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新4年 鈴石
RES
春休み課題 11~20
11.『雪と墨 一巻』(マンガ)
著者:Marita
<あらすじ>
会社員の常盤と、その従兄弟の浅葱。二人は同居しており何気ない日常を過ごしている。そんな二人だったが常盤の誕生日の夜、酔った拍子にお互いが抱える秘密について打ち明けてしまう。
転生者とタイムトラベラーというSFチックな設定が、日常系の物語に溶け込んでいた。タイムトラベラーは一年間しか、その時代にいることができないという設定が浅葱の告白後すぐ明らかになるため、序盤から二人の別離は見えている。そのため、何気ない日常がとても切なく感じた。
二人の人物像も一見とてもいい人たちだが、ここまでできた人格者はそうそうおらず、現実感がないので、より二人の積み重ねてきた人生の長さを感じる。常盤は天寿を全うしたことは今までなかったが、それでも前世を覚えていることで、あの人格が形成されていったことがひしひしと伝わってきた。
また、物語のキーとなるものが「音」というピアノの曲であるのも、転生したり時代を超えたりして外見などが変化しても、耳が聞こえる限り、変わらず残る拠り所のような存在に思えてくる。
12.『雪と墨 二巻』(マンガ)
著者:Marita
<あらすじ>
浅葱がどのような経緯で常盤のいる時代に訪れたのかが明かされる。また常盤、浅葱、積木の三人で年越しをすることになるが…。
途中で散髪するシーンが出てきたことで、時間経過が分かりやすく、それゆえに別離の時が迫っている実感がわいてしまい余計に切なくなった。
また、二人以外のタイムトラベラーや転生者の登場によって、二人時々積木で完結していた世界が広がっていくのも印象に残った。自分が知り得なかった情報を周囲の人から教えてもらうことで、よりタイムトラベラーや転生者という存在の不確実性が強まる結果になったが、そんなグラグラな状態でも大切に日々を積み重ねていく姿が丁寧に描かれていたと感じた。
転生者についての謎は次巻以降の内容だと思うので、気長に待ちたい。
13.『クジラの子らは砂上に歌う 1~5巻』(マンガ)
<あらすじ>
砂の海を漂う泥クジラ。そこでは、サイミアと呼ばれる不思議な力を使う「印」と、サイミアを使えない「無印」が共存し穏やかに暮らしていた。外の世界に憧れを持ちつつ日常を送っていたある日、泥クジラの少年チャクロは漂着した船で少女と出会う。
綺麗な絵柄で残酷な描写が多く、引き込まれる作品だと思った。世界観も作りこまれており、外の世界の情勢に翻弄される泥クジラの人々の姿も悲痛なものだった。
しかし、そうした中でも、「戦いたくない」「傷つけたくない」という意思を持ち続けて、外の人々に友好的に接するスオウのもと、泥クジラの人々が団結していたことから、彼らの優しい人柄が伝わってくるようだった。一方で、みんながやりたがらない汚れ仕事を請け負ってきたであろう団長からは諦観が感じられ、周囲にも人が寄り付かず、スオウと彼の対比も目を引くものがあった。
14.『光が死んだ夏』(マンガ)
著者:モクモクれん
<あらすじ>
ある集落での話。よしきと光は幼馴染だったが、よしきは今隣にいる光は光ではないことに気付く。それでも友人の姿の「なにか」と、その後も日常を送ることに決めたよしきだった。そうした中、集落で不可解な事件が発生する。
夜に読んだことを後悔するくらい、自分の中では怖く感じられた。一方で、よしきに縋る「なにか」と光らしき「なにか」に縋るよしきという、共依存のような関係性はとても興味深かった。よしきに「なにか」を恐れる心は当然あるが、それ以上に、繊細で複雑な感情のうえに二人の関係が成り立っている点が印象的だった。
また、繊細で複雑な感情をよしきと元の光が持っているのは当たり前のことだが、年齢という概念すらないであろう「なにか」さえも、幼さを含んだ複雑な感情を持っていることも印象的だった。これにより、顔が崩れている描写の時でさえ、「なにか」に人間味を感じることができたのだと思う。
15.『STAYGOLD 1~3巻』(マンガ)
著者:秀良子
<あらすじ>
中山家は叔父兄弟と甥姪の四人暮らし。血がつながっていたりいなかったりと複雑な家庭だが、平凡な毎日をそれなりに穏やかに送っていた。しかし、甥である駿人はある日、叔父の優士に告白をする。
複雑な家庭で複雑な感情が入り乱れていた。しかし、ドロドロとした印象はなく、駿人の学校生活や成長にも焦点が当たっていた。むしろリアルにそこが描かれていた分、駿人の成長スピードに怯えに似た感情を抱く優士の気持ちがよく伝わってきて、想いにそうそう応えられないこともよく伝わってきた。
また、血の繋がらない姉への想いを「家族だから」と蓋をした優士と、「家族だから」という枠組みを飛び越えてくる駿人の対比が痛々しいと感じた。このことが二人の間に横たわり、駿人の成長に優士の理解が追い付くことがない限り、優士は駿人の想いに正面から向き合うことも出来ないのではないかと思う。
駿人の妹の菊花がとても癒しの存在だった。
16.『霧雨ロマンス 1~40話』(マンガ)
著者:WINSTON
<あらすじ>
唯人は同じクラスの修二に想いを寄せる。しかし、性格は正反対であり、言葉足らずなこともあり、すれ違ってしまうことが多い二人だが…。
韓国の生活様式が描かれていて面白かった。
唯人と修二の、絶妙に言葉が足りずに噛み合ってない関係性がリアルだなと思った。そこから互いに思っていることを打ち明けていくことで相手のことを知る姿からは、恋愛に限らず対人関係において、やはり対話の大切さを感じる。
また、二人だけの問題に止まらず、双方の母親の存在が物語に影を落とす点からは、毒親をテーマにしている作品であるとも感じられた。特に唯人の母親が顕著であり、今後不安が付きまとう展開になりそうだと思う。
17.『煉獄に笑う 1~10巻』(マンガ)
著者:唐々煙
<あらすじ>
『曇天に笑う』の300年前の時間軸。戦国時代、石田佐吉は秀吉の命により「髑髏鬼灯」を持ち帰るため、曇神社を訪れる。
芭恋の近江への愛情と伊賀への愛情とで板挟みになる姿が印象的であり、母である旭と重なった。作中で旭に似ていると言われていたのは阿国の方だったが、こうした姿が重なることによって、むしろ内面の方は芭恋の方が母に似ているのではないかと思わされる。また、佐吉と阿国が良い雰囲気になることで、二人のことは愛していても、どこか疎外感を感じていたであろう芭恋が、伊賀にて居場所を見つけることは必然だったと考える。
丹波と旭の決別の理由は、お互いに譲れない価値観があったためだが、その価値観の歩み寄りを芭恋と行ったこと、そしてその価値観を認めやってみろと送り出したことは、丹波なりの父親としての接し方だと感じる。価値観の相違を埋めることは家族全員ではできなかったが、父と息子という関係性の中だけでもできたことは、家族という観念が希薄な彼らにとってむずがゆくも良い経験だったのではないかと思った。
18.『D.Gray-man 1~6巻』(マンガ)
著者:星野桂
<あらすじ>
「機械」「魂」「悲劇」をもとに造られる悪性兵器・AKUMA。AKUMMAを製造することで世界を終焉させようとする千年伯爵に対抗するため、エクソシスト・アレンは戦いに身を投じる。
アニメを少し見ていたが、マンガは初めて読んだ。久しぶりに紙面で見ても、AKUMAの美しいがおどろおどろしいその姿に圧倒された。
アレンのエクソシストとして以前に、人としての善悪の価値観で人を救おうとする姿は、正にジャンプ作品の主人公然としていると感じた。しかし、救出に成功したと思われた人物が目の前で殺されたりと、決して人道が勝つ世界ではないことが痛いほど伝わった。
戦いから逃げたくても逃げることを許されなかった登場人物の末路には救いがなく、社会を牛耳る権力者のような人物はまだ登場していないはずなのに、何かからの支配から逃れられない人間の無力さを感じる。
19.『線上の犬 1~2巻』(マンガ)
著者:墨田モト
<あらすじ>
人と人ならざるものが暮らす世界。その均衡を守る法務省特類種管理局で働く松葉のもとに、相棒として鬼科吸血属(通称・吸血鬼)のネイトがやってくる。彼は「人間になりたい」と願っていた。
『妖怪人間ベム』を彷彿とさせるとネイトを見て感じた。少しでも人間から見ておかしいと感じる行動をすれば、捕らえられてしまう様子からは、人間優位な世界が見て取れる。人ならざるものとして特殊な力を秘めている彼らが自分たちに害をなさないようにと抑圧し、抑圧される側も面倒を嫌いおとなしくする。不健全な社会だと感じるが、よくありそうな世界観だと思ってしまうのは、現実でも似たような社会が多く存在する、または過去にあったからかと考えさせられた。
一方で松葉が幼少期、雪女に助けられ、そのお礼を雪女も警戒を解いて受け入れた場面からは、そうした不健全な社会の中でも、温かな触れ合いが可能という希望が見えてホッとした。
20.『ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 1~3巻』(マンガ)
著者:泰三子
<あらすじ>
新米女性警察官・川合のもとに刑事課から配属された藤が現れる。コンビを組むことになった二人だったが…。
元現役警察官が描いただけあって、物語の隙間から漏れ出てくる本音が生々しかった。ハードワークをコミカルに描きつつ、時には犯罪の恐怖を、時には被害者を助けることへの情熱を感じさせるストーリーは、とても興味深かった。
また、先輩である藤とコンビを組む川合も、ふてぶてしくなっていくという面での成長と、警察としての成長が丁寧に描写されていた。職務面でも態度でも息の合った行動をする二人の姿を見ていると、周囲の警察仲間の彼女らに対する信頼も苦労も、自分のことのように思えてきた。
11.『雪と墨 一巻』(マンガ)
著者:Marita
<あらすじ>
会社員の常盤と、その従兄弟の浅葱。二人は同居しており何気ない日常を過ごしている。そんな二人だったが常盤の誕生日の夜、酔った拍子にお互いが抱える秘密について打ち明けてしまう。
転生者とタイムトラベラーというSFチックな設定が、日常系の物語に溶け込んでいた。タイムトラベラーは一年間しか、その時代にいることができないという設定が浅葱の告白後すぐ明らかになるため、序盤から二人の別離は見えている。そのため、何気ない日常がとても切なく感じた。
二人の人物像も一見とてもいい人たちだが、ここまでできた人格者はそうそうおらず、現実感がないので、より二人の積み重ねてきた人生の長さを感じる。常盤は天寿を全うしたことは今までなかったが、それでも前世を覚えていることで、あの人格が形成されていったことがひしひしと伝わってきた。
また、物語のキーとなるものが「音」というピアノの曲であるのも、転生したり時代を超えたりして外見などが変化しても、耳が聞こえる限り、変わらず残る拠り所のような存在に思えてくる。
12.『雪と墨 二巻』(マンガ)
著者:Marita
<あらすじ>
浅葱がどのような経緯で常盤のいる時代に訪れたのかが明かされる。また常盤、浅葱、積木の三人で年越しをすることになるが…。
途中で散髪するシーンが出てきたことで、時間経過が分かりやすく、それゆえに別離の時が迫っている実感がわいてしまい余計に切なくなった。
また、二人以外のタイムトラベラーや転生者の登場によって、二人時々積木で完結していた世界が広がっていくのも印象に残った。自分が知り得なかった情報を周囲の人から教えてもらうことで、よりタイムトラベラーや転生者という存在の不確実性が強まる結果になったが、そんなグラグラな状態でも大切に日々を積み重ねていく姿が丁寧に描かれていたと感じた。
転生者についての謎は次巻以降の内容だと思うので、気長に待ちたい。
13.『クジラの子らは砂上に歌う 1~5巻』(マンガ)
<あらすじ>
砂の海を漂う泥クジラ。そこでは、サイミアと呼ばれる不思議な力を使う「印」と、サイミアを使えない「無印」が共存し穏やかに暮らしていた。外の世界に憧れを持ちつつ日常を送っていたある日、泥クジラの少年チャクロは漂着した船で少女と出会う。
綺麗な絵柄で残酷な描写が多く、引き込まれる作品だと思った。世界観も作りこまれており、外の世界の情勢に翻弄される泥クジラの人々の姿も悲痛なものだった。
しかし、そうした中でも、「戦いたくない」「傷つけたくない」という意思を持ち続けて、外の人々に友好的に接するスオウのもと、泥クジラの人々が団結していたことから、彼らの優しい人柄が伝わってくるようだった。一方で、みんながやりたがらない汚れ仕事を請け負ってきたであろう団長からは諦観が感じられ、周囲にも人が寄り付かず、スオウと彼の対比も目を引くものがあった。
14.『光が死んだ夏』(マンガ)
著者:モクモクれん
<あらすじ>
ある集落での話。よしきと光は幼馴染だったが、よしきは今隣にいる光は光ではないことに気付く。それでも友人の姿の「なにか」と、その後も日常を送ることに決めたよしきだった。そうした中、集落で不可解な事件が発生する。
夜に読んだことを後悔するくらい、自分の中では怖く感じられた。一方で、よしきに縋る「なにか」と光らしき「なにか」に縋るよしきという、共依存のような関係性はとても興味深かった。よしきに「なにか」を恐れる心は当然あるが、それ以上に、繊細で複雑な感情のうえに二人の関係が成り立っている点が印象的だった。
また、繊細で複雑な感情をよしきと元の光が持っているのは当たり前のことだが、年齢という概念すらないであろう「なにか」さえも、幼さを含んだ複雑な感情を持っていることも印象的だった。これにより、顔が崩れている描写の時でさえ、「なにか」に人間味を感じることができたのだと思う。
15.『STAYGOLD 1~3巻』(マンガ)
著者:秀良子
<あらすじ>
中山家は叔父兄弟と甥姪の四人暮らし。血がつながっていたりいなかったりと複雑な家庭だが、平凡な毎日をそれなりに穏やかに送っていた。しかし、甥である駿人はある日、叔父の優士に告白をする。
複雑な家庭で複雑な感情が入り乱れていた。しかし、ドロドロとした印象はなく、駿人の学校生活や成長にも焦点が当たっていた。むしろリアルにそこが描かれていた分、駿人の成長スピードに怯えに似た感情を抱く優士の気持ちがよく伝わってきて、想いにそうそう応えられないこともよく伝わってきた。
また、血の繋がらない姉への想いを「家族だから」と蓋をした優士と、「家族だから」という枠組みを飛び越えてくる駿人の対比が痛々しいと感じた。このことが二人の間に横たわり、駿人の成長に優士の理解が追い付くことがない限り、優士は駿人の想いに正面から向き合うことも出来ないのではないかと思う。
駿人の妹の菊花がとても癒しの存在だった。
16.『霧雨ロマンス 1~40話』(マンガ)
著者:WINSTON
<あらすじ>
唯人は同じクラスの修二に想いを寄せる。しかし、性格は正反対であり、言葉足らずなこともあり、すれ違ってしまうことが多い二人だが…。
韓国の生活様式が描かれていて面白かった。
唯人と修二の、絶妙に言葉が足りずに噛み合ってない関係性がリアルだなと思った。そこから互いに思っていることを打ち明けていくことで相手のことを知る姿からは、恋愛に限らず対人関係において、やはり対話の大切さを感じる。
また、二人だけの問題に止まらず、双方の母親の存在が物語に影を落とす点からは、毒親をテーマにしている作品であるとも感じられた。特に唯人の母親が顕著であり、今後不安が付きまとう展開になりそうだと思う。
