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4年 宇都
RES
4年春休み課題1〜5
1.名探偵コナン ベイカー街の亡霊 / 監督:こだま兼嗣
江戸川コナン達は新型仮想体感ゲーム機「コクーン」の完成披露パーティーを訪れる。その裏で、ゲームの開発者である樫村忠彬がIT企業社長のトマス・シンドラーに刺殺される事件が発生した。樫村の残したダイイング・メッセージが実在した殺人鬼のジャック・ザ・リッパーを指しており、100年前のロンドンを舞台としたゲーム内に手がかりがあると考えたコナンは、ゲームへの参加を決める。コナンや少年探偵団や灰原哀、毛利蘭はゲームの世界に入るが、ゲームは人工知能ノアズ・アークに乗っ取られてしまう。ノアズ・アークはシンドラーのもとで2年前に自殺したヒロキ・サワダという少年が開発した成長する人工知能であり、自殺直前のヒロキによって一般の電話回線へ解き放たれていた。
コナン映画6作目で、2002年公開。人工知能(AI)技術をメインテーマとして扱っている。1997年にはAIが初めてチェスで人間に勝つという大きな出来事があり注目を集め、2000年以降は日本国内でインターネットが普及したという流れがある。コナン映画は時事問題を扱うことも多いので、今作も社会の流れに合わせて作られたものだと考えられる。
他のテーマとしては「階層の再生産」やそれに伴う社会の腐敗、実在する殺人鬼ジャック・ザ・リッパー、ギフテッドとして生まれた子供の苦しみ、などがあり大人向けの内容に感じられる。
2.おそ松さん(アニメ版)1期/ 監督:藤田陽一
松野家の6つ子であるおそ松、カラ松、チョロ松、一松、十四松、トド松は20歳を過ぎても定職につかず、親の脛をかじるいわゆるニート。仕事にも女性にも縁がない個性的な6人は、時に足の引っ張り合いをしながらも、ひとつ屋根の下で暮らし、それぞれの趣味にいそしむ日々。
そんな彼達に、うさんくさい男イヤミ、おでん屋のチビ太、6つ子のアイドル的存在トト子、いつもパンツ一丁のおじさんデカパン、大きな口の中年男ダヨーン、あどけない少年(に見えるが実は成人)ハタ坊などの面々が加わり毎回騒動が巻き起こる。
赤塚不二夫生誕80周年記念作品。
赤塚不二夫の原作では見た目の区別がなかった6つ子を見た目・キャラクター共に差別化している。現代日本で暮らす6人の日常生活のほか、お馴染みのキャラクターは出てくるものの全く違う世界線のストーリーやショートコント、名作パロディなど、各々のキャラクター性を活かして多彩なストーリーが楽しめる。キャラクター消費の側面が非常に強いシリーズだと思う。
作画の特徴として、絵の主線が太いうえ、紺色だったり茶色だったりすることがあげられる。黒い主線で描かれているアニメが多いなか珍しいのではないだろうか。
3.カラオケ行こ!(漫画版) /和山やま
中学3年生の岡聡実と四代目祭林組若頭補佐の成田狂児との奇妙な友情を描いた物語。
コンクールの日、成田狂児は歌を教えてほしいと合唱部部長の聡実をカラオケに拉致する。何でも狂児のいる組では年に4回カラオケ大会が開かれ、そこで歌ヘタ王になると組長に下手くそな刺青を彫られるという。それが嫌な狂児は何としてでも歌ヘタ王を回避すべく、カラオケで聡実の指導のもと特訓を始める。
最近の作品だが、ひと昔前の少女漫画っぽい作画だなと思った。具体的にはリアルっぽさのある人物の骨格の描き方(等身や鼻の描き方)や、髪の毛の塗り方などからそう感じるのではないか。佐々木倫子先生の人物の描き方と似ている気がする。トーンより塗りで影を表現しているかんじから、どことなく温かみのある絵だと思った。
4.劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来
鬼となった妹・禰󠄀豆子を人間に戻すため鬼狩りの組織《鬼殺隊》に入った竈門炭治郎。入隊後、仲間である我妻善逸、嘴平伊之助と共に様々な鬼と戦い、成長しながら友情や絆を深めていく。
炭治郎たちが来たる鬼との決戦に備えて、隊士たちと共に《柱》による合同強化訓練《柱稽古》に挑んでいる最中、《鬼殺隊》の本部である産屋敷邸に現れた鬼舞辻󠄀無惨。お館様の危機に駆けつけた《柱》たちと炭治郎であったが、 無惨の手によって謎の空間へと落とされてしまう。炭治郎たちが落下した先、それは鬼の根城≪無限城≫―”鬼殺隊”と”鬼”の最終決戦の火蓋が切って落とされる。
3組の決戦を2時間半の映画で描いており過去回想も多いが、展開がごちゃごちゃしている印象もなく冗長な印象もなくてすごかった。人物の動きは手描きだと思うが作画が綺麗すぎた。
声優さんの演技も凄かったのだが、子供が多く観にくることを想定してなのか、いくつかの場面の切り替えがあって頭の切り替えが追いつかないことを想定してなのか、全体的に喋るスピードが遅く感じた。
5.二銭銅貨/江戸川乱歩
ある電機会社の工場の給料日に、有名な紳士盗賊が新聞記者に変装し、5万円を盗むという事件が起こる。賊は捕まり懲役となるが、5万円の行方については一切白状しないままとなっている。
「私」とその友人、松村武は場末の下駄屋の2階の六畳に同居する貧窮青年で、二人がその賊をうらやましく思っていたある日、松村が突然「私」が机の上に置いていた二銭銅貨はどこで手に入れたものだと訊いてくる。「私」は近所の懇意な煙草屋でお釣りにもらってきたもので、そこの娘さんは監獄への差入屋に嫁いでいてなかなか美人だなどと言う。それを聞いた松村はある研究に没頭しはじめる。
江戸川乱歩のデビュー作。
デビュー作には作者の色が強く出るとよく言うが本当にその通りで、彼の作品でよく見られる「どんでん返し」、「犯人による語り」、「読者への語りかけ」といった特徴が表れている。
作中に出てくる「南無阿弥陀仏」を使った暗号は、「いろはにほへと」を使った暗号などと同じく日本語による小説であることの意味が大きいと思う。
1.名探偵コナン ベイカー街の亡霊 / 監督:こだま兼嗣
江戸川コナン達は新型仮想体感ゲーム機「コクーン」の完成披露パーティーを訪れる。その裏で、ゲームの開発者である樫村忠彬がIT企業社長のトマス・シンドラーに刺殺される事件が発生した。樫村の残したダイイング・メッセージが実在した殺人鬼のジャック・ザ・リッパーを指しており、100年前のロンドンを舞台としたゲーム内に手がかりがあると考えたコナンは、ゲームへの参加を決める。コナンや少年探偵団や灰原哀、毛利蘭はゲームの世界に入るが、ゲームは人工知能ノアズ・アークに乗っ取られてしまう。ノアズ・アークはシンドラーのもとで2年前に自殺したヒロキ・サワダという少年が開発した成長する人工知能であり、自殺直前のヒロキによって一般の電話回線へ解き放たれていた。
コナン映画6作目で、2002年公開。人工知能(AI)技術をメインテーマとして扱っている。1997年にはAIが初めてチェスで人間に勝つという大きな出来事があり注目を集め、2000年以降は日本国内でインターネットが普及したという流れがある。コナン映画は時事問題を扱うことも多いので、今作も社会の流れに合わせて作られたものだと考えられる。
他のテーマとしては「階層の再生産」やそれに伴う社会の腐敗、実在する殺人鬼ジャック・ザ・リッパー、ギフテッドとして生まれた子供の苦しみ、などがあり大人向けの内容に感じられる。
2.おそ松さん(アニメ版)1期/ 監督:藤田陽一
松野家の6つ子であるおそ松、カラ松、チョロ松、一松、十四松、トド松は20歳を過ぎても定職につかず、親の脛をかじるいわゆるニート。仕事にも女性にも縁がない個性的な6人は、時に足の引っ張り合いをしながらも、ひとつ屋根の下で暮らし、それぞれの趣味にいそしむ日々。
そんな彼達に、うさんくさい男イヤミ、おでん屋のチビ太、6つ子のアイドル的存在トト子、いつもパンツ一丁のおじさんデカパン、大きな口の中年男ダヨーン、あどけない少年(に見えるが実は成人)ハタ坊などの面々が加わり毎回騒動が巻き起こる。
赤塚不二夫生誕80周年記念作品。
赤塚不二夫の原作では見た目の区別がなかった6つ子を見た目・キャラクター共に差別化している。現代日本で暮らす6人の日常生活のほか、お馴染みのキャラクターは出てくるものの全く違う世界線のストーリーやショートコント、名作パロディなど、各々のキャラクター性を活かして多彩なストーリーが楽しめる。キャラクター消費の側面が非常に強いシリーズだと思う。
作画の特徴として、絵の主線が太いうえ、紺色だったり茶色だったりすることがあげられる。黒い主線で描かれているアニメが多いなか珍しいのではないだろうか。
3.カラオケ行こ!(漫画版) /和山やま
中学3年生の岡聡実と四代目祭林組若頭補佐の成田狂児との奇妙な友情を描いた物語。
コンクールの日、成田狂児は歌を教えてほしいと合唱部部長の聡実をカラオケに拉致する。何でも狂児のいる組では年に4回カラオケ大会が開かれ、そこで歌ヘタ王になると組長に下手くそな刺青を彫られるという。それが嫌な狂児は何としてでも歌ヘタ王を回避すべく、カラオケで聡実の指導のもと特訓を始める。
最近の作品だが、ひと昔前の少女漫画っぽい作画だなと思った。具体的にはリアルっぽさのある人物の骨格の描き方(等身や鼻の描き方)や、髪の毛の塗り方などからそう感じるのではないか。佐々木倫子先生の人物の描き方と似ている気がする。トーンより塗りで影を表現しているかんじから、どことなく温かみのある絵だと思った。
4.劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来
鬼となった妹・禰󠄀豆子を人間に戻すため鬼狩りの組織《鬼殺隊》に入った竈門炭治郎。入隊後、仲間である我妻善逸、嘴平伊之助と共に様々な鬼と戦い、成長しながら友情や絆を深めていく。
炭治郎たちが来たる鬼との決戦に備えて、隊士たちと共に《柱》による合同強化訓練《柱稽古》に挑んでいる最中、《鬼殺隊》の本部である産屋敷邸に現れた鬼舞辻󠄀無惨。お館様の危機に駆けつけた《柱》たちと炭治郎であったが、 無惨の手によって謎の空間へと落とされてしまう。炭治郎たちが落下した先、それは鬼の根城≪無限城≫―”鬼殺隊”と”鬼”の最終決戦の火蓋が切って落とされる。
3組の決戦を2時間半の映画で描いており過去回想も多いが、展開がごちゃごちゃしている印象もなく冗長な印象もなくてすごかった。人物の動きは手描きだと思うが作画が綺麗すぎた。
声優さんの演技も凄かったのだが、子供が多く観にくることを想定してなのか、いくつかの場面の切り替えがあって頭の切り替えが追いつかないことを想定してなのか、全体的に喋るスピードが遅く感じた。
5.二銭銅貨/江戸川乱歩
ある電機会社の工場の給料日に、有名な紳士盗賊が新聞記者に変装し、5万円を盗むという事件が起こる。賊は捕まり懲役となるが、5万円の行方については一切白状しないままとなっている。
「私」とその友人、松村武は場末の下駄屋の2階の六畳に同居する貧窮青年で、二人がその賊をうらやましく思っていたある日、松村が突然「私」が机の上に置いていた二銭銅貨はどこで手に入れたものだと訊いてくる。「私」は近所の懇意な煙草屋でお釣りにもらってきたもので、そこの娘さんは監獄への差入屋に嫁いでいてなかなか美人だなどと言う。それを聞いた松村はある研究に没頭しはじめる。
江戸川乱歩のデビュー作。
デビュー作には作者の色が強く出るとよく言うが本当にその通りで、彼の作品でよく見られる「どんでん返し」、「犯人による語り」、「読者への語りかけ」といった特徴が表れている。
作中に出てくる「南無阿弥陀仏」を使った暗号は、「いろはにほへと」を使った暗号などと同じく日本語による小説であることの意味が大きいと思う。
4年 宇都
RES
3年夏休み課題28〜30
28.ALIEN STAGE / 総監督:VIVINOS
韓国のアニメーションチーム「TEAM Forma+9」が制作しているアニメーション。音楽やMVを通して、エイリアンのペットになった人間たちの意思、取り巻く環境、関係性を紐解いていくストーリーとなっている。
前回のシーズン、大盛況のうちに幕を下ろした新生オーディション番組『エイリアン・ステージ』が、新シーズンとして戻ってきた。『エイリアン・ステージ』は人間ペット同士を競わせるサバイバルオーディション番組で、優勝した人間ペットの飼い主はÂÇÑ ±â´ÉÀで悠々と暮らすことができる。
最初はありふれたバラエティー番組と思われていた『エイリアン・ステージ』は、シーズンを重ねるうちにだんだんと評判になっていった。それは音楽専門幼稚園である「アナクトガーデン」ができるほどであり、人間ペットたちの入園競争は日に日に厳しさを増していった。
個性の強い人間ペットたちのパフォーマンスと美しい鳴き声が合わさり、多くのセゲイン(エイリアン)を惹きつける『エイリアン・ステージ』。 果たしてどんな人間ペットが優勝するのか多くの外界人たちの注目を集めている。
VIVINOS氏のYouTubeチャンネルで全話観ることができる。ストーリーはMVで進み、音楽は既存のものではなく全て書き下ろし楽曲である。MVの他、作者がXに投稿する漫画がストーリーの理解を助けている。
メインで登場する人間ペットは女性3人男性3人で、女性同士のカップル、男性同士のカップル(?)、男女カップル(?)がそれぞれ過酷な環境でどのように他者を愛すかが一貫して描かれる作品である。
韓国のサバイバルオーディション番組文化が色濃く影響していると思われ、「他者をどう愛するか」というテーマのほか、手軽に出演者の人生を消費するオーディション番組文化へのアンチテーゼという側面も持つ作品ではないだろうか。
29. ボブという名の猫 幸せのハイタッチ/監督:ロジャー・スポティスウッド
ロンドンの路上で自作の歌を弾き語り、小銭を稼ぐ若者ジェームズは、ホームレスの麻薬常習者だった。立ち直りたい気持ちは強く、更生プログラムに熱心に通うが、つい麻薬の誘惑に負ける日々を繰り返すジェームズ。ソーシャルワーカーのヴァルは、今がジェームズにとって最後のチャンスだと感じ、彼に無償の住居をあてがった。
そんなある日、ジェームズの部屋に迷い込む茶トラの野良猫。隣人のベティが「ボブ」と名付けたその猫はジェームズに懐いてしまい、見捨てることもできないジェームズはあれこれ世話をする。
原作はイギリスでシリーズ合計1,000万部を超える大ヒットを記録したノンフィクション『ボブという名のストリート・キャット』で、ジェームズ本人、本猫も出演している。
猫のボブが生活に加わってから、ジェームズを気にかける人は大幅に増えた。猫を飼い始めたことで生活圏に変化が起こり、その結果関わる人間の数が増え、動物好きの人々の目にとまり金銭的に余裕ができたことが、彼が薬物依存から逃れることができたポイントだと感じた。ただ、猫がいなくとも薬物依存者が治療をできて周りが見守る環境が揃うことがベストではあると思うので、美談にしてはいけないとも思う。また、アニマルセラピーの効果は認められているのかもしれないが動物の住環境の整備も進められるべきと思った。ボブは禁断症状が出ているジェームズと数日間家にいるので環境としては良くないと思う。
30. 名探偵コナン 隻眼の残像 /監督:重原克也
長野県・八ヶ岳連峰未宝岳。長野県警の大和敢助が雪山で“ある男”を追っていた時、不意に何者かの影が敢助の視界に。気をとられた瞬間、“ある男”が放ったライフル弾が敢助の左眼をかすめ、大きな地響きとともに雪崩が発生。そのまま敢助を飲み込んでしまい─
10ヶ月後。 国立天文台野辺山の施設研究員が何者かに襲われたという通報を受け、雪崩から奇跡的に生還した敢助と、上原由衣が現場へ駆けつけた。 事情聴取のさなか天文台の巨大パラボラアンテナが動き出すと、負傷し隻眼となった敢助の左眼がなぜか突如激しく疼きだす…
その夜、 毛利探偵事務所に、小五郎の警視庁時代に仲の良い同僚だった“ワニ”と呼ばれる刑事から電話が入った。未宝岳で敢助が巻き込まれた雪崩事故を調査しており、事件ファイルに小五郎の名前があったという。後日会う約束を交わした小五郎にコナンもついて行くが、待ち合わせ場所に向かっていた途中、突然響き渡った銃声─。
司法取引の是非テーマが扱われ、社会的な色が強い作品だと感じた。隠れ公安・内閣情報調査室所属のキャラが初登場するなど、近年のコナン映画の中では難しい、大人向け作品ではないだろうか。
また、毛利小五郎の元同僚・鮫谷浩二のニックネームが「ワニ」だったのは、「因幡の白兎」モチーフではないかと思った。鮫谷の地元が鳥取県であることからもほぼ確実ではないかと思うが、なぜ因幡の白兎を登場させたのかはよくわからなかった。
28.ALIEN STAGE / 総監督:VIVINOS
韓国のアニメーションチーム「TEAM Forma+9」が制作しているアニメーション。音楽やMVを通して、エイリアンのペットになった人間たちの意思、取り巻く環境、関係性を紐解いていくストーリーとなっている。
前回のシーズン、大盛況のうちに幕を下ろした新生オーディション番組『エイリアン・ステージ』が、新シーズンとして戻ってきた。『エイリアン・ステージ』は人間ペット同士を競わせるサバイバルオーディション番組で、優勝した人間ペットの飼い主はÂÇÑ ±â´ÉÀで悠々と暮らすことができる。
最初はありふれたバラエティー番組と思われていた『エイリアン・ステージ』は、シーズンを重ねるうちにだんだんと評判になっていった。それは音楽専門幼稚園である「アナクトガーデン」ができるほどであり、人間ペットたちの入園競争は日に日に厳しさを増していった。
個性の強い人間ペットたちのパフォーマンスと美しい鳴き声が合わさり、多くのセゲイン(エイリアン)を惹きつける『エイリアン・ステージ』。 果たしてどんな人間ペットが優勝するのか多くの外界人たちの注目を集めている。
VIVINOS氏のYouTubeチャンネルで全話観ることができる。ストーリーはMVで進み、音楽は既存のものではなく全て書き下ろし楽曲である。MVの他、作者がXに投稿する漫画がストーリーの理解を助けている。
メインで登場する人間ペットは女性3人男性3人で、女性同士のカップル、男性同士のカップル(?)、男女カップル(?)がそれぞれ過酷な環境でどのように他者を愛すかが一貫して描かれる作品である。
韓国のサバイバルオーディション番組文化が色濃く影響していると思われ、「他者をどう愛するか」というテーマのほか、手軽に出演者の人生を消費するオーディション番組文化へのアンチテーゼという側面も持つ作品ではないだろうか。
29. ボブという名の猫 幸せのハイタッチ/監督:ロジャー・スポティスウッド
ロンドンの路上で自作の歌を弾き語り、小銭を稼ぐ若者ジェームズは、ホームレスの麻薬常習者だった。立ち直りたい気持ちは強く、更生プログラムに熱心に通うが、つい麻薬の誘惑に負ける日々を繰り返すジェームズ。ソーシャルワーカーのヴァルは、今がジェームズにとって最後のチャンスだと感じ、彼に無償の住居をあてがった。
そんなある日、ジェームズの部屋に迷い込む茶トラの野良猫。隣人のベティが「ボブ」と名付けたその猫はジェームズに懐いてしまい、見捨てることもできないジェームズはあれこれ世話をする。
原作はイギリスでシリーズ合計1,000万部を超える大ヒットを記録したノンフィクション『ボブという名のストリート・キャット』で、ジェームズ本人、本猫も出演している。
猫のボブが生活に加わってから、ジェームズを気にかける人は大幅に増えた。猫を飼い始めたことで生活圏に変化が起こり、その結果関わる人間の数が増え、動物好きの人々の目にとまり金銭的に余裕ができたことが、彼が薬物依存から逃れることができたポイントだと感じた。ただ、猫がいなくとも薬物依存者が治療をできて周りが見守る環境が揃うことがベストではあると思うので、美談にしてはいけないとも思う。また、アニマルセラピーの効果は認められているのかもしれないが動物の住環境の整備も進められるべきと思った。ボブは禁断症状が出ているジェームズと数日間家にいるので環境としては良くないと思う。
30. 名探偵コナン 隻眼の残像 /監督:重原克也
長野県・八ヶ岳連峰未宝岳。長野県警の大和敢助が雪山で“ある男”を追っていた時、不意に何者かの影が敢助の視界に。気をとられた瞬間、“ある男”が放ったライフル弾が敢助の左眼をかすめ、大きな地響きとともに雪崩が発生。そのまま敢助を飲み込んでしまい─
10ヶ月後。 国立天文台野辺山の施設研究員が何者かに襲われたという通報を受け、雪崩から奇跡的に生還した敢助と、上原由衣が現場へ駆けつけた。 事情聴取のさなか天文台の巨大パラボラアンテナが動き出すと、負傷し隻眼となった敢助の左眼がなぜか突如激しく疼きだす…
その夜、 毛利探偵事務所に、小五郎の警視庁時代に仲の良い同僚だった“ワニ”と呼ばれる刑事から電話が入った。未宝岳で敢助が巻き込まれた雪崩事故を調査しており、事件ファイルに小五郎の名前があったという。後日会う約束を交わした小五郎にコナンもついて行くが、待ち合わせ場所に向かっていた途中、突然響き渡った銃声─。
司法取引の是非テーマが扱われ、社会的な色が強い作品だと感じた。隠れ公安・内閣情報調査室所属のキャラが初登場するなど、近年のコナン映画の中では難しい、大人向け作品ではないだろうか。
また、毛利小五郎の元同僚・鮫谷浩二のニックネームが「ワニ」だったのは、「因幡の白兎」モチーフではないかと思った。鮫谷の地元が鳥取県であることからもほぼ確実ではないかと思うが、なぜ因幡の白兎を登場させたのかはよくわからなかった。
春休み課題 青山凜香
RES
①壁井ユカコ『14f症候群』
・あらすじ
ミサキは気づくと「14f」という存在しない階にいた。そこは死者が一時的に集められる空間で、彼は自らの死を理解できないまま過ごす。他の入居者たちと交流し、次第に記憶を取り戻す中で、自身の死因や思い残したことに向き合っていく。やがてミサキは「自分がこの場所でどう生き直すか」という問いに辿り着く。
・考察
本作は死後の空間を通して、生きる意味や心の居場所を問いかける作品だ。14fという不在の階は、現代に生きる人の「居場所のなさ」を象徴しており、特に若者の孤独に鋭く迫っている。死を描きつつも重くなりすぎず、他者との出会いや対話を通して再生の物語となっており、読者に「今をどう生きるか」を考えさせる力をもっている。
⸻
②はやみねかおる『都会のトム&ソーヤ』
・あらすじ
中学生の内藤内人は、自由奔放な転校生・竜王創也と出会い、都市を舞台にした“冒険”の日々を送る。二人は秘密基地を作ったり事件に巻き込まれたりしながら、互いに刺激し合い、友情を深めていく。内人は創也と行動を共にする中で、自分の殻を破り、成長していく。
・考察
「冒険」は子どもの夢だが、この物語では都市という現代的な舞台で展開される点が新鮮だ。現実の制約の中で、想像力を武器に自由を手に入れようとする二人の姿は、読者にも「生き方を選ぶ自由」があることを伝えてくれる。創也の奔放さと内人の慎重さの対比も魅力で、異なる個性が支え合うことの価値を描いている。
____
③はやみねかおる『モナミは世界を終わらせる』
・あらすじ
普通の中学生・日比野蓮は、ある日「世界を終わらせる能力を持つ少女」モナミと出会う。彼女は人類の未来を握る存在であり、蓮は彼女を監視しながら行動を共にすることになる。モナミは一見普通の少女だが、彼女の存在には国家すら巻き込む秘密があり、二人の関係性も変化していく。物語は日常と非日常が交錯する中で進んでいく。
・考察
「世界を終わらせる」という極端な能力が、モナミという少女の存在を通じて「選択」と「責任」のメタファーとなっている。蓮の視点を通して描かれる彼女の姿は、恐怖ではなく人間らしさに溢れており、破壊の力よりも“守りたい”という気持ちに焦点が当たっている。国家規模のスリルを背景にしながらも、心の機微を丁寧に描く構成が光る作品。
⸻
④からて『マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話』
・あらすじ
不老不死となった少女・千年(ちとせ)は、マカロンを愛しながらも千年にわたって生き続けている。人が去り、時代が変わる中で、彼女は数々の別れや出会いを経験しつつ、マカロンという変わらぬ存在に心を寄せていく。物語は彼女の視点で千年の時間を巡り、やがて彼女がたどり着く結末へと向かう。
・考察
ポップなタイトルに反して、内容は切なくも深い人間存在への問いを内包している。不老不死は祝福ではなく、孤独と喪失の連続であることが描かれ、千年という時の重みが読者に静かにのしかかる。そんな中で彼女が大切にする“マカロン”は、変化の中にある小さな幸福の象徴であり、生きる意味のよりどころとなっている。
____
⑤鈴木大輔『文句の付けようがないラブコメ』
・あらすじ
成績優秀で真面目な男子高校生・阿良川は、完璧すぎる美少女・九条に突然告白される。しかもその告白は、実は「ラブコメ的展開を楽しむため」という彼女の思惑から始まったものだった。戸惑いつつも彼女に振り回される阿良川は、次第に彼女の本心に触れ、本当の恋愛感情と向き合うようになっていく。
・考察
ラブコメの“お約束”を逆手に取ったメタ的展開が特徴だが、笑いの裏にあるキャラクターたちの不安や孤独が丁寧に描かれている点が印象的だ。九条の完璧さは虚構的な「理想のヒロイン像」を象徴しており、現実とのギャップや本当の自己との乖離が見え隠れする。軽妙な語り口でありながら、心に残る人間描写が光る作品。
⸻
⑥江戸川乱歩『孤島の鬼』
・あらすじ
青年・蓑浦は、親友・諸戸に対して抱いていた秘めた感情と向き合う間もなく、彼の惨殺死体を目の当たりにする。事件の背後には奇怪な連続殺人と、謎の人物・大江春泥の存在があった。蓑浦は真相を追って孤島に渡り、やがて狂気と愛憎が渦巻く恐ろしい真実にたどり着く。
・考察
