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2年 清水 RES
春期休暇課題11~20

11. 『ソードアート・オンライン ―プログレッシブ-』(ライトノベル)
作者:川原礫 イラスト:abec
2022年、あるゲームが発売された。そのゲームの名はソードアート・オンライン。
人類初のVR型MMORPGということもあり人々は熱狂の渦に沸いた。しかし、サービス開始日にログアウトできないという事象が発生。ログインしていた約一万人のプレイヤーたちは、ゲームマスターから衝撃の事実を告げられる。HP全損と共に現実の自分も死に至る、そんな狂気のソフトであったことを。デスゲームと化した世界で出会う少年と少女。懸命に生き抜く彼らはゲームをクリアし、帰還することが出来るのか。原作者・川原礫によって紡がれるSAOリブートシリーズ。

原作小説第1巻、第2巻で描くことが出来なかったアインクラッド攻略を第1層から描いた作品。映画ではアスナが主人公になっているが、小説ではキリトが主人公となる。
本作はVRゲームが舞台ということもあり、システムの説明やフィールドのコンセプト、クエストの流れの説明が非常に重要な要素である。これらはキリトのベータテスト時代の回想やアスナから投げかけられる質問に返答するという形で過不足なく説明されており、話の流れを切って説明しないため読む側に優しい構成になっている。メインクエストの流れやコンセプトもしっかり練られており、この作者にしか描くことのできない世界観だと感じる。アニメではあまり触れられることのなかったソードスキルについてもしっかり言及されており、アニメに該当する部分は見た後に読んでみるとより楽しめると思われる。
2巻からゲームに必要不可欠なNPCが存在感を増してくる。このNPC達の中にはプレイヤーと遜色ない会話ができる高度なAIを持ったものたちが存在し、まるでアインクラッドという世界の中でずっと生きていたかのような錯覚をもたらす。このNPC達の存在がキリトとアスナがもう一つの現実という考え方を強めるのに大きな影響をもたらしていると考えられる。

12. 『とらドラ!』(アニメ)
原作:竹宮ゆゆこ 監督: 制作:J.C.STAFF
生まれつきの鋭い目つきが災いして、まわりには不良と勘違いされている不憫な高校二年生高須竜児。彼は高校二年生に進級した春、新しいクラスで一人の少女と出会う。少女の名前は逢坂大河。超ミニマムサイズな身長でありながら、わがままで短気、暴れ始めたら、誰にも手が付けられないことから通称手乗りタイガーと呼ばれ、恐れられている少女であった。最初は関わらないようにしていた竜児だったが、ある日の放課後、彼は手乗りタイガーの隠された一面を知ってしまう。それをきっかけとして、竜児は大河と関わりを持つようになっていく。

ライトノベルが原作の青春ラブコメディと言えば真っ先に思い浮かぶ作品。高校生の男女の恋愛模様が描かれる。
本作の素晴らしいところは脚本である。原作が全10巻と2クールで放送するにはやや巻数が多めである。しかしながら各巻のエピソードの核となる部分をきっちりと残しながら必要な場面とそうでない場面を取捨選択しつつ、原作で足りなかった部分をしっかりと補っている。これによって物語のテンポ感も非常に良くなっている。特に原作では語られることのなかった櫛枝と川嶋の心情が台詞によって多数追加されており、物語への没入感をより高めてくれていたと感じる。最後の10巻の内容のみ他の巻と比較すると、大幅な改変が加えられているが、竜児と大河の未来を暗示するかのようであり、個人的にはよかったと感じる。
本作は登場人物全員が優しく、自分のことよりも相手のことを優先して考える傾向が強い。それゆえになかなか進まない恋愛模様が大きな魅力であるのだが、特に主人公二人が顕著である。しかし、主人公二人の相手優先の根幹にはお互いの家庭環境の対照さが絡んでおり、自分にはないものを持っているからこそ、幸せになってほしいという想いがあると思われる。しかし、それは共依存に近いもののようにも感じられ、自分の中に芽生えた本心になかなか気づくことができない要因であったと考えられる。

13. 『とらドラ!』(ライトノベル)
作者:竹宮ゆゆこ イラスト:ヤス
12と同じ

恋愛系の作品としては珍しく、語り手が一人称ではなく三人称の作品。この場合、作品に没入できないことがあるのだが心情描写に全く違和感がなく、作者の文章力の高さが窺える。基本的に主人公である竜児の心情描写と行動がメインで進行していくが、同級生たちの心情が語られないのがやや残念な部分である。竜児の推測で語られる部分が多く、語り手を変えてでも、描いてほしいと思った。
竜児と大河の関係の進行は丁寧に描かれており、つかず離れずを繰り返す様子が非常にもどかしい。特に大河が本心に気づきながらも、櫛枝のために竜児から離れようとする姿が印象的であった。
第1巻では呼称を変化させ大河と竜児を虎と竜に例えて傍らに居続けると宣言する場面がある。ここでは友達として対等にいるという意味が強いを思われる。一方10巻での同じ例えでは恋人としての意味合いが強いと感じられ、二人の距離がより親密になったことを作品全体を通して表現していると考えられる。
  
14. 『わたしはあなたの涙になりたい』(ライトノベル)
作者:四季大雅 イラスト:柳すえ
全身が塩に変わって崩れていく奇病“塩化病”。その病で母親を亡くした少年・三枝八雲は、一人の少女と出会う。天才的なピアノ奏者である少女の名は五十嵐揺月。彼女のピアノに対する真摯さと、その繊細な指でいじめっ子の鼻をひねり上げる奔放さに八雲は我知らず心惹かれていく。しかし高校に進学すると揺月はイタリアへと留学してしまう。自分と彼女の間にある圧倒的な差を痛感した八雲は小説を書き始める。そんなある日、揺月との再会が突然訪れる。それが運命を大きく変えてしまうことを彼はまだ知らなかった。

第16回小学館ライトノベル大賞《大賞》受賞作。八雲と揺月の交流と成長が描かれる。八雲と揺月のやり取りでは、印象操作のような表現で幻想的に語られる部分が多く、読者が感情を想像して楽しめる。
揺月がピアノ奏者ということもあって、ショパンやベートーヴェンといった有名な音楽家たちの名前や生い立ちを重ね合わせることが多かったが、その部分については詳しい説明があったため、音楽に全く詳しくない私でも苦しむことなく読むことができた。
また、本作では親と子という部分にも焦点があてられている。八雲の父親は影と表現されていることが多く、父親と影の表現を使い分けることで親子の時間の始まりと終わりを示唆していると考えられる。一方、揺月の家庭は両親が健在だが父親の存在が薄くなっており、八雲の家庭とやや似ている。しかし、その実態は母親による虐待的な教育指導がされている為、愛情を注がれる存在はピアニストとしての揺月であると考えられる。

15. 『僕が七不思議になったわけ』(ライト文芸)
作者:小川晴央 
石橋を叩いても渡らない心配性の高校生・中崎夕也はある夜、七不思議を司る精霊・テンコと出会う。深夜の校庭に桜が舞い散る中、宙に浮かぶ袴姿の彼女はとんでもないことを告げる。彼は学校の七不思議の空いた枠に仮引継ぎ登録されてしまっていたのであった。夕也は嫌がるも、登録を変えることはできないといわれてしまう。生きながらも七不思議になってしまった彼の日常はいったいどうなってしまうのか。

第20回電撃小説大賞《金賞》受賞作。七不思議となってしまった少年の一年間が描かれる。本作の主人公は非常に心配性な性格をしており、楽観的かつ能天気な性格をしているテンコとは真逆の性格である。しかし、この対照さが会話のテンポを軽いものにしており、飽きることなく読むことが出来る。
本作は四つの章に分かれて構成されており、そのうち三つは主人公が語り手となっているが、一つだけ主人公ではない人物が語り手となっている章がある。そしてすべての出来事は現在進行形で書かれている。これらは意図的にされたものであると考えられ、終盤にて明かされる驚愕の事実への伏線として機能していると考えられる。
また、本作に登場する学校の七不思議そのものは私が小学生くらいの時に聞いたものばかりであったが、それぞれにオリジナルの要素が加えられている。これによってありきたりな七不思議でなくなり、さらにはオリジナルの要素を活かした問題解決もされている。