17.『煉獄に笑う 1~10巻』(マンガ)
著者:唐々煙
<あらすじ>
『曇天に笑う』の300年前の時間軸。戦国時代、石田佐吉は秀吉の命により「髑髏鬼灯」を持ち帰るため、曇神社を訪れる。
芭恋の近江への愛情と伊賀への愛情とで板挟みになる姿が印象的であり、母である旭と重なった。作中で旭に似ていると言われていたのは阿国の方だったが、こうした姿が重なることによって、むしろ内面の方は芭恋の方が母に似ているのではないかと思わされる。また、佐吉と阿国が良い雰囲気になることで、二人のことは愛していても、どこか疎外感を感じていたであろう芭恋が、伊賀にて居場所を見つけることは必然だったと考える。
丹波と旭の決別の理由は、お互いに譲れない価値観があったためだが、その価値観の歩み寄りを芭恋と行ったこと、そしてその価値観を認めやってみろと送り出したことは、丹波なりの父親としての接し方だと感じる。価値観の相違を埋めることは家族全員ではできなかったが、父と息子という関係性の中だけでもできたことは、家族という観念が希薄な彼らにとってむずがゆくも良い経験だったのではないかと思った。
18.『D.Gray-man 1~6巻』(マンガ)
著者:星野桂
<あらすじ>
「機械」「魂」「悲劇」をもとに造られる悪性兵器・AKUMA。AKUMMAを製造することで世界を終焉させようとする千年伯爵に対抗するため、エクソシスト・アレンは戦いに身を投じる。
アニメを少し見ていたが、マンガは初めて読んだ。久しぶりに紙面で見ても、AKUMAの美しいがおどろおどろしいその姿に圧倒された。
アレンのエクソシストとして以前に、人としての善悪の価値観で人を救おうとする姿は、正にジャンプ作品の主人公然としていると感じた。しかし、救出に成功したと思われた人物が目の前で殺されたりと、決して人道が勝つ世界ではないことが痛いほど伝わった。
戦いから逃げたくても逃げることを許されなかった登場人物の末路には救いがなく、社会を牛耳る権力者のような人物はまだ登場していないはずなのに、何かからの支配から逃れられない人間の無力さを感じる。
19.『線上の犬 1~2巻』(マンガ)
著者:墨田モト
<あらすじ>
人と人ならざるものが暮らす世界。その均衡を守る法務省特類種管理局で働く松葉のもとに、相棒として鬼科吸血属(通称・吸血鬼)のネイトがやってくる。彼は「人間になりたい」と願っていた。
『妖怪人間ベム』を彷彿とさせるとネイトを見て感じた。少しでも人間から見ておかしいと感じる行動をすれば、捕らえられてしまう様子からは、人間優位な世界が見て取れる。人ならざるものとして特殊な力を秘めている彼らが自分たちに害をなさないようにと抑圧し、抑圧される側も面倒を嫌いおとなしくする。不健全な社会だと感じるが、よくありそうな世界観だと思ってしまうのは、現実でも似たような社会が多く存在する、または過去にあったからかと考えさせられた。
一方で松葉が幼少期、雪女に助けられ、そのお礼を雪女も警戒を解いて受け入れた場面からは、そうした不健全な社会の中でも、温かな触れ合いが可能という希望が見えてホッとした。
20.『ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 1~3巻』(マンガ)
著者:泰三子
<あらすじ>
新米女性警察官・川合のもとに刑事課から配属された藤が現れる。コンビを組むことになった二人だったが…。
元現役警察官が描いただけあって、物語の隙間から漏れ出てくる本音が生々しかった。ハードワークをコミカルに描きつつ、時には犯罪の恐怖を、時には被害者を助けることへの情熱を感じさせるストーリーは、とても興味深かった。
また、先輩である藤とコンビを組む川合も、ふてぶてしくなっていくという面での成長と、警察としての成長が丁寧に描写されていた。職務面でも態度でも息の合った行動をする二人の姿を見ていると、周囲の警察仲間の彼女らに対する信頼も苦労も、自分のことのように思えてきた。
新4年 鈴石
RES
春休み課題 1~10
1.『吸血鬼すぐ死ぬ』(アニメ)
原作:盆ノ木至
監督: 神志那弘志
<あらすじ>
子供が行方不明になったという依頼を受け、退治人・ロナルドは真祖にして無敵とされる高等吸血鬼・ドラルクが住む城に向かう。しかし、ドラルクはほんの少しの衝撃(物理・精神ともに)で死ぬ最弱吸血鬼だった。ひょんなことから城が爆発し、シンヨコにあるロナルドの事務所に居着いてしまったドラルク(とジョン)との生活が始まる。
原作の話を順番通りではなく、初見向けにキャラクターやその関係性について分かりやすいようにまとめてあるのはありがたいと感じた。
タイトルそのままの内容で、基本頭を空にして楽しめるギャグではあるが、所々に舞台となるシンヨコの異様な光景、人外である吸血鬼と人間の相違など、シリアスにとらえられる仕掛けがいくつもあり、作品の世界観を真面目に深く考える楽しみ方もできた。特に祭りにて、ヒナイチが“あちら側”に足を踏み入れてしまう回では、普段のギャグに振り切った吸血鬼たちだけがこの世界に存在しているのではなく、“人間にとって危険ななにか”とも、ふとした拍子に連れ去られてしまうような距離感にいることに背筋が冷たくなった。また、この回でドラルクがさり気なくヒナイチを助けたり、ロナルドが吸血鬼を撃つ際には決して笑わないなど、1クールのなかでもキャラクターのギャップなどの魅力が詰まっていた。
二期制作も発表されたので楽しみにしたい。
2.『呪術廻戦18巻』(マンガ)
著者:芥見下々
<あらすじ>
「死滅回遊」平定の協力を秤金次に仰ぎに行った虎杖は、賭け試合に出場し秤本人とコンタクトを取ることを試みる。一方伏黒もパンダと合流し虎杖のフォローに回ろうとするが、綺羅羅に見つかり交戦を余儀なくされる。
初登場キャラクターの綺羅羅の戦い方がとても魅力的だった。一見して彼の術式は、戦闘において使い勝手がよくないように見えたが、性質を上手く活用しており、頭を使った戦いが求められる点が、ガチンコ勝負とは違った面白さがあった。また、パワータイプのやり取りも虎杖と秤の交渉から見られるので、一冊でタイプの異なる二種類の戦闘シーンを楽しむことができる。
日車は直近でドラマ『99.9』を観ていたので、少し重なった。検察と弁護士の予算と人数の問題は『99.9』ではそこまで焦点を当てられていなかったが、こうした不条理を突き付けられ続ければ人間がどう変化していくかなど検討は付き、日車もやはり、行動原理に実直な善人らしさもあれど、『呪術廻戦』という作品に適した人物像なのだなと考えさせられる。
3.『捜査線上の夕映え』(小説)
著者:有栖川有栖
<あらすじ>
大阪のマンションで男性の撲殺死体が発見される。容疑者は早い段階で浮上するものの、決定打に欠け捜査は難航する。
コマチが黛との関係性を隠した理由については本人もはっきりと理解しておらず、もやもやしなかったとは言えない。しかし、人間の白黒つけられない感情をコマチの様子然り、事件の全容からも考えさせられた。
今回の作品はトリックというよりは、帯に「圧倒的にエモーショナルな本格ミステリ」とあるように、心の機微に焦点が当たっていた。心なしか、アリスから見た火村の様子も、彼の人間味溢れる姿がいつも以上に強調されていたように感じた。『狩人の悪夢』のように火村の悪夢に踏み込むことはせず、ただ傍にいるというスタンスでアリスがいたことにより、絵的に静かな場面が続いたことも要因かと思われる。
4.『鍵の掛かった男』(小説)
著者:有栖川有栖
<あらすじ>
推理作家の有栖川有栖は、作家である影浦浪子から奇妙な相談を受ける。中之島のホテルにて梨田稔という人物が死亡し警察は自殺と断定したが、その結論に疑問を持っているという。有栖川及び彼の友人・火村英生に調査を依頼したいという、彼女の相談を引き受け調査に乗り出した有栖川だが、梨田の過去は容易にはつかめず難航するのだった。
火村英生シリーズの中でも長編の部類に入る作品であるが、この厚みがそのまま、作中でアリスが丁寧に梨田という人物に向き合ってきた証のように読了後には感じられる。火村が「お前はよくやったよ」とアリスを労う場面があるように、この事件は恐らくアリスのとった方法のように、人と場所に向き合い、時間をかけることで解決に至るものだったのではないかと思う。重要な証言をする人物の登場さえも、証拠をつかみその人物に会いに行ったわけではなく、その時点まで粘ったからこそ得られたものだった。
この作品は、他の火村英生シリーズのように火村が活躍する話を読みたい人は少し不満に感じるかもしれないが、『46番目の密室』の頃と比べて変化を感じるアリスの姿は印象に残った。
5.『鬼滅の刃 遊郭編』(アニメ)
原作:吾峠呼世晴
監督:外崎春雄
<あらすじ>
無限列車の任務から療養を経て、炭治郎・善逸・伊之助は音柱である宇髄とともに任務にあたることになる。向かう先は遊郭であり、炭治郎たちは情報収集のため、それぞれ鬼が潜む疑いのある店に潜入することとなる。
妓夫太郎と梅(堕姫)と竈兄妹の対比が印象的だった。妓夫太郎たちが育った劣悪な環境を考えると、あの二人には選択肢なんてものはなく、周囲の悪意が妓夫太郎と梅という鬼を作り上げたように感じる。
また、竈兄妹のあの優しさも周囲の人々によって培われたものではないかと思った。思い出にある彼らの家族は温かく、本人たちの性格もあれど、なるべくしてあの優しすぎる性格になったと感じられる。環境が人をつくるということを描いている作品は多くあるが、ここでも敵対キャラクターという形で分かりやすく描写されていた。
何故禰豆子があそこまで強いのかなど、疑問が尽きないが後に明かされることを期待して、次のシリーズを楽しみにしたい。
6.『時光代理人』(アニメ)
原案:INPLICK
監督:李豪凌
<あらすじ>
「時光写真館」には、二人の特殊能力を持つ青年がいる。写真の世界に入ることができるトキと、写真撮影後の12時間にあった出来事を知ることができるヒカルは、幼馴染のリンが窓口となって持ち込まれる依頼をこなしていく。「過去を変えてはならない」という絶対のルールのもと依頼を解決してきた二人だったが、感情移入しがちのトキは、ある依頼で過去に干渉してしまう。
行動的なトキと思慮深いヒカルでバランスがとれていたと感じた。
また、リンは特殊能力がないなら目立つ活躍もないのかなと思っていたが、後半になるにつれトキと幼馴染という設定が活きていき、ヒカルとは別の角度でトキの心の支えになっていたことが実感できた。だからこそ、ラストでトキがヒカルとリンを失ったことの重みがより強く感じられる。
物語の構成は、序盤のうちは一話完結かと思ったが、徐々に数話またがる構成になっていき、終盤でまた一話の謎に戻る展開は、救いはなかったがとても面白かった。展開が読めず、二期のPVを見てもトキたちが無事なのかさえはっきりしないため、しばらく待つことになりそうだが、続編を期待したい。
7.『十角館 一巻』(マンガ)
著者:清原紘
原作:綾辻行人
<あらすじ>
ある大学の推理研究会の面々は、角島という無人島を訪れる。そこには半年前に凄惨な事件が起きた青屋敷跡と、奇妙な建物である十角館があり、彼らはそこで合宿を行うが…。
角島と本土の様子が交互に描かれており、本土で明るみになった情報が角島の面々に伝わらないのが、緊迫感を助長させていたように思う。殺人事件は一巻の終わりの方で起こるが、それ以前にも不可解な出来事が起こり、いつ死体が登場してもおかしくないような不気味さがずっとあった。
一巻なのでまだ全容は把握できていないが、そのうちマンガ版か小説で読破したいと思う。
8.『チェンソーマン 2巻』(マンガ)
著者:藤本タツキ
<あらすじ>
コウモリの悪魔と激戦となるデンジ。欲望を原動力に善戦するが、新たな悪魔に遭遇してしまう。さらにマキマから銃の悪魔についても語られ…。
人としての人生を歩めなかったデンジが、人が当然に抱く欲望を一つずつ消化していく物語だと感じる。デンジがパワーに約束させた「胸を揉む」という行動も、デンジと同じ年齢の平凡に生きてきた青年の中には、既に経験している人も普通に存在すると思う。そんな望みを、とても大きな夢として命すら掛けるデンジの姿は、まっとうに生きてきた人にしてみれば「頭のネジがはずれている」と思うのだろうが、欲望に忠実に生きて消化していく彼は、こうして人間になっていくのだなと感じた。
姫野と元バディの彼女とのやり取りの中で、いつもデンジと対照的に描かれるアキの、年相応の生意気さが描かれていたのが印象に残った。デンジとの初対面以降もちょくちょく描かれてはいたが、アキの見かけによらず優等生なだけではない面が、姫野との関係性からより明らかになったように思う。
また、デンジが欲望に沿って行動するからか、展開の中で性的な雰囲気を含む描写が多かったが、どれも女性主導となっている点も印象深かった。
9.『チェンソーマン 3巻』(マンガ)
著者:藤本タツキ
<あらすじ>
悪魔に空間を閉ざされピンチに陥る四課のメンバーたちだが、その時デンジが頭のねじの吹っ飛んだ作戦を思いつく。
デビルハンターという特殊な環境に慣れていき、一見どこかぶっ飛んだ人物に見えた姫野だったが、やはり最期まで普通の感覚を捨てきれなかった人物として描かれていた。幽霊の悪魔に自分のすべてを与えたことで存在自体が消えてしまった姫野だが、そうせざるを得なかった理由がアキを助けるためだった点からも、好きな人を守りたいという普通の感覚により自分を犠牲にすることを選択したことが見て取れると考える。これを踏まえると、裏表紙の姫野の眼帯のハイライトが、なんとなくハートに見えることとも重なるように、個人的に思えた。
また、建物からの脱出のためにデンジがたてた作戦が、あまりにも常軌を逸していたことも、姫野の普通の感覚を引き立てていたように思う。戦死した仲間の墓参りをするだけで「お前は普通だ」と上司に言われるような環境においても、デンジが異質な存在と見なされていることがよくわかった。
10.『SERVAMP-サーヴァンプ‐ 1~13巻』(マンガ)
著者:田中ストライク
<あらすじ>
高校一年生の城田真昼は、ある日道端で黒猫を拾うが、その正体はサーヴァンプという吸血鬼だった。契約により黒猫もとい、クロと名付けたサーヴァンプの主人となる真昼だが、吸血鬼同士の諍いに身を投じることになってしまう。
人によっては真昼の人物像に苛立つこともあると思うが、それも見越しているかのように、作中で何度も「自分を正義と思うな」というメッセージを突き付けられるのが印象的だった。敵対する人物や団体にも考えがあるということは、どの作品にも描かれているものだが、この作品ではそれが主軸になっているのかなと思う。
また、塔間と真昼、塔間と吊戯の関係性の対比が印象に残った。恐らく血がつながっている塔間と真昼よりも、吊戯との関係性の方が家族のように見える。しかし、真昼と吊戯の仲がC3の一件で深まったことで、ここの関係性も疑似兄弟のように見えた。
そして、このようなシビアな内容を主軸に据えている状態で、絵柄が可愛らしいことが、ピエロに感じる恐怖にも通じて、どことなく不気味だった。
1.『吸血鬼すぐ死ぬ』(アニメ)
原作:盆ノ木至
監督: 神志那弘志
<あらすじ>
子供が行方不明になったという依頼を受け、退治人・ロナルドは真祖にして無敵とされる高等吸血鬼・ドラルクが住む城に向かう。しかし、ドラルクはほんの少しの衝撃(物理・精神ともに)で死ぬ最弱吸血鬼だった。ひょんなことから城が爆発し、シンヨコにあるロナルドの事務所に居着いてしまったドラルク(とジョン)との生活が始まる。
