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三年 鈴石 RES
21~30
21.『陳情令』(ドラマ)
監督:鄭偉文 陳家霖
原作:墨香銅臭
<あらすじ>
 莫玄羽は禁忌の術により自分の体を器として、無理やりこの世に夷陵老祖・魏無羨を復活させた。13年の時を経て目覚めた魏無羨だったが、莫玄羽が何故自分を復活させたのかもわからないまま、怪事件を追うことになる。さらに道中、かつての友人である含光君・藍忘機と再会するが…。

 アニメ『魔道祖師』のドラマ版ということで視聴した。原作は未読でアニメも完結していないため、改変箇所があったとしてもわからないが、とても完成度の高い作品だと思う。魏無羨と藍忘機の出会いから魏無羨の死までの過去編に時間を割いているため、初めはそりが合わなかった二人が如何にして交流を深めていったのかが分かりやすかった。特に無口無表情の藍忘機の、魏無羨に対する態度の軟化の仕方が丁寧に描かれていたように思う。原作がBL小説ということでブロマンスに上手く落とし込めているかが心配だったが、このような丁寧な描かれ方のため、二人の関係性にも不自然に感じてしまうような点はなかった。
 物語の展開も、温和な場面と辛い場面の差がとても激しいが、全50話という比較的長期ドラマであるが中弛みすることなく展開していった。個人的には、過去から時間軸が現在に戻った後の方が、物語の展開的には心穏やかに見ることができた。

22.『魔道祖師 前塵編』(アニメ)
監督:熊可
原作:墨香銅臭
<あらすじ>
 莫玄羽の禁術により13年ぶりにこの世に復活した魏無羨は、その代償である呪いを解く手がかりを得るため莫家へ向かう。そこにはちょうど、莫家から依頼を受けた藍家の子弟・思追と景儀がいた。夜狩りにあたる二人だったが、突如、手に負えないほど凶暴な鬼腕が出現する。

 1話2話といった初めの方の話で主要な登場人物が多く出そろう構成は、日本ではあまりない印象だったので新鮮に感じた。その分前半は話がつかめず置いてきぼりになることが多かったが、3話辺りからの過去編を観ることで大筋はつかめた。全15話を観終わった後で、もう一度初めの方を見直すとより理解しやすいように思う。登場人物同士の関係性も初めはわかりづらかったが、呼び名が多くあることで、どの程度の親密度なのかが明確になっていて覚えやすかった。物語としてはまだまだ謎が残る終わり方だったので、これからの羨雲編に期待したい。

23.『バチカン奇跡調査官 王の中の王』(小説)
著者:藤木稟
<あらすじ>
 オランダ・ユトレヒトの教会で、主が降り立ち金色の足跡を残し、さらに聖体祭に奇妙な球体が現れ多くの参列者が不思議な体験をするという出来事が起きた。奇跡調査に乗り出した平賀とロベルトは聞き取りを開始するが、どうも参列者たちはそれぞれ異なった体験をしており…。

 情景が目に浮かぶような丁寧な風景描写が印象的だった。読了後に画像検索などをして実際の風景を見てみると、さらに楽しさが増すと思う。
 今回も、平賀の悪意のない無邪気な破天荒ぶりが描かれており、ロベルトやその他登場人物の気苦労がひしひしと伝わってきて、思わず苦笑いしてしまうシーンも多かった。ただ、こうした奇抜な視点から事件の糸口はつかめてくるので、彼の思考力には感服せざるを得ない。またロベルトも、奇抜で派手な視点ではないが、気になった点から着実に物事の経緯や本質をとらえていくので、この二人のコンビネーションにも着目である。
 真相は、科学知識のない自分からすれば、実在する現象と言われてもおとぎ話に感じられるようなものだったので、意外性は同シリーズの他の作品と比べれば多少劣っているように感じてしまった。それでも上記の二人の掛け合いや、風景描写など楽しめる点はいくつもあるので、満足感を得られた。

24.『オッドタクシー』(アニメ)
脚本:此元和津也
監督:木下麦
<あらすじ>
 タクシー運転手の小戸川は少し変わり者。そんな彼が運ぶ人々もなかなかの変わり者ぞろい。バラバラに見える乗客だったが、次第に一人の少女の失踪を機に繋がりだす。

 キャラクターが動物として描かれており、一見するとほのぼのとした画風で、変わり者の運転手が乗客の悩みでも解決していくような心温まるストーリーかと思っていたが、社会の闇でも煮詰めたような作品だった。破落戸という分かりやすい闇から、ある一件を機に主人公の命を狙うことになった重課金ゲーマー、向上心の強い売り出し中のアイドルなど、ぱっと見無害に見える闇まで様々な闇が登場する。乗客たちが抱えるものも、SNSなど現代ならではのものが中心に取り上げられており、身近な恐怖としてとらえやすいのではないかと感じた。
そうしたなかで主人公・小戸川の過去も次第に明らかになるが、その事実が作品の根幹さえも覆すようなものとなっている。また、そこに至るまでも驚きの連続だが、ラストも不穏な状態で終わるので、観やすいわりに、この作品に明るさは求めない方がいいように思う。

25.『魔道祖師 羨雲編』(アニメ)
原作:墨香銅臭
監督:熊可
<あらすじ>
 温氏が滅びた後、蘭陵金氏の金光瑶が頂点に立つ現代へ軸が戻る。藍忘機は雲深不知処を任されるが、その隙を見て魏無羨は脱走しようとする。しかし、とらえていた鬼腕が突如暴れだし…。

 各家の関係性が、宗主が代替わりすることで大きく変化していく様が詳細に描かれていた。温氏滅亡後、金氏が覇権を握ろうとする様子は、人命などより権力を求める人間の恐ろしさが表れている。
 金凌との関わりが多くなり親しくなっていくと同時に、そこに過去の回想が入ることで、彼の両親のいないことによる悲惨な生い立ちと、魏嬰の後悔が強く感じられる造りとなっていたように思う。また、魏嬰自身にも諍いのきっかけを生んでしまうような欠点があることを示すことで、主人公が超人ではなく人間味のあるキャラクターとして存在し、より一層この作品の特徴の一つと考えられる、やるせなさが味わえるようになっていると感じた。

26.『99.9-刑事専門弁護士- SEASONⅠ』(ドラマ)
脚本:宇田学
放送:TBS系列
<あらすじ>
 起訴されれば99.9%の有罪率をほこる日本の刑事事件において、残り0.1%の事実にこだわり無罪を勝ち取る弁護士・深山大翔(松本潤)。班目法律事務所にやってきた彼は、そこに所属する佐田(香川照之)や立花(榮倉奈々)と協力し、数々の事件に挑んでいく。

 弁護士が主役、それも深山自身冤罪事件の被害者ということで検察側があくどく描かれているとはいえ、事件自体のリアリティは高く、トリックも納得いくものだった。また、有罪の決め手とされる証拠も早い段階でほころびは見つかるが、言い逃れされればそれまで、確固たる無罪の証拠が見つからないなど、やきもきする状況が長く続くため、法廷で深山が無罪を勝ち取るシーンはとても爽快感がある。
 誰かが無実の罪で捕まっている時には、被害者やその遺族は被告人を憎んでいることで、言いようのない感情の矛先を定められるが、いざその被告人が無罪と分かってからは、無実の人間に強い負の感情を向けていた事実に苛まれるのではないかと感じる。冤罪では誰もが不幸になることが鮮明に描写されていた。また、事件後の平穏というものは、誰かが捕まっていることの上にようやく成り立つ、不安定なものであると思わされた。

