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2年 内田 RES
春休み課題11~20

11.義母と娘のブルース 2022年謹賀新年スペシャル(ドラマ)
原作:桜沢鈴
脚本:森下佳子

 みゆきの義母・亜希子は大阪の企業・ゴルディックの再建に関わっていたが、突如会社が乗っ取りに遭ってしまう。新オーナーであるダインキャピタル・ジャパンの岩城良治は外資系ファンドのボスであり、いわゆるハゲタカだったのだ。しかしそんな憎き相手の容姿は亜希子の亡き夫・良一と瓜二つであり、亜希子は衝撃を受ける。さらに良治は、ベーカリー麦田を買収の標的にしたのだった……。

 『義母と娘のブルース 2020年謹賀新年スペシャル』のその後の世界を描いた作品である。コミカルで温かい雰囲気であり、前作と変わらない世界観を楽しむことができる作品となっていた。
 本作の見所は他界してしまった亜希子の夫・良一を演じた竹野内豊が、良一と瓜二つの新キャラクター・良治を演じていた点である。良一は前作において既に他界していたため、それ以来殆ど出番が無くなってしまった。しかし本作で良治が登場することによって彼と良一との違いを楽しむことができ、そしてあたかも良一と亜希子とみゆきが再び再会できたかのように錯覚をすることができたため、面白い試みを行った作品であったと感じた。
 また良治との出会いによって翻弄され、心が揺れ動く亜希子の姿も本作の見所である。良治に惹かれてしまう自分に戸惑う姿や経営コンサルタントとしての見事な手腕等、様々な亜希子の一面が描かれていた。

12.猫の恩返し(映画)
原作:柊あおい
監督:森田宏幸

 吉岡ハルは、ごく普通の高校生。ある日ハルは、下校中にトラックに轢かれそうになっていた猫を間一髪で救出する。するとその猫は、なんと人間の言葉でハルにお礼を言ってお辞儀をしたのであった。ハルが助けた不思議な猫の正体は、「猫の国」の王子だった。彼を助けたお礼として、猫の国から恩返しとして猫じゃらしや鼠がハルの元に送られてくる。さらにハルは、猫の国へと招待されてしまうことに……。

 名前の通り猫が暮らしている世界「猫の国」が舞台となったファンタジー作品である。猫の国の城に魚がデザインされている点や出てくる料理が猫の好物ばかりである点等、猫の要素を多く詰め込んだユニークな世界観が面白く、作り手のこだわりが詰まっているように感じた。
 本作は視聴者に近い存在であるごく普通の高校生を主人公に据えた上でこの猫の国を描くことで、没入感を与えることができている点が魅力である。ハル達と共に冒険をしているような感覚で、ワクワクしながら視聴することができる作品になっていると思った。また物語の終盤では、猫の国での経験を通して少し成長したハルの姿が描かれている。彼女の冒険を描くだけではなく、それを経て少し変化した姿まで描いていくことで物語に深みと余韻が生まれているのではないかと私は考えた。

13.風立ちぬ(映画)
原作・脚本・監督:宮崎駿

かつて、日本で戦争があった。大正から昭和へ、1920年代の日本は、不景気と貧乏、病気、そして大震災と、まことに生きるのに辛い時代だった。そして、日本は戦争へ突入していった。当時の若者たちは、そんな時代をどう生きたのか?イタリアのカプローニへの時空を超えた尊敬と友情、後に神話と化した零戦の誕生、薄幸の少女菜穂子との出会いと別れ。この映画は、実在の人物、堀越二郎の半生を描く――。
堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて。(出典:https://www.ghibli.jp/kazetachinu/story.html

 戦争が起こっていた時代を舞台として、飛行機の設計に情熱を注ぐ堀越二郎の半生を描いた作品である。本作は戦時中の物語でありながらも、戦場や空襲等といった直接的な描写が殆ど無かった点が特徴的である。全力で仕事に勤しむ二郎の姿や温かい夫婦愛を中心として、辛い時代の中でも懸命に生きようとする人々の姿が描かれた作品に仕上がっていた。しかし戦争に関する直接的な描写は少なかったとはいえ、ラストシーンの二郎とカプローニとの対話には戦争の暗い現実が影を落としている。そのため、戦争の悲惨さについてもきちんと考えさせられる作品になっていた。
 場面転換が多く抽象的な表現が多いため少し難解な映画であるような印象を抱いたが、だからこそ視聴後の余韻を深く感じることができたのではないかと私は考えた。

14.メアリと魔女の花(映画)
原作:メアリー・スチュアート
監督:米林宏昌
脚本:米林宏昌、坂口理子

 赤毛とそばかすが特徴的な少女・メアリは、赤い館村に引っ越してきた。ある日猫のティブとギブを追いかけて森に入ったメアリは、不思議な青い花を発見する。それは七年に一度しか咲かない「夜間飛行」という花であり、強大な力を秘めている魔女の花だったのである。
 夜間飛行の力で、メアリは一夜限りの魔法の力を手に入れる。空飛ぶ箒に乗ったメアリが辿り着いたのは、魔法世界の最高学府「エンドア大学」であった……。

 魔法世界での大冒険を描いたファンタジー作品である。幻想的で心が躍るような世界観が表現されていた本作は、手描き作業をメインとして映像が作られていたそうである。そのため、魔法の描写は鮮やかながらもどこか温かみを感じるようなものに仕上がっていた点が良かった。
 また起承転結がはっきりしていてメッセージ性が強く、視聴者を引き込むストーリーになっていた点も本作の魅力だと言えるだろう。物語の序盤でコンプレックスを抱えていたメアリは大冒険を通して成長していき、最終的には暴走する魔法の力にも怯まずに立ち向かっていくことができたのである。本作は人間の手に負えないほどの強大な力ではなく、人間一人一人が持つ小さな勇気の素晴らしさを描いており、胸を打つストーリーになっていた。

15.KING OF PRISM by PrettyRhythm(映画)
監督:菱田正和
脚本:青葉譲

 コウジ・ヒロ・カヅキの三人で結成されたユニット・Over The Rainbowは、デビュー後一気にプリズムショー界の頂点に上り詰めることができた。さらに彼らが所属するプリズムスタァ養成校・エーデルローズには、続々と新入生が入学していた。しかし突然、エーデルローズの元主宰の法月仁が「シュワルツローズ」という対立勢力を発足させてしまう。仁はエーデルローズの有望な男子プリズムスターを次々と引き抜き、さらにエーデルローズに対して負債を押し付けて窮地に追い込んだのである。そのような状況の中、天才作詞作曲家であるコウジにアメリカから巨額のオファーが舞い込んでくる……。

 『プリティーリズム・レインボーライブ』のスピンオフ作品である。本作はボーイズユニット「Over The Rainbow」を主役に据え、本編のその後のストーリーを描いた作品となっている。
 様々な困難を乗り越え、ぶつかり合いながらも一つのグループになることができたOver The Rainbowの三人から、新世代のプリズムスタァ達にバトンが受け継がれていくような構成になっており非常に胸が熱くなる作品であった。Over The Rainbowから様々なアドバイスを貰ったシンの純粋で真っ直ぐな言葉は、プリズムショーやスピンオフ元の作品が好きであればあるほど心に響くものとなっていた。
 また、シリーズの過去作のオマージュやギャグ要素も非常に豊富であり、尺が短い映画でありながらも濃密な作品に仕上がっていたのではないかと私は考える。

16.KING OF PRISM -PRIDE the HERO-(映画)
監督:菱田正和
脚本:青葉譲

 一条シンはOver The Rainbowのプリズムショーに憧れ、エーデルローズに入学した。シンは6人の仲間と共に、未来のプリズムスタァを目指して練習に励んでいた。しかしそんなある日、コウジが作詞作曲を手掛けたヒロのマイソング「pride」の使用権がシュワルツローズによって差し押さえられてしまう。ヒロは、このままでは「pride」でプリズムキングカップに出場することができないと言い渡されてしまった。その上プリズムキングカップにおいて勝者を輩出することができなければ解散となってしまうエーデルローズは、窮地に立たされていた。
 波乱のプリズムキングカップで、ヒロ達は一体どのようなプリズムショーを披露するのか……?

 映画『KING OF PRISM by PrettyRhythm』の続編にあたる作品だ。前作と同様にギャグ要素やシリーズの過去作のオマージュが豊富であり、密度の濃い作品に仕上がっていた。前知識が無い人にとってはギャグシーンのように見えるが、過去作を知っている人にとっては感動することができる場面になっているというシーンが多く、観る人によって抱く感想が異なるという点が本作の面白い所だなと思った。
 また本作の大きな見所は、プリズムキングカップで繰り広げられるプリズムショーであると私は考える。キャラクター一人一人の個性が存分に活かされたプリズムショーはどれも全く異なる魅力を持っており、飽きることなく楽しむことができるのだ。その中でも特にヒロとカヅキによるショーは非常に印象的である。本作の前半での描写に加え『プリティーリズム・レインボーライブ』にて描かれた彼らの成長も踏まえた、これまでの集大成のようなショーに仕上がっていたため非常に感動的な内容となっていた。

17.KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-(アニメ)
監督:菱田正和

 一条シンはこの春、華京院学園高等部の1年生となった。そんな中シュワルツローズの総帥である法月仁は、プリズムキングに変わる新たな王を決めるべく「PRISM.1」の開催を提唱する。予てからエーデルローズを目の敵にしていた仁は、シュワルツローズとエーデルローズの対抗戦を行おうと企んでいたのであった。波乱のプリズムキングカップを終えたエーデルローズを舞台に、新世代のプリズムスタァ候補生達の新たな物語が幕を開ける……。

 映画『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』の続編に当たる作品。本作はKING OF PRISMから登場した新キャラクター達に焦点を当て、オムニバス形式で個々の物語が紡がれている。歌舞伎界の名門に生まれた少年もいれば財閥の跡取りの少年もいたりと、新キャラクター達の境遇は非常にバラバラである。そのため、本作は十人十色のストーリーを楽しむことが可能になっていた。そしてプリズムショーとの出会いや抱えている苦悩等が丁寧に描かれたストーリーはそれぞれ見応えがあるものに仕上がっていた。
 また前作で張られていた多くの伏線が回収され、盛り上がっていく終盤も大きな見所である。『プリティーリズム・レインボーライブ』よりも更に深堀りされたプリズムの使者の設定には非常に感嘆させられた。また、利己的なシャインによる禍々しいショーは身動きが取れなくなるほどゾッとさせられる映像であり、ここまで怖いプリズムショーを表現できることに驚かされた。その後披露されたセプテントリオンのショーは「皆を笑顔にしたい」という想いが真っ直ぐ伝わってくるものであり、シャインの自分勝手なショーと対比されることによってその素晴らしさが一層感じられたこともあって、非常に感動して目頭が熱くなった。またプリズムスタァと観客の絆の美しさを描いたラストは、「応援上映」を武器にしている本作らしい結末だなと感じた。

18.帝一の國(映画)
原作:古屋兎丸
監督:永井聡

 赤場帝一は、日本一の超名門校・海帝高校に入学する。多くのエリート学生達が集う海帝高校は政財界に強力なコネを持っており、この高校で生徒会長を務めていた者は将来内閣に入ることが約束されているのだ。将来総理大臣になるという夢を持つ帝一は海帝高校の生徒会長を目指し、二年後の選挙に向けて奮闘していく。強力なライバル達が立ちはだかる中、帝一は「自分の国を作る」という野望を叶えることができるのだろうか……?