原作の話を順番通りではなく、初見向けにキャラクターやその関係性について分かりやすいようにまとめてあるのはありがたいと感じた。
タイトルそのままの内容で、基本頭を空にして楽しめるギャグではあるが、所々に舞台となるシンヨコの異様な光景、人外である吸血鬼と人間の相違など、シリアスにとらえられる仕掛けがいくつもあり、作品の世界観を真面目に深く考える楽しみ方もできた。特に祭りにて、ヒナイチが“あちら側”に足を踏み入れてしまう回では、普段のギャグに振り切った吸血鬼たちだけがこの世界に存在しているのではなく、“人間にとって危険ななにか”とも、ふとした拍子に連れ去られてしまうような距離感にいることに背筋が冷たくなった。また、この回でドラルクがさり気なくヒナイチを助けたり、ロナルドが吸血鬼を撃つ際には決して笑わないなど、1クールのなかでもキャラクターのギャップなどの魅力が詰まっていた。
二期制作も発表されたので楽しみにしたい。
2.『呪術廻戦18巻』(マンガ)
著者:芥見下々
<あらすじ>
「死滅回遊」平定の協力を秤金次に仰ぎに行った虎杖は、賭け試合に出場し秤本人とコンタクトを取ることを試みる。一方伏黒もパンダと合流し虎杖のフォローに回ろうとするが、綺羅羅に見つかり交戦を余儀なくされる。
初登場キャラクターの綺羅羅の戦い方がとても魅力的だった。一見して彼の術式は、戦闘において使い勝手がよくないように見えたが、性質を上手く活用しており、頭を使った戦いが求められる点が、ガチンコ勝負とは違った面白さがあった。また、パワータイプのやり取りも虎杖と秤の交渉から見られるので、一冊でタイプの異なる二種類の戦闘シーンを楽しむことができる。
日車は直近でドラマ『99.9』を観ていたので、少し重なった。検察と弁護士の予算と人数の問題は『99.9』ではそこまで焦点を当てられていなかったが、こうした不条理を突き付けられ続ければ人間がどう変化していくかなど検討は付き、日車もやはり、行動原理に実直な善人らしさもあれど、『呪術廻戦』という作品に適した人物像なのだなと考えさせられる。
3.『捜査線上の夕映え』(小説)
著者:有栖川有栖
<あらすじ>
大阪のマンションで男性の撲殺死体が発見される。容疑者は早い段階で浮上するものの、決定打に欠け捜査は難航する。
コマチが黛との関係性を隠した理由については本人もはっきりと理解しておらず、もやもやしなかったとは言えない。しかし、人間の白黒つけられない感情をコマチの様子然り、事件の全容からも考えさせられた。
今回の作品はトリックというよりは、帯に「圧倒的にエモーショナルな本格ミステリ」とあるように、心の機微に焦点が当たっていた。心なしか、アリスから見た火村の様子も、彼の人間味溢れる姿がいつも以上に強調されていたように感じた。『狩人の悪夢』のように火村の悪夢に踏み込むことはせず、ただ傍にいるというスタンスでアリスがいたことにより、絵的に静かな場面が続いたことも要因かと思われる。
4.『鍵の掛かった男』(小説)
著者:有栖川有栖
<あらすじ>
推理作家の有栖川有栖は、作家である影浦浪子から奇妙な相談を受ける。中之島のホテルにて梨田稔という人物が死亡し警察は自殺と断定したが、その結論に疑問を持っているという。有栖川及び彼の友人・火村英生に調査を依頼したいという、彼女の相談を引き受け調査に乗り出した有栖川だが、梨田の過去は容易にはつかめず難航するのだった。
火村英生シリーズの中でも長編の部類に入る作品であるが、この厚みがそのまま、作中でアリスが丁寧に梨田という人物に向き合ってきた証のように読了後には感じられる。火村が「お前はよくやったよ」とアリスを労う場面があるように、この事件は恐らくアリスのとった方法のように、人と場所に向き合い、時間をかけることで解決に至るものだったのではないかと思う。重要な証言をする人物の登場さえも、証拠をつかみその人物に会いに行ったわけではなく、その時点まで粘ったからこそ得られたものだった。
この作品は、他の火村英生シリーズのように火村が活躍する話を読みたい人は少し不満に感じるかもしれないが、『46番目の密室』の頃と比べて変化を感じるアリスの姿は印象に残った。
5.『鬼滅の刃 遊郭編』(アニメ)
原作:吾峠呼世晴
監督:外崎春雄
<あらすじ>
無限列車の任務から療養を経て、炭治郎・善逸・伊之助は音柱である宇髄とともに任務にあたることになる。向かう先は遊郭であり、炭治郎たちは情報収集のため、それぞれ鬼が潜む疑いのある店に潜入することとなる。
妓夫太郎と梅(堕姫)と竈兄妹の対比が印象的だった。妓夫太郎たちが育った劣悪な環境を考えると、あの二人には選択肢なんてものはなく、周囲の悪意が妓夫太郎と梅という鬼を作り上げたように感じる。
また、竈兄妹のあの優しさも周囲の人々によって培われたものではないかと思った。思い出にある彼らの家族は温かく、本人たちの性格もあれど、なるべくしてあの優しすぎる性格になったと感じられる。環境が人をつくるということを描いている作品は多くあるが、ここでも敵対キャラクターという形で分かりやすく描写されていた。
何故禰豆子があそこまで強いのかなど、疑問が尽きないが後に明かされることを期待して、次のシリーズを楽しみにしたい。
6.『時光代理人』(アニメ)
原案:INPLICK
監督:李豪凌
<あらすじ>
「時光写真館」には、二人の特殊能力を持つ青年がいる。写真の世界に入ることができるトキと、写真撮影後の12時間にあった出来事を知ることができるヒカルは、幼馴染のリンが窓口となって持ち込まれる依頼をこなしていく。「過去を変えてはならない」という絶対のルールのもと依頼を解決してきた二人だったが、感情移入しがちのトキは、ある依頼で過去に干渉してしまう。
行動的なトキと思慮深いヒカルでバランスがとれていたと感じた。
また、リンは特殊能力がないなら目立つ活躍もないのかなと思っていたが、後半になるにつれトキと幼馴染という設定が活きていき、ヒカルとは別の角度でトキの心の支えになっていたことが実感できた。だからこそ、ラストでトキがヒカルとリンを失ったことの重みがより強く感じられる。
物語の構成は、序盤のうちは一話完結かと思ったが、徐々に数話またがる構成になっていき、終盤でまた一話の謎に戻る展開は、救いはなかったがとても面白かった。展開が読めず、二期のPVを見てもトキたちが無事なのかさえはっきりしないため、しばらく待つことになりそうだが、続編を期待したい。
7.『十角館 一巻』(マンガ)
著者:清原紘
原作:綾辻行人
<あらすじ>
ある大学の推理研究会の面々は、角島という無人島を訪れる。そこには半年前に凄惨な事件が起きた青屋敷跡と、奇妙な建物である十角館があり、彼らはそこで合宿を行うが…。
角島と本土の様子が交互に描かれており、本土で明るみになった情報が角島の面々に伝わらないのが、緊迫感を助長させていたように思う。殺人事件は一巻の終わりの方で起こるが、それ以前にも不可解な出来事が起こり、いつ死体が登場してもおかしくないような不気味さがずっとあった。
一巻なのでまだ全容は把握できていないが、そのうちマンガ版か小説で読破したいと思う。
8.『チェンソーマン 2巻』(マンガ)
著者:藤本タツキ
<あらすじ>
コウモリの悪魔と激戦となるデンジ。欲望を原動力に善戦するが、新たな悪魔に遭遇してしまう。さらにマキマから銃の悪魔についても語られ…。
人としての人生を歩めなかったデンジが、人が当然に抱く欲望を一つずつ消化していく物語だと感じる。デンジがパワーに約束させた「胸を揉む」という行動も、デンジと同じ年齢の平凡に生きてきた青年の中には、既に経験している人も普通に存在すると思う。そんな望みを、とても大きな夢として命すら掛けるデンジの姿は、まっとうに生きてきた人にしてみれば「頭のネジがはずれている」と思うのだろうが、欲望に忠実に生きて消化していく彼は、こうして人間になっていくのだなと感じた。
姫野と元バディの彼女とのやり取りの中で、いつもデンジと対照的に描かれるアキの、年相応の生意気さが描かれていたのが印象に残った。デンジとの初対面以降もちょくちょく描かれてはいたが、アキの見かけによらず優等生なだけではない面が、姫野との関係性からより明らかになったように思う。
また、デンジが欲望に沿って行動するからか、展開の中で性的な雰囲気を含む描写が多かったが、どれも女性主導となっている点も印象深かった。
9.『チェンソーマン 3巻』(マンガ)
著者:藤本タツキ
<あらすじ>
悪魔に空間を閉ざされピンチに陥る四課のメンバーたちだが、その時デンジが頭のねじの吹っ飛んだ作戦を思いつく。
デビルハンターという特殊な環境に慣れていき、一見どこかぶっ飛んだ人物に見えた姫野だったが、やはり最期まで普通の感覚を捨てきれなかった人物として描かれていた。幽霊の悪魔に自分のすべてを与えたことで存在自体が消えてしまった姫野だが、そうせざるを得なかった理由がアキを助けるためだった点からも、好きな人を守りたいという普通の感覚により自分を犠牲にすることを選択したことが見て取れると考える。これを踏まえると、裏表紙の姫野の眼帯のハイライトが、なんとなくハートに見えることとも重なるように、個人的に思えた。
また、建物からの脱出のためにデンジがたてた作戦が、あまりにも常軌を逸していたことも、姫野の普通の感覚を引き立てていたように思う。戦死した仲間の墓参りをするだけで「お前は普通だ」と上司に言われるような環境においても、デンジが異質な存在と見なされていることがよくわかった。
10.『SERVAMP-サーヴァンプ‐ 1~13巻』(マンガ)
著者:田中ストライク
<あらすじ>
高校一年生の城田真昼は、ある日道端で黒猫を拾うが、その正体はサーヴァンプという吸血鬼だった。契約により黒猫もとい、クロと名付けたサーヴァンプの主人となる真昼だが、吸血鬼同士の諍いに身を投じることになってしまう。
人によっては真昼の人物像に苛立つこともあると思うが、それも見越しているかのように、作中で何度も「自分を正義と思うな」というメッセージを突き付けられるのが印象的だった。敵対する人物や団体にも考えがあるということは、どの作品にも描かれているものだが、この作品ではそれが主軸になっているのかなと思う。
また、塔間と真昼、塔間と吊戯の関係性の対比が印象に残った。恐らく血がつながっている塔間と真昼よりも、吊戯との関係性の方が家族のように見える。しかし、真昼と吊戯の仲がC3の一件で深まったことで、ここの関係性も疑似兄弟のように見えた。
そして、このようなシビアな内容を主軸に据えている状態で、絵柄が可愛らしいことが、ピエロに感じる恐怖にも通じて、どことなく不気味だった。
新3年 福島
RES
春休み課題 041~050(11~20)
041. 『1973年のピンボール』(小説)
[作者]村上春樹 [発行所]講談社 [制作日付]2021年7月2日第49刷
さようなら、3(スリー)フリッパーのスペースシップ。さようなら、ジェイズ・バー。双子の姉妹との<僕>の日々。女の温もりに沈む<鼠>の渇き。やがて来る1つの季節の終り――デビュー作『風の歌を聴け』で爽やかに80年代の文学を拓いた旗手が、ほろ苦い青春を描く3部作のうち、大いなる予感に満ちた第2弾。(出典:https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000203631)
この小説は、死への確かな絶望感、何にもなし得ずに終わっていくことへの虚無感を抱く若者の青春をうつした作品であると感じた。どこにも行くことはできないけれど、それでもどこかに行きたいと思う人間の性に共感した。鼠の「みんながそんな風に問わず語らずに理解し合ったって何処にもいけやしないんだ」というセリフは、どこかに行くことに意味がなかったとしても、人と関わっていくべきだという教訓が感じられた。
042. 『ラオスにいったい何があるというんですか?』(紀行文集)
[作者]村上春樹 [発行所]文藝春秋 [制作日付]2018年4月10日
そこには特別な光があり、特別な風が吹いている――ボストンの小径とボールパーク、アイスランドの自然、「ノルウェイの森」を書いたギリシャの島、フィンランドの不思議なバー、ラオスの早朝の僧侶たち、ポートランドの美食やトスカナのワイン、そして熊本の町と人びと――旅の魅力を描き尽くす、村上春樹、待望の紀行文集。(出典:https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167910563)
村上の作品に度々出てくるものの一つに猫があるが、「漱石からくまモンまで」のところで文面や写真からその猫好きを感じられる。「めろめろ」というワードを使っているのは大変意外で非常にナチュラルな村上春樹を感じられると思った。小説では絶対に書かないような文体があったりして、紀行文などのエッセイに触れると作者のより内面を知ることができると感じ、こうしたところからその思想的なものを知ることも作品を分析する上で役に立つだろうと思った。
043. 『かいつぶり』(小説)
「めくらやなぎと眠る女」所収
[作者]村上春樹 [発行所]新潮社 [制作日付]2020年12月15日9刷
やっと見つけたうまい仕事のために、長い廊下を歩いて仕事場のドアにたどり着いた僕。門番に合言葉を言うように要求されるがーー
自分ですら存在するかどうかわからない手のりかいつぶりがまさかの仕事の上の人であったというのは、なんとも奇妙で謎めいている結末であると思った。しかし、自分の目で実際に見たことのないものに対して、存在するか否かを証明することはできないし、そうであるがゆえに、さらにそういったものに対して批判するようなことがあってはいけないと示唆している物語なのではないかと思った。
044. 『スパゲティーの年に』(小説)
「めくらやなぎと眠る女」所収
[作者]村上春樹 [発行所]新潮社 [制作日付]2020年12月15日9刷
1971年、それはスパゲティーの年である。部屋の中、1人スパゲティーを茹で続ける僕を訪ねてくる人たちに僕は耳を貸さない。あるときかかってきた電話の主は、午後の4時半にはどこかに消えてしまいそうなかつての友人の恋人だったーー
この作品は純粋に読めば他人を拒否し続ける僕あるいは1971年の若者の世間への拒絶感を表したもののように見えるが、実際は高度成長期の隠喩なのではないかと考える。世間への拒絶なのではなく、国側としてある僕が国民に対して拒絶する、無視するという風に受け取ることが可能であると思った。
045. 『氷男』(小説)
「めくらやなぎと眠る女」所収
[作者]村上春樹 [発行所]新潮社 [制作日付]2020年12月15日9刷
私は氷男と結婚した。指に白い霜を浮かせた氷男は未来を持たず、ただじっと過去を封じ込める。反復性に苦痛を感じた私は、氷男に南極旅行を提案するのだがーー
この作品のはっきりとした意味を追求することは難しいが、私は「未来への希望」を持つことの必要性を訴えているのではないかと思った。つまり、未来に興味を持たない氷男に惹かれる私は未来を知りたくないと未来を拒否する素振りが見られるのだが、それは結局過去に縛りつけられ、何処にも行くことができない私となり、自己崩壊へとつながるということである。
046. 『とんがり焼の盛衰』(小説)
「めくらやなぎと眠る女」所収
