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横田
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1回で載せきれなかったため、21~30までを再掲します。
21『なぜ宮崎駿はオタクを批判するのか』(書籍)
荻原真/国書刊行会/2011年
〈あらすじ〉
なぜパズーはハトを飼っていたのか。なぜムスカは手帳に頼るのか。なぜソフィーは帽子屋なのか。なぜサリマンは温室のなかにいるのか―宮崎アニメーションに見られる対比、対立の論理をあざやかに読み解き、アシタカがサンに投げかけた言葉「共に生きよう」の意味の広がりを展望する。
本書は書き出しでまず、『ハウルの動く城』でサリマン先生が温室の中にいる訳を、ハウルの生き方と比較して筋道を立てて見事に解説しており、気が付いたときにはぐいぐいと引き込まれていた。その後も『天空の城ラピュタ』でのムスカとシータの伝承の仕方の比較を皮切りとしてジブリの他作品『千と千尋の神隠し』の湯婆婆や『もののけ姫』のジコ坊などを「対比」という視点から詳しく語っていた。
また『風の谷のナウシカ』、『もののけ姫』、さらには『未来少年コナン』や『パンダコパンダ』なども加わり、「共生」と「共食」について論じられており非常に勉強になった。そしてこの流れからなんとなく共生と共食はこんなにも大切であるから、これらが欠如している「オタク」はダメだよね、ならないようにしなくてはいけないよね、という題名にも繋がるお話になるわけだが私はこの部分はイマイチ説得力がないように感じた。この書籍を作者が執筆していた時期が今よりも数年前ということも加味していると思うが、オタクを協調性がなく社交性もないと決めつけていて、それは一概にも全オタクに当てはまるわけではないのにと感じた。さらには題名としている割にはオタク批判についてあまりページが割かれておらず、おまけ感が否めなかった。私自身パッと目を惹くタイトルが気になり、手に取ったので、もう少し内容と題名の整合性が欲しいと感じてしまった。
22『ユージニア』(小説)
恩田陸/角川文庫/2008年
〈あらすじ〉
あの夏、白い百日紅の記憶。死の使いは、静かに街を滅ぼした。旧家で起きた大量毒殺事件。未解決となったあの事件、真相はいったいどこにあったのだろうか。数々の証言で浮かび上がる、犯人の像はーー。日本推理作家協会賞受賞の傑作ミステリー。
新しいタイプのミステリーに出会ってしまった。早い段階で犯人らしき人物は提示されているにもかかわらず、読み進めるほどに不確かかつ不安にさせられた。証言をするのも所詮人間であるので知らず知らずのうちに虚構も混ざってしまうのだと思う。またこの証人(語り手)は何人もいてコロコロと変わり、さらには時系列も一方向ではないのだがそれでも読者にわからせる組み立て方にも感服した。(関係性が複雑になるとすぐメモを取りたがる私でも最後まで紙に書かずに済んだ)
事件の真相を追うストーリーであるのでジャンルとしては「ミステリー」に分類されるのであろうが、恩田陸の持ち味であるホラー要素も十二分に加わり、厚みのある内容となっている。
23『ハイキュー!! TO THE TOP』(アニメ)
佐藤雅子(監督)/古舘春一(原作)/2020年
〈あらすじ〉
春の高校バレー宮城県予選、激闘を制し悲願の全国大会出場を決めた烏野高校排球部。全国大会を控えた彼らのもとに、影山の全日本ユース強化合宿招集の報せが舞い込んだ。さらに月島にも宮城県1年生選抜強化合宿への招集がかかる。同じ1年生との差に焦る日向は、宮城県1年生選抜強化合宿に押しかけるも……!?
全国大会本番に向け、日向、影山、そして烏野高校排球部の更なる挑戦が始まる⸺!!