16. 『コロウの空戦日記』(ライトノベル)
作者:山藤豪太 イラスト:つぐぐ
無能な王によって開戦してしまった無謀で無駄な戦争。絶望的な敗戦のなかで、とある事情から戦闘機乗りになった少女コロウは死にたがりであった。そんな彼女が配属されたのは「死なさずの男」と呼ばれるカノ―が率いる国内随一の精鋭部隊であった。
圧倒的な戦力差で襲い来る敵の爆撃機を退け、生きるか死ぬかを繰り返す毎日。危険を顧みないコロウは無茶な飛び方を繰り返すが、仲間は必死に生につなぎとめようとする。彼らの技術を吸収し、コロウは少しずつ成長していく。

戦争ものに分類される本作だが、戦術の説明や機体の説明がしっかりしており、ミリタリー系統にあまり詳しくなくても楽しめる。日記形式で話は進んでいくので、基本的に過去形の文体が使われるが、戦闘の描写は現在形で進んでいく。そのため戦争という行為が書いている時点で終わったものではなく今起こっていることとして捉えさせる効果がある。また、途中で過去の話が入るが日記の日付を見ればわかるようになっているため、戸惑うことなく読むことができる。
王が出す指示はかつての太平洋戦争で東条英機が掲げていた精神論に似ており、ファンタジーでありながら歴史上あった出来事を重ね合わせてしまいそうになる。これは用いられている戦術にも言えることであり、実際の史実に基づく部分を入れることで完全なファンタジーでなくしたと考えられる。

17. 『琥珀の秋、0秒の旅』(ライトノベル)
作者:八目迷 イラスト:くっか
修学旅行で函館を訪れていた内気な高校生・麦野カヤトは世界の時が止まるという信じられない現象に見舞われる。自分以外が完全に静止した街で動けるのは彼一人かと思いきや、もう一人いた。地元の不良少女・井熊あきら。二人で時を動かす方法を模索していると、麦野は数日前に死んだ叔父の「琥珀の世界」という言葉を思い出す。世界の時が止まったことに何か関係があるかもしれないと考えた二人は叔父の家がある東京を目指して旅を始める。

夏季休暇期間に読んだ『夏へのトンネル、さよならの出口』の作者の四季シリーズの一つ。今作も問題解決に向かう中での交流と成長が描かれる。
麦野という人物は世界の時が止まってしまい、食べ物や飲み物を用意しなければならないときに盗みはよくないと常識的な倫理観を持つ人物であるが、この特異な状況においてはやや変わった人物であるかのように感じられる。同行している井熊が平然とコンビニからお菓子や飲み物等を持ってくる方がまだ当たり前のように感じられた。
他人への意識、偏見というものが随所に見受けられ、例えば麦野は叔父に対して「真人間にならないでほしい」と思っており、同族意識を抱いていたことが窺える。井熊もトラブルに見舞われて麦野と和解するまでは下に見ているかのような発言がいくつかあった。このようなきれいではない人の内面を描くことで日常的に抱く感情への共感を持たせ、すべてが終わった後の二人の成長をより印象深いものにしたと考えられる。

18. 『バスタブで暮らす』(ライトノベル)
作者:四季大雅 イラスト:柳すえ
二十二歳の磯原めだかは福島県郡山市出身。ちいさく生まれてちいさく育ち、欲望らしい欲望もほとんどない女性。世間とのずれに生きづらさを感じつつも、愉快な家族に支えられて生きてきた。就職をきっかけに実家を離れて一人暮らしを始めるも職場でのパワハラに耐え切れず、すぐにとんぼ返りしてしまう。逃げ込むように心が落ち着くバスタブの中で暮らし始め、それなりに楽しい毎日を送っていた。しかし、いつまでもそうしているわけにはいかず、親から出てくることを迫られる。これは彼女がもう一度生まれ変わるための物語。

バスタブで暮らすことを通じて、変わっていく女性の物語。この作品におけるバスタブとは人をつなぐ場所、あるいは社会と自分をつないでくれる中間地点のようなもの
であり個を作る場所であると考えられる。
本作では能の面やへのへのもへじを用いた表現が多く登場する。能の面はめだかにとって相手の感情を表しているものであり、能の面がついている時はあまりその人と関わりたくないときと思われる。へのへのもへじというのは何者でもない、言わば個が確立されていない人の象徴のようなものとして用いられていると考えられる。
就職という通過儀礼に失敗して大人になることができず、何者かになりたいという思いを抱えている主人公はどことなく学生の私に似ているように感じ、それゆえに感情移入しやすかった。
めだかは社会保険料や税金を払っていないことに罪悪感を抱きながらも、親に体調を整えることに集中するように言われて安心している。そこでは社会人としての自覚と社会人としてやっていけるのかという不安が同居しているように感じる。しかし、めだかがインターネットを介して、リスナーたちに元気を与え個を確立していくことからは、社会で生きていくことは一種類だけではなく様々な方法があるということを表現していると感じた。

19. 『さようなら、私たちに優しくなかった、すべての人たち』(ライトノベル)
作者:中西鼎 イラスト:しおん
「姉を死に追いやった七人の人間を皆殺しにしてやりたいの」と冥は栞に言った―。四方を山に囲まれた田舎町で、三年前、冥の姉・明里は凄惨ないじめに遭い自ら命を絶った。その復讐のために冥はこの町に戻ってきたのだ。冥は巨大な蛇の神を自分に憑かせ、超常の力を得る封印された祭儀『オカカシツツミ』を行い、神様の力を借りて栞と共に一人ずつ標的を殺していく。復讐と逃避行の日々の中で二人は恋に落ちるが、やがて力を借りた代償としての〈死の運命〉が冥の身に降りかかってくる。(裏表紙より)

命と引き換えに復讐を行う少女を描いた作品。超常の力を用いた復讐が執念深さを感
じさせ、復讐された者たちの凄惨な死にざまが繊細な筆致によって描写されている。
復讐の進行と合わせて章ごとに佐藤明里の自殺の真相が明かされていく。佐藤明里が自殺に至るまでの過程で心をすり減らしていく描写あるのだが、これが特に丁寧に描写されている。実際に作者が精神科の友人に取材しながら執筆したということもあり、リアリティがあり、読んでいるこちらも心をすり減らしそうになった。
田舎と都会の違いが空気感や近所の情報網で表現されており、栞が田舎特有の事象に批判的であることから都会への憧れが強いと思われる。そんな彼は復讐の手伝いを通して自分の生き方を見直すことになる。姉の死、母親との別れ、父親の姿を頭に思い浮かべながらも、自己満足を満たそうと考えるのだがそれは冥という少女に強烈に惹かれているからである。しかし、そこには年上として見守りたいという保護者的な感覚と復讐を楽しみたいという感覚があるように感じた。

20. 『星降る夜になったら』(ライトノベル)
作者:あまさきみりと イラスト:Nagu
高校三年生の花菱准汰の日常は起きて、学校へ行き、遊んで、寝る。ただそれだけであり、省エネで適当であることは彼らしさですらあった。そんな彼は担任から美術の補習を言い渡されてしまう。しぶしぶ美術室に向かった彼が出会ったのは一学年下の渡良瀬佳乃。彼女は准汰と真逆で超が付くほどこだわり派の人間であった。最初こそ険悪であったものの徐々に仲を深める二人。そんな中、佳乃が奇病に伏してしまう。しかし、奇跡が起きた。彼と彼女は他人となり、性格も変更され、生きることが許された。互いを想うがゆえにすれ違うことを選んだ、儚い青春の物語。

スノードロップ彗星に願った二人のすれ違いが描かれる作品。正反対故に互いの当たり前が嚙み合わず、最悪な空気になることも多いが、逆に考えると正反対だからこその発見や憧れがあるように感じた。
本作は前半と後半で語り手が変わっており、前半では高校生活と彗星の真実が、後半で佳乃の成長と過去が主に描かれている。これらはここまで完全に分けることなく、混ぜ合わせてもいい要素だったのではないかと考えもしたが、あえて完全に分けることによって准汰が佳乃の物語にほんの少しだけ関わった人のように感じさせてくれる。
子供のころに関わった人がもしかしたら身近にいるかもしれないというのが本作のテーマであり、声をかければ変わった未来というのが様々なところにある。それを体現したのが准汰と佳乃の物語だと思った。また、佳乃が生きているだけで周囲の人の未来を奪ってきていることを自覚して、絵を描く動機と存在意義を見失う場面は、生きる中で無意識に人と関わっていることの例のように感じた。
2024/04/15(月) 16:09 No.2016 EDIT DEL
2年 清水 RES
春期休暇課題