27.『99.9-刑事専門弁護士- SEASONⅡ』(ドラマ)
脚本:宇田学
放送:TBS系列
<あらすじ>
 SEASONⅠに続き、深山が0.1%の事実を求め法廷に立つ。留学した立花にかわり、裁判官を退いた尾崎(木村文乃)をヒロインに迎える。

 SEASONⅠでは弁護士対検察が主な構図になっていたが、1・2話で深山の父親の冤罪事件について片が付き、検察との因縁もひと段落ついたところで尾崎がメインキャラクターとなることで、弁護士対裁判官の構図になり、目新しさが出ていると思った。検察同様組織の中での立場による忖度が明確になっており、尚更裁判官は自身に都合の悪い判決には関わらないことが嫌と言うほどわかり、無罪獲得の難易度が見ている側に伝わりやすい。
 尾崎と弟の事件にかんしては、「一番信じてほしい人に信じてもらえない」ということがテーマとなっており、家族の信頼関係と弁護士と依頼人の信頼関係が重なる。尾崎は弁護士として働き始めたころは、依頼人を信じず情状酌量を求める信頼関係を築かない弁護士であった。しかし、深山と働くことで信頼を大切にする弁護士に変化していっている途中での事件だったので、改めてここで信頼のあり方について考え直すことになる。

28.『99.9-刑事専門弁護士- 完全新作SP 新たな出会い篇』(ドラマ)
プロデューサー:東仲恵吾
<あらすじ>
 映画公開前夜祭ということで、劇場版に登場する河野(杉咲花)と弁護士・南雲(西島秀俊)の紹介を兼ねた、完全新作のドラマ。

 SEASONⅠ・Ⅱと対峙する人間が検察から裁判官と続き、ここで弁護士という同業者との対峙となっていた。依頼人のためなら何でもするという、佐田にも似通いつつも、超えてはいけない一線を越え検察と癒着する南雲が得体の知れない人物で、恐ろしさを感じられた。確かに、依頼人の利益を守るということは弁護士の仕事である。SEASONⅠにて立花が情状酌量を求める依頼人を説得し無罪を勝ち取ったのも、運よく依頼人の母の命がもったからこそ良い終わり方になっただけで、ともすれば依頼人の利益を損なう結果になっていたかもしれない。しかし、異様なまでにあくどい手を使い依頼人を守る南雲の姿は、決定的に班目法律事務所の面々と相いれないだろうということは明白だった。彼自身、自分のやっていることについて娘には胸を張って語れないと見て取ることができ、弁護士としての正当な姿ではない自覚があるようだった。
 考え方についてはこのように深山たちと対比されるが、もう一つ、父親としての佐田と南雲の対比が興味深かった。「いい弁護士がいい父親とは限らない」という台詞が表しているように、娘の誕生日を忘れるが、がめついところはあれども弁護士として胸を張れる姿になった佐田と、血はつながっていないが娘にとってよき父親である一方で、弁護士としては汚い行為にも手を染めている南雲。両者の話し合うシーンでは、背中合わせのような二人だからこその緊迫感が感じられる。

29.『自負と偏見』(小説)
作者:ジェーン・オースティン
訳:中野好夫
<あらすじ>
 ベネット家の次女・エリザベスは人を見る目が自慢の聡明な女性。ある日近所にビングリーという青年が越してくる。当時の法律では娘に遺産相続権がなく、父親が亡くなれば母娘の元には何も残らないことで、何とか娘たちを誰かに嫁がせようとする母は、娘たちを伴いビングリー主催の舞踏会へ足を運ぶ。しかし、そこにはビングリーの親友・ダーシーという青年も参加していたのだった。

 物語の語り手がエリザベス贔屓であり、序盤から姉のジェーンとエリザベス、ミスター・ベネット以外のベネット家の人物には辛辣な語り口なのが面白く感じられた。時折エリザベス視点のような描き方もされており、彼女がどの程度物事を考え判断しているかもわかりやすい。ただし、それ故に一方的な考え方に感じることも多く、人のことを高慢だという割には彼女も上から目線で人を判断していると思われる。このエリザベスに対して募っていく「人のことを言えるのか」という感情があるからこそ、ダーシーからの手紙により、自身の偏見を自覚して、そのことを恥じるシーンが生きてくるように感じられた。
 エリザベス然りダーシー然り、作中では聡明とされており、オースティン自身も愛情を注いでいる登場人物さえも完全無欠の「いい人」として描かず、欠点ありきの生身の人間を描写していることが、最大の魅力と考える。エリザベスが慕うジェーンやミスター・ベネットさえも、褒める描写は多けれども、見方を変えると長所が短所に見えてくるといった描写もある。このように欠点をあけっぴろげに、しかし必要以上に悪い描写にせず、ありのままの登場人物によって支えられている作品だからこそ、ここまでのベストセラーになったのだと思った。

30.『天官賜福』(アニメ)
原作:墨香銅臭
監督:李豪凌
<あらすじ>
 天界・人間界・鬼界からなる世界において、謝憐は二度飛昇するが二度とも天界から追放されてしまう。三度目の飛昇を果たした彼だったが、その際の衝撃波で建造物を破壊するなど、多額の負債を抱えることになった。返済のため下界に降り、功徳を集めるなか、謝憐は三郎と名乗る青年と出会う。

 天官たちの出世に関するきな臭い話も多かったが、人間の手のひら返しも目につき、それらのことと一線を引く謝憐と三郎の姿が、ファンタジーな世界観においても浮世離れしていることがよく表現されていたように思う。特に謝憐の人間界での将軍時代の最期が、靴ひもを踏み転倒したことによるものと石碑に書かれていたのを読み上げた時、それまで謝憐の争いを仲裁する行動を絶賛していた人間たちが大笑いしていたシーンが印象に残った。それとは逆に、争いを仲裁した行動を冷静に自国のためにはならないと意見を述べていた天官たちが、一見間抜けなその最期を笑わなかったことも、物の見方の違いが表れていたように感じる。

提出が遅れましたこと本当にすみませんでした。
2022/01/10(月) 22:18 No.1828 EDIT DEL
三年 鈴石 RES
11~20
11.『コウノドリ』(ドラマ)
原作:鈴ノ木ユウ
<あらすじ>
 聖ペルソナ総合医療センターに勤務する産婦人科医・鴻鳥サクラを主人公に据えた物語。妊婦も赤ちゃんもどちらも助けたいという想いのもと、様々な事情を持つ妊婦とその家族に寄り添っていく。

 未受診妊婦や出生前診断など耳慣れない、しかし将来赤ちゃんを産むようなことになれば他人事では済まされない問題が多く登場した。中には、生きていることが無条件に良いことではないとさえ思わせられる内容のものもあった。そうした問題の中で、頭では理解できていても感情が追い付かなかったりする人もおり、治療を提案することすら難しいシーンも登場する。そうした場面では、どうしても一視聴者としては「赤ちゃんのためだから早く決断しろ」などと思ってしまったが、後に登場する「赤ちゃんと同じくらいその両親のことも大切にしなければならない」という姿勢のもと行動するサクラを見ていると、自分の思いやりのなさを痛感した。ただ、サクラの優しさは決して彼一人では成立しないものであり、気配り上手な小松さんや、冷静に現実的な見方を提示してくれる四宮など、ペルソナ内で強い信頼関係のもと連携をとれていることが支えとなっていると感じた。一人では何もできないということは命を扱う物語であるため嫌でも思い知らされるが、それと同時に繋がり方はそれぞれだが、命に必死に向き合う優しい人たちが集ったチームの強さも感じられた。
 初回と最終回を比べると、同じセリフやギャグが出てきたりと、初めと終わりが重なっているような印象を受ける描写が多く、それによりドラマはここで終わってもサクラたちの日常は続いていくことを連想させるきれいな終わり方になっていたように思った。