江戸川乱歩の中でも異色かつ異様な長編であり、同性愛、身体改造、孤独といった重たいテーマを耽美かつ倒錯的に描いている。蓑浦の語りは一見冷静だが、抑えた情念がにじみ出ており、人間の欲望と狂気の境界を描き出している。探偵小説の枠を超え、愛と死の境界に迫る、乱歩の文学性が際立つ名作。
___
⑦江戸川乱歩『白昼夢/押絵と旅する男』
・あらすじ
『白昼夢』では、主人公が列車の中で、殺人現場を目撃したかのような奇妙な記憶に悩まされる。幻か現実か曖昧な中で、読者もまた錯覚と真実の境界に引き込まれていく。『押絵と旅する男』は、押絵を抱えた奇妙な男と出会った主人公が、彼の語る恐るべき人形の愛憎劇を知るという幻想的な物語。
・考察
両作に共通するのは、「現実と虚構の曖昧さ」である。乱歩は人間の深層心理や無意識に潜む狂気を、視覚や記憶の曖昧さを通して描く。『白昼夢』の不可解な目撃談も、『押絵と旅する男』の人形と生身の混交も、読者を常に不安と魅惑の間に漂わせる。幻想文学としても優れており、乱歩の美意識が詰まった物語だと思う。
⸻
⑧江戸川乱歩『蜘蛛男』
・あらすじ
東京を騒がす連続殺人事件。その犯人は「蜘蛛男」と呼ばれる奇怪な存在だった。名探偵・明智小五郎が事件解決に乗り出す中、殺人現場には常に蜘蛛のシンボルが残されていた。やがて犯人の真の姿と目的が明かされ、恐怖と知略が交錯する頭脳戦が展開される。
・考察
『蜘蛛男』は乱歩の中でもエンタメ性が高く、怪奇性とスリルを前面に押し出した作品だ。蜘蛛という不気味な象徴を通じて、視覚的恐怖と猟奇性が効果的に演出されている。明智小五郎の推理力と、犯人の狂気がせめぎ合う構図は、探偵小説の王道を踏まえつつも乱歩らしい美学と異様さが際立つ。大衆向けながらも、彼の芸術的野心がにじむ作品。
___
⑨はやみねかおる『そして五人がいなくなる』
・あらすじ
中学校で始まった謎解きゲーム。その中で、選ばれた5人の生徒が次々に“いなくなって”いく事件が起こる。事件を調査するのは名探偵・夢水清志郎と子どもたち。残された暗号やトリックを手がかりに、彼らは「いなくなる」意味と、犯人の目的に迫っていく。
・考察
子ども向けミステリでありながら、物語の奥には「人との関係性」や「孤独への恐怖」といった繊細なテーマが流れている。失踪という事件を通じて、登場人物たちは自分自身の存在意義を問い直す。夢水探偵のユーモアと優しさが物語に温かみを加えつつ、読者にも考える楽しさと希望を与えてくれる作品。
⸻
⑩田森庸介『金の月のマヤ』
・あらすじ
人間の少年・カイは、狼の姿をした少女・マヤと出会い、彼女の秘密を知る。マヤは人間と狼の狭間で生きる存在であり、月にまつわる古い伝承に縛られていた。カイは彼女の運命を変えるために奔走し、やがて二人はそれぞれの「生きる意味」に向き合う。
・考察
異種交流を通じて描かれるのは、人間社会の偏見や孤立、そして他者理解の難しさである。マヤの存在は“異質なもの”へのまなざしを象徴し、カイの視点は読者に共感と希望を届ける。幻想的な世界観の中にリアルな感情が息づき、静かな余韻を残す優しい物語となっている。
⸻
⑪川口晴『犬と私の10の約束』
・あらすじ
少女・あかりは、母の遺した「犬との10の約束」を胸に、子犬のソックスと生活を始める。日々のふれあいの中で、あかりは成長し、やがて進学や恋、家庭の問題に直面する。ソックスはそんな彼女を見守り続け、あかりも少しずつ「命」と「約束」の大切さに気づいていく。
・考察
本作は犬との絆を通して「命の尊さ」「責任の重さ」「別れの意味」を丁寧に描いている。10の約束は単なるルールではなく、人としてどう生きるかの指針でもある。ソックスの無言の優しさが、あかりの心を育てていく過程には、普遍的な愛と成長の物語が込められている。涙なしには読めない一冊だ。
___
⑫住野よる『また、同じ夢を見ていた』
・あらすじ
ひとりぼっちの少女・奈ノ花は、「幸せとは何か」を考えながら日々を過ごしていた。ある日、不思議な3人の女性と出会い、それぞれの人生に触れる中で、奈ノ花は自分自身の未来と心に少しずつ変化を見つけていく。彼女はやがて「また、同じ夢を見ていた」意味を知ることになる。
・考察
少女の成長を軸に、「幸せとは何か」という抽象的な問いを物語の芯に据えた構成が秀逸。登場人物たちは奈ノ花の内面の投影でもあり、彼女が彼女自身を受け入れていく過程が静かに描かれる。夢と現実が交錯するような語りは、読者にも“自分にとっての幸せ”を問いかけてくる。
⸻
⑬大石真『チョコレート戦争』
・あらすじ
中学生の少年たちが起こした、ある「チョコレートに関するいたずら」が、大人を巻き込んだ大事件に発展する。正義とは何か、ルールとは何かに直面しながら、子どもたちは社会との関わり方を学び、成長していく。
・考察
子どもたちの無邪気ないたずらが、社会の理不尽さや大人の身勝手さを浮き彫りにしていく展開は、鋭い風刺となっている。シンプルな語り口ながら、正義と責任、表現の自由などの重いテーマに触れており、読む年代によって見方が変わる奥深さがある。
⸻
⑭L・M・モンゴメリ『赤毛のアン』
・あらすじ
孤児院からカスバート兄妹のもとにやってきた赤毛の少女・アン・シャーリー。空想好きで感情豊かなアンは、田舎町アヴォンリーでさまざまな失敗や出会いを経験しながら成長していく。家族や友情、学びを通して、彼女は次第に自立した少女へと変わっていく。
・考察
アンの姿は、想像力と自己表現の自由さを体現しており、「自分を受け入れること」の大切さを教えてくれる。田舎町の人々との交流や、日常の中の小さな発見は、人生の美しさや尊さを描き出している。世代や国を超えて愛され続ける理由は、その普遍的な希望の物語性にある。
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⑮タニヤ・シュテーブナー『動物と話せる少女リリアーネ』
・あらすじ
リリアーネは、動物と話せる特別な力を持った少女。ペットや野生動物たちと心を通わせ、さまざまな問題を解決していく。動物病院を営む家族と共に暮らしながら、リリアーネは動物たちの声に耳を傾け、人間と動物の絆を深めていく。
・考察
本作はファンタジーを通して、いのちの大切さや共感する心を育ててくれる。動物たちの声が聞こえるという設定は、弱い存在に寄り添う力を象徴しており、リリアーネの優しさや勇気が読む人の心を温める。動物との対話を通じた成長物語として、児童文学の中でも豊かなメッセージを持つ作品。
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⑯香月日輪『妖怪アパートの幽雅な日常』
・あらすじ
両親を亡くした高校生・稲葉夕士は、ひょんなことから妖怪や幽霊と人間が共に暮らす「妖怪アパート」に住むことになる。奇妙な住人たちに囲まれながら、彼は学校や人生に悩みながらも、心の成長を遂げていく。
・考察
超自然的な存在との共同生活が、社会の縮図として機能している点が面白い。価値観の違いや孤独、人との繋がりをテーマに、夕士の視点で柔らかく描かれる成長物語は、読む人に生き方のヒントを与える。ファンタジーでありながら、現実を見据えた温かな人間ドラマとなっている。
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⑰綿矢りさ『生のみ生のままで(上)』
・あらすじ
25歳の逢衣は、恋人との旅行中に出会った女性・彩夏に強く惹かれる。互いに恋人がいながらも、心と身体が求め合う関係が始まり、逢衣は彩夏と暮らし始める。新しい生活に戸惑いながらも、逢衣は自分の本心や「愛することとは何か」と向き合い始める。
・考察
女性同士の恋愛を題材にしながらも、描かれているのは「性別を超えた心の結びつき」だ。逢衣の視点から綴られる感情の揺らぎや戸惑いには、瑞々しくも繊細なリアリティがある。綿矢りさらしい軽やかな文体とユーモアが、重くなりがちなテーマに光を差し込んでいる。
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⑱綿矢りさ『生のみ生のままで(下)』
・あらすじ
逢衣と彩夏の関係は深まりながらも、周囲や社会とのズレ、そして互いのすれ違いが少しずつ現れていく。ある事件をきっかけに、二人はこの愛をどう続けていくのか、切実な選択を迫られる。逢衣は、自分の「生」をどう肯定するかを見つめ直すことになる。
・考察
“生のままの自分を受け入れる”ことの難しさと尊さを、逢衣の迷いと決断を通して描き出している。同性愛という枠組みに収まらない、人と人の「愛」の普遍性が胸に迫る。大胆な性愛描写とともに、静かで確かな情愛がにじむ、綿矢りさらしい成熟した恋愛小説。
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⑲綿矢りさ『勝手にふるえてろ』
・あらすじ
24歳のOL・江藤良香(よしか)は、中学時代から10年間片思いしている“イチ”を理想化し、脳内で愛を育んでいる。一方で、職場の同僚“ニ”から告白され、現実との向き合いを迫られる。イチ=妄想と、ニ=現実の間で揺れる良香は、自分の気持ちとどう向き合うのか葛藤していく。
・考察
良香の内面を通して、現代の“恋愛できない若者”のリアルな心理が浮き彫りになる。理想に逃げながらも、現実を拒絶することに苦しむ姿は、誰しもが持つ「自分の世界に閉じこもりたい衝動」と「それでも人と繋がりたい欲求」のせめぎ合いを象徴している。ユーモラスな語りと痛々しさの同居が、綿矢りさらしい魅力となっている。
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⑳千早茜『しろがねの葉』
・あらすじ
戦国末期、石見銀山で天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀鉱の知識を学び、坑道で働き始める。月経により女として制約されながらも、自立しようと奮闘。銀山の繁栄とともに彼女は大切な人々を失い、その度に生と死、欲望と喪失を体感していく。徳川による支配が強まり、銀山も衰退へ。ウメは自身の力で生き抜く術を見出し、その運命と対峙する。
・考察
これは、女性として、そして人間として「強く生きる覚悟」が描かれた大河的群像劇だ。ウメの成長は、家族の喪失や権力の転換といった時代の嵐の中で成し遂げられ、銀山という舞台が命の儚さと重層的な感情を象徴している。銀掘りの厳しさや、女性ならではの制約をもがきながら、自分の場所を掴んでいく姿に、読後は力強い希望が残る。
・あらすじ
ミサキは気づくと「14f」という存在しない階にいた。そこは死者が一時的に集められる空間で、彼は自らの死を理解できないまま過ごす。他の入居者たちと交流し、次第に記憶を取り戻す中で、自身の死因や思い残したことに向き合っていく。やがてミサキは「自分がこの場所でどう生き直すか」という問いに辿り着く。
・考察
本作は死後の空間を通して、生きる意味や心の居場所を問いかける作品だ。14fという不在の階は、現代に生きる人の「居場所のなさ」を象徴しており、特に若者の孤独に鋭く迫っている。死を描きつつも重くなりすぎず、他者との出会いや対話を通して再生の物語となっており、読者に「今をどう生きるか」を考えさせる力をもっている。
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②はやみねかおる『都会のトム&ソーヤ』
・あらすじ
中学生の内藤内人は、自由奔放な転校生・竜王創也と出会い、都市を舞台にした“冒険”の日々を送る。二人は秘密基地を作ったり事件に巻き込まれたりしながら、互いに刺激し合い、友情を深めていく。内人は創也と行動を共にする中で、自分の殻を破り、成長していく。
・考察
「冒険」は子どもの夢だが、この物語では都市という現代的な舞台で展開される点が新鮮だ。現実の制約の中で、想像力を武器に自由を手に入れようとする二人の姿は、読者にも「生き方を選ぶ自由」があることを伝えてくれる。創也の奔放さと内人の慎重さの対比も魅力で、異なる個性が支え合うことの価値を描いている。
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③はやみねかおる『モナミは世界を終わらせる』
・あらすじ
普通の中学生・日比野蓮は、ある日「世界を終わらせる能力を持つ少女」モナミと出会う。彼女は人類の未来を握る存在であり、蓮は彼女を監視しながら行動を共にすることになる。モナミは一見普通の少女だが、彼女の存在には国家すら巻き込む秘密があり、二人の関係性も変化していく。物語は日常と非日常が交錯する中で進んでいく。
・考察
「世界を終わらせる」という極端な能力が、モナミという少女の存在を通じて「選択」と「責任」のメタファーとなっている。蓮の視点を通して描かれる彼女の姿は、恐怖ではなく人間らしさに溢れており、破壊の力よりも“守りたい”という気持ちに焦点が当たっている。国家規模のスリルを背景にしながらも、心の機微を丁寧に描く構成が光る作品。
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④からて『マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話』
・あらすじ
不老不死となった少女・千年(ちとせ)は、マカロンを愛しながらも千年にわたって生き続けている。人が去り、時代が変わる中で、彼女は数々の別れや出会いを経験しつつ、マカロンという変わらぬ存在に心を寄せていく。物語は彼女の視点で千年の時間を巡り、やがて彼女がたどり着く結末へと向かう。
・考察
ポップなタイトルに反して、内容は切なくも深い人間存在への問いを内包している。不老不死は祝福ではなく、孤独と喪失の連続であることが描かれ、千年という時の重みが読者に静かにのしかかる。そんな中で彼女が大切にする“マカロン”は、変化の中にある小さな幸福の象徴であり、生きる意味のよりどころとなっている。
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⑤鈴木大輔『文句の付けようがないラブコメ』
・あらすじ
成績優秀で真面目な男子高校生・阿良川は、完璧すぎる美少女・九条に突然告白される。しかもその告白は、実は「ラブコメ的展開を楽しむため」という彼女の思惑から始まったものだった。戸惑いつつも彼女に振り回される阿良川は、次第に彼女の本心に触れ、本当の恋愛感情と向き合うようになっていく。
・考察
ラブコメの“お約束”を逆手に取ったメタ的展開が特徴だが、笑いの裏にあるキャラクターたちの不安や孤独が丁寧に描かれている点が印象的だ。九条の完璧さは虚構的な「理想のヒロイン像」を象徴しており、現実とのギャップや本当の自己との乖離が見え隠れする。軽妙な語り口でありながら、心に残る人間描写が光る作品。
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⑥江戸川乱歩『孤島の鬼』
・あらすじ
青年・蓑浦は、親友・諸戸に対して抱いていた秘めた感情と向き合う間もなく、彼の惨殺死体を目の当たりにする。事件の背後には奇怪な連続殺人と、謎の人物・大江春泥の存在があった。蓑浦は真相を追って孤島に渡り、やがて狂気と愛憎が渦巻く恐ろしい真実にたどり着く。
・考察
江戸川乱歩の中でも異色かつ異様な長編であり、同性愛、身体改造、孤独といった重たいテーマを耽美かつ倒錯的に描いている。蓑浦の語りは一見冷静だが、抑えた情念がにじみ出ており、人間の欲望と狂気の境界を描き出している。探偵小説の枠を超え、愛と死の境界に迫る、乱歩の文学性が際立つ名作。
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⑦江戸川乱歩『白昼夢/押絵と旅する男』
・あらすじ
『白昼夢』では、主人公が列車の中で、殺人現場を目撃したかのような奇妙な記憶に悩まされる。幻か現実か曖昧な中で、読者もまた錯覚と真実の境界に引き込まれていく。『押絵と旅する男』は、押絵を抱えた奇妙な男と出会った主人公が、彼の語る恐るべき人形の愛憎劇を知るという幻想的な物語。
・考察
両作に共通するのは、「現実と虚構の曖昧さ」である。乱歩は人間の深層心理や無意識に潜む狂気を、視覚や記憶の曖昧さを通して描く。『白昼夢』の不可解な目撃談も、『押絵と旅する男』の人形と生身の混交も、読者を常に不安と魅惑の間に漂わせる。幻想文学としても優れており、乱歩の美意識が詰まった物語だと思う。
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⑧江戸川乱歩『蜘蛛男』
・あらすじ
東京を騒がす連続殺人事件。その犯人は「蜘蛛男」と呼ばれる奇怪な存在だった。名探偵・明智小五郎が事件解決に乗り出す中、殺人現場には常に蜘蛛のシンボルが残されていた。やがて犯人の真の姿と目的が明かされ、恐怖と知略が交錯する頭脳戦が展開される。
・考察
『蜘蛛男』は乱歩の中でもエンタメ性が高く、怪奇性とスリルを前面に押し出した作品だ。蜘蛛という不気味な象徴を通じて、視覚的恐怖と猟奇性が効果的に演出されている。明智小五郎の推理力と、犯人の狂気がせめぎ合う構図は、探偵小説の王道を踏まえつつも乱歩らしい美学と異様さが際立つ。大衆向けながらも、彼の芸術的野心がにじむ作品。
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⑨はやみねかおる『そして五人がいなくなる』
・あらすじ
中学校で始まった謎解きゲーム。その中で、選ばれた5人の生徒が次々に“いなくなって”いく事件が起こる。事件を調査するのは名探偵・夢水清志郎と子どもたち。残された暗号やトリックを手がかりに、彼らは「いなくなる」意味と、犯人の目的に迫っていく。
・考察
子ども向けミステリでありながら、物語の奥には「人との関係性」や「孤独への恐怖」といった繊細なテーマが流れている。失踪という事件を通じて、登場人物たちは自分自身の存在意義を問い直す。夢水探偵のユーモアと優しさが物語に温かみを加えつつ、読者にも考える楽しさと希望を与えてくれる作品。
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⑩田森庸介『金の月のマヤ』
・あらすじ
人間の少年・カイは、狼の姿をした少女・マヤと出会い、彼女の秘密を知る。マヤは人間と狼の狭間で生きる存在であり、月にまつわる古い伝承に縛られていた。カイは彼女の運命を変えるために奔走し、やがて二人はそれぞれの「生きる意味」に向き合う。
・考察
異種交流を通じて描かれるのは、人間社会の偏見や孤立、そして他者理解の難しさである。マヤの存在は“異質なもの”へのまなざしを象徴し、カイの視点は読者に共感と希望を届ける。幻想的な世界観の中にリアルな感情が息づき、静かな余韻を残す優しい物語となっている。
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⑪川口晴『犬と私の10の約束』
・あらすじ
少女・あかりは、母の遺した「犬との10の約束」を胸に、子犬のソックスと生活を始める。日々のふれあいの中で、あかりは成長し、やがて進学や恋、家庭の問題に直面する。ソックスはそんな彼女を見守り続け、あかりも少しずつ「命」と「約束」の大切さに気づいていく。
・考察
本作は犬との絆を通して「命の尊さ」「責任の重さ」「別れの意味」を丁寧に描いている。10の約束は単なるルールではなく、人としてどう生きるかの指針でもある。ソックスの無言の優しさが、あかりの心を育てていく過程には、普遍的な愛と成長の物語が込められている。涙なしには読めない一冊だ。
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⑫住野よる『また、同じ夢を見ていた』
・あらすじ
ひとりぼっちの少女・奈ノ花は、「幸せとは何か」を考えながら日々を過ごしていた。ある日、不思議な3人の女性と出会い、それぞれの人生に触れる中で、奈ノ花は自分自身の未来と心に少しずつ変化を見つけていく。彼女はやがて「また、同じ夢を見ていた」意味を知ることになる。
・考察
少女の成長を軸に、「幸せとは何か」という抽象的な問いを物語の芯に据えた構成が秀逸。登場人物たちは奈ノ花の内面の投影でもあり、彼女が彼女自身を受け入れていく過程が静かに描かれる。夢と現実が交錯するような語りは、読者にも“自分にとっての幸せ”を問いかけてくる。
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⑬大石真『チョコレート戦争』
・あらすじ
中学生の少年たちが起こした、ある「チョコレートに関するいたずら」が、大人を巻き込んだ大事件に発展する。正義とは何か、ルールとは何かに直面しながら、子どもたちは社会との関わり方を学び、成長していく。
・考察
子どもたちの無邪気ないたずらが、社会の理不尽さや大人の身勝手さを浮き彫りにしていく展開は、鋭い風刺となっている。シンプルな語り口ながら、正義と責任、表現の自由などの重いテーマに触れており、読む年代によって見方が変わる奥深さがある。
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⑭L・M・モンゴメリ『赤毛のアン』
・あらすじ
孤児院からカスバート兄妹のもとにやってきた赤毛の少女・アン・シャーリー。空想好きで感情豊かなアンは、田舎町アヴォンリーでさまざまな失敗や出会いを経験しながら成長していく。家族や友情、学びを通して、彼女は次第に自立した少女へと変わっていく。
・考察
アンの姿は、想像力と自己表現の自由さを体現しており、「自分を受け入れること」の大切さを教えてくれる。田舎町の人々との交流や、日常の中の小さな発見は、人生の美しさや尊さを描き出している。世代や国を超えて愛され続ける理由は、その普遍的な希望の物語性にある。
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⑮タニヤ・シュテーブナー『動物と話せる少女リリアーネ』
・あらすじ
リリアーネは、動物と話せる特別な力を持った少女。ペットや野生動物たちと心を通わせ、さまざまな問題を解決していく。動物病院を営む家族と共に暮らしながら、リリアーネは動物たちの声に耳を傾け、人間と動物の絆を深めていく。
・考察
本作はファンタジーを通して、いのちの大切さや共感する心を育ててくれる。動物たちの声が聞こえるという設定は、弱い存在に寄り添う力を象徴しており、リリアーネの優しさや勇気が読む人の心を温める。動物との対話を通じた成長物語として、児童文学の中でも豊かなメッセージを持つ作品。
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⑯香月日輪『妖怪アパートの幽雅な日常』
・あらすじ
両親を亡くした高校生・稲葉夕士は、ひょんなことから妖怪や幽霊と人間が共に暮らす「妖怪アパート」に住むことになる。奇妙な住人たちに囲まれながら、彼は学校や人生に悩みながらも、心の成長を遂げていく。
・考察
超自然的な存在との共同生活が、社会の縮図として機能している点が面白い。価値観の違いや孤独、人との繋がりをテーマに、夕士の視点で柔らかく描かれる成長物語は、読む人に生き方のヒントを与える。ファンタジーでありながら、現実を見据えた温かな人間ドラマとなっている。
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⑰綿矢りさ『生のみ生のままで(上)』
・あらすじ
25歳の逢衣は、恋人との旅行中に出会った女性・彩夏に強く惹かれる。互いに恋人がいながらも、心と身体が求め合う関係が始まり、逢衣は彩夏と暮らし始める。新しい生活に戸惑いながらも、逢衣は自分の本心や「愛することとは何か」と向き合い始める。
・考察
女性同士の恋愛を題材にしながらも、描かれているのは「性別を超えた心の結びつき」だ。逢衣の視点から綴られる感情の揺らぎや戸惑いには、瑞々しくも繊細なリアリティがある。綿矢りさらしい軽やかな文体とユーモアが、重くなりがちなテーマに光を差し込んでいる。
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⑱綿矢りさ『生のみ生のままで(下)』
・あらすじ
逢衣と彩夏の関係は深まりながらも、周囲や社会とのズレ、そして互いのすれ違いが少しずつ現れていく。ある事件をきっかけに、二人はこの愛をどう続けていくのか、切実な選択を迫られる。逢衣は、自分の「生」をどう肯定するかを見つめ直すことになる。
・考察
“生のままの自分を受け入れる”ことの難しさと尊さを、逢衣の迷いと決断を通して描き出している。同性愛という枠組みに収まらない、人と人の「愛」の普遍性が胸に迫る。大胆な性愛描写とともに、静かで確かな情愛がにじむ、綿矢りさらしい成熟した恋愛小説。
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⑲綿矢りさ『勝手にふるえてろ』
・あらすじ
24歳のOL・江藤良香(よしか)は、中学時代から10年間片思いしている“イチ”を理想化し、脳内で愛を育んでいる。一方で、職場の同僚“ニ”から告白され、現実との向き合いを迫られる。イチ=妄想と、ニ=現実の間で揺れる良香は、自分の気持ちとどう向き合うのか葛藤していく。
・考察
良香の内面を通して、現代の“恋愛できない若者”のリアルな心理が浮き彫りになる。理想に逃げながらも、現実を拒絶することに苦しむ姿は、誰しもが持つ「自分の世界に閉じこもりたい衝動」と「それでも人と繋がりたい欲求」のせめぎ合いを象徴している。ユーモラスな語りと痛々しさの同居が、綿矢りさらしい魅力となっている。