 生徒会選挙で当選するために死に物狂いで奔走する帝一達の姿を描いた作品。政財界に強力なコネを持っているという規格外な設定がされている学校を舞台として、生徒会長になるべく奮闘する帝一達が非常にコミカルに描かれていた。また単なるギャグで終わらせるのではなく、ストーリー性やメッセージ性も織り込まれている作品になっていた点が本作の魅力であったと考えられる。帝一は物語の序盤において、生徒会長になるためだったらどんなに汚い手でも使うと話していた。しかし野望を追いかけるあまり大切なことを見失ってしまう危険性や、汚れたやり口では人々の心を掴むことはできないといったメッセージ性が上級生の生徒会選挙を通して描かれていたのである。

19.いいね!光源氏君 し~ずん2(ドラマ)
原作:えすとえむ
脚本:あべ美佳

 藤原沙織の元に光源氏が舞い戻ってきた。中将やカイン、詩織に引っ越し作業を手伝ってもらいながらワンルームマンションに転居した沙織は、光源氏と再び同棲をすることに。しかしある日、沙織に好意を持つ同期の男・一条が現れてしまう。さらに安倍課長が通う和歌教室の講師の名前が「紫」であったことから、紫の上が現代に次元ジャンプしているのではないかと思った沙織は焦り始める……。

 ドラマ『いいね!光源氏君』の続編にあたる作品。現代の人々とは価値観が異なる光源氏のユーモラスな行動や言動が持ち味となっており、シーズン1の雰囲気が引き継がれつつその後のストーリーも楽しむことができる作品となっていた。沙織と光源氏にそれぞれ恋敵が登場した本作では、少しハラハラさせられる展開がありながらも二人の絆の強さをしっかりと感じることができたため、視聴後にほっこりとした気持ちになることができる作品となっていた。
 最終的に紫の上は現代に登場しなかったため少々肩透かしを食らったが、ゆるい作風に合わないギスギスした雰囲気になりすぎてしまうことを防ぐことができた点は良かったと思う。

20.おおかみこどもの雨と雪(映画)
監督・脚本・原作:細田守

 大学生の花が恋をした青年は、人間の姿で暮らしている「おおかみおとこ」であった。しかしそのことを知った後も花の気持ちが変わることはなく、二人は共に暮らし始めることに。やがて、二人は新しい命を授かることができた。二人の間に生まれた子供達は人間とおおかみの両方の顔を持っていたのである。子供が「おおかみこども」であることを隠しながら、4人はつつましくも幸せな日々を送っていた。しかし、ある日突然おおかみおとこに死が訪れてしまう……。

 本作は、人間とおおかみの二つの顔を持つ子供を主軸にした物語である点が大きな特徴である。雨と雪はおおかみに変身することもあるため、子育てのシーンは非常に賑やかで楽しいものになっていた。また、幼い雨と雪の行動一つ一つが可愛らしくて微笑ましかった。
 しかし、本作が描いているのはおおかみこどもとの楽しい生活ばかりではない。雨と雪が将来人間とおおかみのどちらの道に進んでいくのかということや、花が二人の決断を受けて葛藤する姿まで描かれているのである。本作で描かれていた「人間とおおかみの両方の顔を持っているからこその苦悩」は、雨と雪とで異なっている点が面白いなと感じた。また雨と雪の決断や早すぎる巣立ちを受け入れ、笑顔で二人を送り出した花の強さと子供を大切に想う気持ちが表れているシーンは、涙なしでは見られない。
2022/03/16(水) 15:09 No.1834 EDIT DEL
2年 内田 RES
春休み課題1~10

1.Rozen Maiden(漫画)
作者:PEACH-PIT

 引きこもりの中学二年生・桜田ジュンの元に、「まきますか まきませんか」と書かれた一通のダイレクトメールが届いた。「まく」方を選択したジュンは、玄関に届けられていたアンティークドールを受け取る。それは生きた人形であり、背中のねじを巻くと目覚めて動き出した。「ローゼンメイデンの第五ドール・真紅」を名乗るそのドールと契約を交わしたジュンは、ローザミスティカを巡る戦い「アリスゲーム」に巻き込まれていくことに……。

 ゴシックな世界観が特徴的な本作の魅力は、メッセージ性の強いストーリーにあると言えるだろう。本作はドールと人間を対比させながら、「生きること」について真摯に向き合ったストーリーに仕上がっている。運命に翻弄されながら戦っていく真紅達の姿に切なさを感じずにはいられない。しかしキャラクター達が成長して強くなり、困難に立ち向かっていく物語には非常に心を揺さぶられるのだ。そして契約を結んでいるドールと人間の関係性が一つ一つ丁寧に描かれていた点や、彼らがお互いに影響を与え合っている点も本作の大きな見所だと言えるだろう。
 また、本作には印象的な名言が多く登場する。物語の進行と共に、序盤に登場した台詞の説得力が増していく構成は秀逸であった。

2.ラブライブ! スーパースター‼(アニメ)
原作:矢立肇
原案:公野櫻子
監督:京極尚彦

 澁谷かのんは新設校である私立結ヶ丘高等学校の音楽科を受験するも、実技試験に失敗してしまう。かのんは歌うことが大好きで抜群の歌唱力を持つが、人前では緊張して歌えなくなってしまうためである。同学校の普通科に通うことになったかのんは受験の失敗を引きずり、「もう歌はおしまい」と心に決めてしまう。
 結ヶ丘高等学校に入学したかのんは、上海からの留学生・唐可可と出会った。かのんが人気のない路地裏で歌った歌を偶然聴いていた可可は、かのんをスクールアイドル活動に誘う。

 本作は従来のラブライブシリーズとは異なり、主要な登場人物が五人に減っている点が特徴的である。そのことによって悩みやコンプレックスを乗り越えていく個々のストーリーに多くの話数を割くことが可能になったため、エピソードに厚みが出ていた。その中でも、特に主人公であるかのんの物語が特に印象的であった。かのんは「人前では緊張して歌えなくなってしまう」という悩みを持っており、そのことが原因で受験に失敗したという挫折経験もある。このように、主人公を完璧な人間に設定するのではなく弱い部分も持った人物として描くことで、視聴者が感情移入しやすくなっていた点が本作の魅力であると考えられる。
 所々突っ込み所はあったものの、全体的に見れば感動的な場面が多く非常に見応えのある作品となっていた。

3.ハコヅメ ~たたかう!交番女子~(ドラマ)
原作:泰三子
脚本:根本ノンジ

 川合麻衣は、町山交番に配属された新米警察官。安定収入を求めて警察官になったが、ハードな仕事に耐え切れなくなった川合は辞表を提出しようとしていた。しかしそんな川合の前に、刑事課から異動してきた藤聖子が現れる。藤は刑事課の元エースだったが、とある理由で町山交番勤務になったのだという。
 川合は藤とペアを組むことになり、事件や雑務に追われながらもお互いに支え合って奮闘していく。

 交番に勤める女性警察官を描いた作品。全体的にコメディタッチで描かれおり、警察官という仕事の裏側が思い切り描かれている点が本作の特徴である。本作の登場人物達は刑事ドラマによく登場するような硬派な警察官とは異なっており、仕事に対して愚痴や弱音を吐くような人間味溢れる人物が殆どである。このことによって視聴者は彼らに親近感を覚えることが可能になっており、また、警察官という仕事の大変さを再認識することができる効果が出ていたのではないかと考えられる。
 また、主人公である新米警察官・川合麻衣が成長していく姿も本作の見所である。一話の時点では警察官を辞めようとしていた川合が藤との出会いによって徐々に変わっていき、逞しくなっていく姿には心を打たれる。

4.TOYKO MER ~走る緊急救命室~(ドラマ)
脚本:黒岩勉

 東京都知事の赤塚梓の命によって、救命救急のプロフェッショナルチーム「TOYKO MER」が新設された。“MER”とは、モバイル・エマージェンシー・ルームの略称である。TOYKO MERの医師達には重大事故や災害、事件の現場に赴き、負傷者の命を救うという使命が課される。
 驚異的な救命技術を持つ医師・喜多見幸太がリーダーとなり、危険な現場において命を巡るTOYKO MERの闘いが描かれていく。

 本作は、新設された救命救急のプロフェッショナルチーム「TOYKO MER」を題材にした医療ドラマである。重大事故や災害等、喜多見達は毎回困難で危険な状況に陥っている。現場の様子が非常にリアルに描かれるため没入感があり、最後にハッピーエンドになることが予想できていてもハラハラさせられる作品である。
 本作は何があっても全力で人命を救助しに行くといったスタンスが貫かれていた作品であった。例え負傷者が犯罪者であろうと、身の危険を冒しても救命活動にあたる医師達の姿は胸を打つものがある。また本作ではTOYKO MERのメンバー一人一人の成長が丁寧に描かれていたため、キャラクターがしっかりと掘り下げられている点が良かった。

5.死神坊ちゃんと黒メイド(アニメ)
原作:イノウエ
監督:山川吉樹

 貴族の坊ちゃんは、五歳の時に魔女に呪いをかけられてしまった。そのことにより、彼は触れた生き物を全て死なせてしまう体質になってしまう。周囲から恐れられて拒絶されるようになってしまった坊ちゃんは、家族と離れて森の奥にある別邸で暮らすことになってしまった。
 そんな坊ちゃんの悩みの種は、彼に仕えるメイドの少女・アリスが日常的に仕掛けてくる逆セクハラである。坊ちゃんとアリスはお互いに惹かれ合っているものの、手を繋ぐことさえ許されない……。触れ合うことのできない二人の純愛を描いたラブコメディである。

 「触れた生き物を全て死なせてしまう」という設定の斬新さが目を引く作品である。恐ろしい設定であるものの、本作は柔らかい作風になっている点が大きな魅力である。本作では温かい純愛が描かれており、その上登場するキャラクター達は皆人柄が良いため優しい気持ちで視聴することができるのだ。しかし心温まるエピソードの中に時折切なさが影を落としており、坊ちゃんの呪いにまつわる謎が徐々に明かされるシリアスな展開も描かれていくため、程よくメリハリが付いている作品だと言える。
 また坊ちゃんとアリスは、皮肉なことに呪いのお陰で共に暮らすことができている。二人の間には身分差があるため、もし坊ちゃんに呪いがかかっていなかったら二人は一緒にいることができなかったのである。そのため呪いは二人を引き裂くものであるのと同時に引き合わせる存在でもあったという、複雑な立ち位置にいるという点が非常に面白いと感じた。
 また、本作は3DCGによるアニメーション作品である点が大きな特徴である。進歩したCG技術やキャラクター達を演じる声優陣の高い演技力によって、3DCG作品特有の違和感が軽減されていた点に驚かされた。

