・鍾路ユルジェ病院の産婦人科を舞台に、レジデント(専攻医)1年目の4人が悪戦苦闘しながらも成長していく姿を描く。
【考察】
賢い医師生活のスピンオフ版として配信されているもので、レジデントと言っているように研修医たちの話になる。うまく行かず失敗を繰り返して、辞めたいや逃げたいなど、たくさんの弱音を吐きながらも成長していく姿に勇気をもらった。人間らしさマックスで見やすい作品だった。
③『ロマンティックキラー』(アニメ)
【あらすじ】
恋愛に全く興味がない女子高生・星野杏子が、魔法使いリリによって「恋愛エネルギー」を生み出すプロジェクトに強制参加させられる物語。大好きなゲーム、チョコ、猫という「三大欲求」をリリに没収された杏子は、次々と現れるイケメン男子たちからの「ロマンティック・トラップ」を回避するために奮闘しますが、その過程で彼らにも変化が訪れる。
【考察】
少女漫画のあるある展開がたくさん、でも全く靡かない杏子とイケメンたちと魔法使いリリの掛け合いのテンポが良かった。薄いイケメンではなく、キャラ設定がしっかりしてあるクセの強いイケメンばかり、今の所は誰にも落ちていないが果たして誰かと恋をするのか気になるところではある、映画に期待
④『エミリー、パリへ行く』(ドラマ)
【あらすじ】
シカゴのマーケティング会社で働くエミリー・クーパーが、 上司の代理でフランス・パリのサヴォワールに転勤することになり、夢のパリ生活を開始する物語。エミリーはアメリカとフランスの文化の違いに戸惑いながらも、フランス語が話せないことや、現地の同僚の反発に直面しながらも、SNS戦略の刷新に奮闘。さらに、隣人のシェフ、ガブリエルとのロマンスや、歌手を目指す友人ミンディーとの友情を築きながら、仕事と恋愛、友情に情熱を燃やす姿が描かれる。
【考察】
アメリカとフランスの文化の違いから起こる問題に戸惑いながらも時には楽しむ。仕事ではエミリーの斬新なアイデアに興味を惹かれ、どんどん仕事を任されていく姿や、時に恋も仕事もうまく行かず悩んでいる姿がリアルだと思ったし、なによりどこを切り取っても映える街並みなのに、シリーズ1ではまるで拒絶されているように感じているところに苦しさを感じた。シリーズを重ねていくごとにパリを本当に好きになっていくエミリーが素敵だった。見た後はどこかスッキリできる作品
⑤『気象庁の人々 社内恋愛は予測不可能!?』(ドラマ)
【あらすじ】
気象庁で働く優秀な予報官チン・ハギョンが、結婚を控えていた恋人の浮気で破談になり社内恋愛を避けると誓うが、天気にしか興味がない自由奔放な新入社員イ・シウと出会い、再び予測不能な恋に落ちるというラブコメディです。
【考察】
韓国ドラマあるあるのぶっ飛んだ設定ではなく、ありそうな現実味のあるストーリー。気象庁を舞台に進む話でこういうところをみて予報出しているんだと勉強になった。社内恋愛の難しさ、仕事と家庭の両立など本当に現実的な考えさせられる場面が多かった。天気を各話のタイトルに模してるのも粋
⑥『グランメゾン東京』(ドラマ)
【あらすじ】
木村拓哉演じる型破りなシェフ・尾花夏樹が、パリで二つ星を獲得するも慢心から全てを失った後、鈴木京香演じる女性シェフ・早見倫子と出会い、日本で三つ星レストラン「グランメゾン東京」をオープンして世界最高峰のミシュラン三つ星獲得を目指す物語
【考察】
大人が真剣に夢を追いかけるってかっこいいと思った。展開はまあ読めるがそれでもそこに辿り着くまでの努力がすごい。
⑦『ロストケア』(映画)
【あらすじ】
老人と訪問介護センターの所長の死体が早朝の民家で発見された。容疑者として浮上したのは亡くなった所長が勤めていたセンターで介護士として働く斯波宗典。検事の大友秀実は彼が働き始めてから亡くなった介護センターの利用者が40人を超えていることを突き止める。真実を明らかにしようと斯波を追い詰めていく大友に、彼は自分のしたことは「殺人」ではなく「救い」であったと主張する。
