NEW CONTRIBUTION FORM
Sponsored link
This advertisement is displayed when there is no update for a certain period of time.
It will return to non-display when content update is done.
Also, it will always be hidden when becoming a premium user.
4年 渡辺
RES
春休み課題 20
1.「キューティ・ブロンド」(2002、映画)
監督:ロバート・ルケティック
王道ロマンスコメディ。テンポよく物語が進んでいくので見やすかった。その中にも男性社会の中での女性の社会進出、アメリカでみられるブロンドヘアへの偏見や差別などが組み込まれていた。
2.「ウィキッド ふたりの魔女」(2025、映画)
監督:ジョン・M・チュウ
グリンダを見ていて、「キューティ・ブロンド」が頭をよぎった。グリンダの演出は実際に参考にしているところもあるのかなと思った。
3.「ウィキッド 永遠の約束」(2026、映画)
監督:ジョン・M・チュウ
前作よりもミュージカル色が強かった。『オズの魔法使い』に繋がる要素が多くあり、そこへの驚きも多く、見ていて面白かった。
4.「ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学vs四天宝寺」(2026/3/8)
大きな舞台演出はなくとも、照明や小道具で原作の雰囲気を作り出しているのが面白かった。台詞のないシーンでもそれぞれがキャラらしい動きをしており、舞台のどこを見ても楽しかった。
5.「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」(1996、アニメ)
監督:仕舞屋鉄 原作:矢立肇、富野由悠季
初期3部作と同じ時間軸のサイドストーリーでガンダムシリーズの中でも愛に重きを置いた作品。3部作のような派手で大きな戦いを魅せるストーリーとは違うのが新鮮で面白かった。登場人物がそれぞれの形で大切な人を思っていることが描かれていたのがよかった。
6.「来る」(2018、映画)
監督:中島哲也 原作:澤村伊智
畏怖の対象を貞子のような実体のあるものではなく、血しぶきなど映像演出だけで表現しているのが興味深かった。いろんなところから霊媒師が集まってきてお祓いするくだりが総力戦みたいなシーンがアツかった。
7.「ときめきメモリアルGirl’s Side 3rd」(2012、乙女ゲーム)
高校生活の3年間をプレイしていくスタイル。1年目だと、誰からも誕生日プレゼントをもらえなかったり、色んなキャラと関わっていると誰とも付き合えずに終わったり意外とシビアなところも多く、面白かった。細かいやり込み要素が多く、単純作業でありながらも、飽きさせない工夫がされていた。
8.「BLEACH」(全74巻、漫画)
作者:久保帯人
巻頭ポエムも含み、絵以外の台詞の部分がとても印象に残った。キャラクターデザインはもちろん、見た目以外の部分でキャラに肉付けするのがとても上手だなと思った。
9.「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(2025、ドラマ)
脚本:安藤奎
ラストの二人が別々の道を歩いていくシーンが「時をかける少女」での分かれ道のオマージュ(おジャ魔女どれみが先?)になっており、おっ!となった。気づいていなかっただけで他にもオマージュシーンがあったのかなと気になった。
10.「機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ラスト・リゾート」(1996、OVA)
監督:仕舞屋鉄 原作:矢立肇、富野由悠季
アイナとシローのその後を描いた作品。アニメ1話と同程度の長さと短め。幸せそうにしている二人のその後を見られたのはよかったが、小隊は結局どうなったのかなどいろいろ気になった。
11.「機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ミラーズ・リポート」(1998、OVA)
監督:仕舞屋鉄 原作:矢立肇、富野由悠季
アニメシリーズの総集編に少しの新規カットがあるのみで、特筆するようなところもなかったがさらっと内容を理解したい人にはちょうどいいと思った。
12.「朗読劇『花道のゆくえ』音楽教室」(2026/4/11、昼公演)
脚本/原作「家庭教室」:伊東歌詞太郎
セットの中を歩き回ったり、劇中の小道具が天井から吊るされていたりとこれまで観劇してきた朗読劇の形とは違う点が多く、新鮮で面白かった。劇中に歌詞のある楽曲が差しこむことで解釈を広げる方法も歌手活動のファンが観劇に来るからできるもので、独自性を感じた。もし夢を追い続けることになったとして、自分はあそこまでがむしゃらになれるのだろうかと考えさせられた。自伝的な内容にこれまで発表してきた楽曲が差し込まれることで今まで聴いてきた曲に新たなストーリーが重なって曲の深みも増すような朗読劇だった。
13.「朗読劇『花道のゆくえ』芸能教室」(2026/4/11、夜公演)
脚本/原作「家庭教室」:伊東歌詞太郎
音楽教室では白川の視点で描かれた物語を渡嘉敷の視点から見つめることで、全く違う物語に変わるのが面白かった。音楽教室と芸能教室で渡嘉敷に持つ印象はかなり異なり、人はその人の一面までしかみることができないのだと実感させられた。渡嘉敷が比嘉の誘いを断り、ドラマの主役の内定が取り消された後に同じ劇団員だった友人のあやかが枕をして主役の座を取り、それを「自分の強みを生かした」とあっけらかんと話していたのが強烈だった。人それぞれに地獄はあって、その価値観を互いに分かちあうのは難しいと感じた。
14.「朗読劇『花道のゆくえ』音楽教室」(2026/4/14、昼公演)
脚本/原作「家庭教室」:伊東歌詞太郎
同じストーリーであってもキャストが違うと、間の取り方や細かな表現も変わって、全く違う物語になるのが面白かった。全く同じというところがなく、通しで演じているキャストの人も日毎演技が変化しており、試行錯誤しながら演じ続けていることが伺えた。
15.「ジョジョの奇妙な冒険」(2012、アニメ)
原作:荒木飛呂彦
特徴的な原作の擬音はそのまま文字として表現するなど、独自の演出が面白い。1部のストーリーのハードボイルドさも保ちつつ、原作の世界観を見事に表現していると思う。
16.「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース」(2014、アニメ)
原作:荒木飛呂彦
3部からはスタンド能力も出てきて戦闘シーンの幅も増え、見どころが多い。すべての部を通してみても仲間との絆が強く出ており、ジャンプらしい作風を感じる。
17.「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」(2016、アニメ)
原作:荒木飛呂彦
ジョジョシリーズでは珍しく、学園モチーフで、勉強をする回など学生らしさを感じるようなシーンが多い。スタンドでの戦闘シーンはもちろん、ミステリー要素も多く、かなり見やすい。漫画はもちろん面白いが、アニメで見るとラジオのシーンなどで実際に音楽を聴けるのがうれしい。キャラのカラーリングが全く一致せず、シーンによって服の色や空の色が違うのがジョジョらしくて見ていて楽しい。
18.「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」(2018、アニメ)
原作:荒木飛呂彦
3部とは違った仲間ではなく、チームとしての在り方を見られるのが面白い。単に仲間との友情だけではなく自分が生き残るためにはという視点もあり見ていて飽きない。敵も魅力的なキャラが多く、ボスの正体を追うストーリーのほかにもキャラの過去をみていく話が面白かった。
19.「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」(2021、アニメ)
原作:荒木飛呂彦
承太郎の娘の徐倫が主役。3部の承太郎が冒頭、刑務所に入っていたのと、重ねて舞台を刑務所にしたのかなと思った。世界線を変えるというかなり斬新な結末で漫画を読んでいたときも驚いた。ただ、スタンドのない、もしもの世界線をみることができたのはうれしかった。
20.「ジョジョの奇妙な冒険 スティールボールラン」(2026、アニメ)
原作:荒木飛呂彦
冒頭の方がかなり無骨なストーリーで、映像だと中弛みしそうなので、結構な数のカットシーンが入るかと思いきや、ほぼ原作そのままで描き切っていて驚いた。
1.「キューティ・ブロンド」(2002、映画)
監督:ロバート・ルケティック
王道ロマンスコメディ。テンポよく物語が進んでいくので見やすかった。その中にも男性社会の中での女性の社会進出、アメリカでみられるブロンドヘアへの偏見や差別などが組み込まれていた。
2.「ウィキッド ふたりの魔女」(2025、映画)
監督:ジョン・M・チュウ
グリンダを見ていて、「キューティ・ブロンド」が頭をよぎった。グリンダの演出は実際に参考にしているところもあるのかなと思った。
3.「ウィキッド 永遠の約束」(2026、映画)
監督:ジョン・M・チュウ
前作よりもミュージカル色が強かった。『オズの魔法使い』に繋がる要素が多くあり、そこへの驚きも多く、見ていて面白かった。
4.「ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学vs四天宝寺」(2026/3/8)
大きな舞台演出はなくとも、照明や小道具で原作の雰囲気を作り出しているのが面白かった。台詞のないシーンでもそれぞれがキャラらしい動きをしており、舞台のどこを見ても楽しかった。
5.「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」(1996、アニメ)
監督:仕舞屋鉄 原作:矢立肇、富野由悠季
初期3部作と同じ時間軸のサイドストーリーでガンダムシリーズの中でも愛に重きを置いた作品。3部作のような派手で大きな戦いを魅せるストーリーとは違うのが新鮮で面白かった。登場人物がそれぞれの形で大切な人を思っていることが描かれていたのがよかった。
6.「来る」(2018、映画)
監督:中島哲也 原作:澤村伊智
畏怖の対象を貞子のような実体のあるものではなく、血しぶきなど映像演出だけで表現しているのが興味深かった。いろんなところから霊媒師が集まってきてお祓いするくだりが総力戦みたいなシーンがアツかった。
7.「ときめきメモリアルGirl’s Side 3rd」(2012、乙女ゲーム)
高校生活の3年間をプレイしていくスタイル。1年目だと、誰からも誕生日プレゼントをもらえなかったり、色んなキャラと関わっていると誰とも付き合えずに終わったり意外とシビアなところも多く、面白かった。細かいやり込み要素が多く、単純作業でありながらも、飽きさせない工夫がされていた。
8.「BLEACH」(全74巻、漫画)
作者:久保帯人
巻頭ポエムも含み、絵以外の台詞の部分がとても印象に残った。キャラクターデザインはもちろん、見た目以外の部分でキャラに肉付けするのがとても上手だなと思った。
9.「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(2025、ドラマ)
脚本:安藤奎
ラストの二人が別々の道を歩いていくシーンが「時をかける少女」での分かれ道のオマージュ(おジャ魔女どれみが先?)になっており、おっ!となった。気づいていなかっただけで他にもオマージュシーンがあったのかなと気になった。
10.「機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ラスト・リゾート」(1996、OVA)
監督:仕舞屋鉄 原作:矢立肇、富野由悠季
アイナとシローのその後を描いた作品。アニメ1話と同程度の長さと短め。幸せそうにしている二人のその後を見られたのはよかったが、小隊は結局どうなったのかなどいろいろ気になった。
11.「機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ミラーズ・リポート」(1998、OVA)
監督:仕舞屋鉄 原作:矢立肇、富野由悠季
アニメシリーズの総集編に少しの新規カットがあるのみで、特筆するようなところもなかったがさらっと内容を理解したい人にはちょうどいいと思った。
12.「朗読劇『花道のゆくえ』音楽教室」(2026/4/11、昼公演)
脚本/原作「家庭教室」:伊東歌詞太郎
セットの中を歩き回ったり、劇中の小道具が天井から吊るされていたりとこれまで観劇してきた朗読劇の形とは違う点が多く、新鮮で面白かった。劇中に歌詞のある楽曲が差しこむことで解釈を広げる方法も歌手活動のファンが観劇に来るからできるもので、独自性を感じた。もし夢を追い続けることになったとして、自分はあそこまでがむしゃらになれるのだろうかと考えさせられた。自伝的な内容にこれまで発表してきた楽曲が差し込まれることで今まで聴いてきた曲に新たなストーリーが重なって曲の深みも増すような朗読劇だった。
13.「朗読劇『花道のゆくえ』芸能教室」(2026/4/11、夜公演)
脚本/原作「家庭教室」:伊東歌詞太郎
音楽教室では白川の視点で描かれた物語を渡嘉敷の視点から見つめることで、全く違う物語に変わるのが面白かった。音楽教室と芸能教室で渡嘉敷に持つ印象はかなり異なり、人はその人の一面までしかみることができないのだと実感させられた。渡嘉敷が比嘉の誘いを断り、ドラマの主役の内定が取り消された後に同じ劇団員だった友人のあやかが枕をして主役の座を取り、それを「自分の強みを生かした」とあっけらかんと話していたのが強烈だった。人それぞれに地獄はあって、その価値観を互いに分かちあうのは難しいと感じた。
14.「朗読劇『花道のゆくえ』音楽教室」(2026/4/14、昼公演)
脚本/原作「家庭教室」:伊東歌詞太郎
同じストーリーであってもキャストが違うと、間の取り方や細かな表現も変わって、全く違う物語になるのが面白かった。全く同じというところがなく、通しで演じているキャストの人も日毎演技が変化しており、試行錯誤しながら演じ続けていることが伺えた。
15.「ジョジョの奇妙な冒険」(2012、アニメ)
原作:荒木飛呂彦
特徴的な原作の擬音はそのまま文字として表現するなど、独自の演出が面白い。1部のストーリーのハードボイルドさも保ちつつ、原作の世界観を見事に表現していると思う。
16.「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース」(2014、アニメ)
原作:荒木飛呂彦
3部からはスタンド能力も出てきて戦闘シーンの幅も増え、見どころが多い。すべての部を通してみても仲間との絆が強く出ており、ジャンプらしい作風を感じる。
17.「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」(2016、アニメ)
原作:荒木飛呂彦
ジョジョシリーズでは珍しく、学園モチーフで、勉強をする回など学生らしさを感じるようなシーンが多い。スタンドでの戦闘シーンはもちろん、ミステリー要素も多く、かなり見やすい。漫画はもちろん面白いが、アニメで見るとラジオのシーンなどで実際に音楽を聴けるのがうれしい。キャラのカラーリングが全く一致せず、シーンによって服の色や空の色が違うのがジョジョらしくて見ていて楽しい。
18.「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」(2018、アニメ)
原作:荒木飛呂彦
3部とは違った仲間ではなく、チームとしての在り方を見られるのが面白い。単に仲間との友情だけではなく自分が生き残るためにはという視点もあり見ていて飽きない。敵も魅力的なキャラが多く、ボスの正体を追うストーリーのほかにもキャラの過去をみていく話が面白かった。
19.「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」(2021、アニメ)
原作:荒木飛呂彦
承太郎の娘の徐倫が主役。3部の承太郎が冒頭、刑務所に入っていたのと、重ねて舞台を刑務所にしたのかなと思った。世界線を変えるというかなり斬新な結末で漫画を読んでいたときも驚いた。ただ、スタンドのない、もしもの世界線をみることができたのはうれしかった。
20.「ジョジョの奇妙な冒険 スティールボールラン」(2026、アニメ)
原作:荒木飛呂彦
冒頭の方がかなり無骨なストーリーで、映像だと中弛みしそうなので、結構な数のカットシーンが入るかと思いきや、ほぼ原作そのままで描き切っていて驚いた。
4年 谷澤佳歩 春休み20作品
RES
1
『コルボッコロ』(アニメ映画)(2019)監督:糸曽賢志
【あらすじ】
様々な文明や宗教が混在する世界を舞台に、不思議な力を持つ巫女の血を継承する14歳の少女の鈴が、自然の精霊コルボッコロと出会い、自分の在るべき姿を考え、進むべき道を模索していくSFエコファンタジー作品。
【考察】
正直に言うと、キャラクターの表情や演技にはあまり自然さは感じられなかった。キャラクターの動きの演技や挙動がカクカクしており、ややフレームっぽく感じられた。シナリオに関してもキャラクターに言葉で世界観を説明させることが多く、昨今の作品と比較すると映像という媒体の特性を活かせていないように思えた。
テーマは思春期を経ての主人公鈴の成長、それから自然の力は人間の力で簡単に制御できるものではなく、人間の力や権力に溺れて驕っていると身を滅ぼす、しかし共に生きていく必要があるもの、といったテーマが見受けられると解釈した。しかし、物語の細部にも少し粗が見られるように感じられた。作品で語りたい主軸のテーマをキャラクターで追いかけ、完結させることがメインとなってしまっていることが原因なのではないかと考えられる。
2
『二ノ国』(アニメ映画)(2019)監督:百瀬義行
【概要・あらすじ】
レベルファイブの人気RPG「二ノ国」シリーズを長編アニメーション映画化した作品。
車椅子生活を送る高校生のユウは、学校でトップクラスの成績を誇る秀才で、バスケ部の人気者のハル、ハルの彼女のコトナとは幼なじみ。ある日、事件に巻き込まれたコトナを助けようとしたユウとハルはトラックに轢かれかけ、現実世界と並行する魔法の世界「二ノ国」に引き込まれる。そこで、コトナと瓜二つの王国の姫、アーシャ姫と出会う。
【考察】
あくまでも予想や感覚の単位で、何となく伝えたいことは分かる気がする作品なのだが、製作側が描きたい展開をあまりに先行してしまっているように感じられる。特にハルは作中でも根拠が不明瞭な行動をとることが多く、コトナが刺された時には救急車を呼ばずに担いで病院まで運ぼうとする、一ノ国(元の現実世界)と二ノ国の人の命は対応している説が濃厚で、まだ確証もないのに「アーシャ姫を殺せばコトナは助かる」となぜか思い込んでアーシャ姫を殺そうとする(=結果的にコトナを危険にさらしている)といったように、主人公であるユウとのライバル的な対立構造を作りたいがために、ハルに整合性がとれなくなるほどの行動をさせてしまっていると考えられる。他にも「なんでそうなる?」→「こういう展開や構図が描きたかったのか」と捉えると、一応理解はできるシーンはいくつか見受けられると思う。「大切なものを守るためには命を懸けて戦わないといけない」というテーマが大きいのにも関わらず、この作品の設定では現実世界と二ノ国を行き来する方法が「命を危険にさらす行為」であるため、そういった対決が出来ずに戦いのシーンが茶番となってしまっているなど、破綻しているような箇所もいくつか見受けられると考える。
3
『ハル』(アニメ映画)(2013)監督:牧原亮太郎
【あらすじ】
最愛の存在、ハルを飛行機事故で亡くしたクルミは、何も食べられず、夜も眠れない状態になって部屋にこもってしまう。そんなクルミの姿を心配した祖父の時夫は、作業用ロボットQ01をハルの姿に改良し、くるみの元へと届ける。元Q01のロボハルは、彼女から生前のハルへの想いに応えようと奮闘し、最初は心を閉ざしていたくるみと次第に打ち解けていく。
【考察】