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⑳千早茜『しろがねの葉』
・あらすじ
戦国末期、石見銀山で天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀鉱の知識を学び、坑道で働き始める。月経により女として制約されながらも、自立しようと奮闘。銀山の繁栄とともに彼女は大切な人々を失い、その度に生と死、欲望と喪失を体感していく。徳川による支配が強まり、銀山も衰退へ。ウメは自身の力で生き抜く術を見出し、その運命と対峙する。
・考察
これは、女性として、そして人間として「強く生きる覚悟」が描かれた大河的群像劇だ。ウメの成長は、家族の喪失や権力の転換といった時代の嵐の中で成し遂げられ、銀山という舞台が命の儚さと重層的な感情を象徴している。銀掘りの厳しさや、女性ならではの制約をもがきながら、自分の場所を掴んでいく姿に、読後は力強い希望が残る。
3年 高垣かりん 春休み課題1-20
RES
1 『DUNE/砂の惑星 Part1』監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ
人類が地球以外の惑星に移住し、宇宙帝国を築いていた。一つの惑星を治めていたアトレイデス家は、高値で取引される貴重なスパイスが取れる砂漠の惑星アラキス〈通称:デューン〉を治めることになるが、それは罠だった。やがて、侯爵は殺され、妻のジェシカと息子のポールも命を狙われることに。
2022年のアカデミー賞で10部門ノミネート、6部門受賞した名作で、映像の迫力と世界観の作りこみが細かかった。主人公のポールが何らかの能力を持っており、この一作目ではまだ開花前のような描写が続いていた。また、夢に出でてくる少女が何者なのか、なぜ夢に出てくるのかという疑問を残したまま終わった。この作品は、今後続くデューンシリーズの世界観構築と伏線を敷く序章の役割が強く、単体作品としてはすこし単調にも感じた。
2 小説『幸せな家族 そしてその頃はやった唄』作/鈴木悦夫
「幸せな家族」という保険のCMモデルに選ばれた家族は、密着中に次々と謎の死を遂げていく。それは「その頃はやった唄」という歌の歌詞に沿っていた。犯人はいったい誰なのか。
この小説は子供向けの児童書ながらホラーミステリとなっており、恐ろしい結末を迎える。語りは末の弟で、彼の語りはずっと家族から一歩引いた他人事のような口調となっており、違和感と不気味さが終始付きまとう構造となっていた。
殺しは「その頃はやった唄」というオリジナルの唄に沿って起きるのだが、末の弟が感じていた退屈、それから脱却するための手段として間接的な家族殺しをするという考えが生まれる異常さが、弟の持つ独自性ではなく家庭の異様な環境によって生まれたものである点が皮肉的であった。
3『毒 poison』監督/ウェス・アンダーソン
自分の寝ているベッドに毒蛇を発見した男の話。ネットフリックス限定の短編映画
物語自体は男がベッドの上で身動き1つ取れないところに助けを呼ぶというコメディ。登場人物が怒涛のセリフ量で物語を語っていく。その際はカメラ目線で観客に語り掛ける。監督の演出の特徴で、アカデミー賞を受賞した同監督の『奇才ヘンリー・シュガーの物語』にも同様の演出がみられる。その作家性はセットにも表れており、舞台のように周りが動き、演劇的な構成と重なり映像的な美しさが際立つ。
4『桐島、部活やめるってよ』監督/吉田大八
学校の人気者、桐島をめぐる周囲の高校生たちの群像劇。
人気者の桐島が学校に来なくなり、部活を辞める日までの数日間を描いているが、桐島の姿や声は一切描かれない・映らないところが特徴的だった。桐島の造形が視聴者にわからない状態で話が進んでいくことで、学校の中心ではない人物の視点が鮮明に描かれ、思春期の高校生たちの人間関係やその中での悩みやすれ違いが目立っていた。最後の対話の場面では、スクールカーストの垣根を超え、一個人の気持ちが表れていたと思う。
5 『カラーパープル』(2024) 監督/プリッツ・バザウレ
優しい母を亡くし横暴な父の言いなりとなったセリーは、父の決めた相手と結婚し、自由のない生活を送っていた。さらに、唯一の心の支えだった最愛の妹ネティとも生き別れてしまう。そんな中、セリーは自立した強い女性ソフィアと、歌手になる夢を叶えたシュグと出会う。彼女たちの生き方に心を動かされたセリーは、少しずつ自分を愛し未来を変えていこうとする。そして遂に、セリーは家を出る決意をする。
黒人差別、性差別、家庭内暴力など、当時のアメリカ国内の黒人コミュニティにおける問題を取り上げた本作は、ミュージカルではあるが内容はほとんどが暗く重いものとなっていた。時代設定は昔のものであるが、現在の社会にも通ずる女性のエンパワーメントにフォーカスが当てられ、セリーが独り立ちし、自身の洋服屋で女性用のズボンを販売するところは、型にはめられない女性像と社会進出を象徴していると思う。
6 『カラオケ行こ!』 監督/山下敦弘
合唱部部長の岡聡実はヤクザの成田狂児に突然カラオケに誘われ、歌のレッスンを頼まれる。組のカラオケ大会で最下位になった者に待ち受ける“恐怖”を回避するため、何が何でも上達しなければならないというのだ。狂児の勝負曲は X JAPAN の「紅」。聡実は、狂児に嫌々ながらも歌唱指導を行うのだが、いつしかふたりの関係には変化が起きる。
中学生が絶対にかかわるはずのないヤクザという存在と触れ合うことで、ファンタジーチックな空間が出来上がっていた。その空間が子供と大人が交わるものとなっていることで、日常で聡実の体に起きる大人への変化(声変わりなど)と対比され、思春期特有の子供の二面性を表現していると思った。
7 『俺物語!!』 監督/河合勇人
高校生に見えない顔と巨体の剛田猛男は、ある朝町で困っていた女子高生・大和凛子を助けて一目惚れしてしまう。しかし、凛子が猛男の親友のイケメン・砂川誠のことが好きだということに気づいてしまう。猛男の恋の行方はどうなるのか。
見た目で判断されがちだった猛男、心優しい部分を親友以外に見てもらうきっかけとなった出来事が、以前女性を助けたときと同じシチュエーションであったことで、猛男の本質を見てもらえたということがよくわかった。
8 『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(ドラマ)
アベンジャーズ/エンドゲーム』後、新たな“キャプテン・アメリカ“誕生を描くマーベル・スタジオのドラマシリーズ。伝説的なヒーローを失い混沌とした世界で、ファルコンとウィンター・ソルジャーはヒーローを殲滅させる巨大な陰謀に立ち向かう。
人種、血清、特殊能力など、今までのキャプテン・アメリカでトピックにならなかったワードが多く出てきた。とくに、ベトナム戦争で暗躍した黒人の超人兵士の話が出てきたことで、話の中で透明化された存在が浮かび上がってきた。スティーブ・ロジャースは、純粋に個人として評価したサム・ウィルソンという人物が「アメリカ」という国を社会的に背負うことができるのかという視点が抜けていたことがわかった。
9 『キャプテン・アメリカ/ブレイブ・ニュー・ワールド』 監督/ジュリアス・オナー
“正義の象徴”を受け継いだ〈新たなキャプテン・アメリカ〉アメリカ大統領ロスが開く国際会議でテロ事件が発生。それをきっかけに生まれた各国の対立が、世界大戦の危機にまで発展してしまう。
サム・ウィルソンがキャプテン・アメリカとなったあとの話で、サムの本質がよく表れた話だった。サムは超人ではないが、努力と対話で信頼される人物としてキャプテンを務めていた。
この作品単作では理解できないほど昔の別作品の内容や登場人物が深く関わっていたことで、マーベル作品の情報量の多さからくる難解さが残っていると感じた。また、この中に出てくる日本がアメリカに対して優位に強く出る外交をしておりとても現実的ではなく、よく見られるオリエンタリズム的な描写でもないことがとても興味深かった。
10 『近畿地方のある場所について』(小説) 作/背筋
著者の友人で、ある場所にまつわることを調査し行方不明になった小沢さんを探しているという前書きから始まるモキュメンタリーホラー小説。
カクヨムというウェブ小説サイトで昨年話題になったモキュメンタリーホラーで、小説のモキュメンタリーという形式が斬新で面白かった。
はじめは「小沢さん」を探しているという情報、その小沢さんと著者が関わっていた「近畿地方のとある場所」にまつわる記事やインタビューが載っていた。その時点では単なるオカルト集のような印象を受けるが、ある時点で著者が意図的に何かの情報を隠していることがわかり、読者はそれが何なのかを知るために読み進めることになる。
最近、ネットフリックスの『呪詛』という映画で話題になった、主人公が視聴者に呪いをかけていたというものに通ずる結末で、ホラー系では読者・視聴者の日常を侵すような恐怖を与えるようなものが話題になるのだと思った。
11 『ルックバック』 監督/押山清高
学生新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野。クラスメートからは絶賛を受けていたが、ある日、不登校の同級生・京本の4コマを載せたいと先生から告げられる。
『チェンソーマン』の藤本タツキ原作で、作画はマンガ版によく寄せられていた。内容は明らかに京都アニメーション放火殺人事件から影響を受けている。夢を追いかけ絵を描く少女たちの青春と挫折、絶望、希望を約60分に詰め込んだ作品だと感じた。タイトルの「ルックバック」が作中に効いていて、藤野の背中を追う京本の一人称視点が何度か登場すること、京本の背中に描いた藤野のサイン、過去を振り返るラストの流れ、作中の印象的で重要な要素は「ルックバック」を基本とされていた。
12 『幽霊の日記』 監督/針山大吾、小林洋介
茨城県稲敷郡。日本最大の異次元構造物のすぐ近くに、そのレストランはある。 そこでは十数年間、心霊現象が起こり続けていた。
YouTubeで期間限定公開された28分のショートフィルム。2021年リモートフィルムコンテストグランプリ作品『viewers:1』の続編。
『幽霊の日記』というタイトルから想像するとホラー作品かと思っていた。しかし、心霊現象と思っていた現象は、実は異次元構造物に影響され違う次元にいった未来の自分の影響で起きていたということがわかる。レストランの主人をしている主人公には未来の自分が見えておらず、違う次元の主人公からは見えている。ちがう次元の主人公は、その次元では独りぼっちだが、一瞬だけもとの世界線と繋がれる瞬間があり、人とのつながりを求めていく。コロナ禍に作られた作品の続編ということもあり、実際には会えない人とのつながりやそれを求めることへの前向きなメッセージが込められていると思った。
13 『私の夫と結婚して』(ドラマ)
夫パク・ミンファンと親友チョン・スミンの不倫現場を目撃した末期がんを患うカン・ジウォン。2人に殺されたジウォンは、突然10年前の過去に戻ってしまう。会社の上司ユ・ジヒョクに助けられながら、人生の“ゴミ”を処分し、運命を変えようと奮闘する。
タイムリープして自分の人生をやり直すという物語はよくあるが、このドラマはタイムリープしたのが主人公ともう一人、上司がいて、二人が協力関係を結ぶという少し変わった設定があった。また、タイムリープして運命を変えることで、他の人にその運命が移ってしまうというデメリットもあり、本筋の復讐が終わった後もその問題が出てくるなど、細かい設定がされていた。
14 『マッドマックス:フュリオサ』 監督/ジョージ・ミラー
世界崩壊から45年。バイカー軍団に連れ去られ、すべてを奪われた若きフュリオサは故郷への帰還を誓い、MADな世界(マッドワールド)に対峙する——巨大なバイカー軍団、その頂点ディメンタス将軍は可愛い熊の人形を持ち改造バイクで絶叫し、さらには、白塗りの兵隊ウォーボーイズたちが神と崇めるイモータン・ジョーは鉄壁の要塞を牛耳り、互いが覇権を争っていた。
前作同様、ディストピアの世界観の作り込みが壮大だった。物語自体は、フュリオサが前作に至るまでどのような生涯を送っていたかという前日譚で、男社会の中でフュリオサがどのように地位を築き上げたのかがわかるものだった。しかし、フュリオサが女性として力を持っていくというより、男性に紛れ込み男性としてだんだん成り上がっていた。この作品ではフュリオサが女性としての権利や暴力支配を変えることができないが、このつらい経験から前作のように支配された女性を解放しようとする意志が生まれたのだと思うととても納得した。
15『インターステラー』 監督/クリストファー・ノーラン
舞台は、寿命が尽きかけた地球。居住可能な新たな惑星を探すという人類の限界を超えたミッションに選ばれたのは、まだ幼い子供を持つ元エンジニアの男。彼を待っていたのは、未だかつて誰も見たことがない、衝撃の宇宙。はたして彼は人類の存続をかけたミッションを成し遂げることが出来るのか。
ノーラン監督の特徴でもある、時間の流れが混ぜこぜになるような映画の作りは難解だった。重力と時間の流れの関係性を解き明かした流れは、SF作品のなかでも異彩を放っていた。父親が地球を救うキーパーソンとなったのに、それが世間には知られず時の流れにも置いて行かれ、唯一真相を知る娘はおばあさんになっているという落ちは本当のハッピーエンドとはいえるのだろうか。
16 『ピンクの豹』(1964) 監督/ブレイク・エドワーズ
ヨーロッパの美しいプリンセスが持つ「ピンクの豹」と呼ばれるダイヤモンド。その宝石を盗むため、怪盗ファントムが動き出す。ファントムの逮捕を命じられたクルーゾー警部は追跡を開始するも、ドジばかりで行く先々で騒ぎを起こしてしまう。
有名な「ピンクパンサー」シリーズの第一作。
怪盗が宝石を盗むために念入りな作戦を立てるが予想外のことが起き続けるシチュエーションコメディで、それぞれの立場が入り乱れる展開が面白さを引き立てていた。
17 漫画『童夢』 作/大友克洋
不審死が多発する郊外のマンモス団地。捜査をする警察は、何人もの怪しい人物を目撃する。また一人、捜査員が不審死を遂げたのち、団地に引っ越してきた少女・悦子は超自然的な力を秘めていた。
『AKIRA』の作者として有名な大友克洋の歴史的傑作として名高い『童夢』だが、その評価に引けを取らない物語と漫画表現だった。躍動感のある漫画は多いが、この作品は静の描写が秀でていて、マンガの登場人物が感じているであろう異質感や恐怖を動きではなく止めの画で表現していた。また、映画的な表現も多く、スタンリー・キューブリックに影響されたであろう画角や、音(効果音)の有無、カットの選択など、今までの漫画表現ではないようなものが多数見られたと思う。
18 『パーフェクトブルー』 監督/今敏
2年続けたアイドルグループを卒業し女優への転身を図った霧越未麻。しかし、アイドルの皮を破るための過激グラビアやドラマの過激シーンなどの仕事が舞い込んでくる。急激な変化に戸惑う人々、さらに仕事関係者が犠牲となる事件が多発する。追い詰められた未麻は、もう一人の未麻を目撃するようになる。次第に現実と虚構の区別がつかなくなっていく。
現実と虚構が入り交ざり、区別がつかなくなるような描き方は、のちの『パプリカ』などにも引き継がれる今敏の作家性だと思う。
この『パーフェクトブルー』では、主人公の精神状態から時系列や記憶が錯乱しているというミスリードがうまく効いて、最後のもう一人の未麻の正体を衝撃的なものとしていた。
19 『羊たちの沈黙』 監督/ジョナサン・デミ
FBIの訓練生・クラリスは、女性を誘拐して皮を剥ぐ連続殺人鬼の捜査に加わることに。彼女の任務は獄中の天才精神科医・レクター博士の協力を得ることだった。クラリスは自分の過去を語ることと引き換えに、レクターから事件の手掛かりを聞き出すことになる。
この作品で人々の印象に残るのは、やはりレクター博士だと思う。しかし、レクターの登場時間は少なくセンセーショナルな事件を起こしても、その様子は描かれない。このような条件の中で人々の印象に残るのは、彼の映し方に理由があると考えた。意図的に全身が写されたり、極端に顔のアップが映ったり、彼がどこかちぐはぐで危険な見え方をする撮り方がされていた。
20 『国宝』 監督/李相日
任侠の家に生まれた喜久雄は、その美貌と才能を見初められ、上方歌舞伎の一門へ足を踏み入れる。やがてその才能と血をめぐる苦悩にさらされる。
まず、この映画は映像が美しかった。歌舞伎の舞台はもちろん、重要なシーンの背景やその取り方は、邦画というよりも洋画を彷彿とさせた。特に、あまり引きの画を撮らずに、人物をクローズアップして撮る場面が多く、ここぞというときに引き画がとられるため、その背景の美しさが引き立っていたと思う。
物語に関しては、ゲーテの悲劇『ファウスト』をベースにしていると考えた。「悪魔と取引した」という印象的な言葉の通り、その取引により得たものと失ったものを中心にめぐる物語はほとんど同様の流れを汲んでいた。喜久雄と俊ぼんは二人でファウストの役割を担い、喜久雄は悪魔と取引し、家族や信頼、俊ぼんの両足を無くす。両足=ファウストの失った両目であり、『国宝』はやはり悲劇として描かれていると考えた。
人類が地球以外の惑星に移住し、宇宙帝国を築いていた。一つの惑星を治めていたアトレイデス家は、高値で取引される貴重なスパイスが取れる砂漠の惑星アラキス〈通称:デューン〉を治めることになるが、それは罠だった。やがて、侯爵は殺され、妻のジェシカと息子のポールも命を狙われることに。
2022年のアカデミー賞で10部門ノミネート、6部門受賞した名作で、映像の迫力と世界観の作りこみが細かかった。主人公のポールが何らかの能力を持っており、この一作目ではまだ開花前のような描写が続いていた。また、夢に出でてくる少女が何者なのか、なぜ夢に出てくるのかという疑問を残したまま終わった。この作品は、今後続くデューンシリーズの世界観構築と伏線を敷く序章の役割が強く、単体作品としてはすこし単調にも感じた。
2 小説『幸せな家族 そしてその頃はやった唄』作/鈴木悦夫
「幸せな家族」という保険のCMモデルに選ばれた家族は、密着中に次々と謎の死を遂げていく。それは「その頃はやった唄」という歌の歌詞に沿っていた。犯人はいったい誰なのか。
この小説は子供向けの児童書ながらホラーミステリとなっており、恐ろしい結末を迎える。語りは末の弟で、彼の語りはずっと家族から一歩引いた他人事のような口調となっており、違和感と不気味さが終始付きまとう構造となっていた。
殺しは「その頃はやった唄」というオリジナルの唄に沿って起きるのだが、末の弟が感じていた退屈、それから脱却するための手段として間接的な家族殺しをするという考えが生まれる異常さが、弟の持つ独自性ではなく家庭の異様な環境によって生まれたものである点が皮肉的であった。
3『毒 poison』監督/ウェス・アンダーソン
自分の寝ているベッドに毒蛇を発見した男の話。ネットフリックス限定の短編映画
物語自体は男がベッドの上で身動き1つ取れないところに助けを呼ぶというコメディ。登場人物が怒涛のセリフ量で物語を語っていく。その際はカメラ目線で観客に語り掛ける。監督の演出の特徴で、アカデミー賞を受賞した同監督の『奇才ヘンリー・シュガーの物語』にも同様の演出がみられる。その作家性はセットにも表れており、舞台のように周りが動き、演劇的な構成と重なり映像的な美しさが際立つ。
4『桐島、部活やめるってよ』監督/吉田大八
学校の人気者、桐島をめぐる周囲の高校生たちの群像劇。
人気者の桐島が学校に来なくなり、部活を辞める日までの数日間を描いているが、桐島の姿や声は一切描かれない・映らないところが特徴的だった。桐島の造形が視聴者にわからない状態で話が進んでいくことで、学校の中心ではない人物の視点が鮮明に描かれ、思春期の高校生たちの人間関係やその中での悩みやすれ違いが目立っていた。最後の対話の場面では、スクールカーストの垣根を超え、一個人の気持ちが表れていたと思う。
5 『カラーパープル』(2024) 監督/プリッツ・バザウレ
優しい母を亡くし横暴な父の言いなりとなったセリーは、父の決めた相手と結婚し、自由のない生活を送っていた。さらに、唯一の心の支えだった最愛の妹ネティとも生き別れてしまう。そんな中、セリーは自立した強い女性ソフィアと、歌手になる夢を叶えたシュグと出会う。彼女たちの生き方に心を動かされたセリーは、少しずつ自分を愛し未来を変えていこうとする。そして遂に、セリーは家を出る決意をする。
黒人差別、性差別、家庭内暴力など、当時のアメリカ国内の黒人コミュニティにおける問題を取り上げた本作は、ミュージカルではあるが内容はほとんどが暗く重いものとなっていた。時代設定は昔のものであるが、現在の社会にも通ずる女性のエンパワーメントにフォーカスが当てられ、セリーが独り立ちし、自身の洋服屋で女性用のズボンを販売するところは、型にはめられない女性像と社会進出を象徴していると思う。
6 『カラオケ行こ!』 監督/山下敦弘
合唱部部長の岡聡実はヤクザの成田狂児に突然カラオケに誘われ、歌のレッスンを頼まれる。組のカラオケ大会で最下位になった者に待ち受ける“恐怖”を回避するため、何が何でも上達しなければならないというのだ。狂児の勝負曲は X JAPAN の「紅」。聡実は、狂児に嫌々ながらも歌唱指導を行うのだが、いつしかふたりの関係には変化が起きる。
中学生が絶対にかかわるはずのないヤクザという存在と触れ合うことで、ファンタジーチックな空間が出来上がっていた。その空間が子供と大人が交わるものとなっていることで、日常で聡実の体に起きる大人への変化(声変わりなど)と対比され、思春期特有の子供の二面性を表現していると思った。
7 『俺物語!!』 監督/河合勇人
高校生に見えない顔と巨体の剛田猛男は、ある朝町で困っていた女子高生・大和凛子を助けて一目惚れしてしまう。しかし、凛子が猛男の親友のイケメン・砂川誠のことが好きだということに気づいてしまう。猛男の恋の行方はどうなるのか。
見た目で判断されがちだった猛男、心優しい部分を親友以外に見てもらうきっかけとなった出来事が、以前女性を助けたときと同じシチュエーションであったことで、猛男の本質を見てもらえたということがよくわかった。
8 『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(ドラマ)
アベンジャーズ/エンドゲーム』後、新たな“キャプテン・アメリカ“誕生を描くマーベル・スタジオのドラマシリーズ。伝説的なヒーローを失い混沌とした世界で、ファルコンとウィンター・ソルジャーはヒーローを殲滅させる巨大な陰謀に立ち向かう。
人種、血清、特殊能力など、今までのキャプテン・アメリカでトピックにならなかったワードが多く出てきた。とくに、ベトナム戦争で暗躍した黒人の超人兵士の話が出てきたことで、話の中で透明化された存在が浮かび上がってきた。スティーブ・ロジャースは、純粋に個人として評価したサム・ウィルソンという人物が「アメリカ」という国を社会的に背負うことができるのかという視点が抜けていたことがわかった。
9 『キャプテン・アメリカ/ブレイブ・ニュー・ワールド』 監督/ジュリアス・オナー
“正義の象徴”を受け継いだ〈新たなキャプテン・アメリカ〉アメリカ大統領ロスが開く国際会議でテロ事件が発生。それをきっかけに生まれた各国の対立が、世界大戦の危機にまで発展してしまう。
サム・ウィルソンがキャプテン・アメリカとなったあとの話で、サムの本質がよく表れた話だった。サムは超人ではないが、努力と対話で信頼される人物としてキャプテンを務めていた。
この作品単作では理解できないほど昔の別作品の内容や登場人物が深く関わっていたことで、マーベル作品の情報量の多さからくる難解さが残っていると感じた。また、この中に出てくる日本がアメリカに対して優位に強く出る外交をしておりとても現実的ではなく、よく見られるオリエンタリズム的な描写でもないことがとても興味深かった。
10 『近畿地方のある場所について』(小説) 作/背筋
著者の友人で、ある場所にまつわることを調査し行方不明になった小沢さんを探しているという前書きから始まるモキュメンタリーホラー小説。
カクヨムというウェブ小説サイトで昨年話題になったモキュメンタリーホラーで、小説のモキュメンタリーという形式が斬新で面白かった。
はじめは「小沢さん」を探しているという情報、その小沢さんと著者が関わっていた「近畿地方のとある場所」にまつわる記事やインタビューが載っていた。その時点では単なるオカルト集のような印象を受けるが、ある時点で著者が意図的に何かの情報を隠していることがわかり、読者はそれが何なのかを知るために読み進めることになる。
最近、ネットフリックスの『呪詛』という映画で話題になった、主人公が視聴者に呪いをかけていたというものに通ずる結末で、ホラー系では読者・視聴者の日常を侵すような恐怖を与えるようなものが話題になるのだと思った。
11 『ルックバック』 監督/押山清高
学生新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野。クラスメートからは絶賛を受けていたが、ある日、不登校の同級生・京本の4コマを載せたいと先生から告げられる。
『チェンソーマン』の藤本タツキ原作で、作画はマンガ版によく寄せられていた。内容は明らかに京都アニメーション放火殺人事件から影響を受けている。夢を追いかけ絵を描く少女たちの青春と挫折、絶望、希望を約60分に詰め込んだ作品だと感じた。タイトルの「ルックバック」が作中に効いていて、藤野の背中を追う京本の一人称視点が何度か登場すること、京本の背中に描いた藤野のサイン、過去を振り返るラストの流れ、作中の印象的で重要な要素は「ルックバック」を基本とされていた。