6.名探偵コナン 犯人の犯沢さん 1~6巻(漫画)
作者:かんばまゆこ、青山剛昌

 米花町は、世界トップレベルの事件数が発生する犯罪都市である。この街にやって来た謎の人物の名前は、犯人の犯沢さん(仮名)。彼は標的を殺すために上京してきたのだと言う……。
 『名探偵コナン』に登場する全身黒タイツのようなビジュアルの「犯人」を主役に据えた、コナンスピンオフ漫画。

 特徴的なビジュアルの「犯人」が主役となっている、『名探偵コナン』のスピンオフ作品。本作は殺人を計画する「未来の犯人」の物語と言いつつも、実際は彼の何気ない日常を描いたギャグマンガとなっている点が魅力である。犯沢さんは田舎者で比較的良心を持った人物であり、愛嬌があるため憎めないキャラクターとなっている。治安の悪い米花町の中で都会での暮らしやアルバイトに奮闘したり、米花町の人々に振り回されていく犯沢さんは、悪役のポジションにいるはずなのに応援したくなってしまうような存在である。そういった点が本作の面白い所だと言えるのではないだろうか。
 また本作には、『名探偵コナン』に関する小ネタが豊富に散りばめられている。そのため、スピンオフ元の作品と共に楽しむことができる作品となっているのだ。

7.アナと雪の女王2(映画)
監督:クリス・バック、ジェニファー・リー
脚本:ジェニファー・リー、アリソン・シュローダー

 舞台となるのは、前作『アナと雪の女王』から三年後。アナ、エルサ、クリストフ、オラフは共に幸せな日々を過ごしていた。ある日、エルサは不思議な歌声を耳にする。アナ達には聞こえないその歌声に導かれ、エルサはアナ、オラフ、クリストフと共に未知なる世界へ出発することに。
 その旅の中で姉妹の両親や、エルサが持つ「触れた物を凍りつかせ、雪や氷を作り出し操ることのできる魔法」の秘密が明かされていく……。

 映画『アナと雪の女王』の続編に当たる作品である。キャラクター達の掛け合いや姉妹愛等といった本作の良さをしっかりと描きながら、前作で明かされなかったエルサが持つ魔法の謎を主軸とした物語が紡がれていた。エルサの魔法には想像以上に壮大な設定があり、さらに姉妹の先祖等といった様々な要素が関わっていたため非常に見応えのあるストーリーとなっていた。
 本作は最終的にアナとエルサが別々の場所で暮らす結末になるため、少し切ないラストであるように感じた。しかしお互いが自分の役割を果たすことができる道を見つけ、自立していく姿が描かれた本作の結末は、幸せになった姉妹のその後を描いた物語として相応しいものであったのではないかと私は考える。
 また、本作は美麗な映像や豊富な楽曲も魅力的であったと言えるだろう。氷や水等といった自然物が美しく表現された映像の中で、様々なテイストの歌が次々と披露されていったため、映像と音楽を両方楽しむことが可能となっていた。

8.葬送のフリーレン(漫画)
原作:山田鐘人
作画:アベツカサ

 フリーレンは、魔王を倒した勇者一行の魔法使い。彼女はエルフで長生きであるため、他の三人とは時間の感覚等が異なっている。
 冒険を終えて仲間達と別れてから50年後、勇者一行の一人であったヒンメルが亡くなってしまう。フリーレンは、なぜ自分が彼の死をこんなに悲しんでいるのかが分からず困惑する。涙を流しながらヒンメルのことをもっと知ろうと思わなかったことを後悔したフリーレンは、人間を知るための旅に出ることに……。
 魔王を倒す冒険を終えた所から始まる、後日譚ファンタジー。

 本作は勇者一行が魔王を倒す話ではなく、その後日譚となっている点が特徴的である。エルフであるフリーレンは人間よりも寿命が長いため時間の感覚が異なっており、少しドライな一面がある。しかしフリーレンの旅の中では、度々ヒンメル達との冒険の回想が挿入されるのである。このことから、フリーレンにとってヒンメル達と過ごした日々は短いものであったけれど非常に大切な時間であり、彼女に多大な影響を与えたものであったことが分かるのだ。ヒンメル達との冒険を思い出しながら新たな冒険をしていく中で少しずつ変化していくフリーレンの物語は、時に切なく寂しい雰囲気を纏いながらも心温まるストーリーとなっていた。
 また本作は一話一話の密度が濃く、それぞれにしっかりとメッセージが込められている。そのため、読了後に高い満足感が得られる作品だと言えるのではないだろうか。

9.日本沈没-希望の人-(ドラマ)
原作:小松左京
脚本:橋本裕志

 舞台となるのは、2023年の東京。東山総理は、世良教授の元「COMS<コムス>」事業のさらなる推進を表明した。東山総理によって発足された、各省庁の優秀な若手官僚達を集めた組織「日本未来推進会議」のメンバーの一人に、環境省の天海啓示も選出されていた。天海は自身の提案を通そうと、東山総理や里城副総理、さらにはその両者に顔が利く生島誠に近づいていく。しかしそんな折に、日本地球物理学界の異端児・田所雄介教授によってネット上に関東沈没へ警鐘を鳴らす内容の記事が載ったのであった……。

 日本列島の沈没という架空の災害を題材とした作品である。本作の魅力は、未曾有の危機に直面した際でも未来に希望を見出そうとする人々の奮闘にあるのではないかと考えられる。「日本が沈没する」というのはあくまで予言であるため、必ず起こる災害であるとは言い切れない。そのため本作では、人々を動かして対策を進めていくことが非常に困難な状況が描かれていく。しかし、それでも諦めずに立ち向かおうとする天海達の姿には胸を打たれるものがあった。
 また、本作で描かれるのは政治家等といった国家の中核となる人々だけではない。政治家に近い立場ではなくても自分にできることを探して行動に移していく記者や、日本沈没を前にして避難を強いられる人々の心情等、様々な立場の人間が描かれていくことが本作の面白い点であると私は考える。

10.鬼滅の刃 遊郭編(アニメ)
原作:吾峠呼世晴
監督:外崎春雄

 鬼殺隊の剣士である炭治郎・善逸・伊之助は無限列車での任務を終え、蝶屋敷で療養生活を送っていた。そんな折に炭治郎は、「任務のために女性の隊員が必要だ」と言ってアオイ達を連れて行こうとする音柱・宇随天元に出会う。アオイ達の代わりに任務につくことにした炭治郎、善逸、伊之助は、宇随と共に鬼が巣くう吉原遊郭に向かうことになった。

 大きな話題を呼んだ作品『鬼滅の刃』の二期にあたる作品である。鬼のバックグラウンドまで描かれた感情移入しやすいストーリーや独特なギャグシーン等、『鬼滅の刃』の持ち味がしっかりと盛り込まれていた作品に仕上がっていた。
 本作は、炭治郎達の成長を感じることのできる秀逸な構成となっていた点が非常に良かった。『鬼滅の刃 無限列車編』においては上弦の鬼に手も足も出なかった炭治郎・善逸・伊之助が、本作においては三人で協力して鬼の首を切ることができたため胸が熱くなる展開となっていたのである。そして、それと同時に上弦の鬼や柱の揺るぎない強さも感じることができたため、本作におけるキャラクター達のパワーバランスの描き方が見事であった。
 また、戦闘シーンでの作画も本作の大きな魅力である。攻撃によって放たれる様々なエフェクトやスピード感等、大迫力の戦闘には非常に圧倒された。
2022/03/16(水) 14:44 No.1833 EDIT DEL
2年 高橋 RES
春休み課題11〜20

11.「takt op.Destiny」(アニメ)
原作:DeNA、広井王子 制作:MAPPA、MADHOUSE 監督:伊藤祐毅

 舞台は音楽が失われてしまった世界。突如空から降ってきた隕石とそこから生まれた音楽に反応し暴れる怪物「D2」による被害を免れるため、人々は音楽を禁忌として過ごしてきた。そんな「D2」の脅威に対抗する存在として、音楽を力とする少女「ムジカート」と彼女たちを指揮する「コンダクター」が現れる。主人公のタクトも、『運命』と呼ばれるムジカートと行動を共にしていた。

 本作はメディアミックス作品であり、物語は後に配信されるアプリゲームの前日譚のようなものとなっている。そのために物語は中でも重要であろう真実が伏せられたまま終わることとなる。しかしその分主人公のタクトとその相棒である運命との関係性を丁寧に描いており、かつタクトの目的の一つが果たされる形となっているために、謎は残るものの満足感のある作品となっている。しかし終盤の展開は些か急なものとなっていたのでその点は残念だった。

12.「エスター」(映画)
原案:アレックス・メイス 監督:ジャウム・コレット=セラ 脚本:デヴィット・レスリー・ジョンソン

 かつて三人目の子どもが流産してしまったケイト・コールマンとその夫のジョンの二人は孤児院にいた少女エスターを養子として引き取る。最初はちょっとした変わり者と周囲から思われていたエスターだが、コールマン家で暮らすうちに異様ともいえる姿も見え始める。孤児院にいるシスター・アビゲイルにエスターについて聞いてみたところ、思いもよらない事実が明らかになり……

 本作は母親のケイトと養子のエスターを中心に繰り広げられるサスペンスホラーであり、他のホラー作品に比べてカメラワークといったホラー要素に結びつく部分のクオリティが高い作品だった。特にエスターを演じるイザベル・ファーマンの演技が凄まじく、彼女の表情だけでも十分に楽しめる作品だと言えるだろう。視聴者は物語の序盤からエスターが危険な人物であるとわかるのだが、エスターの詳細な部分は終盤までわからなくなっている。これもエスターの怖さを際立たせる要因となっており、ホラー作品としての魅力を高めているのだと私は考える。

13.「ブルーピリオド」(アニメ)
原作:山口つばさ 制作:Seven Arcs 総監督:舛成孝二

 不良優等生である矢口八虎は、ある日学校の美術室で見た一枚の絵とその後の美術の授業での描画の経験を通して美術に強い関心を抱き、美術部に入部する。そんな八虎は美術部での活動の中で絵を描くことの魅力に惹き込まれ、美術大学への入学を目指すこととなる。しかし裕福な家庭ではない八虎が美術大学に通うには、他よりも厳しい東京藝術大学に合格しなければならなかった。

 本作は美術を主題に、登場人物の悩みや成長を丁寧に描いた作品となっている。特に印象に残った登場人物は主人公の八虎と、同級生の鮎川龍二だ。八虎は絵を描く中で自身と向き合うようになり、後味の良い形で物語が終わる。しかし龍二はそんな八虎と違って後味が良いとは言えない終わり方を迎えるのだ。龍二は自分を認めてくれない人々との関係を断つという選択をする。この選択は龍二の境遇を考えるとしょうがないとも思えるのだが、八虎と比較すると良い結末なのだとは言い難い。このような対比があることによって本作の物語は深みが生まれており、同時に考えさせられる作品でもあった。

