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3年 鈴木心陽 春休み課題1〜20
RES
1、日本アニメの革新 歴史の転換点となった変化の構造分析
氷川竜介
アニメの年表を転換点という視点を用いて作成することで流れを捉えようとした本。昭和までのアニメを『白蛇伝』『劇場版エースをねらえ!』『AKIRA』の3つに絞り、そこからのアニメは基礎の応用であるとしたのは斬新だった。(原点は『鉄腕アトム』『白蛇伝』)2023初版で「世界系」の作品まで流れを意識して書かれているのでアニメ史をざっくりと学ぶことができた。特に『宇宙戦艦ヤマト』で述べられている「世界観主義」「美学のある世界観」「クオリティ主義」の話は現在子供から大人まで多くの人がアニメに触れる現代を生きる自分にとって目新しいものだった。またヤマトのファンクラブ創設、「アニメージュ創刊」から繋がる「作家主義」も今や当たり前になっている(宮崎駿、新海誠など)ので、その経緯が知れてよかった。
2、アニメ•エクスペリエンス 深夜アニメ研究の方法
川口茂雄
ゼミでも数章触れた本。驚かされたのがその研究の仕方。自分は今まであまり多くのアニメーションの研究文献を読んではいないが、作品を研究しようとするとどうしてもその作家のことを調べなくてはいけなくなるものだと思っていた。しかし本書、特に序盤では『薬屋のひとりごと』のオープニングや『宇宙よりも遠い場所』挙げ、カットごとの繋がりや広がり、止め画が何を表しているのかなど文脈的なアニメ研究というより映像論のような研究がなされていた。MVに用いられるアニメーションをいつか研究したいと思っている自分にとってとても嬉しいことであった。また、これらはノベルゲームやアートアニメーションを見る際も有用だと感じた。
3、美学への招待 増補版
佐々木健一
美学への入門として読んだ。個人的にもっと簡単な入門書あるよなと思った。特に最終章の思想の話は自分の知識量では理解しづらかった。しかし、とても面白いので是非お勧めしたい。本書は増補版で現代で移り変わっていく美学を身近なもの(例えばレコード、や商品のパッケージ)を使って説いてくれています。特にこの頃使われる「芸術的」という言葉に違和感を持っている人は読んだ方がいいです。読んで、自分はこの頃「芸術的だ」と呼ばれるものは単に感性的なものになってきているなあと感じました。(筆者はデュシャンの泉を挙げ、寧ろ観念的だと感じているようです) 近代美術が身体性を捉えられなかった理由が身体をリズム=呼吸としてではなくただの物体と見ていたからというものがあります(今では美術とみられている)。これは自分の勝手な考察なのですが、アニメーション、とりわけ初期のミッキーは呼吸のアニメーションだというのがありました。現在第七芸術と言われている映画やカットのリズこそあっても、身体を一から線で作っているアニメーションこそ身体の芸術といえないのかと考えました。勉強不足なので勉強します。
4、漫画映画論
今村太平
古くに書かれているので多少読みにくさはある。アニメーションのはじまりから発展を細かに書いてくれている。幻灯の発展から廃れるまでも書いてくれているので、海外のアートアニメーションや人形、影絵に興味のある人は前半部分だけでも読んでみてよいと思う。 当たり前かも知れないが、本書でも「ミッキーのビョンビョン踊りは統合されているのはリズムだけであって、それ以外は破壊されているように思う。しかし、他にも統合はあって、それは機械による統合である(要約)」とあるように、そのトーキー技術に重きを置いている。また音楽や線、色や光など細かに分割した視点で当時のアニメーション(主にディズニー映画)を研究してくれている。ただ、二章の「現代音楽」は自分が浅学故読むのに苦労した。
5、ディズニーと動物 王国の魔法をとく
清水知子
批評用語や思想を多く知らない為カタカナに苦労することがあった。
初期ウォルト•ディズニーについての歴史的な流れをかいてくれている。初期のディズニー作品にプロパガンダ的なものがあったことは重々承知だったが、思い返せばあまり深く考えても、読んでもいなかった。本書は第6章「ネズミは踊り、ドイツは笑うー戦争とプロパガンダ」にある通りディズニーアニメーションとプロパガンダとの関わりを書いてくれている。また、タイトルにもようにディズニーアニメーションにおける「動物」についても深く考察されている。自分は今までは「ディズニー」に動物や人間が仲良く共に包み込まれ社会生活が成り立っている世界とほんわかした何とも間抜けな印象を抱いていた。しかし、ディズニーが初期の段階では「疎外をめぐる問い」と関係していたことそして人間の腹心を託され、人間の都合よく利用される動物という自分にとってディズニーを見る目が変わるに十分な知識を得ることができた。