(公式サイトより)
原作の方を何度も読み返していたので内容は既に頭に入っており、漫画にはないアニメならではの表現に目を向ける余裕が生まれた。まず音楽の使い方がとても効果的だと感じた。サウンドトラックにはこれまでもアニメ『ハイキュー!!』シリーズを手掛けてきた林ゆうき氏と橘麻美氏がクレジットに記されていたが、彼らの手掛けた曲を聴くとどのような場面であるかが瞬時にして思い出せるのであるから驚きである。もう少し詳しく見ていくと、灼熱した試合中予想外の展開の場面ではあえて音楽をぷっつりと止めることによる無音の演出、対戦校の稲荷崎高校に当てている曲はジャズのような雰囲気で即興性と不安定さがまさに“最強の挑戦者”を音楽でも体現していると感じた。(ちなみに前クールでの白鳥沢はそれに引き換えどっしりとした雰囲気で“絶対王者”ということが伝わってきた。)
漫画にはない、アニメならではの画面をめいいっぱいに使った工夫もいくつか見つけることができた。対稲荷崎戦ファイナルセット、烏野のマッチポイントの場面では「ここで決める」という意志の強さのため全体的にリズムが速くなっていく。このシーンでは画面がぼんやりと、だが確実に黒く縁どられており、視野が狭くなっていることや相手だけでなく自分たちの首も締まっていることが伝わってきた。その直後の日向による高いファーストタッチの場面はこれまでと一変し、体育館のライトが反射した全体的に光溢れるキラキラとした画面作りがなされていた。
次の対音駒戦、“ゴミ捨て場の決戦”でも漫画とアニメの相違に少しでも気が付けるよう、原作を読み込んでおきたい。
24『日曜日たち』(小説)
吉田修一/講談社文庫/2006年
〈あらすじ〉
ありふれた「日曜日」。だが、5人の若者にとっては、特別な日曜日だった。都会の喧騒と鬱屈した毎日のなかで、疲れながら、もがきながらも生きていく男女の姿を描いた5つのストーリー。そしてそれぞれの過去をつなぐ不思議な小学生の兄弟。ふたりに秘められた真実とは。絡みあい交錯しあう、連作短編集の傑作。
『日曜日たち』を読み終え、作品ごとに顔をコロコロと巧みに変える吉田修一という作者自身をもっと知りたいと思った。と言うのも、私は彼の小説を『怒り』と『横道世之介』、『パレード』だけ過去に読んだことがあるのだが、それぞれ作風が違う。簡単に説明すると『怒り』は夫婦殺害の指名手配犯が実は自分と関わりのある人物ではないのか、と疑問を抱いてしまうことで崩れていく全国各地数人の日常を描いており、常にハラハラと心落ち着かない気分にさせられる。『横道世之介』は大学進学とともに上京してきた一人の青年、横道世之介の日々をゆったりとしたテンポで描いた温かみのある長編である。『パレード』は都内の2LDKマンションで共同生活をする若い男女5人のそれぞれの視点から話が展開されるのだが、淡々と続いた何気ない日常生活が狂った最後の章は息をつく間もない。
今回読んだ『日曜日たち』の内容は過去に読んだ3作品ともまた違うテイストだと感じた。さらには一見関りのないように思われる5つの短編が、小学生の兄弟によって最終的に繋がっているという見事な構成も目を惹いた。
ただ一つ共通点として挙げられるのが、彼の書く人物はリアリティーがあり、本当に実在する人物なのではないかと読者に錯覚を起こさせるということだ。日常生活を描いている場面では、実際にその人物の生活を覗き見して記録しているのではないかと思わせる。自粛生活が始まってからさして特別な毎日を送っているわけでもない自身の生活も、彼の手にかかればれっきとした物語に成り得るのではないかと思った。
1人の小説家の特性や作風はだいたい3、4作品程読めば、今までは概ね掴めてきた。しかし吉田修一の場合は普段よりもまだ掴めていない気がする。次に手にする小説もまた違った表情を見せてくれると思うと楽しみだ。
25『死にがいを求めて生きているの』(小説)
朝井リョウ/中央公論新社/2019年
〈あらすじ〉
植物状態のまま病院で眠る智也と、献身的に見守る雄介。二人の間に横たわる“歪な真実”とは?毎日の繰り返しに倦んだ看護師、クラスで浮かないよう立ち回る転校生、注目を浴びようともがく大学生、時代に取り残された中年ディレクター。交わるはずのない点と点が、智也と雄介をなぞる線になるとき、目隠しをされた“平成”という時代の闇が露わになる―“平成”を生きる若者たちが背負う自滅と祈りの物語。
題名には「死にがい」とあるが、どちらかと言うと「生きがい」をテーマにした作品だと感じた。登場人物たちがまだ「死」を意識するには早い年齢であるからかもしれない。今回の作品もこれまでのものと例外なく身に覚えのある感情が多く、グサグサと心に刺さった。朝井リョウが若者から共感できると圧倒的な支持を得る理由としては彼自身が大学生、社会人の頃の感情を鮮明に覚えており、かつそれを当てはめるエピソードと言葉選びが絶妙であるからだと思う。(朝井リョウがもし社会人を経験せず、大学生からそのまま作家になっていればここまでのものは書けなかったのではないか)
構成は朝井リョウ十八番の1章ごとに主観の人物が変わるものであった。人によって1つの事柄でも見え方や捉え方、考え方が違うというが醍醐味でもあり、恐ろしくもあると感じさせられた。話の順番も考えられており、例えば1章で親友というものは日常の風景をまるごと変えてくれるのだから大切だよな、と読者にしみじみと感じさせ、その直後の章で友達関係の脆さをダイレクトに突き付けてくる残酷さにはゾクッとした。