14.「無職転生~異世界行ったら本気出す~」(アニメ)
原作:理不尽な孫の手 制作:スタジオバインド 監督:岡本学

 学生の時のある出来事をきっかけに他人と関わろうとせず部屋に引きこもっていた34歳の男性主人公。そんな彼は交通事故によって死亡してしまった。しかし、気づけば彼は記憶が残っているまま異世界にて赤ん坊として転生していることが明らかとなる。そんな人物、ルーデウス・グレイラットは前世の後悔を糧に「本気で生きよう」と決意し異世界での生活を試みていく。

 本作は物語の展開と映像が素晴らしく、アニメとしてのクオリティの高い作品だった。主人公であるルーデウスが過去や他者との向き合い方において成長していく姿に焦点を当てつつ、彼に関係する出来事だけでなく他のキャラクターの成長なども丁寧に描かれている。またオープニングの映像では毎回その話のプロローグのような形で映像が準備されており、アニメ化の都合上で本編では省略しなければならない部分をOPで補完する形となっている。このような工夫から、本作は詰め込み過ぎな印象を一切与えずに物語を丁寧に展開することが可能となっており、原作を読んでいない人でも楽しみやすい作品だと私は考える。

15.「呪術廻戦0」(映画)
原作:芥見下々 制作:MAPPA 監督:朴性厚

 幼い頃に幼馴染の折本里香が交通事故によって目の前で死亡し、それから怨霊となった彼女に憑かれてしまった乙骨憂太。そんな彼は五条悟と呼ばれる呪術師に勧められて呪術高専と呼ばれる呪術専門学校に通うこととなる。呪術高専の仲間たちと暮らす中で、憂太は里香の呪いを解くという決意をするのだが、そんな彼にある脅威が迫っていた。

 本作は『呪術廻戦』という漫画シリーズの前日譚『東京都立呪術高等専門学校』の劇場アニメである。この作品の魅力は、『呪術廻戦』に触れたことのある人、ない人のどちらでも楽しむことができるという点である。物語自体は綺麗に完結するため本作だけで楽しむことができるのだが、戦闘シーンにて『呪術廻戦』でのみ登場していたキャラクターたちが活躍する場面もあるためシリーズファンの人でも楽しむことができる作品となっている。加えて作画のクオリティも高いことから戦闘シーンだけでも十分楽しめることが可能だ。しかしストーリーを丁寧に描く分、戦闘シーンはハイペースで展開されるため注意が必要である。

16.「リメンバーミー」(映画)
制作:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、ピクサー・アニメーション・スタジオ 監督:リー・アンクリッチ 脚本:Adrian Molina

 家族に猛反対される中でミュージシャンを目指す少年、ミゲル・リヴェラは年に一度ある先祖が家族の元を訪れると言い伝えられている死者の日にある事故を起こす。それは伝説のミュージシャンで自身の高祖父だと思われるエルネスト・デラクルスのギターを借りようとしたところ、死者が骸骨の姿で見えるようになり、生者に触れられなくなってしまった。元に戻るには、誰かから許しを得ることが必要と言われるミゲルだったが……

 本作は家族を中心に生と死を扱った作品となっており、物語の大半は死者の世界で展開される。死という重いテーマを前面に出した作品だが、ピクサー特有の柔らかいタッチのキャラクターと色彩溢れる世界観から子どもでも楽しみやすい作品となっている。また子ども向けでありつつもストーリーは平坦でなく、大きな伏線回収もいくつかあるため大人でも楽しむことができると私は考える。


17.「FIRE EMBLEM 風花雪月」(ゲーム)
開発元:インテリジェントシステムズ・コーエーテクモゲームス プロデューサー:樋口雅大・山上仁志

 父と共に傭兵として活動していた主人公は、ルミール村付近で襲われていた士官学校の生徒を救ったことをきっかけに士官学校の教員として生徒たちを導くこととなる。生徒たちと親交を深める一方で、士官学校と騎士団を擁するガルグ=マク大修道院にはある脅威が迫っていたのだった。

 本作は主人公が教師として活動する期間と、その五年後に生徒の所属する国の一員として戦争に参加する期間の二つを丁寧に描いた作品となっている。また物語は自身が担任となるクラスや生徒によって変化し、それによって物語の中で明らかになる事実も違うためボリューム感のある作品だ。加えて物語の内容は戦争や人種差別、信仰といったものとそれに関する問題についてを取り上げているため、まるで小説を読んでいるような感覚をプレイヤーは持つのではないだろうか。

18.「ミスト」
原作:スティーブン・キング 監督・脚本:フランク・ダラボン

 激しい嵐によって自宅の窓やボート小屋が壊れてしまったデヴィッド・ドレイトンとその息子のビリーはスーパーへ向かう。買い物をしていた二人だったが突如街にサイレンが響き渡り、次第にスーパーの外は霧に包まれてしまう。霧の中からスーパーに入ってきた客は「霧の中に何かがいる」と叫び、それを聞いたスーパーの中にいた人々は店内に閉じこもることとなった。

 本作はSFホラー作品であり、謎の生物が人々を襲うというシチュエーションが展開されるのだが、視聴者は謎の生物よりも人間の恐ろしさを強く感じるだろう。スーパーにいる人々は状況の把握が難しい、もしくは改善されない中で徐々に狂気に蝕まれていく。次第に一人の狂信者に影響される人も現れ、人同士の争いが展開されていくのだ。本作ではこのスーパーの空気感がじわじわと変化していく過程が丁寧に描かれるため、視聴者は敵しかいない状況にいるような感覚を感じ取れるのではないだろうか。

19.「イカゲーム」(ドラマ)
原作・脚本・監督:ファン・ドンヒョク

 バツイチで借金もしている男ソン・ギフンは、年老いた母親と共に貧乏な暮らしをしていた。そんなギフンはスーツを纏った男性に声を掛けられ、上手くいけば大金を得ることができるという謎のゲームに参加することを決意する。しかしそのゲームは、自身の生死をかけた恐ろしいものだった。

 本作はデスゲームを取り扱った作品となっている。人の死が多く描写されるためグロテスクなシーンも多いのだが、ゲームが開催される場所やゲームの内容は子供向けのものとなっており、この空間と状況のちぐはぐさが異様な空気感を作り出している。またゲームの参加者の中でも同じくちぐはぐな部分が見受けられ、生き抜くために大金を得ようとする者もいる一方で興味本位で参加する者もいる。これらのようなギャップが作品の面白さを引き立てているのではないだろうか。

20.『6時間後に君は死ぬ』(小説)
著者:高野和明

 非日常の未来が見えてしまう青年の山葉圭史は、様々な女性たちの未来を見てしまったことをきっかけに彼女たちに介入していくこととなる。彼女たちに待ち受けるのは恐ろしい未来か、暖かな行先か。

 本作は山葉圭史を主人公にした連作小説となっており、6つのエピソードが収録されている。どれも誰かの未来に圭史が関わっていく物語なのだが、エピソードごとのテーマや雰囲気は大きく異なっており一つのエピソードだけでも、作品全体を通してでも楽しむことのできる作品となっている。またどのエピソードでも共通して主人公の心情をとても丁寧に表現しているため、エピソードが変わっても違和感なく読み進められるのがこの作品の魅力だろう。ちなみに私の場合はエピソードの並びが好きなので、作品全体を通して楽しむ方がおすすめだ。
2022/03/15(火) 14:08 No.1832 EDIT DEL
2年 高橋 RES
春休み課題1〜10

1.「マスカレード・ナイト」(映画)
原作:東野圭吾 監督:鈴木雅之 脚本:岡田道尚

 ある日、警察の元に一つの密告状が届く。そこには数日前にあった殺人事件の犯人がホテル・コルテシア東京にて大晦日に開催されるパーティ「マスカレード・ナイト」を訪れるというものだった。この情報により警察官たちは再びホテル・コルテシアに潜入捜査することとなる。果たして彼らは500人にも及ぶパーティの参加者の中から殺人犯を見つけることができるのか。

 本作はミステリー小説の映画化作品となっており、その影響で情報や展開が詰め込まれている印象があった。時間制限と数多くの容疑者が存在する中での捜査という状況下を表現しているとも言えるが、私はミステリー作品はじっくりと考えながら鑑賞したいタイプなので今回のストーリー構成はあまり合わなかった。作品内でピックアップされる容疑者が多いと感じたため、もう少し絞られていると観客もより楽しめるのではないだろうか。
 しかしカメラワークや演技といった演出面は素晴らしく、シリアスな場面とコミカルな場面の切り替えも綺麗に出来ているので飽きることなく鑑賞できた。

2.「うらみちお兄さん」(アニメ)
原作:久世岳 制作:スタジオブラン 監督:長山延好

 MHKと呼ばれる放送局で放送されている「ママンとトゥギャザー」というテレビ番組。この番組では明るく優しいお兄さん、お姉さんが子どもたちと交流する。「ママンとトゥギャザー」で体操のお兄さんとして出演している表田裏道は基本爽やかな青年だが、時に社会で活動する中で生まれたネガティブな感情によって裏の顔が現れる。

 本作は「ママンとトゥギャザー」に関わる人物たちが直面する世知辛い現実をギャグとして表現した作品である。ポップな絵柄に反して、描かれるのは大人が経験するであろう理不尽な出来事といった社会の闇といったものだ。またこの作品では「ママンとトゥギャザー」での大人と子ども、演者と監督といったネガティブな人物とポジティブな人物を一つのカットに同時に映すような工夫がされている。作品の絵柄とテーマとの間にある大きなギャップとカットの工夫によって、大人の持つ「闇」が際立ちギャグとして通じるようになっていると私は考える。
 
3.「死神坊ちゃんと黒メイド」(アニメ)
原作:イノウエ 制作:J.C.STAFF 監督:山川吉樹

 とある森の奥にある館に住む少年、坊ちゃん。彼は貴族という立場でありながら魔女に触れたものを死なせてしまうという呪いをかけられたことによって、家族から拒絶され館でひっそりと暮らしていた。そんな彼の心の支えは坊ちゃんに仕えるメイド、アリスの存在である。しかし坊ちゃんはアリスに対して、ある悩みを持っていた。それは、アリスが坊ちゃんに行う逆セクハラである。

 本作は3DCGを用いたラブコメアニメ作品となっている。キャラクターを3DCGにする作品は背景の絵柄や色合いと合わずにキャラクターが浮いてしまうものもあるが、この作品ではそのような違和感がほとんどなく、物語に集中できる。作品の内容は恋愛であるにも関わらず、本作は主人公が持つ呪いから主人公とヒロインが触れ合うシーンが存在しないという特徴がある。この触れそうで触れない距離感は3DCGの縁どられたキャラクターによって強調されており、また二人が両想いであることは早いうちから知ることができるために視聴者はもどかしさを強く感じるだろう。しかしその分、触れ合うことができないという状況でありながらも彼らが言葉や行動によって心を通わすシーンには強く感動できる。よって本作は作品の持つ絶妙な距離感を3DCGによって見事に表現した作品だと私は考える。

4.「異世界食堂2」(アニメ)
原作:犬塚惇平 制作:SILVER LINK. 監督:神保昌登

 とある商店街にある洋食店「洋食のねこや」は、土曜日のみ扉が異世界と繋がってしまう店である。そんな「洋食のねこや」は偶然訪れた異世界の人々の間で人気となり、いつしか「異世界食堂」と称されるようになる。