1. 『さくら荘のペットな彼女』(アニメ)
原作:鴨志田一 監督:いしづかあつこ 制作:J.C.STAFF
学園の問題児の巣窟「さくら荘」に住む2年生の神田空太は、変人たちに振り回されながら、「脱・さくら荘!!」を誓う毎日。
そんなある日、「さくら荘」に可愛くて清楚で、しかも世界的な天才画家である椎名ましろが越してくる。彼女を寮の変人たちから守らねば!と考える空太だったが、ましろにはとんでもない秘密があった。なんと彼女は外に出れば必ず道に迷い、部屋はめちゃくちゃ、ぱんつすら自分で選べないし、穿けない、生活破綻少女だったのだ!
空太は寮生たちによってましろの“飼い主”に任命されてしまう。こうして凡人・空太と天才少女・ましろの“飼い主とペット”生活が幕を開け・・・?
この物語は、変人と天才と凡人が織りなす青春学園ラブコメである。
(公式サイトより)

専修大学の最寄り駅である向ヶ丘遊園駅周辺が舞台となった作品。実際、作中で向ヶ丘遊園らしき駅と登戸駅が登場する。あらすじでは青春学園ラブコメなどと書いているが、クリエイターたちによる熱い物語の一面もある。天才と凡人の世界の違いが作中通してずっと付きまとってくる問題であり、凡人である主人公が才能の差に打ちのめされ複雑な感情を抱く場面がいくつもある。多くは登場する人物たちの言葉から読み取ることができるが、あえて表情を見せないようにしていることや悪天候を描写することが視聴者に心情を想像させる効果を担っている。常に重い雰囲気があるわけではなく、日常的な場面は非常にコミカルに描かれている。ほぼ毎話ある、ましろに対する空太のツッコミや第7話ではバナナを神のいたずらと指し示す、魚眼レンズから覗いたかのような絵で常識の崩壊を表現する等、徹底的に楽しませてくれる。お互いを慮るゆえのすれ違いや才能の壁に苦悩する話との比率がよく緩急がつけられている為、視聴者を飽きさせることがないと考えられる。

2. 『Re:ゼロから始める異世界生活』(アニメ)
原作:長月達平 監督:渡邊政治 制作:WHITE FOX
コンビニからの帰り道、突如として異世界へと召喚されてしまった少年・菜月昴。
頼れるものなど何一つない異世界で無力な少年が手にした唯一の力、それは死して時間を巻き戻す《死に戻り》の力だった。大切な人たちを守るため、そして確かにあったかけがえのない時間を取り戻すため、少年は絶望に抗い、過酷な運命に立ち向かっていく。(公式サイトより)

第一期では昴の成長に焦点が当てられていると感じた。エミリアと仲違いしたときには自分の言い分が正しいと信じ込む自己中心的な一面が見え、それを証明するために躍起になる子供っぽさがある人物であった。これは突然の異世界転移による孤独や頼れる者がエミリアしかいなかったことが影響していると思われる。また、死に戻りという能力故なのか死を軽視するような発言も見受けられた。死に戻りによる心の摩耗が瞳にも反映されており、ハイライトが消えてしまった時にはその絶望の深さを表していると考えられる。
第18話「ゼロから」でのレムの台詞が非常に有名であるが、昴の心の闇は影と頭上の雲で表されており、レムの空間が幻想的に描かれている為、心を浄化するヒーラーのような立ち位置になっている。ここで昴が自分について語るときは暗いのに対して、レムが昴について語るときに明るくなっているのは同じ人の違う部分に目を向けていることの対照さであると考えられる。
また、後期のゼミのなかでヴィルヘルム・ヴァン・アストレアの価値観が古いという話があったが、女性が進んで政治的、社会的地位の高い任務に就いている姿は見られた。しかしながらこの価値観が古いかと言われるとやや疑問が残る部分がある。例えばクルシュは自身が女性であることに複雑な想いを抱き男性用の軍服を着用している。それは上に立つものは男性のようでなければならないという考えとして捉えることも可能であり、女性は安全なところにいるべきであるという考えが社会的にも未だ浸透していると考えられる。

3. 『Re:ゼロから始める異世界生活 2nd SEASON』(アニメ)
原作:長月達平 監督:渡邊政治 制作:WHITE FOX
魔女教大罪司教「怠惰」担当ペテルギウス・ロマネコンティを打倒し、エミリアとの
再会を果たしたナツキ・スバル。辛い決別を乗り越え、ようやく和解した二人だった
が、それは新たな波乱の幕開けだった。
想像を超える絶体絶命の危機、そして襲い来る無慈悲な現実。少年は再び過酷な運命
に立ち向かう。(公式サイトより)

第一期をスバルの成長とするのなら第二期はエミリアの成長の物語となっている。瞳を用いた表現が度々登場し、瞳に映る、映らないを通して心の通じ合いや他人をどのような人物と認識しているかが描かれている。特に第44話では育ての母の瞳にエミリアが映らないのに対して、エミリアの瞳には映っていることから互いに見ているもの違いが表れている。それ以外にも天候や些細な行動による感情の揺れも見ることができる。最終話ではエミリアが入った際には墓所に眠る人物の顔が映らなかったが、ベアトリスとロズワールが入った際に顔が明かされることで見た者にとっての重要度の違いを表していると考えた。
オットーという少年がスバルを助けようとするわけは詳しく語られなかったが、誰にも理解されない自分だけの世界を持っていることが共通している為、それが理由と考えられる。また、エミリアの成長は極めて困難であったと感じた。エミリアの言葉から極端な自己肯定感の低さ、孤独感、過去の記憶に対する不安等を読み取ることができ、これらの払拭には常に支え続けてくれるスバルの存在が必要不可欠であったと考えられる。
  第一期と比較すると登場人物たちが多く、それぞれが思惑に則って行動しているため、内容が非常に複雑かつ難解になってしまっている。アニメだけでの理解は不可能に近く原作小説も読むことで楽しめる作品だと感じた。

4. 『86-エイティシックス-』(アニメ)
原作:安里アサト 監督:石井俊匡 制作:A-1pictures
東部戦線第一戦区第一防衛戦隊、通称スピアヘッド戦隊。サンマグノリア共和国から排除された〈エイティシックス〉の少年少女たちで構成された彼らは、ギアーデ帝国が投入した無人兵器〈レギオン〉との過酷な戦いに身を投じていた。そして次々と数を減らしていくスピアヘッド戦隊に課せられた、成功率0%、任務期間無制限の「特別偵察任務」。それは母国からの実質上の死刑宣告であったが、リーダーのシンエイ・ノウゼン、ライデン・シュガ、セオト・リッカ、アンジュ・エマ、クレナ・ククミラの5人はそれでも前に進み続けること、戦い続けることを選択する。希望や未来を追い求めようとしたわけではない。戦場が彼らにとって唯一の居場所なのだから。
そしてその願いは皮肉にも、知らぬ間に足を踏み入れていた新天地で叶うことになるのだった。(公式サイトより)

本作はサンマグノリア共和国とエイティシックスの二つの視点で物語が進行していく。この二つの視点はAパートとBパートによって分けられていることが多く、戦況や指示する側の状況を互いに補う効果を持っている。サンマグノリア共和国の人たちの会話やニュースなどからはエイティシックスに対する根強い差別意識を感じさせ、エイティシックスはそれを恨み、バカにするような言動から相容れない存在であることを感じさせる。この他にも他国が共和国に批判的な意見を言い放つこともあり、ストーリー全体として差別意識や傲慢というのが背景にあると考えられる。
サンマグノリア共和国の視点で描かれている時には戦況は通信機による情報しか入ってこず、どのような戦いが行われているかは描かれない。それゆえに、悲鳴や死の間際の言葉が嫌な想像をさせる構成になっている。また、エイティシックスの指揮官であるレーナの葛藤もこちらの視点では強く描かれ、勲章のずれや立っている場所、染めた髪の毛などが彼女の心の内を表している。多くは語られないが、これらの要素から推測することが可能になっている。
エイティシックスが戦っているときの空は常に暗く描かれており、これが普段の日常の明るい空との対比になり、戦争そのものが本来は非日常の行為であるように感じさせる。焦点があてられるのは主にシンエイ・ノウゼンという人物であり、彼が戦う理由を見つけることが一つのテーマでもある。その中で仲間の死の受け止め方、死者との確執が描かれており、兄の呪縛からの解放等はモザイクの有無や服装の変化によって表現されている。