【考察】
人の命を奪う権利は誰にもないことはわかっているが、それでも介護の辛さや、誰にもわかってもらえない孤独、今まで自分たちが目を背けていた問題なのではないかと思わされた。綺麗事を並べるだけでは解決できない自分の気持ちをどこに仕舞えばいいのかがわからなくなるような作品であった。斯波を演じた松山ケンイチの優しい雰囲気があったからこそより裏切られた気持ちが強く感じた。
⑧『ダンダダン』(アニメ)
【あらすじ】
霊媒師の家系に生まれた女子高生・モモ(綾瀬桃)と、宇宙人を信じ幽霊を信じないオカルト好きの同級生・オカルン(高倉健)が、互いの信じる存在を証明するために向かった怪異スポットで、理解を超えた宇宙人と怪奇現象に遭遇し、窮地の中で秘めた力に目覚め、呪いの力を手にした二人が迫りくる怪異に立ち向かうオカルティックバトル&青春物語
【考察】
大胆でユーモア溢れるテンポ感でサクサク進む。ラブコメ、オカルト、バトルといった合わさることのなさそうな組み合わせだからこそカオスだけどそこに魅力を感じるのだと思った。
⑨『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』(映画)
【あらすじ】
鬼となった妹・禰󠄀豆子を人間に戻すため鬼狩りの組織《鬼殺隊》に入った竈門炭治郎。入隊後、仲間である我妻善逸、嘴平伊之助と共に様々な鬼と戦い、
成長しながら友情や絆を深めていく。そして炭治郎は《鬼殺隊》最高位の剣士である《柱》と共に戦い、「無限列車」では炎柱・煉󠄁獄杏寿郎、「遊郭」では音柱・宇髄天元、「刀鍛冶の里」では、霞柱・時透無一郎、恋柱・甘露寺蜜璃と共に激闘を繰り広げていった。その後、来たる鬼との決戦に備えて、隊士たちと共に《柱》による合同強化訓練《柱稽古》に挑んでいる最中、《鬼殺隊》の本部である産屋敷邸に現れた鬼舞辻󠄀無惨。お館様の危機に駆けつけた《柱》たちと炭治郎であったが、 無惨の手によって
謎の空間へと落とされてしまう
【考察】
獪岳、童磨、猗窩座の鬼となった過去が明かされたが、そこに尺を取りすぎなように感じた。猗窩座の回想シーンでは小雪の柔らかさがより伝わって良かった。そこからの現実もどってからの干渉に浸る間がなくて怒涛すぎて感情が忙しかった。
⑩『ストレンジャー・シングス 未知の世界』
【あらすじ】
姿を消した少年、人目を忍び行われる数々の実験、破壊的な超常現象、突然現れた少女。すべての不可解な謎をつなぐのは、小さな町に隠された恐ろしい秘密。
【考察】
ホラー要素ありつつもウィルが生き続けてると信じて行動するジョイスや勇敢に突き進むナンシー
普通に戻ることはないかもしれないが、表と裏の世界が合わさっているSF感がたまらなかった
⑪池袋ウエストゲートパーク(ドラマ)
【あらすじ】
池袋に住む青年「マコト」が、街に渦巻くストリート犯罪やヤクザの抗争、そして当時の社会問題に直面しながら、持ち込まれるトラブルを次々と解決していくストリート・サスペンスドラマ(または小説シリーズ)。主人公マコトは、ヤクザ絡みの難事件を解決する「池袋のトラブルシューター」として知られ、その活躍を通じて都会の裏側で生きる人々の人間ドラマが描かれる。
【考察】
めんどくせえが口癖のマコトに多くのトラブルが舞いこんでくる。2000年放送で、その時代の雰囲気、若者文化、ストリートギャング、都市空間の危うさなどを、ドラマ構成・演出・セリフで巧みに描き出している。池袋西口公園(ウエストゲートパーク)を「若者たちの起点・人間模様の交差点」として扱うことで、都市の切れ目・リアルな生活感が画面に滲み出るようになっている
⑫『火垂るの墓』(映画)
【あらすじ】
昭和20年、神戸。14歳の少年と4歳の妹は、空襲で母が入院することになり、叔母のもとに身を寄せる。やがて母が死ぬと、叔母は兄妹を邪険に扱うようになり、2人は家を出ることにする。誰もいない防空壕で、新たな生活を始める子供たち。しかし、そこには厳しい現実が待っていた。
