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二年 吉川 RES
夏休み課題21~30

21.『山口くんはワルくない』作者:斉木優
 高校で青春を送りたいと期待する篠原皐は、電車で痴漢に遭っていたところをクラスメイトの山口に助けられる。強面な彼は学校でヤクザの子だと噂されていたが、彼の優しい内面を知っている皐は次第に山口に惹かれていく。
 この作品は、見た目が怖いものの内面の優しい山口と順調な高校生活を送りたい皐との青春ラブストーリーである。ふたりはお互いに惹かれ合っていくのだが、山口の噂が晴れないことには学校での居場所がなくなってしまう。皐は山口の印象を変えるため奔走する。その他登場人物は主人公に協力的で、あまりドロドロとした展開にならないため安心して読むことができ、心が温まる作品となっている。

22.『ブス界へようこそ』作者:河野大樹
 生と死の狭間ブス界は死んだブスに美人になるためのチャンスが与えられる世界だった。ブス界で目を覚ました主人公は、美を求める競争社会で繰り広げられる熾烈な戦いを目の当たりにする。
 これまで美を他人から奪うという暴力、負の力で成り立っていたブス界だが、主人公は容姿や自分自身へのコンプレックスを認めて受け入れ、自信を持つという正の力で美しくなることを選ぶ。容姿の美しさを競う作品だが、その内面の美しさ、とりわけ堂々とした生き方に重点が置かれているのではないかと思う。

23.『大好きな妻だった』作者:武田登竜門
 何をしても仲睦まじい夫婦、その妻にガンが見つかり、余命半年となった。その半年後、妻は生きていた。夫婦の愛が切ない読切作品。
 短い読切作品にもかかわらず濃い内容で、態度の急変した妻に毎日会いに行く夫と、死を待つ妻の決意が描かれる。雲行きの怪しい描写に不安になったが、それを覆すほど深い愛を感じさせられ、同時に悲しさを引き出されるような、感情を揺さぶられる作品となっている。

24.『土地神と、村で一番若い嫁』作者:あらをか青い
 嫁をめとることにした土地神が村に出した要望は、「この村で一番若い女人を」というもの。そこで土地神の元へ来たのは35歳の未亡人かすみだった。土地神は家事のできるかすみを気に入り、夫婦として生活することになる。ピュアな二人の恋愛は進展するのだろうか。
 この作品は土地神と人間の恋愛物語だが、かすみには秘められた力があり、その力を求めるほかの神に狙われるというファンタジーでサスペンス的な展開がある。ほのぼのした日常系に見えるが、土地神がかすみのことを深く知るための過程にそういった物語性があるため完結しており、納得できる落としどころがあるため読み応えのある作品だ。

25.『おとりよせ王子 飯田好美』作者:高瀬志帆
 水曜日はノー残業デー、システムエンジニアの飯田はどうしても残業を阻止しなければいけない理由があった。急いで帰宅する飯田の目的は水曜日の夜間配達で届く逸品「お取り寄せ」食品たちである。
この作品は、現実にある「お取り寄せ」料理を紹介する料理マンガで、飯田が「お取り寄せ」を一週間の楽しみにしており、至福の表情で食べる様子に食欲をそそられる。また、飯田はTwitterをしており、本人は無自覚だがその発信力、影響力により世間が動いている描写があり、題材が通販であることと併せ、現代風の作品となっている。

26.『アライブ 最終進化的少年』(9話まで)原作:阿島正 作画:あだちとか
 自殺ウイルスが原因かとささやかれる世界的な集団自殺騒動があった頃、主人公叶太輔の親友広瀬雄一は学校で起こった惨殺事件の犯人かと疑われ、太輔の幼馴染落合恵を攫い行方不明となる。太輔の周囲には特殊能力を持った人間が現れ始め、残虐な人殺しをする彼らは太輔のことを仲間だと呼んだ。
 この作品の冒頭にある、宇宙からの飛来物が集団自殺騒動の原因かと考えられるがその全容は未だ謎に包まれている。特殊能力者の「仲間」は殺さずに人を殺すことの目的や恵を攫った広瀬の目的が判明しておらず、読者と同じように情報が与えられていない太輔が真相を突き止めることが出来るのか、注目するべき点である。

27.『怪病医ラムネ』作者:阿保トロ
 怪病の専門医ラムネのもとには奇妙な病にかかった患者が訪れる。怪病は人の心と反応し体のどこかに異変をきたすというもので、自身に後ろめたいことがあり、それを打ち明けられないとそれを完治させることが出来ない。怪病を通して映し出される、人間味を題材とした作品。
 この作品は一話ごとに異なる患者の怪病を解決していく短編集の形式になっている。怪病という現実離れした病だが、その要因となるのは人間の良くない行いであり、リアリティを持って描かれている。人間の持つおどろおどろしさを描いているのがこの作品の魅力である。

28.『親愛なる僕へ殺意をこめて』(27話まで)原画:井龍一 漫画:伊藤翔太
 大学生浦島エイジの真の父親は殺人鬼LLとして悪名高い八野衣真である。LLが事件を起こした15年前と同じような変死体が見つかり、エイジは警察から事情聴取を受ける。ここ数日、記憶がない間にエイジは何をしていたのだろうか。
 エイジは数日間記憶がなくなり、周囲の話ともつじつまが合わないという違和感を抱えており、解離性同一症の疑いがあった。エイジは仮にB一と名付けたその人格に干渉できないため、B一が何をしているかは全くわからない。殺人鬼の息子という因子もあり、B一はその残虐性を宿した人物なのだろうか。作中には様々な解釈ができるような伏線が多くあり、B一の人格を予測するのは困難である。B一は善なのか悪なのか、エイジは解離性同一症を治すことが出来るのか、今後の展開に注目したい。

29.『推しの子』作者:赤坂アカ、横槍メンゴ
 アイドルオタクの産婦人医師のもとに推しアイドルのアイが訪れ、双子の子を妊娠していることが判明する。アイの出産予定日、彼はアイのストーカーと思しき人物に殺害された。しかし、次に目覚めるとアイの息子アクアマリンに転生していた。
 この作品は、アイドル人生半ばでストーカーに殺害されたアイの仇を打つべく、情報を流したと思われる実の父親を捜すアクアの執念の物語である。アクアの目的は父親を殺すことであり、その人物にたどり着くためにはどんな手段も厭わずに利用する冷ややかな性格をしている。そんな兄の傍ら、妹のルビーはトップアイドルを目指すべく、順調に人生を送っている。役者として活動し、人望も出てきたアクアに支えとなるような居場所は現れるのか、アクアの企みはどう着地するのか興味深い。