5. 『Another』(アニメ)
原作:綾辻行人 監督:水島努 制作:P.A.works
死者は誰――?
その学校のクラスには誰にも話してはならない“秘密”がある。
1998年、春。夜見山北中学校に転校してきた榊原恒一は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。不思議な存在感を放つ美少女・見崎鳴に惹かれ、接触を試みる恒一だが、いっそう謎は深まるばかり。そんな中、予想もしなかった惨事が起きてしまう。

ホラー作品のような暗い雰囲気が特徴的な作品。クラスに伝わるある呪いによって人が死んでいく。死に方が非常に絶妙であり、あり得ないと否定したいものの絶対に起きないということのできない死に方をする。これによって死が現実味のあるものになり観ている者に恐怖を味わせる効果を担っている。作中、曇りか雨の天候が多く、晴れている描写が少なかったのも恐怖を感じた要因の一つであったと思われる。
呪いの解消のために必要な差別をする描写があるが、結局のところ本音は自分が死を迎えたくないという利己的な理由であり、この側面は終盤にかけての疑心暗鬼とクラスメイト同士による殺し合いに反映されていた。
作中で気になったのが、4という数字。エレベーターの階数表示に存在しない描写があり、クラスの守り事についても規則の4つ目で急に場面が変わることがあった。これには4という数字が死を連想させるものということが何か関係しているのではないかと思った。

6. 『プラスティックメモリーズ』(アニメ)
原作・脚本:林直孝 監督:藤原佳幸 制作:動画工房
現代より少し科学が進んだ世界。
18歳の“水柿ツカサ”は大学受験に失敗したものの、親のツテのおかげで世界的大企業SAI社で働くことになった。SAI社は、心を持った人型のアンドロイド、通称『ギフティア』を製造・管理する企業で、ツカサはその中でも、ターミナルサービスという部署に配属される。だがそこは、寿命を迎えるギフティアを回収するのが業務という、いわゆる窓際部署。しかもツカサは、お茶汲み係をしているギフティアの少女“アイラ”とコンビを組んで仕事をすることになってしまう…。(公式サイトより)

動画工房制作のオリジナルアニメ。ギフティアと所有者たちの心と記憶の物語である。
本作のopでは最後にアイラの表情が必ず映されるのだが、その表情はアイラの心情によって変化するようになっており、感情の変化の波を追いやすくしてくれている。
思い出を作ることに消極的なアイラがツカサと関わっていくなかで少しずつ感情を取り戻していくのが本作の魅力である。それは全体を通して見るとアイラの表情に反映されている。第一話では感情の起伏が少なく、表情の変化も乏しく描かれていたが、終盤にかけてはツカサとの会話で表情が変わるようになっており、行動様式も大きく変化している。
また、ギフティアと所有者の関係についても深く描かれており、思い出が大きなカギになっている。この思い出はアイラが否定的な態度を示すものであるが、いくつもの回収業務をこなしていく中で、たくさんの人の思い出に触れていく。その中で辛い別れをもたらすものでありつつも次の幸福を願う原動力として思い出は描かれており、アイラ自身もそれを感じとっている。それが会話や何気ない行動で描かれるからこそ、最終話のあの別れが泣けるものになっていると考えられる。

7. 『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイルオンライン』(アニメ)
原作:時雨沢恵一 監督:迫井政行 制作:Studio 3Hz
銃と鋼鉄の世界《ガンゲイル・オンライン》でソロプレイを満喫している女性プレイヤー・レン。可愛いものが大好きな彼女は全身ピンクの装備で統一し、コツコツと地道にプレイを重ね、実力をつけていた。そしてとあることからPK―プレイヤー狩りの面白さに目覚めたレンはPKにのめり込み、ついには「ピンクの悪魔」と呼ばれるまでになる。
そんなレンは美人でミステリアスなプレイヤー・ピトフーイと出会い、意気投合。彼女に言われるがまま、チーム戦イベント《スクワッド・ジャム》に参加することになる。(公式サイトより)

ソードアート・オンラインシリーズで登場したゲームの一つを舞台にした作品。ゲームの概要、システム等についてきちんと説明がされるため、ソードアート・オンラインを全く知らない人でも楽しむことができる。
ソードアート・オンラインでは現実と仮想世界の繋がりについて多く描かれていたが、この作品では現実を切り離して考えている傾向が強いと感じた。そのわけはおそらく本伝に登場する人物たちが現実と似たような容姿のアバターを使用するのに対してレンやピトフーイは現実と異なる容姿のアバターであるからだと考えられる。
銃が主な武器となっているゲームであるのだが、肝心な武器に関する説明が多くないため、使用している武器の特性については把握しにくい部分がある。戦況はシステムを駆使した地図によって描かれることが多く、こちらは把握しやすいと感じた。また、レンの視点に合わせた移動の描写もあり、身長による視点の変化も感じやすくなっている。
また、ピトフーイという人物がゲーム上でのプレイヤーの死を楽しんでいる描写が多くあり、言動からは殺す覚悟を持った人に興味があると考えられる。その興味の対象となっているレンは潜在的には人を殺せる心の強さを持っていることになるのではないかと考えられ、GGOというゲームにどんどん染まっていたことからもその節があると思われる。

8. 『ソードアート・オンライン ―オーディナル・スケールー』(劇場アニメ)
原作:川原礫 監督: 伊藤智彦 制作:A-1pictures 公開日:2017年2月18日
2022年。天才プログラマー・茅場昌彦が開発した世界初のフルダイブ専用デバイス≪ナーヴギア≫――その革新的マシンはVR(仮想現実)世界に無限の可能性をもたらした。それから4年……。
≪ナーヴギア≫の後継VRマシン≪アミュスフィア≫に対抗するように、一つの次世代ウェアラブル・マルチデバイスが発売された。その名は≪オーグマー≫。
フルダイブ機能を排除した代わりに、AR(拡張現実)機能を最大限に広げた最先端マシン。≪オーグマー≫は覚醒状態で使用することが出来る安全性と利便性から瞬く間にユーザーへ広がっていった。その爆発的な広がりを牽引したのは、≪オーディナル・スケール(OS)≫と呼ばれる≪オーグマー≫専用ARMMO RPGだった。
アスナたちもプレイするそのゲームに、キリトも参戦しようとするが……。
(公式サイトより)

シリーズ初の劇場版となる作品。川原礫による完全オリジナルストーリーでARゲームが舞台となる。作中に登場するデバイス、オーグマーは現代の技術で開発することは不可能な代物であるが、秋葉原や代々木公園、恵比寿ガーデンといった東京のスポットが実際の風景に即して描かれており、オーグマーが提供するクーポンにはスターバックスコーヒーやローソンのからあげくんが登場している。この現実に即した風景と馴染み深いものによってファンタジーでありながら徹底的に現実的に描こうという制作側の意図が感じ取れ、いつかきっとこんな未来がくるであろうと思わせる効果がある。
VRの世界では登場人物たちの動きが速さを意識して描かれていたが、ARとなると動きがかなり遅くなっている。これはVRとARにおける体の感覚の違いを視覚的に表していると考えられ、特にキリトは序盤の戦闘では動きがかなり遅く、慣れてくるとスムーズになるといった感じである。
この作品では対比的な関係性が強く意識されているとも考えられる。キリトやアスナが旧アインクラッドのボスモンスターがOSに出現したことによって、SAOと同一視するようになるのに対して、敵となる人物はSAOとOSを完全に別のゲームと考えている。また、キリトと敵も対比的な関係と考えられる。SAOで両者に共通しているのは守ると誓った存在を守れなかったという点である。この点に関してキリトも敵も一度失意の底に落ちてしまうが、キリトが周囲の人による支えがあって立ち直ったのに対して、敵となるプレイヤーは最後まで立ち直ることが出来なかったという背景がある。この違いは後半部分での二人の戦闘中の会話、および、プレイヤーネームを変更していることに反映されていると考えられる。
アニメーションとしての表現やファンへのサービスも考えられており、ユナという少女が出現する際には蝶が飛んでいる描写が存在する。これは胡蝶の夢になぞらえて現実なのか夢なのか区別がつかないことを示唆していると考えられる。また、終盤でアスナが放ったソードスキルはテレビアニメ第二期までを視聴した人にとっては嬉しいサプライズになったと感じた。