12.『ヒトごろし(下)』(小説)
著者:京極夏彦
<あらすじ>
 人をとがめられず殺すことができる組織・新選組を手に入れた土方は、冷静に、しかし着実に人を殺していく。そしてその対象は芹沢や山南など隊内へと向けられていく。しかし新選組を取り巻く環境は刻々と変化してゆき、ついには戊辰戦争が勃発するのであった。

 戦争という、人が人を殺している自覚がないまま大量殺戮が行われる、狂った状況のなかで、一番冷静に戦争を非難しているのが「人を殺したい」と思い実行してきた土方であることが滑稽に感じた。特に「社会で人殺しが禁じられているから、自分は苦労して人を殺してきたのに」と、戦争の惨状を見て土方が思う場面でそれが感じられる。平穏な社会においては、この言葉は決して許されるものではなく、それは彼自身も自覚している。だからこそ彼は自分を人外であるとし、行動していた。そんな人外に誰もがなる戦争はやはり凄惨なものであると思うし、その凄惨なことを何度もやってのけるのが人間であると改めて強く感じた。
また、周囲が熱に浮かされ、敵と認識した相手を殺すことを善と考え実行しようとする様子は集団の恐ろしさを感じる。ただ、一読者として外野から見ているから恐ろしく感じ、土方と比べ集団が馬鹿のように思えるが、実際にその状況下にいたら、自分もまた敵を殺すことに何の疑問も抱かない集団側の人間なのだろうとも考えさせられた。

13.『ノッキンオン・ロックドドア』(小説)
著者:青崎有吾
<あらすじ>
 不可能犯罪を専門とする御殿場倒理と、不可解犯罪を専門とする片無氷雨は、探偵事務所「ノッキンオン・ロックドドア」を共同経営している。そこに持ち込まれる依頼は果たして「不可能」か「不可解」か。独特なダブル探偵が事件をあざやかに解決していく。

 「トリック?動機?キャラクター?全てがこの1冊で楽しめます!!」と帯に書いてある通り、様々な視点での楽しみ方ができる作品だった。今までミステリはあまり読んでこなかった人でもキャラクター小説として楽しむことができ、ミステリの入り口にもなるように思う。短編集であるため、主要キャラクターも映え、容疑者の人数も少ないものが多く、ミステリにありがちな「誰が誰だっけ」といったこともなく楽しめた。
 また、主人公二人にもまだまだ謎が多く、互いへの親しみを感じさせつつどこか不穏な雰囲気を醸し出している点も、今後の展開への期待につながる。


14.『憂国のモリアーティ 4巻』(漫画)
著者:竹内良輔 三好輝
<あらすじ>
 武器の密輸ルートを潰しアフガン戦争を終結させる極秘任務がMI6に下る。土地勘もあるということで遂行をモランに命じるウィリアムだが、他の思惑もあり…。
 その他シャーロックとジョンが本編に登場する「二人の探偵」の第一幕も収録。

 モランの過去に焦点を当てた物語だった。意図的に戦争を長期化させていた黒幕を潰し、またそのことで彼が捕らわれていた過去から脱却できたことには明るさを感じられる。しかし、モランの因縁が片付いたことにより、今後はより一層ウィリアムの計画のもと闇の中で暗躍していくであろうことが示され、ウィリアムもそれを見越してモランを向かわせたことが示されたため、彼らの協力関係が何層もの思惑のもと築かれていることも改めて感じた。
 また、「人の死を利用している」という点で今回の黒幕もウィリアムも違いはないということに対して、やはり幸せを願わない人はいないのだなと思った。ウィリアムは身分制度のため傷付いている人たちの幸福を願い、黒幕は英国人の幸福を願っていた。現状ではウィリアムの行動が人々の幸福に着実に近づいているという証拠はないし、戦争の長期化が英国民の幸福を守っているという証拠もない。こうして並べてみると傍から見ればほとんど同じように思える。しかしそれでも違いが生じるのは、考えている幸せと手段が異なるからだと感じた。モランの言うようにウィリアムは「自分の死」を覚悟して計画を立てる。一方黒幕は「自分は死んではならない人物」として計画を立てる。そうした考えで練られた計画ではとられる手段は変わってくるし、対立するのも当然のことである。「自分の死」を覚悟しているからといって人の死を利用して良いわけはないが、やはりそうした姿の方が読者には格好良く見えてしまうものなので、主人公サイドのモランが黒幕を始末した場面では爽快感を感じた。

15.『憂国のモリアーティ 5巻』(漫画)
著者:竹内良輔 三好輝
<あらすじ>
 列車内で起きた殺人事件の容疑者はなんとジョンだった。彼の容疑を晴らすため、シャーロックとウィリアムは推理対決という形で事件を解決しようとする。次の駅に着くまでの48分間で犯人を見つけることはできるのか。
 また、それからほどなくして王室で受け継がれてきた極秘文書が盗まれる事件が発生。犯人として浮かんだのは、一人の女性だった。

 家族や仲間内ではあまり見せない、楽しそうな表情をするウィリアムが印象的だった。シャーロックと同じように、ウィリアムも自分と似た思考を持つシャーロックには、手駒以外のなにかしらの思いがあるのではないかと感じられる。
 「大英帝国の醜聞」からはアイリーン・アドラーが登場する。原案でもモリアーティと並び、シャーロックを翻弄した人物であった彼女がどのような描かれ方をするかは興味があったので、とても強かな人物に描かれていて個人的には嬉しかった。彼女がどのような思惑で今回文書を盗んだかは明らかになっていないが、身分について思うところがある描写があったので、ここからアルバートと接触し上手くモリアーティ家へとつながっていくのではないかと思った。
 また、シャーロックが科学を犯罪捜査に持ち込んだことには、身分によって犯罪者扱いされないようにとの思いがあったことが判明した。ここから、シャーロックにしろアイリーンにしろウィリアムたちにしろ、身分制度に問題意識を持ち、それぞれのやり方で立ち向かっていることがうかがえた。合法的と言えるのは今のところシャーロックのみだが、だからといって他の二人を間違っていると断言することはできないと思うので、善悪の判断の難しさが感じられる。

16.『憂国のモリアーティ 6巻』(漫画)
著者:竹内良輔 三好輝
<あらすじ>
 アルバートが用意した場は仮面舞踏会だった。そこで彼の正体が犯罪卿であることを明かされたアイリーンは、彼と取引をすることになる。
 一方シャーロックたちも真相に近づき始めるが…。

 今回アイリーンは、自分の手に負えない秘密を盗んでしまったために、その秘密を有効に活用することもできず命を狙われる身となった。しかし、伯爵としての地位のあるアルバートの手に渡ると、その秘密は持っていては危険なものから使える手段となる。このことから、いくら明晰な頭脳があって使い道を考えられても、立場が実行の障害となることで何もできなかったアイリーンの歯がゆさが感じられたように思う。また、その立場が障害とならない貴族の地位を持つアルバートの力の強さも見て取れ、改めてこの計画が貴族という立場があってこそのものだということを感じた。幼少期とはいえあのウィリアムでさえ、計画を実行する最も簡単な手法は貴族となり替わることと考えた。これは裏を返せば、貴族でなければ何もできないことの表れだと思うので、この時代の平民の無力感はどれほどのもので、さらに自分が無力と気付かされていない人はどれほどいたのかと思った。