30.『怪獣8号』(44話まで)作者:松本直也
 怪獣が襲ってくるという災害が起こる世界、かつて防衛隊を目指していた怪獣専門清掃員の日比野カフカは、清掃会社にバイトで入って来た市川レノに触発され、再び防衛隊を目指すことを決意する。しかし、口に飛び込んできた怪獣により、カフカは怪獣8号と呼ばれる怪獣となってしまう。人間の姿には成れるようだが、果たしてカフカは防衛隊へ入れるのだろうか。
 主人公の名前について、フランツ・カフカの『変身』から、怪獣に変身するということでカフカと名付けられていると思う。作品は、防衛隊が襲い掛かる怪獣から街を守るといった構成で、ヒーローものに分類されるだろう。カフカが怪獣8号だということが判明し拘束され、その後防衛隊として行動できるようになるのだが、戦闘中肝心な場面で変身できなくなってしまった。防衛隊はピンチを切り抜けることが出来るのか、今後彼の有用性は認められるのかが今後の注目点だ。防衛隊の仲間同士が団結するまっすぐな情熱が魅力の作品となっている。
2021/09/21(火) 02:14 No.1822 EDIT DEL
二年 吉川 RES
夏休み課題11~20

11.『古見さんは、コミュ症です。』作者:オダトモヒト
 清楚な美少女古見さんはコミュニケーションが苦手で、話したいのに緊張して声が出ないほどの重度のコミュ症だった。そんな彼女の目標は友達を100人作ることである。クラスメイトで友達になった只野くんは古見さんの目標を達成させるべく協力する。個性的なキャラクター達の学園生活を描いたほのぼの系コメディマンガ。
 古見さんはコミュニケーションが苦手だが、人と関わりたくないわけではなく、話したいのに話せないという葛藤を抱えている。素直で真面目な性格であるため、友達を作る目標を応援したいと思わせるキャラクターだ。コメディマンガであるものの、古見さんのように、人が抱えている心の悩みを吐露させるシーンがいくつかあり、読者の共感や感動を引き出す作品となっている。

12.『君は冥土様。』作者:しょたん
 高校生の人好の家に元殺し屋のメイドさんがやってきた。彼女はこの家で雇ってほしいそうだが、元殺し屋は怖いということで一度は引き返してもらう人好だったが、車に轢かれかけたところをメイドさんに助けられたことで、メイドさんを人好家に引き入れることとなった。
 メイドさんは殺し屋として生きてきたため、幼少期にトラウマを抱えており、普通の女の子になる機会が無かった。人好の助言で普通の女の子になりたいということに気づき、普通を目指すことになる。冷静沈着に見えるメイドさんだが、実は天然で面白い一面も持っている。笑顔の少ない彼女が普通の女の子に変化していく様子に注目したい。

13.『ちひろさん』作者:安田弘之
 何事にも縛られない、明るく自由な元風俗嬢のちひろは、現在海辺の小さなお弁当屋で働いている。不思議な魅力を持った彼女の周りには自然と人が集まり、その中には悩みを抱える人もいる。ちひろは彼らの悩みに気づき、おおらかな態度で解決に促す。常識にとらわれない、型にはまらない、そんな彼女の生き方が人の悩みを小さくしてくれる。人間関係に悩む人の心のわだかまりを解いてくれる作品だと思う。

14.『その淑女は偶像となる』作者:松本陽平
 エリザベス女学院にてトップクラスの淑女だと称えられる姫宮桜子だが、そのおしとやかな振る舞いは作り物であり、アイドルを否定する彼女こそ、過去にトップアイドルを志した張本人だった。桜子はアイドル時代の彼女を知る若菜あるみと出会い、再びトップアイドルを目指すことになる。
 主人公の姫宮は過去に挫折を経験しており、アイドルの道の厳しさを誰よりもよく知っている。それでもなおトップアイドルを目指すため、華々しいステージの裏で血のにじむ努力をする彼女たちに心を打たれる作品となっている。姫宮は過去の闇を乗り越える事が出来るのだろうか。彼女らの努力が報われてほしいと思う。

15.『Shrink~精神科医ヨワイ~』作者:七海仁/月子
 日本には様々な精神病を抱える人々がいる。この作品は、小さなクリニックで精神科医をする弱井が実際にある精神病を紹介し、治療する様子を描く医療漫画である。
 日本で精神病と言うと良くないイメージがついたり、精神病は本人の努力不足であり、自分でどうにかできる問題だと考える人は少なくないだろう。この作品では、精神病の原因や精神科へかかることの重要性が描かれ、同時にいかに精神病が世間からの理解を得られていないかが描かれる。アメリカなどの他国での精神病のイメージを挙げ、日本のものと比較することで精神病についての偏見に気づかされるようになっている。世間体を気にする人民性が関係していないとは断定できないが、気軽に精神科へかかることが出来る社会にしないと自殺者数が減らせないと考える。

16.『握る男』作者:近藤ぶし
 高校生の阿部が恋するクラスのマドンナサクラのために寿司を握る修行をする物語、のはずだが、阿部を受け入れてくれた寿司屋の大将は寿司を握るとラーメンが出来上がる人物だった。
 ラーメンを握るという言葉が出てくるようなギャグ一筋の読切作品。しかし、最後の一ページのみでオチがつけられ、その題材の着眼点に感心した。テンポのいいギャグの展開の後、そのオチによって現実の常識に疑問が示され虚をつかれるだろう。

17.『ラジエーションハウス』作者:横幕智裕/モリタイシ
 幼馴染甘春杏との約束で放射線技師となった五十嵐唯織は杏の勤める病院に採用されるが、彼女は五十嵐のことに気づいていなかった。さらに、コミュニケーションが苦手な五十嵐の言動は杏に気味悪がられてしまう。CTやMRIの画像から患者の病気を診断する医療漫画となっている。
 この作品によって、普段なじみのないCTやMRIなどの放射線を使った診察の事例、その仕組みを知ることが出来る。特に乳がんの疑いがある事例の話で、検診で要請が出ても病院の外来予約が取りにくいうえ、はっきりと診断がつくまでに何か月もかかることが少なくないといった「検診難民」のことを知った。病気の早期発見が重要視される中、検診が陽性でも予約待ちで待たされる患者の不安はとても大きいものだと思われる。そのような人が現実にもいることを心にとどめておきたい。

18.『モブサイコ100』作者:ONE
自己表現が苦手で目立たない少年影山茂夫(かげやましげお)、通称「モブ」には科学では証明できない力、超能力があった。自称霊能力者の霊幻新隆(れいげんあらたか)の下、除霊の依頼を解決する補佐をしている。そんな彼が多感な中学校生活と除霊のアルバイト生活の波にもまれ成長していくストーリー。
 この作品でサブ主人公ともいえる霊幻新隆は霊能力者を自称しているが、実はそのような力はない一般人であり、類稀な処世術で、除霊を中心とした何でも屋のような仕事をしている。彼には当然除霊ができないため、超能力者であるモブの協力が不可欠であったため、モブを騙すような形で(低賃金で)雇用している。モブは霊幻を「師匠」として慕っており、騙していることがバレないか肝を冷やす霊幻との、コメディ色が強く奇妙な関係が見どころの一つだ。
主人公モブ(影山茂夫)には作品の世界の中でも一般的ではない超能力が備わっており、その規模は計り知れないほど大きい。超能力は感情に起因するため、大きく感情が揺さぶられたときなどに暴走してしまう。モブの過去、幼少期には超能力の暴走を起こし人に怪我をさせており、彼はそのことがトラウマとなった。このことが理由で、彼は感情を抑圧することによって超能力の暴走を防ぐ必要があったため、結果として反応が薄いような、目立たない性格となってしまったと考えられる。この作品は、そういった背景を抱えるモブや他のキャラクターが自己について悩む姿が度々描かれることから、超能力という大きな主題の中に、アイデンティティについての葛藤がテーマの一つとなっていると考えられる。以上のような笑いの面が豊かな作風に、人の内面の悩みが垣間見える点はこの作品の魅力と言える。
参考
 アニメ『モブサイコ100』 公式サイト http://mobpsycho100.com/1st/
 アニメ『モブサイコ100Ⅱ』公式サイト http://mobpsycho100.com/
舞台モブサイコ100公式サイト https://www.marv.jp/special/mob_stage/