12 『幽霊の日記』 監督/針山大吾、小林洋介
茨城県稲敷郡。日本最大の異次元構造物のすぐ近くに、そのレストランはある。 そこでは十数年間、心霊現象が起こり続けていた。
YouTubeで期間限定公開された28分のショートフィルム。2021年リモートフィルムコンテストグランプリ作品『viewers:1』の続編。
『幽霊の日記』というタイトルから想像するとホラー作品かと思っていた。しかし、心霊現象と思っていた現象は、実は異次元構造物に影響され違う次元にいった未来の自分の影響で起きていたということがわかる。レストランの主人をしている主人公には未来の自分が見えておらず、違う次元の主人公からは見えている。ちがう次元の主人公は、その次元では独りぼっちだが、一瞬だけもとの世界線と繋がれる瞬間があり、人とのつながりを求めていく。コロナ禍に作られた作品の続編ということもあり、実際には会えない人とのつながりやそれを求めることへの前向きなメッセージが込められていると思った。
13 『私の夫と結婚して』(ドラマ)
夫パク・ミンファンと親友チョン・スミンの不倫現場を目撃した末期がんを患うカン・ジウォン。2人に殺されたジウォンは、突然10年前の過去に戻ってしまう。会社の上司ユ・ジヒョクに助けられながら、人生の“ゴミ”を処分し、運命を変えようと奮闘する。
タイムリープして自分の人生をやり直すという物語はよくあるが、このドラマはタイムリープしたのが主人公ともう一人、上司がいて、二人が協力関係を結ぶという少し変わった設定があった。また、タイムリープして運命を変えることで、他の人にその運命が移ってしまうというデメリットもあり、本筋の復讐が終わった後もその問題が出てくるなど、細かい設定がされていた。
14 『マッドマックス:フュリオサ』 監督/ジョージ・ミラー
世界崩壊から45年。バイカー軍団に連れ去られ、すべてを奪われた若きフュリオサは故郷への帰還を誓い、MADな世界(マッドワールド)に対峙する——巨大なバイカー軍団、その頂点ディメンタス将軍は可愛い熊の人形を持ち改造バイクで絶叫し、さらには、白塗りの兵隊ウォーボーイズたちが神と崇めるイモータン・ジョーは鉄壁の要塞を牛耳り、互いが覇権を争っていた。
前作同様、ディストピアの世界観の作り込みが壮大だった。物語自体は、フュリオサが前作に至るまでどのような生涯を送っていたかという前日譚で、男社会の中でフュリオサがどのように地位を築き上げたのかがわかるものだった。しかし、フュリオサが女性として力を持っていくというより、男性に紛れ込み男性としてだんだん成り上がっていた。この作品ではフュリオサが女性としての権利や暴力支配を変えることができないが、このつらい経験から前作のように支配された女性を解放しようとする意志が生まれたのだと思うととても納得した。
15『インターステラー』 監督/クリストファー・ノーラン
舞台は、寿命が尽きかけた地球。居住可能な新たな惑星を探すという人類の限界を超えたミッションに選ばれたのは、まだ幼い子供を持つ元エンジニアの男。彼を待っていたのは、未だかつて誰も見たことがない、衝撃の宇宙。はたして彼は人類の存続をかけたミッションを成し遂げることが出来るのか。
ノーラン監督の特徴でもある、時間の流れが混ぜこぜになるような映画の作りは難解だった。重力と時間の流れの関係性を解き明かした流れは、SF作品のなかでも異彩を放っていた。父親が地球を救うキーパーソンとなったのに、それが世間には知られず時の流れにも置いて行かれ、唯一真相を知る娘はおばあさんになっているという落ちは本当のハッピーエンドとはいえるのだろうか。
16 『ピンクの豹』(1964) 監督/ブレイク・エドワーズ
ヨーロッパの美しいプリンセスが持つ「ピンクの豹」と呼ばれるダイヤモンド。その宝石を盗むため、怪盗ファントムが動き出す。ファントムの逮捕を命じられたクルーゾー警部は追跡を開始するも、ドジばかりで行く先々で騒ぎを起こしてしまう。
有名な「ピンクパンサー」シリーズの第一作。
怪盗が宝石を盗むために念入りな作戦を立てるが予想外のことが起き続けるシチュエーションコメディで、それぞれの立場が入り乱れる展開が面白さを引き立てていた。
17 漫画『童夢』 作/大友克洋
不審死が多発する郊外のマンモス団地。捜査をする警察は、何人もの怪しい人物を目撃する。また一人、捜査員が不審死を遂げたのち、団地に引っ越してきた少女・悦子は超自然的な力を秘めていた。
『AKIRA』の作者として有名な大友克洋の歴史的傑作として名高い『童夢』だが、その評価に引けを取らない物語と漫画表現だった。躍動感のある漫画は多いが、この作品は静の描写が秀でていて、マンガの登場人物が感じているであろう異質感や恐怖を動きではなく止めの画で表現していた。また、映画的な表現も多く、スタンリー・キューブリックに影響されたであろう画角や、音(効果音)の有無、カットの選択など、今までの漫画表現ではないようなものが多数見られたと思う。
18 『パーフェクトブルー』 監督/今敏
2年続けたアイドルグループを卒業し女優への転身を図った霧越未麻。しかし、アイドルの皮を破るための過激グラビアやドラマの過激シーンなどの仕事が舞い込んでくる。急激な変化に戸惑う人々、さらに仕事関係者が犠牲となる事件が多発する。追い詰められた未麻は、もう一人の未麻を目撃するようになる。次第に現実と虚構の区別がつかなくなっていく。
現実と虚構が入り交ざり、区別がつかなくなるような描き方は、のちの『パプリカ』などにも引き継がれる今敏の作家性だと思う。
この『パーフェクトブルー』では、主人公の精神状態から時系列や記憶が錯乱しているというミスリードがうまく効いて、最後のもう一人の未麻の正体を衝撃的なものとしていた。
19 『羊たちの沈黙』 監督/ジョナサン・デミ
FBIの訓練生・クラリスは、女性を誘拐して皮を剥ぐ連続殺人鬼の捜査に加わることに。彼女の任務は獄中の天才精神科医・レクター博士の協力を得ることだった。クラリスは自分の過去を語ることと引き換えに、レクターから事件の手掛かりを聞き出すことになる。
この作品で人々の印象に残るのは、やはりレクター博士だと思う。しかし、レクターの登場時間は少なくセンセーショナルな事件を起こしても、その様子は描かれない。このような条件の中で人々の印象に残るのは、彼の映し方に理由があると考えた。意図的に全身が写されたり、極端に顔のアップが映ったり、彼がどこかちぐはぐで危険な見え方をする撮り方がされていた。
20 『国宝』 監督/李相日
任侠の家に生まれた喜久雄は、その美貌と才能を見初められ、上方歌舞伎の一門へ足を踏み入れる。やがてその才能と血をめぐる苦悩にさらされる。
まず、この映画は映像が美しかった。歌舞伎の舞台はもちろん、重要なシーンの背景やその取り方は、邦画というよりも洋画を彷彿とさせた。特に、あまり引きの画を撮らずに、人物をクローズアップして撮る場面が多く、ここぞというときに引き画がとられるため、その背景の美しさが引き立っていたと思う。
物語に関しては、ゲーテの悲劇『ファウスト』をベースにしていると考えた。「悪魔と取引した」という印象的な言葉の通り、その取引により得たものと失ったものを中心にめぐる物語はほとんど同様の流れを汲んでいた。喜久雄と俊ぼんは二人でファウストの役割を担い、喜久雄は悪魔と取引し、家族や信頼、俊ぼんの両足を無くす。両足=ファウストの失った両目であり、『国宝』はやはり悲劇として描かれていると考えた。
3年 谷澤佳歩
RES
春休み課題 20作品
1『海がきこえる』(アニメ映画)(1993年)監督:望月智充
【概要・あらすじ】
氷室冴子による小説『海がきこえる』を原作として、1993年にスタジオジブリが制作したアニメーション映画作品である。
高知の中高一貫校を出て東京の大学に進学した主人公・杜崎拓は、吉祥寺駅のホームで高校時代に東京から転入してきた武藤里伽子によく似た女性の後ろ姿を見かける。その後、拓は同窓会のため高知へと帰省する道中、飛行機の中で里伽子と出会った高校時代の想い出を振り返る。
【考察】
物語の構造としては時系列通りではなく、直近の時間軸の間に過去回想が挟まれている構造となっている。クライマックスが最も未来なので、観客は杜崎と武藤の二人の関係がどうなるのか分からないまま、予想しつつ回想を見ることになる。素直になりきれず思っていることを正直に言えないような思春期のキャラクター造形や、噂話が広がるのが非常に早い地方の田舎の描写はとてもリアルで、二次元的なデフォルメの効いた表現などはあまり感じられず、大人になった観客が見てもまるで自分自身の過去のように思えるほど「等身大」という印象だった。未成年の飲酒のシーンがあるなどの理由からか地上波などでほとんど見ることが出来ない作品だが、思春期の青少年を緻密に描写した作品。同窓会で大人になった同級生たちの振る舞いから分かる登場人物の成長や、武藤と杜崎の間にある感情が何なのかが最後にようやく確定する、その演出の仕方も伏線があるなど、非常に巧みだと言える。演者たちの土佐弁も自然で、見ていて独特のリズムが作品のテンポに良い演出となっている。
2『耳をすませば』(アニメ映画)(1995年)監督:近藤喜文
【概要・あらすじ】
柊あおいによる漫画『耳をすませば』を原作とし、1995年にスタジオジブリが制作したアニメーション映画作品である。
読書好きの中学三年生・月島雫は、夏休みも勉強せずに図書館通いの日々を送っていた。雫は自分が借りる本の貸出カード履歴に、決まって「天沢聖司」の名前があることに気づき、素性の知れない彼を気にするようになる。ある日、雫が友達に『カントリーロード』の替え歌『コンクリートロード』の歌詞を見せていたところ、見知らぬ少年から馬鹿にされる。しばらくして、図書館へ向かう道中で出会った野良猫の後を追って見つけたアンティークショップで、『コンクリートロード』を馬鹿にした少年が天沢聖司だと発覚する。
【考察】
話全体の展開の速さが丁度良く、ダレない速さで進んでいく。観客としては天沢聖司の正体が誰なのか物語の序盤で何となく察しがつくが、作中で雫が天沢聖司の正体に確信を得るのは観客が察するよりも遅めになっている。これは雫の空想の中の「天沢聖司像」と「嫌味な少年」が結びつきづらかったためだと考えられる。雫や天沢を中心に、人間関係の他、将来の夢や目標に向かって邁進する若者の姿を中心に描いた作品であり、自分の持つ能力や才能の限界を知ることの恐怖や、それでも立ち向かう若者を周囲にいる大人が見守る構図が印象的である。才能を宝石の原石に例え、洞窟の無数にある石の中から原石を見つけ出そうとする描写が、雫たちの行動と準えられている。天沢が雫を自転車の後ろに乗せて朝焼けを見せに高台へ行くシーンでは、最初雫を乗せたまま急斜面を登ろうとするが、途中で雫が自転車から降りて、天沢の漕ぐ自転車を押しながら「お荷物だけなんていやだ」と二人で坂を乗り越えようとする場面は象徴的である。バイオリン職人になりたいという夢を追う天沢を応援するだけでなく、自分自身も夢を追いながら共に成長したいという雫の思いが表現された演出である。また、本作ではジブリ作品の要素が登場しており、「TOTORO」と書かれた本があったり、「porco Rosso」の文字が時計に刻まれていたり、魔女の宅急便のキキを思わせる魔女の飾りがあったり、土佐の段ボールがあったりなど、ファンサービスの一面を感じさせる。
3『百日紅〜Miss HOKUSAI〜』(アニメ映画)(2016年)監督:原恵一
【概要・あらすじ】
杉浦日向子による日本の漫画『百日紅』を原作として制作されたアニメーション映画。第12回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門第19回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門・審査委員会推薦作品に選ばれた。
浮世絵師・葛飾北斎の娘で、同じく浮世絵師として活躍した女性・お栄が、父・北斎や盲目の妹のお猶、浮世絵の仲間たちとともに生きた姿を、江戸の町の四季を通して描く。
【考察】
葛飾北斎の娘であることは作中でそれとなく観客に提示するのではなく、冒頭の本人のモノローグで発覚するのがインパクトを与える。作品の構造としてはプロローグとエピローグをお栄本人がモノローグ形式で語り、死後のことなどについては文字のみで語られる。作中の描写としては、お猶の最期の演出や、絵の始末、伸びる手や腕の話など、芸術家や表現者に共通するような、言葉ではっきりとは表現しない・出来ない非常に感覚的な演出・表現が多い。父と並ぶ芸術家としてのお栄、一人の娘として恋をするお栄、お猶の前での姉としてのお栄など、多面的な描写からお栄という人物がどんな人物なのか、その半生を表現している。お猶と舟に乗った際に、北斎の富嶽三十六景の有名な構図を用いるなど、数多くの作品が作品内で引用されている。北斎やお栄の人物像に詳しくない人でも「この絵を見たことがある」というフックになりえる演出となっている。お猶は盲目であるため、必然的に絵に関する話題よりも今体験していることを視覚でないもので感じ取る感覚が、絵を生業とするお栄にとって良い刺激であるように思われる。
4『ブラック・ジャック 劇場版』(アニメ映画)(1996年)監督:出崎統
【概要・あらすじ】
手塚治虫のマンガ『ブラック・ジャック』を原作とするアニメーション映画作品。OVAシリーズの流れを汲む作品で、原作にはない劇場用オリジナルストーリーとして製作された。
1996年のオリンピックにて、驚異的な新記録が次々に打ち立てられ、世界は「超人類の出現」として囃し立てる。「超人類」の活躍は芸術や科学の分野にもおよび、世界は飛躍的な進歩を遂げようとしていた。しかし同じ時、ブラック・ジャックは老人のように摩耗した内臓を持つ少女の死に立ち会い愕然としていた。超人類たちとこの少女との間に隠されていた陰謀の魔の手が、真相を突き止めようとするブラック・ジャックへ伸びていく。
【考察】
作中で使われた特徴的な演出を挙げると、サーモグラフィーの演出と劇画調のカットである。原作の手塚漫画のデフォルメ調の絵柄とは異なり、キャラクター全般の頭身が高く、影が斜線で描き込まれているなどのリアルさを重視したカットが要所で印象的に差し込まれている。サーモグラフィーの演出では、「超人類」の持つ異常な体温を冒頭から表現しており、ドーピングに似ていつつも、異なる身体現象を演出している。この作品のシナリオは、科学技術による人体のエンハンスメントに対する懐疑の目を向けるものであり、人体や生命を人類の手によって制御しようとすることへの烏滸がましさや、万能感の危うさを顕わにする、原作の手塚漫画の思想を踏襲するものとなっている。『ブラック・ジャック』においては珍しいことではないが、物語の舞台設定がアメリカを中心に海外になっており、生命や自然を制御する万能感は日本よりアメリカなどの欧米の価値観において強い印象があるため、舞台が日本ではないのだろうかとも考えられた。
5『HELLO WORLD』(アニメ映画)(2019年)監督:伊藤智彦
【あらすじ】
2027年の京都市に住む主人公・堅書直実が、10年後の2037年から来たという自分自身から、自分の住む世界がシミュレーター内に再現された過去の世界であると聞かされ、まもなく出会うことになる将来の交際相手・一行瑠璃へと降りかかる悲劇の運命を回避するよう依頼される。
【考察】
映画のほぼ全編をフルCGで描画しており、主人公たちが存在するデータ世界を表現しており、データ世界ならではの演出は、『サマーウォーズ』のOZの世界を連想させる。二人の堅書によって、作品の前半は一行との交流を深めていく様や堅書の成長が描かれるが、一行のキャラクターが観客に魅力的に感じられるようなエピソードが多く描かれており、堅書に感情移入しやすくなっている。舞台が京都なこともあり、デジタル世界のUIデザインが、伏見稲荷大社や狐面、八咫烏などの和風のものをモチーフにしている。また、細田守作品に見られる非現実世界を表現する際に用いられる赤い輪郭線も見られた。未来から来た堅書は、実際は脳死状態であり、結末としては堅書が一行にしようとしていたことは最新の時間軸では立場が丸ごと逆転しており、データ世界という非現実世界での出来事が三重の入れ子構造になっていることがラストの五秒ほどで観客にはっきり分かるようになっている。また、この最後の場面だけはフルCGではなく2Dのアニメ作画になっており、本当の現実世界であることが示されている。主人公の修行のシーンではほとんどダイジェストが使われており、『君の名は。』の新海監督の影響を感じられる。
6『ハウルの動く城』(アニメ映画)(2004年)監督:宮崎駿
【概要・あらすじ】
イギリスの作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズの小説『魔法使いハウルと火の悪魔』を原作として制作されたスタジオジブリのアニメーション映画作品。
魔法が存在する国で、ソフィーは父から受け継いだ古い帽子屋を営んでいた。ある日、ソフィーは街中で兵隊に絡まれ困っているところを魔法使いのハウルに助けられる。その晩、荒地の魔女がソフィーの営む帽子屋に訪れ、ソフィーに90歳の老婆になる呪いをかけてしまう。これまで通りの生活は出来ないと悟ったソフィーが家を出て荒地に向かうとハウルの城に遭遇し、掃除婦としてハウルの城に転がり込むことになる。
【考察】
ソフィーの姿が作中で何度も大きく変わっているのが印象的ではあるが、他にも作中に登場するハウルの城の住人は、ほとんどの全員が容姿や内面に大きな変化がある。ソフィーは老婆から星の色の髪を持つ女性になったり、ハウルは金髪から黒髪、時に牙と爪と翼を持つ怪物になったり、マルクルは老人の魔法使いの姿になり、荒地の魔女は老婆の姿に変わる。ほとんどのキャラクターが心境や立場、力などの変化に対応して容姿も変化していると考えると、ソフィーやハウルは自尊心や自立心、マルクルは外部の人間とハウルの弟子として振る舞うときには老人の姿に、荒地の魔女は魔法の力とサリマンとの力関係とを分かりやすくしたことや、ハウルと結ばれるヒロインが誰になるのかがはっきり示されているようにも考えられる。また、ハウルの髪色が金から黒に変わるのには、元は地毛が黒であるハウルと、サリマンに使える侍従が幼少の頃の金髪のハウルに似ていることから、金髪はあらゆる意味で美意識や価値観、執着がサリマンに支配されている状態で、黒髪になる頃にはその呪縛が解けた状態だと推測される。ヒンの体重が見た目の割に重かったり、喉を潰された犬のような声で鳴くことだったり、実は耳で軽々飛び上がれるといったことを踏まえると、ヒンの正体は、元はサリマンに仕えていた人間の魔法使いなのではないかと考えられる。字幕がないと分かりづらいが、映画の序盤にソフィーがハウルと出会う路地に入る場面から、国民が国の臨む戦争についての話題に触れている会話があり、作中の至るところで背景に戦争に向けて着実に動き出している描写が施されている。
7『北極百貨店のコンシェルジュさん』(アニメ映画)(2023年)監督:板津匡覧
【概要・あらすじ】
西村ツチカによる漫画作品『北極百貨店のコンシェルジュさん』を原作とするアニメーション映画作品。
新⼈コンシェルジュとして秋乃が働き始めた「北極百貨店」は、来店されるお客様が全て動物という不思議な百貨店。 ⼀⼈前のコンシェルジュとなるべく、フロアマネージャーや先輩コンシェルジュに⾒守られながら日々奮闘する秋乃の前には、あらゆるお悩みを抱えた客が現れる。そんな客たちの要望に応えながら、コンシェルジュとしての成長を描く。
【考察】
原作の漫画の記号的な絵柄を踏襲した、輪郭線が繋がっていないふわふわとした作画が特徴的な作品。輪郭線の色も薄目で、黒ではなく茶色などの別の色を使用しており、画面全体が明るい鮮やかな色使いなのも特徴の一つ。秋乃がコンシェルジュとして働き始めてから、場面のカットにベルの音が使われており、店内で接客をするのに目まぐるしく対応に追われる様子を演出している。世界観が不思議な背景を持っており、北極百貨店が出来た詳しい背景は語られないものの、別々の時代に人間の手によって絶滅した動物がVIPならぬVIAとして、人間のコンシェルジュから好待遇の接客を享受している様子は、これまでの人間の行いに対する皮肉や戒めであるように表現している。なぜ別々の時代に“既に絶滅した”と分かっている動物が百貨店にいるのか、なぜ動物たちが人間と同じ言葉を喋っているのか、北極百貨店とは一体何なのか、そういった謎についての詳細は語られず、観客に解釈を任せる形になっている。VIAの客は、そのほとんどがそれぞれの大切な存在のために百貨店に訪れており、その気持ちに寄り添うコンシェルジュの精神は、欲望とは反対の精神であると示され、新たな絶滅種を生み出さないために重要な精神であると訴えかけている作品と考えられる。キャラクターの担当声優に、芸能人声優や俳優、新人の声優を起用していないのも、近年のアニメ映画の中では特徴と言える。
8『BLUE GIANT』(アニメ映画)(2023年)監督:立川譲
【概要・あらすじ】
石塚真一、NUMBER8による日本の漫画『BLUE GIANT』を原作とするアニメーション映画作品。
ジャズに魅了され、テナーサックスを始めた仙台の高校生・宮本大。雨の日も風の日も、毎日たったひとりで、何年も河原でテナーサックスを吹き続けてきた。卒業を機にジャズのため、上京。高校の同級生・玉田俊二のアパートに転がり込んだ大は、ある日訪れたライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈と出会う。大は雪祈をバンドに誘う。はじめは本気で取り合わない雪祈だったが、聴く者を圧倒する大のサックスに胸を打たれ、二人はバンドを組む。そこへ大に感化されドラムを始めた玉田が加わり、三人は“JASS”を結成する。
【考察】
私自身音楽の良し悪しは分からない人間ながらも、見事な演奏だと感じるほどのジャズ演奏は観客の聴覚の期待に応える作品だと言える。ただ、実際に演奏をする場面ではCGのモーションキャプチャーを用いた作画になり、それが演奏シーン以外の作画と大きく異なるためにやや浮いてしまう印象はある。しかしそれでもなるべく画面上で浮かないように画面の角度や色合いが調整されているように感じる。演奏中に過去回想のカットが差し込まれることが何度かあるが、これは昨今の新海作品特有のダイジェストとは少し異なり、「音に感情を乗せる」ことの表現になっていると思われる。演奏中にカメラが奏者や会場を大きくグルグルと回る演出が特徴的である。音楽による演出だけでなく、サックスの口から響く音圧を細かい線で描画したり、会場の静かな熱気を火花のような描写で表現したりなど、視覚的な演出も豊富に込められている。最後の会場での演奏では、「BLUE GIANT」という名前の由来にふさわしく、青色をベースに宇宙や恒星をモチーフにしたジャズの空気感を演出している。会場外の夜の場面では青色をベースに、会場内ではオレンジなどの暖色系の色をベースに背景が描かれており、熱気と冷気がそれぞれの色で対応して対比の構造になっている。背景も含めて画面全体が球体のように大きく回るように動く演出は、同じ立川監督が監督をしている『モブサイコ100』でも見られる表現だと考えられる。ストーリーとしては、バンドメンバー三人で方針についてぶつかり合いながらも、互いの成長を見守り認めつつ夢の舞台を目指す物語となっており、王道な青春スポ根に似た内容になっている。
9『心が叫びたがってるんだ。』(アニメ映画)(2015年)監督:長井龍雪
【概要・あらすじ】
フジテレビ系列『ノイタミナ』で放送された『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のメインスタッフ「超平和バスターズ」が再集結して制作されたアニメーション映画作品。第19回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門・審査委員会推薦作品。
夢見がちでお喋りの少女・成瀬順は、山の上に建つ城の舞踏会へ行くことに憧れていた。下校中に城に向かうと、父が車で見知らぬ女性を助手席に乗せて城から出るところを目撃する。ラブホテルだと知らない順は、無邪気に父のことを母に話すと、「それ以上しゃべっちゃだめ」と黙らされ、離婚されて家を出る父は、縋る順を「全部おまえのせいじゃないか」と責める。そんな順は突然現れた“玉子の妖精”に、言葉を発すると腹痛になる呪いをかけられる。以来、口も心も閉ざしたまま高校二年生になった順は、担任から地域ふれあい交流会の実行委員に任命される。
【考察】