17.『憂国のモリアーティ 7巻』(漫画)
著者:竹内良輔 三好輝
<あらすじ>
 ホワイトチャペルで娼婦を狙った連続猟奇殺人事件が起きた。犯人は「切り裂きジャック」と名乗り犯行声明文を新聞に投書する。かつての師であるジャック・レンフィールドからの依頼により捜査を始めたウィリアム達は、そこで市警と自警団の衝突を目にする。

 劇場型殺人という、一見ウィリアム達と大差ないことを行っているようだが、犯人の目的が明らかになるにつれ大きな隔たりがあることを印象付ける展開だったように感じる。ただし前巻の感想にも書いたように、ウィリアム達には貴族という地位が作用している。そのため、「弱者は傷つけない」という綺麗ごととも取れるような信念を貫き通せているが、そうでない労働者階級の人間が事を起こそうとした時に、「弱者を傷つける」という手段を取ってしまったことは全面的に否定できるのかと少し考えてしまった。だからといって「良い案を出す頭もないなら行動するな」というのは暴論かと思うので、黒幕らしき人物がどのような考えのもと彼らに助言したのか気になった。
 また、ジャックのキャラクター像がウィリアム陣営でバランスを取ったように感じた。どちらかと言えば、ウィリアム陣営はシャーロック陣営と比べ優雅な印象が強く、これまで彼らの陣営での俗っぽさや粗削りな部分はモラン一人が請け負うことになっていた。しかし、ここで豪快な口調や女性好きといった人物像のジャックが加わることで、モランのそうした粗い面だけが強調され過度に脳筋扱いされることもなく、しっかりと聡明な面も描かれやすくなると感じた。

18.『憂国のモリアーティ 8巻』(漫画)
著者:竹内良輔 三好輝
<あらすじ>
 「切り裂きジャック」に制裁を下したウィリアム。しかし事件は終わることなく、なんと市警が「切り裂きジャック」の逮捕を公表する。冤罪を証明するためボンドは市警へ潜入するが、時を同じくしてシャーロックもまた市警へと乗り込むのだった。

 前巻のジャックの大立ち回りのような派手な場面は少なく、それぞれの思惑が絡み合った頭脳戦がメインの内容だった。中心となって動いていたのはボンドやシャーロック達で、ウィリアム自体の出番はあまりなかったが、ウィリアムの考えを汲んだうえで行動する彼らの姿を見ると、ウィリアムの影響力の大きさを感じられる。
 またウィリアムとシャーロックがメインの『一人の学生』では、二人の関係性の変化を感じられた。『二人の探偵』の時点では、自分に匹敵する頭脳を持つ相手への興味が強調されていたように思ったが、今回は相手の性格や考え方への理解を深める一歩内に踏み込んだ様子に見えた。ウィリアムの「義賊であろうと裁かれるべき」という考え方も示され、自分のやっていることとその考えのギャップに苦しんでいるようにも感じられたので、周囲の仲間のウィリアムへの支え方にも注目していきたいと思った。

19.『憂国のモリアーティ 9巻』(漫画)
著者:竹内良輔 三好輝
<あらすじ>
 「切り裂きジャック」事件の黒幕・ミルヴァートンはウィリアムの周辺を探るうち、一件の裁判記録を手にする。そこには幼少期のウィリアムが起こした裁判の詳細が記されていた。

 ミルヴァ―トンとウィリアム達の対立を印象付けた巻だった。それと同時にウィリアムとルイスの、悪事を働く人間を許さない性格が幼少期からのものであることがわかり、主人公であるが謎の多い二人のキャラクター像が鮮明になったように思う。ただし、それでもルイスはともかくウィリアムの本名は不明なままなので、まだまだ謎の方が多い人物であることには変わりなかった。
 また、後半の『ロンドンの騎士』からは新しく議員・ホワイトリーが登場する。ウィリアムも言うように、彼次第では犯罪卿がいらなくなるほどその主張はウィリアムらと同じであり、目的のため困難ながらも正規ルートをいくホワイトリーはウィリアム達の合わせ鏡のような存在だと感じた。この先ミルヴァ―トンがどのような悪事で絡んで、それによってホワイトリーやウィリアム達にどんな影響があるのか。また、活躍しそうなシャーロックがどのような役割を果たすのか。この二点を特に楽しみにしていきたい。

20.『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』(小説)
著者:皆川博子
<あらすじ>
 解剖学の重要性がまだ認知されていなかった18世紀のロンドン。そこで外科医・ダニエルは数人の弟子とともに解剖教室を開いていた。しかしある日、教室から二体の死体が発見される。身に覚えのない彼らに治安判事・フィールディングらは捜査協力を要請するが…。

 過去の場面と判事らの捜査場面が交互に描かれるので、中弛みもせず読み切りやすい作品だと思う。すべて読み切ってから改めて細かな部分に身を通すと、気にも留めていなかった点がとても重要であることに気付かされ、伏線のめぐらせ方の上手さに驚いた。
 また、エドの司法への敵意も言葉や行為の端からひしひしと感じられる。結果的にエドは持ち前の頭脳により、自身の望みを押し通しつつ、ネイサンを救うことも両立できたが、はたして彼やナイジェルがどの程度ネイサンを大切に思っていたかはわからないままである。ダニエルも言及していたが、エドやナイジェルにとって、ネイサンよりも望みの方が比重は重かった可能性もあるので、人助けのために動く聖人君主のような人間としては描かれていないことが、作品全体にいいように作用していると感じる。エドとナイジェルの関係性も示唆するような描写はありつつも、はっきりとしたことは何もわからないため、彼らのキャラクター性に仄暗さを残す終わり方は、次作への期待につながるように思う。
2022/01/10(月) 22:08 No.1827 EDIT DEL
三年 鈴石 RES
夏休み課題30作品です。投稿が大幅に遅れてしまいすみません。
28番はデータが保存できていなかったため、申し訳ありませんが、夏休み外で鑑賞した作品を加えてしまっています。(鈴石)

1~10
1.『怒り』(映画)
原作:吉田修一
監督:李相日
<あらすじ>
 八王子市で発生した殺人事件の犯人が捕まらないまま一年が経った。警察が情報を集めるため、犯人のイメージ画像が全国で公開される。時を同じくして千葉・東京・沖縄に身元不明の三人の男が現れるが…。

 周囲の人物たちの、受け入れようとするが怪しむ感情を捨てきれず葛藤する姿が緻密に描かれていた。題名の「怒り」は千葉・東京・沖縄の場合で意味合いが異なるように感じるが、特に千葉での、信じたい人を信じ切ることができなかった自分に対する「怒り」がとても印象に残った。
また、信じ切れないことによる独特の緊張感が全体に常にあるなか、東京での優馬と直人の暮らしの描写は、それとは別の繊細さをはらんだ雰囲気だと思った。軽い口調で「信用していない」と言った優馬と、それに対して「信じてくれてありがとう」と言う直人のやり取りも、深く探ることへの恐ろしさと、それを分かっている様子という繊細な演技が必要とされるが、丁寧に表現されていたと感じる。
 俳優陣も豪華な顔ぶれで、人の感情の機微を大切に拾う演技には注目である。

2.『楽園』(映画)
原作:吉田修一
監督:瀬々敬久
<あらすじ>
 あるY字路で少女が行方不明となった。犯人の目星もつかないまま12年の歳月が過ぎたころ、再び同じような事件が起きた。確たる証拠もない状態で容疑者として町中から疑われた豪士は必死に逃走を図る。
 またY字路を進んだ集落で養蜂家として暮らす善次郎は、あるきっかけから村八分にされてしまう。止まない非難や嫌がらせに次第に善次郎は衰弱していく。