19.『Re:ゼロから始める異世界生活』(第六章83、86)作者:鼠色猫/長月達平
 異世界転生したナツキ・スバルは死ぬと時間を遡り、特定の地点からやり直せる「死に戻り」の能力を持っていた。王選に参加するハーフエルフ、エミリアを補助するロズワール邸の人物たちとともにエミリアを王にすべく奔走するファンタジー作品。
 六章では、五章までに存在を奪われたユリウス、レムやオドに捕らわれたアナスタシアを開放すべく、プレアデス監視塔へ向かうこととなる。この作品は複数の登場人物の場面が同時に進行しており、話ごとに視点が変わる。六章83と86はラムとレムの故郷の回想から始まり、主にラムと魔女教大罪司教のライ・バテンカイトスが戦闘するシーンとなっている。一章で触れられていたラムの角なしについてここで詳細が明らかになり、ライとの戦闘において、ある方法でラムの角がある状態を再現することが出来た。角がないために常に気だるげだったラムの能力とセンスの真骨頂が見られるバトルシーンは圧巻である。

20.『束の間の一花』作者:タダノなつ
 世田原一花は医師から余命宣告を受けるも、その余命を過ぎても生きていた。大学生になって憧れの先生を見つけ、一年間は何事もなく過ごしていたが、一花が二年生に上がったころ、その憧れの先生萬木が大学を辞めたと知る。しかしそれから三か月後、駅で偶然萬木先生を見つけた。聞くところによると、彼は病気で大学を辞めたらしい。
 余命を過ぎ、萬木に思いを寄せ、それを糧に生きる一花と、余命宣告され、弱っていく体を抱えながら自暴自棄になってしまった萬木との儚い恋愛マンガとなっている。「くたばり損ない」であり、将来の約束されていない二人が、それでも前向きになろうとする姿に、過去に置いてきた青春をなぞるかのような美しい哀愁が感じられる作品である。
2021/09/21(火) 02:13 No.1821 EDIT DEL
二年 吉川 RES
夏休み課題1~10

1.『薬屋のひとりごと』原作者:日向夏 作画:ねこクラゲ
 この作品は、人攫いに誘拐され、後宮で侍女として働くことになった猫猫(マオマオ)が、薬の知識を武器に後宮で起こる事件の謎を解明すべく奔走する物語である。舞台は中国宮廷をモチーフとしており、その身分制度の仕組みや、派閥争いや権力の闇、猫猫の出身である花街の文化を描いている。事件の謎を解くミステリーと恋愛要素が織り交ざった作品。
 小説投稿サイト、小説家になろうからマンガ化した作品である。注目すべき点は猫猫の薬の知識で、おしろいには毒がある、食べ物の食べ合わせによって毒になるなど、この世界では一般的ではない知識を用いて事件の謎を解く。話の内容はダークな部分が多いが、やや自尊心の低い様子の猫猫が仲間陣営から信頼されている様子が描かれることでほっこりする場面もあり、この作品の魅力となっている。

2.『うちの息子はたぶんゲイ』著者:おくら
 何の変哲もない仲良しの家庭にて、息子がたぶんゲイだと感じる母親のエッセイ風マンガ。帰宅後や食事時など、母親の視点で描かれるため家庭でのシーンが多い。少し天然な息子が、ゲイを隠そうとして慌てている様子をおおらかに見守る様子が描かれている。
 LGBTを扱った作品だが、母親は特別扱いすることもなく、ごく普通に接しているため、セクシャルマイノリティが普通のことだと強調される。家族の中で父親は息子の様子に気が付いておらず、悪気がない様子で、ドラマでの男同士のキスシーンが気持ち悪いといった発言をする。そこで母親が助言をし、先入観の見直しを促すことでセクシャルマイノリティに理解のない人がいることに気づかされる。

3.『氷属性男子とクールな同僚女子』著者:殿ヶ谷美由紀
 この作品は、心が熱くなると言葉通り周囲を凍てつかせる雪女の末裔の氷室くんとユニークで優しい同僚の冬月さんの日常系ラブコメディとなっている。
 氷室くんは真剣な顔をして周囲を凍らせたり、吹雪を起こしたりしているため、クールな印象があるが、内心冬月さんに好意を寄せる様子は激しい。冬月さんやその他の同僚に本心が伝わっていないために勘違いが起こるなど、気温の温度差が描かれる中、雰囲気的にも微妙に温度差が感じられる。独特な空気感が笑いを誘う作品。

4.『六畳一間の魔女ライフ』著者:秋タカ
 魔女が職業として成り立っている世界、地味だが真面目で研究好きなマッジと、細かいことは苦手だが行動力のあるリリカの二人の新米魔女が協力し合い、貧乏から抜け出していい暮らしを求めて働くコメディ作品である。
 二人は新米魔女でランクも低いため、派手な魔法を使う機会が無く、仕事内容は雑務のようなものばかりである。二人で会話をしながら仕事をし、ボケ・ツッコミがテンポよく繰り出される。そのため、魔力といったファンタジー要素がありつつもコメディの要素が強くなっている。魔女のランクが上がり登場人物も増えるため、派手な魔法を使うのか、新しい登場人物との関係性はどうなっていくのか、今後の展開に注目したい。

5.『俺だけレベルアップな件』漫画:DUBU(REDICE STUDIO)原作:Chugong
 ゲリラ的に出現する「ゲート」は、現世界とモンスターが存在する異次元を結ぶ門である。水篠旬はゲート出現時に異次元から資源を得るためにモンスター討伐へ向かうハンターだが、その実力は底辺のEランクだった。しかし、危険な二重ダンジョンから生還した彼は、ゲームのようなウィンドウが見えるようになり、自身をレベルアップさせられる能力を手に入れる。
 ゲームのようにモンスターを倒してレベル上げをする水篠旬はレベルが上がっていくにつれて冷静で隙のない性格へ変貌していく。ファンタジー要素の大きい作品だが、RPGゲームをプレイしているような雰囲気が新鮮だと思う。レベルを上げ、強すぎる彼が簡単にモンスターを倒すのを見ているとゲームらしさを感じた。