【考察】
見る年齢によって感じ方が変わる作品。幼少期には
おばさんの理不尽さにしか目がいかなかったが、おばさんの立場からしたらカンタたちの態度が悪くも感じるからこそ、何度でも見るべき映画だと思う
⑬『TOKYO MER 走る緊急救命室』(ドラマ)
【あらすじ】
物語の舞台となるのは、都知事の命で新設された「TOKYO MER」という救命救急のプロフェッショナルチーム。“MER”とは、モバイル・エマージェンシー・ルームの略称で、彼らの使命は最新の医療機器とオペ室を搭載した大型車両(ERカー)で、危険極まりない重大事故・災害・事件の現場に駆けつけ、負傷者にいち早く救命処置を施すこと。“一人も死者を出さないこと”が、彼らに課されたミッションである。
【考察】
1話1話各話メンバーを絞って焦点を当てていくスタイルで王道的な話ではあるが、鈴木亮平演じる喜多見の命を本当の意味で平等に扱っていて、まるでヒーローだった。しかし組織としては認められないこともある中で命とは何かを問うていると思った。
⑭『空飛ぶ広報室』(ドラマ)
【あらすじ】
元戦闘機パイロットの夢を怪我で絶たれた空井大祐と、取材で航空自衛隊の広報室を訪れた情報番組ディレクターの稲葉リカが出会い、お互いの挫折や葛藤を乗り越えながら、広報の仕事を通して航空自衛隊の魅力を伝え、成長していく物語
【考察】
恋愛要素だけではなく、夢を一度は諦めた者たちがどのようにして向き合ってまた立ち上がるのかそこに視点をおいて見た時にこの作品がより輝くと思った。3.11の描写を入れたりして、戦闘集団のようなイメージではなく、一人一人の人間である上でステレオタイプを打ち崩す効果があるように感じた。航空祭やブルーインパルスといった、リアルな描写、防衛省の協力があってこそできているから映像に新鮮さを感じさせた。
⑮『母性』(映画)
【あらすじ】
ある日、女子高生の遺体が発見された。しかし、事件がなぜ起きたのかはわからないままだった。この事件の証言者として話を聞かれることになったのは、ルミ子と清佳という、娘を愛せない母とそんな母に愛されたい娘の2人。同じ時刻に起きた同じ出来事を思い浮かべているはずの2人の証言は食い違い、彼女たちの抱える複雑な関係性や秘密が浮き彫りになっていく。
【考察】
小説と同様に母の視点と娘の視点で語られることでお互いの主観で語られる分、ずれがや矛盾が生じ、独特の不穏な雰囲気を出していると思った。戸田恵梨香演じるルミ子の周りには母から愛されている時は色とりどりになっているが、清佳に母として接する時には色があまりないことに気づいた。そこにはルミ子の心情もあったように思う。
⑯『死刑にいたる病』(映画)
【あらすじ】
大学生の雅也は、24人もの少年少女を殺害したとして世間を震撼させている稀代の連続殺人鬼・榛村 (はいむら)から1通の手紙を受け取る。すでに一審で死刑判決を受けている榛村。一方、雅也は中学時代に地元でパン屋の店主をしていた彼をよく知っていた。
【考察】
榛村のぶれないサイコパスを見事に表現していると思った。本来の自分を見つめ、大切なものとは何かを探す中で自分を見失ってしまったから絶望の中で、人を殺すという答えになったと思った。雅也も自分の状況から目を逸らして現実を見ないようにしていたために、榛村を信仰し、自分と同一視してしまったのではないかと思った。なかなかゾッとする結末であった。
⑯『恋わずらいのエリー』(映画)
【あらすじ】
学校イチのさわやか王子・オミくん(宮世琉弥)を眺めつつ、彼との妄想を“恋わずらいのエリー”の名前でSNS上でつぶやくのが日課の妄想大好き女子・エリー(原 菜乃華)。
ところが、パーフェクトだと思っていたオミくんは、実は口が悪いウラオモテ男子だった!