 閉そく感の恐ろしさを実感した。一度広まれば取り返しがつかず、一度思い込まれたら誤解は解けないという点はどんな環境にいようと同じかもしれないが、閉じた世界が舞台となっているため、そのことがより強調され描かれていたように感じる。また標的となった人物たちの無力さが、観ているこちらが辛くなるほど丁寧に描出されていた。豪士も善次郎も長身の俳優が演じているがとても約180㎝あるようには見えず、圧倒的弱者として両者とも映画に存在していたことが印象に残った。紡に関しては、信じていたり正の感情を向けていた人たちが消えてしまったが、逆に負の感情を向けていた人が最終的に自身の希望となったりと、救いのある最後でよかったと思う。
 また「楽園」とは誰にとってのものか考えさせられた。誰かを犯人としてつるし上げ安心感を得られる環境だったことは、その集落に住む人からすれば「楽園」と感じられる場所だったのかもしれないが、必ず苦しむ役割の人が必要である。映画内で何度か出た「どこ行っても同じ」というセリフも踏まえると、本当の「楽園」というものは存在しないという気にさえなってくる。
 鬱展開が続くなか、集落の田園風景がいやに美しく穏やかだった点も狂気じみていてぞっとした。

3.『天空の蜂』(映画)
原作:東野圭吾
監督:堤幸彦
<あらすじ>
 自衛隊用の大型ヘリコプターが遠隔操作により何者かに奪われた。犯人は天空の蜂と名乗り、ヘリコプターを原発の上空に滞空させ、国内にある原発全てを停止しなければヘリコプターを落下させるという内容の声明文を出す。ヘリコプターの設計士である湯原は原発設計士の三島と共に事件の解決に臨むが…。

 電気をとるか人命をとるかという選択がメインに据えられていた。道徳に則った常識で考えれば人命が第一優先されるべきはずが、多くの機関が電力を優先させる決断をしたことには怒りを感じた。しかし、原発の弊害の心配もせず、のうのうと日頃電気を使用している身である以上、軽々しく非難を口にできず考えさせられるものがあった。
 人間関係で魅力的に感じたのは、やはり主人公一家である。湯原は典型的な仕事人間であり、家族サービスをしようとしても空回りするような家族関係がギクシャクした人物として描かれる。しかし、この描写が前半にあったからこそ、高彦とモールス信号で通じ合うシーンは、高彦の命を救った重要なものであると同時に、父と子の繋がりという意味でも非常に大切なものとなったのだと思う。

4.『影裏』(映画)
原作:沼田真佑
監督:大友啓史
<あらすじ>
 埼玉の本社から盛岡に転勤となった今野は、そこで同僚である日浅と親しくなる。穏やかに過ごしてきた二人だったが、些細なことをきっかけに交流が途絶えてしまう。それからしばらく経ったころ、同僚の西山から「日浅が死んでしまったかもしれない」と告げられた今野は…。

 穏やかな日々の様子を観ているはずなのに、遠くから鋭利な刃物を向けられているような妙な緊張感があった。予告から不穏な空気を知っていたからかもしれないが、表情や声音はどう見ても穏やかで明るいはずなのに、時折見せる不気味な雰囲気を日浅から感じられる。それに加え、相対する人によって接し方を微妙に変化させる点が日浅の一番恐ろしいところであると、個人的には考えた。また、こうした日浅があることで、不器用だけれどもどこまでも素直な今野との対比がしやすいと感じる。
 『影裏』という題名の通り、映像も影が印象的な造りだったように思う。影により俳優の表情が見えない場面がいくつもあったが、その時の目での演技に鳥肌が立った。影により見えないものの方が多いため読み取れる画面上の情報が少ないが、そのため何を読み取るかが人や回数により分かれそうで、様々な楽しみ方ができるように思う。

5.『日本で一番悪い奴ら』(映画)
原作:稲葉圭昭
監督:白石和彌
<あらすじ>
 柔道の腕を買われ道警に配属された諸星は、仕事に関してはうだつの上がらない青年だった。ある日先輩刑事から「裏社会のスパイ(通称S)をつくれ」と助言される。素朴な青年が裏社会に染まり転落していく姿を描き出した作品。

 年齢制限のある作品でショッキングな場面も多くあるが、場面というよりも俳優陣の迫真の演技に恐怖感を覚えた。諸星の人物像の、犯人を追いかけるよりもシートベルトの着用を優先させ酒もたばこもたしなまない初心な青年だったのが、手柄を挙げていく一方、ヤクザから「アニキ」と呼ばれ畏怖される、悪事に染まった人物となるまでの変化が鮮明に表現されている。諸星と小坂の関係性も面白く、先輩に刑事になった理由を聞かれた際「公共の安全を守るため」と両者とも答えたが、その後悪事に染まり堕ちていった諸星と、その後も信念を忠実に守っていった小坂の対比が興味深いと感じる。
 先に書いた通り衝撃的な展開もあるが、人が翻弄され狂っていく物語は圧巻の一言だった。

6.『亜人』(映画)
原作:桜井画門
監督:本広克行
<あらすじ>
 研修医の青年・永井圭は交通事故をきっかけに、不死の新人類「亜人」であることが発覚した。研究施設で実験モルモット同然の扱いを受けた彼は、そこで佐藤と名乗る亜人に助けられる。しかし佐藤はテロリストであり、その思想に共感できない永井は佐藤と対立する。

 二時間ほどの映画にまとめるため、原作とは異なる設定がいくつかあったが、散らかることなくまとまった内容となっていたように思う。俳優陣も言っていたように不死身の体を持つ者同士の戦いになるため、ともすれば茶番になりそうな戦闘シーンを緊張感のあるものとするには工夫や努力が必要になりそうだが、しっかりと手に汗握る展開となっていたことに制作陣の熱意が感じられた。
 メインとなるのは永井と佐藤の戦闘ではあるが、彼ら以外にも亜人は登場する。その中で下村という亜人でありながら人間に付き従う異色の人物が登場するが、個人的には亜人の能力である黒い幽霊にクロちゃんという名前を付けている点が、その他の亜人と下村の差異に感じられた。人間サイドであるが人間ではなく、その他亜人と比べても異質であることが強調されていたように思う。どちらの立場にも上手く馴染まないことは永井に共通するものであり、案外似た者同士だったのではないかと感じたので、二人のシーンがなかったことは少し残念だった。
 亜人と人間、永井と佐藤、下村と他の登場人物というようにこの作品は様々な対比で成り立っているように思うので、時間があれば今度は原作を読んだうえで別の視点からも見直してみたい。

7.『閉鎖病棟―それぞれの朝―』(映画)
原作:帚木蓬生
監督:平山秀幸
<あらすじ>
 精神病棟を舞台とした作品である。死刑囚だったが死刑執行後蘇生してしまった秀丸は、刑務所には置いておけないという理由で精神病棟に移される。そこで出会った様々な人とのあたたかな交流が始まる。

 「事情のない人なんていない」というセリフが一番印象的だった。他人の事情を詮索せず、それでいて独自の距離感でコミュニケーションを取る人が集まり、病棟の空気が築かれていると感じる。外部からの面会者という形で外の世界との違いを見せつけられる場面もあるが、どんな時でもあたたかく寄り添う秀丸の姿からは安心感が感じ取ることができる。『楽園』と同様に閉じた世界であるにも関わらずそこに恐怖が漂っていないことから、人が環境をつくることもあると改めて実感した。
 「実際の病棟はここまできれいではない」という批判があることも頷けるほど、美しい物語だったが、それでも人の繋がりや寄り添いを描いているという点ですばらしい作品だったように思う。