6、メダリスト (アニメ)
つるまいかだ
【あらすじ】フィギュアスケートに憧れ一度夢破れた青年、明浦路司とフィギュアスケートを夢見る少女、結束いのりがコーチと生徒という関係を結び、オリンピック金メダルを狙うスポーツ漫画
【感想】アニメは最終回を迎えたが⅔話は泣いた。全体的にストーリーも言葉遣いもとても良い。チラッと9巻の絵を見たが画力も化け物じみていると思う。
アニメ1話の瞬間風速がえぐい。結束いのりがフィギュアスケートをやりたいと周囲に声を上げるシーンがあるが、涙が止まらなかった。何かをやりたくてできなかった人、今上手にできていない人は見た方がいい。感動とやる気で眠れなくなります。また、アニメーションもスケートシーンがモーションキャプチャで制作されているらしく、しかも違和感がない。(顔だけ手描き?) 技術面でも見る価値は十二分にあると思う。
7、機動戦士Gundam GQuuuuuuX
【あらすじ】宇宙に浮かぶスペース•コロニーで平穏に暮らしていた女子高生アマテ•ユズリハは、少女ニャアンと出会ったことで、非合法なモビルスーツ決闘競技、クランバトルに巻き込まれる。
【感想】 自分はガンダムを最初期のものの第一話しか見ていなかった。が、完全に引き込まれた。ガンダムを見に行ったらガンダムが始まった…との意見がネットで散見された。同意見である。前半と後半の温度違いすぎて風邪引くかと思った。特に前半はガンダムファンならもっと楽しめたのだろうと少し悔しかった。昔のSEやBGMが用いられていて音響さんの努力が感じられた。後半は音楽も画のタッチも現代的になっていて肌に馴染む感がある。雰囲気もとても好みで、これからテレビ版が始まるので楽しみである。
8、機動戦士ガンダム 水星の魔女
【あらすじ】辺境の地、水星から来た少女スレッタ•マーキュリーが自身のモビルスーツ「エアリアル」を巡り学園から起業、闘争と様々な問題に巻き込まれていく
【感想】ジークアクスでガンダムを知り、見やすいと思い視聴。戦闘シーンの迫力がすごい。特に最初のグエル戦でのガンビット展開のかっこよさは異常で繰り返し視聴した。ストーリーも学園ものから起業、兵器→医療技術。広がる格差や差別など現代の社会への一種の批判、問題提示のように思える。キャラクターデザインの話だが、ガンダムキャリバーンの武器が魔女の箒のようにデザインされているのは時筆すべき点だと感じた。
9、ヲタクに恋は難しい (漫画 1〜4)
ふじた
【あらすじ】隠れ腐女子の百瀬成海と重度のゲームヲタクの男性二藤宏嵩との不器用な恋愛模様を会社のヲタク仲間を巻き込んで描かれるラブコメディ
【感想】もともと元気がない時はヲタ恋のアニメを見るくらい好きだったが漫画版が未履修だったので手に取った。ヲタクなら共感できることも多く、特に平成のヲタク文化が好きな人はアニメ版でも見るべき。アニメ版よりも顔立ちが少女漫画風というか整っている印象を持った。アニメではなく単行本の漫画を読むメリットとして、話数が多いというのは一旦置いておいて、章毎にあるおまけページだったり作者のお遊びで描いたものが見れるというのがあるよねとどこかで共有したい。
10、ノア先輩は友達 (漫画1〜4)
あきやまえんま
【あらすじ】「平熱さとり系」な男性、大塚理人と「限界バリキャリ」な女性、早乙女望愛がひょんなことから友達に。早乙女望愛の「バリキャリ」は表の顔であり、その距離の近さに大塚理人が振り回されるラブコメディ。
【感想】一巻の望愛先輩はまだ良かった。距離感の近さとかメンヘラ(?)を迷惑がられないように気にするそぶりがあったから。巻が進むにつれだんだんと異常さが常軌を逸しはじめる。最初はちょっとぶっ飛んだラブコメとして読んでいたが、そろそろ脳がギャグとして認識し始めている。つっこみたいのは理人の理性がおかしい。多分感情の一部を無くしている。「平熱さとり系」とかはじめて聞いたが、多分そんな言葉で表してはいけない。
11、正反対の君と僕
阿賀沢紅茶
【あらすじ】いつも元気いっぱいだけど周りの目を気にしてしまう女子、鈴木と物静かだけど自分の意見をしっかり伝える男子、谷。正反対な二人がゆっくりと理解を深めていくラブコメディ。