[作者]村上春樹 [発行所]新潮社 [制作日付]2020年12月15日9刷
ふとした思いつきで名菓とんがり焼の大説明会に参加した僕。特に美味しくはなかったが、賞金に釣られ新製品募集という知らせにも乗っかることにした。見事好評となった僕の菓子がとんがり鴉の評価を受けることになるのだがーー
とんがり鴉が一つのものに対して意見し合い、また傷つけ合うというなんとも奇妙で少し目を背けたくなるような残酷さを感じる物語であるが、裏を返せばそうした自分を譲らず、相手を尊重しない、くだらない意見のぶつけ合いは側から見れば奇妙で残酷で馬鹿馬鹿しいということなのであろうと感じた。最後の主人公のセリフ「僕は自分の食べたいものだけを作って、自分で食べる」は、人の意見に批判的になるのではなく、自分が好きなものを自分のためだけにすることができる世の中になるべきであるというメッセージ性を伝えているように思われる。
047. 『嘔吐1979』(小説)
「めくらやなぎと眠る女」所収
[作者]村上春樹 [発行所]新潮社 [制作日付]2020年12月15日9刷
彼は長い期間にわたってI日も欠かさず日記をつけることができる才能を持っている。だから彼が長い期間、つまり1979年6月4日から同年7月14日まで嘔吐をし続けたとはっきり引用することができるーー
嘔吐と電話の原因を掴むことは難しいが、印象に残ったのは電話が来るのはいつも自分が1人でいるときであり、またそう考えてみると彼は1日の23時間以上を1人で過ごしているということである。電話が幻聴であったとすれば、彼の中に潜在する孤独への不安を暗示しているのではないかと思った。しかし、結婚するわけでも生活を改めたわけでもないのに嘔吐と電話が終わったのは、そういったある時期の人生への不安は誰にでも訪れるもので、結局は時間が解決していく場合が多いからではないかと思った。
048.『揺れる警視庁〜1200万人の人質〜I(デジタルリマスター)』(アニメ)
[原作]青山剛昌
コナンたちは少年探偵団は、阿笠博士に連れられ杯戸ショッピングモールの観覧車に遊びに来ていた。一方、そこには佐藤刑事の姿があり、3年前のことを思い出していたーー(出典:https://www.ytv.co.jp/conan/archive/k20220319.html)
今年度の劇場版に向けてのデジタルリマスターだと思われる。警察学校のメンバーたちが登場し、松田陣平の萩原への思いや佐藤刑事との関係などが明かされていて、興味深い。一昨年あたりに出た漫画の警察学校編の松田とのキャラに少し違いを感じるが、年齢が関係しているのだと思う。描かれない空白の成長という余白を残しているところは、読者に想像を与える点で良いと思ったし、そのようなところにも読者側は意識を向ける必要があると思った。
049.『揺れる警視庁〜1200万人の人質〜II(デジタルリマスター)』(アニメ)
[原作]青山剛昌
コナンたちの目の前で、白鳥任三郎警部が乗り込んだ車が爆発する。なんとか一命はとりとめたものの重症の白鳥。その手紙には手紙が握られていた。(出典:https://www.ytv.co.jp/conan/archive/k20220326.html)
少年探偵団の捜査協力を許す警察と阿笠博士の家に毎度泊まらせるような親たちは現実的にはあり得ないわけだが、そんなことは気にしない程に没頭できる推理は見ていて面白い。今よりも昔の灰原の発言がいかにも理系で魅力的である。時間的なキャラクターの性格の微妙な差異にも気付くことができる。
050.『揺れる警視庁〜1200万人の人質〜Ⅲ(デジタルリマスター)』(アニメ)
[原作]青山剛昌
白鳥任三郎警部が巻き込まれた爆発事件。その現場にあったメッセージから警察は爆弾を探し出そうとするが、どれも偽物ばかりだ。そんな中、コナンたち少年探偵団は高木渉刑事の運転する車に乗っていた。3年前の事件から「犯人は警察を誘い出すために、1つ目の爆弾はわかりやすい場所に仕掛けているはず」と考えたコナン。赤から連想されるものを挙げていたとき、東都タワーが目に入る。(出典:https://www.ytv.co.jp/conan/archive/k20220402.html)
エレベーターに閉じ込められた子供を救うために、警察が子供を誘い出すシーンがあるのだが、子供は一向に出てきてくれない。そこでコナンが誘い出すのだが、その誘い文句が心理学の知識が詰め込まれているように、相手の興味のあるものに対して質問してから外に出ようとしており、これは適度な距離感、また不信感を与えないためのコミュニケーション能力で興味深かった。
041. 『1973年のピンボール』(小説)
[作者]村上春樹 [発行所]講談社 [制作日付]2021年7月2日第49刷
さようなら、3(スリー)フリッパーのスペースシップ。さようなら、ジェイズ・バー。双子の姉妹との<僕>の日々。女の温もりに沈む<鼠>の渇き。やがて来る1つの季節の終り――デビュー作『風の歌を聴け』で爽やかに80年代の文学を拓いた旗手が、ほろ苦い青春を描く3部作のうち、大いなる予感に満ちた第2弾。(出典:https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000203631)
この小説は、死への確かな絶望感、何にもなし得ずに終わっていくことへの虚無感を抱く若者の青春をうつした作品であると感じた。どこにも行くことはできないけれど、それでもどこかに行きたいと思う人間の性に共感した。鼠の「みんながそんな風に問わず語らずに理解し合ったって何処にもいけやしないんだ」というセリフは、どこかに行くことに意味がなかったとしても、人と関わっていくべきだという教訓が感じられた。
042. 『ラオスにいったい何があるというんですか?』(紀行文集)
[作者]村上春樹 [発行所]文藝春秋 [制作日付]2018年4月10日
そこには特別な光があり、特別な風が吹いている――ボストンの小径とボールパーク、アイスランドの自然、「ノルウェイの森」を書いたギリシャの島、フィンランドの不思議なバー、ラオスの早朝の僧侶たち、ポートランドの美食やトスカナのワイン、そして熊本の町と人びと――旅の魅力を描き尽くす、村上春樹、待望の紀行文集。(出典:https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167910563)
村上の作品に度々出てくるものの一つに猫があるが、「漱石からくまモンまで」のところで文面や写真からその猫好きを感じられる。「めろめろ」というワードを使っているのは大変意外で非常にナチュラルな村上春樹を感じられると思った。小説では絶対に書かないような文体があったりして、紀行文などのエッセイに触れると作者のより内面を知ることができると感じ、こうしたところからその思想的なものを知ることも作品を分析する上で役に立つだろうと思った。
043. 『かいつぶり』(小説)
「めくらやなぎと眠る女」所収
[作者]村上春樹 [発行所]新潮社 [制作日付]2020年12月15日9刷
やっと見つけたうまい仕事のために、長い廊下を歩いて仕事場のドアにたどり着いた僕。門番に合言葉を言うように要求されるがーー
自分ですら存在するかどうかわからない手のりかいつぶりがまさかの仕事の上の人であったというのは、なんとも奇妙で謎めいている結末であると思った。しかし、自分の目で実際に見たことのないものに対して、存在するか否かを証明することはできないし、そうであるがゆえに、さらにそういったものに対して批判するようなことがあってはいけないと示唆している物語なのではないかと思った。
044. 『スパゲティーの年に』(小説)
「めくらやなぎと眠る女」所収
[作者]村上春樹 [発行所]新潮社 [制作日付]2020年12月15日9刷
1971年、それはスパゲティーの年である。部屋の中、1人スパゲティーを茹で続ける僕を訪ねてくる人たちに僕は耳を貸さない。あるときかかってきた電話の主は、午後の4時半にはどこかに消えてしまいそうなかつての友人の恋人だったーー
この作品は純粋に読めば他人を拒否し続ける僕あるいは1971年の若者の世間への拒絶感を表したもののように見えるが、実際は高度成長期の隠喩なのではないかと考える。世間への拒絶なのではなく、国側としてある僕が国民に対して拒絶する、無視するという風に受け取ることが可能であると思った。
045. 『氷男』(小説)
「めくらやなぎと眠る女」所収
[作者]村上春樹 [発行所]新潮社 [制作日付]2020年12月15日9刷
私は氷男と結婚した。指に白い霜を浮かせた氷男は未来を持たず、ただじっと過去を封じ込める。反復性に苦痛を感じた私は、氷男に南極旅行を提案するのだがーー
この作品のはっきりとした意味を追求することは難しいが、私は「未来への希望」を持つことの必要性を訴えているのではないかと思った。つまり、未来に興味を持たない氷男に惹かれる私は未来を知りたくないと未来を拒否する素振りが見られるのだが、それは結局過去に縛りつけられ、何処にも行くことができない私となり、自己崩壊へとつながるということである。
046. 『とんがり焼の盛衰』(小説)
「めくらやなぎと眠る女」所収
[作者]村上春樹 [発行所]新潮社 [制作日付]2020年12月15日9刷
ふとした思いつきで名菓とんがり焼の大説明会に参加した僕。特に美味しくはなかったが、賞金に釣られ新製品募集という知らせにも乗っかることにした。見事好評となった僕の菓子がとんがり鴉の評価を受けることになるのだがーー
とんがり鴉が一つのものに対して意見し合い、また傷つけ合うというなんとも奇妙で少し目を背けたくなるような残酷さを感じる物語であるが、裏を返せばそうした自分を譲らず、相手を尊重しない、くだらない意見のぶつけ合いは側から見れば奇妙で残酷で馬鹿馬鹿しいということなのであろうと感じた。最後の主人公のセリフ「僕は自分の食べたいものだけを作って、自分で食べる」は、人の意見に批判的になるのではなく、自分が好きなものを自分のためだけにすることができる世の中になるべきであるというメッセージ性を伝えているように思われる。
047. 『嘔吐1979』(小説)
「めくらやなぎと眠る女」所収
[作者]村上春樹 [発行所]新潮社 [制作日付]2020年12月15日9刷
彼は長い期間にわたってI日も欠かさず日記をつけることができる才能を持っている。だから彼が長い期間、つまり1979年6月4日から同年7月14日まで嘔吐をし続けたとはっきり引用することができるーー
嘔吐と電話の原因を掴むことは難しいが、印象に残ったのは電話が来るのはいつも自分が1人でいるときであり、またそう考えてみると彼は1日の23時間以上を1人で過ごしているということである。電話が幻聴であったとすれば、彼の中に潜在する孤独への不安を暗示しているのではないかと思った。しかし、結婚するわけでも生活を改めたわけでもないのに嘔吐と電話が終わったのは、そういったある時期の人生への不安は誰にでも訪れるもので、結局は時間が解決していく場合が多いからではないかと思った。
048.『揺れる警視庁〜1200万人の人質〜I(デジタルリマスター)』(アニメ)
[原作]青山剛昌
コナンたちは少年探偵団は、阿笠博士に連れられ杯戸ショッピングモールの観覧車に遊びに来ていた。一方、そこには佐藤刑事の姿があり、3年前のことを思い出していたーー(出典:https://www.ytv.co.jp/conan/archive/k20220319.html)
今年度の劇場版に向けてのデジタルリマスターだと思われる。警察学校のメンバーたちが登場し、松田陣平の萩原への思いや佐藤刑事との関係などが明かされていて、興味深い。一昨年あたりに出た漫画の警察学校編の松田とのキャラに少し違いを感じるが、年齢が関係しているのだと思う。描かれない空白の成長という余白を残しているところは、読者に想像を与える点で良いと思ったし、そのようなところにも読者側は意識を向ける必要があると思った。
049.『揺れる警視庁〜1200万人の人質〜II(デジタルリマスター)』(アニメ)
[原作]青山剛昌
コナンたちの目の前で、白鳥任三郎警部が乗り込んだ車が爆発する。なんとか一命はとりとめたものの重症の白鳥。その手紙には手紙が握られていた。(出典:https://www.ytv.co.jp/conan/archive/k20220326.html)
少年探偵団の捜査協力を許す警察と阿笠博士の家に毎度泊まらせるような親たちは現実的にはあり得ないわけだが、そんなことは気にしない程に没頭できる推理は見ていて面白い。今よりも昔の灰原の発言がいかにも理系で魅力的である。時間的なキャラクターの性格の微妙な差異にも気付くことができる。
050.『揺れる警視庁〜1200万人の人質〜Ⅲ(デジタルリマスター)』(アニメ)
[原作]青山剛昌
白鳥任三郎警部が巻き込まれた爆発事件。その現場にあったメッセージから警察は爆弾を探し出そうとするが、どれも偽物ばかりだ。そんな中、コナンたち少年探偵団は高木渉刑事の運転する車に乗っていた。3年前の事件から「犯人は警察を誘い出すために、1つ目の爆弾はわかりやすい場所に仕掛けているはず」と考えたコナン。赤から連想されるものを挙げていたとき、東都タワーが目に入る。(出典:https://www.ytv.co.jp/conan/archive/k20220402.html)
エレベーターに閉じ込められた子供を救うために、警察が子供を誘い出すシーンがあるのだが、子供は一向に出てきてくれない。そこでコナンが誘い出すのだが、その誘い文句が心理学の知識が詰め込まれているように、相手の興味のあるものに対して質問してから外に出ようとしており、これは適度な距離感、また不信感を与えないためのコミュニケーション能力で興味深かった。
新3年 福島
RES
春休み課題 031~040(1~10)
031.『やっぱり食べに行こう。』(小説)
[作者]原田マハ [発行所]毎日新聞出版 [制作日付]2021年11月5日
ルーアンのチーズ、ゲルニカのタパス、ロンドンの豚骨ラーメン―― 人気作家のパワーの源泉「忘れられない一品」、 取材先で出会った「思い出の一品」を綴るグルメエッセイ! 待望の文庫化。(出典:https://mainichibooks.com/books/paperback/post-525.html)
「ジヴェルニーの食卓」などに見られる美術×物語ではなく、本作品は旅(美術)×食がテーマのエッセイであり、その土地に赴いたといに食べた食事が確かな知識とユーモアで描かれている。印象的だったのは、「ザ・サヴォイのオムレツ」である。作家のオスカー・ワイルドの『サロメ』の劇中に出てくるホテルの、「ホワイトオムレツ」をワイルドも食べたかもしれないと思いを馳せるのは非常に素敵だと思った。偉人と現代の自分を重ねて考えることは、ロマンがあり、また何かを得たり知る上で重要なことだと感じた。
032.『名探偵コナン 100』(漫画)
[作者]青山剛昌 [発行所]小学館 [制作日付]2021年10月23日
相次いで発見される身元不明の外国人の遺体…
犯人は、黒ずくめの組織。
ジン、ウォッカ、キャンティ、コルン、ベルモット、キール
--そして、組織のNo,2 ラム。
探偵VS組織、比類なき頭脳の激闘の果てに、暴かれる謎とは…!?(出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09850717)