序盤から注意深く見ていると浮かんでくる疑問点や違和感などが、終盤のどんでん返しへの布石として置かれており、人と人が分かり合うことの難しさと人の繋がりや想うことの尊さを描いた作品であると考えられる。ハルがロボットであるという前提から、人間関係の当たり前から根本的に見直していくという構図を取っており、最後の展開で改めてその尊さを実感できる展開になっていると思われる。視聴者の意表を突く展開や構図になっていると感じた。ネタバラシのシーンでハルが流血したり、クルミの正体がどちらか分からないように描写されていたりと、映像で語るシーンも多く見受けられる。
4
『Colorful』(アニメ映画)(2010)監督:原恵一
【概要・あらすじ】
直木賞作家・森絵都が1998年に発表したベストセラー小説『カラフル』をアニメ映画化した作品。冥界の停車場。亡者の「ぼく」は一度死んだはずだが、天使プラプラに「抽選にあたりました!」と言われ、生まれ変わって「小林真」という中学生としてもう一度人生をやり直すチャンスを与えられる。
【考察】
物語が開始してから、かなり長い時間主人公の顔が画角に入らずにPOVであり続けることで、観客と主人公の感覚を同調させて感情移入を高めていると考えられる。心の声やモノローグもかなり使われている他、何も前提条件を知らない主人公と観客はかなり相性が良く、作品の持つテーマを「自分事」としてメッセージを届けさせる力がある作品だと感じた。身の回りの人の多面性に着目した作品で、誰か特定の人を美しくだけ描写したり逆に醜いのみで描写しており、誰しも美しいところと醜いところがあるという人間らしさが、キャラクターの生きている人間らしさをうまく表現し、ひいては世界をリアルに観客に届けていると考えられる。
5
『プロメア』(アニメ映画)(2019)監督:今石洋之
【あらすじ】
炎を操る新人類バーニッシュの出現に端を発する惑星規模の発火現象である世界大炎上により、人口の半分が焼失してから30年が過ぎた世界。自治共和国プロメポリスでは、炎上テロを繰り返す過激派バーニッシュの集団マッドバーニッシュに対抗すべく、対バーニッシュ用装備を扱う高機動救命消防隊、バーニングレスキューが消火活動を行っていた。
【印象】
湯浅監督のようなヌルヌルとキャラクターが動くのが特徴的で、画角や角度によってもキャラクターの縮尺が変化するなどの可変性がアニメーションらしいと感じた。色彩感覚もかなり特徴的で、ビビッドカラーの少数色を主に使っている。赤と青の対比的な色味が特に特徴的。アメコミ風なアニメかと思いきや、歌舞伎やマトイなどの日本的な要素も随所に取り入れられている。
6
『コクリコ坂から』(アニメ映画)(2011)監督:宮崎吾朗
【あらすじ】
1963年(昭和38年)の初夏、女子高生の松崎海は、横浜の海の見える丘に建つ"コクリコ荘"を切り盛りしている。海は、朝鮮戦争で機雷に触れて亡くなった船乗りの父を偲んで毎朝庭に国際信号旗を揚げていたが、高校の学級新聞に「旗を上げる少女」の詩が匿名で掲載され、それが自分のことなのではないかと胸をときめかせる。
【印象】
色彩や動き、世界観などは、当時の光景を思わせるようなワクワク感はあるが、展開に関してはそこまで劇的な展開があるというわけではなく、あまり強力なメッセージ性は感じなかった。メルめちゃくちゃ可愛い。そしてサツキばりに良い子。
7
『宇宙ショーへようこそ』(アニメ映画)(2010)監督:舛成孝二
【あらすじ】
村川村は、都会から遠く離れた自然に囲まれた土地。夏休みの子供だけの合宿のために小学校に集まった夏紀達5人は、行方不明となったウサギを探すために裏山に足を踏み入れるのだが、そこでミステリーサークルと、犬の姿をした宇宙人のポチを発見する。
【印象】
故藤原啓治さん演じるポチがかなり犬化したひろしだと感じた。ポチの母からケーキ作りを教わるシーンがあるが、女の子勢だけが教わる流れは、現代なら少しメンバーが違うかもしれないと思った。少し文脈が飛躍していたり、荒唐無稽な場面や描くべき因縁関係が事前に描けていなかったりなど、観ていて少し惜しいと感じられる箇所がいくつかあった。
8
『犬王』(アニメ映画)(2022)監督:湯浅政明
【あらすじ】
壇ノ浦に生まれた漁師の息子・友魚の父の元に京から侍が訪れ、源平の合戦で海に沈んだ天叢雲剣を引き揚げるよう代価を見せて依頼する。友魚は引き揚げ作業に同行するが、鞘から剣が引き抜かれたその瞬間、父は剣の呪いを受けて体が真っ二つに裂けて死亡し、友魚も盲目となった。琵琶の語り手となった友魚は、京都の街で異形の存在に出会う。
【印象】
主人公の友魚が序盤で盲目になってしまうのだが、彼の感じる盲目の世界をアニメで描く上で、輪郭のぼんやりした色などで人物や生き物の所在を表す表現は、『夜廻』シリーズの隠れている時や目を閉じている時の表現と似ていると感じた。足利義満の命令で犬王はかつて舞っていた猿楽の演目を舞えなくなってしまうが、その抵抗として後世に演目などを書籍で一つも遺さなかったのが、世阿弥らとの対比となっていると感じた。歌などは現代のロックやバレエ、ミュージカルの舞台セットなどの当時ではありえないような新しいものの表現として用いられていると感じた。
9
『チェンソーマン レゼ篇』(アニメ映画)(2025)監督:𠮷原達矢
【あらすじ】
デンジは、公安対魔特異4課でデビルハンターとしての任務をこなしながら、少しずつ「普通の青春」への憧れが芽生え始めていた。上司であるマキマとのデートに胸をときめかせる中、ある雨の日にカフェで働く謎の少女レゼに出会う。レゼはデンジに興味津々で、彼を翻弄していく。デンジは、マキマへの憧れとレゼからの真っ直ぐな想いの狭間で揺れながらも、レゼとの時間に安らぎを感じていた。
【印象】
POVやカメラ演出など、映画的な演出が豊富だったと感じた。水滴や体液などの液体が画面の表面に付着する演出がかなりあったように思う。情緒的なシーンのピアノバラードと、戦闘シーンのゴリゴリなロックの対比が気持ちよかった。赤色と青色の対比が多かったように感じた。ナイフの男を殺した直後や、デンジの教育関係の話をしている時のレゼの憂いを帯びた表情が印象的で、これがレゼの素が若干滲んでいるのではないかと思った。
10
『AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜』(アニメ映画)(2013)監督:岸誠二
【あらすじ】
高校1年生になったばかりの佐藤一郎は、ある日忘れ物をとりに夜の校舎に忍び込んだところ、青いローブを身にまとい、金属製の杖を持った美少女と出くわした。彼の望んでいた平穏な学生生活は彼女に振り回されることで次第に遠ざかり、絶望の淵に落とされることになる。
【印象】
観ていて、よくも悪くも平成アニメらしい作品だと感じた。いわゆる「オタク」に対する風当たりが厳しい時代で、特有のノリが観ていて正直に言うとかなりキツかった。ヒロインの良子が屋上でかなり大規模な設営をした上で自殺を図るのだが、机の数があまりにもファンタジックすぎて、シャフトかと思ってしまった。
11
『窓ぎわのトットちゃん』(アニメ映画)(2023)監督:八鍬新之介
【あらすじ】
戦争の気運が高まる昭和15年(1940年)、東京の公立小学校に入学したトットちゃんこと黒柳徹子は、教室の窓から外のチンドン屋を呼び込んでしまうほど落ち着きがなく、ついに退学を言い渡された。お母さんは、自由が丘にある私立の「トモエ学園」にトットちゃんを連れて行くことになる。
【印象】
全体的に絵がとてもかわいらしく、使われている色彩や家や学校の内装もとても綺麗な絵のアニメだと思った。途中のシーンによっては色鉛筆風になったり水彩風になったりと、様々な変化が見受けられた。段々と生活の中に戦争の影響が反映されていく表現は、『この世界の片隅に』を思い起こさせた。ラストのトットちゃんが走っていくシーンでは、身体を欠損した人や息子を失くして遺影を抱えた母親の姿などが背景と溶け込むように描かれているのが、黒柳さんの遠い記憶の中にありつつも印象的な光景であることを観客に示しているように感じた。
12
『かぐや姫の物語』(アニメ映画)(2013)監督:高畑勲
【あらすじ】
昔、山里に竹を取って暮らす翁と媼がいた。早春のある日、翁は光り輝くタケノコの中から「手のひらに収まる大きさの姫」を見つけ、自宅へ持ち帰る。姫はその日のうちに「人間サイズの赤子」の姿へと変わり、翁と媼によって「天からの授かりもの」として育てられる。
【印象】
BOOKや動く人物の主線などは、色を塗りやすいように主線がはっきりしていたり閉じていたりすることが主流なのだが、この作品は背景の水彩と筆の墨の雰囲気と合わせるために、キャラクターの主線も背景同様、さらっと描かれたような筆の筆致で描かれており、背景との違和感がかなり少なくなっている。これにより、観ていてそういった違和感を覚えないという点で、監督の狂気を感じられる作品だと感じた。金曜ロードショーで放送された時は、かぐや姫とジェンダーについての問題も多く取り上げられていた印象がある。映像として見ていて気持ちが良すぎる。
13
『イバラード時間』(映像画集)(2007)監督:井上直久
【概要】
イバラードとは、画家の井上直久が描き続けてきた幻想世界。一連のイバラード作品は、独特のタッチと色彩で描かれた空間の広がりがとても印象的で、一度見たら忘れられない記憶を残す。映画「耳をすませば」で主人公の空想シーンの美術に全面的に使用された。「イバラード時間」は、井上氏がこれまで描いてきたイバラードの風景画の中から63箇所の風景を本人が厳選し、静止した絵では描ききれない“時間の流れ”を音楽と効果音、CGと2Dアニメーションを加えることにより表現した、アニメーションでもなく映画でもない、まったく新しい30分の映像画集。
【印象】
ものすごく『耳をすませば』の空想の場面で見覚えのある世界観だと思って確認してみると、本当に担当していたので少し驚いた。ほとんど静止画なのだが、よく水が景色の中に流れており、「動画」としての体裁を保っている要素には水、煙などが使われていた。人物なども時折動いて出て来るが、さすがに『かぐや姫の物語』のように背景の筆致とは合わせず、アニメーション用の絵になっている。ただ、人物の動きが止まると、背景に馴染むように画風が変化するのが面白かった。どこか懐かしいような風景と、全く新しい幻想的な風景が融合していると感じた。
14
『老人Z』(アニメ映画)(1991)監督:北久保弘之
【あらすじ】
87歳の寝たきり老人・高沢喜十郎は、先立った妻・ハルに強い想いを寄せつつ、東京・下町の都電荒川線沿線の古い木造アパートで独り暮らしをしていた。
看護学校に通う19歳の三橋晴子は、高沢の介護ボランティアをしていた。高沢は、晴子を認識できる程度には意識があり、ほぼ付きっきりの介護が必要であった。
そのころ厚生省は、新しい介護のあり方として最新型介護ロボット「Z-001号機」を考案した。計画を主導する厚生官僚の寺田卓は、これにより高齢者問題が解決し、介護する側にも介護される老人にとっても、明るい未来が到来すると信じてこれを推進していた。
【印象】
見ていると有吉佐和子氏の『恍惚の人』が問題になっている時期の意識が反映されているように感じた。最新型介護ロボットの造形や制御のコンピューターの造形が、生物と機械の融合といった感じで『AKIRA』を連想させた。おじいちゃん方の介護士の女性に対するセクハラ発言も時代的だと感じた。映画『鉄男』にも似ている。現代なら、長谷川のキャラクター造形にメロつく人も多そうだと感じた。
15
『茄子 アンダルシアの夏』(アニメ映画)(2003)監督:高坂希太郎
【あらすじ】
スペインの自転車ロードレース、ブエルタ・ア・エスパーニャを舞台に、主人公が解雇の危機や、かつての恋人と兄の結婚という複雑な思いを抱きながらも、プロロードレーサーとして「仕事」に取り組むさまを描く。
【印象】
スペインのアンダルシアの風景の中で、暑さや気候の変化、起伏の変化、そして人間模様を背景に、ロードレーサーとして自転車を漕ぐぺぺの姿を描いている。自転車の下から顎下の画角を映していたのが独特で印象的だった。激しく、ラテンらしいメロディのストリングスのBGMがレースの雰囲気に合っていた。実際はほとんど漕いでいるシーンが多いが、人間ドラマの物語として楽しめる作品だと思う。アンダルシアの気風に対する誇りのようなものも感じた。カッコいい。
16
『茄子 スーツケースの渡り鳥』(OVA)(2007)監督:高坂希太郎
【あらすじ】
主人公であるペペが所属するサイクルロードレースチーム「パオパオビール」は、ジャパンカップサイクルロードレースに出場するため来日した。日本人女性ボランティア、ひかるのガイドで日本文化を楽しむ選手たち。だが、今年一杯でチームの解散が決まっており、それぞれ身の振り方を考えていた。なかでもチョッチは、親友であったスター選手ロンダニーニの自殺を重く受け止め、厳しいプロ生活に疑問をおぼえており、ペペに現役引退をほのめかしていた。
【印象】
前作の『アンダルシアの夏』とは打って変わって、今回の舞台は日本になっている。前作よりもコミカルな印象な他、気候も対照的でレース中に雨が降って、物理的に水気の多い演出がされている。また、前作と比較するとギャグ調が強くなっており、『ルパン三世』シリーズの系譜や雰囲気を継ぐような雰囲気を感じた。チョッチの髭が長いのも相まって、ぺぺとチョッチのペアがルパンと次元のペアものに見えてくる。ちなみに舞台となるレースが宇都宮で開催されていたため、地元で見慣れている景色が沢山作中に登場して嬉しい気持ちになった。
17
『呪術廻戦 第三期 死滅回游・前編』(アニメ映画)(2026)監督:御所園翔太
【あらすじ】
封印された五条悟の不在によって呪術界は大きく揺らぎ、虎杖たちは新たな脅威に立ち向かうことになる。本編では、謎多き呪術師・加茂憲倫(羂索)が仕掛けた呪術バトルロイヤル「死滅回游」が開幕し、呪術界全体がかつてない混乱に陥っていく。
【印象】
第二期と比較しても、更に映画的、映像的な演出が増えた印象がある。OPや禪院家壊滅などのシーンでは、映像としての表現を優先しすぎて原作の持つ良さを殺しているのではないかということで、国内で軽く炎上していたような記憶がある。個人的に蘭太の目が潰れているのにあんまり急いでなさそうな甚一は少し違和感はあった。日車回は、バトルシーンや演出、内容も相まってかなり評価が高かったように思う。リアタイできて良かった。
18
『葬送のフリーレン 第二期』(TVアニメ)(2026)監督:北川朋哉
【あらすじ】
勇者ヒンメル一行によって魔王が倒された世界。ヒンメルらと共に平和をもたらした千年以上生きるエルフの魔法使い・フリーレンは、寿命を迎えたヒンメルの死を受けての涙とその想いから、“人の心を知る旅”に出る。道中に出会った、かつての仲間ハイターに育てられた魔法使いフェルン、同じく仲間のアイゼンの弟子である戦士シュタルクと共に、魂の眠る地《オレオール》を目指すフリーレン。旅の中で出会う人々との交流、狡猾な魔族や魔物との戦い。時に穏やかに、時にくだらなく、時に激しく、時に胸に迫る…。その全てが、その一瞬一瞬が、3人のかけがえのないものとして積み重ねられていく。
【印象】
第一期と地続きの物語であることが随所に感じられる表現が多かったように思う。この作品も見ていて気持ちが良すぎる。神技のレヴォルテ戦では、ゲナウやレヴォルテの挙動、メトーデやフェルンの戦闘シーンが原作から映像である媒体を活かして大幅に嵩増しされており、全面的に満足度の高い作品になっている。劇伴も良い。最終話では一期の内容を思わせる画角や演出も多く見られたのが良かった。アニメ製作陣の原作に対するリスペクトと理解度の高さを感じた。
19
『メダリスト 二期』(TVアニメ)(2026)監督:山本靖貴
【あらすじ】
それぞれにフィギュアスケートへの強い夢を抱き、「選手とコーチ」として巡り会った結束いのりと明浦路司。 栄光の“メダリスト”を目指すいのりは 名港杯と西日本小中学生大会で実績を積み、バッジテストを経て、ついに「天才少女」狼嵜光と同じランクで競い合う資格を手にする。 次の目標は、全日本選手権への出場をかけた中部ブロック大会。 新たなライバルたちの中で、いのりは自らが一番に輝けることを証明する。
【印象】
第一期の時よりも、滑走シーンのCGの違和感が大幅に緩和されたように感じた。中部ブロックで優勝することと、全日本で勝つために必要なカードを手に入れることに焦点が当てられ、二人の成長を感じられる内容になっている。
20
『ふくふくの地図』(短編アニメ)(2026)監督:片淵須直
【あらすじ】
友人の結婚式に参列するため、フランス人の哲学者・ソフィーは、はじめて福島県を訪れる。 見ず知らずの土地。通じない言葉。頼りにしていた地図さえ、気づけば失くしてしまっていた。途方に暮れる彼女の前に現れたのは、不思議な “ともだち”と、一枚の “まっぷ”。どこに辿り着くか分からない、奇妙な旅を共にしていく。
【印象】
片淵須直監督らしい、というより『この世界の片隅に』らしいキャラクタータッチのデザインと、ゆったりしたこうの史代らしいテンポで福島を紹介していく短編アニメーションで、見ているだけでも楽しい。赤べこの不思議な存在感が癖になる。実在するであろう地図をどうアニメに落とし込んでいるのか、似たような表現を見る度に不思議に思っている。
『コルボッコロ』(アニメ映画)(2019)監督:糸曽賢志
【あらすじ】
様々な文明や宗教が混在する世界を舞台に、不思議な力を持つ巫女の血を継承する14歳の少女の鈴が、自然の精霊コルボッコロと出会い、自分の在るべき姿を考え、進むべき道を模索していくSFエコファンタジー作品。
【考察】
正直に言うと、キャラクターの表情や演技にはあまり自然さは感じられなかった。キャラクターの動きの演技や挙動がカクカクしており、ややフレームっぽく感じられた。シナリオに関してもキャラクターに言葉で世界観を説明させることが多く、昨今の作品と比較すると映像という媒体の特性を活かせていないように思えた。
テーマは思春期を経ての主人公鈴の成長、それから自然の力は人間の力で簡単に制御できるものではなく、人間の力や権力に溺れて驕っていると身を滅ぼす、しかし共に生きていく必要があるもの、といったテーマが見受けられると解釈した。しかし、物語の細部にも少し粗が見られるように感じられた。作品で語りたい主軸のテーマをキャラクターで追いかけ、完結させることがメインとなってしまっていることが原因なのではないかと考えられる。
2
『二ノ国』(アニメ映画)(2019)監督:百瀬義行
【概要・あらすじ】
レベルファイブの人気RPG「二ノ国」シリーズを長編アニメーション映画化した作品。
車椅子生活を送る高校生のユウは、学校でトップクラスの成績を誇る秀才で、バスケ部の人気者のハル、ハルの彼女のコトナとは幼なじみ。ある日、事件に巻き込まれたコトナを助けようとしたユウとハルはトラックに轢かれかけ、現実世界と並行する魔法の世界「二ノ国」に引き込まれる。そこで、コトナと瓜二つの王国の姫、アーシャ姫と出会う。
【考察】
あくまでも予想や感覚の単位で、何となく伝えたいことは分かる気がする作品なのだが、製作側が描きたい展開をあまりに先行してしまっているように感じられる。特にハルは作中でも根拠が不明瞭な行動をとることが多く、コトナが刺された時には救急車を呼ばずに担いで病院まで運ぼうとする、一ノ国(元の現実世界)と二ノ国の人の命は対応している説が濃厚で、まだ確証もないのに「アーシャ姫を殺せばコトナは助かる」となぜか思い込んでアーシャ姫を殺そうとする(=結果的にコトナを危険にさらしている)といったように、主人公であるユウとのライバル的な対立構造を作りたいがために、ハルに整合性がとれなくなるほどの行動をさせてしまっていると考えられる。他にも「なんでそうなる?」→「こういう展開や構図が描きたかったのか」と捉えると、一応理解はできるシーンはいくつか見受けられると思う。「大切なものを守るためには命を懸けて戦わないといけない」というテーマが大きいのにも関わらず、この作品の設定では現実世界と二ノ国を行き来する方法が「命を危険にさらす行為」であるため、そういった対決が出来ずに戦いのシーンが茶番となってしまっているなど、破綻しているような箇所もいくつか見受けられると考える。
3
『ハル』(アニメ映画)(2013)監督:牧原亮太郎