しかも、超恥ずかしい妄想が彼にバレてしまい、絶体絶命の大ピンチ…のはずが、「その妄想、叶えてあげてもいーよ?」と、オミくんはエリーを面白がり、まさかの急接近!
最初こそオミくんの裏の顔にショックを受けたエリーだったが、彼の飾らない素の部分を知っていくうちに恋心も妄想も、さらに膨らんでいく。
そんなある日、ちょっと変わったクラスメイト・要くん(西村拓哉)に“恋わずらいのエリー”であることがバレてしまう。
エリーに興味を持った要くんは、急に距離を詰めて「友達になって」と迫り、まさかの三角関係…?!
果たして、オミくんとエリーの恋の行方は…?
【考察】
いわゆる典型的なラブストーリーではあるが、妄想ツイートを垂れ流して、恋する乙女が一度は想像したことのある妄想だらけで、なぜか少し共感してしまうところがあった。直接言葉では伝えられないもどかしさも含めて甘酸っぱい作品。
⑰『あたしの!』(映画)
【あらすじ】
素直すぎて嘘がつけない高校2年生のあこ子は、新学期の初日、全校女子の人気者である直己が留年したことで同じ学年になる。ひと目で恋に落ちたあこ子は彼に告白するが、彼女を作る気はないと言われふられてしまう。直己の親友である成田から彼女を作らない理由を聞き、好きでい続けようと心に決めるが、あこ子とは小学校からの親友である充希が直己に近づき始める
【考察】
恋と友情どっちを取るのかという一生悩ましい問題を抱えて、傷つきながら成長している様子を見れた。ポップで明るい部分もあれば、トーンを下げた映像で見られる恋愛と友情の葛藤シーンはあち子と充希の隔たりをうまく表現している。最後の空港のシーンだけでもすごく胸がときめく。
⑱『2人のローマ教皇』(映画)
【あらすじ】
カトリック教会の方針に不満を抱くベルゴリオ枢機卿は、ベネディクト教皇に辞任を申し入れる。ところが、スキャンダルに直面して信頼を失っていたベネディクト教皇はそれを受け入れず、彼をローマへ呼びつける。ベネディクト教皇はベルゴリオから激しい批判を受けるも、彼を後継者と見定め、ある秘密を打ち明ける。やがて考えのまったく異なる2人は、カトリック教会の未来のために対話を重ね、理解を深めていく。
【考察】
カトリック教会にとって歴史的な転換点であった出来事を取り扱っている。カトリック教会のトップに立つことの重み、孤独そして教会の外にいる人々に人生をどのようにして生きるのかを問うていると思った。言いづらいことはラテン語で、というのが面白かった。
⑲『ちはやふる-めぐり-』(ドラマ)
【あらすじ】
「今どき部活なんてタイパ悪すぎでしょ」――梅園高校2年生のめぐる(當真あみ)は、競技かるた部の幽霊部員。目の前の青春よりも、将来への投資!何事もタイパ重視のめぐるは、学校が終わればバイト、からの学習塾、隙間時間にスマホアプリで積み立て投資。部活に入っていれば内申点に有利という理由だけでかるた部に在籍しているものの、一度も部活に出たことがなく、競技かるたのルールもチンプンカンプン。そんなめぐるの高校生活が、新たに競技かるた部の顧問になった古典オタクの非常勤講師・大江奏(上白石萌音)との出会いで変わり始め…。
【考察】
『ちはやふる』の瑞沢高校が舞台ではなく、梅園高校が舞台になる。かるたなんて、といったタイパ重視と言ったどちらかと言えば現代的な考えをしていて、かるた馬鹿と称されていた千早とはまた違った魅力に溢れていた。しかし千早のような周りを巻き込んで大きくなっていく、影響を与えながら強くなっていく姿や、瑞沢OB、OGとして前シリーズまでで出演していたメンバーたちが再登場し、10年の年月を感じさせるように成長しているのにも感動した。
⑳『今際の国のアリス』(ドラマ)
【あらすじ】
漫然と生きていたゲーマーが、友人2人と迷い込んだ異次元の東京。そこで次から次へと理不尽なゲームを突きつけられた彼らは、生きるか死ぬかの戦いを強いられる