8.『64―ロクヨンー前編』(映画)
原作:横山秀夫
監督:瀬々敬久
<あらすじ>
 少女誘拐殺人事件、通称64―ロクヨンーは、時効まで残すところあと一年となった。当時事件を捜査一課で担当していた三上は広報課に移動となっており、情報を開示したくない上層部と情報の開示を要求する記者クラブとの板挟みの日々を送っていた。そんなある日、64担当捜査員の士気を高める名目で警察庁長官が視察に来る話が持ち上がる。

 広報官という警察を題材にした作品ではあまり登場しない役職を中心に据えた物語のため、「広報官」や「記者クラブ」の知識がないと序盤は少しおいて行かれるかもしれない。どちらも情報を扱う人たちであるにもかかわらず、情報開示における規制について対立を続けている様子が詳細に描かれていた。しかし、激しい対立があった後に記者クラブの飲み会に広報官が混ざり親しく話している様子を映すことで、毛嫌いしているばかりではなく、後に登場する「みんな普通の人です」というセリフに信憑性を持たせていた。記者クラブが三上の説得に応じる場面も含め、これらの場面では人の協力・団結を説いているように感じられる。
 64の事件に関しては、やはり遺族の感情がクローズアップされていた。子供を殺され、妻に先立たれた芳男が、三上や事件を未だ解決していない警察に対して激昂するでもなく感情の抜け落ちた表情を向けている点が、逆に底知れない怒りを抱いているかのようでぞっとした。

9.『64―ロクヨンー後編』(映画)
原作:横山秀夫
監督:瀬々敬久
<あらすじ>
 記者クラブとのわだかまりも消えた直後、新たに少女誘拐事件が発生する。上層部から開示された情報が少なすぎるため、三上は事件を担当する捜査一課の許可を得てともに警察車両に乗り込む。そこで事件の流れを追ううち今回の事件が64を模したものであることに気が付くのだった。

 芳男と正人の同じ娘を誘拐された被害者としての姿が、重なるようでいて異なる点が印象的だった。娘が殺されて戻ってきた芳男と生きて再会できた正人とで明らかな対比がある一方で、身代金を運ぶときの様子などに共通点があることを全て観終わった後に見返すと、考えさせられるものがある。64の犯人も最終的に判明するが、「なぜしょうこちゃんを殺した」という問いに「そんなもの自分が分かるわけがないだろ」と犯人が答えたことで、意味もなく被害者が殺されたことが観客に伝わり、謎は解けているにもかかわらず後味の悪さが残るものとなっている。
 ただし、最後に家にかかってきた電話の描写から、三上夫妻に希望があることも察することができる。何かを隠すことで守れるものは確かに存在するだろうが、それを隠し通せる能力もなく一方的に隠ぺいし続けることは争いしか生まないことを考えさせられる作品であるように思う。

10.『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(映画)
原作:ルイーザ・メイ・オルコット
監督:グレタ・ガーウィグ
<あらすじ>
 マーチ姉妹の実家を出た後の暮らしに焦点を当てた物語。ベスの病状悪化の知らせを受けジョーとメグが実家に集うなか、ジョーが懐古する形式で過去の彼女たちの暮らしを描き出す。

 ジョーは女性の幸せは結婚という形だけではなく、自立して稼ぎたいと考えている人物である。その一方で「結婚せず自由でいたいが、とても寂しい」という思いも持ち合わせており、その面からキャラクター像がよりリアルな一筋縄ではいかないものとなっていると感じた。また、過去を回想する形で時系列が入り乱れているため、過去のジョーにとっての幸せだった家族そろっての暮らしが美しいものとして強調されており、風景の色合いもそれに応じて暖色・寒色を使い分けている点が印象的だった。
 四姉妹のペアについても特徴がそれぞれ異なっており、特にジョーとベスという一見正反対に見えるペアが語り合っている場面では、画面の中の静けさを実感しつつ、奥底にある怯えのようなものが一番感じられたように思う。
2022/01/10(月) 22:02 No.1826 EDIT DEL
高田(峻) RES
夏休み課題21~30

21.『風と共にゆとりぬ』作:朝井リョウ
前作、『時をかけるゆとり』の続編。作家、朝井リョウという人間の「ゆとり世代」を描くエッセイ。日常、プロムナード、肛門記と3つの構成に分かれており、その中で人生の失敗や思い出が綴られている。Youtuber東海オンエアの虫眼鏡が概要欄を作成する際に参考にしており、今作の帯にもメッセージがついている。

朝井リョウの独特でユニークな言葉の言い回しが、シュールな笑いを誘いツボにはハマってしまう。朝井自身の性格がとても面白いのだが、語彙力を存分に発揮されたかのような書き方こそが、朝井ワールドと言える。

22.『しろくまカフェ』原作:ヒガアロハ
カフェを営む、常連客のパンダやペンギンなど動物たちと周りの人間たちが繰り広げるほのぼのとさせられるギャグ漫画。動物たちは人間界に生活しており、人間と共存し、言葉を交わすなど、人間社会に溶け込んでいる。

子供向けの作品ではあるが、大人には大人しかわからない、シュールなギャグや共通の悩みなど幅広い世代で楽しめる作品であると感じる。クスッと笑えるシーンが殆どで、特に激しい描写や悲しみの場面もないため、自然とほのぼのと癒される作品となっている。

23.『好きっていいなよ』作;葉月かなえ
橘めいは、小学校時代のトラウマで人を信用することができなくなっていた。高校生になっても、誰とも関わることなく、一人で行動していた。そんな中、同じ高校の人気者である男子の黒沢大和とひょんなことから連絡先を交換する。全く人を信用していなかった、めいは疑いつつも大和のことが気になっていく。

恋愛描写が多く、女子目線で描かれる胸キュンシーンが度々登場するが男女のラブストーリーである。しかしそれだけではなく、引きこもりがちだっためいの大和に出会ってから様々な困難を乗り越えていく成長の物語でもある。そこでタイトルの「好きっていいなよ」とは何なのかが理解することができる。

24.『僕は明日、昨日の君とデートする』著者:七月隆文
京都の美大に通う大学生の南山高寿は電車で出会った福寿愛美に一目ぼれする。勇気をだして声を掛け、「また会える?」と聞くと愛美は突然涙を流してしまう。その後意気投合して、交際がスタートするが、彼女には秘密があることを知る。そして初日に涙を流していたわけを知ることとなる。

『好きっていいなよ』と今作の映画では福士蒼汰が主演を勤めているが、全く違う人物を演じている。女子から人気者だった前者に対して、今作では恋愛下手なシャイな男子で描かれている。そして男子の目線で書かれていることも対称的である。様々な伏線が散りばめられていることで、切ない愛と感動のラブストーリーとなっている。

25。『ヒロイン失格』作者:幸田もも子
女子高校生松崎はとりは、幼馴染で人気者の寺坂利太に恋心を抱いていた。「利太に相応しいヒロインは絶対に自分だ」と自信を持っていたが、地味で控えめな女子の安達未帆と付き合ってしまう。はとりの自信は崩れ落ちていき、違う男子に興味がいってしまう―。

女子目線で描かれるラブコメディ作品。随所にギャグ要素が多いため笑うことも多いが、ラストは真剣で感動の場面もある。自信過剰でスクールカーストを気にしていることで「プライドが高い主人公」という視点が斬新であると考えられる。