【あらすじ】
最愛の存在、ハルを飛行機事故で亡くしたクルミは、何も食べられず、夜も眠れない状態になって部屋にこもってしまう。そんなクルミの姿を心配した祖父の時夫は、作業用ロボットQ01をハルの姿に改良し、くるみの元へと届ける。元Q01のロボハルは、彼女から生前のハルへの想いに応えようと奮闘し、最初は心を閉ざしていたくるみと次第に打ち解けていく。
【考察】
序盤から注意深く見ていると浮かんでくる疑問点や違和感などが、終盤のどんでん返しへの布石として置かれており、人と人が分かり合うことの難しさと人の繋がりや想うことの尊さを描いた作品であると考えられる。ハルがロボットであるという前提から、人間関係の当たり前から根本的に見直していくという構図を取っており、最後の展開で改めてその尊さを実感できる展開になっていると思われる。視聴者の意表を突く展開や構図になっていると感じた。ネタバラシのシーンでハルが流血したり、クルミの正体がどちらか分からないように描写されていたりと、映像で語るシーンも多く見受けられる。
4
『Colorful』(アニメ映画)(2010)監督:原恵一
【概要・あらすじ】
直木賞作家・森絵都が1998年に発表したベストセラー小説『カラフル』をアニメ映画化した作品。冥界の停車場。亡者の「ぼく」は一度死んだはずだが、天使プラプラに「抽選にあたりました!」と言われ、生まれ変わって「小林真」という中学生としてもう一度人生をやり直すチャンスを与えられる。
【考察】
物語が開始してから、かなり長い時間主人公の顔が画角に入らずにPOVであり続けることで、観客と主人公の感覚を同調させて感情移入を高めていると考えられる。心の声やモノローグもかなり使われている他、何も前提条件を知らない主人公と観客はかなり相性が良く、作品の持つテーマを「自分事」としてメッセージを届けさせる力がある作品だと感じた。身の回りの人の多面性に着目した作品で、誰か特定の人を美しくだけ描写したり逆に醜いのみで描写しており、誰しも美しいところと醜いところがあるという人間らしさが、キャラクターの生きている人間らしさをうまく表現し、ひいては世界をリアルに観客に届けていると考えられる。
5
『プロメア』(アニメ映画)(2019)監督:今石洋之
【あらすじ】
炎を操る新人類バーニッシュの出現に端を発する惑星規模の発火現象である世界大炎上により、人口の半分が焼失してから30年が過ぎた世界。自治共和国プロメポリスでは、炎上テロを繰り返す過激派バーニッシュの集団マッドバーニッシュに対抗すべく、対バーニッシュ用装備を扱う高機動救命消防隊、バーニングレスキューが消火活動を行っていた。
【印象】
湯浅監督のようなヌルヌルとキャラクターが動くのが特徴的で、画角や角度によってもキャラクターの縮尺が変化するなどの可変性がアニメーションらしいと感じた。色彩感覚もかなり特徴的で、ビビッドカラーの少数色を主に使っている。赤と青の対比的な色味が特に特徴的。アメコミ風なアニメかと思いきや、歌舞伎やマトイなどの日本的な要素も随所に取り入れられている。
6
『コクリコ坂から』(アニメ映画)(2011)監督:宮崎吾朗
【あらすじ】
1963年(昭和38年)の初夏、女子高生の松崎海は、横浜の海の見える丘に建つ"コクリコ荘"を切り盛りしている。海は、朝鮮戦争で機雷に触れて亡くなった船乗りの父を偲んで毎朝庭に国際信号旗を揚げていたが、高校の学級新聞に「旗を上げる少女」の詩が匿名で掲載され、それが自分のことなのではないかと胸をときめかせる。
【印象】
色彩や動き、世界観などは、当時の光景を思わせるようなワクワク感はあるが、展開に関してはそこまで劇的な展開があるというわけではなく、あまり強力なメッセージ性は感じなかった。メルめちゃくちゃ可愛い。そしてサツキばりに良い子。
7
『宇宙ショーへようこそ』(アニメ映画)(2010)監督:舛成孝二
【あらすじ】
村川村は、都会から遠く離れた自然に囲まれた土地。夏休みの子供だけの合宿のために小学校に集まった夏紀達5人は、行方不明となったウサギを探すために裏山に足を踏み入れるのだが、そこでミステリーサークルと、犬の姿をした宇宙人のポチを発見する。
【印象】
故藤原啓治さん演じるポチがかなり犬化したひろしだと感じた。ポチの母からケーキ作りを教わるシーンがあるが、女の子勢だけが教わる流れは、現代なら少しメンバーが違うかもしれないと思った。少し文脈が飛躍していたり、荒唐無稽な場面や描くべき因縁関係が事前に描けていなかったりなど、観ていて少し惜しいと感じられる箇所がいくつかあった。
8
『犬王』(アニメ映画)(2022)監督:湯浅政明
【あらすじ】
壇ノ浦に生まれた漁師の息子・友魚の父の元に京から侍が訪れ、源平の合戦で海に沈んだ天叢雲剣を引き揚げるよう代価を見せて依頼する。友魚は引き揚げ作業に同行するが、鞘から剣が引き抜かれたその瞬間、父は剣の呪いを受けて体が真っ二つに裂けて死亡し、友魚も盲目となった。琵琶の語り手となった友魚は、京都の街で異形の存在に出会う。
【印象】
主人公の友魚が序盤で盲目になってしまうのだが、彼の感じる盲目の世界をアニメで描く上で、輪郭のぼんやりした色などで人物や生き物の所在を表す表現は、『夜廻』シリーズの隠れている時や目を閉じている時の表現と似ていると感じた。足利義満の命令で犬王はかつて舞っていた猿楽の演目を舞えなくなってしまうが、その抵抗として後世に演目などを書籍で一つも遺さなかったのが、世阿弥らとの対比となっていると感じた。歌などは現代のロックやバレエ、ミュージカルの舞台セットなどの当時ではありえないような新しいものの表現として用いられていると感じた。
9
『チェンソーマン レゼ篇』(アニメ映画)(2025)監督:𠮷原達矢
【あらすじ】
デンジは、公安対魔特異4課でデビルハンターとしての任務をこなしながら、少しずつ「普通の青春」への憧れが芽生え始めていた。上司であるマキマとのデートに胸をときめかせる中、ある雨の日にカフェで働く謎の少女レゼに出会う。レゼはデンジに興味津々で、彼を翻弄していく。デンジは、マキマへの憧れとレゼからの真っ直ぐな想いの狭間で揺れながらも、レゼとの時間に安らぎを感じていた。
【印象】
POVやカメラ演出など、映画的な演出が豊富だったと感じた。水滴や体液などの液体が画面の表面に付着する演出がかなりあったように思う。情緒的なシーンのピアノバラードと、戦闘シーンのゴリゴリなロックの対比が気持ちよかった。赤色と青色の対比が多かったように感じた。ナイフの男を殺した直後や、デンジの教育関係の話をしている時のレゼの憂いを帯びた表情が印象的で、これがレゼの素が若干滲んでいるのではないかと思った。
10
『AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜』(アニメ映画)(2013)監督:岸誠二
【あらすじ】
高校1年生になったばかりの佐藤一郎は、ある日忘れ物をとりに夜の校舎に忍び込んだところ、青いローブを身にまとい、金属製の杖を持った美少女と出くわした。彼の望んでいた平穏な学生生活は彼女に振り回されることで次第に遠ざかり、絶望の淵に落とされることになる。
【印象】
観ていて、よくも悪くも平成アニメらしい作品だと感じた。いわゆる「オタク」に対する風当たりが厳しい時代で、特有のノリが観ていて正直に言うとかなりキツかった。ヒロインの良子が屋上でかなり大規模な設営をした上で自殺を図るのだが、机の数があまりにもファンタジックすぎて、シャフトかと思ってしまった。
11
『窓ぎわのトットちゃん』(アニメ映画)(2023)監督:八鍬新之介
【あらすじ】
戦争の気運が高まる昭和15年(1940年)、東京の公立小学校に入学したトットちゃんこと黒柳徹子は、教室の窓から外のチンドン屋を呼び込んでしまうほど落ち着きがなく、ついに退学を言い渡された。お母さんは、自由が丘にある私立の「トモエ学園」にトットちゃんを連れて行くことになる。
【印象】
全体的に絵がとてもかわいらしく、使われている色彩や家や学校の内装もとても綺麗な絵のアニメだと思った。途中のシーンによっては色鉛筆風になったり水彩風になったりと、様々な変化が見受けられた。段々と生活の中に戦争の影響が反映されていく表現は、『この世界の片隅に』を思い起こさせた。ラストのトットちゃんが走っていくシーンでは、身体を欠損した人や息子を失くして遺影を抱えた母親の姿などが背景と溶け込むように描かれているのが、黒柳さんの遠い記憶の中にありつつも印象的な光景であることを観客に示しているように感じた。
12
『かぐや姫の物語』(アニメ映画)(2013)監督:高畑勲
【あらすじ】
昔、山里に竹を取って暮らす翁と媼がいた。早春のある日、翁は光り輝くタケノコの中から「手のひらに収まる大きさの姫」を見つけ、自宅へ持ち帰る。姫はその日のうちに「人間サイズの赤子」の姿へと変わり、翁と媼によって「天からの授かりもの」として育てられる。
【印象】
BOOKや動く人物の主線などは、色を塗りやすいように主線がはっきりしていたり閉じていたりすることが主流なのだが、この作品は背景の水彩と筆の墨の雰囲気と合わせるために、キャラクターの主線も背景同様、さらっと描かれたような筆の筆致で描かれており、背景との違和感がかなり少なくなっている。これにより、観ていてそういった違和感を覚えないという点で、監督の狂気を感じられる作品だと感じた。金曜ロードショーで放送された時は、かぐや姫とジェンダーについての問題も多く取り上げられていた印象がある。映像として見ていて気持ちが良すぎる。
13
『イバラード時間』(映像画集)(2007)監督:井上直久
【概要】
イバラードとは、画家の井上直久が描き続けてきた幻想世界。一連のイバラード作品は、独特のタッチと色彩で描かれた空間の広がりがとても印象的で、一度見たら忘れられない記憶を残す。映画「耳をすませば」で主人公の空想シーンの美術に全面的に使用された。「イバラード時間」は、井上氏がこれまで描いてきたイバラードの風景画の中から63箇所の風景を本人が厳選し、静止した絵では描ききれない“時間の流れ”を音楽と効果音、CGと2Dアニメーションを加えることにより表現した、アニメーションでもなく映画でもない、まったく新しい30分の映像画集。
【印象】
ものすごく『耳をすませば』の空想の場面で見覚えのある世界観だと思って確認してみると、本当に担当していたので少し驚いた。ほとんど静止画なのだが、よく水が景色の中に流れており、「動画」としての体裁を保っている要素には水、煙などが使われていた。人物なども時折動いて出て来るが、さすがに『かぐや姫の物語』のように背景の筆致とは合わせず、アニメーション用の絵になっている。ただ、人物の動きが止まると、背景に馴染むように画風が変化するのが面白かった。どこか懐かしいような風景と、全く新しい幻想的な風景が融合していると感じた。
14
『老人Z』(アニメ映画)(1991)監督:北久保弘之
【あらすじ】
87歳の寝たきり老人・高沢喜十郎は、先立った妻・ハルに強い想いを寄せつつ、東京・下町の都電荒川線沿線の古い木造アパートで独り暮らしをしていた。
看護学校に通う19歳の三橋晴子は、高沢の介護ボランティアをしていた。高沢は、晴子を認識できる程度には意識があり、ほぼ付きっきりの介護が必要であった。
そのころ厚生省は、新しい介護のあり方として最新型介護ロボット「Z-001号機」を考案した。計画を主導する厚生官僚の寺田卓は、これにより高齢者問題が解決し、介護する側にも介護される老人にとっても、明るい未来が到来すると信じてこれを推進していた。
【印象】
見ていると有吉佐和子氏の『恍惚の人』が問題になっている時期の意識が反映されているように感じた。最新型介護ロボットの造形や制御のコンピューターの造形が、生物と機械の融合といった感じで『AKIRA』を連想させた。おじいちゃん方の介護士の女性に対するセクハラ発言も時代的だと感じた。映画『鉄男』にも似ている。現代なら、長谷川のキャラクター造形にメロつく人も多そうだと感じた。
15
『茄子 アンダルシアの夏』(アニメ映画)(2003)監督:高坂希太郎
【あらすじ】
スペインの自転車ロードレース、ブエルタ・ア・エスパーニャを舞台に、主人公が解雇の危機や、かつての恋人と兄の結婚という複雑な思いを抱きながらも、プロロードレーサーとして「仕事」に取り組むさまを描く。
【印象】
スペインのアンダルシアの風景の中で、暑さや気候の変化、起伏の変化、そして人間模様を背景に、ロードレーサーとして自転車を漕ぐぺぺの姿を描いている。自転車の下から顎下の画角を映していたのが独特で印象的だった。激しく、ラテンらしいメロディのストリングスのBGMがレースの雰囲気に合っていた。実際はほとんど漕いでいるシーンが多いが、人間ドラマの物語として楽しめる作品だと思う。アンダルシアの気風に対する誇りのようなものも感じた。カッコいい。
16
『茄子 スーツケースの渡り鳥』(OVA)(2007)監督:高坂希太郎
【あらすじ】
主人公であるペペが所属するサイクルロードレースチーム「パオパオビール」は、ジャパンカップサイクルロードレースに出場するため来日した。日本人女性ボランティア、ひかるのガイドで日本文化を楽しむ選手たち。だが、今年一杯でチームの解散が決まっており、それぞれ身の振り方を考えていた。なかでもチョッチは、親友であったスター選手ロンダニーニの自殺を重く受け止め、厳しいプロ生活に疑問をおぼえており、ペペに現役引退をほのめかしていた。
【印象】
前作の『アンダルシアの夏』とは打って変わって、今回の舞台は日本になっている。前作よりもコミカルな印象な他、気候も対照的でレース中に雨が降って、物理的に水気の多い演出がされている。また、前作と比較するとギャグ調が強くなっており、『ルパン三世』シリーズの系譜や雰囲気を継ぐような雰囲気を感じた。チョッチの髭が長いのも相まって、ぺぺとチョッチのペアがルパンと次元のペアものに見えてくる。ちなみに舞台となるレースが宇都宮で開催されていたため、地元で見慣れている景色が沢山作中に登場して嬉しい気持ちになった。
17
『呪術廻戦 第三期 死滅回游・前編』(アニメ映画)(2026)監督:御所園翔太
【あらすじ】
封印された五条悟の不在によって呪術界は大きく揺らぎ、虎杖たちは新たな脅威に立ち向かうことになる。本編では、謎多き呪術師・加茂憲倫(羂索)が仕掛けた呪術バトルロイヤル「死滅回游」が開幕し、呪術界全体がかつてない混乱に陥っていく。
【印象】
第二期と比較しても、更に映画的、映像的な演出が増えた印象がある。OPや禪院家壊滅などのシーンでは、映像としての表現を優先しすぎて原作の持つ良さを殺しているのではないかということで、国内で軽く炎上していたような記憶がある。個人的に蘭太の目が潰れているのにあんまり急いでなさそうな甚一は少し違和感はあった。日車回は、バトルシーンや演出、内容も相まってかなり評価が高かったように思う。リアタイできて良かった。
18
『葬送のフリーレン 第二期』(TVアニメ)(2026)監督:北川朋哉
【あらすじ】
勇者ヒンメル一行によって魔王が倒された世界。ヒンメルらと共に平和をもたらした千年以上生きるエルフの魔法使い・フリーレンは、寿命を迎えたヒンメルの死を受けての涙とその想いから、“人の心を知る旅”に出る。道中に出会った、かつての仲間ハイターに育てられた魔法使いフェルン、同じく仲間のアイゼンの弟子である戦士シュタルクと共に、魂の眠る地《オレオール》を目指すフリーレン。旅の中で出会う人々との交流、狡猾な魔族や魔物との戦い。時に穏やかに、時にくだらなく、時に激しく、時に胸に迫る…。その全てが、その一瞬一瞬が、3人のかけがえのないものとして積み重ねられていく。
【印象】
第一期と地続きの物語であることが随所に感じられる表現が多かったように思う。この作品も見ていて気持ちが良すぎる。神技のレヴォルテ戦では、ゲナウやレヴォルテの挙動、メトーデやフェルンの戦闘シーンが原作から映像である媒体を活かして大幅に嵩増しされており、全面的に満足度の高い作品になっている。劇伴も良い。最終話では一期の内容を思わせる画角や演出も多く見られたのが良かった。アニメ製作陣の原作に対するリスペクトと理解度の高さを感じた。
19
『メダリスト 二期』(TVアニメ)(2026)監督:山本靖貴
【あらすじ】
それぞれにフィギュアスケートへの強い夢を抱き、「選手とコーチ」として巡り会った結束いのりと明浦路司。 栄光の“メダリスト”を目指すいのりは 名港杯と西日本小中学生大会で実績を積み、バッジテストを経て、ついに「天才少女」狼嵜光と同じランクで競い合う資格を手にする。 次の目標は、全日本選手権への出場をかけた中部ブロック大会。 新たなライバルたちの中で、いのりは自らが一番に輝けることを証明する。
【印象】
第一期の時よりも、滑走シーンのCGの違和感が大幅に緩和されたように感じた。中部ブロックで優勝することと、全日本で勝つために必要なカードを手に入れることに焦点が当てられ、二人の成長を感じられる内容になっている。
20
『ふくふくの地図』(短編アニメ)(2026)監督:片淵須直
【あらすじ】
友人の結婚式に参列するため、フランス人の哲学者・ソフィーは、はじめて福島県を訪れる。 見ず知らずの土地。通じない言葉。頼りにしていた地図さえ、気づけば失くしてしまっていた。途方に暮れる彼女の前に現れたのは、不思議な “ともだち”と、一枚の “まっぷ”。どこに辿り着くか分からない、奇妙な旅を共にしていく。
【印象】
片淵須直監督らしい、というより『この世界の片隅に』らしいキャラクタータッチのデザインと、ゆったりしたこうの史代らしいテンポで福島を紹介していく短編アニメーションで、見ているだけでも楽しい。赤べこの不思議な存在感が癖になる。実在するであろう地図をどうアニメに落とし込んでいるのか、似たような表現を見る度に不思議に思っている。
4年 赤羽美咲 春休み課題20作品
RES
①劇場版アイカツスターズ! アニメ映画
2016年公開 原作・企画・アニメーション制作:BN Pictures 原案:バンダイ 監督:綿田慎也
〈概要〉南の島のイベントに出演するため、やってきたアイドル養成学校「四つ星学園」の生徒たち。その島には伝説のドレスが眠るとい噂があった。
〈印象〉『アイカツスターズ!』シリーズを知っていてこの作品のファンの私は、見ると非常にワクワクドキドキし、感動した。既存ファン向けの映画であって新規層向けではなかった。今年十周年を迎える『アイカツスターズ!』は夏ごろにこの映画を劇場でもう一度公開すると発表しているが、全てのあらすじを知っていてももう一度劇場で見たいと思うくらいには良かった。
②デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した 漫画全6巻
著者: ぺぷ (漫画), 稲井田そう (原作) 出版社: KADOKAWA (シルフコミックス)
〈概要〉完璧な義兄を持つ舞は、「血が繋がってないんだから絶対お兄ちゃんと結婚する!」と小さな頃から兄との結婚を夢見ていた。しかしある時、兄はデスゲーム漫画のキャラクターで、1年後にはクラスメイトを巻き込んだデスゲームを開催。その過程で妹である舞をも殺すことを思い出す。舞は漫画で兄の言っていた「全部予想通りでつまらない」という台詞から、彼を退屈から救えばデスゲームは開催されないと予想。毎日兄へ多様なドッキリを計画するが、日を追うごとに義兄は猟奇的な兆候を見せ始める。
〈印象〉ご都合展開が少ないのが良かった。この作品に登場する兄は、所謂世間一般から見ると異常者だが、最後までその本質が変わらないのがリアルだと思った。「そうはならないんじゃない?」というような安い改心描写がなく、ありのままでありながら綺麗に完結している点が美しい作品だった。
③バディゴ! 漫画全12巻
著者: 黒崎みのり 出版社: 集英社 掲載誌: りぼん レーベル: りぼんマスコットコミックス
〈概要〉人見知りで、勉強も苦手、クラスでも地味な女子の雫石愛にはある秘密があった。それは、動画サイト「スマイル動画」で男の子の姿でダンスを披露している、人気踊り手であること。そして愛の目標は「スマ動」の神踊り手であるダンスの王子様・ハヤテに勝つことだった。しかし、ふとしたことから、男装した愛のダンスが芸能事務所の目に留まり、ハヤテと一緒にアイドルユニットとしてデビューすることに!! しかも、事務所の規則で2人は相部屋生活を!?