【感想】先輩が発表していて少し気になったので手に取った。勿論二人の関係性やその他の人物の関係描写も良い。ただ、作者の考え方がすごい。ハッとさせられることが多い。特に「なんかモヤモヤしてるなら、なんかモヤモヤしてるって教えてよ」という台詞は感動した。自分たちは何か気に掛かっている時、どうしてそうなっているのか自分で勝手にこじつけようとしたり、相手に無理矢理答えを求めようとすることが多いと思う。「なんで怒ってるの?」とかそのモヤモヤをすぐに晴らそうと焦ってしまう。モヤモヤというまだ言葉にもならない感情を言葉にならないまま相手に伝えることだって、悪いことではないのだと反省とあたたかさを貰った。
12、アマガミSS (アニメ)
【あらすじ】ps2用恋愛シミュレーションゲームソフトのアニメ化。4話毎にヒロインが変わり別世界線となっている。恋愛に苦い思い出のある高校2年生がクリスマスへの苦手意識を克服すべく恋に奮闘する青春恋愛劇。
【感想】友達に無理矢理見せられたが、案外良かった。もともと恋愛シュミレーションというだけあってヒロインの属性が幅広い。平成ギャルゲのあの学園の雰囲気が好きな人は見るべきだと思う。表と裏があるキャラとして絢辻さんがいるが、手帳や主人公、その表裏を支えるものの描写が丁寧になされていると感じた。考察は、ゲームをしてからじっくり書きたいと思った。
13、百瀬アキラの初恋破綻中
晴川シンタ
【あらすじ】ど田舎の少年、久我山はじめの元に帰ってきた、かつて憧れの同級生百瀬アキラ。実は彼女は大好きなはじめと結ばれる為周到な計画をたてていた。しかし超不器用、はじめは超鈍感。ふたりがすれ違う両片思いラブコメディ
【感想】とにかく画力が高い。百瀬アキラの髪の表現とかとても手が凝っている。凛としていてどこか様子のおかしい白髪キャラが見たい人はぜひ読んでほしい。終始シュールな笑いで物語が進んでいく。終盤、体育祭での主人公の踏ん張りや、その勢いのままはじめが百瀬さんへの恋心を自覚するシーンなんかは盛り上がりからブワッと爽やかになる見開きページで漫画の上手さを感じる。
14、幼馴染をえらべない
風呂川ツカサ
【あらすじ】大好きだったけど離れ離れになってしまった幼馴染。そんな彼女と10年ぶりに再会した、と思いきや彼女は分裂して2人になっていて。性格毎に分裂系のラブコメディ
【感想】デフォルメキャラが可愛い。作品特有の絵柄というのにデフォルメを上手に落とし込んでいると思う。状況は訳がわからないが主人公の相手を思うまっすぐさは胸を打つものがある。一巻の終盤に「不信」の性格のヒロインが出てくるがその台詞「好きとか信じるとか、…全部信じるのはむり わかんない けど信じたい…!」といって一歩を踏み出す。このシーンは個人的に刺さった。何かをする時勇気がなくて自分の実力も足りなくて何を信じて進めばいいのかわからない時がある。でも〜したいという不確かな意志自体強い力を持っているんだと再認識させられた。
15、ひとりと話すので精一杯
さんけ
【あらすじ】誰とでも気さくに話せる女子高生、瑠衣。彼女に想いを寄せる友人の咲月。2人の関係を描いた百合漫画
【感想】もともとSNSで読んでいた百合漫画。完全に趣味で日常系なので考察とかなく、百合てえて〜って感じ。メイン2人以外にもカップルが登場する。短編的な形式で進んでいくので百合好きは一読を。
16、スーパーの裏でヤニ吸うふたり(1〜5巻)
地主
【あらすじ】社畜街道を走る中年のサラリーマン佐々木は行きつけのスーパーの山田さんの接客が唯一の癒し。会議が長引いたある日スーパーへよると山田さんはおらず仕方なくタバコを吸おうとする。しかし今時店先で吸うこともできず焦っているとスーパーの裏へ田山さんという定員に声をかけられる。しかし実は田山は佐々木を揶揄うために即興で作った山田さんの偽名で…。一向に気づかない佐々木と揶揄い続ける山田はそれからスーパーの裏で煙草を吸う仲に。
【感想】まず、すぐ体の繋がりだとか可愛いヒロインだとかに嫌気がさしているラブコメ愛読者は読んだ方がいい。中年と20代というのもあって二人の関係は独特、どちらもそのラインを超えないよう不思議な緊張感がある。巻数が進み、二人の仲が近くなるにつれ、自分が恋心を抱えてしまわないかと苦悩を抱く佐々木、自分が山田だと明かしたら関係が崩れることや佐々木への恋心に自覚し始める山田の繊細な感情描写が光る。筆者は二次創作漫画なども描いているがそれ含めてとにかく感情描写が上手い。顔の俯き、目線だけで言葉にできない心の動きを描写する。それ故上記に書いた佐々木の苦悩も自分はきちんと言葉にできたとは思えない。読む人によって印象は変わるとすら思う。キャラクターがただのラブコメの為の記号ではなく、命がある。少しくたびれたサラリーマンやレトロな雰囲気が好きな人は絶対読むべき。全人類読むべき。
17、愛したぶんだけ愛してほしいっ!