重たいタイトルの割には非常に読みやすい作品だと思うので、気負わずに手に取ってほしい。
26『ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ』(書籍)
スタジオジブリ、文春文庫(編)/2013年
〈あらすじ〉
児童文学の系譜からみたラピュタの魅力とは?ドーラのようなイギリスの海賊はいたのか!?1986年公開の宮崎駿監督作品『天空の城ラピュタ』の奥行きを、森絵都、金原瑞人、夢枕獏、石田衣良、上橋菜穂子ら豪華執筆陣が読み解く。当時の制作現場の裏側からスタジオジブリ設立秘話まで、作品を十倍楽しく観るための決定本。
あらすじにもある通り、有名な文筆家から語られる『天空の城ラピュタ』では新たな視点を得られることが多かった。また意外にものめり込んでしまったのが、理学博士や東京大学大学院総合文化研究科の教授などの専門家から語られる、少し特殊な『天空の城ラピュタ』である。当たり前だが自分の力だけでは到底思い至らないことを、彼らのフィルターを通して知ることができたのは大きい。その内容としては当時の英国の様子(特に子供に課せられた鉱山での重労働が衝撃的であった。重いものを運ぶため筋肉が部分的に異常に発達し、帰り道で倒れ意識不明になることもあるらしい)や、飛行石つまりは鉱物に焦点を当てるほか宮沢賢治とも絡み合わせて話がたちまち膨らんでいった。また久石譲や作画監督、原画担当などによる制作秘話も読みごたえがあった。
印象に残ったのが宮崎駿の弟である至朗さんによって語られる宮崎駿である。宮崎監督の作品は色々と観てきているが、彼自身の生い立ちなどについては知らないことばかりであった。特に母親の存在が大きく、彼女は寝たきりであるにもかかわらず政治・経済から文化・芸術に至るまで高校生や大学生の息子と対等以上に議論ができたらしい。
文藝春秋の『ジブリの教科書』はシリーズで他にも出ているようなので読んでみようと思う。
27『極主夫道1~6巻』(漫画)
おおのこうすけ/新潮社/2018年~
〈あらすじ〉
その男、元・最凶ヤクザにして、今は最強主夫。元・最凶ヤクザが選んだのは、主夫としての道だった。話題の新鋭作家おおのこうすけがおくる、アットホーム任侠コメディ!
何も考えずにただひたすら大口を開けて笑うことがここまでできる漫画であった。その笑いは、読む人を選ばない。“ギャグマンガ”と言うとゆるいタッチの物が圧倒的に多いと思うが、この漫画の場合は作者の高い画力にも注目である。その力強いタッチは元ヤクザである主人公の迫力を十二分に引き出している。またそれら画力のレベルの高さと、現在主夫である主人公の一つ一つの行動のギャップが大きな笑いを誘っている。
私自身、コロナ禍で悶々としている時期にかなり助けられた作品であるので、「そういえば最近笑っていないな」、というような方は至急読んでみてもらいたい。
28『ハイキュー!!展』(展示会)
古舘春一(原作)
2020年7月に堂々完結した『ハイキュー!!』を記念して開催された原画展に行ってきた。単行本で見るのとは比べ物にならないくらいの原画の“圧”に慄いた。それだけでなく、古舘先生の原稿の隅の方にある印刷には載らない部分の落書きや、極稀に「ここまでするのであれば最早一から描き直した方がよいのではないか」と思ってしまうほど修正液で何度も直された跡をまじまじと見ることができた。
また、単体でも素晴らしい原画をさらに光らせている会場の“演出”にも圧倒された。高校毎でブースが設けられているのだが、原画の展示されている壁が伊達工業は鉄壁を、音駒は鳥籠をイメージして作られており、稲荷崎は大量の実物の提灯がぶら下げられており雰囲気がガラッと変わった。白鳥沢に至っては「このチームが主役の漫画であったかな」と錯覚を起こしそうになるくらい豪華なセットであった。もう少し掘り下げると、優に2メートルを超す大きなパネルが屏風のように連なっているのだが、そこには白鳥沢のスターティングメンバ―全員が1人ずつ描かれており、パネルの角度故だろうか、1人1人と目が合うようになっており“王者の風格”がひしひしと伝わってきた。これは近くで見ても勿論良いのだが、“引き”でも魅せており様々な視点で楽しめる仕掛けが凝らされていることに気が付いた。他にも天井部分からは横断幕などが吊り下げられており、空間の使い方が非常に上手だと感じた。左右だけでも手一杯であるのに上にも注目しなければいけなく、個人的には「目がいくつあっても足りない…」と思った。
古舘先生の苦労、愛情、エネルギーなど全てが凝縮された原画がこの上なく素晴らしいことのみならず、会場の演出にも力が入っており、『ハイキュー!!』が沢山の人に愛されている作品であることを改めて感じた。
29『もう一つの「バルス」』(書籍)
木原浩勝/講談社/2016年
〈あらすじ〉
あの名シーン「バルス」にはもう一つのアイデアが存在した。宮崎駿監督の姿を制作進行として間近で見続けた著者が『天空の城ラピュタ』誕生30年に初めて明かす名作アニメの創作秘話。ジブリファン、アニメファンだけでなく、多くの方にオススメしたい感動のノンフィクション!