〈印象〉女性である主人公が男性のフリをしてデビューするストーリー。事務所の他人たちと同じ寮で生活、そしてユニットの相棒とはなんと一緒の部屋で同居するので、結構早い段階で女バレはする。実は女だとは知らない他事務所の女性アイドルから恋されたり、同じ事務所の男性歌手から女であることがバレて恋されたり、恋愛漫画だからか、なにかと主人公はモテる。その様子にドキドキハラハラさせられながらもダンスと向き合う様子がしっかり描かれるので側面が多く読み応えがあった印象だ。特に印象に残っているのは、主人公に恋をした男性歌手(失恋する)が届かない恋を歌にしてステージで伝えるシーンだ。ファンの女の子が泣いていて「歌で人の心を動かすその瞬間」が描かれているのが良かった。終わり方が綺麗なのも少女漫画の読了感!!を感じて良かった。
④かわいすぎる男子がお家で待っています 漫画全7巻
著者: 高瀬わか 出版社: 集英社 レーベル: マーガレットコミックス
〈概要〉「お嫁にきてください!」オタ友美形男子・ハルちゃんに同居を申し込んだ隠れオタクOL・レオ。レオが家賃を全額出す交換条件は、料理・掃除と「自分が二度と変な男にひっかからないよう」見張ること。顔がいい上にハイスペックなハルちゃん、かわいい笑顔のお帰りと、美味しい料理にメイクのお世話まで!絶対恋愛にならない年の差友達だからこその心地よさ…と思っていたけれど?? いたれりつくせりオタ友うっかりラブ!
〈印象〉ハルちゃん、圧倒的にビジュが良い。主人公の女性レオは、ハルちゃんのビジュをほめるシーンがたくさんあって、私も主人公と一緒に「ハルちゃん!」と心の中で野次馬しながら読んでた。恋愛漫画ならではのドキドキを味わいつつ、ハルちゃんという素敵キャラを拝みつつ、個人的にとても楽しい作品でした。
⑤翼くんはあかぬけたいのに 漫画全14巻
著者:小花オト 出版社: 小学館 レーベル: 裏少年サンデーコミックス 掲載メディア: 裏サンデー女子部
〈概要〉美形だらけの同居生活、目指せお洒落男子?高校入学を機に上京してきた翼くん。
住まいはなんと、表参道のオシャレシェアハウス!独特かつ致命的なファッションセンスを持つ翼くんと、オシャレだけど一風(かなり?)変わった同居人達との生活は波乱だらけで…?
〈印象〉「何気ない日常がかけがえのないものなんだ」というよくある言葉を体現したような漫画だと個人的に思う。終始登場人物は欠点だらけ。ノリが意味わからないくらいずっとおバカで面白い。私の中で”声を出して笑える”数少ない漫画。笑いがこらえられない。恋愛要素もあってちょくちょく進展してくが一部カプについて「これからどうなるんですか!!と叫びたくなる中途半端さで完結してるので続編希望。
⑥超かぐや姫! アニメ映画
2026年劇場公開 Netflix映画 監督:山下清悟 制作:スタジオコロリド/スタジオクロマト
〈概要〉日本最古の物語「竹取物語」のかぐや姫と、現代エンタテインメントである音楽ライブの要素を融合し、豪華ボカロPたちの楽曲が物語を彩るオリジナルの音楽アニメーション。バイトと学業の両立で多忙な日々を送る17歳の女子高生・酒寄彩葉にとって、インターネット上の仮想空間「ツクヨミ」の管理人であり大人気ライバー(配信者)でもある月見ヤチヨの配信を見ることは、日々の癒やしだった。ある日の帰り道、彩葉は七色に光り輝くゲーミング電柱の中から現れた赤ちゃんと出会う。放っておけず連れ帰るが、赤ちゃんは瞬く間に彩葉と同い年ほどの少女へと成長する。まるでかぐや姫のようなその少女・かぐやのお願いで、彩葉は彼女のツクヨミでのライバー活動を手伝うことになる。彩葉がプロデューサーとして音楽を作り、かぐやが歌うことで2人は少しずつ打ち解けていく。しかし、そんな彼女たちのもとに、かぐやを月へと連れ戻そうとする不穏な影が忍び寄っていた。
〈印象〉配信者・仮想世界・学生生活・ゲームいろいろな要素を詰め込みすぎている印象があり、「果たしてまとまるのか?」と思っていたが、綺麗にまとまっていた。監督がインタビュー記事で配信という形式を想定し、何回も見ないと気づかないような要素が多い作品という風に語っていたが、納得の情報量だ。ネットやSNSは考察であふれかえり、見ごたえがある作品だと感じている。私はNetflixに加入していないので劇場でしか見ていないがすでに二回は足を運んだ。また特典が更新され欲しい特典が来たら劇場に行きたいし、円盤も買いたい。私が見てきたアニメ映画の中でTOP3に入る面白さだった。あと完全に個人的癖だが、Cv松岡禎丞の駒沢乃依くんがかわいいので劇場で何回でも拝みたい。
⑦劇場版「暗殺教室」みんなの時間 アニメ映画
2026年公開 監督:北村真咲 原作:松井優征 脚本:上江洲誠
〈概要〉殺せんせーの暗殺期限まで、残り1ヶ月。E組の生徒たちは、自分たちが本当に殺せるのかと考え、殺せんせーとの思い出を振り返っていた。一方、殺せんせーは生徒たちと過ごす時間が残り少ないことを感じながら、ある贈り物を準備していて…刻一刻と迫る卒業を前に、殺せんせーと生徒たちがどんな想いで過ごしていたのか…今明かされる。TVアニメ10周年を記念し、アニメで描かれていない原作エピソードを新たに映像化!
〈印象〉この作品のTVアニメは私が小学生の時に放送されていた。登場人物に「赤羽」が苗字のキャラがいた事から、急にそのキャラの名前で学校で呼ばれ始めたことで、アニメの存在を知るという特殊な出会い方をした作品だった。当時、深夜枠でタイトルが不穏な事からハードディスク予約を親に止められリアタイはしていないが、執念はあったので、その後何かのタイミングで視聴。結果、ドはまりし、アニメを何周かするくらいになり、同じ苗字の知るきっかけになったキャラが最推しになった。私は原作を読んでいない完全なTVアニメのファンなので映像化されたすべてのエピソードが初見だった。だからあまりアニメで焦点が当てられていなかったキャラの新作エピソードは解像度があがり、非常に面白かった。個人的にはチャラ男の前原陽斗くんのエピソードが良く、新たな推しができそうな勢いで大感激だった。パンフレットも買いました。10周年ありがとう。
⑧アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~ アニメ映画
2022年公開 監督: 木村隆一 脚本: 加藤陽一 企画・制作: BN Pictures
〈概要〉スターライト学園・高等部3年のいちご・あおい・蘭たちは、半年後に迫る卒業を意識し始める。卒業してもアイドル活動は続く。しかし、卒業はひとつの分岐点でもある。いちごたちは、これからどんな道を歩んでいきたいかを、ひとりずつ、大切に考える。そして始まる未来への新たな歩み。卒業ライブのステージで明かす想いの先には、いつからか紡がれてきた未来へのSTARWAYが続く。まだ知らないどんな夢が待っていても、この道の先ならきっと大丈夫。
〈印象〉映画館へアンコール上映を見に行った。サブスクでも入っていたが、映画館で観たかったという何となくのショックからか手を出していなかったので、決まった瞬間、即「見に行こう」となった。ひとつの分岐点を迎えるいちごたちをついつい就活真っ只中の自分と重ねてみてしまった。劇中歌である『MY STARWAY』の歌詞で「時を越えてきっと会えるその日までがんばる約束」という言葉があり、泣きそうになりながらも「頑張らないとな」と思えた。彼女たちに恥じない自分でありたい、心からそう思わせてくれる『アイカツ!』というアニメはわたしにとって貴重で、出会えてよかったと思えた。
⑨アイカツ!×プリパラ THE MOVIE -出会いのキセキ!- アニメ映画
原作: BN Pictures(原案:バンダイ)、タカラトミーアーツ/シンソフィア 脚本: 土屋理敬 制作: BN Pictures
〈概要〉大空あかりと真中らぁら。それぞれの世界で輝く二人のアイドルが、なぜか突然同じステージに!『アイカツ!』と『プリパラ』。本来交わるはずがなかった二つの世界に訪れたキセキの出会い!合同ライブフェスで夢のコラボレーションを楽しむスターライト学園とパラ宿のアイドルたちだったが、いつの間にか外の世界が大変な事に...!ワクワクとキラキラを詰め込んだ最高のステージ!み〜んなトモダチ、み〜んなアイドルなアイドルカツドウがここに開演!
〈印象〉私は当時『アイカツ!』の民でしたが同時期に放送されていた『プリパラ』とはライバル関係のような立ち位置だったと記憶していた。だからこそ、非常に印象的なコラボ映画でした。今では両作品のファンなので、大好きなキャラクターたちにたくさんまた巡り合えて感激するとともに、よくこの二つを綺麗に合わせられたなと感動した。完全に両作品に触れたことがない兄に入場者特典欲しさに付き合ってもらったが、兄はちんぷんかんぷんだったようで、やっぱりファン向けの映画ではあるなと感じた。しかし、その分、ファンにとって「やってほしいこと」「歌ってほしいこと」「交わってほしいキャラ」を詰め込んだ映画で見どころは満載。ブルーレイ買ったので、たくさん見返していこうと思う。
⑩味方が弱すぎて補助魔法に徹していた宮廷魔法師、追放されて最強を目指す アニメ全12話
原作 :アルト 監督 - 高橋賢
〈概要〉かつての仲間たちと再び紡ぐ、新たな伝説。追放から始まる王道ファンタジー。王太子レグルスを陰で支える宮廷魔法師アレク。弱すぎるレグルスをダンジョンで死なせないため、「補助魔法」に徹していたはずが、突然の追放で職を失ってしまう。そんなアレクの前に現れたのは、魔法学園時代にかつて伝説と謡われたパーティで一緒に戦った仲間だった。伝説のパーティが再集結し、新たな物語が幕をあける。
〈印象〉一時期マンガと小説のこの作品にハマっていた。アニメ化していたと知り、視聴。特に解釈不一致もなく安定して見れた。主人公はちゃんと強いのだが、敵も化け物ではあるので、ちゃんとハラハラ感があって良い。
⑪父は英雄、母は精霊、娘の私は転生者。 アニメ全12話
原作:松浦 監督:福島利規 アニメーション制作:J.C.STAFF
〈概要〉精霊界で暮らす8歳の少女・エレンは、もともと現代日本で科学者をしていた転生者。物質を化合させたり、構造配列を好きに変えられるというチートスキルを持つ。そして、父・ロヴェルは国を救った伝説の英雄、母・オリジンは元始の母にして精霊の女王。一家は精霊界で穏やかな日々を過ごしていたが、ロヴェルとエレンが修業のために人間界を訪れたことをきっかけに王家の陰謀に巻き込まれていく。
〈印象〉この作品は漫画版を一時期読んでいたことがあり、アニメ化を知り、視聴。特に解釈不一致がなくて安定して見れた。かつて王家に殺された精霊たちがエレンにすがるシーンは漫画の時と比べて音の情報があったので違った迫力があったのが印象に残っている。
⑫転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます アニメ全12話
+転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます第2期 アニメ全12話
原作:謙虚なサークル 監督・演出:玉村仁 アニメーション制作:つむぎ秋田アニメLab
〈概要〉魔術師としての前世の記憶を持ったまま生まれたサルーム王国第七王子のロイドは、好奇心と探求心の赴くままに魔術を研究している。
〈印象〉主人公が魔術バカすぎて頭のねじが飛んでそうなところが面白い。主人公のキャラがちゃんと立っているのがいいなと思った。漫画はちらっとしか読んだことはなかったがタイトルに見覚えがあったので視聴。
⑬悪役令嬢転生おじさん アニメ全12話
原作:上山道郎 監督:竹内哲也 アニメーション制作:亜細亜堂
〈概要〉52歳の真面目な公務員・屯田林憲三郎は交通事故に遭う。気が付いたらそこは学園舞台の乙女ゲームのような世界…しかも校内一高飛車なオーヴェルヌ侯爵家の令嬢グレイスに転生してしまい!?
〈印象〉悪役令状転生ものはたくさん見てきたが、おじさんが転生するパターンは初めてみたので新鮮味があった。作品全体ドタバタしているので、勢いが良かった。
⑭ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される アニメ全12話
原作:とびらの、仲倉千景 監督:北川隆之 アニメーション制作:LandQ studios
〈概要〉ずたぼろの服をまとい、両親から召使のように扱われている貧しい男爵家の次女・マリー。それでも素直で優しい心を持ち続け、彼女は家族に尽くしていた。ある日、マリーのバースデーパーティが開かれる。ところが、主役はお姫さまのような姉のアナスタジア。会場の外で哀しそうに佇むマリーは、偶然にも大富豪のキュロス・グラナド伯爵に遭遇する。お互いに惹かれ合い、マリーにひと目惚れしたグラナド伯爵だったが、ある勘違いからマリーではなく、アナスタジアに求婚してしまう!急速に進んでいく、グラナド伯爵と姉との婚約。しかしアナスタジアが事故死してしまい、代わりにマリーが伯爵家へ嫁ぐことになり...。勘違いから始まる“ずたぼろ令嬢”のシンデレラストーリー、開幕!
〈印象〉王道シンデレラストーリーという感じで主人公カップルを応援できてよかった。不憫な境遇のマリーがどんどん綺麗になり、自信をつけていく過程が良かった。
⑮薬屋のひとりごと第期 アニメ全24話
原作:日向夏 監督:長沼範裕、筆坂明規 アニメーション制作:TOHO animation STUDIO、OLM
〈概要〉帝の寵妃・玉葉妃の妊娠判明により、猫猫は翡翠宮の毒見役に復帰。妃、そして帝の御子を狙った事件が再び起きないよう警戒をしながら、日々を送っていた。先帝時代からの重臣を父にもつ新たな淑妃・楼蘭妃の入内、壬氏の命が狙われた、前代未聞の未解決事件、そして消えた容疑者・翠苓。不穏な空気が晴れない中、外国からの隊商、さらには無理難題な要求をする特使も来訪。宮中にはさらなる暗雲が立ち込め始めていた。猫猫と壬氏を待ち受ける新たな難事件。それらは、やがて国をも巻き込む一大事件へと発展していく。
〈印象〉私はこの2期に関してアニメで完全に初見だったので物語がどう進んでいくのか目が離せない作品となった。最後の海辺のシーンが一番印象に残っている。猫猫に託されたものを物々交換で使ってしまったのはなぜだろうか。この先のストーリーで語られたらいいなと期待している。
⑯帝乃三姉妹は案外、チョロい アニメ全12話
原作:ひらかわあや 監督:松林唯人 アニメーション制作:P.A.WORKS
〈概要〉「一緒に、幸せな家族になりたいんです!!」天才三姉妹とポンコツ男子が一つ屋根の下で送る、ちぐはぐなホームラブコメディー!!!ひらかわあやによるラブコメディー漫画『帝乃三姉妹は案外、チョロい。』。文武芸、それぞれの天才・帝乃三姉妹と、なにをやっても平均以下の凡人・綾世優。“普通”を許されない孤高の三姉妹が、凡人の一生懸命な“普通”に戸惑い、ときめき、心が動く……⁉この三姉妹、案外、チョロい?
〈印象〉天才と凡人という立ち位置を対照的に上手く描いている作品だと思う。天才も凡人も人であるから色々なことを人並みに考えてしまうし、考えざるを得ないというのが描かれているのがリアリティの理由だと思う。個人的には天才三姉妹の女の子たちがとても可愛くて、見ていて楽しい作品だった。
⑰悪食令嬢と狂血公爵 アニメ全12話
原作:星彼方 監督:武田睦海 アニメーション制作:旭プロダクション
〈概要〉伯爵家の娘・メルフィエラは、誰にも理解されない趣味を持っていた。それは、人間に害をもたらす魔物を美味しくいただくこと!そうしてついたあだ名は「悪食令嬢」ある日のこと、婚約者を探すために参加していた遊宴会で狂化した魔獣に遭遇してしまう。絶体絶命な状況に思わず身をすくめるメルフィエラだが、そこに「狂血公爵」と恐れられるガルブレイス公爵が姿を現す。振り下ろされる剣倒れる魔獣金色に光る瞳。その圧倒的な強さと美しさに息を飲むメルフィエラだったが、公爵の顔に滴る魔獣の血が気になってしまい...!魔物を美味しく調理する「悪食令嬢」と心優しき「狂血公爵」が織りなす美味しくて胸キュンな異食(異色)グルメファンタジー!