まにお
【あらすじ】彼女を特定で作らず遊ぶ一般的にクズと言われている男性の女性版と一般的にクズ男に沼って貢いでしまう女性の百合漫画。
【感想】個人的にこのような関係にはアンチなのですが怖いもの見たさに買ってしまった…怖かった。描写として上手だなと思ったのが7章の見開きページの一枚絵。一件クズ男(女)が首輪(チョーカー)をつけられ一緒に座っている女性がそのリードを握っているように見えるが(リードを握っている手でクズ男(女)の手も同時に握っている)、よく見ると女性の手の指にリードは掛かっておらず、クズ男(女)の指にかかっている。女性側から見た見かけ上の主導権と実際の主導権が違うことを暗に示している。
18、地面師たち
【あらすじ】土地の所有者になりすまして売却をもちかけ、多額の代金を騙し取る不動産をめぐる詐欺を行う「地面師」の犯罪を描く
【感想】話題になっていたので見てみた。俳優の演技が凄かった。特に詐欺を実行しているシーンの緊張感は手に汗握るものがあった。悪いことをしている側で、しかもその行為自体に大義があるわけでもないのに「ばれるな…!」と思ってしまっていることに気づき主観の力の大きさを思い知らされた。テンポも良く一気見していて面白いと感じるものだった。ただハリソン中山の思想、人が死ぬ瞬間を観察し己の欲求を満たしているが、地面師はそれに適してるのだろうかと疑問が拭えなかった。
19、小市民シリーズ (アニメ)
春季限定いちごタルト事件(小説) 夏季限定トロピカルパフェ事件
【あらすじ】中学時代も、問題を推理したがる性格で苦い経験をした小鳩常悟郎は同級生の小山内ゆきと志を共に清く慎ましい「小市民」を目指す。しかし次々と事件に追われ、小市民を目指したいはずの二人は巻き込まれてゆく。
【感想】氷菓と同じ作者(原作)なだけあって雰囲気が好きなファンは一定数いると思う。ストーリーも驚くような仕掛けがあって落ち着いた作風とは思えない衝撃を受けた。 特にアートワークが良かったと思う。例えば背景街で空も晴れていて爽やかな画面がセリフと共に小山内ゆきのアップになった瞬間背景が真っ赤に染まる。そして次のカットでは主人公たちは橋の上で話している。先程までの赤は夕日で、主人公たちが話しながら歩き、時間が経ったのだということがわかる。台詞と時間軸と背景の使い方が今までに見たことがない。それは果たしてキャラクターが生きている世界としての「背景」なのかというのは一考の余地があると思う。しかしネガティブなシーンでは曇りや雨などといった使い古された情景描写、背景は個人的に飽き飽きしていたので見ていて新鮮だった。
20、BLUE GIANT (アニメ)
【あらすじ】仙台の高校生、宮本大は世界一のジャズプレイヤーを目指し高校を卒業後上京。ライブハウスであったピアニスト辺雪祈と高校の同級生、玉田と3人でバンドを組むことになる。
【感想】ストーリーは大体が王道。けれどそれがいいと思わせる迫力がある。特に主人公のサックスの音とそのアニメーションはものすごいインパクトで迫ってくる。ストーリーについても考察の余地があって、ラストの演奏で辺雪に大はサックスを合わせることができるのだが、これはただ大の成長ではなく辺雪が弱者になったこと(ストーリー序盤「弱者には合わせられるんだな」)や、辺雪が折ってしまう腕は序盤片手でピアノを弾いていたこととつながったりとストーリーに一貫性がある。
演奏シーン。ハイライトのこんな使い方は見たことがない。演奏アニメ(ぼざろや坂道のアポロンなど)が好きな人は一度見るべきである。到底商業アニメーションではやらないような作画だと感じる。抽象的なカット、スポットライトから楽器へ反射する光が「感動」や「迫力」のメタファーとして人々の目やメガネ、サックスのハイライトとして躍動する様は圧巻だった。
氷川竜介
アニメの年表を転換点という視点を用いて作成することで流れを捉えようとした本。昭和までのアニメを『白蛇伝』『劇場版エースをねらえ!』『AKIRA』の3つに絞り、そこからのアニメは基礎の応用であるとしたのは斬新だった。(原点は『鉄腕アトム』『白蛇伝』)2023初版で「世界系」の作品まで流れを意識して書かれているのでアニメ史をざっくりと学ぶことができた。特に『宇宙戦艦ヤマト』で述べられている「世界観主義」「美学のある世界観」「クオリティ主義」の話は現在子供から大人まで多くの人がアニメに触れる現代を生きる自分にとって目新しいものだった。またヤマトのファンクラブ創設、「アニメージュ創刊」から繋がる「作家主義」も今や当たり前になっている(宮崎駿、新海誠など)ので、その経緯が知れてよかった。