作品内において、やはり「言葉」や「伝えること」がかなり重要なキーワードとして設定されている作品だと感じる。言葉は時に人を傷つけ、どんなに後悔しても言ってしまった言葉を取り返すことは出来ない。自身の言葉によって家族がバラバラになってしまったトラウマを持つ主人公にとって、言葉というのは忌避の象徴であり、加えてそれを再び自分の迂闊さによって生み出してしまうかもしれないという恐怖を内包するものとして表現されている。また、自分の内面にある感情も、自分で言葉にしなければ相手に伝えることも叶わない。それは自分の心の内を相手に明かす行為でもあり、時には痛みも伴う行為となる。玉子は近所にある神社の供え物としての側面があるが、自身の殻の内側に存在する言葉にならない感情を黄身とし、自身の殻を割ってしまえば黄身が漏れて死んでしまう(=全てが破滅する)という暗示で、順は言葉を口にすることを自分で封印する状態になっている。主人公は身近な人間にあまり恵まれず、浮気などをする父親が全面的に悪いのにも関わらず父から「全部お前のせい」と責められ、母親からは無口になったことをみっともないと疎まれ、なぜそうなったのかの原因に理解を示されないといったところが描写されており、主人公に感情移入する観客としてはフラストレーションが溜まる場面も多い。しかし、いざ主人公が自分の内に籠った感情を打ち明ける場面の最後に出てきたのはメイン男子への告白の言葉であり、無口の原因になった両親については触れられない。王道な恋愛的な展開にはならず、メインの男子キャラが主人公とくっつくわけではなく、エピローグ的に別の主要男子キャラから告白されるのが少しリアルさを演出しているように見える。サブヒロインがメインヒーローと過去に交際経験がある、ラブホテルを物語の鍵となる場所にするなど、幼い子供向けの作品というよりは、中学・高校辺りの思春期を迎えた青少年向けの少しドロドロした人間描写が独特の作風を持つ。
10『さよならの朝に約束の花をかざろう』(アニメ映画)(2018年)監督:岡田麿里
【概要・あらすじ】
P.A.WORKS制作による日本の長編アニメーション映画。「ぴあ映画初日満足度ランキング」第2位。
人里離れた土地で、ヒビオルという布を織りながら静かに暮らす、長い寿命を持つイオルフの民の少女マキア。ある日、イオルフの長寿の血を求め、レナトと呼ばれる獣にまたがるメザーテ軍が攻め込んできたことから、イオルフの民の平穏な日々は崩壊する。親友や思いを寄せていた少年、そして帰る場所を失ったマキアは森をさまよい、そこで親を亡くしたばかりの、人間の孤児の赤ん坊を見つける。マキアは赤ん坊の母として子供を育てていくが、子供が成長してもマキアの姿は変わらないまま月日が流れていく。
【考察】
監督は、前に取り上げた作品『心が叫びたがってるんだ。』の脚本を務めた岡田麿里氏によるもので、ファンタジックな世界観の作風ながらも、主人公がかつて純粋な気持ちで自身を守ると約束してくれた血の繋がらない息子から、体格年齢が釣り合ってきた時、酔って正気ではないとは言え性的関係を持ちかけられる、主人公の幼馴染は想い人とは別の相手と無理やり結婚させられて子供を生まされるなど、性関連のドロドロした少しグロテスクな人間関係描写が似通っていると感じられた。生命の連鎖や、長命種による年齢感の逆転現象など、『葬送のフリーレン』で主題にされるような要素がある。作品全体の背景美術はスケールが大きく、地方によって統一感があって、観客から見ても世界観の想像がしやすくなっている。ただ世界観が作りこまれていると思われる分、途中から説明の少ない専門用語が増えて少し難解に感じられる。マキアは拾った赤子の髪色に合わせて同じ色に髪を染めるが、数年後にイオルフの民の同胞に誘拐され長らく幽閉された際に、染められなかった部分を残して染められた部分だけを切り落とされる場面があるが、染めていた部分が丁度息子と過ごした年月分が染められた長さで、地毛の部分の長さが息子と離れ離れになって一イオルフの民として、「母」の要素が徐々に失われていく描写がされている。息子の子孫までも見守り続けることを決めたマキアが家を訪問する場面では、かつて同じ家で暮らしていたこともあり、同ポの表現を用いて、過去との差異を表現している。同ポの技法をよく使う監督として細田守が挙げられることが多いが、長い年月をモチーフとする本作では効果的であると思われる。
11『金の国 水の国』(アニメ映画)(2023年)監督: 渡邉こと乃
【概要・あらすじ】
岩本ナオによる同名の漫画作品を原作として制作されたアニメーション映画作品。原作漫画は2016年、「このマンガがすごい!オンナ編1位」を受賞した。
王女サーラが住む金の国ことアルハミトと、貧しい建築士ナランバヤルの住む水の国ことバイカリは、些細な原因で戦争をして以来、100年間国交を断絶していた。敵国同士出身のサーラとナランバヤルは、国家間の思惑に巻きこまれて偽りの夫婦を演じることとなる。サーラの国の深刻な水不足と、自国の経済的衰退を案じたナランバヤルは、二国間の国交を回復させようと動き出す。
【考察】
出て来る言葉こそ暗殺などのきな臭いものが多いものの、物語の展開としては終始残酷なものは無く、サーラとナランバヤルの関係値も穏やかで微笑ましいもので、二人の間に何かしらの誤解があったとしても、観客にだけ分かる形で誤解が解けるように演出してあったり、比較的早急に解決していったりしていくので、観客にかかる精神的なストレスが低い作品だと考えられる。小さな問題が発生してストレスに感じたとしても、早急に、観客の予想を超える方法で解決していき、それが立て続けに何度もあるため、観客の満足度は高いと思われる。両者の間に育まれるお互いを思いやる穏やかな愛と、主にナランバヤルの知能と行動力から物語が展開し、サーラはナランバヤルの仕事を見守りつつ、バイカリに行って図らずも国交の手助けになるようなことをしていたり、序盤にある伏線も終盤で回収されたりなど、「こういうのでいい」と思わせるような作品となっている。ナランバヤルの容姿はそこまでイケメンといった派手なものではなく、あくまで一般家庭出身の一学者としてデザインされているのも特徴の一つである。例を挙げるならば『ワンパンマン』のサイタマのような顔立ちをしている。サーラの場合、一応アルハミトの姫ではあるのだが、第93王女であるため、ほとんど姫として強力な権力を持つわけではない。純真ながらやや自己肯定感の低い心を持つ彼女の性格によって、些細なことから国交が回復する伏線を回収した時には、物語が綺麗に収まっており、完成度の高いものとなっている。ただ、文字列が独特で字幕がないと固有名詞をはっきりと把握出来ないことがある。
12『AKIRA』(アニメ映画)(1988年)監督:大友克洋
【概要・あらすじ】
大友克洋による同名の漫画を原作とした1988年7月16日公開の長編アニメーション映画。監督を原作者の大友氏が務める。
新型爆弾の爆発により旧東京が壊滅したことを発端に勃発した第3次世界大戦から38年が経過した2019年、爆心地東京は東京湾を埋め立て、そこに新たな大都市「ネオ東京」として再興し、繁栄を取り戻しつつあった。暴走族として練り歩いていた少年たちの一人である鉄雄はバイクで疾走中、突然飛び出してきた老人のような少年と事故を起こしてしまう。駆けつけた軍は少年と彼に接触した鉄雄を連れ去っていった。その騒動下で金田は軍に対抗するゲリラと知り合い、軍との戦いに巻き込まれていく。
【考察】
作画が、公開された年代に反しているオーパーツ的な作品と言われているが、特に序盤で金田がバイクで横滑りしながら停車する場面は、本作を見たことがないにしても国内外問わず様々な作品でオマージュされており、影響力の強さが窺える。物質の質感を無視した動きではなく、出来る限りその質感や現象のリアルな描画がされており、走り去るバイクのランプの光の尾を引く表現や、ヒビ割れるアスファルトの地面、爆発など、当時のアニメーション作品の中ではリアルに徹底しているのも特徴である。序盤で現れる老人のような顔の子供は、『ブラック・ジャック 劇場版』のように、人間の手によって超常的な力を手に入れさせられ、その引き換えに陥った容姿であろうことは観客にも想像しやすい。周囲に対し劣等意識があった鉄雄が、ひょんなことから超能力を手に入れたことにより、肥大化した自己承認欲求から周囲を衝動的に破壊して見下しながら回る様がリアルで痛々しい。超能力に目覚めたものの中には容姿に変化が現れたり、身体の一部が不自由になったり、悪夢のような幻覚を見るなど、心身に深刻な損傷を与えるものがほとんどで、無理に覚醒させる行為は観客にとって悪印象しかないのだが、現に倫理的な問題から実験に反対する軍の人間と人類の発展の為に推し進めようとする科学者の間でジレンマが起こっており、前者が生き残って後者が死ぬことからも作品の指針が読み取れる。浮遊したり、レーザー照射を歪ませたり念動力を用いて地形を変形させたりといった超能力を用いた異能力バトル描写に関しても、後の作品に残した影響は大きいと思われる。
13『パーフェクトブルー』(アニメ映画)(1998年)監督:今敏
【概要・あらすじ】
竹内義和の小説『パーフェクト・ブルー 完全変態』を原案として制作されたアニメーション映画作品。内容は原作と大きく異なる。
アイドルグループ「チャム」のメンバーで活動していた霧越未麻は、ドラマの出演をきっかけに女優の魅力に気づき、脱退宣言をして女優に転身する。アイドルのイメージから仕事になかなか恵まれない状況が続き、イメージを変えようと事務所の社長である田所は過激なシーンや写真集などの仕事も積極的に出させようとするが、そんな折に事務所に送られてきた手紙が爆発するという事件が起こる。また、同時期に「未麻の部屋」と呼ばれるサイトが立ち上がっていることを知る。しかし、未麻本人しか知り得ないようなことも詳細に書かれた、まるで今もアイドルを続けている自分が書いているかのようなその内容に、誰かに監視されているのではないかという疑心暗鬼に陥り始める。
【考察】
今敏監督作品特有の「現実と虚構が融け合う」特徴を有する作品と言える。女優の仕事の一環で自身が汚れていく侵食の感覚と、あのままアイドルを続けていたらと思う幻想、鏡の反射や『エヴァンゲリオン』でも見られるような目覚めのバンクシステムなどから、今未麻がいる世界が夢なのか現実なのか、区別が観客目線でもつきづらいやや難解な作品となっている。作品の実体はサイコホラー作品であり、未麻にまつわる一連の事件の犯人は、状況から見ると意外と的が絞りやすい作品となっている。女優の未麻がストリップのシーンを撮影しているのに対し、幻想のアイドルのミマは短いスカート姿で跳ね回るもスカートの中が見えることはほぼない。ミマがピザ屋の配達員となって写真家を殺害するシーンの後、未麻が目覚めてクローゼットの中に血がついたピザ屋の制服を発見する場面では、殺害したミマと本物の未麻は別人だが、映像の繋がりで本物の未麻が持つ殺意から本当に衝動的に犯行に至ったのではないかと観客が疑ってしまう構造となっている。本人ではない別人が運営している非公式のホームページだったり、未麻が演じる役の少女も姉に成り代わる妹の役だったりと、「自分ではない誰か、別人に成り代わる」ことがキーワードになっている。
14『岬のマヨイガ』(アニメ映画)(2021年)監督:川面真也
【概要・あらすじ】
柏葉幸子による日本の児童文学『岬のマヨイガ』を原作として制作されたアニメーション映画作品。登場人物設定や舞台などは原作と異なる。
東日本大震災で多くの犠牲者が出た岩手の狐崎。家出少女のユイは、避難所の裏の神社で、幼い少女のひよりと出会う。両親を交通事故で失い、身を寄せた親戚の家で震災に巻き込まれ、二度も家族を失ったひよりはショックから声が出せなくなっており、ユイは彼女のことを気にかけていた。身を寄せる場がないのはユイも同じだったが、避難所で出会った老女キワがユイとひよりを孫と偽って引き取ることを決め、岬に立つ古民家で3人は共同生活を行うことになる。
【考察】
東日本大震災関連の背景がある作品であるが、河童や地蔵といった妖怪のような、人間に協力してくれるふしぎっとや、人をもてなすことに喜びを覚えるマヨイガといった、作品全体に暗すぎない愉快な雰囲気をもたらすキャラクターや存在がいるおかげで、総合的に震災による喪失の悲しみに寄り添う優しい印象の作品となっている。被災後ゆえに地域の人々と協力して生活していく様子や、自分だけ生き残ったことによるサバイバーズ・ギルトの想いが町の中で渦巻いている様が描写されている。ひよりの声は終盤まで出ることはないが、それが物語の中で、登場人物たちの踏む段階の一つの目安として示されている。「アガメ」や「あったずもな」などの東北の方言由来の言葉が温かな雰囲気を醸し出すのにも一役買っていると思われる。なぜキワが二人を引き取ったのかの詳細な理由が分からないのが少し引っかかる。
15『ホッタラケの島 〜遥と魔法の鏡〜』(アニメ映画)(2009年)監督:佐藤信介
【概要・あらすじ】
フジテレビ開局50周年記念作品として制作されたCGアニメーション映画。第33回日本アカデミー賞:優秀アニメーション作品賞を受賞している。
子供の頃は大切にしていたが、いつしか放置されてしまったおもちゃや絵本などの宝物。そうした“ほったらかし”にされたものを集めて作られた不思議な「ホッタラケの島」にまつわる昔話がある。幼い頃に母からもらった形見の手鏡を、昔話の儀式に沿って見つけ出そうとする女子高生の遥は、誤って家の鍵を不思議なきつね・テオに持ち去られてしまう。その後を追う内に、遥は「ホッタラケの島」に迷い込む。
【考察】
フル3DCG作品で、昔話の場面以外は基本的に日本風のディズニー映画のような雰囲気を持つ作品。概ね良作だが、主人公がホッタラケの島に飛ぶ飛空艇を見ていきなり「誰?」と言ったり(ホッタラケの島を支配する男爵が乗っている、一応飛空艇には男爵の顔に似た装飾が施されている)、指名手配される主人公たちのいる場所をどうやって追っ手が突き止めたのかが分からなかったりと、辻褄が説明されず観客が疑問を抱く部分があるように思われる。また、テオに絡む三人組の狐も、そこまでしてテオに執着して追い回す理由については触れられず、よくある“いじめっこ”や、“ピンチの時には協力してくれるタイプの悪ガキ”のようなキャラクターとしての要素が全面に描かれているように見られた。細かいながらも「何故そうなったのか」が分からず、気になる箇所がわずかに見受けられる。『不思議の国のアリス』と似たような話の流れになっており、細かい所やご都合で処理されているのかと思われる点もあり、主人公が人間であることをホッタラケの島の住人の狐に知られぬよう仮面を被るのだが、体格や身体構造が明らかに狐とは異なるものであるにも関わらず、仮面を外した時にやっと人間であることがバレるという、顔でしか人間を判別出来ない視力なのかと思いきや、数十メートル離れた場所にあるものを正確に見て判別することが出来る離れ業をやってのけるなど、合理性が見えず、引っかかる箇所が挙げられる。
16『ホーホケキョとなりの山田くん』(アニメ映画)(1999年)監督:高畑勲
【概要・あらすじ】
いしいひさいち原作の漫画『ののちゃん』を元に制作されたジブリのアニメーション映画作品。作品内容は原作の4コマエピソードを繋ぎ合わせたオリジナルストーリーである。『朝日新聞』朝刊の4コマ漫画作品として『となりのやまだ君』の題で連載が開始された。同作者の『おじゃまんが山田くん』を意識して付けた名前だったが、主人公・のぼるよりも妹・ののちゃんの人気が高かったため、1997年に題と主人公が変更された。
夫・たかし、妻・まつ子、祖母・しげ、長男・のぼる、長女・のの子が暮らす山田家。時にはアクシデントやトラブルを交えながらも、ありふれた普通の毎日を送る5人の日常の姿を描いた作品。
【考察】
『あたしンち』をアニメ化した際と似たような雰囲気の映像化だが、輪郭線が繋がっておらず全体的に丸っこいふわふわした柔らかい雰囲気の絵柄で、背景が描き込まれることも稀で、原作の絵柄を踏襲していると思われる。主に四コマ漫画の内容をいくつか繋げたようなエピソードが一塊になり、それが季節や時期を変えて何個も送られていく形となっている。しかし、冒頭や隙間ではアニメーション作品ならではの、ヌルヌルとした美麗な作画でダイナミックな動きをしたり、少しシリアスな時にはキャラクターの頭身が上がって一気にリアル調になったりするシーンがある。それでも作品全体の空気感を壊すほどのものではなく、冒頭、合間、エピローグではアニメで描画される規模が広くなり、やや長めなエピソードが差し込まれる。空想世界のような演出もあるが、最後にはこれからも日常が続いていくような、出先で外食に何を食べようか決めながら作品の主題歌が流れて終わる終わり方は、視聴後にきれいに締めくくられていると観客が感じるような演出となっている。一つのパートが終わるごとに、有名で日常に根差した俳句が詠まれる演出で、グダグダと続いて垂れ流している印象を与えぬよう引き締めている。
17『雲のむこう、約束の場所』(アニメ映画)(2004年)監督:新海誠
【概要・あらすじ】
『ほしのこえ』に続く、新海監督の2作目の劇場用アニメーション映画である。
米軍統治下の日本、青森に暮らす中学生の藤沢浩紀と白川拓也は、海峡を挟んだ北海道に立つ巨大な塔に憧れ、いつかその塔を目指すため、廃駅跡で密かに飛行機の組み立てに勤しんでいた。ある夏休み、2人はもうひとつの憧れの存在・同級生の沢渡佐由理に、飛行機の秘密について打ち明ける。3人は一緒に塔を目指す夢を共有し、ひと時の幸せな時間を過ごすが、中学3年の夏、佐由理は理由を告げることなく突然転校してしまう。
【考察】
昨今の新海作品の特徴の共通点として、レンズフレアなどのカメラ的な演出、改札やドアなどの境界線がある場所の足元のアップカット、主人公のかなり長めのモノローグなどが見受けられる。いわゆる「セカイ系」作品の代表例として挙げられる作品で、ヒロインの体質が世界の均衡や平和に多大な影響を与える設定は、『天気の子』とも繋がるテーマのように思える。また、ヒロインが見続ける夢の中の世界と現実世界がリンクしてやり取りが出来る場面があるが、このシーンは『君の名は。』にて、三葉と瀧が隕石湖のほとりで再開をするシーンに非常によく似た演出となっている。クライマックスで主人公とヒロインが飛行機に乗って塔に近づいた際には、空の様々な青色が何重にも代わる代わるステンドグラスのようなデジタルチックな演出によって、観客に伝わりづらい多重宇宙構造の実感を得られるものとなっている。
18『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』(アニメ映画)(2017年)監督:神山健治
【あらすじ】
岡山県倉敷市・児島で、車の改造ばかりしている父親モモタローと2人で暮らす女子高生の森川ココネ。 最近は常に眠気に襲われ、家や学校でも居眠りばかり。 さらに、寝ると決まって同じ夢を見ていた。 そんな2020年の東京オリンピックが目前に迫ったある日、父親が突然逮捕され、東京へ連行されてしまう。 ココネは父がなぜ逮捕されたのか、その謎を解くために幼なじみの大学生モリオを連れて東京へ向かう。
【考察】
絵柄としては、細田守作品のようなキャラクター自身に陰影が少ないデザインが特徴的である。主人公のココネはどこでも昼寝をしてしまい、その夢の中と現実世界が何故かリンクして不思議な現象を現実でも巻き起こしてしまうような構造になっているのだが、そのせいか主人公がどんな危機的状況でも眠りに落ちてしまうナルコレプシーのような人物になってしまっていると感じる。虚構と現実が融けあうような作風は今敏作品と似た雰囲気を感じるが、夢の世界は昔父が作った物語の世界で、そこでの出来事や不思議な現象と、それが現実世界にどんな影響を及ぼすのかについての仕組みの説明を、アニメの絵や動きではなくキャラクターに全て台詞で喋らせているのが味気なく感じた。全ての夢と現実世界の出来事を理屈で説明づけようとしている影響か、却って虚構と現実の融合感が薄れて観客が冷静に考察・理解出来るようになっている。実際、現実世界で起きる不思議な出来事はココネの夢によって引き起こされているわけではなく、きちんと現実世界の理にかなっている因果によって起こっている事象であることが後に分かるようになっている。長尺でココネが見ている夢を観客に見せていた意味が薄れてしまうように考えられる。
19『夜明け告げるルーのうた』(アニメ映画)(2017年)監督:湯浅政明
【概要・あらすじ】
湯浅政明氏による、オリジナルの長編アニメ―ション作品。
寂れた漁港・日無町で、父と祖父の3人で暮らす男子中学生カイ。両親の離婚が原因で東京から引っ越してきた彼は、両親に対し複雑な思いを抱えながらも口に出すことができず、鬱屈した日々を送っていた。そんなある日、クラスメイトの国男と遊歩に誘われて人魚島を訪れたカイは、人魚の少女ルーと出会う。カイは天真爛漫なルーと一緒に過ごすうちに、少しずつ自分の気持ちを言えるようになっていく。しかし日無町では、古来より人魚は災いをもたらす存在とされていた。
【考察】
輪郭線が伸びやかで陰影がほとんどなく、二次元のアニメ的表現が目立つ作品で、2D作画なのに3Dのようなヌルヌルさを感じられる。同監督作品の『きみと、波にのれたら』のような水がブロック状になって動いたり浮いたりする描写が酷似している。更に、画面が分割するなど、漫画的な表現も多く見られた。閉塞的だった主人公の性格が、歌や自己開示を通して明るくなっていくが、中盤の部分では周囲の人間に焦点が当てられてほとんど登場せず、終盤まで空気のような存在感になっているように思われた。人魚が忌避される理由の一つに、人魚が動物を噛むと、下半身に尾ひれが生えて人魚のような姿にされてしまうという特性があるが、ルーが大量の保護犬に嚙みついた結果、マスコットキャラクターのような半犬半魚の「わん魚」という生物が生まれる。これによってその設定の悲壮さが薄れ、エンディングのオチに繋がっている。水中にいる時の表現では、もはやキャラクターの輪郭線が消滅し、ぐにゃぐにゃした色彩の塊によってキャラクターを表現している。
20『ねらわれた学園』(アニメ映画)(2012年)監督:中村亮介
【概要・あらすじ】
眉村卓のベストセラー小説『ねらわれた学園』の初のアニメ映画化作品であり、テレビアニメ『魍魎の匣』などを手がけた中村亮介の劇場初監督作品である。
鎌倉の中学校に通う関ケンジは、始業式の朝、密かに思いを寄せる春河カホリと言葉を交わすことができて有頂天になるが、ケンジの幼なじみでカホリの友人でもある涼浦ナツキは、そんな2人を複雑な思いで見つめる。 そしてその日、ケンジたちのクラスに京極リュウイチという謎めいた転校生がやってくる。 カホリは京極にひかれていくが、やがて京極の周囲で不思議な出来事が起こり始める。
【考察】
涼宮ハルヒと似た雰囲気を持つ平成の二次元オタク的作品の代表のような作風で、ラッキースケベ的な演出や主人公の股間回りのいじり(チャックが開いていることを好きな女子に指摘される、なぜかそこまで時間的に切羽詰まっている状況でもないのに、水泳の授業後に水着姿から着替えずにヒロインを救出しに来たのち、水着の中からケータイを取り出すなど)、分かりやすく鈍感かつ重要な場面で難聴になる主人公の演出から、やや時代感を覚える作品となっている。ヒロインが昨今の作品に比べて主人公に対し攻撃的なのも特徴で、主人公がヒロインを怒らせるようなことを言っては主人公を殴る蹴る、という構成が時代を感じさせる。本作のテーマとしては、携帯電話での疑似的な繋がりは人と本当に心を通わせたことになるのか、本当に人の心に寄り添うにはどうしたらいいのかということや、感情をノイズとし不要なものとする未来との対比、心は繋がらないけれど手は繋がる、という、人と人との繋がりについて意識して演出している。未来の世界がどうなったのか、主人公とヒロインの過去に何が具体的にあったのかなどは詳しく語られない。主人公は過去に一度死んだらしいものの、そこについての掘り下げがほぼ無いのが意外だった。画面全体が光のエフェクトを使用しており、特に幻想的なシーンの演出の際にはかなり強くエフェクトが使われているため、観客の目に負担がかかりそうだと予測する。少し話の流れが飛んだり、突拍子もない展開になったりすることもあるが、キャラクター造形や背景描写が魅力的なSF青春学園ものの作品となっている。
1『海がきこえる』(アニメ映画)(1993年)監督:望月智充
【概要・あらすじ】
氷室冴子による小説『海がきこえる』を原作として、1993年にスタジオジブリが制作したアニメーション映画作品である。
高知の中高一貫校を出て東京の大学に進学した主人公・杜崎拓は、吉祥寺駅のホームで高校時代に東京から転入してきた武藤里伽子によく似た女性の後ろ姿を見かける。その後、拓は同窓会のため高知へと帰省する道中、飛行機の中で里伽子と出会った高校時代の想い出を振り返る。
【考察】
物語の構造としては時系列通りではなく、直近の時間軸の間に過去回想が挟まれている構造となっている。クライマックスが最も未来なので、観客は杜崎と武藤の二人の関係がどうなるのか分からないまま、予想しつつ回想を見ることになる。素直になりきれず思っていることを正直に言えないような思春期のキャラクター造形や、噂話が広がるのが非常に早い地方の田舎の描写はとてもリアルで、二次元的なデフォルメの効いた表現などはあまり感じられず、大人になった観客が見てもまるで自分自身の過去のように思えるほど「等身大」という印象だった。未成年の飲酒のシーンがあるなどの理由からか地上波などでほとんど見ることが出来ない作品だが、思春期の青少年を緻密に描写した作品。同窓会で大人になった同級生たちの振る舞いから分かる登場人物の成長や、武藤と杜崎の間にある感情が何なのかが最後にようやく確定する、その演出の仕方も伏線があるなど、非常に巧みだと言える。演者たちの土佐弁も自然で、見ていて独特のリズムが作品のテンポに良い演出となっている。
2『耳をすませば』(アニメ映画)(1995年)監督:近藤喜文
【概要・あらすじ】
柊あおいによる漫画『耳をすませば』を原作とし、1995年にスタジオジブリが制作したアニメーション映画作品である。
読書好きの中学三年生・月島雫は、夏休みも勉強せずに図書館通いの日々を送っていた。雫は自分が借りる本の貸出カード履歴に、決まって「天沢聖司」の名前があることに気づき、素性の知れない彼を気にするようになる。ある日、雫が友達に『カントリーロード』の替え歌『コンクリートロード』の歌詞を見せていたところ、見知らぬ少年から馬鹿にされる。しばらくして、図書館へ向かう道中で出会った野良猫の後を追って見つけたアンティークショップで、『コンクリートロード』を馬鹿にした少年が天沢聖司だと発覚する。