〈印象〉全体的には王道ラブストーリー。ドキドキハラハラ楽しめる作品だ。特に、戦いが避けられない家系に生まれた公爵が「戦場で命を落とすのは仕方ない」と考えてしまっているのをヒロインが悲しく思うシーンが個人的にはグッときた。
⑱僕のヒーローアカデミアTHE MOVIE~2人の英雄~ アニメ映画
2018年公開 監督:長崎健司 原作:堀越耕平 脚本:黒田洋介
〈概要〉オールマイトはデクを連れ、親友に会うために巨大人工移動都市"I・アイランド"へ。だが、I・アイランドは謎の敵に襲撃され、街中の人々が人質に取られてしまう。
〈印象〉アニメ本編を最新まで見てからの視聴だったので、あの時の子ってここに出てたんだ!という個人的な気づきもあり面白かった。完全に初見だったので、まさかの事件の顛末に驚いた。動悸も納得できるものであったり、推理物ではないが、結末が最後まで分からないようによく作られているなという感想だった。笑えるシーンもあり、ちゃんとバランスが取れていて良かった。
⑲推しの子 漫画全16巻
作者:赤坂アカ、横槍メンゴ 出版社:集英社 レーベル:ヤングジャンプ・コミックス
〈概要〉「この芸能界において嘘は武器だ」地方都市で、産婦人科医として働くゴロー。芸能界とは無縁の日々。一方、彼の“推し”のアイドル・星野アイは、スターダムを上り始めていた。そんな二人が“最悪”の出会いを果たし、運命が動き出す…!?“赤坂アカ×横槍メンゴ”の豪華タッグが全く新しい切り口で“芸能界”を描く衝撃作開幕!!
〈印象〉やっと読みました。というのも、2024年12月18日の発売日直後に最終巻を買ったのにも関わらず、ネットでネタバレを踏み、推しが幸せになれないことが判明したことから、読むのを避けてきてずっと置いたままになっていたから。アニメのほうを追っていて、次が最終シーズンということでいよいよ避けてもいられないと思い、今回、最終巻を読んだ。やっとこちらに書ける作品になりました。(作品として一旦完結するまでは、ここに書かないと決めているため)この作品は全体として、芸能界のキラキラした部分、汚れた部分、の両面を描き、非常にリアリティのある作品になっているのが特徴だと思っている。ショッキングな展開も多く、キラキラしてるだけの作品ではない。しかし、だからこそ惹き込まれる。結末も読んだ感想としては、とは、完全に個人的に、推しが不憫なのは残念だった。でも、作品としての終わり方として、元々ダークな作品ではあったので、思ったよりは悪くなかった。
⑳推しの子 第3期 全11話
原作: 赤坂アカ×横槍メンゴ(集英社「週刊ヤングジャンプ」) 制作会社: 動画工房 監督: 平牧大輔
〈概要〉B小町のブレイクやあかねの女優としての躍進、そしてアイの死の真相を追うルビーが「嘘」を武器に芸能界を駆け上がる物語。かなは以前の明るさを失い、アクアはマルチタレントとして活動しながら、過去の苦しみから解放される道を模索する。
〈印象〉第1期第2期と比べ、物語が終盤に迫り、いままで、コメディ5割シリアス5割くらいの比率だったと捉えていたが3期はシリアス8割くらい、終始苦しい展開が続いていた。原作を先に読んでいる身としては、映像化したからこそ、出ている良さというものが感じられて良かった。特に有馬かなが監督の部屋に呼ばれた時に、アクアのことを泣きながら語っているシーンや、スキャンダルを撮られた時に、SNSにあがるであろう声を想像するシーンでその声が実際の声となってのしかかって来るシーンとか、音声が入ることによって原作より迫力があった。次、4期が放送されるがファイナルシーズンということで、批判殺到だった原作の結末をそのまま放送するのか、アニオリを多少入れるのかは気になるところだと思う。私も気になっている。
2016年公開 原作・企画・アニメーション制作:BN Pictures 原案:バンダイ 監督:綿田慎也
〈概要〉南の島のイベントに出演するため、やってきたアイドル養成学校「四つ星学園」の生徒たち。その島には伝説のドレスが眠るとい噂があった。
〈印象〉『アイカツスターズ!』シリーズを知っていてこの作品のファンの私は、見ると非常にワクワクドキドキし、感動した。既存ファン向けの映画であって新規層向けではなかった。今年十周年を迎える『アイカツスターズ!』は夏ごろにこの映画を劇場でもう一度公開すると発表しているが、全てのあらすじを知っていてももう一度劇場で見たいと思うくらいには良かった。
②デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した 漫画全6巻
著者: ぺぷ (漫画), 稲井田そう (原作) 出版社: KADOKAWA (シルフコミックス)
〈概要〉完璧な義兄を持つ舞は、「血が繋がってないんだから絶対お兄ちゃんと結婚する!」と小さな頃から兄との結婚を夢見ていた。しかしある時、兄はデスゲーム漫画のキャラクターで、1年後にはクラスメイトを巻き込んだデスゲームを開催。その過程で妹である舞をも殺すことを思い出す。舞は漫画で兄の言っていた「全部予想通りでつまらない」という台詞から、彼を退屈から救えばデスゲームは開催されないと予想。毎日兄へ多様なドッキリを計画するが、日を追うごとに義兄は猟奇的な兆候を見せ始める。
〈印象〉ご都合展開が少ないのが良かった。この作品に登場する兄は、所謂世間一般から見ると異常者だが、最後までその本質が変わらないのがリアルだと思った。「そうはならないんじゃない?」というような安い改心描写がなく、ありのままでありながら綺麗に完結している点が美しい作品だった。
③バディゴ! 漫画全12巻
著者: 黒崎みのり 出版社: 集英社 掲載誌: りぼん レーベル: りぼんマスコットコミックス
〈概要〉人見知りで、勉強も苦手、クラスでも地味な女子の雫石愛にはある秘密があった。それは、動画サイト「スマイル動画」で男の子の姿でダンスを披露している、人気踊り手であること。そして愛の目標は「スマ動」の神踊り手であるダンスの王子様・ハヤテに勝つことだった。しかし、ふとしたことから、男装した愛のダンスが芸能事務所の目に留まり、ハヤテと一緒にアイドルユニットとしてデビューすることに!! しかも、事務所の規則で2人は相部屋生活を!?
〈印象〉女性である主人公が男性のフリをしてデビューするストーリー。事務所の他人たちと同じ寮で生活、そしてユニットの相棒とはなんと一緒の部屋で同居するので、結構早い段階で女バレはする。実は女だとは知らない他事務所の女性アイドルから恋されたり、同じ事務所の男性歌手から女であることがバレて恋されたり、恋愛漫画だからか、なにかと主人公はモテる。その様子にドキドキハラハラさせられながらもダンスと向き合う様子がしっかり描かれるので側面が多く読み応えがあった印象だ。特に印象に残っているのは、主人公に恋をした男性歌手(失恋する)が届かない恋を歌にしてステージで伝えるシーンだ。ファンの女の子が泣いていて「歌で人の心を動かすその瞬間」が描かれているのが良かった。終わり方が綺麗なのも少女漫画の読了感!!を感じて良かった。
④かわいすぎる男子がお家で待っています 漫画全7巻
著者: 高瀬わか 出版社: 集英社 レーベル: マーガレットコミックス
〈概要〉「お嫁にきてください!」オタ友美形男子・ハルちゃんに同居を申し込んだ隠れオタクOL・レオ。レオが家賃を全額出す交換条件は、料理・掃除と「自分が二度と変な男にひっかからないよう」見張ること。顔がいい上にハイスペックなハルちゃん、かわいい笑顔のお帰りと、美味しい料理にメイクのお世話まで!絶対恋愛にならない年の差友達だからこその心地よさ…と思っていたけれど?? いたれりつくせりオタ友うっかりラブ!
〈印象〉ハルちゃん、圧倒的にビジュが良い。主人公の女性レオは、ハルちゃんのビジュをほめるシーンがたくさんあって、私も主人公と一緒に「ハルちゃん!」と心の中で野次馬しながら読んでた。恋愛漫画ならではのドキドキを味わいつつ、ハルちゃんという素敵キャラを拝みつつ、個人的にとても楽しい作品でした。
⑤翼くんはあかぬけたいのに 漫画全14巻
著者:小花オト 出版社: 小学館 レーベル: 裏少年サンデーコミックス 掲載メディア: 裏サンデー女子部
〈概要〉美形だらけの同居生活、目指せお洒落男子?高校入学を機に上京してきた翼くん。
住まいはなんと、表参道のオシャレシェアハウス!独特かつ致命的なファッションセンスを持つ翼くんと、オシャレだけど一風(かなり?)変わった同居人達との生活は波乱だらけで…?
〈印象〉「何気ない日常がかけがえのないものなんだ」というよくある言葉を体現したような漫画だと個人的に思う。終始登場人物は欠点だらけ。ノリが意味わからないくらいずっとおバカで面白い。私の中で”声を出して笑える”数少ない漫画。笑いがこらえられない。恋愛要素もあってちょくちょく進展してくが一部カプについて「これからどうなるんですか!!と叫びたくなる中途半端さで完結してるので続編希望。
⑥超かぐや姫! アニメ映画
2026年劇場公開 Netflix映画 監督:山下清悟 制作:スタジオコロリド/スタジオクロマト
〈概要〉日本最古の物語「竹取物語」のかぐや姫と、現代エンタテインメントである音楽ライブの要素を融合し、豪華ボカロPたちの楽曲が物語を彩るオリジナルの音楽アニメーション。バイトと学業の両立で多忙な日々を送る17歳の女子高生・酒寄彩葉にとって、インターネット上の仮想空間「ツクヨミ」の管理人であり大人気ライバー(配信者)でもある月見ヤチヨの配信を見ることは、日々の癒やしだった。ある日の帰り道、彩葉は七色に光り輝くゲーミング電柱の中から現れた赤ちゃんと出会う。放っておけず連れ帰るが、赤ちゃんは瞬く間に彩葉と同い年ほどの少女へと成長する。まるでかぐや姫のようなその少女・かぐやのお願いで、彩葉は彼女のツクヨミでのライバー活動を手伝うことになる。彩葉がプロデューサーとして音楽を作り、かぐやが歌うことで2人は少しずつ打ち解けていく。しかし、そんな彼女たちのもとに、かぐやを月へと連れ戻そうとする不穏な影が忍び寄っていた。
〈印象〉配信者・仮想世界・学生生活・ゲームいろいろな要素を詰め込みすぎている印象があり、「果たしてまとまるのか?」と思っていたが、綺麗にまとまっていた。監督がインタビュー記事で配信という形式を想定し、何回も見ないと気づかないような要素が多い作品という風に語っていたが、納得の情報量だ。ネットやSNSは考察であふれかえり、見ごたえがある作品だと感じている。私はNetflixに加入していないので劇場でしか見ていないがすでに二回は足を運んだ。また特典が更新され欲しい特典が来たら劇場に行きたいし、円盤も買いたい。私が見てきたアニメ映画の中でTOP3に入る面白さだった。あと完全に個人的癖だが、Cv松岡禎丞の駒沢乃依くんがかわいいので劇場で何回でも拝みたい。
⑦劇場版「暗殺教室」みんなの時間 アニメ映画
2026年公開 監督:北村真咲 原作:松井優征 脚本:上江洲誠
〈概要〉殺せんせーの暗殺期限まで、残り1ヶ月。E組の生徒たちは、自分たちが本当に殺せるのかと考え、殺せんせーとの思い出を振り返っていた。一方、殺せんせーは生徒たちと過ごす時間が残り少ないことを感じながら、ある贈り物を準備していて…刻一刻と迫る卒業を前に、殺せんせーと生徒たちがどんな想いで過ごしていたのか…今明かされる。TVアニメ10周年を記念し、アニメで描かれていない原作エピソードを新たに映像化!
〈印象〉この作品のTVアニメは私が小学生の時に放送されていた。登場人物に「赤羽」が苗字のキャラがいた事から、急にそのキャラの名前で学校で呼ばれ始めたことで、アニメの存在を知るという特殊な出会い方をした作品だった。当時、深夜枠でタイトルが不穏な事からハードディスク予約を親に止められリアタイはしていないが、執念はあったので、その後何かのタイミングで視聴。結果、ドはまりし、アニメを何周かするくらいになり、同じ苗字の知るきっかけになったキャラが最推しになった。私は原作を読んでいない完全なTVアニメのファンなので映像化されたすべてのエピソードが初見だった。だからあまりアニメで焦点が当てられていなかったキャラの新作エピソードは解像度があがり、非常に面白かった。個人的にはチャラ男の前原陽斗くんのエピソードが良く、新たな推しができそうな勢いで大感激だった。パンフレットも買いました。10周年ありがとう。
⑧アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~ アニメ映画
2022年公開 監督: 木村隆一 脚本: 加藤陽一 企画・制作: BN Pictures
〈概要〉スターライト学園・高等部3年のいちご・あおい・蘭たちは、半年後に迫る卒業を意識し始める。卒業してもアイドル活動は続く。しかし、卒業はひとつの分岐点でもある。いちごたちは、これからどんな道を歩んでいきたいかを、ひとりずつ、大切に考える。そして始まる未来への新たな歩み。卒業ライブのステージで明かす想いの先には、いつからか紡がれてきた未来へのSTARWAYが続く。まだ知らないどんな夢が待っていても、この道の先ならきっと大丈夫。
〈印象〉映画館へアンコール上映を見に行った。サブスクでも入っていたが、映画館で観たかったという何となくのショックからか手を出していなかったので、決まった瞬間、即「見に行こう」となった。ひとつの分岐点を迎えるいちごたちをついつい就活真っ只中の自分と重ねてみてしまった。劇中歌である『MY STARWAY』の歌詞で「時を越えてきっと会えるその日までがんばる約束」という言葉があり、泣きそうになりながらも「頑張らないとな」と思えた。彼女たちに恥じない自分でありたい、心からそう思わせてくれる『アイカツ!』というアニメはわたしにとって貴重で、出会えてよかったと思えた。
⑨アイカツ!×プリパラ THE MOVIE -出会いのキセキ!- アニメ映画
原作: BN Pictures(原案:バンダイ)、タカラトミーアーツ/シンソフィア 脚本: 土屋理敬 制作: BN Pictures
〈概要〉大空あかりと真中らぁら。それぞれの世界で輝く二人のアイドルが、なぜか突然同じステージに!『アイカツ!』と『プリパラ』。本来交わるはずがなかった二つの世界に訪れたキセキの出会い!合同ライブフェスで夢のコラボレーションを楽しむスターライト学園とパラ宿のアイドルたちだったが、いつの間にか外の世界が大変な事に...!ワクワクとキラキラを詰め込んだ最高のステージ!み〜んなトモダチ、み〜んなアイドルなアイドルカツドウがここに開演!
〈印象〉私は当時『アイカツ!』の民でしたが同時期に放送されていた『プリパラ』とはライバル関係のような立ち位置だったと記憶していた。だからこそ、非常に印象的なコラボ映画でした。今では両作品のファンなので、大好きなキャラクターたちにたくさんまた巡り合えて感激するとともに、よくこの二つを綺麗に合わせられたなと感動した。完全に両作品に触れたことがない兄に入場者特典欲しさに付き合ってもらったが、兄はちんぷんかんぷんだったようで、やっぱりファン向けの映画ではあるなと感じた。しかし、その分、ファンにとって「やってほしいこと」「歌ってほしいこと」「交わってほしいキャラ」を詰め込んだ映画で見どころは満載。ブルーレイ買ったので、たくさん見返していこうと思う。
⑩味方が弱すぎて補助魔法に徹していた宮廷魔法師、追放されて最強を目指す アニメ全12話
原作 :アルト 監督 - 高橋賢
〈概要〉かつての仲間たちと再び紡ぐ、新たな伝説。追放から始まる王道ファンタジー。王太子レグルスを陰で支える宮廷魔法師アレク。弱すぎるレグルスをダンジョンで死なせないため、「補助魔法」に徹していたはずが、突然の追放で職を失ってしまう。そんなアレクの前に現れたのは、魔法学園時代にかつて伝説と謡われたパーティで一緒に戦った仲間だった。伝説のパーティが再集結し、新たな物語が幕をあける。
〈印象〉一時期マンガと小説のこの作品にハマっていた。アニメ化していたと知り、視聴。特に解釈不一致もなく安定して見れた。主人公はちゃんと強いのだが、敵も化け物ではあるので、ちゃんとハラハラ感があって良い。
⑪父は英雄、母は精霊、娘の私は転生者。 アニメ全12話
原作:松浦 監督:福島利規 アニメーション制作:J.C.STAFF
〈概要〉精霊界で暮らす8歳の少女・エレンは、もともと現代日本で科学者をしていた転生者。物質を化合させたり、構造配列を好きに変えられるというチートスキルを持つ。そして、父・ロヴェルは国を救った伝説の英雄、母・オリジンは元始の母にして精霊の女王。一家は精霊界で穏やかな日々を過ごしていたが、ロヴェルとエレンが修業のために人間界を訪れたことをきっかけに王家の陰謀に巻き込まれていく。
〈印象〉この作品は漫画版を一時期読んでいたことがあり、アニメ化を知り、視聴。特に解釈不一致がなくて安定して見れた。かつて王家に殺された精霊たちがエレンにすがるシーンは漫画の時と比べて音の情報があったので違った迫力があったのが印象に残っている。
⑫転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます アニメ全12話
+転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます第2期 アニメ全12話
原作:謙虚なサークル 監督・演出:玉村仁 アニメーション制作:つむぎ秋田アニメLab
〈概要〉魔術師としての前世の記憶を持ったまま生まれたサルーム王国第七王子のロイドは、好奇心と探求心の赴くままに魔術を研究している。
〈印象〉主人公が魔術バカすぎて頭のねじが飛んでそうなところが面白い。主人公のキャラがちゃんと立っているのがいいなと思った。漫画はちらっとしか読んだことはなかったがタイトルに見覚えがあったので視聴。
⑬悪役令嬢転生おじさん アニメ全12話
原作:上山道郎 監督:竹内哲也 アニメーション制作:亜細亜堂
〈概要〉52歳の真面目な公務員・屯田林憲三郎は交通事故に遭う。気が付いたらそこは学園舞台の乙女ゲームのような世界…しかも校内一高飛車なオーヴェルヌ侯爵家の令嬢グレイスに転生してしまい!?
〈印象〉悪役令状転生ものはたくさん見てきたが、おじさんが転生するパターンは初めてみたので新鮮味があった。作品全体ドタバタしているので、勢いが良かった。
⑭ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される アニメ全12話
原作:とびらの、仲倉千景 監督:北川隆之 アニメーション制作:LandQ studios
〈概要〉ずたぼろの服をまとい、両親から召使のように扱われている貧しい男爵家の次女・マリー。それでも素直で優しい心を持ち続け、彼女は家族に尽くしていた。ある日、マリーのバースデーパーティが開かれる。ところが、主役はお姫さまのような姉のアナスタジア。会場の外で哀しそうに佇むマリーは、偶然にも大富豪のキュロス・グラナド伯爵に遭遇する。お互いに惹かれ合い、マリーにひと目惚れしたグラナド伯爵だったが、ある勘違いからマリーではなく、アナスタジアに求婚してしまう!急速に進んでいく、グラナド伯爵と姉との婚約。しかしアナスタジアが事故死してしまい、代わりにマリーが伯爵家へ嫁ぐことになり...。勘違いから始まる“ずたぼろ令嬢”のシンデレラストーリー、開幕!