黒ずくめが登場したのが個人的に嬉しかった。キャメルの必死の逃亡策が非常にスリリングであったと同時に、サバイバルの知識も総動員されており、タメになるトリックで興味深かった。
033.『ローマの休日』(洋画)
[監督]ウィリアム・ワイラー [公開]1954年
ヨーロッパを周遊中の某小国の王女アンは、常に侍従がつきまとう生活に嫌気が差し、滞在中のローマで大使館を脱出。偶然出会ったアメリカ人新聞記者ジョとたった1日のラブストーリーを繰り広げる。(出典:https://eiga.com/movie/50969/)
オードリー・ヘップバーンの王女の演技は非常に可愛らしく、私が想像する偏見の王女とぴったり重なっていた。少しわがままで自由奔放ではあるが、切り替えは早く、振る舞いは上品で、仕事をおっちょこちょいながらも器用にこなすアン王女は、魅力的だった。最後は2人が結ばれないところがストーリー構成上素晴らしく、単に甘い恋愛で終わらず、職務に戻るところがカッコよく思うと同時に、最先端の女性像のようにも感じた。
034.『ジュリエットからの手紙』(洋画)
[監督]ゲイリー・ウィニック [公開]2010年
シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」の舞台となったイタリア・ベローナを訪れたアメリカ人女性ソフィーは、ジュリエットへの恋愛アドバイスを求める手紙への返信を行うボランティアグループに出会う。そこで、ソフィーは50年前に書かれた手紙を見つけ、返信すると、手紙を書いた本人のクレアとその孫のチャーリーが現れ……。(出典:https://eiga.com/movie/55523/)
「ロミオとジュリエット」という名作から生まれた本作品は、心の温まる話であった。ソフィーは彼氏との方向性や価値観の違いを感じているが、彼のことは好きなのである。しかし、この先付き合っていくことを考えると、その好きという気持ちだけでは自分が幸せになれないことに気づいたのだと思った。そんな中で出会ったチャーリーはソフィーが大切にしているものを理解していて、同時に似たような悲しみを持っている。2人が結ばれて終わるハッピーエンドは私にとって非常に嬉しかった。
035.『ビューティフルマインド』(洋画)
[監督]ロン・ハワード [公開]2002年
1947年、プリンストン大学院の数学科に入学したナッシュは、周囲から変人扱いされながらも研究に没頭する。やがて画期的な「ゲーム理論」を発見した彼は、その功績を認められマサチューセッツ工科大学の研究所に採用される。愛する女性アリシアとも出会い幸せな日々を過ごすナッシュだったが、国防省の諜報員パーチャーからソ連の暗号解読という極秘任務を受け、そのプレッシャーにより次第に精神のバランスを崩していく。(出典:https://eiga.com/movie/1017/)
この作品は見ていて胸が痛んだ作品であった。しかし、最後は完全なるハッピーエンドであるので安心した。主人公は天才数学者で、幻覚を見て精神を病んでしまうのだが、この幻覚の演出の仕方が素晴らしいと思った。まず、視聴者には主人公と同じ目線を持たせ、あたかも幻覚の人物が本当に存在するかのように演出している。しかし、よく考えてみるとその人物が他の人と一緒にいるところを見たり、2人きり以外で話したことがないことに気づくことができる。こういった類の演出にもきちんと目を向けられるように作品を見ていきたいと思った。
036.『ティファニーで朝食を』(洋画)
[監督]ブレイク・エドワーズ [公開]1961年
ニューヨークのアパートで猫と暮らしている娼婦ホリーは、宝石店ティファニーの前で朝食のパンを食べるのが大好き。ある日、彼女のアパートに作家志望の青年ポールが引っ越してくる。自由奔放で不思議な魅力を持つホリーに次第にひかれていくポール。ところが、テキサスからホリーの夫が彼女を連れ戻しにやって来て……。(出典:https://eiga.com/movie/46909/)
本作品は誰でも聞いたことのあるようなオードリーヘップバーンの名作の一つであり、私はその所以を知るために鑑賞した。先に見た『ローマの休日』とは打って変わって王女とは程遠いしっちゃかめっちゃかな役柄であった。ストーリー性や登場人物に重視してみると、とても良作とはいえないものであったと感じる。そもそもオードリーの役柄の女性に感情移入することが難しく、ストーリーを冷めて見てしまう部分があった。なかでも、印象的だったのは日本人役の俳優の演技である。いかにも偏見的な日本人の見た目、喋り、行動であったのだが、あまりに偏見的であったためか私は日本人の名前を持った日本人ではない人だと思っていた。鑑賞後気になって調べたところ、日本人役であったことがわかり驚いた。そういった点でも、やはり良作といえないと思うが、ムーンリバーを歌うシーンは良かった。
037.『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(洋画)
[監督]サム・メンデス [公開]2009年
1950年代アメリカ・コネチカット。郊外の閑静な住宅街に暮らし、子供にも恵まれた理想の夫婦フランクとエイプリル。しかし、2人はマンネリ化する日々に不満を募らせて、次第に溝を深めていく……。(出典:https://eiga.com/movie/53934/)
タイタニックコンビが復活した本作品であるが、それとは全く異なった恋人同士の物語である。甘く切ない関係から一転して、非常に現実的でリアルな夫婦を演じている。一軒家を持ち、子供も2人いて、側からみれば充実した夫婦の形であるのだが、夫妻ともに生活への不満がある。すれ違い、一度また同じ夢を見たかと思えば、またすれ違う。そして、取り返しのつかない結末へと導かれてしまう。なんとも救いようのない話で、幸せな結婚生活などどこにも存在しないと感じられる。映画の結末は主人公夫婦ではない夫婦の夫が妻の話を聞いているときに補聴器の音量をだんだん下げていくのだが、それには主人公夫婦が尊重した話し合いとは反対の傾向が見られる。話し合いをしないことが夫婦を続けることの秘訣なのであれば、果たしてそれは正しいといえるのだろうか。
038.『リメンバーミー』(アニメ映画)
[監督]エイドリアン・モリーナ、リー・アンクリッチ [公開]2017年
ミュージシャンを夢見るギターの天才少年ミゲル。だが、彼の一族は代々、音楽を禁じられていた。ある日、ミゲルは先祖たちが暮らす“死者の国”に迷い込んでしまった。日の出までに元の世界に戻らないと、ミゲルの体は消えてしまう!そんな彼に手を差し伸べたのは、陽気だけど孤独なガイコツ、ヘクター。やがて二人がたどり着く、ミゲルの一族の驚くべき“秘密”とは?すべての謎を解く鍵は、伝説の歌手が遺した名曲“リメンバー・ミー”に隠されていた…。(出典:https://www.disney.co.jp/movie/remember-me/about.html)
メキシコの死者の日をテーマにした映画であった。日本でいうお盆のようでもあり、どの文化にも似たようなものがあるのだと共通点を感じた。子供向けのディズニーの映画で悪役がまさか殺人者であったのは大変意外であったが、よくよく考えてみれば「白雪姫」と変わらないのだから不思議ではないと思った。しかし、善と悪がはっきりと区別されていることは、人に悪と感じたものと線を引いて非難することにつながるのではないかと少し懸念した。
039. 『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』(洋画)
[監督]クラウス・ハロ [公開]2020年
年老いた美術商オラヴィは、家族よりも仕事を優先して生きてきた。そんな彼のもとに、音信不通だった娘から電話がかかってくる。その内容は、問題児の孫息子オットーを、職業体験のため数日間預かってほしいというお願いだった。そんな中、オラヴィはオークションハウスで1枚の肖像画に目を奪われる。価値のある作品だと確信するオラヴィだったが、絵には署名がなく、作者不明のまま数日後のオークションに出品されるという。オットーとともに作者を探し始めたオラヴィは、その画風から近代ロシア美術の巨匠イリヤ・レーピンの作品といえる証拠を掴む。「幻の名画」を手に入れるべく資金集めに奔走するオラヴィは、その過程で娘親子の思わぬ過去を知る。(出典:https://eiga.com/movie/92074/)
主人公のオラヴィ演じるヘイッキ・ノウシアイネンの演技が素晴らしく、男の肖像画のオークションのシーンでは私も彼の気持ちになりきり、苦しいながら落札できた安堵の気持ちがあった。面白いのは、彼がまったく家族を蔑ろにする自分勝手な男であるのにもかかわらず一度たりとも彼を嫌いにならなかったところである。その真っ直ぐな仕事への熱量と誇り、また自分への自信は非常に魅力的にうつった。
040. 『劇場版ポケットモンスター ダイアモンド・パール ディアルガvsパルキアvsダークライ』(アニメ映画)
[監督]湯山邦彦 [公開]2007年
次のポケモンコンテストに参加するため、アラモスタウンへやってきたサトシたちは、町でアリスというかれんな女性とであった。 アリスに町のランドマークである「時空の塔」や水と緑がゆたかな美しい庭園に案内され、すっかり観光気分のサトシたちだったが、そこで一行は、何者かによって庭園があらされているのを発見する。 そこへやってきたのは、この町の有力者アルベルト男爵。庭園をあらしたのは、幻のポケモン・ダークライのしわざにちがいないと自信ありげに語るアルベルト。やがて不気味な影の中から、サトシたちの前にダークライがこつぜんとそのすがたをあらわしたのだった。(出典:https://www.pokemon-movie.jp/history/history2007/)
小さい頃に見た以来の2回目の本作品であった。小さい子向けの作品でありながら、時間と空間という難しい題であった。しかし、難しいことは抜きにしても、悪者と思われていたダークライへの誤解が徐々に解けていく様は道徳的な教訓があると感じた。また、ディアルガとパルキアに対して強く非難する様子はなく、ただ「出て行け」と言われるのは、まるで『風の谷のナウシカ』において人間と動物の境界線を分けるようなナウシカの言動と似ていると感じた。相手を攻撃するのではなく、相手を認め、尊重しながら生きるポケモンたちは素晴らしいと思った。
031.『やっぱり食べに行こう。』(小説)
[作者]原田マハ [発行所]毎日新聞出版 [制作日付]2021年11月5日
ルーアンのチーズ、ゲルニカのタパス、ロンドンの豚骨ラーメン―― 人気作家のパワーの源泉「忘れられない一品」、 取材先で出会った「思い出の一品」を綴るグルメエッセイ! 待望の文庫化。(出典:https://mainichibooks.com/books/paperback/post-525.html)
「ジヴェルニーの食卓」などに見られる美術×物語ではなく、本作品は旅(美術)×食がテーマのエッセイであり、その土地に赴いたといに食べた食事が確かな知識とユーモアで描かれている。印象的だったのは、「ザ・サヴォイのオムレツ」である。作家のオスカー・ワイルドの『サロメ』の劇中に出てくるホテルの、「ホワイトオムレツ」をワイルドも食べたかもしれないと思いを馳せるのは非常に素敵だと思った。偉人と現代の自分を重ねて考えることは、ロマンがあり、また何かを得たり知る上で重要なことだと感じた。
032.『名探偵コナン 100』(漫画)
[作者]青山剛昌 [発行所]小学館 [制作日付]2021年10月23日
相次いで発見される身元不明の外国人の遺体…
犯人は、黒ずくめの組織。
ジン、ウォッカ、キャンティ、コルン、ベルモット、キール
--そして、組織のNo,2 ラム。
探偵VS組織、比類なき頭脳の激闘の果てに、暴かれる謎とは…!?(出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09850717)
黒ずくめが登場したのが個人的に嬉しかった。キャメルの必死の逃亡策が非常にスリリングであったと同時に、サバイバルの知識も総動員されており、タメになるトリックで興味深かった。
033.『ローマの休日』(洋画)
[監督]ウィリアム・ワイラー [公開]1954年
ヨーロッパを周遊中の某小国の王女アンは、常に侍従がつきまとう生活に嫌気が差し、滞在中のローマで大使館を脱出。偶然出会ったアメリカ人新聞記者ジョとたった1日のラブストーリーを繰り広げる。(出典:https://eiga.com/movie/50969/)
オードリー・ヘップバーンの王女の演技は非常に可愛らしく、私が想像する偏見の王女とぴったり重なっていた。少しわがままで自由奔放ではあるが、切り替えは早く、振る舞いは上品で、仕事をおっちょこちょいながらも器用にこなすアン王女は、魅力的だった。最後は2人が結ばれないところがストーリー構成上素晴らしく、単に甘い恋愛で終わらず、職務に戻るところがカッコよく思うと同時に、最先端の女性像のようにも感じた。
034.『ジュリエットからの手紙』(洋画)
[監督]ゲイリー・ウィニック [公開]2010年
シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」の舞台となったイタリア・ベローナを訪れたアメリカ人女性ソフィーは、ジュリエットへの恋愛アドバイスを求める手紙への返信を行うボランティアグループに出会う。そこで、ソフィーは50年前に書かれた手紙を見つけ、返信すると、手紙を書いた本人のクレアとその孫のチャーリーが現れ……。(出典:https://eiga.com/movie/55523/)
「ロミオとジュリエット」という名作から生まれた本作品は、心の温まる話であった。ソフィーは彼氏との方向性や価値観の違いを感じているが、彼のことは好きなのである。しかし、この先付き合っていくことを考えると、その好きという気持ちだけでは自分が幸せになれないことに気づいたのだと思った。そんな中で出会ったチャーリーはソフィーが大切にしているものを理解していて、同時に似たような悲しみを持っている。2人が結ばれて終わるハッピーエンドは私にとって非常に嬉しかった。
035.『ビューティフルマインド』(洋画)
[監督]ロン・ハワード [公開]2002年
1947年、プリンストン大学院の数学科に入学したナッシュは、周囲から変人扱いされながらも研究に没頭する。やがて画期的な「ゲーム理論」を発見した彼は、その功績を認められマサチューセッツ工科大学の研究所に採用される。愛する女性アリシアとも出会い幸せな日々を過ごすナッシュだったが、国防省の諜報員パーチャーからソ連の暗号解読という極秘任務を受け、そのプレッシャーにより次第に精神のバランスを崩していく。(出典:https://eiga.com/movie/1017/)
この作品は見ていて胸が痛んだ作品であった。しかし、最後は完全なるハッピーエンドであるので安心した。主人公は天才数学者で、幻覚を見て精神を病んでしまうのだが、この幻覚の演出の仕方が素晴らしいと思った。まず、視聴者には主人公と同じ目線を持たせ、あたかも幻覚の人物が本当に存在するかのように演出している。しかし、よく考えてみるとその人物が他の人と一緒にいるところを見たり、2人きり以外で話したことがないことに気づくことができる。こういった類の演出にもきちんと目を向けられるように作品を見ていきたいと思った。