【考察】
話全体の展開の速さが丁度良く、ダレない速さで進んでいく。観客としては天沢聖司の正体が誰なのか物語の序盤で何となく察しがつくが、作中で雫が天沢聖司の正体に確信を得るのは観客が察するよりも遅めになっている。これは雫の空想の中の「天沢聖司像」と「嫌味な少年」が結びつきづらかったためだと考えられる。雫や天沢を中心に、人間関係の他、将来の夢や目標に向かって邁進する若者の姿を中心に描いた作品であり、自分の持つ能力や才能の限界を知ることの恐怖や、それでも立ち向かう若者を周囲にいる大人が見守る構図が印象的である。才能を宝石の原石に例え、洞窟の無数にある石の中から原石を見つけ出そうとする描写が、雫たちの行動と準えられている。天沢が雫を自転車の後ろに乗せて朝焼けを見せに高台へ行くシーンでは、最初雫を乗せたまま急斜面を登ろうとするが、途中で雫が自転車から降りて、天沢の漕ぐ自転車を押しながら「お荷物だけなんていやだ」と二人で坂を乗り越えようとする場面は象徴的である。バイオリン職人になりたいという夢を追う天沢を応援するだけでなく、自分自身も夢を追いながら共に成長したいという雫の思いが表現された演出である。また、本作ではジブリ作品の要素が登場しており、「TOTORO」と書かれた本があったり、「porco Rosso」の文字が時計に刻まれていたり、魔女の宅急便のキキを思わせる魔女の飾りがあったり、土佐の段ボールがあったりなど、ファンサービスの一面を感じさせる。
3『百日紅〜Miss HOKUSAI〜』(アニメ映画)(2016年)監督:原恵一
【概要・あらすじ】
杉浦日向子による日本の漫画『百日紅』を原作として制作されたアニメーション映画。第12回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門第19回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門・審査委員会推薦作品に選ばれた。
浮世絵師・葛飾北斎の娘で、同じく浮世絵師として活躍した女性・お栄が、父・北斎や盲目の妹のお猶、浮世絵の仲間たちとともに生きた姿を、江戸の町の四季を通して描く。
【考察】
葛飾北斎の娘であることは作中でそれとなく観客に提示するのではなく、冒頭の本人のモノローグで発覚するのがインパクトを与える。作品の構造としてはプロローグとエピローグをお栄本人がモノローグ形式で語り、死後のことなどについては文字のみで語られる。作中の描写としては、お猶の最期の演出や、絵の始末、伸びる手や腕の話など、芸術家や表現者に共通するような、言葉ではっきりとは表現しない・出来ない非常に感覚的な演出・表現が多い。父と並ぶ芸術家としてのお栄、一人の娘として恋をするお栄、お猶の前での姉としてのお栄など、多面的な描写からお栄という人物がどんな人物なのか、その半生を表現している。お猶と舟に乗った際に、北斎の富嶽三十六景の有名な構図を用いるなど、数多くの作品が作品内で引用されている。北斎やお栄の人物像に詳しくない人でも「この絵を見たことがある」というフックになりえる演出となっている。お猶は盲目であるため、必然的に絵に関する話題よりも今体験していることを視覚でないもので感じ取る感覚が、絵を生業とするお栄にとって良い刺激であるように思われる。
4『ブラック・ジャック 劇場版』(アニメ映画)(1996年)監督:出崎統
【概要・あらすじ】
手塚治虫のマンガ『ブラック・ジャック』を原作とするアニメーション映画作品。OVAシリーズの流れを汲む作品で、原作にはない劇場用オリジナルストーリーとして製作された。
1996年のオリンピックにて、驚異的な新記録が次々に打ち立てられ、世界は「超人類の出現」として囃し立てる。「超人類」の活躍は芸術や科学の分野にもおよび、世界は飛躍的な進歩を遂げようとしていた。しかし同じ時、ブラック・ジャックは老人のように摩耗した内臓を持つ少女の死に立ち会い愕然としていた。超人類たちとこの少女との間に隠されていた陰謀の魔の手が、真相を突き止めようとするブラック・ジャックへ伸びていく。
【考察】
作中で使われた特徴的な演出を挙げると、サーモグラフィーの演出と劇画調のカットである。原作の手塚漫画のデフォルメ調の絵柄とは異なり、キャラクター全般の頭身が高く、影が斜線で描き込まれているなどのリアルさを重視したカットが要所で印象的に差し込まれている。サーモグラフィーの演出では、「超人類」の持つ異常な体温を冒頭から表現しており、ドーピングに似ていつつも、異なる身体現象を演出している。この作品のシナリオは、科学技術による人体のエンハンスメントに対する懐疑の目を向けるものであり、人体や生命を人類の手によって制御しようとすることへの烏滸がましさや、万能感の危うさを顕わにする、原作の手塚漫画の思想を踏襲するものとなっている。『ブラック・ジャック』においては珍しいことではないが、物語の舞台設定がアメリカを中心に海外になっており、生命や自然を制御する万能感は日本よりアメリカなどの欧米の価値観において強い印象があるため、舞台が日本ではないのだろうかとも考えられた。
5『HELLO WORLD』(アニメ映画)(2019年)監督:伊藤智彦
【あらすじ】
2027年の京都市に住む主人公・堅書直実が、10年後の2037年から来たという自分自身から、自分の住む世界がシミュレーター内に再現された過去の世界であると聞かされ、まもなく出会うことになる将来の交際相手・一行瑠璃へと降りかかる悲劇の運命を回避するよう依頼される。
【考察】
映画のほぼ全編をフルCGで描画しており、主人公たちが存在するデータ世界を表現しており、データ世界ならではの演出は、『サマーウォーズ』のOZの世界を連想させる。二人の堅書によって、作品の前半は一行との交流を深めていく様や堅書の成長が描かれるが、一行のキャラクターが観客に魅力的に感じられるようなエピソードが多く描かれており、堅書に感情移入しやすくなっている。舞台が京都なこともあり、デジタル世界のUIデザインが、伏見稲荷大社や狐面、八咫烏などの和風のものをモチーフにしている。また、細田守作品に見られる非現実世界を表現する際に用いられる赤い輪郭線も見られた。未来から来た堅書は、実際は脳死状態であり、結末としては堅書が一行にしようとしていたことは最新の時間軸では立場が丸ごと逆転しており、データ世界という非現実世界での出来事が三重の入れ子構造になっていることがラストの五秒ほどで観客にはっきり分かるようになっている。また、この最後の場面だけはフルCGではなく2Dのアニメ作画になっており、本当の現実世界であることが示されている。主人公の修行のシーンではほとんどダイジェストが使われており、『君の名は。』の新海監督の影響を感じられる。
6『ハウルの動く城』(アニメ映画)(2004年)監督:宮崎駿
【概要・あらすじ】
イギリスの作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズの小説『魔法使いハウルと火の悪魔』を原作として制作されたスタジオジブリのアニメーション映画作品。
魔法が存在する国で、ソフィーは父から受け継いだ古い帽子屋を営んでいた。ある日、ソフィーは街中で兵隊に絡まれ困っているところを魔法使いのハウルに助けられる。その晩、荒地の魔女がソフィーの営む帽子屋に訪れ、ソフィーに90歳の老婆になる呪いをかけてしまう。これまで通りの生活は出来ないと悟ったソフィーが家を出て荒地に向かうとハウルの城に遭遇し、掃除婦としてハウルの城に転がり込むことになる。
【考察】
ソフィーの姿が作中で何度も大きく変わっているのが印象的ではあるが、他にも作中に登場するハウルの城の住人は、ほとんどの全員が容姿や内面に大きな変化がある。ソフィーは老婆から星の色の髪を持つ女性になったり、ハウルは金髪から黒髪、時に牙と爪と翼を持つ怪物になったり、マルクルは老人の魔法使いの姿になり、荒地の魔女は老婆の姿に変わる。ほとんどのキャラクターが心境や立場、力などの変化に対応して容姿も変化していると考えると、ソフィーやハウルは自尊心や自立心、マルクルは外部の人間とハウルの弟子として振る舞うときには老人の姿に、荒地の魔女は魔法の力とサリマンとの力関係とを分かりやすくしたことや、ハウルと結ばれるヒロインが誰になるのかがはっきり示されているようにも考えられる。また、ハウルの髪色が金から黒に変わるのには、元は地毛が黒であるハウルと、サリマンに使える侍従が幼少の頃の金髪のハウルに似ていることから、金髪はあらゆる意味で美意識や価値観、執着がサリマンに支配されている状態で、黒髪になる頃にはその呪縛が解けた状態だと推測される。ヒンの体重が見た目の割に重かったり、喉を潰された犬のような声で鳴くことだったり、実は耳で軽々飛び上がれるといったことを踏まえると、ヒンの正体は、元はサリマンに仕えていた人間の魔法使いなのではないかと考えられる。字幕がないと分かりづらいが、映画の序盤にソフィーがハウルと出会う路地に入る場面から、国民が国の臨む戦争についての話題に触れている会話があり、作中の至るところで背景に戦争に向けて着実に動き出している描写が施されている。
7『北極百貨店のコンシェルジュさん』(アニメ映画)(2023年)監督:板津匡覧
【概要・あらすじ】
西村ツチカによる漫画作品『北極百貨店のコンシェルジュさん』を原作とするアニメーション映画作品。
新⼈コンシェルジュとして秋乃が働き始めた「北極百貨店」は、来店されるお客様が全て動物という不思議な百貨店。 ⼀⼈前のコンシェルジュとなるべく、フロアマネージャーや先輩コンシェルジュに⾒守られながら日々奮闘する秋乃の前には、あらゆるお悩みを抱えた客が現れる。そんな客たちの要望に応えながら、コンシェルジュとしての成長を描く。
【考察】
原作の漫画の記号的な絵柄を踏襲した、輪郭線が繋がっていないふわふわとした作画が特徴的な作品。輪郭線の色も薄目で、黒ではなく茶色などの別の色を使用しており、画面全体が明るい鮮やかな色使いなのも特徴の一つ。秋乃がコンシェルジュとして働き始めてから、場面のカットにベルの音が使われており、店内で接客をするのに目まぐるしく対応に追われる様子を演出している。世界観が不思議な背景を持っており、北極百貨店が出来た詳しい背景は語られないものの、別々の時代に人間の手によって絶滅した動物がVIPならぬVIAとして、人間のコンシェルジュから好待遇の接客を享受している様子は、これまでの人間の行いに対する皮肉や戒めであるように表現している。なぜ別々の時代に“既に絶滅した”と分かっている動物が百貨店にいるのか、なぜ動物たちが人間と同じ言葉を喋っているのか、北極百貨店とは一体何なのか、そういった謎についての詳細は語られず、観客に解釈を任せる形になっている。VIAの客は、そのほとんどがそれぞれの大切な存在のために百貨店に訪れており、その気持ちに寄り添うコンシェルジュの精神は、欲望とは反対の精神であると示され、新たな絶滅種を生み出さないために重要な精神であると訴えかけている作品と考えられる。キャラクターの担当声優に、芸能人声優や俳優、新人の声優を起用していないのも、近年のアニメ映画の中では特徴と言える。
8『BLUE GIANT』(アニメ映画)(2023年)監督:立川譲
【概要・あらすじ】
石塚真一、NUMBER8による日本の漫画『BLUE GIANT』を原作とするアニメーション映画作品。
ジャズに魅了され、テナーサックスを始めた仙台の高校生・宮本大。雨の日も風の日も、毎日たったひとりで、何年も河原でテナーサックスを吹き続けてきた。卒業を機にジャズのため、上京。高校の同級生・玉田俊二のアパートに転がり込んだ大は、ある日訪れたライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈と出会う。大は雪祈をバンドに誘う。はじめは本気で取り合わない雪祈だったが、聴く者を圧倒する大のサックスに胸を打たれ、二人はバンドを組む。そこへ大に感化されドラムを始めた玉田が加わり、三人は“JASS”を結成する。
【考察】
私自身音楽の良し悪しは分からない人間ながらも、見事な演奏だと感じるほどのジャズ演奏は観客の聴覚の期待に応える作品だと言える。ただ、実際に演奏をする場面ではCGのモーションキャプチャーを用いた作画になり、それが演奏シーン以外の作画と大きく異なるためにやや浮いてしまう印象はある。しかしそれでもなるべく画面上で浮かないように画面の角度や色合いが調整されているように感じる。演奏中に過去回想のカットが差し込まれることが何度かあるが、これは昨今の新海作品特有のダイジェストとは少し異なり、「音に感情を乗せる」ことの表現になっていると思われる。演奏中にカメラが奏者や会場を大きくグルグルと回る演出が特徴的である。音楽による演出だけでなく、サックスの口から響く音圧を細かい線で描画したり、会場の静かな熱気を火花のような描写で表現したりなど、視覚的な演出も豊富に込められている。最後の会場での演奏では、「BLUE GIANT」という名前の由来にふさわしく、青色をベースに宇宙や恒星をモチーフにしたジャズの空気感を演出している。会場外の夜の場面では青色をベースに、会場内ではオレンジなどの暖色系の色をベースに背景が描かれており、熱気と冷気がそれぞれの色で対応して対比の構造になっている。背景も含めて画面全体が球体のように大きく回るように動く演出は、同じ立川監督が監督をしている『モブサイコ100』でも見られる表現だと考えられる。ストーリーとしては、バンドメンバー三人で方針についてぶつかり合いながらも、互いの成長を見守り認めつつ夢の舞台を目指す物語となっており、王道な青春スポ根に似た内容になっている。
9『心が叫びたがってるんだ。』(アニメ映画)(2015年)監督:長井龍雪
【概要・あらすじ】
フジテレビ系列『ノイタミナ』で放送された『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のメインスタッフ「超平和バスターズ」が再集結して制作されたアニメーション映画作品。第19回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門・審査委員会推薦作品。
夢見がちでお喋りの少女・成瀬順は、山の上に建つ城の舞踏会へ行くことに憧れていた。下校中に城に向かうと、父が車で見知らぬ女性を助手席に乗せて城から出るところを目撃する。ラブホテルだと知らない順は、無邪気に父のことを母に話すと、「それ以上しゃべっちゃだめ」と黙らされ、離婚されて家を出る父は、縋る順を「全部おまえのせいじゃないか」と責める。そんな順は突然現れた“玉子の妖精”に、言葉を発すると腹痛になる呪いをかけられる。以来、口も心も閉ざしたまま高校二年生になった順は、担任から地域ふれあい交流会の実行委員に任命される。
【考察】
作品内において、やはり「言葉」や「伝えること」がかなり重要なキーワードとして設定されている作品だと感じる。言葉は時に人を傷つけ、どんなに後悔しても言ってしまった言葉を取り返すことは出来ない。自身の言葉によって家族がバラバラになってしまったトラウマを持つ主人公にとって、言葉というのは忌避の象徴であり、加えてそれを再び自分の迂闊さによって生み出してしまうかもしれないという恐怖を内包するものとして表現されている。また、自分の内面にある感情も、自分で言葉にしなければ相手に伝えることも叶わない。それは自分の心の内を相手に明かす行為でもあり、時には痛みも伴う行為となる。玉子は近所にある神社の供え物としての側面があるが、自身の殻の内側に存在する言葉にならない感情を黄身とし、自身の殻を割ってしまえば黄身が漏れて死んでしまう(=全てが破滅する)という暗示で、順は言葉を口にすることを自分で封印する状態になっている。主人公は身近な人間にあまり恵まれず、浮気などをする父親が全面的に悪いのにも関わらず父から「全部お前のせい」と責められ、母親からは無口になったことをみっともないと疎まれ、なぜそうなったのかの原因に理解を示されないといったところが描写されており、主人公に感情移入する観客としてはフラストレーションが溜まる場面も多い。しかし、いざ主人公が自分の内に籠った感情を打ち明ける場面の最後に出てきたのはメイン男子への告白の言葉であり、無口の原因になった両親については触れられない。王道な恋愛的な展開にはならず、メインの男子キャラが主人公とくっつくわけではなく、エピローグ的に別の主要男子キャラから告白されるのが少しリアルさを演出しているように見える。サブヒロインがメインヒーローと過去に交際経験がある、ラブホテルを物語の鍵となる場所にするなど、幼い子供向けの作品というよりは、中学・高校辺りの思春期を迎えた青少年向けの少しドロドロした人間描写が独特の作風を持つ。
10『さよならの朝に約束の花をかざろう』(アニメ映画)(2018年)監督:岡田麿里
【概要・あらすじ】
P.A.WORKS制作による日本の長編アニメーション映画。「ぴあ映画初日満足度ランキング」第2位。
人里離れた土地で、ヒビオルという布を織りながら静かに暮らす、長い寿命を持つイオルフの民の少女マキア。ある日、イオルフの長寿の血を求め、レナトと呼ばれる獣にまたがるメザーテ軍が攻め込んできたことから、イオルフの民の平穏な日々は崩壊する。親友や思いを寄せていた少年、そして帰る場所を失ったマキアは森をさまよい、そこで親を亡くしたばかりの、人間の孤児の赤ん坊を見つける。マキアは赤ん坊の母として子供を育てていくが、子供が成長してもマキアの姿は変わらないまま月日が流れていく。
【考察】
監督は、前に取り上げた作品『心が叫びたがってるんだ。』の脚本を務めた岡田麿里氏によるもので、ファンタジックな世界観の作風ながらも、主人公がかつて純粋な気持ちで自身を守ると約束してくれた血の繋がらない息子から、体格年齢が釣り合ってきた時、酔って正気ではないとは言え性的関係を持ちかけられる、主人公の幼馴染は想い人とは別の相手と無理やり結婚させられて子供を生まされるなど、性関連のドロドロした少しグロテスクな人間関係描写が似通っていると感じられた。生命の連鎖や、長命種による年齢感の逆転現象など、『葬送のフリーレン』で主題にされるような要素がある。作品全体の背景美術はスケールが大きく、地方によって統一感があって、観客から見ても世界観の想像がしやすくなっている。ただ世界観が作りこまれていると思われる分、途中から説明の少ない専門用語が増えて少し難解に感じられる。マキアは拾った赤子の髪色に合わせて同じ色に髪を染めるが、数年後にイオルフの民の同胞に誘拐され長らく幽閉された際に、染められなかった部分を残して染められた部分だけを切り落とされる場面があるが、染めていた部分が丁度息子と過ごした年月分が染められた長さで、地毛の部分の長さが息子と離れ離れになって一イオルフの民として、「母」の要素が徐々に失われていく描写がされている。息子の子孫までも見守り続けることを決めたマキアが家を訪問する場面では、かつて同じ家で暮らしていたこともあり、同ポの表現を用いて、過去との差異を表現している。同ポの技法をよく使う監督として細田守が挙げられることが多いが、長い年月をモチーフとする本作では効果的であると思われる。
11『金の国 水の国』(アニメ映画)(2023年)監督: 渡邉こと乃
【概要・あらすじ】
岩本ナオによる同名の漫画作品を原作として制作されたアニメーション映画作品。原作漫画は2016年、「このマンガがすごい!オンナ編1位」を受賞した。
王女サーラが住む金の国ことアルハミトと、貧しい建築士ナランバヤルの住む水の国ことバイカリは、些細な原因で戦争をして以来、100年間国交を断絶していた。敵国同士出身のサーラとナランバヤルは、国家間の思惑に巻きこまれて偽りの夫婦を演じることとなる。サーラの国の深刻な水不足と、自国の経済的衰退を案じたナランバヤルは、二国間の国交を回復させようと動き出す。
【考察】
出て来る言葉こそ暗殺などのきな臭いものが多いものの、物語の展開としては終始残酷なものは無く、サーラとナランバヤルの関係値も穏やかで微笑ましいもので、二人の間に何かしらの誤解があったとしても、観客にだけ分かる形で誤解が解けるように演出してあったり、比較的早急に解決していったりしていくので、観客にかかる精神的なストレスが低い作品だと考えられる。小さな問題が発生してストレスに感じたとしても、早急に、観客の予想を超える方法で解決していき、それが立て続けに何度もあるため、観客の満足度は高いと思われる。両者の間に育まれるお互いを思いやる穏やかな愛と、主にナランバヤルの知能と行動力から物語が展開し、サーラはナランバヤルの仕事を見守りつつ、バイカリに行って図らずも国交の手助けになるようなことをしていたり、序盤にある伏線も終盤で回収されたりなど、「こういうのでいい」と思わせるような作品となっている。ナランバヤルの容姿はそこまでイケメンといった派手なものではなく、あくまで一般家庭出身の一学者としてデザインされているのも特徴の一つである。例を挙げるならば『ワンパンマン』のサイタマのような顔立ちをしている。サーラの場合、一応アルハミトの姫ではあるのだが、第93王女であるため、ほとんど姫として強力な権力を持つわけではない。純真ながらやや自己肯定感の低い心を持つ彼女の性格によって、些細なことから国交が回復する伏線を回収した時には、物語が綺麗に収まっており、完成度の高いものとなっている。ただ、文字列が独特で字幕がないと固有名詞をはっきりと把握出来ないことがある。
12『AKIRA』(アニメ映画)(1988年)監督:大友克洋
【概要・あらすじ】
大友克洋による同名の漫画を原作とした1988年7月16日公開の長編アニメーション映画。監督を原作者の大友氏が務める。
新型爆弾の爆発により旧東京が壊滅したことを発端に勃発した第3次世界大戦から38年が経過した2019年、爆心地東京は東京湾を埋め立て、そこに新たな大都市「ネオ東京」として再興し、繁栄を取り戻しつつあった。暴走族として練り歩いていた少年たちの一人である鉄雄はバイクで疾走中、突然飛び出してきた老人のような少年と事故を起こしてしまう。駆けつけた軍は少年と彼に接触した鉄雄を連れ去っていった。その騒動下で金田は軍に対抗するゲリラと知り合い、軍との戦いに巻き込まれていく。
【考察】
作画が、公開された年代に反しているオーパーツ的な作品と言われているが、特に序盤で金田がバイクで横滑りしながら停車する場面は、本作を見たことがないにしても国内外問わず様々な作品でオマージュされており、影響力の強さが窺える。物質の質感を無視した動きではなく、出来る限りその質感や現象のリアルな描画がされており、走り去るバイクのランプの光の尾を引く表現や、ヒビ割れるアスファルトの地面、爆発など、当時のアニメーション作品の中ではリアルに徹底しているのも特徴である。序盤で現れる老人のような顔の子供は、『ブラック・ジャック 劇場版』のように、人間の手によって超常的な力を手に入れさせられ、その引き換えに陥った容姿であろうことは観客にも想像しやすい。周囲に対し劣等意識があった鉄雄が、ひょんなことから超能力を手に入れたことにより、肥大化した自己承認欲求から周囲を衝動的に破壊して見下しながら回る様がリアルで痛々しい。超能力に目覚めたものの中には容姿に変化が現れたり、身体の一部が不自由になったり、悪夢のような幻覚を見るなど、心身に深刻な損傷を与えるものがほとんどで、無理に覚醒させる行為は観客にとって悪印象しかないのだが、現に倫理的な問題から実験に反対する軍の人間と人類の発展の為に推し進めようとする科学者の間でジレンマが起こっており、前者が生き残って後者が死ぬことからも作品の指針が読み取れる。浮遊したり、レーザー照射を歪ませたり念動力を用いて地形を変形させたりといった超能力を用いた異能力バトル描写に関しても、後の作品に残した影響は大きいと思われる。
13『パーフェクトブルー』(アニメ映画)(1998年)監督:今敏
【概要・あらすじ】
竹内義和の小説『パーフェクト・ブルー 完全変態』を原案として制作されたアニメーション映画作品。内容は原作と大きく異なる。
アイドルグループ「チャム」のメンバーで活動していた霧越未麻は、ドラマの出演をきっかけに女優の魅力に気づき、脱退宣言をして女優に転身する。アイドルのイメージから仕事になかなか恵まれない状況が続き、イメージを変えようと事務所の社長である田所は過激なシーンや写真集などの仕事も積極的に出させようとするが、そんな折に事務所に送られてきた手紙が爆発するという事件が起こる。また、同時期に「未麻の部屋」と呼ばれるサイトが立ち上がっていることを知る。しかし、未麻本人しか知り得ないようなことも詳細に書かれた、まるで今もアイドルを続けている自分が書いているかのようなその内容に、誰かに監視されているのではないかという疑心暗鬼に陥り始める。
【考察】
今敏監督作品特有の「現実と虚構が融け合う」特徴を有する作品と言える。女優の仕事の一環で自身が汚れていく侵食の感覚と、あのままアイドルを続けていたらと思う幻想、鏡の反射や『エヴァンゲリオン』でも見られるような目覚めのバンクシステムなどから、今未麻がいる世界が夢なのか現実なのか、区別が観客目線でもつきづらいやや難解な作品となっている。作品の実体はサイコホラー作品であり、未麻にまつわる一連の事件の犯人は、状況から見ると意外と的が絞りやすい作品となっている。女優の未麻がストリップのシーンを撮影しているのに対し、幻想のアイドルのミマは短いスカート姿で跳ね回るもスカートの中が見えることはほぼない。ミマがピザ屋の配達員となって写真家を殺害するシーンの後、未麻が目覚めてクローゼットの中に血がついたピザ屋の制服を発見する場面では、殺害したミマと本物の未麻は別人だが、映像の繋がりで本物の未麻が持つ殺意から本当に衝動的に犯行に至ったのではないかと観客が疑ってしまう構造となっている。本人ではない別人が運営している非公式のホームページだったり、未麻が演じる役の少女も姉に成り代わる妹の役だったりと、「自分ではない誰か、別人に成り代わる」ことがキーワードになっている。