26.『君の膵臓をたべたい』作:住野よる
 主人公の僕は病院で「共病文庫」という本を拾う。それはクラスの人気者の山内桜良が秘密に綴っていた秘密の日記帳で、膵臓の病気で余命がわずかなことを僕だけが知ってしまう。それを見た桜良は「死ぬ前にやりたいこと」に付き合うように言われ、正反対の性格の二人はお互いに憧れを抱くようになっていく。

 「食べる」ことで病気が治ると信じられていた昔話が今回のタイトルとなっている。しかし、感動的な結末を迎えると思いきや、思ってもいなかった出来事に誰もが悲しい気持ちになってしまう。とても切ないラブストーリーで感動する映画ランキングでは常に上位に座っている作品である。

27.『ザ・ファブル』(映画)作:南勝久
 伝説的な強さから「寓話」という意味の「ファブル」と呼ばれる一人の殺し屋がいた。幼い頃から「ボス」の指導を受け、数々の標的を仕留めてきた。しかし、「ボス」はファブルの正体が暴かれるのを恐れたボスは「一年間大阪に移住し、その間誰も殺さずに一般人として平和に暮らせ」と指示する。ファブルは「佐藤明」として大阪で生活を始めるのであった。

 暴力的なシーンも多いが、全体的にコミカルな物語であり、暴力団が出てくる中でも笑える場面があるのが特徴。ファブル演じる岡田准一のアクションが多く映画としてもとても見ごたえのある作品となっている。

28.『リバーズエッジ』作:岡崎京子
女子高生の若草ハルナは、元彼氏の観音崎にいじめられている山田一郎という同級生を助けたことをきっかけに、彼から秘密を打ち明けられる。それは河原に放置された人間の死体であったのだ。

90年代をイメージして作られているため、映像は4:3で撮影されたり、衣装など当時流行したファッションなどがモチーフとされている。犯罪や、LGBTなど多くの社会問題が反映された衝撃的な作品である。

29.『もののけ姫』原作:宮崎駿
室町時代の頃の日本。少年アシタカは村を襲ったタタリ神という化け物を退治した際に右腕に呪いを受けてしまう。呪いの正体は人への憎しみからなるナゴの守であった。アシタカは呪いを断つために西へ旅立つ。旅先の森で山犬に育てられた人間の娘、サンに出会う。

人間の自然環境破壊やハンセン病など、社会問題が隠された宮崎駿のメッセージ性の強い作品。これぞジブリ映画と思うほどの独特の世界観が広がっている。米良美一の歌声がこの世界観に絶妙にマッチしており、引き込まれていく。ジブリ映画の中でも傑作呼ばれる所以が理解できた。

30.『検察側の罪人』作:雫井脩介
東京地検の検事、最上の下に検察教官時代の教え子だった沖野が配属されてきた。沖野は老夫婦刺殺事件の容疑者、松倉を取り調べることとなる。しかし、松倉は嘗て最上が中学時代に仲の良かった女子を殺した事件とも関係があったのである。

専修大学文学部出身の雫井脩介が描くミステリー。タイトルにある通り検察の人間の中にとんでもない悪事を働いている人間が存在する。そしてあたかも平然とした態度で表にでていることを観覧者しか知らない秘密があることが面白い。木村拓哉と二宮和也のタッグが話題を呼んでいるが、二人が今まで見たこともない姿と役を見せている。
2021/09/21(火) 16:25 No.1825 EDIT DEL
高田(峻) RES
夏休み課題11~20

11.『TOKYO MER』 (ドラマ)脚本:黒岩勉
東京都を舞台に医療機器を備えた緊急車両(Mobile Emergency Room)で事故、災害、事件現場に駆け付け究明処置を施す、医療チームを描く救命医療ドラマ。

コロナ禍の時代をなぞらえた人間ドラマとなっている。死者0人を目標に日々活動を行っているが、第10話において、ついに死者がでてしまう。これは黒岩自身が毎日のコロナウイルスによる死者数に重みを感じてほしいという思いの下、このような衝撃的な展開を迎える。

12.『電影少女 2018』 作:桂正和
高校生ながら、叔父の家に一人で暮らす弄内翔はある日、家の中でVHSテープを発見する。再生するとテレビからビデオガールの天野アイが出現し約3か月生活を共にすることとなる。はじめは、喧嘩ばかりしているが、徐々に二人は恋人の関係になっていく。

AIと人間の恋愛模様を描くラブコメディ。最初は内気だった翔もアイとの出会いをきっかけに少しずつ心に変化が起き、同時に翔の成長を見守っていく物語でもある。

13.『半沢直樹 オレたちバブル入行組』原作:池井戸潤
東京中央銀行・大阪西支店で融資課長を勤める半沢直樹は最優良店舗賞を目指している支店長、浅野に西大阪スチールへの融資を指示される。半沢は十分な審査の時間を与えられず、強引にも無担保での5億円の融資が決定してしまう。しかし、西大阪スチールは粉飾決算していたことが明らかになり、倒産。支店長浅野は全ての責任を融資課長である半沢に押し付ける。融資額の5億を回収し、半沢の倍返しが決められるのか。

「やられたらやり返す、倍返しだ」の決め台詞でおなじみ半沢直樹の第一弾。日本人が好む勧善懲悪のストーリーが観ていてとても爽快である。普通であれば、譲歩してしまうようなよくある主人公の情は一切なく、半沢直樹がきっちりと敵を叩き潰すところに仕事への活力が湧いてくる。

14.『半沢直樹 オレたち花のバブル組』原作:池井戸潤
半沢は前作で債権を回収したことにより、東京中央銀行本部・営業第二部次長に栄転する。東京中央銀行は伊勢島ホテルに融資で120億円の損失をしてしまう。そこで頭取・中野渡は伊勢島ホテルの再建担当に半沢を指名する。しかし、そこには上司である大和田常務が裏で関係していることが発覚する。

前作の続編である、半沢シリーズ第二弾。ドラマ最終話では視聴率42.2%を記録し平成の民放テレビドラマ史上第一位の視聴率を記録するほどの人気作品。おなじみの決めセリフと痛快なストーリー展開はみていて飽きない、何度でも観たくなる作品である。

15.『半沢直樹 ロスジェネの逆襲』原作:池井戸潤
東京中央銀行から子会社の東京セントラル証券へ営業企画部長として出向を命じられた半沢直樹。ある日、大手IT企業の電脳雑技集団から新興IT企業・スパイラルの買収に関するアドバイザー業務を委託される。しかし、その業務を親会社の東京中央銀行証券営業部・部長、伊佐山によって横取りされてしまう。

前作の最後に活躍したのにも関わらず、子会社に出向ということでどのような展開か注目されていた、本作。銀行員を誇りに思う半沢の仕事ぶりがとても格好良い。テレビドラマでは約七年振りの放送。役者に多くの歌舞伎役者を用いており、演技や表情がとても迫力のあるものとなっている。

16.『半沢直樹 銀翼のイカロス』原作:池井戸潤
前作で電脳の粉飾を見破り、500億円の追加融資を阻止した半沢は東京中央銀行本部・営業第二部次長に復帰する。着任早々、帝国航空の再建という困難な案件を頭取・中野渡に任される。しかし、国土交通大臣の白井により、帝国航空の債権放棄検討を発表。半沢は帝国航空メインバンクである、開発投資銀行の谷川と共に債権放棄拒否を目指して、政府と戦っていく。

半沢シリーズの完結編。今回の半沢の敵は政府の大臣。史上最大の敵となることでシリーズの集大成を感じることができる。ドラマでも第一部に引き続き視聴率では最終話で30%を超えるなど人気。また、海外でも放送されファンが生まれるほどの大傑作となった。