036.『ティファニーで朝食を』(洋画)
[監督]ブレイク・エドワーズ [公開]1961年
ニューヨークのアパートで猫と暮らしている娼婦ホリーは、宝石店ティファニーの前で朝食のパンを食べるのが大好き。ある日、彼女のアパートに作家志望の青年ポールが引っ越してくる。自由奔放で不思議な魅力を持つホリーに次第にひかれていくポール。ところが、テキサスからホリーの夫が彼女を連れ戻しにやって来て……。(出典:https://eiga.com/movie/46909/)
本作品は誰でも聞いたことのあるようなオードリーヘップバーンの名作の一つであり、私はその所以を知るために鑑賞した。先に見た『ローマの休日』とは打って変わって王女とは程遠いしっちゃかめっちゃかな役柄であった。ストーリー性や登場人物に重視してみると、とても良作とはいえないものであったと感じる。そもそもオードリーの役柄の女性に感情移入することが難しく、ストーリーを冷めて見てしまう部分があった。なかでも、印象的だったのは日本人役の俳優の演技である。いかにも偏見的な日本人の見た目、喋り、行動であったのだが、あまりに偏見的であったためか私は日本人の名前を持った日本人ではない人だと思っていた。鑑賞後気になって調べたところ、日本人役であったことがわかり驚いた。そういった点でも、やはり良作といえないと思うが、ムーンリバーを歌うシーンは良かった。
037.『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(洋画)
[監督]サム・メンデス [公開]2009年
1950年代アメリカ・コネチカット。郊外の閑静な住宅街に暮らし、子供にも恵まれた理想の夫婦フランクとエイプリル。しかし、2人はマンネリ化する日々に不満を募らせて、次第に溝を深めていく……。(出典:https://eiga.com/movie/53934/)
タイタニックコンビが復活した本作品であるが、それとは全く異なった恋人同士の物語である。甘く切ない関係から一転して、非常に現実的でリアルな夫婦を演じている。一軒家を持ち、子供も2人いて、側からみれば充実した夫婦の形であるのだが、夫妻ともに生活への不満がある。すれ違い、一度また同じ夢を見たかと思えば、またすれ違う。そして、取り返しのつかない結末へと導かれてしまう。なんとも救いようのない話で、幸せな結婚生活などどこにも存在しないと感じられる。映画の結末は主人公夫婦ではない夫婦の夫が妻の話を聞いているときに補聴器の音量をだんだん下げていくのだが、それには主人公夫婦が尊重した話し合いとは反対の傾向が見られる。話し合いをしないことが夫婦を続けることの秘訣なのであれば、果たしてそれは正しいといえるのだろうか。
038.『リメンバーミー』(アニメ映画)
[監督]エイドリアン・モリーナ、リー・アンクリッチ [公開]2017年
ミュージシャンを夢見るギターの天才少年ミゲル。だが、彼の一族は代々、音楽を禁じられていた。ある日、ミゲルは先祖たちが暮らす“死者の国”に迷い込んでしまった。日の出までに元の世界に戻らないと、ミゲルの体は消えてしまう!そんな彼に手を差し伸べたのは、陽気だけど孤独なガイコツ、ヘクター。やがて二人がたどり着く、ミゲルの一族の驚くべき“秘密”とは?すべての謎を解く鍵は、伝説の歌手が遺した名曲“リメンバー・ミー”に隠されていた…。(出典:https://www.disney.co.jp/movie/remember-me/about.html)
メキシコの死者の日をテーマにした映画であった。日本でいうお盆のようでもあり、どの文化にも似たようなものがあるのだと共通点を感じた。子供向けのディズニーの映画で悪役がまさか殺人者であったのは大変意外であったが、よくよく考えてみれば「白雪姫」と変わらないのだから不思議ではないと思った。しかし、善と悪がはっきりと区別されていることは、人に悪と感じたものと線を引いて非難することにつながるのではないかと少し懸念した。
039. 『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』(洋画)
[監督]クラウス・ハロ [公開]2020年
年老いた美術商オラヴィは、家族よりも仕事を優先して生きてきた。そんな彼のもとに、音信不通だった娘から電話がかかってくる。その内容は、問題児の孫息子オットーを、職業体験のため数日間預かってほしいというお願いだった。そんな中、オラヴィはオークションハウスで1枚の肖像画に目を奪われる。価値のある作品だと確信するオラヴィだったが、絵には署名がなく、作者不明のまま数日後のオークションに出品されるという。オットーとともに作者を探し始めたオラヴィは、その画風から近代ロシア美術の巨匠イリヤ・レーピンの作品といえる証拠を掴む。「幻の名画」を手に入れるべく資金集めに奔走するオラヴィは、その過程で娘親子の思わぬ過去を知る。(出典:https://eiga.com/movie/92074/)
主人公のオラヴィ演じるヘイッキ・ノウシアイネンの演技が素晴らしく、男の肖像画のオークションのシーンでは私も彼の気持ちになりきり、苦しいながら落札できた安堵の気持ちがあった。面白いのは、彼がまったく家族を蔑ろにする自分勝手な男であるのにもかかわらず一度たりとも彼を嫌いにならなかったところである。その真っ直ぐな仕事への熱量と誇り、また自分への自信は非常に魅力的にうつった。
040. 『劇場版ポケットモンスター ダイアモンド・パール ディアルガvsパルキアvsダークライ』(アニメ映画)
[監督]湯山邦彦 [公開]2007年
次のポケモンコンテストに参加するため、アラモスタウンへやってきたサトシたちは、町でアリスというかれんな女性とであった。 アリスに町のランドマークである「時空の塔」や水と緑がゆたかな美しい庭園に案内され、すっかり観光気分のサトシたちだったが、そこで一行は、何者かによって庭園があらされているのを発見する。 そこへやってきたのは、この町の有力者アルベルト男爵。庭園をあらしたのは、幻のポケモン・ダークライのしわざにちがいないと自信ありげに語るアルベルト。やがて不気味な影の中から、サトシたちの前にダークライがこつぜんとそのすがたをあらわしたのだった。(出典:https://www.pokemon-movie.jp/history/history2007/)
小さい頃に見た以来の2回目の本作品であった。小さい子向けの作品でありながら、時間と空間という難しい題であった。しかし、難しいことは抜きにしても、悪者と思われていたダークライへの誤解が徐々に解けていく様は道徳的な教訓があると感じた。また、ディアルガとパルキアに対して強く非難する様子はなく、ただ「出て行け」と言われるのは、まるで『風の谷のナウシカ』において人間と動物の境界線を分けるようなナウシカの言動と似ていると感じた。相手を攻撃するのではなく、相手を認め、尊重しながら生きるポケモンたちは素晴らしいと思った。
2年 岩下
RES
春休み課題11~20
11.その淑女は偶像となる(漫画)
作者:松本陽介
かつて有名アイドルだった姫宮桜子は引退後、お嬢様学校で淑女としての生活を送っていた。アイドルだった過去を頑なに隠していた桜子であるが、ある日転校してきた駆け出しのアイドル・若菜あるみに一緒にユニットを組んでアイドルリーグ優勝を目指さないかと誘われてしまう。再びトップアイドルを目指すことを決意した桜子達が、年に一度の”トップアイドル”を決める祭典・アイドルリーグ優勝を目指す物語。
この作品は、アイドルという題材でありつつどこかスポ根漫画のような熱さを持っている。「トップアイドル」という漠然とした目標をアイドルリーグという架空の大会を用いて具体的に位置づけることによって、主人公らの目指す道が分かりやすくなっていると感じた。
12.奴隷遊戯(漫画)
原作:ヤマイナナミ 作画:木村隆
市原海のスマホに現れた謎のアプリゲーム「SRAVA GO」。その正体はアプリを通して撮影した人物を奴隷として捕獲・召喚して戦わせる、命の危機を伴うゲームだった。主人公の市原海はアプリの危険性に気が付くと、ゲーム運営に捉えられた幼馴染を助けるために奴隷を集めて戦うことを決意した。
この作品の魅力はぶっとんだ世界観と所々に散らばるパワーワードである。特に第一部は原則「手持ちの奴隷が敵と戦い、生き残ったほうが勝利」という分かりやすい構図であるため、作品独自の用語や設定が引き立っていると感じた。
13.夢魔子(アニメ)
原作:藤子不二雄A 監督:クニトシロウ 制作:シンエイ動画
謎の少女・夢魔子は悩んでいる人の前に現れ、その人の悩みを夢の世界で解放してあげる仕事をしていた。夢魔子に煙を吹きかけられた人はその後、自身の悩みに対する考えや周囲との関係性に変化がもたらされる。
この作品における変化とは、一概に良いこととも悪いことともいうことができない点が特徴である。世間一般的には望ましくないとされる変化であったとしても、その事実を周囲に隠したまま自分を殺し世間に溶け込むことが良いことなのか、己の欲望を解放することで社会不適合者とされることが良いことなのかといった問題について考えさせられる。
また、当時の社会情勢やジェンダー問題が反映された作風であり、他者からの抑圧と自らの欲望の間で揺れる3名の登場人物の心理描写が魅力的である。
14.武道館(ドラマ)
原作: 朝井リョウ『武道館』(小説)
脚本:和田清人 NEXT YOUプロデューサー:つんく♂
武道館ライブを夢見る5人組アイドルグループ『NEXT YOU』のメンバーたちがそれぞれの悩みやスキャンダルを乗り越え、念願の武道館公演を行うまでを描いた作品。
本作の特徴として、ドラマ内のアイドルグループと実在するアイドルグループの間に生じる奇妙な連動性が挙げられる。
本作のメインキャラクターである『NEXT YOU』のメンバーたちは、実在する5人組アイドルグループ(当時)『Juice=Juice』のメンバーが演じている。またNEXT YOU名義での楽曲リリースやYouTubeチャンネルの開設・運用、Juice=Juiceファンをエキストラにしたライブシーンの撮影など、作品の内外問わず架空のアイドルグループNEXT YOUがあたかも実在しているかのような演出が印象深い。
物語の結末においてNEXT YOUはリーダーの卒業、恋愛スキャンダルによるメンバー脱退、二期生募集による卒業加入制グループへの移行といった局面を迎えるが、本作の主演を務めたJuice=Juiceも後に同様の未来を迎えている点も興味深く感じた。
15.ブラックナイトパレード(漫画)
作者:中村光
クリスマスの日に悪い子の元に訪れるといわれる、黒いサンタクロースをモチーフにした作品。
同作者の過去作『荒川アンダーザブリッジ』ではエリートの主人公が河川敷ではいじられキャラになる、という逆転現象が描かれていたが、本作においては現実世界で上手くいかなかった主人公がサンタクロースの世界では天性の才を開花させるという、過去作とは真逆の現象が描かれている。
主人公がサンタクロースの世界における常識を把握しないまま物語が展開していくため、未知の世界に巻き込まれた戸惑いを読者と共有しながら体感することができる。また、主人公の視点から見るとギャグシーンのような場面にも後から読み直すと分かる事情が仕込まれており、笑えるのにどこか深みが感じられる作品でもある。
作中には労働環境や毒親問題、SNSによる承認欲求といった現代社会における社会問題が組み込まれている。また、クリスマスをモチーフにした作品であるため、登場人物の名前や設定に七頭のトナカイや聖ニコラウスの逸話、くるみ割り人形といったクリスマスに纏わる逸話が引用されている点も特徴である。
16.賭博黙示録カイジ(漫画)
作者:福本信行
バイト先の後輩の連帯保証人となって多額の借金を負ったカイジは返済のあてもなく、他人の高級車にイタズラを仕掛けることを数少ない趣味とする生活を送っていた。消費者金融を主とする日本最大級コンツェルン"帝愛"からの取り立て人・遠藤によって一攫千金のギャンブル船への乗船を持ちかけられたことを切っ掛けに、大金や生命を賭けた大勝負に乗り出すようになったカイジを描いた作品。
この物語における主人公・カイジは勝負強く情に厚い反面、自堕落で物事を都合のいい方向に捉えてしまう傾向がある。そのためギャンブル開始時には他者からカモにされるも、仲間の裏切りや敵の不正といった逆境に追い込まれて初めて実力を発揮するという特徴がある。このようなカイジの普段の性格と危機的状況下とのギャップが白熱する展開を生み出していると感じた。
また、本作のオリジナルギャンブル「限定じゃんけん」は単純かつ分かりやすいルールでありつつ戦術考察の余地もあり、実際に試してみたくなるようなゲームに仕上がっている点が魅力である。
17.一日外出録ハンチョー(漫画)
原作:萩原天晴 漫画:上原求・新井和也 協力:福本伸行
福本伸行による漫画『賭博破戒録カイジ』に登場する悪役・大槻班長を主人公としたスピンオフ作品。借金をした者が落とされる地下の強制労働施設で班長を務める債務者・大槻は、他の債務者からイカサマギャンブルや物販で巻き上げた金を使って一日外出をし、定期的に仲間とともに地上で美味しいグルメや和やかな一日を満喫していた。
一見穏やかな休日を軽快に描いた作品だが、端々から過酷な労働環境の中での搾取構造が感じ取れる点が興味深い。同時に、理想的な休日の在り方について考えさせられる作品でもある。
18.中間管理録トネガワ(漫画)
原作:萩原天晴 漫画:橋本智広・三好智樹 協力:福本伸行
福本伸行による漫画『賭博黙示録カイジ』に登場する敵役・利根川を主人公としたスピンオフ作品。消費者金融事業を主とし、債務者を対象としたギャンブルゲームを運営する日本最大級のコンツェルン”帝愛グループ”の最高幹部・利根川は強権的な会長の下、揃いの恰好をした部下たち(通称黒服)を束ねていた。上司の機嫌や部下との人間関係、業務上のハプニングに悩まされながらもプロジェクト成功を目指すチーム利根川の物語。
この作品は本編の裏側に隠された運営側の苦悩をコミカルに描いたギャグマンガでありながら、利根川を理想の上司としたお仕事マンガとしての側面も持っている。不器用ながらも部下や上司に真摯に向き合う利根川の姿からは人間関係において参考になる要素を学び取ることができる。
19.ハンター×ハンター(アニメ)
※本作は二度のアニメ化をしているが、今回取り上げるのは1999年フジテレビ版の作品である。
原作:富樫義博『HUNTER×HUNTER』 制作:日本アニメーション
12歳の少年・ゴンは両親は死んだと聞かされ叔母であるミトに育てられていたが、幼少期に出会ったハンターより父親の生存と偉大なハンターとしての功績を聞き、父親を捜すためにハンターになる決意をする。会場に辿り着くことすら困難である難関・ハンター試験を合格して父を見つけることを目指すゴンが、出会った仲間達とともに修行し旅する道中を描いた冒険譚。
本アニメ化では、特に序盤において原作にはないオリジナルエピソードが多数追加されている点が特徴である。これは休載の多い原作に追いつかないための措置だと考えられるが、このような翻案によって登場人物たちの人間性の補完や原作において描かれない行間的な場面の描出がなされている。中でもハンター試験において第二次試験と第三次試験の間に存在する「軍艦島編」は全編通してアニメのオリジナル展開である。各受験生の強みを活かして協調し、大きな難題を乗り越える展開が追加されることによって、その後の互いに競い合う展開に深みが増すとともに、原作では深く描かれていないサブキャラクター達の手ごわさや個性が際立っている。