『天空の城ラピュタ』に制作進行として携わった木原浩勝氏による、当時の貴重な体験談が濃厚に描かれていた。今でこそ日本で知らない人はいないと言ってもよい「スタジオジブリ」の作品であるが、当時はまだ駆け出しで、人も金もそれから時間も足りていないギリギリの状態で回していたことが如実にわかる。
著者や宮崎駿監督の仕事ぶりは勿論、他のアニメーターの方についてもかなり触れられている。その中でも自身は、原画頭として参加した金田伊功氏が印象に残った。(本来原画頭、という枠はないが、本作はクレジット部分にもしっかりと登場する)彼は宮崎駿監督からも絶大なる信頼を置かれていたことがうかがえる。実際のシーンとして、探鉱町での大乱闘や凧に乗ったシータとパズーが竜の巣を通過しラピュタに軟着陸するシーン、ゴリアテの攻撃で被弾するタイガーモス号などの場面は、金田氏に描いてもらうことを前提に、コンテを宮崎駿監督は作っていたらしい。独特な形状と飛び方でみる者を惹きつけるフラップターも、金田氏がデザインしたようだ。
さらには宮崎駿監督が『天空の城ラピュタ』において、様々なルートを考えていたことが明らかになっている。最後の展開も2パターンあったらしく、採用されなかった方も非常に面白く、こちらも観てみたい気持ちが高まった。
30『アイドリッシュセブン』(アプリゲーム)
種村有菜(キャラクター原案)/都志見文太(シナリオ)/G2studio(開発)/バンダイナムコオンライン(発売元)/2015年~
〈あらすじ〉
父親が経営する「小鳥遊事務所」に入社した小鳥遊紡は、デビュー前のアイドルグループのマネージャーを担当することになる。そこで紹介されたのは、和泉一織、二階堂大和、和泉三月、四葉環、逢坂壮五、六弥ナギ、七瀬陸の7人。それぞれに個性豊かな彼らは、思わず応援したくなる不思議な魅力を持っていた。ところが社長命令で、デビューできるのは3人だけということに…。そのメンバーを選ぶためのオーディションが行われる。(公式ホームページより)
とんでもないものに手を出してしまった。コロナ禍真っただ中の2021年春休み、時間にもゆとりがある故、何か普段触れない作品にもとりあえず挑戦してみよう、といった極々軽い気持ちだった。アイドリッシュセブンはその名の通り、男性アイドルたちのお話である。しかしながら私は、これまでの人生2次元のみならず3次元も含め、“アイドル”にたったの1度も熱を上げたことはなかった。それがどうしたことか。アイドリッシュセブンのおかげで完全に新しい扉を開いてしまったのか、このコンテンツに触れない日はない。
魅力について語り尽くすとなると、枚挙にいとまがなくなりそうなので、自身が最も圧倒されたものだけをピックアップしようと思う。それは「物語」である。アイドル、と言うとキラキラした世界のみを連想しがちだが、本作はその“裏側”にまでスポットライトをしっかりと当てている。むしろ表舞台に立つアイドル達は「体中に精一杯、銀紙を張り付けて星のフリをしている」のだ。また骨太なストーリーのおかげで、登場人物一人一人の個性が際立ち、実在する人物かのように思えてくる。それぞれが抱えているものにも注目してほしい。
油断をしていると、いとも簡単にサクッと心を殺られる作品なので、これからも構えつつ楽しみたいと思う。
21『なぜ宮崎駿はオタクを批判するのか』(書籍)
荻原真/国書刊行会/2011年