17.『ドランクモンキー酔拳』監督:ユエン・ウーピン
地元名士の黄麒英が運営する名門道場の息子、黄飛鴻はチンピラの若造であった。みるにみかねた父が酔拳の名手である蘇化子に息子を鍛えてもらうように頼む。地獄のような鍛錬に耐え、酔拳を習得した飛鴻は殺し屋、鉄心と戦う。

アクション俳優ジャッキー・チェンの代表作。弱い自分を成長させるために行う修行のシーンは後の『ベスト・キッド』にも影響を与える。途中で修行を投げ出したり、ズルをして誤魔化す姿は私たちでも考えることなのでリアルで親近感を持つ。

18.『TOY STORY 3』監督:リー・アンクリッチ
17歳になった少年アンディは、持っていたおもちゃを屋根裏部屋へ仕舞い、ウッディのみを大学寮へ持っていこうとする。しかし、屋根裏部屋行きの袋が母の手違いでゴミ捨て場に持っていかれてしまう。それを発見したウッディは仲間を助けるが、ショックを受けたおもちゃたちはサニーサイド保育園へ行くことを決意する。

1,2と続いたトイストーリーシリーズの第三作。子供が大人になってしまったら、おもちゃはどうなるのかというテーマで創作されている。前作から10年以上期間が空いているのは、実際の子供の成長に合わせて作られているから。当時小学三年生ながら、私が映画館で涙が出そうになるほど感動した作品である。

19.『ホーンテッド・マンション』監督:ロブ・ミンコフ
ジムと妻のサラは不動産会社を経営していた。ある日、「屋敷を売りたい」と電話が入る。屋敷に向かった日は家族で湖に出かける日だったので、サラは反対したが、数時間で済むと終わることを約束に家族全員で屋敷を訪れることになる。打合せが終わると、突然大雨が降りだし、その晩は家族と屋敷で過ごすことになってしまう。

原作が無く、ディズニーランドのアトラクションから映画化された物語。ホラー要素もあるが、エディー・マーフィーがジムを演じていることによってコメディリリーフ的な役となるので、暗くなく、明るい温かいストーリーとなっている。

20.『カーズ/クロスロード』監督:ブライアン・フィー
ベテランレーサーとなったライトニング・マックィーンであったが、ある大会で新世代ルーキーレーサーのジャクソン・ストームに敗北してしまう。その日を境に新世代のレーサーが次々に現れ、ベテランレーサーは引退に追い込まれていた。意地を見せたいマックィーンであったが、なかなか追いつけず、無理をして大クラッシュをおこしてしまう。続けるのか引退するのか、マックィーンは岐路に立たされてしまう。

カーズシリーズの第三弾。第一弾では若いレーサーであったが、ベテランとなった今、若手の勢いに飲まれてしまうという人間でも起こりうる人生の分岐点に立たされてしまう物語。年を重ねるとはそのようなことかと考えさせられ、続けるのか、辞めて違う人生を選択するのか車が演じる人間ドラマであった。
2021/09/21(火) 16:24 No.1824 EDIT DEL
高田(峻) RES
夏休み課題 1~10

1.『古畑任三郎 season1』 「殺人特急」作:三谷幸喜
外科医の中川は走行中の特急電車の車内で、自身の弱みを握っている興信所の所長、宍戸を殺害する。そこにたまたま乗り合わせた刑事、古畑が列車の次の駅に到着するまでにどのように犯人を特定し、事件を解決するのか。

古畑の鋭い観察眼と頭脳が解き放たれる回。古畑の動きをよく観察することで視聴者も犯人を特定することができる。

2.『古畑任三郎 season1』 「汚れた王将」作:三谷幸喜
将棋棋士である、米沢八段は自身の封じ手の不正を見破られた竜人戦の立会人、大石を殺害する。たまたま宿泊していた古畑刑事によって事件を解決する。

将棋を普段から見る人はもちろん、将棋のルールがわからなくても楽しめる回。将棋特有のルールの中にトリックが仕掛けられ、古畑が謎を解く瞬間を見逃さないでほしい。

3.『古畑任三郎 season2』 「しゃべりすぎた男」作:三谷幸喜
弁護士である、小清水は自身の交際相手の向井を殺害する。その事件の犯人に古畑の部下、今泉が逮捕されてしまう。しかもその弁護を犯人の小清水が担当することとなる。真犯人を暴くため、法廷に古畑が登壇する。

三谷自身が得意とする、法廷ドラマに古畑のストーリーが落とし込まれており、非常に迫力のある俳優の演技力にファンが選ぶ伝説の回として挙げられている。

4.『古畑任三郎 season2』 「笑わない女」作:三谷幸喜
私立高校の教師、宇佐美は自身と犬猿の仲とされていた同僚の男を殺害する。戒律を重んじる校則に則った宇佐美の殺害方法が特徴で、いかにして古畑が追い詰めるのか。

犯人を逮捕するにあたって古畑の想像力と洞察力で犯人を追い詰めていく姿が面白い回である。

5.『古畑任三郎 season2』 「赤か、青か」作:三谷幸喜
理系大学生の林は遊園地の観覧車に爆弾を仕掛けるその際、姿を見られた警備員の男を殺害。爆弾が発見され、爆弾処理の一員として林が参加する中、古畑が林の怪しい動きを確認する。
古畑が犯人の林を鎌にかける爽快感のある場面、そしてなにより古畑が唯一犯人に手を出す回として有名である。

6.『古畑任三郎 season3』 「完全すぎた殺人」作:三谷幸喜
車いすの化学者、堀井は嘗て女性関係で恨みを持っている親友の等々力を一歩も外に出ず、電話誘導だけで殺害する。この超難解の完全犯罪に古畑が挑む。

シリーズの中でもトップクラスの完全犯罪の事件。ひとつひとつの犯人の綻びから、古畑が犯人をあぶりだしていく。

7.『古畑任三郎 season3』 「雲の中の死」作:三谷幸喜
美術品研究家の臺は不倫相手の女を飛行機内のトイレにて事故死させてしまう。その場から離れる臺を古畑の優秀な部下、西園寺によって解決していく。

シリーズ唯一、古畑が全く動かず部下の西園寺と今泉によって暴かれるという異質な回。三谷のチャレンジ回として扱われている。

8.『古畑任三郎 season3』 「最後の事件」作:三谷幸喜
テロ組織の一味による、集団での殺人。電車のハイジャックを偽装し、事件を起こす。レギュラー放送の最終回である。

シリーズの最終回とあって、週では事件は解決されず、二週に跨って放送された回。今後を匂わせる幕切れとともに、シリーズは完結する。

9.『古畑任三郎 seasonファイナル1』 「今、甦る死」作:三谷幸喜
パン工場を経営する堀部兄弟。兄のやり方に不満を持つ弟、音弥が小学生の頃に自由研究として書いた、殺人の方法を示す指南書を元に兄を殺害する。しかし、そこに黒幕が。

およそ、7年ぶりの復活として作られた第一回。古畑シリーズでは全編最初に犯人が明かされる形でストーリーが展開していくが、この回では、視聴者に最後まで真犯人を明かさない形となっており、視聴者も騙されていく。

10.『古畑任三郎 seasonファイナル3』 「ラスト・ダンス」作:三谷幸喜
双子の脚本家、加賀美姉妹は折り合いがうまくいかず、妹が姉を殺害する。双子の姉妹
を犯人としているところに注目することに古畑がどう事件解決するか。

古畑シリーズの完結編。これが古畑最後の事件としてストーリーが展開されていく。また、俳優、田村正和による、最後の古畑となってしまった。
2021/09/21(火) 16:22 No.1823 EDIT DEL