2、アニメ•エクスペリエンス 深夜アニメ研究の方法
川口茂雄
ゼミでも数章触れた本。驚かされたのがその研究の仕方。自分は今まであまり多くのアニメーションの研究文献を読んではいないが、作品を研究しようとするとどうしてもその作家のことを調べなくてはいけなくなるものだと思っていた。しかし本書、特に序盤では『薬屋のひとりごと』のオープニングや『宇宙よりも遠い場所』挙げ、カットごとの繋がりや広がり、止め画が何を表しているのかなど文脈的なアニメ研究というより映像論のような研究がなされていた。MVに用いられるアニメーションをいつか研究したいと思っている自分にとってとても嬉しいことであった。また、これらはノベルゲームやアートアニメーションを見る際も有用だと感じた。
3、美学への招待 増補版
佐々木健一
美学への入門として読んだ。個人的にもっと簡単な入門書あるよなと思った。特に最終章の思想の話は自分の知識量では理解しづらかった。しかし、とても面白いので是非お勧めしたい。本書は増補版で現代で移り変わっていく美学を身近なもの(例えばレコード、や商品のパッケージ)を使って説いてくれています。特にこの頃使われる「芸術的」という言葉に違和感を持っている人は読んだ方がいいです。読んで、自分はこの頃「芸術的だ」と呼ばれるものは単に感性的なものになってきているなあと感じました。(筆者はデュシャンの泉を挙げ、寧ろ観念的だと感じているようです) 近代美術が身体性を捉えられなかった理由が身体をリズム=呼吸としてではなくただの物体と見ていたからというものがあります(今では美術とみられている)。これは自分の勝手な考察なのですが、アニメーション、とりわけ初期のミッキーは呼吸のアニメーションだというのがありました。現在第七芸術と言われている映画やカットのリズこそあっても、身体を一から線で作っているアニメーションこそ身体の芸術といえないのかと考えました。勉強不足なので勉強します。
4、漫画映画論
今村太平
古くに書かれているので多少読みにくさはある。アニメーションのはじまりから発展を細かに書いてくれている。幻灯の発展から廃れるまでも書いてくれているので、海外のアートアニメーションや人形、影絵に興味のある人は前半部分だけでも読んでみてよいと思う。 当たり前かも知れないが、本書でも「ミッキーのビョンビョン踊りは統合されているのはリズムだけであって、それ以外は破壊されているように思う。しかし、他にも統合はあって、それは機械による統合である(要約)」とあるように、そのトーキー技術に重きを置いている。また音楽や線、色や光など細かに分割した視点で当時のアニメーション(主にディズニー映画)を研究してくれている。ただ、二章の「現代音楽」は自分が浅学故読むのに苦労した。
5、ディズニーと動物 王国の魔法をとく
清水知子
批評用語や思想を多く知らない為カタカナに苦労することがあった。
初期ウォルト•ディズニーについての歴史的な流れをかいてくれている。初期のディズニー作品にプロパガンダ的なものがあったことは重々承知だったが、思い返せばあまり深く考えても、読んでもいなかった。本書は第6章「ネズミは踊り、ドイツは笑うー戦争とプロパガンダ」にある通りディズニーアニメーションとプロパガンダとの関わりを書いてくれている。また、タイトルにもようにディズニーアニメーションにおける「動物」についても深く考察されている。自分は今までは「ディズニー」に動物や人間が仲良く共に包み込まれ社会生活が成り立っている世界とほんわかした何とも間抜けな印象を抱いていた。しかし、ディズニーが初期の段階では「疎外をめぐる問い」と関係していたことそして人間の腹心を託され、人間の都合よく利用される動物という自分にとってディズニーを見る目が変わるに十分な知識を得ることができた。
6、メダリスト (アニメ)
つるまいかだ
【あらすじ】フィギュアスケートに憧れ一度夢破れた青年、明浦路司とフィギュアスケートを夢見る少女、結束いのりがコーチと生徒という関係を結び、オリンピック金メダルを狙うスポーツ漫画