20. 幽★遊★白書(漫画)
作者:富樫義博
不良中学生の浦飯幽助は車に跳ねられそうになっていた子どもを助けて死んでしまう。このような幽助の行動は霊界としても想定外であったため、幽助の魂は地獄にも天国にも行くことができず、成仏することすら不可能な状態であった。しかし、霊界の長の息子・コエンマより霊体として課された試練を乗り越えることができれば生き返らせるとの提案がなされ、現世で悲しむ母や友人の姿を目にした幽助はその課題に挑むことを決意した。人間界・霊界・魔界の3つの世界を架けるバトル作品。
本作は当初、悪い妖怪を人間である幽助が倒していくという構図を取っていたが、人間界&霊界=善、魔界に住む妖怪=悪といった構図は次第に崩れていく。当初は討伐対象であった妖怪の飛影が仲間に加わったり、人間である仙水が人類抹殺を企てることにより、悪とはなにかという問題について考えさせられる作品である。
11.その淑女は偶像となる(漫画)
作者:松本陽介
かつて有名アイドルだった姫宮桜子は引退後、お嬢様学校で淑女としての生活を送っていた。アイドルだった過去を頑なに隠していた桜子であるが、ある日転校してきた駆け出しのアイドル・若菜あるみに一緒にユニットを組んでアイドルリーグ優勝を目指さないかと誘われてしまう。再びトップアイドルを目指すことを決意した桜子達が、年に一度の”トップアイドル”を決める祭典・アイドルリーグ優勝を目指す物語。
この作品は、アイドルという題材でありつつどこかスポ根漫画のような熱さを持っている。「トップアイドル」という漠然とした目標をアイドルリーグという架空の大会を用いて具体的に位置づけることによって、主人公らの目指す道が分かりやすくなっていると感じた。
12.奴隷遊戯(漫画)
原作:ヤマイナナミ 作画:木村隆
市原海のスマホに現れた謎のアプリゲーム「SRAVA GO」。その正体はアプリを通して撮影した人物を奴隷として捕獲・召喚して戦わせる、命の危機を伴うゲームだった。主人公の市原海はアプリの危険性に気が付くと、ゲーム運営に捉えられた幼馴染を助けるために奴隷を集めて戦うことを決意した。
この作品の魅力はぶっとんだ世界観と所々に散らばるパワーワードである。特に第一部は原則「手持ちの奴隷が敵と戦い、生き残ったほうが勝利」という分かりやすい構図であるため、作品独自の用語や設定が引き立っていると感じた。
13.夢魔子(アニメ)
原作:藤子不二雄A 監督:クニトシロウ 制作:シンエイ動画
謎の少女・夢魔子は悩んでいる人の前に現れ、その人の悩みを夢の世界で解放してあげる仕事をしていた。夢魔子に煙を吹きかけられた人はその後、自身の悩みに対する考えや周囲との関係性に変化がもたらされる。
この作品における変化とは、一概に良いこととも悪いことともいうことができない点が特徴である。世間一般的には望ましくないとされる変化であったとしても、その事実を周囲に隠したまま自分を殺し世間に溶け込むことが良いことなのか、己の欲望を解放することで社会不適合者とされることが良いことなのかといった問題について考えさせられる。
また、当時の社会情勢やジェンダー問題が反映された作風であり、他者からの抑圧と自らの欲望の間で揺れる3名の登場人物の心理描写が魅力的である。
14.武道館(ドラマ)
原作: 朝井リョウ『武道館』(小説)
脚本:和田清人 NEXT YOUプロデューサー:つんく♂
武道館ライブを夢見る5人組アイドルグループ『NEXT YOU』のメンバーたちがそれぞれの悩みやスキャンダルを乗り越え、念願の武道館公演を行うまでを描いた作品。
本作の特徴として、ドラマ内のアイドルグループと実在するアイドルグループの間に生じる奇妙な連動性が挙げられる。
本作のメインキャラクターである『NEXT YOU』のメンバーたちは、実在する5人組アイドルグループ(当時)『Juice=Juice』のメンバーが演じている。またNEXT YOU名義での楽曲リリースやYouTubeチャンネルの開設・運用、Juice=Juiceファンをエキストラにしたライブシーンの撮影など、作品の内外問わず架空のアイドルグループNEXT YOUがあたかも実在しているかのような演出が印象深い。
物語の結末においてNEXT YOUはリーダーの卒業、恋愛スキャンダルによるメンバー脱退、二期生募集による卒業加入制グループへの移行といった局面を迎えるが、本作の主演を務めたJuice=Juiceも後に同様の未来を迎えている点も興味深く感じた。
15.ブラックナイトパレード(漫画)
作者:中村光
クリスマスの日に悪い子の元に訪れるといわれる、黒いサンタクロースをモチーフにした作品。
同作者の過去作『荒川アンダーザブリッジ』ではエリートの主人公が河川敷ではいじられキャラになる、という逆転現象が描かれていたが、本作においては現実世界で上手くいかなかった主人公がサンタクロースの世界では天性の才を開花させるという、過去作とは真逆の現象が描かれている。
主人公がサンタクロースの世界における常識を把握しないまま物語が展開していくため、未知の世界に巻き込まれた戸惑いを読者と共有しながら体感することができる。また、主人公の視点から見るとギャグシーンのような場面にも後から読み直すと分かる事情が仕込まれており、笑えるのにどこか深みが感じられる作品でもある。
作中には労働環境や毒親問題、SNSによる承認欲求といった現代社会における社会問題が組み込まれている。また、クリスマスをモチーフにした作品であるため、登場人物の名前や設定に七頭のトナカイや聖ニコラウスの逸話、くるみ割り人形といったクリスマスに纏わる逸話が引用されている点も特徴である。
16.賭博黙示録カイジ(漫画)
作者:福本信行
バイト先の後輩の連帯保証人となって多額の借金を負ったカイジは返済のあてもなく、他人の高級車にイタズラを仕掛けることを数少ない趣味とする生活を送っていた。消費者金融を主とする日本最大級コンツェルン"帝愛"からの取り立て人・遠藤によって一攫千金のギャンブル船への乗船を持ちかけられたことを切っ掛けに、大金や生命を賭けた大勝負に乗り出すようになったカイジを描いた作品。
この物語における主人公・カイジは勝負強く情に厚い反面、自堕落で物事を都合のいい方向に捉えてしまう傾向がある。そのためギャンブル開始時には他者からカモにされるも、仲間の裏切りや敵の不正といった逆境に追い込まれて初めて実力を発揮するという特徴がある。このようなカイジの普段の性格と危機的状況下とのギャップが白熱する展開を生み出していると感じた。
また、本作のオリジナルギャンブル「限定じゃんけん」は単純かつ分かりやすいルールでありつつ戦術考察の余地もあり、実際に試してみたくなるようなゲームに仕上がっている点が魅力である。
17.一日外出録ハンチョー(漫画)
原作:萩原天晴 漫画:上原求・新井和也 協力:福本伸行
福本伸行による漫画『賭博破戒録カイジ』に登場する悪役・大槻班長を主人公としたスピンオフ作品。借金をした者が落とされる地下の強制労働施設で班長を務める債務者・大槻は、他の債務者からイカサマギャンブルや物販で巻き上げた金を使って一日外出をし、定期的に仲間とともに地上で美味しいグルメや和やかな一日を満喫していた。
一見穏やかな休日を軽快に描いた作品だが、端々から過酷な労働環境の中での搾取構造が感じ取れる点が興味深い。同時に、理想的な休日の在り方について考えさせられる作品でもある。
18.中間管理録トネガワ(漫画)
原作:萩原天晴 漫画:橋本智広・三好智樹 協力:福本伸行
福本伸行による漫画『賭博黙示録カイジ』に登場する敵役・利根川を主人公としたスピンオフ作品。消費者金融事業を主とし、債務者を対象としたギャンブルゲームを運営する日本最大級のコンツェルン”帝愛グループ”の最高幹部・利根川は強権的な会長の下、揃いの恰好をした部下たち(通称黒服)を束ねていた。上司の機嫌や部下との人間関係、業務上のハプニングに悩まされながらもプロジェクト成功を目指すチーム利根川の物語。
この作品は本編の裏側に隠された運営側の苦悩をコミカルに描いたギャグマンガでありながら、利根川を理想の上司としたお仕事マンガとしての側面も持っている。不器用ながらも部下や上司に真摯に向き合う利根川の姿からは人間関係において参考になる要素を学び取ることができる。
19.ハンター×ハンター(アニメ)
※本作は二度のアニメ化をしているが、今回取り上げるのは1999年フジテレビ版の作品である。
原作:富樫義博『HUNTER×HUNTER』 制作:日本アニメーション
12歳の少年・ゴンは両親は死んだと聞かされ叔母であるミトに育てられていたが、幼少期に出会ったハンターより父親の生存と偉大なハンターとしての功績を聞き、父親を捜すためにハンターになる決意をする。会場に辿り着くことすら困難である難関・ハンター試験を合格して父を見つけることを目指すゴンが、出会った仲間達とともに修行し旅する道中を描いた冒険譚。
本アニメ化では、特に序盤において原作にはないオリジナルエピソードが多数追加されている点が特徴である。これは休載の多い原作に追いつかないための措置だと考えられるが、このような翻案によって登場人物たちの人間性の補完や原作において描かれない行間的な場面の描出がなされている。中でもハンター試験において第二次試験と第三次試験の間に存在する「軍艦島編」は全編通してアニメのオリジナル展開である。各受験生の強みを活かして協調し、大きな難題を乗り越える展開が追加されることによって、その後の互いに競い合う展開に深みが増すとともに、原作では深く描かれていないサブキャラクター達の手ごわさや個性が際立っている。
20. 幽★遊★白書(漫画)
作者:富樫義博
不良中学生の浦飯幽助は車に跳ねられそうになっていた子どもを助けて死んでしまう。このような幽助の行動は霊界としても想定外であったため、幽助の魂は地獄にも天国にも行くことができず、成仏することすら不可能な状態であった。しかし、霊界の長の息子・コエンマより霊体として課された試練を乗り越えることができれば生き返らせるとの提案がなされ、現世で悲しむ母や友人の姿を目にした幽助はその課題に挑むことを決意した。人間界・霊界・魔界の3つの世界を架けるバトル作品。
本作は当初、悪い妖怪を人間である幽助が倒していくという構図を取っていたが、人間界&霊界=善、魔界に住む妖怪=悪といった構図は次第に崩れていく。当初は討伐対象であった妖怪の飛影が仲間に加わったり、人間である仙水が人類抹殺を企てることにより、悪とはなにかという問題について考えさせられる作品である。
2年 岩下
RES
春休み課題1~10
1.明日、私は誰かのカノジョ(漫画)
作者:をの ひなお
レンタル彼女やパパ活、風俗といった水商売でお金を稼ぐ女性を描いた物語。各章の登場人物たちはそれぞれ異なる理念や価値観を持っており、学費、承認欲求、整形費用、ホスト、過去のトラウマといった各々の目的から夜の世界に足を踏み入れる。
作中にはマスクの着用や大学生のオンライン飲み会など現代社会の情勢が投影されており、多様な価値観を持った若者の心理を飾らずに描いた作風が特徴である。各章の主人公達は物語を通じて様々な困難に直面するが、それによって劇的に生き様が変化するといった教訓めいた展開はあまりみられず、それぞれの軸に沿った自分なりの生き方を見つけていく点が興味深く感じた。
2.がっこうぐらし!(アニメ・漫画)
原作・原案:海法紀光 作画:千葉サドル
〈アニメ〉監督:安藤正臣 アニメーション制作:Lerche
私立巡ヶ丘学院高等学校の生徒である、ゆき・りーさん・くるみ・みーくんの4人は学校の施設を借りて共同生活を送る「学園生活部」の部員であった。屋上の菜園で野菜を栽培し、ソーラーパネルで自家発電。一見和やかな学園生活にみえるが、その実態は外の世界に蔓延するゾンビウイルスから身を守るためのシェルターであった。荒廃した世界の中でなんとか生き延びようと藻掻く少女達の物語。
本作には、キャラクターによって見えている世界が大幅に異なるという特徴がある。学園内外のほぼ全員がゾンビウイルスに感染してしまった状況下で、4人の少女は協力して生き残ろうと画策する。しかしながら過去のトラウマから主人公・ゆきはゾンビウイルスの存在自体を記憶から抹消してしまい、あたかも普通の学園生活であるかのように振る舞っている。そのため、ゆきの視点で物語が進んでいく第一話の時点では視聴者も作品の世界観に気づくことができず、他者の視点に移った最後の場面にて初めて荒廃的な世界観が明かされる点が視聴者に対して強い興味を抱かせていると感じた。また、現実逃避がちなゆきの言動は時に他の3人を振り回すことにもなるが、非日常の中でも日常を忘れないゆきだからこそ開ける突破口も存在する。このような非日常な世界観だからこそ感じられる日常の重要性も本作の魅力の一つだと感じた。
3.めんどくさがり男子が朝起きたら女の子になっていた話。(漫画)
作者:小林キナ
ある朝起きると、早坂と同室の先輩・安田の体が女の子になっていた。極度の面倒くさがり屋である安田は男に戻る方法を探すことすら面倒くさいと言い、現状を甘んじて受け入れる。そんな先輩に振り回されつつもついお世話してしまう早坂や、様々な反応を示す周囲の人々を描いたコメディ作品。
安田は異常なまでの面倒くさがり屋な反面、他者に対する配慮の観点において独自のモラルを持っている。その価値観にハッとさせられるとともに、ズボラな性格とのギャップが一層笑いを引き立てる。また、周囲の人々の反応も多種多様で、トランスジェンダーを扱ったサブカル作品が好きだからという理由で興味を示す者や、男時代の安田に恋心を抱いていた者、今まで女子の友達がいなかったが安田となら仲良くなれるのではという想いから近づいてくる者など、女体化をきっかけに新たな人間関係が広がっていく。また、ほとんどの人物は安田の女体化についてさほど違和感なく受け入れており、常識人早坂とのギャップが一層個性を引き立てていると感じた。
4.ラブライブ!スーパースター!(アニメ)
アニメーション制作:サンライズ 監督:京極尚彦
歌うことが大好きな少女、渋谷かのんは新設校である私立由比ヶ丘女子高等学校の音楽科へ入学することを夢見ていたが、入学試験当日に緊張から実力を出し切れず、不合格になってしまう。やさぐれて毎日を過ごすかのんであったが、同校の普通科で出会った少女・クゥクゥからスクールアイドルに勧誘されたことを切っ掛けに、自身の目標を見つけていく。学園の反対を押し切り、スクールアイドルとして活動する5人組アイドルユニットLiella!の物語。
本作はラブライブ!シリーズ第四作目の作品であるが、主要人物の人数や主人公の性格といった面において、既存シリーズにおける決まり事からの脱却が測られている。作中の舞台が新設校である点からも、伝統よりも未来を重んじる新たな価値観が提示されているように感じた。また、劇中歌のクオリティが高く、実在のアイドルを見ているような気分になれる点が魅力だと感じた。
5.信友島~良い人でなければ終わり~(マンガ)
作者:赤秩父