6.『クジラの子らは砂上に歌う』作者:梅田阿比
 一面が砂の海の世界を漂う船「泥クジラ」では、人口の約九割を占める情念動(サイミア)という特殊能力を持つが短命である印、その他サイミアを持たないが長寿である無印と呼ばれる人々が暮らしていた。ある日砂の海の向こうに泥クジラに似た島のようなものを発見し、主人公チャクロたちは物資調達のため偵察に向かうこととなる。
 操縦不能な漂泊する船の上に築かれた泥でできた建物や一面の砂の海、感情で発動させることができる念動力のような能力といった世界観から、どことなく感じさせる孤独感が魅力的な作品。泥クジラの中の住民たちは外の世界を知らないが、外の世界の王国に住民全員の命が狙われていることが判明し、運命から脱しようと抗うこととなる。なぜ一面が砂の海なのか、王国の人々の感情の在り方がどうなっているのか、まだ明かされていないことが多々あるためどう展開していくのか興味深い。

7.『極主夫道』作者:おおのこうすけ
 この作品は、元極道で強面の龍が専業主夫としての仕事をやりこなすコメディマンガである。見た目が怖い龍は、その言葉遣いも相まって初対面の人を怖がらせているが、主夫としてのスキルが異様なまでに高い。スーパーや商店街への買い物、ご近所付き合いや繊細なお菓子作りや生け花をする龍や周囲の反応、ほとんどツッコミ役がいない点がこの作品の魅力だ。

8.『僕とロボコ』作者:宮崎周平
 美少女メイドロボ「オーダーメイド」が一家に一台の規模で普及しているが、小学生の主人公平凡人(たいらボンド)の元にやってきたのはロボコと名乗る毛色の異なるオーダーメイドだった。
 この作品はロボコの言動を中心としたドタバタコメディで、ボンドがキレのいいツッコミを発揮する。登場人物はドラえもんのキャラクターたちのような風貌をしているが性格はそれらとは異なり、そのパロディ元との差異も読者の笑いを誘うようになっている。

9.『東京喰種』作者:石田スイ
 東京では人間の肉を食料とする怪物「喰種」によるものと思われる事件が度々起こっていた。主人公金木研は普通の大学生だったが、とある経緯で事故に遭い、喰種の女性リゼの臓器を移植された。半喰種となってしまったカネキは喰種の社会で絶望に絶望を塗り重ねたような経験をすることになる。
 人間側の対喰種組織CCGは全ての喰種が殺害対象だが、人間でも喰種でもない半喰種のカネキの登場によって、人間側が喰種を悪と決めつけること、喰種側が人間を悪と決めつけることへの疑問が描かれている。

10.『SPY×FAMILY』作者:遠藤達哉
 スパイ〈黄昏〉は任務のため家族を作らなければいけなくなった。一流スパイとして偽装家族を作ることに成功したが図らずもスパイの父、超能力者の娘、殺し屋の母という家族構成になってしまった。それぞれが隠し事を抱える中、任務を遂行することができるのか、家族を存続させるべく暗躍する偽装家族の物語。
 父、母がそれぞれ仕事を隠さなければいけないため、セリフには出さずに考えを巡らせる場面が多々ある。そこで6歳の超能力者の娘が思考を読み、子どもなりに尽力している様子に笑いの要素があり面白い。父はスパイ、母は殺し屋であるため、サスペンス、アクション要素も取り入れられ、物語の大筋が一貫しているため読みごたえがある作品だ。
2021/09/21(火) 02:12 No.1820 EDIT DEL
二年 髙田(梨) RES
夏休み課題21~30

21『ダムキーパー』(短編アニメーション)
監督:ロバート・コンドウ、堤大介

 大気汚染から街を守るダムの管理を代々続けるブタの少年は、その役目に関わらず街の住人達から馬鹿にされ、いじめられている。孤独なブタの少年だったが、ある日キツネの少年が転校してきたことにより変化が訪れる。

 絵本を思わせる暖かいタッチで描かれる短編アニメーション映画。しかしその反面、街の住民がブタの少年をあざ笑うシーンは鮮明に描かれており、画風との差が印象に残る。
 年を取ったブタの少年によるナレーション以外のセリフがない本作で、ブタとキツネの少年の友情を表現するのは彼らが描く絵である。ブタの少年を元気づけるきっかけとなったキツネの少年の絵は、物語後半に誤解による仲たがいを起こすきっかけにもなってしまう。セリフのない短編において、このようなアイテムの活用は効果的だと感じた。

22『火花』(小説)
作者:又吉直樹
発行所:文藝春秋

 売れない芸人・徳永は、奇想の天才である先輩芸人・神谷に出会う。神谷の弟子にしてほしいと頼む徳永に神谷は「俺の伝記を書け」と告げる。彼らの追い求める笑いとは何なのか、彼らの人生はどう変わっていくのか。

 自身も芸人である又吉直樹による「笑い」とは何かを追及する真摯さを感じる作品。淡々とした語り口調でありながら、「笑い」を突き詰めていこうとする徳永達の不器用さを最大限に描いている。本作は芸人のサクセスストーリーではなく、劇的な大舞台も描かれない。しかし、それを悲劇としていないところに、本作の人生観があるのではないかと考える。失敗しても、自分を付き通せなくても、それらは悲観することではなく、人生は続くものではないだろうか。この物語は徳永達の半生であり、今もなおどこかで人生を送っているように思わせる作品である。

23『Axis powers ヘタリア』(漫画)
作者:日丸屋秀和
発行所:幻冬舎コミックス

 イタリアを主人公に、ドイツや日本の枢軸国をはじめとした世界各国を擬人化したコメディ。陽気でへたれなイタリアや、真面目で頑固なドイツ、自由奔放で快活なアメリカ等の登場人物により織り成される、史実の出来事や各国のあるあるなどのエピソード。

 歴史上の出来事や時事ネタが題材になっているが、個性豊かなキャラクターのコメディとして描くことで、知識がなくとも読みやすい作品となっている。更に、本作をきっかけに実際の国に興味を持つ読者も多く、知識の幅を広げるきっかけにもなり得る漫画である。
 四コマのギャグ漫画が中心の本作だが、国の独立や、国とその国民の物語など、シリアスな短編漫画も複数あり、魅力の一つとなっている。

24『チャーリーとチョコレート工場』(映画)
原作:ロアルド・ダール
監督:ティム・バートン

 風変りな男ウィリー・ウォンカのチョコレート工場を見学することができる、世界で5人だけの権利を掴んだのは、貧乏で家族思いの少年チャーリーだった。
 5人の少年少女とその保護者達は、ウィリー・ウォンカの工場で次々と不思議な体験をしていく。

 本作は大きく前半、中盤、後半と3つに分けることができる。
 工場を見学する権利になる金色のチケット入りチョコレートをチャーリーが手に入れるまでの前半は、貧乏だがお互いを愛するチャーリーの家族について描写される。
 中盤はチョコレート工場に入る場面であり、現実離れした怪しく不思議な工場が魅力的だ。この工場の中でチャーリー以外の少年達は、人の話を聞かなかったり、我儘を通したりした結果、大変な目にあってしまう。また、ウィリー・ウォンカが自身の過去について回想するのもこの中盤である。
 後半は、工場見学を終えたチャーリーとその祖父、そしてウィリー・ウォンカのその後である。非常に厳しかった父親に反発していたウィリー・ウォンカは、大人になって久方ぶりに父親と再会し、わだかまりを解く。そして、チャーリーの家に、家族として暖かく迎え入れられる。
 本作は、チャーリーの不思議な体験の物語であると同時に、大人になりきれなかったウィリー・ウォンカが成長する物語でもあるのだ。