〈あらすじ〉
なぜパズーはハトを飼っていたのか。なぜムスカは手帳に頼るのか。なぜソフィーは帽子屋なのか。なぜサリマンは温室のなかにいるのか―宮崎アニメーションに見られる対比、対立の論理をあざやかに読み解き、アシタカがサンに投げかけた言葉「共に生きよう」の意味の広がりを展望する。
本書は書き出しでまず、『ハウルの動く城』でサリマン先生が温室の中にいる訳を、ハウルの生き方と比較して筋道を立てて見事に解説しており、気が付いたときにはぐいぐいと引き込まれていた。その後も『天空の城ラピュタ』でのムスカとシータの伝承の仕方の比較を皮切りとしてジブリの他作品『千と千尋の神隠し』の湯婆婆や『もののけ姫』のジコ坊などを「対比」という視点から詳しく語っていた。
また『風の谷のナウシカ』、『もののけ姫』、さらには『未来少年コナン』や『パンダコパンダ』なども加わり、「共生」と「共食」について論じられており非常に勉強になった。そしてこの流れからなんとなく共生と共食はこんなにも大切であるから、これらが欠如している「オタク」はダメだよね、ならないようにしなくてはいけないよね、という題名にも繋がるお話になるわけだが私はこの部分はイマイチ説得力がないように感じた。この書籍を作者が執筆していた時期が今よりも数年前ということも加味していると思うが、オタクを協調性がなく社交性もないと決めつけていて、それは一概にも全オタクに当てはまるわけではないのにと感じた。さらには題名としている割にはオタク批判についてあまりページが割かれておらず、おまけ感が否めなかった。私自身パッと目を惹くタイトルが気になり、手に取ったので、もう少し内容と題名の整合性が欲しいと感じてしまった。
22『ユージニア』(小説)
恩田陸/角川文庫/2008年
〈あらすじ〉
あの夏、白い百日紅の記憶。死の使いは、静かに街を滅ぼした。旧家で起きた大量毒殺事件。未解決となったあの事件、真相はいったいどこにあったのだろうか。数々の証言で浮かび上がる、犯人の像はーー。日本推理作家協会賞受賞の傑作ミステリー。
新しいタイプのミステリーに出会ってしまった。早い段階で犯人らしき人物は提示されているにもかかわらず、読み進めるほどに不確かかつ不安にさせられた。証言をするのも所詮人間であるので知らず知らずのうちに虚構も混ざってしまうのだと思う。またこの証人(語り手)は何人もいてコロコロと変わり、さらには時系列も一方向ではないのだがそれでも読者にわからせる組み立て方にも感服した。(関係性が複雑になるとすぐメモを取りたがる私でも最後まで紙に書かずに済んだ)
事件の真相を追うストーリーであるのでジャンルとしては「ミステリー」に分類されるのであろうが、恩田陸の持ち味であるホラー要素も十二分に加わり、厚みのある内容となっている。
23『ハイキュー!! TO THE TOP』(アニメ)
佐藤雅子(監督)/古舘春一(原作)/2020年
〈あらすじ〉
春の高校バレー宮城県予選、激闘を制し悲願の全国大会出場を決めた烏野高校排球部。全国大会を控えた彼らのもとに、影山の全日本ユース強化合宿招集の報せが舞い込んだ。さらに月島にも宮城県1年生選抜強化合宿への招集がかかる。同じ1年生との差に焦る日向は、宮城県1年生選抜強化合宿に押しかけるも……!?
全国大会本番に向け、日向、影山、そして烏野高校排球部の更なる挑戦が始まる⸺!!