【感想】アニメは最終回を迎えたが⅔話は泣いた。全体的にストーリーも言葉遣いもとても良い。チラッと9巻の絵を見たが画力も化け物じみていると思う。
アニメ1話の瞬間風速がえぐい。結束いのりがフィギュアスケートをやりたいと周囲に声を上げるシーンがあるが、涙が止まらなかった。何かをやりたくてできなかった人、今上手にできていない人は見た方がいい。感動とやる気で眠れなくなります。また、アニメーションもスケートシーンがモーションキャプチャで制作されているらしく、しかも違和感がない。(顔だけ手描き?) 技術面でも見る価値は十二分にあると思う。
7、機動戦士Gundam GQuuuuuuX
【あらすじ】宇宙に浮かぶスペース•コロニーで平穏に暮らしていた女子高生アマテ•ユズリハは、少女ニャアンと出会ったことで、非合法なモビルスーツ決闘競技、クランバトルに巻き込まれる。
【感想】 自分はガンダムを最初期のものの第一話しか見ていなかった。が、完全に引き込まれた。ガンダムを見に行ったらガンダムが始まった…との意見がネットで散見された。同意見である。前半と後半の温度違いすぎて風邪引くかと思った。特に前半はガンダムファンならもっと楽しめたのだろうと少し悔しかった。昔のSEやBGMが用いられていて音響さんの努力が感じられた。後半は音楽も画のタッチも現代的になっていて肌に馴染む感がある。雰囲気もとても好みで、これからテレビ版が始まるので楽しみである。
8、機動戦士ガンダム 水星の魔女
【あらすじ】辺境の地、水星から来た少女スレッタ•マーキュリーが自身のモビルスーツ「エアリアル」を巡り学園から起業、闘争と様々な問題に巻き込まれていく
【感想】ジークアクスでガンダムを知り、見やすいと思い視聴。戦闘シーンの迫力がすごい。特に最初のグエル戦でのガンビット展開のかっこよさは異常で繰り返し視聴した。ストーリーも学園ものから起業、兵器→医療技術。広がる格差や差別など現代の社会への一種の批判、問題提示のように思える。キャラクターデザインの話だが、ガンダムキャリバーンの武器が魔女の箒のようにデザインされているのは時筆すべき点だと感じた。
9、ヲタクに恋は難しい (漫画 1〜4)
ふじた
【あらすじ】隠れ腐女子の百瀬成海と重度のゲームヲタクの男性二藤宏嵩との不器用な恋愛模様を会社のヲタク仲間を巻き込んで描かれるラブコメディ
【感想】もともと元気がない時はヲタ恋のアニメを見るくらい好きだったが漫画版が未履修だったので手に取った。ヲタクなら共感できることも多く、特に平成のヲタク文化が好きな人はアニメ版でも見るべき。アニメ版よりも顔立ちが少女漫画風というか整っている印象を持った。アニメではなく単行本の漫画を読むメリットとして、話数が多いというのは一旦置いておいて、章毎にあるおまけページだったり作者のお遊びで描いたものが見れるというのがあるよねとどこかで共有したい。
10、ノア先輩は友達 (漫画1〜4)
あきやまえんま
【あらすじ】「平熱さとり系」な男性、大塚理人と「限界バリキャリ」な女性、早乙女望愛がひょんなことから友達に。早乙女望愛の「バリキャリ」は表の顔であり、その距離の近さに大塚理人が振り回されるラブコメディ。
【感想】一巻の望愛先輩はまだ良かった。距離感の近さとかメンヘラ(?)を迷惑がられないように気にするそぶりがあったから。巻が進むにつれだんだんと異常さが常軌を逸しはじめる。最初はちょっとぶっ飛んだラブコメとして読んでいたが、そろそろ脳がギャグとして認識し始めている。つっこみたいのは理人の理性がおかしい。多分感情の一部を無くしている。「平熱さとり系」とかはじめて聞いたが、多分そんな言葉で表してはいけない。
11、正反対の君と僕
阿賀沢紅茶
【あらすじ】いつも元気いっぱいだけど周りの目を気にしてしまう女子、鈴木と物静かだけど自分の意見をしっかり伝える男子、谷。正反対な二人がゆっくりと理解を深めていくラブコメディ。
【感想】先輩が発表していて少し気になったので手に取った。勿論二人の関係性やその他の人物の関係描写も良い。ただ、作者の考え方がすごい。ハッとさせられることが多い。特に「なんかモヤモヤしてるなら、なんかモヤモヤしてるって教えてよ」という台詞は感動した。自分たちは何か気に掛かっている時、どうしてそうなっているのか自分で勝手にこじつけようとしたり、相手に無理矢理答えを求めようとすることが多いと思う。「なんで怒ってるの?」とかそのモヤモヤをすぐに晴らそうと焦ってしまう。モヤモヤというまだ言葉にもならない感情を言葉にならないまま相手に伝えることだって、悪いことではないのだと反省とあたたかさを貰った。