25『ロンリー・プラネット』(漫画)
作者:売野機子
発行所:講談社

 美しい見た目で期待されるが、中身を何も持っていないことに悩む常盤一郎は、占い師である姉のトキワ未来と勘違いされたことから、偽ってトキワ未来のふりをすることになる。居酒屋で出会った少女漫画家や初恋の相手など、一郎とその周囲の人々の人生の一部を切り取って描いた短編集。

 主人公一郎の抱える悩みや弱さを繊細に描いた作品。また、一郎以外の登場人物が、それぞれの視点で自分の人生を語る場面も度々あり、各々が主人公であるような印象も受ける。男性と結婚しているが密かに女性の担当編集に恋をする少女漫画家や、恋心が空回りして怖がられてしまうキャビンアテンダントなど、一郎と同じく悩みや寂しさを抱える登場人物達がそれぞれの人生と向き合い進んでいく過程が描かれる。
 孤独と寂しさを感じ続けていた一郎だったが、「周回遅れでもかまわない」「どんな形でもいい」と自分の人生を肯定して前に進む。上手くいかなくても良いのだと寄り添ってくれる優しさを感じる作品である。

26『PUI PUI モルカー』(アニメ)
監督:見里朝希
制作:シンエイ動画、ジャパングリーンハーツ

 モルモットが車になった世界を舞台とした短編アニメーション。モルカーと呼ばれる個性豊かなキャラクターたちに起こるざまざまなハプニングを、愛らしく、時に勇敢に解決していく。

 羊毛フェルトを用いたストップモーションアニメで、モルモットらしい動きを再現している。モルカー達の表情の変化は、フェルトを一部つぶす等して作られており、羊毛フェルトならではの多彩な表現がされている。人間や猫など、モルカー以外の動物は、引きの構図では人形を用いているが、アップになる場面では写真によるストップモーションに変わる。モルカーにのみ羊毛フェルトを使用することで、毛並みの質感が強調されている。
 また、モルカー達の鳴き声は本物のモルモットの鳴き声を当てており、ストーリーにはモルモットの生態が組み込まれていたりと、こだわりを感じられる作品である。

27『モンスターズ・インク』(映画)
監督:ピート・ドクター、ジョン・ラセター、アンドリュー・スタントン
制作:ピクサー・アニメーション・スタジオ

 人間の子供の部屋に入り、子供を脅かした際の悲鳴をエネルギーに変換する会社モンスターズ・インクに務めるサリーとマイクを主人公とした作品。モンスター達の世界では、人間の子供は危険であるとされていたが、ある時、サリーは人間の女の子・ブーがモンスターの世界に入ってきてしまったのを目撃する。

 サリーとマイクは、ブーが自分達の世界にやってきた当初は他のモンスター達と同じく、人間の子供であるブーを怖がっていた。しかし、サリーは次第にブーを恐れず、かわいがるようになっていく。マイクはサリーのように情を表に出す場面は少ないが、ブーが連れ去られた際に共に追いるシーンや、ブーの部屋とモンスターの世界を繋ぐ扉が壊され、二度と会うことが出来ないと悲しむサリーに、修復したドアをサプライズで見せるラストシーンで、ブーと友人であるサリーへの愛情を感じられる。
 思い込みで恐れていた人間の子供と心を通わせる二人の姿には、人間同士の偏見による断絶はすべきではないという思いが込められているのではないだろうか。

28『ねじまきカギュー』(漫画)
作者:中山敦支
発行所:集英社

 新米高校教師の葱沢鴨は、怪物的女子に好かれる女難体質の男性。ある日、不良の女子高生に迫られている所に鉤生十兵衛と名乗る拳法家が現れ、「先生を護る」と宣言する。
 十兵衛は、鴨の幼馴染の少女だったのである。十兵衛は「将来の夢はカモ先生のおよめさんになること」と鴨を慕うが、鴨に恋をする女子が次々と現れる。

 本作のテーマは「愛」だと考えられる。卑怯な手を使い鴨を奪おうとする相手にも「カモ先生を好きになってくれてありがとう」と告げるほど純粋に鴨を愛する十兵衛や、幼馴染で自分を護ろうとする十兵衛を大切に思いながらも「生徒は皆同じくらい大切で愛しい」と平等な愛を持つ鴨をはじめ、幼い頃から共に育った相手への愛や、親子の愛情など、それぞれの愛の物語が展開される。登場人物がそれぞれの愛をもって戦うため、読者は応援せずにはいられないだろう。

29『まさかジープで来るとは』(俳句集)
作者:せきしろ、又吉直樹
発行所:幻冬舎

 自由律俳句607句と散文15篇が収録された俳句集。日常のごく短い一場面を拾ったような俳句は、気付かずに素通りしてしまいそうな風景でありながら、その物語を想像してしまう。例えば「人が住んでるのを知った」という句。幾度となく前を通り、空き家だと思っていた家に入っていく住人を見たのか、電気がついているのが見えたのだろうか。長年の思い違いが判明した瞬間だったかもしれないが、心の中にしまっておく程度のことだろうし、今後もその家の前は通るだろう。ただ、人が住んでいることを知っているという小さな変化がある。そんな、人生の中のなんとなく記憶に残っているような瞬間が集められた俳句集である。

30『マギ』(漫画)
作者:大高忍
発行所:小学館

 砂漠に囲まれた国で、不思議な少年アラジンとアリババは出会う。数年前から世界に突如出現した、宝の山が眠る「迷宮」と呼ばれる場所を攻略するため二人は協力する。しかし、「迷宮攻略」を目指す者は彼らの他にも存在し、行く手を阻まれてしまい……。
 千夜一夜物語を元に織り成される魔導冒険ファンタジー。

 魔人が出てくる金属の笛を持つアラジンと、剣技の腕が長けたアリババが、襲い来る敵を倒しながら迷宮を進む「迷宮攻略」は、冒険ファンタジーとして心躍るものである。
 しかし本作の魅力は、そのような読者をワクワクさせる冒険と共に、人間のエゴイズムを描いている点だと考える。一つ目の迷宮では、アラジン達の他に、街の領主が奴隷を連れて攻略に向かっていた。ここでは、奴隷を人間として扱わない領主と、奴隷を解放しようとするアラジン達の対比が表現されている。
 その他にも、貧しい民衆から税をむしり取り豪遊する貴族達に反乱を企てる民衆達と出会ったり、一見誰もが幸せそうな国で差別と階級制度が隠れていることを目の当たりにしたりと、簡単には解決できない現実にも通じる部分のある問題を抱えた世界が描かれている。
 そんな中で、真っすぐに問題に向き合うアラジン達を見て、我々も人間のエゴが生む問題について考えさせられる作品である。
2021/09/21(火) 01:06 No.1819 EDIT DEL
二年 室伏 RES
夏休み課題1~10