(公式サイトより)
原作の方を何度も読み返していたので内容は既に頭に入っており、漫画にはないアニメならではの表現に目を向ける余裕が生まれた。まず音楽の使い方がとても効果的だと感じた。サウンドトラックにはこれまでもアニメ『ハイキュー!!』シリーズを手掛けてきた林ゆうき氏と橘麻美氏がクレジットに記されていたが、彼らの手掛けた曲を聴くとどのような場面であるかが瞬時にして思い出せるのであるから驚きである。もう少し詳しく見ていくと、灼熱した試合中予想外の展開の場面ではあえて音楽をぷっつりと止めることによる無音の演出、対戦校の稲荷崎高校に当てている曲はジャズのような雰囲気で即興性と不安定さがまさに“最強の挑戦者”を音楽でも体現していると感じた。(ちなみに前クールでの白鳥沢はそれに引き換えどっしりとした雰囲気で“絶対王者”ということが伝わってきた。)
漫画にはない、アニメならではの画面をめいいっぱいに使った工夫もいくつか見つけることができた。対稲荷崎戦ファイナルセット、烏野のマッチポイントの場面では「ここで決める」という意志の強さのため全体的にリズムが速くなっていく。このシーンでは画面がぼんやりと、だが確実に黒く縁どられており、視野が狭くなっていることや相手だけでなく自分たちの首も締まっていることが伝わってきた。その直後の日向による高いファーストタッチの場面はこれまでと一変し、体育館のライトが反射した全体的に光溢れるキラキラとした画面作りがなされていた。
次の対音駒戦、“ゴミ捨て場の決戦”でも漫画とアニメの相違に少しでも気が付けるよう、原作を読み込んでおきたい。
24『日曜日たち』(小説)
吉田修一/講談社文庫/2006年
〈あらすじ〉
ありふれた「日曜日」。だが、5人の若者にとっては、特別な日曜日だった。都会の喧騒と鬱屈した毎日のなかで、疲れながら、もがきながらも生きていく男女の姿を描いた5つのストーリー。そしてそれぞれの過去をつなぐ不思議な小学生の兄弟。ふたりに秘められた真実とは。絡みあい交錯しあう、連作短編集の傑作。
『日曜日たち』を読み終え、作品ごとに顔をコロコロと巧みに変える吉田修一という作者自身をもっと知りたいと思った。と言うのも、私は彼の小説を『怒り』と『横道世之介』、『パレード』だけ過去に読んだことがあるのだが、それぞれ作風が違う。簡単に説明すると『怒り』は夫婦殺害の指名手配犯が実は自分と関わりのある人物ではないのか、と疑問を抱いてしまうことで崩れていく全国各地数人の日常を描いており、常にハラハラと心落ち着かない気分にさせられる。『横道世之介』は大学進学とともに上京してきた一人の青年、横道世之介の日々をゆったりとしたテンポで描いた温かみのある長編である。『パレード』は都内の2LDKマンションで共同生活をする若い男女5人のそれぞれの視点から話が展開されるのだが、淡々と続いた何気ない日常生活が狂った最後の章は息をつく間もない。
今回読んだ『日曜日たち』の内容は過去に読んだ3作品ともまた違うテイストだと感じた。さらには一見関りのないように思われる5つの短編が、小学生の兄弟によって最終的に繋がっているという見事な構成も目を惹いた。
ただ一つ共通点として挙げられるのが、彼の書く人物はリアリティーがあり、本当に実在する人物なのではないかと読者に錯覚を起こさせるということだ。日常生活を描いている場面では、実際にその人物の生活を覗き見して記録しているのではないかと思わせる。自粛生活が始まってからさして特別な毎日を送っているわけでもない自身の生活も、彼の手にかかればれっきとした物語に成り得るのではないかと思った。
1人の小説家の特性や作風はだいたい3、4作品程読めば、今までは概ね掴めてきた。しかし吉田修一の場合は普段よりもまだ掴めていない気がする。次に手にする小説もまた違った表情を見せてくれると思うと楽しみだ。
25『死にがいを求めて生きているの』(小説)
朝井リョウ/中央公論新社/2019年
〈あらすじ〉
植物状態のまま病院で眠る智也と、献身的に見守る雄介。二人の間に横たわる“歪な真実”とは?毎日の繰り返しに倦んだ看護師、クラスで浮かないよう立ち回る転校生、注目を浴びようともがく大学生、時代に取り残された中年ディレクター。交わるはずのない点と点が、智也と雄介をなぞる線になるとき、目隠しをされた“平成”という時代の闇が露わになる―“平成”を生きる若者たちが背負う自滅と祈りの物語。
題名には「死にがい」とあるが、どちらかと言うと「生きがい」をテーマにした作品だと感じた。登場人物たちがまだ「死」を意識するには早い年齢であるからかもしれない。今回の作品もこれまでのものと例外なく身に覚えのある感情が多く、グサグサと心に刺さった。朝井リョウが若者から共感できると圧倒的な支持を得る理由としては彼自身が大学生、社会人の頃の感情を鮮明に覚えており、かつそれを当てはめるエピソードと言葉選びが絶妙であるからだと思う。(朝井リョウがもし社会人を経験せず、大学生からそのまま作家になっていればここまでのものは書けなかったのではないか)
構成は朝井リョウ十八番の1章ごとに主観の人物が変わるものであった。人によって1つの事柄でも見え方や捉え方、考え方が違うというが醍醐味でもあり、恐ろしくもあると感じさせられた。話の順番も考えられており、例えば1章で親友というものは日常の風景をまるごと変えてくれるのだから大切だよな、と読者にしみじみと感じさせ、その直後の章で友達関係の脆さをダイレクトに突き付けてくる残酷さにはゾクッとした。