14『岬のマヨイガ』(アニメ映画)(2021年)監督:川面真也
【概要・あらすじ】
柏葉幸子による日本の児童文学『岬のマヨイガ』を原作として制作されたアニメーション映画作品。登場人物設定や舞台などは原作と異なる。
東日本大震災で多くの犠牲者が出た岩手の狐崎。家出少女のユイは、避難所の裏の神社で、幼い少女のひよりと出会う。両親を交通事故で失い、身を寄せた親戚の家で震災に巻き込まれ、二度も家族を失ったひよりはショックから声が出せなくなっており、ユイは彼女のことを気にかけていた。身を寄せる場がないのはユイも同じだったが、避難所で出会った老女キワがユイとひよりを孫と偽って引き取ることを決め、岬に立つ古民家で3人は共同生活を行うことになる。
【考察】
東日本大震災関連の背景がある作品であるが、河童や地蔵といった妖怪のような、人間に協力してくれるふしぎっとや、人をもてなすことに喜びを覚えるマヨイガといった、作品全体に暗すぎない愉快な雰囲気をもたらすキャラクターや存在がいるおかげで、総合的に震災による喪失の悲しみに寄り添う優しい印象の作品となっている。被災後ゆえに地域の人々と協力して生活していく様子や、自分だけ生き残ったことによるサバイバーズ・ギルトの想いが町の中で渦巻いている様が描写されている。ひよりの声は終盤まで出ることはないが、それが物語の中で、登場人物たちの踏む段階の一つの目安として示されている。「アガメ」や「あったずもな」などの東北の方言由来の言葉が温かな雰囲気を醸し出すのにも一役買っていると思われる。なぜキワが二人を引き取ったのかの詳細な理由が分からないのが少し引っかかる。
15『ホッタラケの島 〜遥と魔法の鏡〜』(アニメ映画)(2009年)監督:佐藤信介
【概要・あらすじ】
フジテレビ開局50周年記念作品として制作されたCGアニメーション映画。第33回日本アカデミー賞:優秀アニメーション作品賞を受賞している。
子供の頃は大切にしていたが、いつしか放置されてしまったおもちゃや絵本などの宝物。そうした“ほったらかし”にされたものを集めて作られた不思議な「ホッタラケの島」にまつわる昔話がある。幼い頃に母からもらった形見の手鏡を、昔話の儀式に沿って見つけ出そうとする女子高生の遥は、誤って家の鍵を不思議なきつね・テオに持ち去られてしまう。その後を追う内に、遥は「ホッタラケの島」に迷い込む。
【考察】
フル3DCG作品で、昔話の場面以外は基本的に日本風のディズニー映画のような雰囲気を持つ作品。概ね良作だが、主人公がホッタラケの島に飛ぶ飛空艇を見ていきなり「誰?」と言ったり(ホッタラケの島を支配する男爵が乗っている、一応飛空艇には男爵の顔に似た装飾が施されている)、指名手配される主人公たちのいる場所をどうやって追っ手が突き止めたのかが分からなかったりと、辻褄が説明されず観客が疑問を抱く部分があるように思われる。また、テオに絡む三人組の狐も、そこまでしてテオに執着して追い回す理由については触れられず、よくある“いじめっこ”や、“ピンチの時には協力してくれるタイプの悪ガキ”のようなキャラクターとしての要素が全面に描かれているように見られた。細かいながらも「何故そうなったのか」が分からず、気になる箇所がわずかに見受けられる。『不思議の国のアリス』と似たような話の流れになっており、細かい所やご都合で処理されているのかと思われる点もあり、主人公が人間であることをホッタラケの島の住人の狐に知られぬよう仮面を被るのだが、体格や身体構造が明らかに狐とは異なるものであるにも関わらず、仮面を外した時にやっと人間であることがバレるという、顔でしか人間を判別出来ない視力なのかと思いきや、数十メートル離れた場所にあるものを正確に見て判別することが出来る離れ業をやってのけるなど、合理性が見えず、引っかかる箇所が挙げられる。
16『ホーホケキョとなりの山田くん』(アニメ映画)(1999年)監督:高畑勲
【概要・あらすじ】
いしいひさいち原作の漫画『ののちゃん』を元に制作されたジブリのアニメーション映画作品。作品内容は原作の4コマエピソードを繋ぎ合わせたオリジナルストーリーである。『朝日新聞』朝刊の4コマ漫画作品として『となりのやまだ君』の題で連載が開始された。同作者の『おじゃまんが山田くん』を意識して付けた名前だったが、主人公・のぼるよりも妹・ののちゃんの人気が高かったため、1997年に題と主人公が変更された。
夫・たかし、妻・まつ子、祖母・しげ、長男・のぼる、長女・のの子が暮らす山田家。時にはアクシデントやトラブルを交えながらも、ありふれた普通の毎日を送る5人の日常の姿を描いた作品。
【考察】
『あたしンち』をアニメ化した際と似たような雰囲気の映像化だが、輪郭線が繋がっておらず全体的に丸っこいふわふわした柔らかい雰囲気の絵柄で、背景が描き込まれることも稀で、原作の絵柄を踏襲していると思われる。主に四コマ漫画の内容をいくつか繋げたようなエピソードが一塊になり、それが季節や時期を変えて何個も送られていく形となっている。しかし、冒頭や隙間ではアニメーション作品ならではの、ヌルヌルとした美麗な作画でダイナミックな動きをしたり、少しシリアスな時にはキャラクターの頭身が上がって一気にリアル調になったりするシーンがある。それでも作品全体の空気感を壊すほどのものではなく、冒頭、合間、エピローグではアニメで描画される規模が広くなり、やや長めなエピソードが差し込まれる。空想世界のような演出もあるが、最後にはこれからも日常が続いていくような、出先で外食に何を食べようか決めながら作品の主題歌が流れて終わる終わり方は、視聴後にきれいに締めくくられていると観客が感じるような演出となっている。一つのパートが終わるごとに、有名で日常に根差した俳句が詠まれる演出で、グダグダと続いて垂れ流している印象を与えぬよう引き締めている。
17『雲のむこう、約束の場所』(アニメ映画)(2004年)監督:新海誠
【概要・あらすじ】
『ほしのこえ』に続く、新海監督の2作目の劇場用アニメーション映画である。
米軍統治下の日本、青森に暮らす中学生の藤沢浩紀と白川拓也は、海峡を挟んだ北海道に立つ巨大な塔に憧れ、いつかその塔を目指すため、廃駅跡で密かに飛行機の組み立てに勤しんでいた。ある夏休み、2人はもうひとつの憧れの存在・同級生の沢渡佐由理に、飛行機の秘密について打ち明ける。3人は一緒に塔を目指す夢を共有し、ひと時の幸せな時間を過ごすが、中学3年の夏、佐由理は理由を告げることなく突然転校してしまう。
【考察】
昨今の新海作品の特徴の共通点として、レンズフレアなどのカメラ的な演出、改札やドアなどの境界線がある場所の足元のアップカット、主人公のかなり長めのモノローグなどが見受けられる。いわゆる「セカイ系」作品の代表例として挙げられる作品で、ヒロインの体質が世界の均衡や平和に多大な影響を与える設定は、『天気の子』とも繋がるテーマのように思える。また、ヒロインが見続ける夢の中の世界と現実世界がリンクしてやり取りが出来る場面があるが、このシーンは『君の名は。』にて、三葉と瀧が隕石湖のほとりで再開をするシーンに非常によく似た演出となっている。クライマックスで主人公とヒロインが飛行機に乗って塔に近づいた際には、空の様々な青色が何重にも代わる代わるステンドグラスのようなデジタルチックな演出によって、観客に伝わりづらい多重宇宙構造の実感を得られるものとなっている。
18『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』(アニメ映画)(2017年)監督:神山健治
【あらすじ】
岡山県倉敷市・児島で、車の改造ばかりしている父親モモタローと2人で暮らす女子高生の森川ココネ。 最近は常に眠気に襲われ、家や学校でも居眠りばかり。 さらに、寝ると決まって同じ夢を見ていた。 そんな2020年の東京オリンピックが目前に迫ったある日、父親が突然逮捕され、東京へ連行されてしまう。 ココネは父がなぜ逮捕されたのか、その謎を解くために幼なじみの大学生モリオを連れて東京へ向かう。
【考察】
絵柄としては、細田守作品のようなキャラクター自身に陰影が少ないデザインが特徴的である。主人公のココネはどこでも昼寝をしてしまい、その夢の中と現実世界が何故かリンクして不思議な現象を現実でも巻き起こしてしまうような構造になっているのだが、そのせいか主人公がどんな危機的状況でも眠りに落ちてしまうナルコレプシーのような人物になってしまっていると感じる。虚構と現実が融けあうような作風は今敏作品と似た雰囲気を感じるが、夢の世界は昔父が作った物語の世界で、そこでの出来事や不思議な現象と、それが現実世界にどんな影響を及ぼすのかについての仕組みの説明を、アニメの絵や動きではなくキャラクターに全て台詞で喋らせているのが味気なく感じた。全ての夢と現実世界の出来事を理屈で説明づけようとしている影響か、却って虚構と現実の融合感が薄れて観客が冷静に考察・理解出来るようになっている。実際、現実世界で起きる不思議な出来事はココネの夢によって引き起こされているわけではなく、きちんと現実世界の理にかなっている因果によって起こっている事象であることが後に分かるようになっている。長尺でココネが見ている夢を観客に見せていた意味が薄れてしまうように考えられる。
19『夜明け告げるルーのうた』(アニメ映画)(2017年)監督:湯浅政明
【概要・あらすじ】
湯浅政明氏による、オリジナルの長編アニメ―ション作品。
寂れた漁港・日無町で、父と祖父の3人で暮らす男子中学生カイ。両親の離婚が原因で東京から引っ越してきた彼は、両親に対し複雑な思いを抱えながらも口に出すことができず、鬱屈した日々を送っていた。そんなある日、クラスメイトの国男と遊歩に誘われて人魚島を訪れたカイは、人魚の少女ルーと出会う。カイは天真爛漫なルーと一緒に過ごすうちに、少しずつ自分の気持ちを言えるようになっていく。しかし日無町では、古来より人魚は災いをもたらす存在とされていた。
【考察】
輪郭線が伸びやかで陰影がほとんどなく、二次元のアニメ的表現が目立つ作品で、2D作画なのに3Dのようなヌルヌルさを感じられる。同監督作品の『きみと、波にのれたら』のような水がブロック状になって動いたり浮いたりする描写が酷似している。更に、画面が分割するなど、漫画的な表現も多く見られた。閉塞的だった主人公の性格が、歌や自己開示を通して明るくなっていくが、中盤の部分では周囲の人間に焦点が当てられてほとんど登場せず、終盤まで空気のような存在感になっているように思われた。人魚が忌避される理由の一つに、人魚が動物を噛むと、下半身に尾ひれが生えて人魚のような姿にされてしまうという特性があるが、ルーが大量の保護犬に嚙みついた結果、マスコットキャラクターのような半犬半魚の「わん魚」という生物が生まれる。これによってその設定の悲壮さが薄れ、エンディングのオチに繋がっている。水中にいる時の表現では、もはやキャラクターの輪郭線が消滅し、ぐにゃぐにゃした色彩の塊によってキャラクターを表現している。
20『ねらわれた学園』(アニメ映画)(2012年)監督:中村亮介
【概要・あらすじ】
眉村卓のベストセラー小説『ねらわれた学園』の初のアニメ映画化作品であり、テレビアニメ『魍魎の匣』などを手がけた中村亮介の劇場初監督作品である。
鎌倉の中学校に通う関ケンジは、始業式の朝、密かに思いを寄せる春河カホリと言葉を交わすことができて有頂天になるが、ケンジの幼なじみでカホリの友人でもある涼浦ナツキは、そんな2人を複雑な思いで見つめる。 そしてその日、ケンジたちのクラスに京極リュウイチという謎めいた転校生がやってくる。 カホリは京極にひかれていくが、やがて京極の周囲で不思議な出来事が起こり始める。
【考察】
涼宮ハルヒと似た雰囲気を持つ平成の二次元オタク的作品の代表のような作風で、ラッキースケベ的な演出や主人公の股間回りのいじり(チャックが開いていることを好きな女子に指摘される、なぜかそこまで時間的に切羽詰まっている状況でもないのに、水泳の授業後に水着姿から着替えずにヒロインを救出しに来たのち、水着の中からケータイを取り出すなど)、分かりやすく鈍感かつ重要な場面で難聴になる主人公の演出から、やや時代感を覚える作品となっている。ヒロインが昨今の作品に比べて主人公に対し攻撃的なのも特徴で、主人公がヒロインを怒らせるようなことを言っては主人公を殴る蹴る、という構成が時代を感じさせる。本作のテーマとしては、携帯電話での疑似的な繋がりは人と本当に心を通わせたことになるのか、本当に人の心に寄り添うにはどうしたらいいのかということや、感情をノイズとし不要なものとする未来との対比、心は繋がらないけれど手は繋がる、という、人と人との繋がりについて意識して演出している。未来の世界がどうなったのか、主人公とヒロインの過去に何が具体的にあったのかなどは詳しく語られない。主人公は過去に一度死んだらしいものの、そこについての掘り下げがほぼ無いのが意外だった。画面全体が光のエフェクトを使用しており、特に幻想的なシーンの演出の際にはかなり強くエフェクトが使われているため、観客の目に負担がかかりそうだと予測する。少し話の流れが飛んだり、突拍子もない展開になったりすることもあるが、キャラクター造形や背景描写が魅力的なSF青春学園ものの作品となっている。
4年 上田菜摘
RES
1 『ゴーストフィクサーズ』(漫画)作:田中靖規
あらすじ
御厨ヶ丘ニュータウン。ここはある事象を境に、非現実的現象【GHOST】の坩堝と化した!そんな町に住む中学生ひふみは、ある日引っ越してきた少女と出会い…。『サマータイムレンダ』の田中靖規が描く、非現実校正アクション!
考察
「GHOST」と呼ばれる怪異や怪現象をフィックスしていく組織という設定が、王道かつ新しいため少年誌に適した設定だと感じた。過去作のキャラクターも出てくるため、クロスオーバー作品としても楽しむことができる。まだ完結していないものの、現時点でも緻密に伏線が張り巡らされていることがわかる考察のしがいがある作品。
2『 このクラスにギャルはいない』(漫画)作:時田時雨
あらすじ
優等生の七瀬さん。ギャルに憧れ大胆なイメチェンをし、ドキドキの高校デビューを果たすことに。しかし進学校のためギャルがおらず、ヤンキーの間宮くんと一緒に2人で浮いてしまい…!?「赤面しないで関目さん」の時田時雨が贈る、すれ違いコメディ!
考察
大人しかった子が高校デビューでギャルになるという設定は見たことのあるものだが、登場人物全員に同じようなギャップがあるという点が面白い。また、ヤンキーやギャルなど自由奔放なイメージを持たれがちな姿をしているものの、全員が根が真面目なため、健全なゆるギャグ作品として安心して楽しむことができる。
3 『やがて君になる』(漫画)作:仲谷鳰
あらすじ
人に恋する気持ちがわからず悩みを抱える新入生・小糸侑は、生徒会の先輩・七海燈子が告白を受ける場面に遭遇する。誰からの告白にも心を動かされたことがないという燈子に共感を覚える侑だったが、やがて燈子から思わぬ言葉を告げられる。「私、君のこと好きになりそう」
考察
燈子と侑の複雑な関係、心理が繊細に描かれた作品。「好き」を足枷に感じているにもかかわらず、侑に「好き」をぶつけた上で、「私のことを好きにならないで」と言う燈子は、ずるいものの憎めないキャラクターとなっている。沙弥香の「燈子の一番でありたい、今の関係が一番居心地が良い」という感情もリアルで、実在する人物の物語を見ているように引き込まれる。
4 『フラレガール』(漫画)作:堤翔
あらすじ
「俺の愛人になってください!」ド失礼な告白を同級生の青山くんからかまされた赤坂さんのコンプレックスは、「あり余る色気」。常に発されるフェロモンが原因で、大好きだった彼氏にもフラれ、恋愛に臆病になってたけど…!? ハプニング満載! 無自覚エロスに翻弄★ ラブコメ待望の第1巻!
考察
よくある恋愛漫画かと思いきや、青山が響の破壊力によって本当に液体と化したり、幽霊が実在していたりと、日常に当然のようにファンタジーが入り込んでいる作品。結果、どんなぶっとび設定でも読者が受け入れられるようになっており、作者がやりたい放題やっても作品の世界観が壊れない。この演出を実写で行うと違和感しかないため、2次元内で展開するからこそ面白さが活きる作品だと感じる。
5 『煙たい話』(漫画)作:林史也
あらすじ
高校卒業以来、一度も会うことのなかった武田と有田。ある雨の日に一匹の猫を拾ったことから、二人の関係は変わり始める。恋愛感情とは違う。一緒に暮らす理由もない。でも、君の隣は心地がいい。そんな気持ちに向き合い、二人が出した答えとは――。自分たちだけの関係を模索しながら生きる人々の日々を綴った物語。
考察
ゆるっとした日常の中に、どこか仄暗い雰囲気の漂っている。様々な人物の視点から描かれる、普段意識しないような世の中への小さな違和感を言語化しており、今まで気づかなかったことに気づけるような作品。「友達」でも「恋人」でもないけれど一緒に暮らす武田と有田の、独特の居心地の良さがよく伝わってきて、ほっと息抜きになるような感覚がある。
6 『可愛くてごめん』(漫画)作:島袋涙亜、HoneyWorks
あらすじ
HoneyWorksの大人気楽曲『可愛くてごめん』の"ちゅーたん"が主人公の青春物語!アイドルユニット『LIP×LIP』の愛蔵が大好きな高校1年の中村千鶴(ちゅーたん)は同担拒否なオタク。1人でも贈り物をしたり、イベントに行ったり、全身全霊で愛蔵を推す毎日は超幸せ!推し活資金を稼ぐためのメイド喫茶のバイトでも、可愛くて気の利く"ちゅーたん"は大人気で充実の日々を送っていたけど…。そんな彼女を妬むメイドが現れて!?
考察
推し活に全力を注ぐ少女の話。本来の姿は地道めのメガネ少女だが、メイクの力で人気のメイドカフェ店員になれるという設定がある。メガネっ子がメガネを取ると美少女であるという設定は山ほど見たが、自身の努力によってかわいくなるという点が好感を持てる。推し活も自分で稼いだお金を使って真っ当に行っており、全オタクの鑑である。
7 『さよなら、チルドレン』(漫画)作:ひろさきころも
あらすじ
「腹部貫通症候群」思春期の子どもはおなかに穴があく。成長につれて自然とふさがり、それが大人になった証でもあるそんな世界。活発な女子中学生・朝比奈ちまきを中心に子どもとオトナの間で揺れ動く心をまっすぐに描いたボーイ・ミーツ・ガール青春群像劇。
考察
腹部貫通症候群という衝撃的なファンタジー設定があり、思春期特有の無力感や不安感のメタファーとなっている。腹部に空いた穴が大きくなりすぎると存在そのものが消滅してしまうことが物語の大きな鍵となっている。思春期にしかないような感情と存在消滅を巡って自分たちの生き方を模索していく少年少女の群像劇である。
8 『リィンカーネーションの花弁』作:小西幹久
あらすじ
前世を、掘り起こせ。決別せよ!無才と罵られる日々に!!目覚めよ!!!自身に眠る、前世の才能に!!!!宮本武蔵の剣と数学者の超高速演算、シリアルキラーの大虐殺がいきなり激突する、天才異才鬼才続々登場の異能バトル!
考察
「偉人は才能を持っていたから歴史上に名が残っている」という、ありそうでなかった視点から描かれるバトルファンタジー。戦った相手が味方になったり、仲間が敵になったりと敵と味方がどんどん入れ替わっていくことから、単なる勧善懲悪ではなく、争いがあくまで思想の違いによるものであることが分かる。「偉人」という人物をテーマにした物語とマッチしているのではないかと思う。
9『 君が死ぬまで恋をしたい』(漫画)作:あおのなち
あらすじ
生きたいも、好きも、全部君が教えてくれた 身寄りのない子供を戦争用の兵器として育てる学校に通う少女たち。人を殺すための授業、誰が死んでも悲しむことさえままならない日常。自分の境遇を受け入れられずにいる14歳のシーナはある夜、血まみれの小さな女の子・ミミと出会った――平穏を願う怖がりなシーナと笑顔で戦争に向かう不死のミミ。死と隣り合う世界で2人の少女が見つけた、あどけない願いの物語。
考察
魔女が戦争兵器として使われている、という重い設定のダークファンタジー。絵が美しく、だからこそ戦ってボロボロになった少女たちの姿、戦争の残酷さが引き立っている。また、不老不死であるミミは他人が死ぬことに無沈着であったが、シーナとの出会いによって人間としても成長していく。良い変化もあるが、このままでは置いていかれることの辛さも学ぶことになるため、ミミの今後の変化も楽しみである。
10 『みなと商事コインランドリー』(漫画)原作:椿ゆず 漫画:缶爪さわ
あらすじ
エアコンの設備もない古びたお店「みなと商事コインランドリー」を祖父から受け継いだ湊晃(みなとあきら)。アラサーで元社畜の晃は地元に愛される店をのんびりと営んでいた。ある日高校生の香月慎太郎(かつきしんたろう)が客として来店する。年の差を越えて仲良くなるふたりだったが、晃がゲイであることがふとしたことから慎太郎にバレてしまい…?
考察
「ゆるキュン」というワードが似合う、ほのぼのした作品。晃とシンの出会いは偶然かと思いきや、シンが10年前から晃を想い続けていたことが発覚したことでシンへの印象がガラリと変わった。作中で誰も同性愛に対する変な気遣いや嫌悪感を示すことがなく、当然のようにごく当たり前のことだと受け入れている。差別的表現への心配がないことからも、「ゆるさ」を安心して楽しむことができる。
11『 ババンババンバンバンバンパイア』(漫画)作:奥嶋ひろまさ
あらすじ
老舗銭湯で住み込みバイトをする蘭丸。彼の正体は齢450の吸血鬼。究極の味わいである「18歳童貞の血」を求め、銭湯の一人息子・李仁くん(15歳・童貞)の操を守り続けている。ところが、思春期を迎えた李仁くんに異変発生!! 同じクラスの女の子に一目ぼれしてしまったのだ!!「李仁くんの童貞は絶対に死守する!!」蘭丸、決死の童貞喪失阻止作戦が幕を開ける…!!
考察
画力の高さを存分に活かした有名作品のオマージュシーンが面白い。登場人物全てが誰かしらとアンジャッシュ状態に陥り、キメ顔で盛大な勘違いを起こしている。劇画調の細かい描き込みは「バンパイア」というモチーフに合っているほか、ギャグシーンを引き立てているように感じる。
12 『ババンババンバンバンバンパイア』(アニメ)原作:奥嶋ひろまさ 監督・脚本:川崎逸朗
あらすじ
創業60年の老舗銭湯「こいの湯」で住み込みバイトをしている森蘭丸。
彼は、人の生き血を啜る正真正銘のバンパイアだった。蘭丸の目的は、自分の命を救ってくれた「こいの湯」の4代目・立野李仁への恩返し。そして…彼の「18歳童貞の血」を味わうこと…!現在15歳の李仁が熟すまで、あと3年。しかし入学早々、李仁は同級生の女子に一目惚れしてしまう。はたして蘭丸は、念願の「18歳童貞の血」を守り通すことができるのか…!?
考察
アニメ化したことで登場人物のセリフの細かいニュアンスが分かり、漫画とは違った味がある。しかし、描き込みの細かさや独特のテンポ感による面白さは漫画に比べると劣ってしまっているように感じる。とはいえ、森兄弟のバトルシーンは迫力があり、躍動感やカメラワークは漫画では演出できないものだと感じた。
13『 ミギとダリ』(漫画)作:佐野菜見
あらすじ
舞台は、1990年神戸市北区。アメリカの郊外をモデルに造られたニュータウン、オリゴン村。裕福な住民が暮らすこの町に、"ひとりの"少年が養子としてやってくる。少年の名は秘鳥(ひとり)。美しく聡明な少年・秘鳥に、園村夫妻は魅了されるが、秘鳥には、大きな秘密と恐るべき目的があった――。スタイリッシュな高校生を描いた『坂本ですが?』から約2年。佐野菜見が描くミステリアスな悪童の物語。
考察
なんともいえないシュールな空気感の作品だが、サスペンス要素も含まれるため、2通りの楽しみ方ができる。2人で1人を演じるという設定がまず面白いが、片方の隠れ方、隠れていることに気づかない夫婦など、ツッコミどころや笑いどころが数多くある。読み始めはどういう反応をすれば良いのかわからないため、読んでいくうちに面白さがわかるいわゆる「スルメ系」の作品。
14『 琥珀の夢で酔いましょう』(漫画)原作:村野真朱 漫画:依田温 監修:杉村啓
あらすじ
仕事が認められず苛立っていた剣崎七菜は、偶然入った居酒屋「白熊」で「クラフトビール」に出会う――。
考察
クラフトビールについて詳しくなれる。私自身ビールのおいしさが分からなかったが、この作品を通してビールに興味を持ち、様々なクラフトビールを飲んでみた。おすすめのペアリングも登場し、合わせるものによってどのようにおいしさが変化するのかまで言語化しているため、作品と同じようなペアリングを比較してみたくなる。また、ビールだけでなく人間関係にもフォーカスしているため、自分自身の日常に目を向けるきっかけになる。
15『 合コンに行ったら女がいなかった話』(アニメ)原作:蒼川なな 監督:古賀一臣
あらすじ
同じゼミの女子・蘇芳さんに合コンに誘われた大学生の常盤は、同じく合コン初体験の友人・浅葱と萩の2人を連れて、胸を高鳴らせながら待ち合わせの居酒屋へ。女性陣が先に店に着いたことを知って、待たせてはいけないと急いで席に向うと…そこには、眩く輝くほどイケメンな3人の姿が。男6人と女0人の少し違った合コンが今始まる!?