9. 『ソードアート・オンライン ―プログレッシブー 星なき夜のアリア』(劇場アニメ)
原作:川原礫 監督:河野亜矢子 制作:A-1pictures 公開日:2021年10月30日
あの日、《ナーヴギア》を偶然被ってしまった《結城明日奈》は、本来ネットゲームとは無縁に生きる中学三年生の少女だった。
ゲームマスターは告げた。《これはゲームであっても遊びではない。》
ゲームの中での死は、そのまま現実の死につながっている。
それを聞いた全プレイヤーが混乱し、ゲーム内は阿鼻叫喚が渦巻いた。そのうちの一人であったアスナだが、彼女は世界のルールも分からないまま頂の見えない鋼鉄の浮遊城《アインクラッド》の攻略へと踏み出す。
死と隣り合わせの世界を生き抜く中で、アスナに訪れる運命的な《出会い》。そして、《別れ》―。
《目の前の現実》に翻弄されるが、懸命に戦う彼女の前に現れたのは、孤高の剣士・キリトだった―。(公式サイトより)
  
プログレッシブシリーズの劇場版第一弾。主人公をキリトからアスナに変更して最初の出会いを描いた作品である。
アスナを主人公にしたことでこれまで描かれることのなかったデスゲーム開始当初のアスナの不安、成長を存分に味わうことが出来る。そこにオリジナルキャラクターであるミトを加えることで、ゲームのシステムや知識に関する情報が明確に伝わるようになっており、原作ではややぼんやりしていたアスナの成長にも説得力を持たせてくれている。
特に、冒頭でミトがアスナを抱きしめて守ることを誓う場面とボス戦でアスナがミトを助け真正面から見つめ合う場面は、アスナが守られる立場から共に戦う立場へ成長した象徴であると考えられる。
本作では、HPバーが徐々に減少していく、ピンチになった際には目からハイライトが失われるといった描写がデスゲームの緊迫感を演出している。それ以外にも、洞窟内でプレイヤーがポリゴン片に変わる描写と、モンスターの凶悪そうな面を押し出した描写があり、潜在的に恐怖を植え付けているように感じられる。そして、もう一つ需要な要素がゲーム内でのアバターだと思われる。ソードアート・オンラインにおけるアバターはゲームマスターによって全員、現実と同じ姿にされている。現実とは違う姿であれば自分と別の存在という意識が働くが、現実世界と同じ姿で動いていると現実と仮想を切り離すことが困難になり、それが死の実感をより高めていると考えられる。
オリジナルキャラクターが加わるということもあって、改悪されてしまうのではないかという不安が個人的にはあったのだが、ミトというキャラクターがアスナの視界に入らなかったと思わせるような描写を追加することで、TVアニメ版から離れすぎないように配慮されている。その一方で、ボス戦でキリトが放つソードスキルが変更されているなど、ミトの存在を意識させるような描写も見られた。

 

10. 『ソードアート・オンライン ―プログレッシブ― 冥き夕闇のスケルツォ』(劇場アニメ)
原作:川原礫 監督:河野亜矢子 制作:A-1pictures 公開日:2022年10月22日
世界初のVRMMORPG《ソードアート・オンライン》がデスゲームと化し、1万人のユーザーがゲームの世界に閉じ込められてから、既にひと月以上が過ぎていた。
鋼鉄の浮遊城《アインクラッド》第一層を攻略したアスナは、キリトとコンビを組んだまま、最上階を目指し旅を続けていた。女情報屋アルゴの協力も加わり、攻略は順調に進んでいるかのように見えたが……
攻略を先導するトッププレイヤー集団、《ALS》(アインクラッド解放隊)と《DKB》(ドラゴンナイツブリゲード)。本来は共闘するべき2大ギルドの対立が勃発する。その陰には、暗躍する謎の人物の姿が―。
死と隣り合わせの危険な戦いのなか、《攻略》とはまた異なる《脅威》が、アスナとキリトを巻き込んでいく。(公式サイトより)

プログレッシブシリーズの劇場版第2弾。攻略を進めていった先、5層での物語となる。
本作ではキリトとアスナがパートナーであるということが非常に強調されているように感じられる。ダンジョン地下フロアに落ちたアスナをキリトが探し出し、恐怖で泣き出してしまったアスナをキリトが抱きしめる場面と5層ボス戦後にキリトが攻略組の人から悪口を言われることに涙を流し抱きしめる場面は立場が逆転している。終盤では黒フードの男に襲われる場面があるが、原作ではキリト一人が襲われたのに対して、本作ではキリトとアスナの二人に変わっている。このような原作改変と対照的な場面からキリトとアスナがパートナーであるということを軸として制作されたと考えられる。
また、舞台が2、3、4層を飛ばして5層となっているが前作『星なき夜のアリア』との繋がりも考えられている。その代表的な例がミトである。第5層ボス戦にてミトがアスナを助ける場面があるがこれは前作でアスナがミトを助けた場面と対になっている。さらに、アスナが「一緒にボスを倒すんでしょ。」と言い、互いの武器を交わす場面がある。前作にも同じような場面があったのだが、多少の違いがある。前作では助けた後、武器を交わすことはなかったのだが今作では武器を交わしている。些細な違いではあるが、この有無がアスナとミトが本当の意味で和解できた象徴であると捉えることもできると考えた。

2024/04/15(月) 16:08 No.2015 EDIT DEL
特別聴講生 キムイェファン MAIL RES
夏休みの課題 21~30
21. 映画 <羊たちの沈黙> 

   FBI要員スターリングは変態殺人者を追跡するよう命じられる。 彼女は事件解決の手がかりを得るために人肉を食べた罪で刑務所に収監中の精神科医レクター博士を訪ねる。 彼女はレクターと緊張感の中で交渉を行い、彼との面談をもとに犯人を追跡し始める。  

  以前心理学と関連した講義を聞いたことがあり、その時授業で学んだ内容がたくさん浮かんだ。 かなりリアルで残忍な場面が多くて見にくかったが、緊張感の中で映画を鑑賞する楽しさがあった。  


22. 映画<裏窓> 
  写真作家ジェフは撮影中に足を怪我し、車椅子に頼って自分の部屋で退屈な日常を過ごす。そんな彼はカメラレンズで周辺の隣人を盗み始める。 そうするうちにある日、反対側の家で起きた殺人事件を目撃することになり、彼は友人たちと一緒にその家を調査し始める。  

映画を見る行為自体を表現する映画のようだと感じた。 他人を密かに盗み見たいという根本的な欲望、電気を消して窓から向い側の家を盗み見るジェフのように、私たちは暗い映画館で四角いスクリーンを通じて映画の中の人物を盗み見ているのかもしれない。 構図が固定されているにもかかわらず退屈しないのが大きな長所だと考えた。  

   

 

23. 映画 <わたしは、ダニエル・ブレイク> 

  大工として生きていたダニエルは心臓病が悪化し、これ以上仕事ができない状況になる。 ダニエルは失業手当を受け取るために訪れた旧薬局で複雑な手続きに毎回挫折する。 そんなある日、2人の子供と一緒にロンドンに移住したケイティに会って助け合い、互いに頼るようになる。  

福祉の死角地帯を考えるようになる映画でありながら、人間の連帯も感じることができた。より良い社会を作っていくためにどんな点を補完していかなければならないのか考えてみるようになった。 カンヌ映画祭で15分間起立拍手を受けた映画。  

 

24. 小説 <ひまわりの咲かない夏>  

  みちおは休みを控えて欠席したクラスメートのSに宿題を渡してくれという先生の言葉にSの家に向かう。 だが、呼び鈴を押しても返事がなく、ドアを開けて入った家でみちおは首をつったSの死体に向き合う。 学校に戻ったみちおは先生に状況を説明したが、事件はますます変な方向に流れていく。  

鳥肌が立つほどぞっとする描写が目につく。 殺害方式や叙述方式が独特で新しかった。 転生世界観も興味深かった。 しかし、お互いを騙して騙すパターンが繰り返されて、読んで疲れた気持ちになる点は残念だった。  

 

25. 映画<スワロー> 
ハンターは金持ちの夫と良い家、まもなく生まれる子供まで、すべてが完璧な人生を過ごしている。 しかしハンターは妊娠後、食べてはいけないものを食べ始める。 

  典型的な専業主婦であるハンターは受動的なキャラクターだ。 それで彼女は何かを飲み込むことで自分の存在価値を証明しようとする。 妊娠というものが女性にどのような影響を及ぼすのか、また受動的な女性が主体的な人物に変わっていく過程が興味深かった。  