重たいタイトルの割には非常に読みやすい作品だと思うので、気負わずに手に取ってほしい。
26『ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ』(書籍)
スタジオジブリ、文春文庫(編)/2013年
〈あらすじ〉
児童文学の系譜からみたラピュタの魅力とは?ドーラのようなイギリスの海賊はいたのか!?1986年公開の宮崎駿監督作品『天空の城ラピュタ』の奥行きを、森絵都、金原瑞人、夢枕獏、石田衣良、上橋菜穂子ら豪華執筆陣が読み解く。当時の制作現場の裏側からスタジオジブリ設立秘話まで、作品を十倍楽しく観るための決定本。
あらすじにもある通り、有名な文筆家から語られる『天空の城ラピュタ』では新たな視点を得られることが多かった。また意外にものめり込んでしまったのが、理学博士や東京大学大学院総合文化研究科の教授などの専門家から語られる、少し特殊な『天空の城ラピュタ』である。当たり前だが自分の力だけでは到底思い至らないことを、彼らのフィルターを通して知ることができたのは大きい。その内容としては当時の英国の様子(特に子供に課せられた鉱山での重労働が衝撃的であった。重いものを運ぶため筋肉が部分的に異常に発達し、帰り道で倒れ意識不明になることもあるらしい)や、飛行石つまりは鉱物に焦点を当てるほか宮沢賢治とも絡み合わせて話がたちまち膨らんでいった。また久石譲や作画監督、原画担当などによる制作秘話も読みごたえがあった。
印象に残ったのが宮崎駿の弟である至朗さんによって語られる宮崎駿である。宮崎監督の作品は色々と観てきているが、彼自身の生い立ちなどについては知らないことばかりであった。特に母親の存在が大きく、彼女は寝たきりであるにもかかわらず政治・経済から文化・芸術に至るまで高校生や大学生の息子と対等以上に議論ができたらしい。
文藝春秋の『ジブリの教科書』はシリーズで他にも出ているようなので読んでみようと思う。
27『極主夫道1~6巻』(漫画)
おおのこうすけ/新潮社/2018年~
〈あらすじ〉
その男、元・最凶ヤクザにして、今は最強主夫。元・最凶ヤクザが選んだのは、主夫としての道だった。話題の新鋭作家おおのこうすけがおくる、アットホーム任侠コメディ!
何も考えずにただひたすら大口を開けて笑うことがここまでできる漫画であった。その笑いは、読む人を選ばない。“ギャグマンガ”と言うとゆるいタッチの物が圧倒的に多いと思うが、この漫画の場合は作者の高い画力にも注目である。その力強いタッチは元ヤクザである主人公の迫力を十二分に引き出している。またそれら画力のレベルの高さと、現在主夫である主人公の一つ一つの行動のギャップが大きな笑いを誘っている。
私自身、コロナ禍で悶々としている時期にかなり助けられた作品であるので、「そういえば最近笑っていないな」、というような方は至急読んでみてもらいたい。
28『ハイキュー!!展』(展示会)
古舘春一(原作)
2020年7月に堂々完結した『ハイキュー!!』を記念して開催された原画展に行ってきた。単行本で見るのとは比べ物にならないくらいの原画の“圧”に慄いた。それだけでなく、古舘先生の原稿の隅の方にある印刷には載らない部分の落書きや、極稀に「ここまでするのであれば最早一から描き直した方がよいのではないか」と思ってしまうほど修正液で何度も直された跡をまじまじと見ることができた。
また、単体でも素晴らしい原画をさらに光らせている会場の“演出”にも圧倒された。高校毎でブースが設けられているのだが、原画の展示されている壁が伊達工業は鉄壁を、音駒は鳥籠をイメージして作られており、稲荷崎は大量の実物の提灯がぶら下げられており雰囲気がガラッと変わった。白鳥沢に至っては「このチームが主役の漫画であったかな」と錯覚を起こしそうになるくらい豪華なセットであった。もう少し掘り下げると、優に2メートルを超す大きなパネルが屏風のように連なっているのだが、そこには白鳥沢のスターティングメンバ―全員が1人ずつ描かれており、パネルの角度故だろうか、1人1人と目が合うようになっており“王者の風格”がひしひしと伝わってきた。これは近くで見ても勿論良いのだが、“引き”でも魅せており様々な視点で楽しめる仕掛けが凝らされていることに気が付いた。他にも天井部分からは横断幕などが吊り下げられており、空間の使い方が非常に上手だと感じた。左右だけでも手一杯であるのに上にも注目しなければいけなく、個人的には「目がいくつあっても足りない…」と思った。
古舘先生の苦労、愛情、エネルギーなど全てが凝縮された原画がこの上なく素晴らしいことのみならず、会場の演出にも力が入っており、『ハイキュー!!』が沢山の人に愛されている作品であることを改めて感じた。
29『もう一つの「バルス」』(書籍)
木原浩勝/講談社/2016年
〈あらすじ〉
あの名シーン「バルス」にはもう一つのアイデアが存在した。宮崎駿監督の姿を制作進行として間近で見続けた著者が『天空の城ラピュタ』誕生30年に初めて明かす名作アニメの創作秘話。ジブリファン、アニメファンだけでなく、多くの方にオススメしたい感動のノンフィクション!