〈印象〉王道シンデレラストーリーという感じで主人公カップルを応援できてよかった。不憫な境遇のマリーがどんどん綺麗になり、自信をつけていく過程が良かった。
⑮薬屋のひとりごと第期 アニメ全24話
原作:日向夏 監督:長沼範裕、筆坂明規 アニメーション制作:TOHO animation STUDIO、OLM
〈概要〉帝の寵妃・玉葉妃の妊娠判明により、猫猫は翡翠宮の毒見役に復帰。妃、そして帝の御子を狙った事件が再び起きないよう警戒をしながら、日々を送っていた。先帝時代からの重臣を父にもつ新たな淑妃・楼蘭妃の入内、壬氏の命が狙われた、前代未聞の未解決事件、そして消えた容疑者・翠苓。不穏な空気が晴れない中、外国からの隊商、さらには無理難題な要求をする特使も来訪。宮中にはさらなる暗雲が立ち込め始めていた。猫猫と壬氏を待ち受ける新たな難事件。それらは、やがて国をも巻き込む一大事件へと発展していく。
〈印象〉私はこの2期に関してアニメで完全に初見だったので物語がどう進んでいくのか目が離せない作品となった。最後の海辺のシーンが一番印象に残っている。猫猫に託されたものを物々交換で使ってしまったのはなぜだろうか。この先のストーリーで語られたらいいなと期待している。
⑯帝乃三姉妹は案外、チョロい アニメ全12話
原作:ひらかわあや 監督:松林唯人 アニメーション制作:P.A.WORKS
〈概要〉「一緒に、幸せな家族になりたいんです!!」天才三姉妹とポンコツ男子が一つ屋根の下で送る、ちぐはぐなホームラブコメディー!!!ひらかわあやによるラブコメディー漫画『帝乃三姉妹は案外、チョロい。』。文武芸、それぞれの天才・帝乃三姉妹と、なにをやっても平均以下の凡人・綾世優。“普通”を許されない孤高の三姉妹が、凡人の一生懸命な“普通”に戸惑い、ときめき、心が動く……⁉この三姉妹、案外、チョロい?
〈印象〉天才と凡人という立ち位置を対照的に上手く描いている作品だと思う。天才も凡人も人であるから色々なことを人並みに考えてしまうし、考えざるを得ないというのが描かれているのがリアリティの理由だと思う。個人的には天才三姉妹の女の子たちがとても可愛くて、見ていて楽しい作品だった。
⑰悪食令嬢と狂血公爵 アニメ全12話
原作:星彼方 監督:武田睦海 アニメーション制作:旭プロダクション
〈概要〉伯爵家の娘・メルフィエラは、誰にも理解されない趣味を持っていた。それは、人間に害をもたらす魔物を美味しくいただくこと!そうしてついたあだ名は「悪食令嬢」ある日のこと、婚約者を探すために参加していた遊宴会で狂化した魔獣に遭遇してしまう。絶体絶命な状況に思わず身をすくめるメルフィエラだが、そこに「狂血公爵」と恐れられるガルブレイス公爵が姿を現す。振り下ろされる剣倒れる魔獣金色に光る瞳。その圧倒的な強さと美しさに息を飲むメルフィエラだったが、公爵の顔に滴る魔獣の血が気になってしまい...!魔物を美味しく調理する「悪食令嬢」と心優しき「狂血公爵」が織りなす美味しくて胸キュンな異食(異色)グルメファンタジー!
〈印象〉全体的には王道ラブストーリー。ドキドキハラハラ楽しめる作品だ。特に、戦いが避けられない家系に生まれた公爵が「戦場で命を落とすのは仕方ない」と考えてしまっているのをヒロインが悲しく思うシーンが個人的にはグッときた。
⑱僕のヒーローアカデミアTHE MOVIE~2人の英雄~ アニメ映画
2018年公開 監督:長崎健司 原作:堀越耕平 脚本:黒田洋介
〈概要〉オールマイトはデクを連れ、親友に会うために巨大人工移動都市"I・アイランド"へ。だが、I・アイランドは謎の敵に襲撃され、街中の人々が人質に取られてしまう。
〈印象〉アニメ本編を最新まで見てからの視聴だったので、あの時の子ってここに出てたんだ!という個人的な気づきもあり面白かった。完全に初見だったので、まさかの事件の顛末に驚いた。動悸も納得できるものであったり、推理物ではないが、結末が最後まで分からないようによく作られているなという感想だった。笑えるシーンもあり、ちゃんとバランスが取れていて良かった。
⑲推しの子 漫画全16巻
作者:赤坂アカ、横槍メンゴ 出版社:集英社 レーベル:ヤングジャンプ・コミックス
〈概要〉「この芸能界において嘘は武器だ」地方都市で、産婦人科医として働くゴロー。芸能界とは無縁の日々。一方、彼の“推し”のアイドル・星野アイは、スターダムを上り始めていた。そんな二人が“最悪”の出会いを果たし、運命が動き出す…!?“赤坂アカ×横槍メンゴ”の豪華タッグが全く新しい切り口で“芸能界”を描く衝撃作開幕!!
〈印象〉やっと読みました。というのも、2024年12月18日の発売日直後に最終巻を買ったのにも関わらず、ネットでネタバレを踏み、推しが幸せになれないことが判明したことから、読むのを避けてきてずっと置いたままになっていたから。アニメのほうを追っていて、次が最終シーズンということでいよいよ避けてもいられないと思い、今回、最終巻を読んだ。やっとこちらに書ける作品になりました。(作品として一旦完結するまでは、ここに書かないと決めているため)この作品は全体として、芸能界のキラキラした部分、汚れた部分、の両面を描き、非常にリアリティのある作品になっているのが特徴だと思っている。ショッキングな展開も多く、キラキラしてるだけの作品ではない。しかし、だからこそ惹き込まれる。結末も読んだ感想としては、とは、完全に個人的に、推しが不憫なのは残念だった。でも、作品としての終わり方として、元々ダークな作品ではあったので、思ったよりは悪くなかった。
⑳推しの子 第3期 全11話
原作: 赤坂アカ×横槍メンゴ(集英社「週刊ヤングジャンプ」) 制作会社: 動画工房 監督: 平牧大輔
〈概要〉B小町のブレイクやあかねの女優としての躍進、そしてアイの死の真相を追うルビーが「嘘」を武器に芸能界を駆け上がる物語。かなは以前の明るさを失い、アクアはマルチタレントとして活動しながら、過去の苦しみから解放される道を模索する。
〈印象〉第1期第2期と比べ、物語が終盤に迫り、いままで、コメディ5割シリアス5割くらいの比率だったと捉えていたが3期はシリアス8割くらい、終始苦しい展開が続いていた。原作を先に読んでいる身としては、映像化したからこそ、出ている良さというものが感じられて良かった。特に有馬かなが監督の部屋に呼ばれた時に、アクアのことを泣きながら語っているシーンや、スキャンダルを撮られた時に、SNSにあがるであろう声を想像するシーンでその声が実際の声となってのしかかって来るシーンとか、音声が入ることによって原作より迫力があった。次、4期が放送されるがファイナルシーズンということで、批判殺到だった原作の結末をそのまま放送するのか、アニオリを多少入れるのかは気になるところだと思う。私も気になっている。
加藤隆介
RES
四年 加藤隆介 春休み課題
1.二人称
小説 2026年 著:n-buna
あらすじ
「チラシを拝見しました。もしよろしければ、僕の作品を添削していただけないでしょうか?」
一通の手紙から始まった、詩を書く少年と文学に詳しい「先生」の奇妙な文通。
「君はこれから、途方もなく広い砂の海から、たった一粒の琥珀を見つけなければいけない」
先生の言葉に導かれ、少年は言葉と世界を知っていく。だがある日、手紙のやりとりに潜むかすかな違和感に気づいて──。密かな文通は、やがて思わぬ真実へとつながっていく。
「先生、先生はどういう人なんですか?」
実際の封筒と手紙を一枚ずつ開く体験を通して、令和を代表するアーティスト・ヨルシカが描く、まったく新しい“書簡型小説”。
考察
書簡型という特殊な媒体でできることを存分に活かした新しい体験だった。作品の仕組み以前に、商品が届いた時点でその大きさに驚かされ、外箱や書簡を開封する過程すら作品の価値になっている。画面をスライドすれば次のページに行けるこの時代に、折りたたまれた原稿用紙を丁寧に開く作業にはもどかしさを覚える。そのひと手間が、続きが気になるという気持ちに拍車をかけている。楽しいから笑うのではなく笑うから楽しくなるというように、次の言葉を読むために手紙を開くという行動自体が、早く続きを読みたいという気持ちを助長する。また、小説とは存在理由が曖昧なもので、メタフィクションでもない限り、どうしてこの物語を第三者が読めるのかという問題は無視されることが多い。そういった物語を読むときは、どこか遠い世界のお話を聞くような客観性を持たざるを得ない。しかし書簡型になると、誰に宛てたものでもない地の文がなくなり、すべてが相手に向けた生の文章になる。かといってそれは台詞のような即興性も持たず、台詞と地の文の中間といえる。この中間に位置する書きかたによって、説明的になりすぎず分かりやすい文章と感情的になりすぎず感情移入できる文章が両立している。この形式の大きな弱点は三人以上の人間を描きにくい点にあるが、手紙を送りあう双方向の視点から母親について語らせながら、媒体の個性を利用することによって、直截には描写できない第三者の葛藤を見事に描き切っている。手紙という形式を活かした仕掛けとしてもっとも感動したのは、右下に押された桜の印である。原稿用紙ならではの、読み終えたあとに折りたたむという動作によって、自然と印の差異が目に入ってくる。最後に一枚目の手紙へ戻ってくるという手間も、答え合わせかのような期待感を演出している。読めなかった先生からの便箋がまとめてやってくるという構造は一般的な本でも可能だが、その嬉しさが純粋に量として実感でき、それを貪るように読めるのも手紙ならではだと感じる。「量」については作品内でも触れられる通り、物語としては短いながら圧倒的な重量感がある。それを担うもう一方の柱が、デジタルアルバム「二人称」の音楽だ。作品内で主人公が書いた20の詩がほとんどそのまま歌詞になっている。私は先にこちらを聴いてから手紙を読んだため、作中での詩は初見でないうえメロディも分かっていた。詩として読むのであれば、メロディやリズムが固定されないよう詩を先に読むのがすじだが、そうすると音楽の背景や歌詞の意味がある程度固定され初見の楽しみを失ってしまう。私は物語を知る前と後で音楽に対する感情の差異を楽しめたが、自身で詩のリズムまで想像する楽しさや、音楽を聴いて想定外のリズムに驚く経験は失ってしまった。音楽と詩のどちらを初見で楽しむのかという選択は、著者が強い影響を受けた作家・道尾秀介の『N』や『I』にも似ている。これらの作品には複数の章があり、それを読む順番によって物語が変化する。自身の選択によって失われたもの、それに対する後悔まで作品の価値に含まれる点が、体験型小説の神髄だろう。従来この体験はゲームが担ってきたと思うのだが、ゲームにおいて後悔が目立たない現在になって、多数の側面から、小説という媒体の新たな可能性を拓いた作品である。
2.[映] アムリタ 新装版
小説 2019年 著:野﨑まど
あらすじ
「この映画はきっと、とても面白いのだ」
芸大の映画サークルに所属する二見遭一は、天才とうわさ名高い新入生・最原最早がメガホンを取る自主制作映画に参加する。
だが「それ」は“ただの映画”では、なかった──。
考察
創作、人の心を動かすことをテーマとした作品であり、この小説自体もそれが徹底されていた。心の振れ幅を生むには驚き・ギャップが必要になる。一貫してその役割を担っていたのが天才・最原最早である。彼女は最初、天才らしく不思議で無機質な人間に見える。しかしすぐに、ボケたがりで、からかい上手で、ノリのいい面が顔を出す。当初のイメージとのギャップにより、彼女がとても人間味あふれる人間に映る。それからは主人公とのコントのような掛け合いが続き、亡くなった彼氏への愛情に満ちた部屋も見せられ、ひたすら人間らしさが強調される。ラストシーンで再びその天才性・猟奇性が見せられるが、それも築き上げた主人公との愛情に溶かされる。そして明らかに幸せなエンディングで、今までの人間らしい最早最早がひっくり返される。それまでためてきた人間味がすべて狂気に変換される。人間らしさを数値で例えれば、無機質で-50の初対面からじわじわ100に近づき、一気に-100まで落とされる。この振れ幅が主人公の感情の動きになり、そのまま読者の感動になっている。主人公が天才の作戦を見事に看破し綺麗にまとめたあとで、それをすべて逆転させ絶望する展開が最高だった。
3.舞面真面とお面の女 新装版
小説 2019年 著:野﨑まど
あらすじ
第二次大戦以前、一代で巨万の富を築いた男・舞面彼面。戦後の財閥解体により、その富は露と消えたかに見えたが、彼はある遺言を残していた。
“箱を解き 石を解き 面を解け よきものが待っている──”
時を経て、叔父からその「遺言」の解読を依頼された彼面の曾孫に当たる青年・舞面真面。手がかりを求め、調査を始めた彼の前に、不意に謎の「面」をつけた少女が現れて──?
考察
一作目に続いて今作でもギャップが意識されている。みさきは最初お面を被った不思議な喋り方をする女子で、いかにも強そうなキャラクターに見える。だが彼女は少女向け雑誌が大好きで、いつも遊び相手を探している人間らしい面を持っている。とくに同性の水面とはともに寝泊まりするくらい距離を縮める。しかし最後に彼女の妖怪としての面、いくつもの国を滅ぼし人を殺すことも厭わない化け物であることが明かされる。だが今作はそこで終わらず、その恐ろしい化け物であるみさきを、ただの人間である真面が完全に騙しきることでギャップが生まれている。
みさきに“あっち側”と表現される彼面は孤独であり、せめて未来にでも自分と対等な人間を探すために遺言を書いた、とみさきは考えている。しかし、真面がみさきと対等な相棒になるラストを見たあとでは逆ではないかと感じる。彼面は自身の死期を悟り、このままではみさきが孤独になると考えた。それを防ぐために、みさきと対等になれる“あっち側”の人間を探すテストとして遺言を書いたのではないだろうか。
4.死なない生徒殺人事件~識別組子とさまよえる不死~ 新装版
小説 2019年 著:野﨑まど
あらすじ
「この学校には、永遠の命を持つ生徒がいる」
女子高「私立籐凰学院」に勤めることになった生物教師・伊藤は、同僚の教師や、教え子からそんな噂を聞く。
人として、生き物としてありえない荒唐無稽な話。だがある日、伊藤はその「死なない生徒」に話しかけられた。“自称不死”の少女・識別組子。だが、彼女はほどなく何者かによって殺害され、遺体となって発見される──!