26. 映画<ビートルジュース> 
  主人公夫婦は交通事故で亡くなった後、自分たちが住んでいた家を離れられず幽霊の状態で歩き回ることになる。 そして新しく引っ越してきた家族の娘リディアと疎通することになる。 しかし、家はまもなく売れる危機に直面し、主人公夫婦は家で暮らし続けるためにリディアを助けることになる。  

  ティム·バートン監督のユーモア感覚が目立つ映画だ。 ビートルジュースの演出やグラフィックが面白くて、何度見ても飽きずに鑑賞できる映画だ。 ブラックコメディとファンタジー要素の結合が愉快で創意的だ。  



27. ドラマ<スイートホーム> 
  高校生ヒョンスが家族を亡くして引っ越したグリーンホームアパートで経験する奇怪で衝撃的な話  
  怪物たちがそれぞれ自分が人間の時に持っていた欲望が極大化された形で現れるのが特徴だ。 人によって持っている欲望が異なるため、それぞれ現れる怪物の姿を見る楽しさがあった。 残酷だが魅力的なドラマだった。  



28. 映画「メディソン郡の橋」 

  雑誌の表紙に書く橋の写真を撮るためにマディソン郡に来たロバートとそこに住む女性フランチェスカは偶然道で出会い、お互いに好感を感じ、親しくなる。 しかし、お互いに別れなければならない2人は、人の感情を共有し、選択の瞬間に置かれることになる。 

  小説原作の映画。 俳優たちの演技が素晴らしく没頭するようになる点はあったが、美しく包装した不倫ではないか、という気がした。 最後に車のハンドルを握ってためらうフランチェスカの姿が記憶に残る。  

   

29. 映画<ビリジン·キング> 

  テニスの世紀チャンピオン、ビリージン·キングの実話を基にした映画 

  スポーツ産業がどれほど男性中心的かを知ることができる映画だった。 今から450年前の話だが、やはり今も大きく変わっていない気がした。 しかし、その時代にヴィリジン·キングのように努力した女性たちがいたからこそ、世の中が少しは良くなったのではないか、とも思った。  

 

30. ドラマ「アリス·イン·ボーダーランド」 

  大学を中退してゲームにはまって暮らしていた主人公アリスは、小言に勝てず、腹立ちまぎれに家出をして久しぶりに友達に会う。 友達といたずらをしていたアリスは警察に追われるようになり、警察を避けるためにトイレに逃げる。 しかし、トイレの外を出てみると、その多くの人々は見当たらず、アリスと友達は命がけのゲームを始める。  

  シーズン2よりはシーズン1の方がずっと面白いと思った。 <フシギノクニノアリス>にオマージュしただけに、トランプカードを利用したゲーム進行が興味深かった。 俳優たちの演技と演出も素晴らしく、ネットフリックスの資本力を感じることができた
2023/10/10(火) 10:38 No.2014 EDIT DEL
宇都穂南 RES
2年 夏休み課題21〜30

21.『正反対な君と僕』(漫画) 阿賀沢紅茶
あらすじ: 主人公の女子高校生・鈴木は、エネルギッシュで誰とでも仲良くできるが、実は真面目で周りの空気を読み、他人の目を気にしてしまう。 それに対し、男子高校生・谷は、寡黙だが自分の意見をはっきり言え、しっかりとした「自分」を持っている。 そんな正反対な性格の2人が織りなす青春ラブコメディ。

ラブコメの皮を被った哲学漫画だと思った。鈴木と谷、周りの友人たちがそれぞれ悩んだり考えたりする様子が描かれる。同じ場面でも人物によって感じていることはさまざまだが、同時進行で複数の人物の頭の中を描いてしまえるのが漫画という媒体の特徴であり、便利なところである。

22.『ひらやすみ』(漫画) 真造圭伍
あらすじ: 週に2度、晩御飯を御馳走になる仲だった身寄りのないおばあさんから、阿佐ヶ谷の平屋を譲り受けた29歳フリーターの生田ヒロト。その平屋で春から美術大学に通ういとこの小林なつみを預かり、共同生活を始める。彼らの日常と交遊関係を描いたハートフルホームドラマ。

私は阿佐ヶ谷に住んでいるのでわかるのだが、印象的な場面だけではなくなんてことのない場面の背景にも実在の阿佐ヶ谷の風景が使われている。
善人でも悪人でもない普通の人たちが描かれ、共感しやすく読後感が良い話がとても多かった。

23.『阿波連さんははかれない』(漫画):水あさと
あらすじ: 小柄で物静かな女の子、阿波連れいなさん。人との距離をはかるのが少し苦手。そんな彼女の隣の席に座るライドウくんは、阿波連さんとの間に距離を感じていた。「遠すぎたり」「近すぎたり」予測不能な阿波連さん。色んな意味で、『はかれない』密着系?青春ラブコメディの幕が上がる!!

漫画の枠がなぜかずっと黒かったが、文化祭編で白枠になり、それまで黒枠でやってきた話が過去編だったことがわかる、という伏線になっていた。
阿波連さんもライドウくんも表情の変化がほぼないが、感情はキャラの背景でわかりやすく伝わるようになっている。

24.『屍人荘の殺人』(漫画) 今村昌弘/ミヨカワ将
あらすじ: 神紅大学ミステリ愛好会会長の明智恭介と助手の葉村譲は、探偵少女である剣崎比留子の誘いで、映画研究会の合宿所に参加する。大量発生したゾンビのために閉鎖空間となったペンション「紫湛荘」を舞台にした、クローズドサークルミステリ。第27回鮎川哲也賞を受賞した、今村昌弘の同名小説のコミカライズ。

ゾンビは出てくるが内容は王道の密室トリックもので、コミカライズすることで視覚的にトリックがわかりやすくなっている。登場人物が多めだが私は漫画から読んだのでキャラクターと名前がイメージで結びついて、小説もスラスラ読むことができた。

25.『屍人荘の殺人』(小説) 今村昌弘
あらすじ:上と同じ



26.『街とその不確かな壁』村上春樹
あらすじ:昔のガールフレンドと想像で作り上げた街、そこで体験した出来事が忘れられない「私」。地方の図書館館長として働き始めるが、そこで出会った少年は「私」の想像の街の地図を作り、そこに行きたいのだと言い始める。

「私」が作り上げた想像の街、そして影を失い目を傷つけられ、その街の図書館で「夢読み」になって古い夢を読むという設定が、村上の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』にも登場する。何か話同士に繋がりがあるのか、そこまで考察はまだできていないのでもう少し考えてみたい。

27.『生まれる森』島本理生
あらすじ: 失恋で心に深い傷を負った「わたし」。夏休みの間だけ大学の友人から部屋を借りて一人暮らしをはじめるが、心の穴は埋められない。 そんなときに再会した高校時代の友達キクちゃんと、彼女の父、兄弟と触れ合いながら、わたしの心は次第に癒やされていく。

冒頭部分で恋愛の悩みを森で迷うことに例え、その森から主人公が出ていくまでを描いている。主人公は失恋だけでなく父親のわからない子どもの中絶もしておりなかなか重いテーマだが、文体とキクちゃん一家のあたたかさで読みやすくなっている。

28.『のほほん絵日記』さくらももこ
あらすじ: 家族の誰より面倒を見ている犬に、誰よりもなつかれていない父ヒロシ。のび太君を天才と信じ、一途に憧れる息子。母の小言を一切聞いていない姉。オマケに手渡しされた焼きたてあつあつの甘栗。自家製の健康酒を朝から飲んで、酔っぱらったまま終わった一日……。思い出したくないトホホな事件や、忘れてしまいそうな小さな幸せがつまった毎日をつづる〝もも印〟絵日記。

さくらももこのエッセイも『ちびまる子ちゃん』も、「なんでこんなことしてるんだろう…」「私って一体…」のような脱力感、虚無感のある笑いが多いと思う。本作もそんな日常のゆるい笑いがイラスト多めで描かれている。

29.『さくらえび』さくらももこ
あらすじ: 父ヒロシが飼ったコイはどうなった? 水不足の夏に母が備えたものとは? 息子と作った絵本『おばけの手』ってなに!? そして『北の国から』の撮影現場・富良野で会ったある人との爆笑トークなどなど……相変わらずのすっとこどっこいの毎日や、家族・友人との楽しい出来事を描く、書下ろし満載、元気いっぱいのエッセイ!