『天空の城ラピュタ』に制作進行として携わった木原浩勝氏による、当時の貴重な体験談が濃厚に描かれていた。今でこそ日本で知らない人はいないと言ってもよい「スタジオジブリ」の作品であるが、当時はまだ駆け出しで、人も金もそれから時間も足りていないギリギリの状態で回していたことが如実にわかる。
著者や宮崎駿監督の仕事ぶりは勿論、他のアニメーターの方についてもかなり触れられている。その中でも自身は、原画頭として参加した金田伊功氏が印象に残った。(本来原画頭、という枠はないが、本作はクレジット部分にもしっかりと登場する)彼は宮崎駿監督からも絶大なる信頼を置かれていたことがうかがえる。実際のシーンとして、探鉱町での大乱闘や凧に乗ったシータとパズーが竜の巣を通過しラピュタに軟着陸するシーン、ゴリアテの攻撃で被弾するタイガーモス号などの場面は、金田氏に描いてもらうことを前提に、コンテを宮崎駿監督は作っていたらしい。独特な形状と飛び方でみる者を惹きつけるフラップターも、金田氏がデザインしたようだ。
さらには宮崎駿監督が『天空の城ラピュタ』において、様々なルートを考えていたことが明らかになっている。最後の展開も2パターンあったらしく、採用されなかった方も非常に面白く、こちらも観てみたい気持ちが高まった。
30『アイドリッシュセブン』(アプリゲーム)
種村有菜(キャラクター原案)/都志見文太(シナリオ)/G2studio(開発)/バンダイナムコオンライン(発売元)/2015年~
〈あらすじ〉
父親が経営する「小鳥遊事務所」に入社した小鳥遊紡は、デビュー前のアイドルグループのマネージャーを担当することになる。そこで紹介されたのは、和泉一織、二階堂大和、和泉三月、四葉環、逢坂壮五、六弥ナギ、七瀬陸の7人。それぞれに個性豊かな彼らは、思わず応援したくなる不思議な魅力を持っていた。ところが社長命令で、デビューできるのは3人だけということに…。そのメンバーを選ぶためのオーディションが行われる。(公式ホームページより)
とんでもないものに手を出してしまった。コロナ禍真っただ中の2021年春休み、時間にもゆとりがある故、何か普段触れない作品にもとりあえず挑戦してみよう、といった極々軽い気持ちだった。アイドリッシュセブンはその名の通り、男性アイドルたちのお話である。しかしながら私は、これまでの人生2次元のみならず3次元も含め、“アイドル”にたったの1度も熱を上げたことはなかった。それがどうしたことか。アイドリッシュセブンのおかげで完全に新しい扉を開いてしまったのか、このコンテンツに触れない日はない。
魅力について語り尽くすとなると、枚挙にいとまがなくなりそうなので、自身が最も圧倒されたものだけをピックアップしようと思う。それは「物語」である。アイドル、と言うとキラキラした世界のみを連想しがちだが、本作はその“裏側”にまでスポットライトをしっかりと当てている。むしろ表舞台に立つアイドル達は「体中に精一杯、銀紙を張り付けて星のフリをしている」のだ。また骨太なストーリーのおかげで、登場人物一人一人の個性が際立ち、実在する人物かのように思えてくる。それぞれが抱えているものにも注目してほしい。
油断をしていると、いとも簡単にサクッと心を殺られる作品なので、これからも構えつつ楽しみたいと思う。
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