【考察】
選ぶことの責任や、なぜ生きたいと思うのか。一度は考えたことがあるようなことだが、いざこの場面に置かれたら自分は生き残ろうとするのか。正常な世界があるのかわからない中で仲間が死んでしまうのを見ながら正常でいられるのかを常に考えながら見た。自己犠牲の上で成り立つゲームもあって、アリス自身の自己優先から他者のために命をかける姿に成長も見てとれた。
㉑『SPEC 警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』(ドラマ)
【あらすじ】
ずば抜けたIQを有する型破りな刑事と左遷された元特殊部隊の司令塔。未詳事件特別対策係でコンビを組んだ2人は、常識では計り知れない能力"SPEC"を持つ犯罪者たちに立ち向かっていく。
【考察】
『SPEC』シリーズはただの超能力アクション/ミステリーではなく、「能力とは何か」「真実と記憶」「個と国家」「正義とは何か」といった重めの問いを娯楽として昇華させる作品だ。視聴者を飽きさせないキャラクターの魅力、多層的な構造、映像演出、そして謎解きのスピード感・衝撃には強い中毒性がある。異常を感じさせる演出は今のドラマなどでも使われるスローにして光が線になる演出などがあって、視覚的にも楽しめる。
㉒『薫る花は凛と咲く』(アニメ)
【あらすじ】
底辺男子校・千鳥高校の紬 凛太郎と、お嬢様学校・桔梗女子の和栗 薫子が出会い、惹かれ合う青春ラブストーリー。隣接する二校の溝の深さに反発し、互いへの偏見がない薫子に心を許していく凛太郎と、彼を「怖い」と思わない薫子が、距離を縮めながら周囲の人々にも心を開いていく物語
【考察】
薫子のふわっとした雰囲気が漫画で見ていた時よりも強調されていて、髪の毛の動きなどでも薫子の気持ちが表現されていて、かわいくてあざといけど計算されていない初心な可愛さで溢れていた。隣の校舎ながらも近くて遠い距離感だからこそ生まれる、凛太郎の不器用さや心理的距離と物理的距離が交錯していた。
㉓『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』
【あらすじ】
主人公の芦屋瑞稀が、男子に憧れる佐野泉をもう一度跳ばせたい一心で、男のふりをして全寮制男子校に編入する物語で、若手俳優が多数出演し、学園でのドキドキの共同生活や、男装するヒロインが女子であるとバレないかというハラハラする展開、そして登場人物たちの恋愛模様が描かれる、究極の学園青春ラブコメディ
【考察】
女性が“男装”して男子校に潜入するという設定自体が、性別の境界や社会的な“役割”を揺らす要素を含んでおり、視聴者に「性別・性というものをどう見るか」を無意識に問いかける。
キャストがものすごく豪華であることを前提としているが、青春ドラマ・ラブコメのテンプレートのひとつとなったことで、その後のドラマに“学園男装もの”“寮生活もの”“恋愛と友情の混合”といった要素が増えるきっかけになったと思われる
㉔『涙の女王』(ドラマ)
【あらすじ】
財閥の娘ホン・ヘインと、彼女の夫である田舎出身の弁護士ペク・ヒョヌが、結婚3年目の危機を経て再び愛を育むラブコメディ。離婚を決意したヒョヌが、ヘインの余命3ヶ月の脳腫瘍という衝撃的な事実を知ったことから物語は展開し、夫婦の愛と絆を取り戻す過程が描かれる。
【考察】
離婚の危機に直面しながらも愛を取り戻していく姿に胸キュンするところが多かった。対話すること、相手への尊敬の念があれば愛はいくらでも取り戻せると思った。いい瞬間に曲が入るのが韓国ドラマを感じさせる。スローのキスシーンとか
㉕『愛の不時着』(ドラマ)
【あらすじ】
パラグライダー中に思わぬ事故に巻き込まれ、北朝鮮に不時着してしまった韓国の財閥令嬢。そこで出会った堅物の将校の家で、身分を隠して暮らすことになるが...