 本作では異世界食堂という場を通じて、料理の魅力と客の反応を存分に楽しむことができる。物語に大筋はあまりなく基本的に一話完結型の群像劇の形をとっているため、一期を見ていない人や見逃した回がある人でも楽しむことができるだろう。ただし展開される物語は客が料理を食べ、料理の魅力を解説し、食事を通して客の心情などが変化するという形に固定されている。物語のパターンがしっかりと決まっているために飽きてしまう人もいると思われる。

5.「東京リベンジャーズ」(アニメ)
原作:和久井健 制作:ライデンフィルム 監督:初見浩一

 フリーターとして最底辺の生活を送っていた花垣武道は、ある日中学時代の恋人だった橘日向が東京卍曾の抗争に巻き込まれて亡くなったことをニュースで知る。その翌日、何者かによって線路に突き飛ばされ電車に轢かれたと思われた武道だが、気づいたときには自身が中学生だった十二年前にタイムリープしていた。武道は元恋人の日向を救うべく、タイムリープを利用することを決意する。

 本作はタイムリープを多用した作品となっている。この作品には過去と現代を何度も行き来するという特徴があるのだが、このタイムリープには戻ることができるタイミングなどに制限があることから目的を達成する上での時間制限が発生し視聴者は飽きることなくストーリーを楽しむことができる。しかし暴走族を題材にした作品であることから登場人物が多く、その中で重要な人物も十人近くいるため人物の把握が難しいという点がある。主人公以外の人物も過去回想などが丁寧に描かれ掘り下げられるものの、一週間ごとに見ると混乱することもあったため、この作品を見る場合はなるべく短期間で見ることを勧める。

6.『キリン』(小説)
著者:山田悠介

 皆川厚子は優秀な子どもを求めて天才である男性のみを取り扱う精子バンクを利用し、秀人と麒麟という二人の子どもを産む。始めは非常に優秀だった二人だが弟の麒麟はある時から勉学がうまくできなくなり、それを境に厚子は麒麟を見限り秀人のみに愛情を与えることとなる。遂には、厚子が利用した精子バンクによって誕生したものの失敗作であった子が集う天才養成学校という施設にて生活することとなった。

 本作は優生学を取り扱った作品であり、優れた子を求める母親の姿から人間の恐ろしさを強く感じさせる作品となっている。特に母親視点で物語が展開される場面では彼女の心情が生々しく表現され、かつ著者である山田悠介が得意とする緊迫感溢れる世界の描写からホラーの要素が取り入れられており非常に面白かった。また親として子をどう見るかということに焦点を当てて物語が展開されるので自身が親になる、またはなってからといった時に読み返してみたいと思う。

7.「劇場版ソードアート・オンラインーオーディナル・スケールー」(映画)
原作:川原礫 監督:A-1 Pictures 脚本:伊藤智彦

 2026年。世界では新たにARマシンである「オーグマー」が人気を集め、そのマシン専用のMMORPGである「オーディナル・スケール(OS)」もプレーヤ―が続々と増えている。主人公であるキリトのSAO時からの仲間たちもOSを楽しんでいる中、キリト自身はあまり関心を持てていなかった。しかしOSにてSAOでのボスモンスターが現れるという噂から、キリトもこのゲームと関わっていくこととなる。

 本作はSAOシリーズの一つなのだが、ストーリーは原作未収録のものとなっている。ただし本作はSAOから生還した後の物語となっており、SAOでのキリト達の行動を前提に展開されていくため、ファン向けの作品とも言える。SAOに触れたことのない人にはおすすめできない。
 ストーリー以外の面で考えると本作は音楽に力が入っており、戦闘中の盛り上げやキャラクターの心理描写の変化の用途として歌が多用されている。そんな挿入歌の曲調は物語の状況だけでなくカメラワークやキャラクターの動きにも連動するようなシーンもあったため挿入歌は作品の表現の幅を広げるものであり、尚且つ魅力の一つと言えるだろう。

8.「吸血鬼すぐ死ぬ」(アニメ)
原作:盆ノ木至 制作:マッドハウス 監督:神志那弘志

 吸血鬼退治人であるロナルドは、ある日吸血鬼の住む館に向かって帰ってこない少年を救出するためにその館へと向かう。しかし館にいたのはゲームを楽しむ少年と、すぐ復活するもののその分死にやすくすぐ灰になってしまう吸血鬼、ドラルクだった。ロナルドは少年を家に帰ろうと説得する中でちょっとした不注意から館を破壊してしまう。これにより住居を失ったドラルクは、ロナルドの事務所に居候することとなった。

 本作は死にやすい吸血鬼であるドラルクと基本常識人であるロナルドを中心としたコメディ作品であり、短編のエピソードをいくつか組み合わせて一話が構成されている。ギャグの内容には下ネタが多いので見る人の好みによって評価が変わると思われるが、会話のテンポや緩急がとてもよく耳だけでも楽しむことのできる作品だと私は考える。加えて映像もクオリティが高くポップな絵柄でありつつもキャラクターの動きはとても丁寧に描写されているため楽しむことができるので、三十分がすぐに感じられる作品ではないだろうか。

9.「古見さんはコミュ症です。」(アニメ)
原作:オダトモヒト 制作:OLM TEAM KOJIMA 総監督:渡辺歩

 私立伊丹高校に入学した只野仁人は、ひょんなことからクラスメイトである古見硝子と関わることとなる。彼女は容姿端麗で入学してすぐにクラスのマドンナ的存在となるのだが、実は極度のコミュ症であった。その事実を知った只野は、彼女の友達を100人作るという夢を叶えるため協力することを決意する。

 本作は基本1話が複数のエピソードから構成されている学園コメディ作品である。学園を舞台とするため登場人物が多い作品なのだがそれぞれのキャラクターの個性がかなり強く、また名前もその個性を示すようなものであることから混乱することなく見ることが可能となっている。加えて周りの個性の強さから、作品には珍しい個性の薄い主人公である只野もしっかりと目立つようになっておりキャラクターたちのバランスが良い作品と言える。
 また短いコメディ調のエピソードで構成される本作だが、キャラクターの心情の変化やそれによる成長も描かれるので感動もできる作品となっている。

10.「先輩がうざい後輩の話」(アニメ)
原作:しろまんた 制作:動画工房 監督:伊藤良太

 糸巻商事の営業部で働く入社二年目の五十嵐双葉は日々仕事に励んでいる。そんな彼女の教育係として共に活動することが多いのは、面倒見のいい武田先輩だった。双葉は自分を後輩として面倒を見ようとする武田をうざいと思いながらも、一方で武田に惹かれている部分もあって…

 本作は社会人の日常と彼らの間で繰り広げられる恋愛模様を描いたラブコメ作品となっている。また描かれる恋愛は主人公の双葉と武田という先輩後輩の関係の中でのものだけでなく、同期の関係である桜井と風間との間でのものも含まれている。この二つの恋愛は年齢差があるかないかの違いだけでなくその進み具合なども違うため、視聴者は二種の恋愛比較し楽しむことも可能だ。また日常を描いた作品であるものの、キャラクターの成長がじっくりと描かれるだけでなく会話のテンポも良いことから、飽きることなく作品を楽しめるだろう。
2022/03/15(火) 14:07 No.1831 EDIT DEL
横田 RES
1回で載せきれなかったため、21~30までを再掲します。

21『なぜ宮崎駿はオタクを批判するのか』(書籍)
荻原真/国書刊行会/2011年

〈あらすじ〉
 なぜパズーはハトを飼っていたのか。なぜムスカは手帳に頼るのか。なぜソフィーは帽子屋なのか。なぜサリマンは温室のなかにいるのか―宮崎アニメーションに見られる対比、対立の論理をあざやかに読み解き、アシタカがサンに投げかけた言葉「共に生きよう」の意味の広がりを展望する。

 本書は書き出しでまず、『ハウルの動く城』でサリマン先生が温室の中にいる訳を、ハウルの生き方と比較して筋道を立てて見事に解説しており、気が付いたときにはぐいぐいと引き込まれていた。その後も『天空の城ラピュタ』でのムスカとシータの伝承の仕方の比較を皮切りとしてジブリの他作品『千と千尋の神隠し』の湯婆婆や『もののけ姫』のジコ坊などを「対比」という視点から詳しく語っていた。
 また『風の谷のナウシカ』、『もののけ姫』、さらには『未来少年コナン』や『パンダコパンダ』なども加わり、「共生」と「共食」について論じられており非常に勉強になった。そしてこの流れからなんとなく共生と共食はこんなにも大切であるから、これらが欠如している「オタク」はダメだよね、ならないようにしなくてはいけないよね、という題名にも繋がるお話になるわけだが私はこの部分はイマイチ説得力がないように感じた。この書籍を作者が執筆していた時期が今よりも数年前ということも加味していると思うが、オタクを協調性がなく社交性もないと決めつけていて、それは一概にも全オタクに当てはまるわけではないのにと感じた。さらには題名としている割にはオタク批判についてあまりページが割かれておらず、おまけ感が否めなかった。私自身パッと目を惹くタイトルが気になり、手に取ったので、もう少し内容と題名の整合性が欲しいと感じてしまった。


22『ユージニア』(小説)
恩田陸/角川文庫/2008年

〈あらすじ〉
 あの夏、白い百日紅の記憶。死の使いは、静かに街を滅ぼした。旧家で起きた大量毒殺事件。未解決となったあの事件、真相はいったいどこにあったのだろうか。数々の証言で浮かび上がる、犯人の像はーー。日本推理作家協会賞受賞の傑作ミステリー。

 新しいタイプのミステリーに出会ってしまった。早い段階で犯人らしき人物は提示されているにもかかわらず、読み進めるほどに不確かかつ不安にさせられた。証言をするのも所詮人間であるので知らず知らずのうちに虚構も混ざってしまうのだと思う。またこの証人(語り手)は何人もいてコロコロと変わり、さらには時系列も一方向ではないのだがそれでも読者にわからせる組み立て方にも感服した。(関係性が複雑になるとすぐメモを取りたがる私でも最後まで紙に書かずに済んだ)
 事件の真相を追うストーリーであるのでジャンルとしては「ミステリー」に分類されるのであろうが、恩田陸の持ち味であるホラー要素も十二分に加わり、厚みのある内容となっている。


23『ハイキュー!! TO THE TOP』(アニメ)
佐藤雅子(監督)/古舘春一(原作)/2020年

〈あらすじ〉
 春の高校バレー宮城県予選、激闘を制し悲願の全国大会出場を決めた烏野高校排球部。全国大会を控えた彼らのもとに、影山の全日本ユース強化合宿招集の報せが舞い込んだ。さらに月島にも宮城県1年生選抜強化合宿への招集がかかる。同じ1年生との差に焦る日向は、宮城県1年生選抜強化合宿に押しかけるも……!?
全国大会本番に向け、日向、影山、そして烏野高校排球部の更なる挑戦が始まる⸺!!
                                (公式サイトより)