仕事関係の人と旅行に行ったり、有名人と遭遇したり、旅行には現地人ガイドをつけたりと、さくらももこは人が好きなのだろうと思わせるエピソードが多かった。
家族に対してボロクソに書くときもあるが、自身が離婚して実家に出戻ったことなどに対する自虐も多い。

30.『またたび』さくらももこ
あらすじ: 世界中のいろんなところで、心やさしく愉快な人びと、おいしい食べもの、珍しい物たちに、たくさん出会ったよ!さくらももこ編集長の伝説の面白雑誌『富士山』(全5号)からよりぬいた、傑作旅エッセイ15本。ロンドン、韓国、ローマ、ベニスの人気観光地から、ハバロフスク、広州、スリランカ、チベット、中国雲南省といったちょっとマニアックな場所まで、ノンストップな抱腹珍道中!

旅行に行ってもホテルでダラダラしていたりごはんがまずかったり、知人に連れられて変なショーを見にいくことになったりとそんなに上手くいっていないが、くだらない出来事も文章で面白く見せられるという例の究極である。あとは旅行と買い物がとにかく好きなのだということが伝わってきた。
2023/10/10(火) 09:41 No.2013 EDIT DEL
宇都穂南 RES
2年 夏休み課題11〜20

11.『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
 アーロン・ホーバス/マイケル・イェレニック
あらすじ: 世界を支配しようとする大魔王クッパを、キノコ王国のピーチ姫は民たちと迎え撃とうとしていた。そんな中、マリオは双子の弟・ルイージをクッパに囚われてしまう。マリオは弟を助けるためにピーチ姫、キノピオたちと共に大魔王クッパを倒す旅に出るのだった。

囚われたピーチを助けにいく従来のマリオのストーリーではなく、弟であるルイージを助けにいくというストーリーである。ピーチはこの作品ではおそらくクッパの次くらいに強く、マリオを鍛える役として出てくる。「守られる女性」像とはかけ離れたピーチが新鮮だった。

12.『グランツーリスモ』(映画) ニール・ブロムカンプ
あらすじ: 世界的大ヒットゲーム「グランツーリスモ」に夢中の若者・ヤン。ゲームの実力を認められた彼は、本物のプロレーサーを育成するための選抜プログラム「GTアカデミー」に参加することになる。

序盤にヤンが自宅でゲームをしているシーンで、体の周りにレースカーが出るという演出がある。終盤では実際のカーレースに参加するヤンの周りが自宅のテレビの前に戻るという演出があり、彼のゲーマー出身だからこそのレースに対する視点の広さが表現されていて面白かった。また私はIMAXで観たのでレースのシーンに臨場感があり、IMAXとの相性がとても良い作品と感じた。

13.『ドライブ・マイ・カー』(映画) 濱口竜介
あらすじ: 舞台俳優であり演出家の家福は、愛する妻の音と満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう。2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福はある過去をもつ寡黙な専属ドライバーのみさきと出会う。さらに、かつて音から紹介された俳優・高槻の姿をオーディションで見つけるが…

タイトル「ドライブ・マイ・カー」は、自分のわだかまり、過去に亡くした人たちのことと向き合って、これからは自分の人生を歩いていく、という意味だと捉えた。
最後にみさきが韓国で暮らしていたシーンの解釈に迷ったが、作中で出会った韓国人の夫婦に惹かれ移住したか、もしかしたら彼女の母親が韓国人だったのかもしれない。

14.『母性』(映画) 廣木隆一
あらすじ: 実母の愛情を一身に受け、自身もそんな実母を溺愛していたルミ子。ルミ子の娘・清佳は、そんな母から愛してもらいたいと願う。ある事情からルミ子の夫の実家で、ルミ子と清佳は暮らしていた。

清佳の自殺騒ぎで作中で初めてルミ子は清佳の名前を呼び、多少は母子関係が正常になったかのように思われた。だが母親に精神的に異常に固執している点では清佳は若い頃のルミ子と同じであり、終盤で子供ができた清佳にルミ子がかけた言葉がルミ子が妊娠時に母親にかけられた言葉と全く同じであったことから、母と娘の複雑な関係は繰り返すのではないかと思わされるラストシーンだった。

15.『キャラクター』(映画) 永井聡
あらすじ: 漫画家のアシスタントを務める山城は、高い画力を持ちながら、純粋な性格上悪役を描くことに苦戦していた。そんなある日、彼は偶然殺人事件現場に遭遇し、そこで犯人の顔を目撃する。やがて、犯人の姿をもとに新たなサスペンス漫画を生み出した山城は、人気漫画家となる。だがそれを機に、彼は危険な事態に巻き込まれていく。

山城はアシスタントとして働く職場の漫画家に「善人だから悪人が描けない」と評されている。そんな山城が、襲ってきた両角(殺人事件の犯人)を刺し返す最後の場面では、笑顔になっている。彼は殺人鬼を自身の作品のキャラクターとして動かすことで、殺人鬼の心理を自身に内面化してしまったのではないか。「いい奴に悪人は描けない」という漫画家の考えを元にするなら、「悪役が描けるようになった山城は悪人になった」と考えることができる。

16.『死刑に至る病』
あらすじ: 大学生の雅也は、24人もの少年少女を殺害したとして世間を震撼させている稀代の連続殺人鬼・榛村 から1通の手紙を受け取る。すでに一審で死刑判決を受けている榛村。一方、雅也は中学時代に地元でパン屋の店主をしていた彼をよく知っていた。その榛村が、最後の事件だけは冤罪であることを証明してほしいと雅也に依頼してきたのである。雅也は、その願いを聞き入れ独自に調べ始める。

映画館に観に行ったがグロ描写が刺激的すぎて体調不良者が出るという騒ぎがあった。グロ描写も怖かったが榛村を演じる阿部サダヲの演技が強烈で、優しそうなときと豹変して子供を拷問・惨殺するときとの切り替え、目に全く光がない演出など、観客に恐怖を与えることへの余念のなさを感じた。

17.『呪術廻戦0』芥見下々
あらすじ: 幼い頃に幼なじみ・里香を交通事故で失った乙骨憂太。怨霊と化した彼女に取り憑かれた彼は、呪術師・五条悟に導かれて呪いを学ぶ学校に編入。やがて彼は、同級生との出会いを経て呪術師としての道を見出す。そんな中、呪詛師・夏油傑が大虐殺の実行を宣言する。そして乙骨たちは夏油との戦いに身を投じていく。

アニメが世に出た順はアニメ1期→呪術廻戦0→アニメ2期となっており、時間軸では1期より0が先のはずだが、0で死んだはずの夏油傑が1期に登場していることから観客に疑問が生まれる仕組みになっている。予告編では乙骨と里香の純愛を押し出していたが実は五条と夏油の友情も裏のメインテーマとなっている作品である。

18.『SMILE』(映画) パーカー・フィン
あらすじ: 精神科医のローズは、患者の女性から自分にしか見えない人がいるという話を聞く。「それ」は自分に笑顔を向けてくるという。そしてその女性はその場で絶命。それ以降、彼女の周囲で、次々と人々が笑顔のまま死ぬという現象が相次ぐようになる。

次に死ぬのは自分であることがわかっているローズは様々な幻覚をみる。呪いのせいで幻覚が見えるのか、ローズが精神的に参っているから幻覚が見えるのかは不明だが、ローズの実家に現れた死んだ母のような化け物の歯が何層にも重なった顔、猫の死骸がプレゼントの箱に入っている、など本能に訴えるような気持ち悪さだった。

19.『劇場版名探偵コナン 黒鉄の魚影』原作:青山剛昌
あらすじ: 園子の招待によって八丈島を訪れていたコナンたち。その近海では、世界中の警察が持つ防犯カメラを繋ぐための海洋施設「パシフィック・ブイ」が本格稼働に向けて、ヨーロッパの警察組織であるユーロポールのネットワークへと接続しようとしていた。顔認証システムを応用し監視カメラの映像上の人物の過去や未来の姿も感知できる新技術“老若認証”のテストが進められていることを教えてもらうコナンだったが、そのシステムを狙って黒の組織が動き出していた。

人気キャラである灰原哀の正体が組織にバレかかるという危機的な状況から始まり、全体的には灰原哀からコナンへの秘密にしている恋心が描かれる映画となっている。また黒の組織の謎にも迫っており、ベルモットが未だ正体を隠しているボスと直接メールしていると思われるシーンがある。"老若認証"が組織やボスにとって都合の悪い存在だったのではないか、新一が飲んだ毒薬は若返りの薬なのではないかとする考察があるようである。