1.『オペラ座の怪人』(演劇)
作曲 アンドリュー・ロイド=ウェバー
作詞 チャールズ・ハート
台本 リチャード・スティルゴー
アンドリュー・ロイド=ウェバー
(ガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」による)
日本語台本 浅利慶太
翻訳 安東伸介
1905年、パリ・オペラ座の舞台上。オペラハウスの所有物がオークションにかけられている。車椅子の老人はその中の一つ、オルゴールに手を止める。
さかのぼること半世紀、オペラ座の舞台では、オペラ『ハンニバル』のリハーサル中。
しかし華麗な舞台の外では"オペラ座の怪人"の仕業とされる謎めいた事件が続発していた。策を講じない支配人に腹を立てたプリマドンナのカルロッタは、オペラに出演しないと言い出す。

劇中劇が多く、印象的な曲や衣装が多く登場した。特に『マスカレード(仮面舞踏会)』のシーンでは、煌びやかな衣装と大人数による歌が圧巻だった。ファントム、クリスティーヌ、ラウルの三角関係が物語の中枢にあり、そこにクリスティーヌの亡き父親への思いや、ファントムのミステリアスな魅力が加わって作品をより盛り上げていると感じた。
 
2.『竜とそばかすの姫』(映画)
監督 細田守
原作 細田守
脚本 細田守

「サマーウォーズ」「未来のミライ」の細田守監督が、超巨大インターネット空間の仮想世界を舞台に少女の成長を描いたオリジナル長編アニメーション。高知県の自然豊かな田舎町。17歳の女子高生すずは幼い頃に母を事故で亡くし、父と2人で暮らしている。母と一緒に歌うことが大好きだった彼女は、母の死をきっかけに歌うことができなくなり、現実の世界に心を閉ざすようになっていた。ある日、友人に誘われ全世界で50億人以上が集う仮想世界「U(ユー)」に参加することになったすずは、「ベル」というアバターで「U」の世界に足を踏み入れる。仮想世界では自然と歌うことができ、自作の歌を披露するうちにベルは世界中から注目される存在となっていく。そんな彼女の前に、 「U」の世界で恐れられている竜の姿をした謎の存在が現れる。

オリジナルのインターネット仮想世界、『U』の世界観の描写や、背景の演出がとても細やかで驚いた。『U』 には多くのアバターが存在するのだが、そのデザインがどれも美しく、魅力的だった。また、主人公ベルを演じる中村佳穂さんの歌声が圧倒的で心に響いた。ストーリー以上に音楽と映像美で心に残る映画だと感じた。


3.『サマーウォーズ』(映画)
監督 細田守
原作 細田守
脚本 奥寺佐渡子

「時をかける少女」の細田守監督が、同作に続いて脚本・奥寺佐渡子、キャラクターデザイン・貞本義行とともに描くオリジナル長編アニメーション。数学が得意だが気弱な高校2年生の健二は、憧れの先輩・夏希に頼まれ、夏休みの間、彼女の実家で夏希のフィアンセとして過ごすことに。そんな時、健二はネット上の仮想空間OZで起きた事件に巻き込まれ、その影響が現実世界にも波及。夏希の一家ともども、世界の危機に立ち向かう。

ネットの世界を題材にしながらも、家族の絆や繋がりといった現実的なテーマを描ききっているところが凄いと感じた。メインキャラクターとしてかなり多くの人物が登場するが、どの人物も個性的且つ魅力的に描かれていた。笑えるシーンも、感動するシーンも沢山あって、何度でも見られる映画だと感じた。

4.『アーヤと魔女』(映画)
監督 宮崎吾朗
原作 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
脚本 丹羽圭子 郡司絵美

「ハウルの動く城」の原作でも知られるダイアナ・ウィン・ジョーンズの同名児童文学を、スタジオジブリが同社初の長編3DCGアニメとして映像化。1990年代のイギリスを舞台に、自分が魔女の娘とは知らずに育った少女アーヤが、奇妙な家に引き取られ、意地悪な魔女と暮らすことになる姿を描く。孤児として育った10歳のアーヤは、なんでも思い通りになる子どもの家で何不自由なく暮らしていたが、ベラ・ヤーガと名乗るド派手な女とマンドレークという長身男の怪しげな2人組に引き取られることに。魔女だというベラ・ヤーガは手伝いがほしかったからアーヤを引き取ったと言い、魔法を教えてもらうことを条件にアーヤはベラ・ヤーガの助手として働きだすのだが……。

スタジオジブリ初の3DCG映画だったが、人物の動きや表情にジブリ「らしさ」を感じた。
主人公アーヤの、何があってもへこたれずに立ち向かっていく姿がたくましく、見ていて爽快だった。原作が未完であることからか、話の終わり方が少し唐突で疑問点も残ってしまったので、続編を期待したい。

5.『もののけ姫』(映画)
監督 宮崎駿
原作 宮崎駿
脚本 宮崎駿
当時の日本映画歴代興行収入第1位を記録した宮崎駿監督、原作、脚本の劇場用アニメーション作品。舞台は室町時代の日本。タタリ神にかけられた呪いを解くため西方へ旅立った少年アシタカは、人間でありながら神々の側につくもののけ姫と呼ばれる少女サンと出会う。

「こだま」や神々の存在などといった世界観が独特で、徐々に作品に引き込まれていった。神々の住む山を守ろうとするサンと、村の発展のために神々を殺そうとするエボシ。対立する2人は、一概にどちらかが「正しい」と言えるわけではなく、自然と人間との関わり方について改めて考えさせられた。

6.『風の谷のナウシカ』(映画)
監督 宮崎駿
原作 宮崎駿
脚本 宮崎駿

アニメ雑誌「アニメージュ」誌上に連載されていた宮崎駿の同名漫画の映画化。宮崎監督自身が、監督、脚本を務めた。高度な産業文明を破壊させた「火の七日間」呼ばれる大戦争から1000年。人類は、巨大な虫や、毒の森・腐海に脅かされながら生きていた。辺境の小国「風の谷」の族長の娘、ナウシカは、人間同士の争いに巻き込まれていく。

「風の谷」というタイトルから自然を題材とした作品を予想していたが、想像していたよりも「戦争」に関連する話だった。物語の序盤に主人公の父親が殺されてしまう展開には少し驚いた。ラストシーンの王蟲が谷に押し寄せてくるシーンは、音楽・映像共に迫力があり印象に残った。

7.『ヘラクレス』(映画)
監督 ブレット・ラトナー
製作 ボー・フリン バリー・レビン ブレット・ラトナー

ギリシャ神話の英雄ヘラクレスを描いたスティーブ・ムーアのグラフィックノベルを、「ワイルド・スピード」シリーズや「G.I.ジョー バック2リベンジ」などで活躍するドウェイン・ジョンソン主演で映画化したアクション大作。監督は「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」「ラッシュアワー」のブレット・ラトナー。全能の神ゼウスと人間アルクメネの間に生まれたヘラクレスが、自身の出自や犯した罪にさいなまれ、救いを求めて旅に出る姿や、不死身の獅子や地獄の番犬ケルベロスといった魔物たちとの戦いを通し、いかにして英雄となっていったのかを、迫力のアクション満載に描き出す。