12、アマガミSS (アニメ)
【あらすじ】ps2用恋愛シミュレーションゲームソフトのアニメ化。4話毎にヒロインが変わり別世界線となっている。恋愛に苦い思い出のある高校2年生がクリスマスへの苦手意識を克服すべく恋に奮闘する青春恋愛劇。
【感想】友達に無理矢理見せられたが、案外良かった。もともと恋愛シュミレーションというだけあってヒロインの属性が幅広い。平成ギャルゲのあの学園の雰囲気が好きな人は見るべきだと思う。表と裏があるキャラとして絢辻さんがいるが、手帳や主人公、その表裏を支えるものの描写が丁寧になされていると感じた。考察は、ゲームをしてからじっくり書きたいと思った。
13、百瀬アキラの初恋破綻中
晴川シンタ
【あらすじ】ど田舎の少年、久我山はじめの元に帰ってきた、かつて憧れの同級生百瀬アキラ。実は彼女は大好きなはじめと結ばれる為周到な計画をたてていた。しかし超不器用、はじめは超鈍感。ふたりがすれ違う両片思いラブコメディ
【感想】とにかく画力が高い。百瀬アキラの髪の表現とかとても手が凝っている。凛としていてどこか様子のおかしい白髪キャラが見たい人はぜひ読んでほしい。終始シュールな笑いで物語が進んでいく。終盤、体育祭での主人公の踏ん張りや、その勢いのままはじめが百瀬さんへの恋心を自覚するシーンなんかは盛り上がりからブワッと爽やかになる見開きページで漫画の上手さを感じる。
14、幼馴染をえらべない
風呂川ツカサ
【あらすじ】大好きだったけど離れ離れになってしまった幼馴染。そんな彼女と10年ぶりに再会した、と思いきや彼女は分裂して2人になっていて。性格毎に分裂系のラブコメディ
【感想】デフォルメキャラが可愛い。作品特有の絵柄というのにデフォルメを上手に落とし込んでいると思う。状況は訳がわからないが主人公の相手を思うまっすぐさは胸を打つものがある。一巻の終盤に「不信」の性格のヒロインが出てくるがその台詞「好きとか信じるとか、…全部信じるのはむり わかんない けど信じたい…!」といって一歩を踏み出す。このシーンは個人的に刺さった。何かをする時勇気がなくて自分の実力も足りなくて何を信じて進めばいいのかわからない時がある。でも〜したいという不確かな意志自体強い力を持っているんだと再認識させられた。
15、ひとりと話すので精一杯
さんけ
【あらすじ】誰とでも気さくに話せる女子高生、瑠衣。彼女に想いを寄せる友人の咲月。2人の関係を描いた百合漫画
【感想】もともとSNSで読んでいた百合漫画。完全に趣味で日常系なので考察とかなく、百合てえて〜って感じ。メイン2人以外にもカップルが登場する。短編的な形式で進んでいくので百合好きは一読を。
16、スーパーの裏でヤニ吸うふたり(1〜5巻)
地主
【あらすじ】社畜街道を走る中年のサラリーマン佐々木は行きつけのスーパーの山田さんの接客が唯一の癒し。会議が長引いたある日スーパーへよると山田さんはおらず仕方なくタバコを吸おうとする。しかし今時店先で吸うこともできず焦っているとスーパーの裏へ田山さんという定員に声をかけられる。しかし実は田山は佐々木を揶揄うために即興で作った山田さんの偽名で…。一向に気づかない佐々木と揶揄い続ける山田はそれからスーパーの裏で煙草を吸う仲に。
【感想】まず、すぐ体の繋がりだとか可愛いヒロインだとかに嫌気がさしているラブコメ愛読者は読んだ方がいい。中年と20代というのもあって二人の関係は独特、どちらもそのラインを超えないよう不思議な緊張感がある。巻数が進み、二人の仲が近くなるにつれ、自分が恋心を抱えてしまわないかと苦悩を抱く佐々木、自分が山田だと明かしたら関係が崩れることや佐々木への恋心に自覚し始める山田の繊細な感情描写が光る。筆者は二次創作漫画なども描いているがそれ含めてとにかく感情描写が上手い。顔の俯き、目線だけで言葉にできない心の動きを描写する。それ故上記に書いた佐々木の苦悩も自分はきちんと言葉にできたとは思えない。読む人によって印象は変わるとすら思う。キャラクターがただのラブコメの為の記号ではなく、命がある。少しくたびれたサラリーマンやレトロな雰囲気が好きな人は絶対読むべき。全人類読むべき。
17、愛したぶんだけ愛してほしいっ!