 原作の方を何度も読み返していたので内容は既に頭に入っており、漫画にはないアニメならではの表現に目を向ける余裕が生まれた。まず音楽の使い方がとても効果的だと感じた。サウンドトラックにはこれまでもアニメ『ハイキュー!!』シリーズを手掛けてきた林ゆうき氏と橘麻美氏がクレジットに記されていたが、彼らの手掛けた曲を聴くとどのような場面であるかが瞬時にして思い出せるのであるから驚きである。もう少し詳しく見ていくと、灼熱した試合中予想外の展開の場面ではあえて音楽をぷっつりと止めることによる無音の演出、対戦校の稲荷崎高校に当てている曲はジャズのような雰囲気で即興性と不安定さがまさに“最強の挑戦者”を音楽でも体現していると感じた。(ちなみに前クールでの白鳥沢はそれに引き換えどっしりとした雰囲気で“絶対王者”ということが伝わってきた。)
 漫画にはない、アニメならではの画面をめいいっぱいに使った工夫もいくつか見つけることができた。対稲荷崎戦ファイナルセット、烏野のマッチポイントの場面では「ここで決める」という意志の強さのため全体的にリズムが速くなっていく。このシーンでは画面がぼんやりと、だが確実に黒く縁どられており、視野が狭くなっていることや相手だけでなく自分たちの首も締まっていることが伝わってきた。その直後の日向による高いファーストタッチの場面はこれまでと一変し、体育館のライトが反射した全体的に光溢れるキラキラとした画面作りがなされていた。
 次の対音駒戦、“ゴミ捨て場の決戦”でも漫画とアニメの相違に少しでも気が付けるよう、原作を読み込んでおきたい。


24『日曜日たち』(小説)
吉田修一/講談社文庫/2006年

〈あらすじ〉
 ありふれた「日曜日」。だが、5人の若者にとっては、特別な日曜日だった。都会の喧騒と鬱屈した毎日のなかで、疲れながら、もがきながらも生きていく男女の姿を描いた5つのストーリー。そしてそれぞれの過去をつなぐ不思議な小学生の兄弟。ふたりに秘められた真実とは。絡みあい交錯しあう、連作短編集の傑作。

 『日曜日たち』を読み終え、作品ごとに顔をコロコロと巧みに変える吉田修一という作者自身をもっと知りたいと思った。と言うのも、私は彼の小説を『怒り』と『横道世之介』、『パレード』だけ過去に読んだことがあるのだが、それぞれ作風が違う。簡単に説明すると『怒り』は夫婦殺害の指名手配犯が実は自分と関わりのある人物ではないのか、と疑問を抱いてしまうことで崩れていく全国各地数人の日常を描いており、常にハラハラと心落ち着かない気分にさせられる。『横道世之介』は大学進学とともに上京してきた一人の青年、横道世之介の日々をゆったりとしたテンポで描いた温かみのある長編である。『パレード』は都内の2LDKマンションで共同生活をする若い男女5人のそれぞれの視点から話が展開されるのだが、淡々と続いた何気ない日常生活が狂った最後の章は息をつく間もない。
 今回読んだ『日曜日たち』の内容は過去に読んだ3作品ともまた違うテイストだと感じた。さらには一見関りのないように思われる5つの短編が、小学生の兄弟によって最終的に繋がっているという見事な構成も目を惹いた。
ただ一つ共通点として挙げられるのが、彼の書く人物はリアリティーがあり、本当に実在する人物なのではないかと読者に錯覚を起こさせるということだ。日常生活を描いている場面では、実際にその人物の生活を覗き見して記録しているのではないかと思わせる。自粛生活が始まってからさして特別な毎日を送っているわけでもない自身の生活も、彼の手にかかればれっきとした物語に成り得るのではないかと思った。
 1人の小説家の特性や作風はだいたい3、4作品程読めば、今までは概ね掴めてきた。しかし吉田修一の場合は普段よりもまだ掴めていない気がする。次に手にする小説もまた違った表情を見せてくれると思うと楽しみだ。

 
25『死にがいを求めて生きているの』(小説)
朝井リョウ/中央公論新社/2019年

〈あらすじ〉
 植物状態のまま病院で眠る智也と、献身的に見守る雄介。二人の間に横たわる“歪な真実”とは?毎日の繰り返しに倦んだ看護師、クラスで浮かないよう立ち回る転校生、注目を浴びようともがく大学生、時代に取り残された中年ディレクター。交わるはずのない点と点が、智也と雄介をなぞる線になるとき、目隠しをされた“平成”という時代の闇が露わになる―“平成”を生きる若者たちが背負う自滅と祈りの物語。

 題名には「死にがい」とあるが、どちらかと言うと「生きがい」をテーマにした作品だと感じた。登場人物たちがまだ「死」を意識するには早い年齢であるからかもしれない。今回の作品もこれまでのものと例外なく身に覚えのある感情が多く、グサグサと心に刺さった。朝井リョウが若者から共感できると圧倒的な支持を得る理由としては彼自身が大学生、社会人の頃の感情を鮮明に覚えており、かつそれを当てはめるエピソードと言葉選びが絶妙であるからだと思う。(朝井リョウがもし社会人を経験せず、大学生からそのまま作家になっていればここまでのものは書けなかったのではないか)
 構成は朝井リョウ十八番の1章ごとに主観の人物が変わるものであった。人によって1つの事柄でも見え方や捉え方、考え方が違うというが醍醐味でもあり、恐ろしくもあると感じさせられた。話の順番も考えられており、例えば1章で親友というものは日常の風景をまるごと変えてくれるのだから大切だよな、と読者にしみじみと感じさせ、その直後の章で友達関係の脆さをダイレクトに突き付けてくる残酷さにはゾクッとした。
重たいタイトルの割には非常に読みやすい作品だと思うので、気負わずに手に取ってほしい。


26『ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ』(書籍)
スタジオジブリ、文春文庫(編)/2013年

〈あらすじ〉
 児童文学の系譜からみたラピュタの魅力とは?ドーラのようなイギリスの海賊はいたのか!?1986年公開の宮崎駿監督作品『天空の城ラピュタ』の奥行きを、森絵都、金原瑞人、夢枕獏、石田衣良、上橋菜穂子ら豪華執筆陣が読み解く。当時の制作現場の裏側からスタジオジブリ設立秘話まで、作品を十倍楽しく観るための決定本。

 あらすじにもある通り、有名な文筆家から語られる『天空の城ラピュタ』では新たな視点を得られることが多かった。また意外にものめり込んでしまったのが、理学博士や東京大学大学院総合文化研究科の教授などの専門家から語られる、少し特殊な『天空の城ラピュタ』である。当たり前だが自分の力だけでは到底思い至らないことを、彼らのフィルターを通して知ることができたのは大きい。その内容としては当時の英国の様子(特に子供に課せられた鉱山での重労働が衝撃的であった。重いものを運ぶため筋肉が部分的に異常に発達し、帰り道で倒れ意識不明になることもあるらしい)や、飛行石つまりは鉱物に焦点を当てるほか宮沢賢治とも絡み合わせて話がたちまち膨らんでいった。また久石譲や作画監督、原画担当などによる制作秘話も読みごたえがあった。
 印象に残ったのが宮崎駿の弟である至朗さんによって語られる宮崎駿である。宮崎監督の作品は色々と観てきているが、彼自身の生い立ちなどについては知らないことばかりであった。特に母親の存在が大きく、彼女は寝たきりであるにもかかわらず政治・経済から文化・芸術に至るまで高校生や大学生の息子と対等以上に議論ができたらしい。
 文藝春秋の『ジブリの教科書』はシリーズで他にも出ているようなので読んでみようと思う。


27『極主夫道1~6巻』(漫画)
おおのこうすけ/新潮社/2018年~

〈あらすじ〉
 その男、元・最凶ヤクザにして、今は最強主夫。元・最凶ヤクザが選んだのは、主夫としての道だった。話題の新鋭作家おおのこうすけがおくる、アットホーム任侠コメディ!

 何も考えずにただひたすら大口を開けて笑うことがここまでできる漫画であった。その笑いは、読む人を選ばない。“ギャグマンガ”と言うとゆるいタッチの物が圧倒的に多いと思うが、この漫画の場合は作者の高い画力にも注目である。その力強いタッチは元ヤクザである主人公の迫力を十二分に引き出している。またそれら画力のレベルの高さと、現在主夫である主人公の一つ一つの行動のギャップが大きな笑いを誘っている。
 私自身、コロナ禍で悶々としている時期にかなり助けられた作品であるので、「そういえば最近笑っていないな」、というような方は至急読んでみてもらいたい。


28『ハイキュー!!展』(展示会)
古舘春一(原作)

 2020年7月に堂々完結した『ハイキュー!!』を記念して開催された原画展に行ってきた。単行本で見るのとは比べ物にならないくらいの原画の“圧”に慄いた。それだけでなく、古舘先生の原稿の隅の方にある印刷には載らない部分の落書きや、極稀に「ここまでするのであれば最早一から描き直した方がよいのではないか」と思ってしまうほど修正液で何度も直された跡をまじまじと見ることができた。
 また、単体でも素晴らしい原画をさらに光らせている会場の“演出”にも圧倒された。高校毎でブースが設けられているのだが、原画の展示されている壁が伊達工業は鉄壁を、音駒は鳥籠をイメージして作られており、稲荷崎は大量の実物の提灯がぶら下げられており雰囲気がガラッと変わった。白鳥沢に至っては「このチームが主役の漫画であったかな」と錯覚を起こしそうになるくらい豪華なセットであった。もう少し掘り下げると、優に2メートルを超す大きなパネルが屏風のように連なっているのだが、そこには白鳥沢のスターティングメンバ―全員が1人ずつ描かれており、パネルの角度故だろうか、1人1人と目が合うようになっており“王者の風格”がひしひしと伝わってきた。これは近くで見ても勿論良いのだが、“引き”でも魅せており様々な視点で楽しめる仕掛けが凝らされていることに気が付いた。他にも天井部分からは横断幕などが吊り下げられており、空間の使い方が非常に上手だと感じた。左右だけでも手一杯であるのに上にも注目しなければいけなく、個人的には「目がいくつあっても足りない…」と思った。
 古舘先生の苦労、愛情、エネルギーなど全てが凝縮された原画がこの上なく素晴らしいことのみならず、会場の演出にも力が入っており、『ハイキュー!!』が沢山の人に愛されている作品であることを改めて感じた。 

29『もう一つの「バルス」』(書籍)
木原浩勝/講談社/2016年

〈あらすじ〉
あの名シーン「バルス」にはもう一つのアイデアが存在した。宮崎駿監督の姿を制作進行として間近で見続けた著者が『天空の城ラピュタ』誕生30年に初めて明かす名作アニメの創作秘話。ジブリファン、アニメファンだけでなく、多くの方にオススメしたい感動のノンフィクション!