ギリシャ神話がモチーフの作品だったが、神話を詳しく知らない人でも楽しめる内容だった。ハデスは、悪役ながらもどこかコミカルで、憎めない魅力があった。主人公とヒロインのラブストーリーだけではなく、主人公と師匠との絆も描かれていて、そこも面白かった。また、ゴスペル風の女性たちによるコーラスで作品を進行していくのも特徴的だった。

8.『リトル・マーメイド』(映画)
監督 ロン・クレメンツ ジョン・マスカー
脚本 ロン・クレメンツ ジョン・マスカー

純粋でいつも好奇心いっぱいのマーメイド、アリエルは、仲良しのフランダーやカニのセバスチャンたち愉快な仲間と一緒に海の王国に暮らすお姫さま。陸の世界に憧れるアリエルは、人間の王子エリックと出会い、恋に落ちます。アリエルは一途な恋を叶えるために、海の魔女アースラとの魔法の約束を果たさなければならず…。

『アンダー・ザ・シー』や『パート・オブ・ユア・ワールド』などの有名な曲が、序盤に次々と登場した。アリエルの恐れを知らない、無鉄砲な様子は見ている側を不安にする一方で、視聴者を作品により深く引き込む効果も持っているように感じた。セバスチャンやフランダー、トリトン、アースラなどの周囲のキャラクターも、それぞれ個性が強く魅力的だった。

9.『リトル・マーメイドⅡ~Return to the sea~』(映画)
監督 ジム・カメラッド
脚本 エリザベス・アンダーソン テンプル・マシューズ

アリエルとエリックの愛する娘メロディが、アースラの恐ろしい妹モルガナに目をつけられた。娘を守るため、アリエルは海の世界に関する全てを秘密にするが、その思いとは裏腹にメロディは海への憧れを募らせていく。やがてメロディに魔の手が迫ったとき、アリエルとエリックはトリトン王や陸と海の仲間たちの助けを借りて、メロディを救い出そうとする。果たして彼らは、海の平和を取り戻すことができるだろうか。

『リトル・マーメイド』のスピンオフ的な側面が強い作品だった。アリエルが、母親として娘のメロディとの距離の取り方に悩んでいる様子は、前作のトリトンとアリエルの関係を彷彿させた。また、人間に憧れていたアリエルと、人魚に憧れるメロディが対比して表現されていた。一方で好奇心旺盛な性格はアリエルとそっくりで、冒頭のパーティーに遅れる展開など、要所に前作のパロディがあった。

10.『ふしぎの国のアリス』(映画)

監督 クライド・ジェロニミ ハミルトン・S・ラスケ ウィルフレッド・ジャクソン
脚本 ウィンストン・ヒブラー ビル・ピート ジョー・リナルディ ビル・コットレル
ジョー・グラント Del Connell テッド・シアーズ アードマン・ペナー
ミルト・バンタ ディック・ケルシー ディック・ヒューマー トム・オレブ
John Walbridge
原作 ルイス・キャロル

「シンデレラ姫」のウォルト・ディズニーが製作したテクニカラー色彩長編漫画映画。木のかげで姉さんが読む英国歴史にあきた頃、突然白兎がアリスの傍を駆けていった。その後を追って穴に飛び込んだアリスは何か食べるごとに大きくなったり、小さくなったり、笑い猫や芋虫やトランプの兵隊などに会って、最後はトランプの女王様から裁判され、こわくなって、逃げ出そうとしたが、なかなか逃げられない。というところで姉さんの「アリス」と呼ぶ声に目を覚ましました。不思議な国は夢のなかの出来事だったのだ。

『不思議な国』で次々と奇想天外な出来事が起こっていく様子は面白かったが、前後の展開にあまり繋がりがないのでストーリーは少し理解しづらいように感じた。ただ、食べると身体が大きくなるクッキーや、喋る花たちなど、不思議な世界観がディズニーのポップな作画で美しく表現されていて魅力的だった。
2021/09/20(月) 23:15 No.1818 EDIT DEL
二年 髙田(梨) RES
夏休み課題11~20

課題11~20

11『ゴールデンカムイ』(漫画)
作者:野田サトル
発行所:集英社

 日露戦争での武功から「不死身の杉元」と呼ばれた元兵士・杉元佐一は、戦死した親友の妻の病を治すため、大金を求めて北海道で砂金を探していた。そんな中、かつてアイヌが北海道に隠した埋蔵金の手がかりを知った杉元は、ヒグマに襲われたことをきっかけにアイヌの少女・アシ(リ)パと出会う。
注:アシ(リ)パの「リ」は本来は小文字表記。

 北海道の金塊を巡る競争には、網走監獄の脱獄囚や、陸軍最強と謳われる第七師団、旧幕府軍の生き残りといったつわもの揃いである。そんな中で杉元達は金塊を手に入れることができるのか。王道の冒険譚に、狩猟や食をはじめとしたアイヌ文化や、登場人物達の交差する過去や感情が加わり、緻密で重厚感のある作品となっている。
 本作で主張される、アイヌを含む少数民族の文化の保存は現代にも続く課題であり、問題提起になっているだろう。主人公の杉元はアイヌの子供であるアシ(リ)パを「アシ(リ)パさん」と呼び、敬意を持って接する。明治時代を舞台とした本作で、和人とアイヌ、大人の男性と少女でありながら、二人の関係をこのように表現することで、肩書に囚われず相手を尊重することの重要さも描いている。

12『有閑倶楽部』(漫画)
作者:一条ゆかり
発行所:集英社

 幼稚園から大学までの一貫制の名門私立校、聖プレジデント学園。この学園の高等部生徒会の6人は、全員が美男美女で権力にも才能にも恵まれているが、暇を持て余して刺激を求めている。いつしか「有閑倶楽部」と呼ばれ始めた生徒会6人は、様々な事件に首を突っ込み、時には巻き込まれていく。

 上記の通り、過剰なほど恵まれた設定の6人が主人公の本作だが、嫌味を感じることはない。なぜなら、この設定こそが様々な事件のきっかけになるのである。身代金目的で誘拐されたり、高校生でありながらラスベガスで豪遊したり、夏休みに別荘で心霊体験に遭遇したりと、普通の学園ものでは難しい展開が次々と繰り広げられる。
 これらの事件を彼らが時に面白がり、時に正義感から、解決へと導いていくドタバタコメディである。よって、本作は少女漫画誌「りぼん」に掲載されているが、恋愛には至らず、友情で結ばれた6人が描かれる。

13『おっさんずラブ』(ドラマ)
脚本:徳尾浩司
制作:テレビ朝日

 不動産勤務のモテない33歳・春田は、あることをきっかけに尊敬する上司である黒澤が自分に恋愛感情を向けているのではないかと感じ始める。そんな中、本社から異動してきた後輩の牧に対し、母親が家出したことで家事に困っていた春田は同居を提案する。
 しかし、ある日黒澤が春田に愛の告白をすることをきっかけに、春田の運命は動き始める。

 本作では男性3人を中心とした恋愛を描くが、「この春いちばんピュアなラブストーリー」というキャッチコピーの通り、異性か同性かではなく「人を愛する」ことをメインテーマとしている。登場人物の内面にも同性であることの葛藤は描かれず、周囲からの反対などもない。
 同性婚に関する法改正や、LGBTへの偏見は昨今でも改善すべき問題である。誰もがフラットな目線で人を愛する本作のような価値観が必要だと考える。