20.『サンクチュアリ -聖域-』Netflixオリジナルドラマ
あらすじ: 体は屈強だが、投げやりな性格の青年が相撲部屋に入門。力士になった彼はとがった振る舞いでファンを魅了しながら、伝統と格式を重んじる角界を揺るがしていく。

ストーリーは不真面目な主人公が相撲の面白さに目覚める王道のスポ根だが、主人公が本気になるのが全8話のうち7話目というのが珍しい。それまで主人公は稽古の後に女の子と遊んで騙されたり、クラブで踊ったり、嫌がらせをしてくるお偉いさんに仕返しをしたりしている。本当にどうしようもない主人公だがなぜか嫌いにはなれない絶妙なキャラクター設定だと感じた。また元力士を何人か役に起用しており、稽古などのシーンもリアルである。
2023/10/10(火) 09:40 No.2012 EDIT DEL
宇都穂南 RES
2年 夏休み課題1〜10

1.『ひぐらしのなく頃に』(アニメ):竜騎士07/07th Expansionによる原作ゲームをアニメ化
あらすじ: 人口2000人に満たない寂れた架空の村落、雛見沢村を舞台に、村にまつわる古い因習「綿流し」を軸にして起こる連続怪死・失踪事件を扱った連作式のミステリー。村に引っ越してきた主人公・圭一は分校の友人たちと楽しく生活していたが、友人たちの様子がおかしくなっていく。

4話目で主人公が死に、5話目から何事もなかったかのように平和な日常が描かれ始めたので混乱したが、本作はノベルゲームのアニメ化作品であり、このアニメ1期ではさまざまな時間軸がパラレルワールドとして描かれる。後半では物語前半が別人物視点で再び描かれ、いくつかの謎が解き明かされる仕組みになっている。病気の要素が登場したことで心霊現象と思われていた部分に説明がつくようになり考察もできるようになる。しかしまだ物語の全貌は明かされない。

2.『ひぐらしのなく頃に 解』(アニメ)〃
あらすじ:パラレルワールドの秘密を知っている人物が明かされ、どの世界軸でも必ず待ち受けている死の運命から逃れようとする。友人たちで協力し運命を変えられるのか?

パラレルワールドを繰り返し体験している梨花は最終的に友人たちに全てを話し協力を求めるのだが、そこからの物語はグロいシーンもありながら「友情・努力・勝利」的なノリを感じさせる。敵勢力の悲しい過去も明らかになったうえでそちらにも救済があり、まさに大団円といった終わり方で、1期からは想像もつかない爽やかな後味だった。

3.『ひぐらしのなく頃に 業』(アニメ)〃
あらすじ:成長した圭一や梨花たちが描かれる。梨花は雛見沢を出てお嬢様高校に行きたいと思い親友の沙都子を誘うが、やっと入学できた高校で二人はすれ違ってしまう。

2020年に放送されたアニメで、1期から10年以上経っているのもあり作画がとても綺麗になっている。グロ描写が鮮明になりすぎてしまうためなのか、1期2期ではみられなかった黒塗りのモザイク修正がところどころ行われている。2期が綺麗に終わったため物語として蛇足である感は否めない。

4.『ひぐらしのなく頃に 卒』(アニメ)〃
あらすじ:ループ能力を手に入れた沙都子は梨花が雛見沢を出て行こうとするのを止めるため暴走する。梨花はそれに気付き同じくループ能力で対抗するが、泥沼の殺し合いになってしまい……

終始梨花と沙都子の喧嘩、殺し合い、その基になっているお互いへの強い執着と愛情が描かれ、二人以外の人物が深く掘り下げられることもあまりないため、若干百合らしい雰囲気に仕上がっている。最後の場面で某女児アニメのような格好で二人が殴り合いを始めたときはどう物語が終わるのか不安になったが、梨花が自分の生まれた境遇や沙都子との関係について折り合いをつけ村を出ていくことができて、物語として1期2期に付け足した意味があったと思う。

5.『僕の心のヤバいやつ』(アニメ) 原作:桜井のりお
あらすじ: 陰キャの中二病少年・市川京太郎と陽キャの美少女・山田杏奈の2人が織り成す恋模様を描いたラブコメディ。日々山田を殺す妄想をしていた市川だが、山田と関わっていくうちに恋心を自覚していく。

二人の恋模様が見ていて微笑ましいというのが作品の魅力の一つではあるが、中学生の生活感がとてもリアルに描かれていて懐かしい気持ちになる点がもう一つの魅力だと感じた。

6.『山田くんとLv.999の恋をする』(アニメ) 原作:ましろ
あらすじ:彼氏に「ネトゲで知り合った子が好きになった」とフラれた女子大生の茜。茜もそのゲームをやっており、ゲームイベントに参加した際に同じギルドメンバーの高校生プロゲーマー山田と偶然会う。ゲームから始まる恋愛を描いたラブコメ。

今はゲームを通じて知り合うということも全く珍しくない時代である。この作品は二人の出会い方は新しいがその後の展開は王道のラブコメである。主人公の髪型や服装のバリエーションが豊富でどれもセンスがよく、そこも読者の楽しみになっていて面白かった。

7.『呪術廻戦 懐玉・玉折編』(アニメ) 原作:芥見下々
あらすじ:本編で登場する高専の先生五条悟と呪詛師夏油傑の高校時代の物語。二人は"星漿体"の少女の護衛を任されるが敵との戦いで敗れ、五条は覚醒し夏油は挫折を味わい、道を違えてしまう。

懐玉でアニメ4話、玉折で1話という構成になっており、懐玉と玉折では作画も微妙に異なっている。懐玉では五条の覚醒が華々しく描かれるが玉折では夏油の苦悩が色濃く描かれ、さまざまな対比が目立つ。画面でも二人の位置や背景の色などが対比になっているシーンがあり、二人の進む道が違っていくことを表現している。

8.『君たちはどう生きるか』(映画) 宮崎駿
あらすじ:母親を亡くした眞人は、父親が母親の妹である夏子と再婚するのを機に東京を離れ、大きなお屋敷で暮らすことになる。新生活にも夏子にも馴染めない眞人だったが、母親が眞人に遺した小説『君たちはどう生きるか』を読み、失踪した夏子を追って青鷺の案内のもと"下の世界"へ行く。

青鷺の操る水の表現が巧みで粘度があるようにも見え、『崖の上のポニョ』の水の表現を想起させた。青鷺は沼の近くにいたり、魚や蛙を操ったり、水で人の形を作ったりと、四元素(水、火、風、土)で言えば明らかに水属性であると言えると思う。

9.『怪物』(映画) 是枝裕和
あらすじ: シングルマザーの早織は、息子の湊と大きな湖のある町に暮らしている。湊は同級生の依里と仲が良く、子供たちは自然の中で穏やかな日常を過ごしていたが、ある日学校で喧嘩が起きる。双方の言い分は食い違い、大人やメディアを巻きこむ騒動に発展していき……

映画を観たあと、「湊と依里は生きているのか?死んでしまったのか?」が大きな問題点になるだろう。私は彼らは死んでしまったと思う。台風・土砂崩れのあと、晴れわたった草原を駆け回る二人のラストシーンは映像としてとても綺麗だったが、ぐったりしていた依里がそんなに元気だとは考えにくく、また話の中では二人が死後の世界や生まれ変わりについて話している場面が多い。
二人の少年の恋心、同性愛が描かれた作品だが、散々悩んだ二人がラストシーンでは「生まれ変わった自分」より「生まれたままの自分」を肯定するようなことを言っていたのが救いだった。

10.『万引き家族』(映画) 是枝裕和
あらすじ: 東京の下町に住むある一家5人は、生活費を補うために親子で万引きなどの犯罪を繰り返していた。そんなある日、一家の父は息子と共に帰宅する途中、団地内で凍える幼い女児と遭遇。彼はその幼女を連れ帰り、家族に迎え入れる。

虐待の痕がある幼女を家族に迎えるところから物語が始まり、幼女が家族になっていく様子、万引きに手を染めながらも幸せそうな家庭の様子が丁寧に描かれる。その後万引きがばれて家族は崩壊し、他人どうしがお互いを利用し利用されて生活していたことが警察の手によって明らかになる。裏切られたような感情を登場人物も観ている人も抱くが、母や父の子供たちへの愛情は本物だったように見える。
2023/10/10(火) 09:39 No.2011 EDIT DEL