通貨が存在せず、労働の必要性がないユートピア・信友島。唯一のルールは「良き隣人であること」。一見すると理想郷であるこの島は、極度の全体主義から信用のない住民(=よき隣人でない人)に対しては命すらもいとわないディストピアであった。バイト先の先輩である喜多によって強制的に連れてこられた主人公・佐藤は同じ境遇の人物らとともに脱出を目指すが、島の特産品・ナリマの力で凶暴化した動物たちや超人的な身体能力を持つ島民らが立ちふさがる。
この作品は一見ホラーのような設定・ストーリー展開だが、島民の異常さや主人公のリアクションなどギャグマンガ顔負けのコミカルな描写が含まれており、緊迫した場面でも何故かくすっと笑えてしまう点が魅力である。単行本宣伝用の書下ろし作品にも力を入れており、超自然的な世界観を楽しむことができる。
6.バクマン。(漫画・アニメ)
原作:大場つぐみ 作画:小畑健
〈アニメ〉監督:カサヰケンイチ、秋田谷典昭 アニメーション制作:J.C.STAFF
制作・著作:NHK、小学館集英社プロダクション
亡き漫画家の叔父を持つ中学生・真城と頭脳明晰な同級生・秋人がタッグを組み、アニメ化する程の人気漫画家を目指す物語。週刊少年ジャンプの三原則、友情・努力・勝利によって夢の実現(男のロマン)を目指す物語であるのと同時に「互いに夢を叶えるまで会わない」という真城と美穂の独特な恋模様を描く物語でもある。
本作では登場人物らの長期に渡る成長が描かれている点が特徴である。連載を目指した中学生時代から高校生漫画家として活動し、専業漫画家として業界トップの作家陣と競うようになるまでの経緯を、様々な人物との出会いと別れを交えつつ描いている。
また、主人公らが基本的に物事を理論だてて考えている点も魅力の1つで、漫画作品の分析論や現実社会にも通じる少年ジャンプにおけるアンケートシステムといった、他作品の読解にも通じる漫画論を学ぶこともできる。
7.かぐや様を語りたい(漫画) 原作:赤坂アカ 漫画:G3井田
赤坂アカによるマンガ「かぐや様は告らせたい」のスピンオフ漫画。「かぐや様は告らせたい」に登場する端役キャラクター、マスメディア部の二人にスポットを当てたギャグ4コマ漫画。原作と同じ秀知院学園を舞台に、原作の主人公かぐやを崇拝する巨瀬エリカと、白銀×かぐやのカップリングに萌えている紀カレンによる妄想ライフを描いた作品。
この漫画は本編とは別作者が描いたものだが、本編と連動した展開や本編で語られなかった場面の補完的な描写などが数々みられる。そのため本編の舞台裏や作品世界観における新たな発見がみられ、本編が更に面白く感じられるような点が魅力である。
8.干物妹!うまるちゃん(漫画、アニメ)
原作:サンカクヘッド
〈アニメ〉監督:太田雅彦 アニメーション制作:動画工房
外では文武両道な優等生だが、家では常にだらだらしてばかりいる干物妹・うまると、うまるに振り回されつつもつい世話を焼いてしまう兄のタイヘイの生活を描いた物語。
普段の完璧超人なうまると家でのだらけモードのうまるは視覚的表現によって描き分けられており、だらけている時には2~3頭身ほどのデフォルメされた姿で描かれている。そのため普通であればいらだつような言動やだらしない言動をとってもどこかゆるキャラのようなかわいさがあり、見ていて癒される点が魅力である。また、ゆるくだらけたうまるの日常には平穏の中の至福の時間が描かれており、読者の共感を呼んだり、自身の日常生活に新たな発見をもたらす点が特徴である。
9.推しの子
原作:赤坂アカ 作画:横槍メンゴ
隠し子を身籠ったスーパーアイドル・星野アイは、世間に隠して双子を出産するため田舎の産婦人科を受診する。偶然にもアイのファンであった産婦人科医・ゴローは、複雑な思いを抱えつつもアイに健康な双子を産ませようと奮闘する。しかし、アイの出産当日、何者かの手によってゴローは殺害されてしまう。その後目覚めたゴローは、アイの息子として転生していた。ゴロー改め「星野アクアマリン」として、同じく転生した双子の妹「星野ルビー」とともに推しの子としての日々を送っていく。その後アイは熱狂的なファンに殺されるが、ルビーはアイドル、アクアは役者としてかつてのアイ同様に芸能の道へ進むことになる。
この物語は「前世では体が弱くて果たせなかった夢を叶えようとアイドルを目指すルビー」「芸能界に紛れているアイ殺害事件の黒幕を探し出し、殺害するための手段として役者の道に進むアクアマリン」という対照的な2つの物語を軸に進んでいく。双子の主人公による2つの物語によって世界観に奥行きが生まれ、ストーリーが2倍楽しめる。また、目的こそ異なるものの双子の目指す業界が共通している点や、バックボーンが似通っている点、双子同士の間にも絆や関係性が隠されている点から、作品としての本筋も保っている。
10.ひぐらしのなく頃に 卒(アニメ)
監督:川口敬一郎 アニメーション制作:パッショーネ
「ひぐらしのなく頃に」新シリーズの前作「ひぐらしのなく頃に 業」の解答編。前作で発生した惨劇の裏側で糸を引いていた人物が明らかになる。
今作では前作における黒幕が明らかになるが、長期に渡るシリーズ作品という特性上、主要キャラクターのイメージ像を崩さないように最大限の配慮が行われている。そのため黒幕の中の善性と悪を擬人化してその両者を戦わせる演出によって「その人物」ではなく「その人物に取り付いた悪魔」にヘイトが向かうような描写が加えられたり、惨劇を起こすに至るまでの動機となるエピソードを丁寧に描くなど、昔からのファンの気持ちを損ねないようにする工夫が行われているように感じた。
1.明日、私は誰かのカノジョ(漫画)
作者:をの ひなお
レンタル彼女やパパ活、風俗といった水商売でお金を稼ぐ女性を描いた物語。各章の登場人物たちはそれぞれ異なる理念や価値観を持っており、学費、承認欲求、整形費用、ホスト、過去のトラウマといった各々の目的から夜の世界に足を踏み入れる。
作中にはマスクの着用や大学生のオンライン飲み会など現代社会の情勢が投影されており、多様な価値観を持った若者の心理を飾らずに描いた作風が特徴である。各章の主人公達は物語を通じて様々な困難に直面するが、それによって劇的に生き様が変化するといった教訓めいた展開はあまりみられず、それぞれの軸に沿った自分なりの生き方を見つけていく点が興味深く感じた。
2.がっこうぐらし!(アニメ・漫画)
原作・原案:海法紀光 作画:千葉サドル
〈アニメ〉監督:安藤正臣 アニメーション制作:Lerche
私立巡ヶ丘学院高等学校の生徒である、ゆき・りーさん・くるみ・みーくんの4人は学校の施設を借りて共同生活を送る「学園生活部」の部員であった。屋上の菜園で野菜を栽培し、ソーラーパネルで自家発電。一見和やかな学園生活にみえるが、その実態は外の世界に蔓延するゾンビウイルスから身を守るためのシェルターであった。荒廃した世界の中でなんとか生き延びようと藻掻く少女達の物語。
本作には、キャラクターによって見えている世界が大幅に異なるという特徴がある。学園内外のほぼ全員がゾンビウイルスに感染してしまった状況下で、4人の少女は協力して生き残ろうと画策する。しかしながら過去のトラウマから主人公・ゆきはゾンビウイルスの存在自体を記憶から抹消してしまい、あたかも普通の学園生活であるかのように振る舞っている。そのため、ゆきの視点で物語が進んでいく第一話の時点では視聴者も作品の世界観に気づくことができず、他者の視点に移った最後の場面にて初めて荒廃的な世界観が明かされる点が視聴者に対して強い興味を抱かせていると感じた。また、現実逃避がちなゆきの言動は時に他の3人を振り回すことにもなるが、非日常の中でも日常を忘れないゆきだからこそ開ける突破口も存在する。このような非日常な世界観だからこそ感じられる日常の重要性も本作の魅力の一つだと感じた。
3.めんどくさがり男子が朝起きたら女の子になっていた話。(漫画)
作者:小林キナ
ある朝起きると、早坂と同室の先輩・安田の体が女の子になっていた。極度の面倒くさがり屋である安田は男に戻る方法を探すことすら面倒くさいと言い、現状を甘んじて受け入れる。そんな先輩に振り回されつつもついお世話してしまう早坂や、様々な反応を示す周囲の人々を描いたコメディ作品。
安田は異常なまでの面倒くさがり屋な反面、他者に対する配慮の観点において独自のモラルを持っている。その価値観にハッとさせられるとともに、ズボラな性格とのギャップが一層笑いを引き立てる。また、周囲の人々の反応も多種多様で、トランスジェンダーを扱ったサブカル作品が好きだからという理由で興味を示す者や、男時代の安田に恋心を抱いていた者、今まで女子の友達がいなかったが安田となら仲良くなれるのではという想いから近づいてくる者など、女体化をきっかけに新たな人間関係が広がっていく。また、ほとんどの人物は安田の女体化についてさほど違和感なく受け入れており、常識人早坂とのギャップが一層個性を引き立てていると感じた。
4.ラブライブ!スーパースター!(アニメ)
アニメーション制作:サンライズ 監督:京極尚彦
歌うことが大好きな少女、渋谷かのんは新設校である私立由比ヶ丘女子高等学校の音楽科へ入学することを夢見ていたが、入学試験当日に緊張から実力を出し切れず、不合格になってしまう。やさぐれて毎日を過ごすかのんであったが、同校の普通科で出会った少女・クゥクゥからスクールアイドルに勧誘されたことを切っ掛けに、自身の目標を見つけていく。学園の反対を押し切り、スクールアイドルとして活動する5人組アイドルユニットLiella!の物語。
本作はラブライブ!シリーズ第四作目の作品であるが、主要人物の人数や主人公の性格といった面において、既存シリーズにおける決まり事からの脱却が測られている。作中の舞台が新設校である点からも、伝統よりも未来を重んじる新たな価値観が提示されているように感じた。また、劇中歌のクオリティが高く、実在のアイドルを見ているような気分になれる点が魅力だと感じた。
5.信友島~良い人でなければ終わり~(マンガ)
作者:赤秩父
通貨が存在せず、労働の必要性がないユートピア・信友島。唯一のルールは「良き隣人であること」。一見すると理想郷であるこの島は、極度の全体主義から信用のない住民(=よき隣人でない人)に対しては命すらもいとわないディストピアであった。バイト先の先輩である喜多によって強制的に連れてこられた主人公・佐藤は同じ境遇の人物らとともに脱出を目指すが、島の特産品・ナリマの力で凶暴化した動物たちや超人的な身体能力を持つ島民らが立ちふさがる。
この作品は一見ホラーのような設定・ストーリー展開だが、島民の異常さや主人公のリアクションなどギャグマンガ顔負けのコミカルな描写が含まれており、緊迫した場面でも何故かくすっと笑えてしまう点が魅力である。単行本宣伝用の書下ろし作品にも力を入れており、超自然的な世界観を楽しむことができる。
6.バクマン。(漫画・アニメ)
原作:大場つぐみ 作画:小畑健
〈アニメ〉監督:カサヰケンイチ、秋田谷典昭 アニメーション制作:J.C.STAFF
制作・著作:NHK、小学館集英社プロダクション
亡き漫画家の叔父を持つ中学生・真城と頭脳明晰な同級生・秋人がタッグを組み、アニメ化する程の人気漫画家を目指す物語。週刊少年ジャンプの三原則、友情・努力・勝利によって夢の実現(男のロマン)を目指す物語であるのと同時に「互いに夢を叶えるまで会わない」という真城と美穂の独特な恋模様を描く物語でもある。
本作では登場人物らの長期に渡る成長が描かれている点が特徴である。連載を目指した中学生時代から高校生漫画家として活動し、専業漫画家として業界トップの作家陣と競うようになるまでの経緯を、様々な人物との出会いと別れを交えつつ描いている。
また、主人公らが基本的に物事を理論だてて考えている点も魅力の1つで、漫画作品の分析論や現実社会にも通じる少年ジャンプにおけるアンケートシステムといった、他作品の読解にも通じる漫画論を学ぶこともできる。
7.かぐや様を語りたい(漫画) 原作:赤坂アカ 漫画:G3井田
赤坂アカによるマンガ「かぐや様は告らせたい」のスピンオフ漫画。「かぐや様は告らせたい」に登場する端役キャラクター、マスメディア部の二人にスポットを当てたギャグ4コマ漫画。原作と同じ秀知院学園を舞台に、原作の主人公かぐやを崇拝する巨瀬エリカと、白銀×かぐやのカップリングに萌えている紀カレンによる妄想ライフを描いた作品。
この漫画は本編とは別作者が描いたものだが、本編と連動した展開や本編で語られなかった場面の補完的な描写などが数々みられる。そのため本編の舞台裏や作品世界観における新たな発見がみられ、本編が更に面白く感じられるような点が魅力である。
8.干物妹!うまるちゃん(漫画、アニメ)
原作:サンカクヘッド
〈アニメ〉監督:太田雅彦 アニメーション制作:動画工房
外では文武両道な優等生だが、家では常にだらだらしてばかりいる干物妹・うまると、うまるに振り回されつつもつい世話を焼いてしまう兄のタイヘイの生活を描いた物語。
普段の完璧超人なうまると家でのだらけモードのうまるは視覚的表現によって描き分けられており、だらけている時には2~3頭身ほどのデフォルメされた姿で描かれている。そのため普通であればいらだつような言動やだらしない言動をとってもどこかゆるキャラのようなかわいさがあり、見ていて癒される点が魅力である。また、ゆるくだらけたうまるの日常には平穏の中の至福の時間が描かれており、読者の共感を呼んだり、自身の日常生活に新たな発見をもたらす点が特徴である。
9.推しの子
原作:赤坂アカ 作画:横槍メンゴ
隠し子を身籠ったスーパーアイドル・星野アイは、世間に隠して双子を出産するため田舎の産婦人科を受診する。偶然にもアイのファンであった産婦人科医・ゴローは、複雑な思いを抱えつつもアイに健康な双子を産ませようと奮闘する。しかし、アイの出産当日、何者かの手によってゴローは殺害されてしまう。その後目覚めたゴローは、アイの息子として転生していた。ゴロー改め「星野アクアマリン」として、同じく転生した双子の妹「星野ルビー」とともに推しの子としての日々を送っていく。その後アイは熱狂的なファンに殺されるが、ルビーはアイドル、アクアは役者としてかつてのアイ同様に芸能の道へ進むことになる。
この物語は「前世では体が弱くて果たせなかった夢を叶えようとアイドルを目指すルビー」「芸能界に紛れているアイ殺害事件の黒幕を探し出し、殺害するための手段として役者の道に進むアクアマリン」という対照的な2つの物語を軸に進んでいく。双子の主人公による2つの物語によって世界観に奥行きが生まれ、ストーリーが2倍楽しめる。また、目的こそ異なるものの双子の目指す業界が共通している点や、バックボーンが似通っている点、双子同士の間にも絆や関係性が隠されている点から、作品としての本筋も保っている。
10.ひぐらしのなく頃に 卒(アニメ)
監督:川口敬一郎 アニメーション制作:パッショーネ
「ひぐらしのなく頃に」新シリーズの前作「ひぐらしのなく頃に 業」の解答編。前作で発生した惨劇の裏側で糸を引いていた人物が明らかになる。
今作では前作における黒幕が明らかになるが、長期に渡るシリーズ作品という特性上、主要キャラクターのイメージ像を崩さないように最大限の配慮が行われている。そのため黒幕の中の善性と悪を擬人化してその両者を戦わせる演出によって「その人物」ではなく「その人物に取り付いた悪魔」にヘイトが向かうような描写が加えられたり、惨劇を起こすに至るまでの動機となるエピソードを丁寧に描くなど、昔からのファンの気持ちを損ねないようにする工夫が行われているように感じた。