14『シンデレラコレクション』(漫画)
作者:今井康絵
発行所:小学館

 小学6年生のニーナは、恥ずかしさや厳しい母親のせいもあり、ファッションに興味を持ちながらも手を出せず、周囲がおしゃれに夢中な中地味な恰好をしていた。
 しかし、クラスメイトの旭との口論の末に、読者モデルになる約束をしてしまう。ためらうニーナだったが、先輩モデルの言葉を受けて、本気でモデルを目指すようになる。

 ファッションブランド「メゾピアノ」とコラボレーションし、地味な少女がスーパーモデルへ駆け上がるシンデレラストーリーを描いた作品。
 作中に登場する洋服は、作品連載当時(2003年~2005年)実際にメゾピアノで販売されていたもので、読者が主人公ニーナ達と同じファッションを楽しめることも本作の魅力である。また、ニーナのように、おしゃれをしたい気持ちは持つがためらいのある読者の背中を押す作品でもある。

15『ミヨリの森』(映画)
原作:小田ひで次
監督:山本二三

 両親の不仲を見て育った11歳の少女ミヨリは、意地っ張りで他人に心を開こうとしない。そんなミヨリは、田舎の祖母の家で暮らすことになり、近くの森で精霊達に出会う。
 少しずつ精霊たちや村の人々と心を通わせるミヨリは、村のダム開発による水没を止めるために、精霊と共に計画を建てる。

 本作のテーマは主に2つあり、人間の便利さのために自然を荒らすことへの警鐘と、思春期の少女が両親以外の他者からの影響を受けて成長することである。
 ミヨリははじめ、不仲な両親の影響で他人と良好な関係を築こうとしない。特に、親としての役割よりも恋を優先し、ミヨリにも同じように生きることを進める母親には反発している。子供は、身近な大人からの影響を受けやすく、次第にその他の他者と関わることで成長する。この成長を、田舎の祖母や子供たち、森の精霊との交流という形で暖かく描いたものが本作だと言えるだろう。

16『先生のおとりよせ』(漫画、小説)
漫画・挿絵:中村明日美子
小説:榎田ユウリ
発行所:リブレ出版株式会社

出版社の意向でコラボをすることになった漫画家・中田みるくと小説家・榎村遥華。対照的な性格で、お互いに性別を誤解していたこともあり第一印象も良くなかった二人だったが、共通の趣味である「おとりよせ」を通じて徐々に互いを理解していく。

 この作品の大きな特徴は、漫画と小説のリレー形式で物語が展開される点である。主人公の二人と同様に漫画家と小説家がタッグを組むことで、作品にリアリティが生まれる。
 小説のパートは三段組で、おとりよせ商品への感想など印象的なセリフが他の文字より大きく太字で主張されるなど、テンポよく読める工夫がなされている。
 また、一話ごとに登場するおとりよせグルメは実在するものであり、写真と販売価格、賞味期限、販売ページのURLが掲載されており、作中の食べ物を実際に購入することが可能である。

17『止まりだしたら走らない』(小説)
作者:品田遊
発行所:リトルモア

 中央線を舞台とした短編集。中央線の利用者や社員達の日常の中の物語と、同じく利用者の高校生・都築と新渡戸の物語が交互に描かれる。
 最寄り駅の武蔵小金井ではなく、遠回りになる東京駅を起点として高尾山を目指すことになる都築と新渡戸は、電車旅の中で何を思うのか。

 一話完結の短編と、繋がりのある物語を交互に載せる、やや特殊な形の短編集である。都築達の物語のみ青字で書かれていたり、他の物語には挿絵が入っていたりと、両者を明確に区切る演出がされている。
 また、本作には、一人称視点で描くことにより読者をミスリードする手法が使われており、小説という媒体を活かした作品であると言える。

18『私の恋はチョコレート』(漫画)
作者:色井麻知子
発行所:小学館

 恋に憧れる中学生のつぐみは、バレンタインにチョコレートで等身大の男の子を作る。そんなチョコレートの王子様にキスをすると、本物の人間の姿に変身する。
 つぐみは突如現れた理想の王子と、クラスメイトの北原の間で恋心に揺れる。

 チョコレートが人間の姿に変わるという衝撃的な物語の始まりから、恋の三角関係という王道の少女漫画的展開を、繊細で華やかなタッチで描くラブストーリー。しかし、ラスト数ページに至るまで、主人公つぐみがどちらの少年と結ばれるのか予想できないことが本作の大きな特徴である。単行本の描きおろしページでは、作者もどちらにするか苦悩したことを明かしており、この点において本作には所謂「王道」の三角関係から外れた魅力があるだろう。

19『帰ってきたヒトラー』(映画)
原作:ティムール・ヴェルメシュ
監督:デヴィッド・ヴェンド

 アドルフ・ヒトラーが現代にタイムスリップした。しかし、現代の人々は彼をモノマネ芸人だと勘違いし、ヒトラーは大スターとなる。タイムスリップしたヒトラーの言動をコメディチックに描くが、次第に状況は変化していく。

 作中、ヒトラーが街に繰り出し人々と話すシーンは、映画撮影であることを告げず、実際に一般人と会話しているという。よって、現代に存在するヒトラーに対する人々の反応が非常にリアリティを持つ。
 上記の通り前半は笑いのあるシーンが多く、ヒトラーに愛着を抱く人もいるかもしれない。しかし、後半になり、彼は演説による民衆扇動の能力を発揮する。テレビやインターネットの普及した現代において、人々は簡単に影響される。
 政治家をキャラクター化して扱う風潮は実際に見受けられるが、そういった状況下で発される発言の影響力について、慎重に考える必要があると再認識させる作品である。

20『キノの旅』(ライトノベル)
作者:時雨沢恵一
発行所:メディアワークス

 旅人キノと人間の言葉を話す二輪車エルメスは、様々な国を巡っている。「人の痛みが分かる国」「多数決の国」など、少し変わった国を訪れたキノとエルメスは、3日間と決めている滞在期間で国民と言葉を交わしていく。

 『キノの旅』1巻に収録されている『人の痛みが分かる国』は、機械技術が発達し、脳内で考えたことが即座に他人に伝えられるようになった国で生きる男の話である。他者の考えが分かれば痛みも分かるはずだと思われたが、本来であれば伝える言葉を選べるはずが全て伝わってしまうことによるトラブルが国中で起き、国民は対人恐怖症になってしまった。男は、「何を思っているのかわからない」キノの存在に感動する。
 キノは、男の話を聞くが、アドバイスを与えたりはしない。キノはあくまで旅人であり、このエピソード以外でも、国を変えようと行動を起こすことは少ない。本作は三人称視点で書かれており、読者もキノが何を考えているのか全て理解することは出来ないが、それにより、分かろうと思考することや、全てを分からなくてもいいと割り切ることも時に必要だと感じさせる効果が生まれている。
2021/09/20(月) 23:08 No.1817 EDIT DEL