 『天空の城ラピュタ』に制作進行として携わった木原浩勝氏による、当時の貴重な体験談が濃厚に描かれていた。今でこそ日本で知らない人はいないと言ってもよい「スタジオジブリ」の作品であるが、当時はまだ駆け出しで、人も金もそれから時間も足りていないギリギリの状態で回していたことが如実にわかる。
 著者や宮崎駿監督の仕事ぶりは勿論、他のアニメーターの方についてもかなり触れられている。その中でも自身は、原画頭として参加した金田伊功氏が印象に残った。(本来原画頭、という枠はないが、本作はクレジット部分にもしっかりと登場する)彼は宮崎駿監督からも絶大なる信頼を置かれていたことがうかがえる。実際のシーンとして、探鉱町での大乱闘や凧に乗ったシータとパズーが竜の巣を通過しラピュタに軟着陸するシーン、ゴリアテの攻撃で被弾するタイガーモス号などの場面は、金田氏に描いてもらうことを前提に、コンテを宮崎駿監督は作っていたらしい。独特な形状と飛び方でみる者を惹きつけるフラップターも、金田氏がデザインしたようだ。
 さらには宮崎駿監督が『天空の城ラピュタ』において、様々なルートを考えていたことが明らかになっている。最後の展開も2パターンあったらしく、採用されなかった方も非常に面白く、こちらも観てみたい気持ちが高まった。


30『アイドリッシュセブン』(アプリゲーム)
種村有菜(キャラクター原案)/都志見文太(シナリオ)/G2studio(開発)/バンダイナムコオンライン(発売元)/2015年~

〈あらすじ〉
 父親が経営する「小鳥遊事務所」に入社した小鳥遊紡は、デビュー前のアイドルグループのマネージャーを担当することになる。そこで紹介されたのは、和泉一織、二階堂大和、和泉三月、四葉環、逢坂壮五、六弥ナギ、七瀬陸の7人。それぞれに個性豊かな彼らは、思わず応援したくなる不思議な魅力を持っていた。ところが社長命令で、デビューできるのは3人だけということに…。そのメンバーを選ぶためのオーディションが行われる。(公式ホームページより)

 とんでもないものに手を出してしまった。コロナ禍真っただ中の2021年春休み、時間にもゆとりがある故、何か普段触れない作品にもとりあえず挑戦してみよう、といった極々軽い気持ちだった。アイドリッシュセブンはその名の通り、男性アイドルたちのお話である。しかしながら私は、これまでの人生2次元のみならず3次元も含め、“アイドル”にたったの1度も熱を上げたことはなかった。それがどうしたことか。アイドリッシュセブンのおかげで完全に新しい扉を開いてしまったのか、このコンテンツに触れない日はない。
 魅力について語り尽くすとなると、枚挙にいとまがなくなりそうなので、自身が最も圧倒されたものだけをピックアップしようと思う。それは「物語」である。アイドル、と言うとキラキラした世界のみを連想しがちだが、本作はその“裏側”にまでスポットライトをしっかりと当てている。むしろ表舞台に立つアイドル達は「体中に精一杯、銀紙を張り付けて星のフリをしている」のだ。また骨太なストーリーのおかげで、登場人物一人一人の個性が際立ち、実在する人物かのように思えてくる。それぞれが抱えているものにも注目してほしい。
 油断をしていると、いとも簡単にサクッと心を殺られる作品なので、これからも構えつつ楽しみたいと思う。
2022/02/26(土) 11:50 No.1830 EDIT DEL
横田 RES
11~30までの作品です。おそらく夏休み課題の範囲だと思われます。大幅に遅れてしまい申し訳ありません。書き溜めておいたものもあるので、当時と少し情報が前後する箇所もあると思います。

11『風と共にゆとりぬ』(エッセイ)
朝井リョウ/文藝春秋/2017年

〈あらすじ〉
 『時をかけるゆとり』に続く、待望の第二弾。「別冊文藝春秋」「日本経済新聞 プロムナード」掲載分に大量の書き下ろしを加え、計500枚の大ボリュームでおくる傑作エッセイ集。

 またもや朝井リョウに大いに笑わせられた。ちなみにエッセイ集は他にも『時をかけるゆとり』(2014)、『学生時代にやらなくてもいい20のこと』(2012)が出ており、こちらも非常に魅力的である。本作ではまず、これまでにない厳かな装丁と枕にできそうなほどの分厚さに読み始める前から気後れした。「もしや朝井リョウ、今回は真剣にエッセイを書いてしまったのか」と少し手に取ったことを後悔したが、目次を開いて安心した。なんと三部構成のうち最後の一つが「肛門記」と記されているのである。覚悟を決めて頁を開いた故に拍子抜けしてしまったが、目次だけで笑わせてくる朝井リョウ、やはり最高だなと思った。
 内容はごく日常の中でのエピソードが大多数を占めるのにもかかわらず、お腹がよじれるほどに笑い転げた。本を読むという行為はなかなか体力を消耗するものだと思うのだが、本作の場合私は、長時間のアルバイトをしてきた後に読むという異例の行動に移せるほどに面白い。
また小説家と言えば近寄りがたいイメージがあり、朝井リョウの場合も史上最年少で直木賞を受賞した凄い人物であるのにもかかわらず、エッセイの中であまりにも自身をさらけ出すその姿はとても身近な存在に感じる。とは言え、くだらないことだけでなく「子どもにとっての言葉」をはじめ心打たれるお話もいくつか散りばめられており、満足度100%のエッセイになっている。


12『風の谷のナウシカ 1巻』(漫画)
宮崎駿/徳間書店/1983年

〈あらすじ〉
 「火の七日間」と呼ばれる戦争によって巨大産業文明が崩壊してから千年。荒れ果てた大地には「腐海」と呼ばれる有毒の瘴気を発する菌類の森が広がり、衰退した人間の生存を脅かしていた。酸の海のほとりに、海から吹く風によって腐海の毒から守られた「風の谷」という辺境の王国があった。そこでは、王女のナウシカを中心に人々は自然を尊び平和に暮らしていたが、大国トルメキア軍の侵略に遭い…。

 原作は漫画であること自体はかなり昔から知っていたので、読み終わった今「こんなにも素晴らしいものをどうしてもっと早く読み始めなかったのだ」という気持ちと「内容が複雑であるから、じっくり時間をとって読める大学生の今が適しているのだ」という気持ちがせめぎ合っている。兎にも角にも濃密で全7巻のうちまだ1巻目だというのに満腹状態になってしまった。
映画の方を幼い頃に観ていたので、やはり漫画に描かれる映画にはない場面や設定に目が行った。具体的に挙げるとトルメキア軍の「蟲つかい」や、蟲たちがナウシカの身体にへばり付いた際全身から光線のようなものを発して蟲を弾き飛ばした他、ナウシカにダイレクトで蟲の声が聞こえたりと彼女に備わる第六感のようなものの強さを感じた。また、個人的にはクシャナ殿下の参謀であるクロトワがおちゃらけ担当でなく、かなりかっこいい人物として描かれているのが印象に残っている。特に、ガンシップに乗って襲ってきたアスベルを重量級のコルベットで迎え撃つ場面にはその頭の切れ味と操縦の腕前に痺れた。
 また、作中での効果音の使われ方が独特で面白いと感じた。「ワーン、ワーン」や「カーーーッ」、「パウッ」など効果音そのものも目を惹く他、文字のレタリングのされ方からその音の丸みや鋭さ、スピード感が伝わってきた。今後も自分のできる限り様々な部分に目を配り、頭をフル回転させて読んでいきたい。


13『アーヤと魔女』(アニメ)
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(原作)/宮崎吾郎(監督)/2020年

〈あらすじ〉
 舞台は1990年代のイギリス。赤ん坊の頃から孤児として育ってきた10歳の少女アーヤは、誰もが自分の思い通りにしてくれる孤児院での生活に快感を覚えており、誰かに貰われたいとは思ったことがなかった。しかしある日魔女のベラ・ヤーガと彼女と共に暮らす男マンドレークに引き取られることになる。

 スタジオジブリ初の全編3DCG制作ということで、ジブリの新たな一面を見ることができた。物凄く滑らかな動きで3DCGについて全く知識のない私でも相当な技術力をもって制作されていることがわかった。これまた宮崎吾郎監督の下、2014年に放送された『山賊の娘ローニャ』と比較してもその違いは明らかだ。
 次にストーリーについて触れると、原作を読んだことがないので強くは言えないが物足りなさを感じてしまった。特に結末があまりにも唐突で、さらには多くの謎が残されたままであったので困惑してしまった。少し調べたところ、原作者のダイアナ・ウィン・ジョーンズはどうやら続編を出す前に他界してしまったそうだ。何故スタジオジブリは未完のこの作品をアニメーション化しようと決断したのかも気になるところである。また登場人物たちはそれぞれ個性豊かで面白かった。際立って目を惹くのは主人公のアーヤで、これまでもジブリの女性たちは勇敢で沢山の魅力を持ち合わせているのだが、アーヤはまた一味違った。度胸は勿論あるのだが、それに付け加え孤児院で育ったこともあってか良い意味で性格が悪く、悪知恵を働かせるときの絶妙な表情は見応えがあった。


14『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル‼』(ドラマ)
海野つなみ(原作)/野木亜紀子(脚本)/2021年

〈あらすじ〉
 共働きとなり、2人に最適な家事の分担も出来て平和で幸せな日々を過ごしていた森山みくり(新垣結衣)と津崎平匡(星野 源)。そんな中、みくりの妊娠が発覚。2人はついに契約結婚から正式に入籍をすることになるが…

 現代社会の抱える様々な問題を詰め込んだ、とても見ごたえのあるドラマであった。妊娠が順番である会社のルールから始まり、選択的別姓、セクシュアルマイノリティー、ルッキズム、男性の育児休業制度、さらには新型コロナウイルスまでもが登場し、リモートワークや飲食店が経営に苦しみかつ給付金の申請が複雑すぎることまで盛り込まれていた。これ以外にも私の気が付くことのできなかった要素がまだまだあると思われる。145分は短いと言えば嘘になるかもしれないが、この時間内にこれだけ多くの要素を含ませ、さらにはドラマとしても完成度が高いのには驚きが隠せない。
 そのなかでも特に衝撃的であったのは、みくりの妊娠が病院で分かった後の帰り道、平匡が「子供が生まれるにあたって、僕はみくりさんを全力でサポートします」と意気込んでいることに対し、みくりが「サポートって何?手伝いなの?一緒に親になるんじゃなくて?」と返した場面だ。私は平匡の言葉に「なんて素晴らしい父親なのだ」と心の中で拍手を送っていたのでこの返しにはハッとさせられた。今はTwitterなどのSNSを利用することによって普段であれば関りのない人の考えまでもが気軽に知ることでき、自分の中ではステレオタイプがそんなにはないと思っていた分、驚きが大きかったのかもしれない。無意識のうちに固定概念というものは育ってしまっていることを改めて実感した。


15『MIU404』(ドラマ)
野木亜紀子(オリジナル脚本)/2020年

〈あらすじ〉
 警視庁の働き方改革の一環で、刑事部・機動捜査隊(通称:機捜)の部隊に4機動捜査隊が増設される。“第4機捜”の隊員として招集された志摩一未(星野源)だったが、とある人事トラブルからバディとなる隊員が見つからないという事態に。やむを得ず、候補段階で落としていた交番勤務員・伊吹藍(綾野剛)とバディを組むことになる。破天荒で警察官としての常識に欠けるが、機捜の任務を「誰かが最悪の事態になる前に止められる良い仕事」だと話す伊吹に心を動かされた志摩は、彼と共に任務を続ける。
 