【考察】
実際には絶対と言っていいほどあり得ない状況ではあるが、「運命」をめぐるラブストーリーではあるが、選択が一つでも違えば死んでいたかもしれない中で、出会うことの奇跡を感じた。当たり前に皆人間で温かさを持っているから、人生って彩りがあると思った。
㉖『ウェンズデー』 (ドラマ)
【あらすじ】
「アダムス・ファミリー」に登場する長女ウェンズデーが主人公のNetflixオリジナルドラマ。ティム・バートンが監督・制作総指揮を担当した。奇妙な寄宿学校、ネヴァーモア学園でウェンズデーが一族にまつわる超常現象や殺人事件に巻き込まれていく推理ミステリー。
【考察】
後半のシリーズになるにつれ、少しずつ感情が人間らしくなってくるウェンズデーが次第に明らかになってくるのが、シリーズ物の醍醐味を感じさせる。
自分本位だったウェンズデーがイーニッドのために、など行動する理由が自分から友達を守るために変わっていくのが普通の女の子で可愛いらしく感じる。
㉗『ブラッシュアップライフ』(ドラマ)
【あらすじ】
交通事故で死亡した女性は死後の世界に送られるが、生前の人生を最初からやり直すチャンスをつかみ取る。来世のために徳を積むべく、彼女の2周目の人生が幕を開ける。
【考察】
バカリズム脚本作品は、リアルを追求しているからこそセリフにあるあると言いたくなるような共感するところが多い。人生を何度もやり直すがやり直すたびに新しい問題が生まれて、完璧な人生なんて送れないけど前向いて生きることが大切なんだと思った。
㉘『コンジアム』(映画)
【あらすじ】
世界7大心霊スポットのひとつに選出されたコンジアム精神病院へ潜入し、ライブ配信する7人の男女。恐る恐る院内に足を踏み入れた一行は、次々と不気味な現象をカメラに収める。やがてアクセス数を順調に伸ばしていったが、想定していた以上の怪奇事件が続発する。
【考察】
配信視点から見ることが多く、YouTubeを映画にしたような印象を受けるが、カメラという肉眼では気づきづらいこともフィルターを通すことでわかりやすくなっていると思った。現代的なホラー作品である。白目で出てくるのが一般的だが、黒目も怖いと改めて思った。
㉙『呪詛』
【あらすじ】
かつてある宗教施設で禁忌を破り、呪いを受けたリー・ルオナン。そして6年後、あの時の呪いが今度は自分の娘に降りかかったと知り、必死で我が子を守ろうとする。
【考察】
ただのホラー映画のようなお化けが出てきてきゃーではなく、じわじわと蝕んでいくような怖さに包まれる。カルト宗教なだけあって異質でドキュメンタリー風な視点で進むから臨場感も味わえる。見る人によってはトラウマになると思うが、その気持ち悪さが醍醐味だと思った。
㉚『となりのMr.パーフェクト』(ドラマ)
【あらすじ】
人生をやり直すために韓国に戻ってきた女性が幼なじみと再会。そんなふたりの間には、かなり複雑な過去があり...。
【考察】
ラブコメではあるが、人生にミスを犯したり、迷いがある登場人物にとって「再び立ち上がること」「自分が本当に望む道に戻ること」などのリセットをモチーフにしつつも、明るく前に進んでいるとと思った。