考察
強気なタイトルだが、大学生たちのほのぼのとした日常劇である。男装カフェバーで働く蘇芳たちのイケメンぶりが見ていて楽しく、本物の男性である常盤たちを振り回している。声優陣がしっかり「男装女子」の演技をしている点は、プロの実力を感じると共にアニメだからこそ楽しむことのできるポイントである。また、女性の姿のときとのギャップも魅力的な作品。
16『 カグラバチ』(漫画)作:外薗健
あらすじ
刀匠を志す少年チヒロは、刀匠である父の下で、日々修行に励んでいた。おちゃらけた父と寡黙な息子。笑いの絶えない毎日がいつまでも続くと思っていたが...
ある日悲劇が訪れる...
血塗られた絆と帰らない日常。
少年は憎しみを焚べ、決意の炎を心に宿す。
考察
既に出尽くしたと思われる日本刀×ファンタジーを描いた点で、挑戦的だと感じた。本人が特殊能力を持つのではなく、作中に能力者もいる中で日本刀に宿る特殊エネルギーを使って戦うのだが、それを可能にしたのがあくまで刀鍛冶の技術力であるという点が変わっていると感じる。また、作画に躍動感があり、カメラワークが映画的な点も魅力の1つである。
17 『地縛少年花子くん』2期(アニメ)原作:あいだいろ
あらすじ
ねえ、知ってる?
かもめ学園の七不思議、七番目の噂話。旧校舎3階の女子トイレ。そこには花子さんがいて、何かひとつを代償に呼び出した人の願いを叶えてくれる。呼び出し方はノックを3回。
そして――「花子さん、花子さん、
いらっしゃいますか?」七不思議七番目『トイレの花子さん』こと“花子くん”と縁を結んだ少女・八尋寧々。祓い屋の少年・源 光。
2人は花子くんと共に、改変された七不思議や
怪異たちの噂を元に戻すため、日々奔走していた。ある日、花子くんは言う。七不思議の中に裏切り者がいる、と。寧々たちは裏切り者を炙り出すため、七不思議の依代を破壊していく。二番目『ミサキ階段』、五番目『16時の書庫』を壊し、残る七不思議は
『トイレの花子さん』を含めると五つ……一方、その裏で花子くんの弟・つかさは、
七峰 桜、日向夏彦、そして新たに七不思議三番目『カガミジゴク』となったミツバと共に、寧々たちがまだ見ぬ七不思議に近づいて――
考察
1クールで綺麗に纏めていると感じた。寧々の寿命が残り僅かであることが序盤で明かされ、最終的には寿命をなんとかしようと前向きに終わる。原作通りの流れでアニメが進んでいたが、しっかりと話の配分が練られているのだろうと感じた。原作の独特な色使いをアニメに落とし込み、作品の世界観を壊すことなく可愛くポップに仕上がっている。
18 『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』(映画)原作:セガ/Colorful Palette/クリプトン・フューチャー・メディア
あらすじ
原作は、⾳楽を中⼼としたサブカルチャーが
盛んな街「シブヤ」と、⼈々の“本当の想い”が映し出された不思議な空間「セカイ」を舞台に、少年少女の“本当の想い”そして「自分の歌」を見つける物語を描き、「初音ミク」たちバーチャル・シンガーも登場するアプリゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ!feat. 初音ミク」(略称:「プロセカ」)。本作では、ゲームには登場していない新しい「初⾳ミク」が、「プロセカ」の
キャラクター達と出会い、成⻑していく姿を、アニメーションスタジオP.A.WORKSにより完全オリジナルストーリーとして描かれます。
考察
プロセカの映画であると同時に、初音ミク初の映画でもある。舞台であるシブヤだけでなく、各地にもミクのポスターや広告がある。驚いたのは、アニメによる作画のミクではなく、公式のイラストを用いていることだ。作品を通してのキーであるミクへのこだわりを感じる。また、実在する曲のMVをスクリーン画面いっぱいに映したり、迫力満点のライブシーンがあったりと、「音楽」という側面でも楽しむことができる。
19 『女装してめんどくさいことになってるネクラとヤンキーの両片思い』(漫画)作:とおる
あらすじ
お互いの好きな人は、嫌いなヤツが女装した姿!?可愛く朗らかな女の子・「花」凛とした美人・「めい」二人はお互いに好きだと気づいていない両片思い!…しかし、互いにバレてはいけない秘密が…。
考察
メイクが上手い男性が多く登場するということで、作品自体のクセは強いながらも時代に合っているのではないかと思う。また、お互い好きな相手が女装した苦手な男であるため、2人ともストレートでありながらBL・百合需要も満たすことができる画期的な作品でもある。周りの友人たちだけが女装に気づき、人物たちのフォローをすることで成り立っている部分があり、友人たちの判断1つで今の関係が崩れ去るため、読者は早くバレて欲しい気持ちとこのままであってほしい気持ちの葛藤を楽しむことになる。
20『 誰ソ彼ホテル』(アニメ)原作:ベノマ玲/SEEC 監督:紅水康介
あらすじ
昼も夜もなく、一日中夕暮れに染まっている
黄昏ホテル。
そこは、あの世に行くか現世に戻るか、行き先を決めかねている魂たちが羽を休めるために存在する生と死の狭間のホテル。
主人公塚原音子は、自分が何者なのかどうしてここにいるのか、記憶を想い出せないまま「黄昏ホテル」に彷徨いつく。
従業員の先導で、宿泊部屋に案内されることに。
本当のあなたは誰ですか?
部屋にはお客様の記憶にまつわる品
があるはずです。
それを手がかりにお客様の記憶を
取り戻すことができるかもしれません。
現世に帰るために探索し自分を想いだしていく中、
とある事件に直面する───。
考察
大好きなゲームがアニメ化するとのことで、非常に楽しみだった作品。作画はうまく原作の絵柄をアニメ調にしており、特徴である髪の虹色のハイライトまでしっかり再現されていた。オリジナルシーンが多く、最終話までしっかり描き切られることへの安心感はあったものの、オリジナルシーンよりも「ゲーム」という媒体では描くことの難しいホテル内の様子や、業務時間外のキャラクターの会話をもっと見たかった気持ちはある。脱出ゲームであるため、探索パートへのネタバレが心配だったが、物語に繋がる所のみ探索シーンを描き、これからゲームを始める人への配慮がされていた。
あらすじ
御厨ヶ丘ニュータウン。ここはある事象を境に、非現実的現象【GHOST】の坩堝と化した!そんな町に住む中学生ひふみは、ある日引っ越してきた少女と出会い…。『サマータイムレンダ』の田中靖規が描く、非現実校正アクション!
考察
「GHOST」と呼ばれる怪異や怪現象をフィックスしていく組織という設定が、王道かつ新しいため少年誌に適した設定だと感じた。過去作のキャラクターも出てくるため、クロスオーバー作品としても楽しむことができる。まだ完結していないものの、現時点でも緻密に伏線が張り巡らされていることがわかる考察のしがいがある作品。
2『 このクラスにギャルはいない』(漫画)作:時田時雨
あらすじ
優等生の七瀬さん。ギャルに憧れ大胆なイメチェンをし、ドキドキの高校デビューを果たすことに。しかし進学校のためギャルがおらず、ヤンキーの間宮くんと一緒に2人で浮いてしまい…!?「赤面しないで関目さん」の時田時雨が贈る、すれ違いコメディ!
考察
大人しかった子が高校デビューでギャルになるという設定は見たことのあるものだが、登場人物全員に同じようなギャップがあるという点が面白い。また、ヤンキーやギャルなど自由奔放なイメージを持たれがちな姿をしているものの、全員が根が真面目なため、健全なゆるギャグ作品として安心して楽しむことができる。
3 『やがて君になる』(漫画)作:仲谷鳰
あらすじ
人に恋する気持ちがわからず悩みを抱える新入生・小糸侑は、生徒会の先輩・七海燈子が告白を受ける場面に遭遇する。誰からの告白にも心を動かされたことがないという燈子に共感を覚える侑だったが、やがて燈子から思わぬ言葉を告げられる。「私、君のこと好きになりそう」
考察
燈子と侑の複雑な関係、心理が繊細に描かれた作品。「好き」を足枷に感じているにもかかわらず、侑に「好き」をぶつけた上で、「私のことを好きにならないで」と言う燈子は、ずるいものの憎めないキャラクターとなっている。沙弥香の「燈子の一番でありたい、今の関係が一番居心地が良い」という感情もリアルで、実在する人物の物語を見ているように引き込まれる。
4 『フラレガール』(漫画)作:堤翔
あらすじ
「俺の愛人になってください!」ド失礼な告白を同級生の青山くんからかまされた赤坂さんのコンプレックスは、「あり余る色気」。常に発されるフェロモンが原因で、大好きだった彼氏にもフラれ、恋愛に臆病になってたけど…!? ハプニング満載! 無自覚エロスに翻弄★ ラブコメ待望の第1巻!
考察
よくある恋愛漫画かと思いきや、青山が響の破壊力によって本当に液体と化したり、幽霊が実在していたりと、日常に当然のようにファンタジーが入り込んでいる作品。結果、どんなぶっとび設定でも読者が受け入れられるようになっており、作者がやりたい放題やっても作品の世界観が壊れない。この演出を実写で行うと違和感しかないため、2次元内で展開するからこそ面白さが活きる作品だと感じる。
5 『煙たい話』(漫画)作:林史也
あらすじ
高校卒業以来、一度も会うことのなかった武田と有田。ある雨の日に一匹の猫を拾ったことから、二人の関係は変わり始める。恋愛感情とは違う。一緒に暮らす理由もない。でも、君の隣は心地がいい。そんな気持ちに向き合い、二人が出した答えとは――。自分たちだけの関係を模索しながら生きる人々の日々を綴った物語。
考察
ゆるっとした日常の中に、どこか仄暗い雰囲気の漂っている。様々な人物の視点から描かれる、普段意識しないような世の中への小さな違和感を言語化しており、今まで気づかなかったことに気づけるような作品。「友達」でも「恋人」でもないけれど一緒に暮らす武田と有田の、独特の居心地の良さがよく伝わってきて、ほっと息抜きになるような感覚がある。
6 『可愛くてごめん』(漫画)作:島袋涙亜、HoneyWorks
あらすじ
HoneyWorksの大人気楽曲『可愛くてごめん』の"ちゅーたん"が主人公の青春物語!アイドルユニット『LIP×LIP』の愛蔵が大好きな高校1年の中村千鶴(ちゅーたん)は同担拒否なオタク。1人でも贈り物をしたり、イベントに行ったり、全身全霊で愛蔵を推す毎日は超幸せ!推し活資金を稼ぐためのメイド喫茶のバイトでも、可愛くて気の利く"ちゅーたん"は大人気で充実の日々を送っていたけど…。そんな彼女を妬むメイドが現れて!?
考察
推し活に全力を注ぐ少女の話。本来の姿は地道めのメガネ少女だが、メイクの力で人気のメイドカフェ店員になれるという設定がある。メガネっ子がメガネを取ると美少女であるという設定は山ほど見たが、自身の努力によってかわいくなるという点が好感を持てる。推し活も自分で稼いだお金を使って真っ当に行っており、全オタクの鑑である。
7 『さよなら、チルドレン』(漫画)作:ひろさきころも
あらすじ
「腹部貫通症候群」思春期の子どもはおなかに穴があく。成長につれて自然とふさがり、それが大人になった証でもあるそんな世界。活発な女子中学生・朝比奈ちまきを中心に子どもとオトナの間で揺れ動く心をまっすぐに描いたボーイ・ミーツ・ガール青春群像劇。
考察
腹部貫通症候群という衝撃的なファンタジー設定があり、思春期特有の無力感や不安感のメタファーとなっている。腹部に空いた穴が大きくなりすぎると存在そのものが消滅してしまうことが物語の大きな鍵となっている。思春期にしかないような感情と存在消滅を巡って自分たちの生き方を模索していく少年少女の群像劇である。
8 『リィンカーネーションの花弁』作:小西幹久
あらすじ
前世を、掘り起こせ。決別せよ!無才と罵られる日々に!!目覚めよ!!!自身に眠る、前世の才能に!!!!宮本武蔵の剣と数学者の超高速演算、シリアルキラーの大虐殺がいきなり激突する、天才異才鬼才続々登場の異能バトル!
考察
「偉人は才能を持っていたから歴史上に名が残っている」という、ありそうでなかった視点から描かれるバトルファンタジー。戦った相手が味方になったり、仲間が敵になったりと敵と味方がどんどん入れ替わっていくことから、単なる勧善懲悪ではなく、争いがあくまで思想の違いによるものであることが分かる。「偉人」という人物をテーマにした物語とマッチしているのではないかと思う。
9『 君が死ぬまで恋をしたい』(漫画)作:あおのなち
あらすじ
生きたいも、好きも、全部君が教えてくれた 身寄りのない子供を戦争用の兵器として育てる学校に通う少女たち。人を殺すための授業、誰が死んでも悲しむことさえままならない日常。自分の境遇を受け入れられずにいる14歳のシーナはある夜、血まみれの小さな女の子・ミミと出会った――平穏を願う怖がりなシーナと笑顔で戦争に向かう不死のミミ。死と隣り合う世界で2人の少女が見つけた、あどけない願いの物語。
考察
魔女が戦争兵器として使われている、という重い設定のダークファンタジー。絵が美しく、だからこそ戦ってボロボロになった少女たちの姿、戦争の残酷さが引き立っている。また、不老不死であるミミは他人が死ぬことに無沈着であったが、シーナとの出会いによって人間としても成長していく。良い変化もあるが、このままでは置いていかれることの辛さも学ぶことになるため、ミミの今後の変化も楽しみである。
10 『みなと商事コインランドリー』(漫画)原作:椿ゆず 漫画:缶爪さわ
あらすじ
エアコンの設備もない古びたお店「みなと商事コインランドリー」を祖父から受け継いだ湊晃(みなとあきら)。アラサーで元社畜の晃は地元に愛される店をのんびりと営んでいた。ある日高校生の香月慎太郎(かつきしんたろう)が客として来店する。年の差を越えて仲良くなるふたりだったが、晃がゲイであることがふとしたことから慎太郎にバレてしまい…?
考察
「ゆるキュン」というワードが似合う、ほのぼのした作品。晃とシンの出会いは偶然かと思いきや、シンが10年前から晃を想い続けていたことが発覚したことでシンへの印象がガラリと変わった。作中で誰も同性愛に対する変な気遣いや嫌悪感を示すことがなく、当然のようにごく当たり前のことだと受け入れている。差別的表現への心配がないことからも、「ゆるさ」を安心して楽しむことができる。
11『 ババンババンバンバンバンパイア』(漫画)作:奥嶋ひろまさ
あらすじ
老舗銭湯で住み込みバイトをする蘭丸。彼の正体は齢450の吸血鬼。究極の味わいである「18歳童貞の血」を求め、銭湯の一人息子・李仁くん(15歳・童貞)の操を守り続けている。ところが、思春期を迎えた李仁くんに異変発生!! 同じクラスの女の子に一目ぼれしてしまったのだ!!「李仁くんの童貞は絶対に死守する!!」蘭丸、決死の童貞喪失阻止作戦が幕を開ける…!!
考察
画力の高さを存分に活かした有名作品のオマージュシーンが面白い。登場人物全てが誰かしらとアンジャッシュ状態に陥り、キメ顔で盛大な勘違いを起こしている。劇画調の細かい描き込みは「バンパイア」というモチーフに合っているほか、ギャグシーンを引き立てているように感じる。
12 『ババンババンバンバンバンパイア』(アニメ)原作:奥嶋ひろまさ 監督・脚本:川崎逸朗
あらすじ
創業60年の老舗銭湯「こいの湯」で住み込みバイトをしている森蘭丸。
彼は、人の生き血を啜る正真正銘のバンパイアだった。蘭丸の目的は、自分の命を救ってくれた「こいの湯」の4代目・立野李仁への恩返し。そして…彼の「18歳童貞の血」を味わうこと…!現在15歳の李仁が熟すまで、あと3年。しかし入学早々、李仁は同級生の女子に一目惚れしてしまう。はたして蘭丸は、念願の「18歳童貞の血」を守り通すことができるのか…!?
考察
アニメ化したことで登場人物のセリフの細かいニュアンスが分かり、漫画とは違った味がある。しかし、描き込みの細かさや独特のテンポ感による面白さは漫画に比べると劣ってしまっているように感じる。とはいえ、森兄弟のバトルシーンは迫力があり、躍動感やカメラワークは漫画では演出できないものだと感じた。
13『 ミギとダリ』(漫画)作:佐野菜見
あらすじ
舞台は、1990年神戸市北区。アメリカの郊外をモデルに造られたニュータウン、オリゴン村。裕福な住民が暮らすこの町に、"ひとりの"少年が養子としてやってくる。少年の名は秘鳥(ひとり)。美しく聡明な少年・秘鳥に、園村夫妻は魅了されるが、秘鳥には、大きな秘密と恐るべき目的があった――。スタイリッシュな高校生を描いた『坂本ですが?』から約2年。佐野菜見が描くミステリアスな悪童の物語。
考察
なんともいえないシュールな空気感の作品だが、サスペンス要素も含まれるため、2通りの楽しみ方ができる。2人で1人を演じるという設定がまず面白いが、片方の隠れ方、隠れていることに気づかない夫婦など、ツッコミどころや笑いどころが数多くある。読み始めはどういう反応をすれば良いのかわからないため、読んでいくうちに面白さがわかるいわゆる「スルメ系」の作品。
14『 琥珀の夢で酔いましょう』(漫画)原作:村野真朱 漫画:依田温 監修:杉村啓
あらすじ
仕事が認められず苛立っていた剣崎七菜は、偶然入った居酒屋「白熊」で「クラフトビール」に出会う――。
考察
クラフトビールについて詳しくなれる。私自身ビールのおいしさが分からなかったが、この作品を通してビールに興味を持ち、様々なクラフトビールを飲んでみた。おすすめのペアリングも登場し、合わせるものによってどのようにおいしさが変化するのかまで言語化しているため、作品と同じようなペアリングを比較してみたくなる。また、ビールだけでなく人間関係にもフォーカスしているため、自分自身の日常に目を向けるきっかけになる。
15『 合コンに行ったら女がいなかった話』(アニメ)原作:蒼川なな 監督:古賀一臣
あらすじ
同じゼミの女子・蘇芳さんに合コンに誘われた大学生の常盤は、同じく合コン初体験の友人・浅葱と萩の2人を連れて、胸を高鳴らせながら待ち合わせの居酒屋へ。女性陣が先に店に着いたことを知って、待たせてはいけないと急いで席に向うと…そこには、眩く輝くほどイケメンな3人の姿が。男6人と女0人の少し違った合コンが今始まる!?
考察
強気なタイトルだが、大学生たちのほのぼのとした日常劇である。男装カフェバーで働く蘇芳たちのイケメンぶりが見ていて楽しく、本物の男性である常盤たちを振り回している。声優陣がしっかり「男装女子」の演技をしている点は、プロの実力を感じると共にアニメだからこそ楽しむことのできるポイントである。また、女性の姿のときとのギャップも魅力的な作品。
16『 カグラバチ』(漫画)作:外薗健
あらすじ
刀匠を志す少年チヒロは、刀匠である父の下で、日々修行に励んでいた。おちゃらけた父と寡黙な息子。笑いの絶えない毎日がいつまでも続くと思っていたが...
ある日悲劇が訪れる...
血塗られた絆と帰らない日常。
少年は憎しみを焚べ、決意の炎を心に宿す。
考察
既に出尽くしたと思われる日本刀×ファンタジーを描いた点で、挑戦的だと感じた。本人が特殊能力を持つのではなく、作中に能力者もいる中で日本刀に宿る特殊エネルギーを使って戦うのだが、それを可能にしたのがあくまで刀鍛冶の技術力であるという点が変わっていると感じる。また、作画に躍動感があり、カメラワークが映画的な点も魅力の1つである。
17 『地縛少年花子くん』2期(アニメ)原作:あいだいろ
あらすじ
ねえ、知ってる?
かもめ学園の七不思議、七番目の噂話。旧校舎3階の女子トイレ。そこには花子さんがいて、何かひとつを代償に呼び出した人の願いを叶えてくれる。呼び出し方はノックを3回。
そして――「花子さん、花子さん、
いらっしゃいますか?」七不思議七番目『トイレの花子さん』こと“花子くん”と縁を結んだ少女・八尋寧々。祓い屋の少年・源 光。
2人は花子くんと共に、改変された七不思議や
怪異たちの噂を元に戻すため、日々奔走していた。ある日、花子くんは言う。七不思議の中に裏切り者がいる、と。寧々たちは裏切り者を炙り出すため、七不思議の依代を破壊していく。二番目『ミサキ階段』、五番目『16時の書庫』を壊し、残る七不思議は
『トイレの花子さん』を含めると五つ……一方、その裏で花子くんの弟・つかさは、
七峰 桜、日向夏彦、そして新たに七不思議三番目『カガミジゴク』となったミツバと共に、寧々たちがまだ見ぬ七不思議に近づいて――
考察
1クールで綺麗に纏めていると感じた。寧々の寿命が残り僅かであることが序盤で明かされ、最終的には寿命をなんとかしようと前向きに終わる。原作通りの流れでアニメが進んでいたが、しっかりと話の配分が練られているのだろうと感じた。原作の独特な色使いをアニメに落とし込み、作品の世界観を壊すことなく可愛くポップに仕上がっている。
18 『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』(映画)原作:セガ/Colorful Palette/クリプトン・フューチャー・メディア
あらすじ
原作は、⾳楽を中⼼としたサブカルチャーが
盛んな街「シブヤ」と、⼈々の“本当の想い”が映し出された不思議な空間「セカイ」を舞台に、少年少女の“本当の想い”そして「自分の歌」を見つける物語を描き、「初音ミク」たちバーチャル・シンガーも登場するアプリゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ!feat. 初音ミク」(略称:「プロセカ」)。本作では、ゲームには登場していない新しい「初⾳ミク」が、「プロセカ」の
キャラクター達と出会い、成⻑していく姿を、アニメーションスタジオP.A.WORKSにより完全オリジナルストーリーとして描かれます。
考察
プロセカの映画であると同時に、初音ミク初の映画でもある。舞台であるシブヤだけでなく、各地にもミクのポスターや広告がある。驚いたのは、アニメによる作画のミクではなく、公式のイラストを用いていることだ。作品を通してのキーであるミクへのこだわりを感じる。また、実在する曲のMVをスクリーン画面いっぱいに映したり、迫力満点のライブシーンがあったりと、「音楽」という側面でも楽しむことができる。
19 『女装してめんどくさいことになってるネクラとヤンキーの両片思い』(漫画)作:とおる
あらすじ
お互いの好きな人は、嫌いなヤツが女装した姿!?可愛く朗らかな女の子・「花」凛とした美人・「めい」二人はお互いに好きだと気づいていない両片思い!…しかし、互いにバレてはいけない秘密が…。
考察
メイクが上手い男性が多く登場するということで、作品自体のクセは強いながらも時代に合っているのではないかと思う。また、お互い好きな相手が女装した苦手な男であるため、2人ともストレートでありながらBL・百合需要も満たすことができる画期的な作品でもある。周りの友人たちだけが女装に気づき、人物たちのフォローをすることで成り立っている部分があり、友人たちの判断1つで今の関係が崩れ去るため、読者は早くバレて欲しい気持ちとこのままであってほしい気持ちの葛藤を楽しむことになる。
20『 誰ソ彼ホテル』(アニメ)原作:ベノマ玲/SEEC 監督:紅水康介
あらすじ
昼も夜もなく、一日中夕暮れに染まっている
黄昏ホテル。
そこは、あの世に行くか現世に戻るか、行き先を決めかねている魂たちが羽を休めるために存在する生と死の狭間のホテル。
主人公塚原音子は、自分が何者なのかどうしてここにいるのか、記憶を想い出せないまま「黄昏ホテル」に彷徨いつく。
従業員の先導で、宿泊部屋に案内されることに。
本当のあなたは誰ですか?
部屋にはお客様の記憶にまつわる品
があるはずです。
それを手がかりにお客様の記憶を
取り戻すことができるかもしれません。
現世に帰るために探索し自分を想いだしていく中、
とある事件に直面する───。
考察
大好きなゲームがアニメ化するとのことで、非常に楽しみだった作品。作画はうまく原作の絵柄をアニメ調にしており、特徴である髪の虹色のハイライトまでしっかり再現されていた。オリジナルシーンが多く、最終話までしっかり描き切られることへの安心感はあったものの、オリジナルシーンよりも「ゲーム」という媒体では描くことの難しいホテル内の様子や、業務時間外のキャラクターの会話をもっと見たかった気持ちはある。脱出ゲームであるため、探索パートへのネタバレが心配だったが、物語に繋がる所のみ探索シーンを描き、これからゲームを始める人への配慮がされていた。
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