  脚本家の野木亜紀子にひたすらにスタンディングオベーションを送りたい。何もかもが素晴らしく、「こんなに心揺さぶられるドラマにこれから何本出会えるのだろう…」と思ってしまった。これまでも彼女が脚本を手掛けてきたドラマや映画はいくつか観てきたが、中でも『図書館戦争』『重版出来!』『逃げるは恥だが役に立つ』は私にとって、とても大切な作品である。さらに衝撃的であったのは『MIU404』は『アンナチュラル』と同様原作が存在しないということだ。つまり野木亜紀子が一から生み出した脚本なのである。
 『MIU404』に感じた魅力は山ほどあるのだが、私の心に一番に響いたのは現実社会とのリンクだ。外国人留学生の労働問題や違法ドラッグ、あおり運転などが織り込まれており、画面の中で起きている出来事がぐっとリアルなものに感じた。特にフェイクニュースを大々的に扱った回ではドラマ内と同様、Twitterではトレンドで「#MIU404」が挙がっており、現実と虚構の境界線があやふやになっていた。まるで志摩や伊吹が自分と同じ世界線にいるのではと錯覚を起こしかけた。これからも彼女が手掛けたものはすかさずチェックしようと決意した。


16『ごはんぐるり』(エッセイ)
西加奈子/NHK出版/2013年

〈あらすじ〉
 カイロと大阪育ちの筆者が綴る「グルメ」じゃない「ごはん」のこと。「初デートでは何を食べるのが正解?」から始まる男と女の食をめぐる正解シリーズ、幼い頃のカイロでの食生活、大阪のDNAがうずく食べ物たち、世界のめずらし料理実習記など。

 「食」という観点からその人の人生や考え方を覗くのはこんなにも楽しいことなのか、と思った。それが西加奈子自身から語られるのであるから、尚更面白い。特に印象に残ったのが幼い頃のカイロでの食生活で、彼女の母親が並大抵ならぬ苦労を重ねていたことがうかがえた。例えば、鶏は通常頭のついた状態で売られており「切ってくれ」と頼むとご丁寧に切った頭も一緒に袋に入れてくれたり、米は沢山の石と死んだ虫をピンセットでひとつひとつ取っていく作業から始まったり、豆腐やこんにゃくは日本から送られてきた粉末の素から作り始めるそうだ。日本に暮らしているだけではまず体験できないし、他人づてでもなかなか耳にすることもない。
 また西加奈子のお気に入りの料理本、檀一雄の『檀流クッキング』がこれまた独特で、目を惹いた。写真ではなく文章重視で、見た目の美しさや印象に引っ張られることなく、活字の料理と対峙できるそうだ。「つけ汁も後で一緒にモチ米の中に入れるから、そのつもりになっていてほしい」や「パンを両面ともこげ目がつくくらいによく焼いて、あげくの果てに、チーズを重ねて、むし焼きにしてみよう」と言葉選びが何とも言えず、クスッと笑ってしまった。これに対する西加奈子の捉え方も知れるので読者はまさに一石二鳥である。料理を作ることに悲しい位興味がない私だが、『檀流クッキング』は一度読んでみたいと思えた。


17『愛の夢とか』(小説)
川上未映子/講談社/2013年

〈あらすじ〉
 あのとき、ふたりが世界のすべてになった――。ピアノの音に誘われて始まった女どうしの交流を描く表題作「愛の夢とか」。別れた恋人との約束の植物園に向かう「日曜日はどこへ」他、何気ない日常がドラマに変わる瞬間をとらえて心揺さぶる7ストーリーズ。谷崎潤一郎賞受賞作。

 初めて川上未映子作品に挑戦したが、他にも彼女の本を読んでみたいと思った。ふわふわとしているようで、グサッと深いところを抉られた。他にもこの本を読んでの自分の感情や、素晴らしいことを書き尽くしたいのだが、まともに表現できない自身を情けなく思う。しかしながら、1つ目の短編「アイスクリーム熱」でそんな私をそっと肯定してくれるような言葉に出会ったので少し長いが載せておきたい。
 “こういうときに比喩みたいなものがぱっと浮かぶといいのだけれど、わたしにはよくわからない。だから、切れ長の、とか意地が悪そうな、とかそういう何も言っていないのとおなじような言い回しでしか記録することができない。でもどれも悪くないなと天井をみながらそう思う。うまく言葉にできないということは、誰にも共有されていないことでもあるのだから。つまりそのよさは今のところ、わたしだけのものということだ。”
これは主人公の女性が好きな人の「目」について語ろうとするが、なかなか上手に例えることができない場面である。この言葉に私はかなりハッとさせられた。文学部であるのだから勿論、感情などを具体的かつ的確に表現できるに越したことはないし、できるようにならなければいけない。だが文章化できないもやもやも大切にしていこうと思った。また作者がどこまで狙っているのかはわからないが、この引用部分を1つ目の短編に持ってきているところが、まるでこの本の今後の読み方を読者に提案しているようで素敵だなと感じた。


18『バクマン。6~8巻』(漫画)
大場つぐみ(原作)/小幡健(漫画)/2010年

〈あらすじ〉
 最高が病気から復活したものの、連載していた漫画が打ち切りになってしまう。これからの作品の方向性としてシリアス路線で描こうと思っていた2人に対し、担当編集者・港浦からギャグマンガを強く勧められてしまい…

 あらすじにもあるように色々と盛り沢山な3巻分であったが、私は特に担当編集者である港浦さんとの難航する掛け合いが読んでいて辛くなった。私が初めて『バクマン。』を手にしたのは高校生の頃だったが、当時であれば年齢が同じこともあって確実に最高と秋人に肩入れをして読んでいたと思う。しかし大学生になって久々に読むのを再開してみると、自分の視点が変わっていることに気が付いた。自然と担当である港浦さんに寄り添った目線を持ち合わせていたのである。編集者として2年目の彼は「新米」とは言わないものの、まだまだ発展途中で、手探りで進んでいる状態だ。主人公である最高と秋人の感情描写が勿論多いので2人の担当が本当に港浦さんで良いのだろうか、といったような不安や焦りがダイレクトで伝わってくるのがまた辛い。確かに港浦さんは力不足なところも実際多々あり、付いていって大丈夫なのかという考えが頭の中をよぎる。しかしながら彼自身、もがきながらも情熱をもって仕事に徹しているわけであるし、またもし自分が社会人2年目で正しい判断だけを下し漫画家を導いていけるかなどと考えるとそんなことがあるわけがなく、両方の立場に板挟みとなってなんともやるせない気持ちになった。
 目線によって作品の味わい方をガラリと変えることができることを強く実感した。他の小説や漫画で過去に読んだものを再読してみようと思った。


19『この世界の片隅に』(映画)
片渕須直(監督)/こうの史代(原作)/2016年

〈あらすじ〉
1944年(昭和19年)2月、18歳のすずは広島から軍港のある呉の北條家に嫁ぐ。戦時下、物資が徐々に不足する不自由さの中、すずは持ち前の性格で明るく日常を乗り切っていたが、翌年の空襲によって大切なものを失う。広島への原子爆弾投下、終戦。それでもすずは自分の居場所を呉と決め、生きていく。
 あまりにも有名な作品を今になってやっと観終えた。日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を初め、数多くの有名な賞を獲得しており、噂もかねがね聞いていたので数年前から気になってはいた。しかし“戦争もの”で辛い展開が待っていないはずがないというのが手を出すハードルをかなり押し上げてしまっていた。観終えた感想としては確かに辛い。しかしそれだけでなくもっと複雑な色々な感情が込み上げてきて呆然としてしまった。その日1日結局他のことが手につかず、大学生の春休みに大いに感謝した。
 内容についてもう少し掘り下げていくと、主人公のすずさんに声を当てた女優ののんが想像よりもはるかにピッタリで驚いた。声優ではなく俳優が起用されているアニメーション映画は沢山あるが、違和感を覚えてしまうものも少なくない。すずさんのかなり抜けた、のんびりとした性格とのんの声が非常に合っていた。また声優が技術を駆使して声を当てるよりも、この作品の大筋である“一般の人々が知らず知らずのうちに戦争に巻き込まれていった”、ということが“声”という観点からもよく伝わってきた。
 ゼミでノーマン・マクラレンに触れたときに学んだ、シネカリグラフの表現が使われている場面も言葉を失うほどに衝撃的であった。原作の漫画ではどのように表されているのかが気になるところなので、比較してみたい。
 また今『呪術廻戦』や『進撃の巨人』のアニメで何かと有名なMAPPAが制作をしているが、これらの激しいアクションやカメラワークとはがらりと違ってこんなにも柔らかい表現ができるのか、と技術力の高さを目の当たりにした。片渕須直監督とMAPPAの作品を他にもいくつか観てみようと思う。


20『「ポスト宮崎駿」論―日本アニメの天才たち』(新書)
長山靖生/新潮社/2017年

〈あらすじ〉 新海誠監督『君の名は。』で一挙に“第4次ブーム”に突入した日本アニメ。市場は2兆円規模、海外展開も視野に映画公開がひきもきらない。『攻殻機動隊』の押井守、『バケモノの子』の細田守、『この世界の片隅に』の片渕須直、『アリエッティ』の米林宏昌、『エヴァ』の庵野秀明…多彩な才能を第一線の評論家が徹底分析。日本文化を代表するコンテンツ産業に躍り出た日本アニメの実態を俯瞰する最良のテキスト。

 新書と言えど肩に力を入れすぎる必要がなく、読みやすい1冊であった。自分の興味のある分野ということも勿論あると思うが、それよりも著者による解説が非常に丁寧である。「それくらい知っているよね」前提でお話が進むことがなく、初歩的なところから説明をしてくれていた。文章自体もくどくなくなるべく噛み砕いてあり、さらには1文1文が短めで読者に向けて親切に書かれていると感じた。
 細田守や片渕須直など、監督一人一人に焦点を当てている部分は読み応えがしっかりとあった。「この監督は過去にこの作品にも携わっていたのか」などと情報として初めて知るものも多かった。結局著者は誰がポスト宮崎駿に一番近いかは断言していないのだが、個人的にはページ数が最も割かれており、かつ名前順でもないのに最初に話を持ってきている新海誠を重視しているのかなという印象を受けた。
 また制作中の裏話が所々挟み込まれているのだが、これがかなり面白かった。中でも私のお気に入りの一つは宮崎駿監督の『耳をすませば』とのエピソードである。宮崎監督はこの作品を数話分読んですぐに気に入り、全体の展開をスタッフと話し合ったそうだが、この後完結した漫画全編を読み、「この話は違う」と怒ったそうだ。私はなんて身勝手な、原作者に対するリスペクトは何処へ…、と呆然としてしまったが作者の長山氏はこの勝手な想像力を発揮させるのが宮崎駿の「作家性」と述べており、それには頷かざるを得なかった。
2022/02/26(土) 11:46 No.1829 EDIT DEL