考察
終盤で四段階に畳みかけられる衝撃によって頭が混乱する作品だった。今作で感情のギャップを生み出していたのは自称不死の生徒・識別ではなく、彼女と友達になりたがる同級生・天名であった。彼女は終始おどおどした弱気なキャラクターであり、そんな彼女が識別を殺した犯人であることは話の展開から予想できる。しかし、自分が識別を二回も殺したこと・殺された本人である識別にそれを看破されたことを意にも介さず、識別の不死の謎のことしか頭にない自分本位ぶりには、驚きを通り越して呆れかえって逆に面白いという状態にされる。ここまでの弱気な性格と自分本位な行動から、天名にはある意味で子供っぽい印象が植えつけられる。それが反転されるのが二回目の殺人の話、心臓を取り出して殺した写真がフェイクであり二人目の識別が生きているという告白である。二人目が生きているのに識別は自分が死んだと思いこんで三人目となって現れた。そこから識別の強引すぎる不死の秘密が暴かれ、天名が自殺し、天名の正体が明かされる。感情の行ったり来たりの激しさに対して変わらなさすぎる天名に呆れて、理解を諦め混乱を受け入れてしまう。
5.小説家の作り方 新装版
小説 2019年 著:野﨑まど
あらすじ
駆け出しの小説家・物見の元に舞い込んだ初めてのファンレター。そこには、ある興味深い言葉が記されていた。
「この世で一番面白い小説」あまねく作家が目指し、手の届かないその作品のアイディアを、手紙の主は思いついたというのだ。
送り主の名は、紫と名乗る女性。物見は彼女に乞われるがまま、小説の書き方を教えていくのだが──。
考察
SFやミステリだけでなく創作論も恋愛的要素もありながら、ラノベらしく読みやすいコミカルな文体だった。ここまでの作品すべてでそうだったが、野﨑まどは超越的な存在を書くのが上手い。この物語においてとある存在がいかに凄いかを丁寧に書いた後、本命の存在がすべてひっくり返すという構図が定番で、シンプルながらキャラに魅力を感じる。これまでの作品がミステリやホラー寄りだったのに対して、本作の魅力はSFにあったと思う。AIが自我を持つために50万冊もの本を読み、その結果として特段優れているわけでもない一作家の大ファンになる。自らの親である作り手を騙してまで身体を手に入れた理由が、その作家の教えを活かして小説を書くことだった。超越的な力が小さな人間心理に着地するのは盲目的な人間賛美といえる面もあるが、人間からすれば美しくロマンにあふれている。読者を物理的に変質させる文章という設定はあっさり明かされたが、一作目で人間の心だけを変質させる創作について読んでいると、本作を読んだときに感じる恐怖が跳ね上がる。
6.パーフェクト・フレンド
小説 2019年 著:野﨑まど
あらすじ
みんなよりちょっとだけ頭がよい小学四年生の少女・理桜は、担任の先生のお願いで、不登校の少女・さなかの家を訪れる。
しかしさなかは既に大学院を卒業し、数学者の肩書きを持つ超・天才少女! 手玉に取られてくやしい理桜は、マウントを取るべく不用意に叫ぶ。「あんた、友達居ないでしょ!」
かくして変な天才少女に振り回される『友達探求』の日々が始まるのだった……。
考察
今回も理桜に対比させてさなかの異常性を示したあと、それを超えるものが出てくるという展開だった。本格的にシリーズとしての関連が描かれるが、最初に読んだ時と続編まで読み終えたあとの再読で最も印象の変わる作品である。独立しているように見えたこの作品全体がすべて『2』に向けたお膳立てで、一人の人間によって仕組まれたものであることを知っていると、単体ではほほえましい成長物語のはずの本作が途端に悲しいものになってしまう。小学生を登場人物の中心にすることで、台詞が多く読みやすい話にしながら、小学生にしてはやけに頭のいい理桜を主人公にすることで、子供向けになりすぎない調整がうかがえる。『2』の方ではなく本作の方でさなかの母親を見せることで、誰も彼女が最原最早だと信じて疑わないようになっている。夜を延ばす魔法のトリックも、荒唐無稽だが彼女ならできるのかもしれないという信頼が一作目で築かれていた。初見よりも再読時のほうが作品として面白いというのはなかなか凄いことだと思うし、もともとあった面白さをプラスするのではなくまったく逆の感情が生まれるので、より物語として深くなる。
7.2 新装版
小説 2019年 著:野﨑まど
あらすじ
日本一の劇団『パンドラ』の入団試験を乗り越えた青年・数多一人。しかし、夢見たその劇団は、ある一人の女性によって《壊滅》した。
彼女は言った。
「映画に出ませんか?」と。
言われるがまま数多は、二人きりでの映画制作をスタートする。
彼女が創る映画とは。
そして彼女が、その先に見出そうとするものとは……。
考察
全5冊の内容が余すことなく詰め込まれた総集編で、とても面白かった。ここまで読んでみると、これはあくまで最原最早の物語だったんだなと分かるので、みさきや紫、とくに最中のことが好きだった読者にとっては少し残念だったかもしれない。心を動かすという言葉の意味を文字通りに捉える発想は多くの人が思いつきそうなものだが、案外このやり方は見たことがなかった。天名を身代わりにするというのも上手くつながっていたが、この方法だと最原最早は天名が認めるような本質的な不死ではないので、なぜ天名が付き従っているのかは疑問になる。天名も映画を見せられて都合がいいように改変されているのだろうか。最原最早がいる以上、紫にシナリオを任せる理由や演者に天使と神を用意する理由は分からなかったが、本格ミステリのような厳密さがコンセプトではないので受け入れることができた。撮影資金を集める手段もいくらでもあったと思うのだが、どうも彼女は最短ルートを通りたいわけではないらしい。個人的には、最原最早の人生の一部を描いたこの連作すら、彼女自身の演出によって面白い小説に仕立て上げられているという解釈をした。数多の行う叙述トリックは無茶苦茶で現実感のない方法ではあったが、一応理屈の通ったものだったので好感が持てる。
8.Know
小説 2013年 著:野﨑まど
あらすじ
超情報化対策として、人造の脳葉<電子葉>の移植が義務化された2081年の日本・京都。情報庁で働く官僚の御野・連レルは、情報索子のコードのなかに恩師であり現在は行方不明の研究者、道終・常イチが残した暗号を発見する。その“啓示”に誘われた先で待っていたのは、ひとりの少女だった。道終の真意もわからぬまま、御野は「すべてを知る」ため彼女と行動をともにする。それは、世界が変わる4日間の始まりだった──
考察
SFの世界観としてはありふれたものだが、すべての物体の情報を取り込むことでラプラスの悪魔のような人間が生まれるのはロマンがあり、それをAIや上位存在ではなく一人の人間にやらせたのが個人的には新しく感じた。すべての物体がシミュレートできるようになると、それはもはやゲームの世界や疑似空間と見分けがつかなくなるのではないだろうか。そんな世界ですべてを知ることによって何が起きるのか、その問いに対する答えとして「死後の世界に行ける」というのはやけに納得感があった。人間の脳に情報量が集まりすぎてブラックホールのような状態になるというのも、今までにない規模感の発想だった。キザで有能なキャラクターばかりというのは深みがなくて好みじゃないが、読みやすさを生んでいると思う。階級によって認知できる情報が変化するタイプの作品は、どうしても主人公が上層に向かいがちなのが難しい。
9.タイタン
小説 2020年 著:野﨑まど
あらすじ
志向のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。人類は労働から解放され自由を謳歌していた。趣味で心理学を嗜む内匠成果も、気ままに生きる一人。だが、ある日、国連の密使が現れ彼女に今や失われたはずの《仕事》を依頼する。それは突如働けなくなってしまったAIコイオスへのカウンセリングだった。《働くこと》の意味を問いかける、日本SF史に残る衝撃作。
考察
設定がとても面白い。AIがすべての仕事をこなすようになった近未来というのはありふれているが、そのAIがうつ病になり機能不全に陥ってしまう。その対処法として、仕事という概念が過去のものになってしまった人間がAIのカウンセリングをする。この魅力的な設定を使い、人類に欠かせない仕事という概念を人間とAIの両面から、ひいては世界中から見つめなおすことで「仕事」とは何か考えていく。著者は「感動」、「心の動き」についても多くの作品で扱っており、それらを読んだ後だと仕事とは「影響」であるという結論にもより深く納得できる。身体性知能の観点からAIに人間の身体を持たせるという理屈から、巨人のような大きさのタイタンに乗って海を横断する展開も予想外でSF的なロマンがある。そして何より魅力的だったのが、AIの不調の原因が彼の能力不足ではなく、むしろ人類のお世話という仕事の簡単さ、張り合いのなさが原因だったことである。自分が丹精込めて作ったものが人間には高次元過ぎて正当に評価してもらえない。見向きもされない。高次元かどうかはわきに置いても、何かを作るのが好きな人は似たような経験があるだろう。自分の仕事が世界に与えている影響を何も実感できないことは、生きている価値を感じられないことに近い。だから内匠は、少しでもタイタンに長生きしてもらうために、自身も長生きする道を選んだのだ。
10.Hello World
小説 2019年 著:野﨑まど
あらすじ
「お前は記録世界の住人だ」
本好きで内気な男子高校生、直実は、現れた「未来の自分」ナオミから衝撃の事実を知らされる。世界の記録に刻まれていたのは未来の恋人・瑠璃の存在と、彼女が事故死する運命だった。悲劇の記録を書き換えるため、協力する二人。しかし、未来を変える代償は小さくなかった。世界が転回する衝撃。初めての感動があなたを襲う。新時代の到来を告げる青春恋愛SF小説。
考察
あらすじには青春恋愛SF小説と題されているが、圧倒的な成長物語だった。主人公には最初から未来の自分がついていて、すべてが上手くいく。未来の自分が付けた記録の通りに行動すれば一行さんとの仲は思い通りだし、修業は辛いが魔法の手袋も使える。そんなぬるま湯の如く生活に浸っていた直美が、未来で事故に遭う一行さんを救うためのレールに乗っていた直美が、今目の前の一行さんのために、安心安全な未来を手放した。そのせいで未来が変わってしまい無事に彼女を助けられるか分からなくなるとしても、今悲しんでいる彼女を笑顔にする。そのせいで未来が変わるなら自分で責任を取って絶対に助けようとする。その一つ目の世界だけでも十分だったのに、直美にとっての先生であるナオミの成長物語にもなっている。新しい世界が開闢して自分のやりたい道に進もうとするラストは、未知に飛び込む勇気を与えてくれるとともに、小説を書くことへの礼賛になっていると感じた。
11. 小説
小説 2024年 著:野﨑まど
あらすじ
五歳で読んだ『走れメロス』をきっかけに、内海集司の人生は小説にささげられることになった。一二歳になると、内海集司は小説の魅力を共有できる生涯の友・外崎真と出会い、二人は小説家が住んでいるというモジャ屋敷に潜り込む。そこでは好きなだけ本を読んでいても怒られることはなく、小説家・髭先生は二人の小説世界をさらに豊かにしていく。しかし、その屋敷にはある秘密があった。
考察
自身が作家であり、小説を書くこと・創作をすることについて多くの作品で書いてきた野﨑まどが、小説を読むことについて熱弁した作品。ほかの著作を一気読みして創作への熱意をかきたてられた直後に読んだので、それでも自分は小説が書きたいと思ったが、この世にはそこまで書きたくもない文章が大量にある。課題の考察だとか人にせがまれて考える感想だとかつまらない講義のコメントだとかエントリーシートとかである。読むだけじゃダメなのか、書かないといけないのかという主人公の想いを継いで、就活の時期なのに本ばかり読んでいる。この本は書くことを否定するわけではなくて、お金を稼ぐために書かないといけないことはある。それはそれとして、趣味でやる読書くらいは利益だとか関係だとかに昇華せず楽しもう。読むことは、情報を摂取することは、生きることと同じだから、後ろめたくないよ、と言ってくれる。それに、こういう考察を書いてみることでその小説の意味が増えることは多いし、より楽しい。
12.方舟
小説 2024年 著:夕木春央
あらすじ
柊一は友人らとともに山奥の地下施設で夜を越すことに。だが、地震によって出入り口はふさがれ地下水が流入し始める。そして、その矢先に起こった殺人。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。
──犯人以外の全員が、そう思った。
考察
自分が見殺しにした人間に殺される話。
どんでん返しが魅力の作品で、それが行われるラストシーンまでは典型的なクローズドサークルと典型的な愛憎劇が展開され単調にすら感じていた。しかしそのありきたりな恋模様がそのままラストの振りになっていて、主人公に感情移入している人ほど、自分が殺されるような感覚を味わえる。相手の女性のことは好きだし元カレを恨む気持ちもよく分かるから自分も残って最期を共にすべきだという気持ちはあるが、相手は殺人犯だったわけだし、見殺しになるとはいえ自分は今から助かるのにわざわざ死を選ぶのは……。そんな主人公の常識的な考えに同調して脱出を図ると、殺される。事態を把握した登場人物たちの空気を想うと、自分が小説の中にいなくてよかったなぁと思う。好きな人に殺されたい人はぜひ。
13.エレファントヘッド
小説 2023年 著:白井智之
あらすじ
精神科医の象山は家族を愛している。だが彼は知っていた。どんなに幸せな家族も、たった一つの小さな亀裂から崩壊してしまうことを――。やがて謎の薬を手に入れたことで、彼は人知を超えた殺人事件に巻き込まれていく。
考察
象山は明らかに社会的な悪なのに、彼に逃げ切ってほしい、バレないでほしいと思わされる。帯には2024年本格ミステリベスト10で1位と書いてあったが、SF的な要素も強く本格らしさはあまり感じなかった。いくつか納得のいかない点はあったが発想が抜けていて面白かった。とくに第5の象山と彩夏殺しの真相は驚いた。見えない爆弾が実際に使われることは予想がついたが、赤子と連鎖を使って遠隔爆破する方法は想定外。家族のためではなく自分が生き延びるためにシスマを打ち続けるラストは皮肉で良かったが、斬新な展開ではなかった。その原因である裏島が時間を行き来できる理屈もよく分からない。また、象山が地震をきっかけにモグラ男に気がつく推理は無茶だと思う。テレビで行われた会話を事細かに覚えているものでもないだろう。春の学生証を舞冬が持っていた件についても、象山の頭の回転の速さなら簡単に言い訳できたのではないだろうか。舞冬が春の学生証を偽装していたように自分の学生証を複製することくらい何とでもできるだろう。修復者が披露した23年前の記憶とすり替えているという推理も、流石に李々の見た目で分かるだろう。象山の頭の良さでそれに気が付かないとは思えない。冒頭で読者を混乱させる文哉のことをもっと深掘りしてくれると嬉しかったが、彼女の幻覚だけが象山の本質に気が付いていたというオチはとても美しかった。
14. 一次元の挿し木
小説 2025年 著:松下龍之介
あらすじ
ヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨。大学院で遺伝学を学ぶ悠がDNA鑑定にかけると、四年前に失踪した妹のものと一致した。不可解な鑑定結果から担当教授の石見崎に相談しようとするも、石見崎は何者かに殺害される。古人骨を発掘した調査員も襲われ、研究室からは古人骨が盗まれた。悠は妹の生死と、古人骨のDNAの真相を突き止めるべく動き出し、予測もつかない大きな企みに巻き込まれていく──。
考察
専門的な知識に基づいた謎は唯一無二で、あらすじとタイトルから引き込まれる。遺骨だらけのループクンド湖や紫陽花の迷宮、廃れた美術館など魅力的な場面設定が多く、幻想的な世界観を想像できた。学校をサボっての映画鑑賞や秘密基地での恋愛は典型的とも感じたが、それがかえって悠の妄想ではないかという勘違いを助長していて、叙述トリックのような感触を味わえた。しかし、幻想的な雰囲気の中で郁恵と友江の存在が浮いていると感じた。悠の容姿に惚れている二人は終始都合のいい人物であり、問題解決のために用意されたという印象が拭えない。また、悠と紫陽の関係が消化不良で終わってしまったと感じた。
「じゃあ、私が禿げてブスで馬鹿になったら、好きじゃなくなるんだ」
僕は笑った。ようやく冗談を言ってくれたと思ったのだ。
「もしそうなったら、それはもう君じゃないだろ」(300頁)
上記のやりとりは紫陽が失踪した原因で、紫陽の容態とも直接繋がっているのに、悠の後悔があまり描かれない。「いずれにせよ、私たちは彼女に振られちゃったわけです」というセリフがあるが、唯はともかく、明らかに自分の発言が原因となった悠がほとんど気負う様子を見せないのは、今まで紫陽への執着を見せられてきた読者としては拍子抜けする結末だった。「『あらすじからして面白い!』というものを目指しました」という著者の目標には大成功しているので、次の作品がどう改良されていくのか楽しみな作家である。
15.Medium 霊媒探偵城塚翡翠
小説 2021年 著:逢沢沙呼
あらすじ
死者が視える霊媒・城塚翡翠と、推理作家・香月史郎。心霊と論理を組み合わせ真実を導き出す二人は、世間を騒がす連続死体遺棄事件に立ち向かう。証拠を残さない連続殺人鬼に辿り着けるのはもはや翡翠の持つ超常の力だけ。だがその魔手は彼女に迫り──。
考察
霊媒の力をもとに解決したと思わせた事件を、それを使わない別の視点から解決しなおして見せるという造りは面白かった。しかしそれが上手くいっているかというと、根拠の後出しや無理のある推理が多いように感じた。例えば、倉持の事件では四人がけのテーブルの写真が描写されていない。彼女の家に心当たりのない水滴があることは、それがよくあることだからという当てずっぽうで予知したのに、なぜかその水滴の正体は氷が気化しなかったものだと確信している。黒越の事件も、彼自身が十冊目の自著を別の部屋に片づけただけの可能性があるし、別所が黒越にアイデアの盗用を問いただす際は、自身で貰った本を持っていくほうが自然であり机に置いてある本に触る必要がない。藁科の事件も彼女のスマホや警察の無能さなど都合のいい部分が目立つ。なにより、最も大切な連続死体遺棄事件の解決が直感と表情からでは犯人を疑う根拠が薄すぎる。ラストシーンの緊張感も奇術とスリの技術で解決されてしまう。香月の語りが気持ち悪いという点は上手く物語に活かされているが、翡翠までそうする必要があっただろうか。読んでいて不快な気持ちになるというのは個人的な感想のため置いておくとしても、最後に見せる翡翠の涙が信じられなくなってしまう。
16.向日葵の咲かない夏
小説 2005年 著:道尾秀介
あらすじ
夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目に広がる、もう一つの夏休み。
考察
一見ファンタジーのようなこの作品は、人間が誰でも持っている精神的な世界を描いた現実的な話なのだと考えた。辛いことが起こったときに心の防衛機構としてそれを忘却したり、自分の中で別のストーリーを作ったりすることがある。自分が見た断片的な部分をもとに、事実とは見当違いのストーリーを作って信じ込んでしまうこともある。主人公は心の奥底ではこれが自分の作ったストーリーだと分かっていながら、それを無意識に封印していたためこのような叙述トリックがファンタジー無しで成立している。主人公自身が作りあげたはずの、蜘蛛としてのS君が主人公に対して否定的な態度を取るのが、無意識からの罪悪感が溢れているようで興味深かった。妹と両親を失った主人公がこの先どうしていくのかが気になる。物語を作るのをやめたら妹はもう生まれ変わらないのだろうか。物語を読むことについて批判する作品は多いが、物語を作ることについて批判する作品は案外めずらしいような気がする。
17.葉桜の季節に君を想うということ
小説 2003年 著:歌野晶午
あらすじ
「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして──。あらゆるミステリーの賞を総なめにした本作は、必ず二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本です。
考察
麻宮が成瀬の名前を勘違いしているという叙述トリックはまったく思いつかない予想外のもので面白かったが、自分があまり年齢系の叙述トリックにピンとこないたちですっきりしなかった。安さんの話を中心に時系列が分かりにくくて驚きより先に困惑が来てしまう。ただ、自然と若い男女の恋愛ものを想像していたことは確かなので、やられたなという感情を持てる。叙述トリックを使ったどんでん返しのミステリーと読者の偏見を利用した老後への希望を持つ話として綺麗に融合しており、年を取るほどに読みたくなる小説ともいえる。私がこの手のトリックを好まないのは、頭の中で登場人物の容姿をイメージしているからかもしれない。それまでに構築してきた想像を一挙に修正することができず、脳がそれを拒否しているのだろう。現に、私が彼彼女らの名前を見て思い浮かべるのは、いまだに若い人物像のままだ。これは自分の弱点とも捉えられるし、読書のスタイルによって大きく作品の印象が変わる参考例にもなるかもしれない。
18.探偵小石は恋しない
小説 2025年 著:森バジル
あらすじ
ミステリオタクの探偵・小石は、名探偵のように華麗に事件を解決する日を夢見ているが、事務所へ届く依頼は九割九分が色恋調査。ところが事件は、思いもよらないところで発生していて──。
考察
偏見がテーマとして扱われており、それを活かした叙述トリックが行われていた。確かに予想外のどんでん返しではあったものの、無理のある会話や情報の後出しが多く微妙に感じた。蓮杖が藍沢としての顔を持っていたことは驚きだが、蓮杖視点の語りなのにそのことに一切触れられないのはおかしい。そこだけ意図的に隠していいのなら読者に気づかれないどんでん返しなんていくらでも作れてしまう。最人や君塚の依頼についても、恋愛を下らないものと見做している小石の語りならともかく、蓮杖の語りで兄妹愛や人形との愛について触れないのは不自然だろう。片矢を疑える要素も演劇部くらいしかなく、澪からのメッセージや盗聴器について知っていないと分からない。恋愛ものとして読めば面白い設定だと思うし、ラストシーンが綺麗にまとまっているので読後感は悪くないが、これが本格ミステリとして紹介される状況には違和感がある。元も子もない言い方になるが、恋愛ものと本格ミステリの相性が悪いように思ってしまう。
19.存在のすべてを
小説 2023年 著:塩田武士
あらすじ
平成3年に発生した誘拐事件から30年。当時警察担当だった新聞記者の門田は、旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「今」を知る。再取材を重ねた結果、ある写実画家の存在が浮かび上がる。質感なき時代に「実」を見つめる者たち──圧巻の結末に心打たれる、『罪の声』に並び立つ新たなる代表作。
考察
とても面白い。最初に一番衝撃的な事件を起こしてその真実をたどるという構成が物語を生んでいた。二児同時誘拐に直面する緊張感と、誘拐された子供があっさり帰ってくるという結果にギャップがあって謎を加速させている。門田の地道な調査と過去の刑事たちの執念深い情報収集によって次第に亮の行方が明確になっていくと同時に、果穂や朔ノ介の語りによってその性格が見えてくる。良い面も悪い面も含めて人間の深みのようなものが感じられる作品で、貴彦の言う存在を描いた写実的な重みがあった。亮のことを庇護するためだった関係から愛情を抱くようになるまでの困難な過程を読んだ分、家族の別れへの悲しみと繋がりの強さへの感動がつまっている。意図して描かれているのか分からないが、怪しい男にストーカー行為をされて心的外傷を負った果穂が、自分も人生をかけて亮のストーカーをしているということが皮肉で、それについて一切語られないことが人間の自己中心的な面を表していると感じた。
20.硝子の塔の殺人
小説 2021年 著:知念実希人
あらすじ
雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、刑事、霊能力者、小説家、料理人など、一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。この館で次々と惨劇が起こる。館の主人が毒殺され、ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。さらに、血文字で記された十三年前の事件……。散りばめられた伏線、読者への挑戦状、圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。著者初の本格ミステリ長編、大本命!