まにお
【あらすじ】彼女を特定で作らず遊ぶ一般的にクズと言われている男性の女性版と一般的にクズ男に沼って貢いでしまう女性の百合漫画。
【感想】個人的にこのような関係にはアンチなのですが怖いもの見たさに買ってしまった…怖かった。描写として上手だなと思ったのが7章の見開きページの一枚絵。一件クズ男(女)が首輪(チョーカー)をつけられ一緒に座っている女性がそのリードを握っているように見えるが(リードを握っている手でクズ男(女)の手も同時に握っている)、よく見ると女性の手の指にリードは掛かっておらず、クズ男(女)の指にかかっている。女性側から見た見かけ上の主導権と実際の主導権が違うことを暗に示している。
18、地面師たち
【あらすじ】土地の所有者になりすまして売却をもちかけ、多額の代金を騙し取る不動産をめぐる詐欺を行う「地面師」の犯罪を描く
【感想】話題になっていたので見てみた。俳優の演技が凄かった。特に詐欺を実行しているシーンの緊張感は手に汗握るものがあった。悪いことをしている側で、しかもその行為自体に大義があるわけでもないのに「ばれるな…!」と思ってしまっていることに気づき主観の力の大きさを思い知らされた。テンポも良く一気見していて面白いと感じるものだった。ただハリソン中山の思想、人が死ぬ瞬間を観察し己の欲求を満たしているが、地面師はそれに適してるのだろうかと疑問が拭えなかった。
19、小市民シリーズ (アニメ)
春季限定いちごタルト事件(小説) 夏季限定トロピカルパフェ事件
【あらすじ】中学時代も、問題を推理したがる性格で苦い経験をした小鳩常悟郎は同級生の小山内ゆきと志を共に清く慎ましい「小市民」を目指す。しかし次々と事件に追われ、小市民を目指したいはずの二人は巻き込まれてゆく。
【感想】氷菓と同じ作者(原作)なだけあって雰囲気が好きなファンは一定数いると思う。ストーリーも驚くような仕掛けがあって落ち着いた作風とは思えない衝撃を受けた。 特にアートワークが良かったと思う。例えば背景街で空も晴れていて爽やかな画面がセリフと共に小山内ゆきのアップになった瞬間背景が真っ赤に染まる。そして次のカットでは主人公たちは橋の上で話している。先程までの赤は夕日で、主人公たちが話しながら歩き、時間が経ったのだということがわかる。台詞と時間軸と背景の使い方が今までに見たことがない。それは果たしてキャラクターが生きている世界としての「背景」なのかというのは一考の余地があると思う。しかしネガティブなシーンでは曇りや雨などといった使い古された情景描写、背景は個人的に飽き飽きしていたので見ていて新鮮だった。
20、BLUE GIANT (アニメ)
【あらすじ】仙台の高校生、宮本大は世界一のジャズプレイヤーを目指し高校を卒業後上京。ライブハウスであったピアニスト辺雪祈と高校の同級生、玉田と3人でバンドを組むことになる。
【感想】ストーリーは大体が王道。けれどそれがいいと思わせる迫力がある。特に主人公のサックスの音とそのアニメーションはものすごいインパクトで迫ってくる。ストーリーについても考察の余地があって、ラストの演奏で辺雪に大はサックスを合わせることができるのだが、これはただ大の成長ではなく辺雪が弱者になったこと(ストーリー序盤「弱者には合わせられるんだな」)や、辺雪が折ってしまう腕は序盤片手でピアノを弾いていたこととつながったりとストーリーに一貫性がある。
演奏シーン。ハイライトのこんな使い方は見たことがない。演奏アニメ(ぼざろや坂道のアポロンなど)が好きな人は一度見るべきである。到底商業アニメーションではやらないような作画だと感じる。抽象的なカット、スポットライトから楽器へ反射する光が「感動」や「迫力」のメタファーとして人々の目やメガネ、サックスのハイライトとして躍動する様は圧巻だった。
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