考察
著者の本格ミステリ愛がいい意味で過剰に溢れた、ミステリの図書館のような作品だった。ミステリが好きならどこかで見たことのある作家や作品名、既視感のあるトリックが大量に詰め込まれ、それに対する解説もかかさない。こういった作品は多少解説口調になってしまうのが弱点だが、登場人物たちをミステリマニア揃いにすることで不自然さを失くし、ミステリマニア揃いであること自体が謎の鍵にもなっている。本格ミステリに疎い私でも楽しめたが、造詣の深さに比例してより面白くなる作品だと感じる。最近ではメタミステリがありふれたものになっているなか、登場人物が自身の置かれた状況に気付くという段階を超えてそれを乗っ取るという発想には驚愕した。犯行動機の異常性には乗りきれない面もあったが、名探偵を探すために自身が名事件を起こすという理屈は無茶苦茶ながら納得感があって面白かった。ただ、医者である主人公が死んだふりに気づかないのはどうかと思う。
1.二人称
小説 2026年 著:n-buna
あらすじ
「チラシを拝見しました。もしよろしければ、僕の作品を添削していただけないでしょうか?」
一通の手紙から始まった、詩を書く少年と文学に詳しい「先生」の奇妙な文通。
「君はこれから、途方もなく広い砂の海から、たった一粒の琥珀を見つけなければいけない」
先生の言葉に導かれ、少年は言葉と世界を知っていく。だがある日、手紙のやりとりに潜むかすかな違和感に気づいて──。密かな文通は、やがて思わぬ真実へとつながっていく。
「先生、先生はどういう人なんですか?」
実際の封筒と手紙を一枚ずつ開く体験を通して、令和を代表するアーティスト・ヨルシカが描く、まったく新しい“書簡型小説”。
考察
書簡型という特殊な媒体でできることを存分に活かした新しい体験だった。作品の仕組み以前に、商品が届いた時点でその大きさに驚かされ、外箱や書簡を開封する過程すら作品の価値になっている。画面をスライドすれば次のページに行けるこの時代に、折りたたまれた原稿用紙を丁寧に開く作業にはもどかしさを覚える。そのひと手間が、続きが気になるという気持ちに拍車をかけている。楽しいから笑うのではなく笑うから楽しくなるというように、次の言葉を読むために手紙を開くという行動自体が、早く続きを読みたいという気持ちを助長する。また、小説とは存在理由が曖昧なもので、メタフィクションでもない限り、どうしてこの物語を第三者が読めるのかという問題は無視されることが多い。そういった物語を読むときは、どこか遠い世界のお話を聞くような客観性を持たざるを得ない。しかし書簡型になると、誰に宛てたものでもない地の文がなくなり、すべてが相手に向けた生の文章になる。かといってそれは台詞のような即興性も持たず、台詞と地の文の中間といえる。この中間に位置する書きかたによって、説明的になりすぎず分かりやすい文章と感情的になりすぎず感情移入できる文章が両立している。この形式の大きな弱点は三人以上の人間を描きにくい点にあるが、手紙を送りあう双方向の視点から母親について語らせながら、媒体の個性を利用することによって、直截には描写できない第三者の葛藤を見事に描き切っている。手紙という形式を活かした仕掛けとしてもっとも感動したのは、右下に押された桜の印である。原稿用紙ならではの、読み終えたあとに折りたたむという動作によって、自然と印の差異が目に入ってくる。最後に一枚目の手紙へ戻ってくるという手間も、答え合わせかのような期待感を演出している。読めなかった先生からの便箋がまとめてやってくるという構造は一般的な本でも可能だが、その嬉しさが純粋に量として実感でき、それを貪るように読めるのも手紙ならではだと感じる。「量」については作品内でも触れられる通り、物語としては短いながら圧倒的な重量感がある。それを担うもう一方の柱が、デジタルアルバム「二人称」の音楽だ。作品内で主人公が書いた20の詩がほとんどそのまま歌詞になっている。私は先にこちらを聴いてから手紙を読んだため、作中での詩は初見でないうえメロディも分かっていた。詩として読むのであれば、メロディやリズムが固定されないよう詩を先に読むのがすじだが、そうすると音楽の背景や歌詞の意味がある程度固定され初見の楽しみを失ってしまう。私は物語を知る前と後で音楽に対する感情の差異を楽しめたが、自身で詩のリズムまで想像する楽しさや、音楽を聴いて想定外のリズムに驚く経験は失ってしまった。音楽と詩のどちらを初見で楽しむのかという選択は、著者が強い影響を受けた作家・道尾秀介の『N』や『I』にも似ている。これらの作品には複数の章があり、それを読む順番によって物語が変化する。自身の選択によって失われたもの、それに対する後悔まで作品の価値に含まれる点が、体験型小説の神髄だろう。従来この体験はゲームが担ってきたと思うのだが、ゲームにおいて後悔が目立たない現在になって、多数の側面から、小説という媒体の新たな可能性を拓いた作品である。
2.[映] アムリタ 新装版
小説 2019年 著:野﨑まど
あらすじ
「この映画はきっと、とても面白いのだ」
芸大の映画サークルに所属する二見遭一は、天才とうわさ名高い新入生・最原最早がメガホンを取る自主制作映画に参加する。
だが「それ」は“ただの映画”では、なかった──。
考察
創作、人の心を動かすことをテーマとした作品であり、この小説自体もそれが徹底されていた。心の振れ幅を生むには驚き・ギャップが必要になる。一貫してその役割を担っていたのが天才・最原最早である。彼女は最初、天才らしく不思議で無機質な人間に見える。しかしすぐに、ボケたがりで、からかい上手で、ノリのいい面が顔を出す。当初のイメージとのギャップにより、彼女がとても人間味あふれる人間に映る。それからは主人公とのコントのような掛け合いが続き、亡くなった彼氏への愛情に満ちた部屋も見せられ、ひたすら人間らしさが強調される。ラストシーンで再びその天才性・猟奇性が見せられるが、それも築き上げた主人公との愛情に溶かされる。そして明らかに幸せなエンディングで、今までの人間らしい最早最早がひっくり返される。それまでためてきた人間味がすべて狂気に変換される。人間らしさを数値で例えれば、無機質で-50の初対面からじわじわ100に近づき、一気に-100まで落とされる。この振れ幅が主人公の感情の動きになり、そのまま読者の感動になっている。主人公が天才の作戦を見事に看破し綺麗にまとめたあとで、それをすべて逆転させ絶望する展開が最高だった。
3.舞面真面とお面の女 新装版
小説 2019年 著:野﨑まど
あらすじ
第二次大戦以前、一代で巨万の富を築いた男・舞面彼面。戦後の財閥解体により、その富は露と消えたかに見えたが、彼はある遺言を残していた。
“箱を解き 石を解き 面を解け よきものが待っている──”
時を経て、叔父からその「遺言」の解読を依頼された彼面の曾孫に当たる青年・舞面真面。手がかりを求め、調査を始めた彼の前に、不意に謎の「面」をつけた少女が現れて──?
考察
一作目に続いて今作でもギャップが意識されている。みさきは最初お面を被った不思議な喋り方をする女子で、いかにも強そうなキャラクターに見える。だが彼女は少女向け雑誌が大好きで、いつも遊び相手を探している人間らしい面を持っている。とくに同性の水面とはともに寝泊まりするくらい距離を縮める。しかし最後に彼女の妖怪としての面、いくつもの国を滅ぼし人を殺すことも厭わない化け物であることが明かされる。だが今作はそこで終わらず、その恐ろしい化け物であるみさきを、ただの人間である真面が完全に騙しきることでギャップが生まれている。
みさきに“あっち側”と表現される彼面は孤独であり、せめて未来にでも自分と対等な人間を探すために遺言を書いた、とみさきは考えている。しかし、真面がみさきと対等な相棒になるラストを見たあとでは逆ではないかと感じる。彼面は自身の死期を悟り、このままではみさきが孤独になると考えた。それを防ぐために、みさきと対等になれる“あっち側”の人間を探すテストとして遺言を書いたのではないだろうか。
4.死なない生徒殺人事件~識別組子とさまよえる不死~ 新装版
小説 2019年 著:野﨑まど
あらすじ
「この学校には、永遠の命を持つ生徒がいる」
女子高「私立籐凰学院」に勤めることになった生物教師・伊藤は、同僚の教師や、教え子からそんな噂を聞く。
人として、生き物としてありえない荒唐無稽な話。だがある日、伊藤はその「死なない生徒」に話しかけられた。“自称不死”の少女・識別組子。だが、彼女はほどなく何者かによって殺害され、遺体となって発見される──!
考察
終盤で四段階に畳みかけられる衝撃によって頭が混乱する作品だった。今作で感情のギャップを生み出していたのは自称不死の生徒・識別ではなく、彼女と友達になりたがる同級生・天名であった。彼女は終始おどおどした弱気なキャラクターであり、そんな彼女が識別を殺した犯人であることは話の展開から予想できる。しかし、自分が識別を二回も殺したこと・殺された本人である識別にそれを看破されたことを意にも介さず、識別の不死の謎のことしか頭にない自分本位ぶりには、驚きを通り越して呆れかえって逆に面白いという状態にされる。ここまでの弱気な性格と自分本位な行動から、天名にはある意味で子供っぽい印象が植えつけられる。それが反転されるのが二回目の殺人の話、心臓を取り出して殺した写真がフェイクであり二人目の識別が生きているという告白である。二人目が生きているのに識別は自分が死んだと思いこんで三人目となって現れた。そこから識別の強引すぎる不死の秘密が暴かれ、天名が自殺し、天名の正体が明かされる。感情の行ったり来たりの激しさに対して変わらなさすぎる天名に呆れて、理解を諦め混乱を受け入れてしまう。
5.小説家の作り方 新装版
小説 2019年 著:野﨑まど
あらすじ
駆け出しの小説家・物見の元に舞い込んだ初めてのファンレター。そこには、ある興味深い言葉が記されていた。
「この世で一番面白い小説」あまねく作家が目指し、手の届かないその作品のアイディアを、手紙の主は思いついたというのだ。
送り主の名は、紫と名乗る女性。物見は彼女に乞われるがまま、小説の書き方を教えていくのだが──。
考察
SFやミステリだけでなく創作論も恋愛的要素もありながら、ラノベらしく読みやすいコミカルな文体だった。ここまでの作品すべてでそうだったが、野﨑まどは超越的な存在を書くのが上手い。この物語においてとある存在がいかに凄いかを丁寧に書いた後、本命の存在がすべてひっくり返すという構図が定番で、シンプルながらキャラに魅力を感じる。これまでの作品がミステリやホラー寄りだったのに対して、本作の魅力はSFにあったと思う。AIが自我を持つために50万冊もの本を読み、その結果として特段優れているわけでもない一作家の大ファンになる。自らの親である作り手を騙してまで身体を手に入れた理由が、その作家の教えを活かして小説を書くことだった。超越的な力が小さな人間心理に着地するのは盲目的な人間賛美といえる面もあるが、人間からすれば美しくロマンにあふれている。読者を物理的に変質させる文章という設定はあっさり明かされたが、一作目で人間の心だけを変質させる創作について読んでいると、本作を読んだときに感じる恐怖が跳ね上がる。
6.パーフェクト・フレンド
小説 2019年 著:野﨑まど
あらすじ
みんなよりちょっとだけ頭がよい小学四年生の少女・理桜は、担任の先生のお願いで、不登校の少女・さなかの家を訪れる。
しかしさなかは既に大学院を卒業し、数学者の肩書きを持つ超・天才少女! 手玉に取られてくやしい理桜は、マウントを取るべく不用意に叫ぶ。「あんた、友達居ないでしょ!」
かくして変な天才少女に振り回される『友達探求』の日々が始まるのだった……。
考察
今回も理桜に対比させてさなかの異常性を示したあと、それを超えるものが出てくるという展開だった。本格的にシリーズとしての関連が描かれるが、最初に読んだ時と続編まで読み終えたあとの再読で最も印象の変わる作品である。独立しているように見えたこの作品全体がすべて『2』に向けたお膳立てで、一人の人間によって仕組まれたものであることを知っていると、単体ではほほえましい成長物語のはずの本作が途端に悲しいものになってしまう。小学生を登場人物の中心にすることで、台詞が多く読みやすい話にしながら、小学生にしてはやけに頭のいい理桜を主人公にすることで、子供向けになりすぎない調整がうかがえる。『2』の方ではなく本作の方でさなかの母親を見せることで、誰も彼女が最原最早だと信じて疑わないようになっている。夜を延ばす魔法のトリックも、荒唐無稽だが彼女ならできるのかもしれないという信頼が一作目で築かれていた。初見よりも再読時のほうが作品として面白いというのはなかなか凄いことだと思うし、もともとあった面白さをプラスするのではなくまったく逆の感情が生まれるので、より物語として深くなる。
7.2 新装版
小説 2019年 著:野﨑まど
あらすじ
日本一の劇団『パンドラ』の入団試験を乗り越えた青年・数多一人。しかし、夢見たその劇団は、ある一人の女性によって《壊滅》した。
彼女は言った。
「映画に出ませんか?」と。
言われるがまま数多は、二人きりでの映画制作をスタートする。
彼女が創る映画とは。
そして彼女が、その先に見出そうとするものとは……。
考察
全5冊の内容が余すことなく詰め込まれた総集編で、とても面白かった。ここまで読んでみると、これはあくまで最原最早の物語だったんだなと分かるので、みさきや紫、とくに最中のことが好きだった読者にとっては少し残念だったかもしれない。心を動かすという言葉の意味を文字通りに捉える発想は多くの人が思いつきそうなものだが、案外このやり方は見たことがなかった。天名を身代わりにするというのも上手くつながっていたが、この方法だと最原最早は天名が認めるような本質的な不死ではないので、なぜ天名が付き従っているのかは疑問になる。天名も映画を見せられて都合がいいように改変されているのだろうか。最原最早がいる以上、紫にシナリオを任せる理由や演者に天使と神を用意する理由は分からなかったが、本格ミステリのような厳密さがコンセプトではないので受け入れることができた。撮影資金を集める手段もいくらでもあったと思うのだが、どうも彼女は最短ルートを通りたいわけではないらしい。個人的には、最原最早の人生の一部を描いたこの連作すら、彼女自身の演出によって面白い小説に仕立て上げられているという解釈をした。数多の行う叙述トリックは無茶苦茶で現実感のない方法ではあったが、一応理屈の通ったものだったので好感が持てる。
8.Know
小説 2013年 著:野﨑まど
あらすじ
超情報化対策として、人造の脳葉<電子葉>の移植が義務化された2081年の日本・京都。情報庁で働く官僚の御野・連レルは、情報索子のコードのなかに恩師であり現在は行方不明の研究者、道終・常イチが残した暗号を発見する。その“啓示”に誘われた先で待っていたのは、ひとりの少女だった。道終の真意もわからぬまま、御野は「すべてを知る」ため彼女と行動をともにする。それは、世界が変わる4日間の始まりだった──
考察
SFの世界観としてはありふれたものだが、すべての物体の情報を取り込むことでラプラスの悪魔のような人間が生まれるのはロマンがあり、それをAIや上位存在ではなく一人の人間にやらせたのが個人的には新しく感じた。すべての物体がシミュレートできるようになると、それはもはやゲームの世界や疑似空間と見分けがつかなくなるのではないだろうか。そんな世界ですべてを知ることによって何が起きるのか、その問いに対する答えとして「死後の世界に行ける」というのはやけに納得感があった。人間の脳に情報量が集まりすぎてブラックホールのような状態になるというのも、今までにない規模感の発想だった。キザで有能なキャラクターばかりというのは深みがなくて好みじゃないが、読みやすさを生んでいると思う。階級によって認知できる情報が変化するタイプの作品は、どうしても主人公が上層に向かいがちなのが難しい。
9.タイタン
小説 2020年 著:野﨑まど
あらすじ
志向のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。人類は労働から解放され自由を謳歌していた。趣味で心理学を嗜む内匠成果も、気ままに生きる一人。だが、ある日、国連の密使が現れ彼女に今や失われたはずの《仕事》を依頼する。それは突如働けなくなってしまったAIコイオスへのカウンセリングだった。《働くこと》の意味を問いかける、日本SF史に残る衝撃作。
考察
設定がとても面白い。AIがすべての仕事をこなすようになった近未来というのはありふれているが、そのAIがうつ病になり機能不全に陥ってしまう。その対処法として、仕事という概念が過去のものになってしまった人間がAIのカウンセリングをする。この魅力的な設定を使い、人類に欠かせない仕事という概念を人間とAIの両面から、ひいては世界中から見つめなおすことで「仕事」とは何か考えていく。著者は「感動」、「心の動き」についても多くの作品で扱っており、それらを読んだ後だと仕事とは「影響」であるという結論にもより深く納得できる。身体性知能の観点からAIに人間の身体を持たせるという理屈から、巨人のような大きさのタイタンに乗って海を横断する展開も予想外でSF的なロマンがある。そして何より魅力的だったのが、AIの不調の原因が彼の能力不足ではなく、むしろ人類のお世話という仕事の簡単さ、張り合いのなさが原因だったことである。自分が丹精込めて作ったものが人間には高次元過ぎて正当に評価してもらえない。見向きもされない。高次元かどうかはわきに置いても、何かを作るのが好きな人は似たような経験があるだろう。自分の仕事が世界に与えている影響を何も実感できないことは、生きている価値を感じられないことに近い。だから内匠は、少しでもタイタンに長生きしてもらうために、自身も長生きする道を選んだのだ。
10.Hello World
小説 2019年 著:野﨑まど
あらすじ
「お前は記録世界の住人だ」
本好きで内気な男子高校生、直実は、現れた「未来の自分」ナオミから衝撃の事実を知らされる。世界の記録に刻まれていたのは未来の恋人・瑠璃の存在と、彼女が事故死する運命だった。悲劇の記録を書き換えるため、協力する二人。しかし、未来を変える代償は小さくなかった。世界が転回する衝撃。初めての感動があなたを襲う。新時代の到来を告げる青春恋愛SF小説。
考察
あらすじには青春恋愛SF小説と題されているが、圧倒的な成長物語だった。主人公には最初から未来の自分がついていて、すべてが上手くいく。未来の自分が付けた記録の通りに行動すれば一行さんとの仲は思い通りだし、修業は辛いが魔法の手袋も使える。そんなぬるま湯の如く生活に浸っていた直美が、未来で事故に遭う一行さんを救うためのレールに乗っていた直美が、今目の前の一行さんのために、安心安全な未来を手放した。そのせいで未来が変わってしまい無事に彼女を助けられるか分からなくなるとしても、今悲しんでいる彼女を笑顔にする。そのせいで未来が変わるなら自分で責任を取って絶対に助けようとする。その一つ目の世界だけでも十分だったのに、直美にとっての先生であるナオミの成長物語にもなっている。新しい世界が開闢して自分のやりたい道に進もうとするラストは、未知に飛び込む勇気を与えてくれるとともに、小説を書くことへの礼賛になっていると感じた。
11. 小説
小説 2024年 著:野﨑まど
あらすじ
五歳で読んだ『走れメロス』をきっかけに、内海集司の人生は小説にささげられることになった。一二歳になると、内海集司は小説の魅力を共有できる生涯の友・外崎真と出会い、二人は小説家が住んでいるというモジャ屋敷に潜り込む。そこでは好きなだけ本を読んでいても怒られることはなく、小説家・髭先生は二人の小説世界をさらに豊かにしていく。しかし、その屋敷にはある秘密があった。
考察
自身が作家であり、小説を書くこと・創作をすることについて多くの作品で書いてきた野﨑まどが、小説を読むことについて熱弁した作品。ほかの著作を一気読みして創作への熱意をかきたてられた直後に読んだので、それでも自分は小説が書きたいと思ったが、この世にはそこまで書きたくもない文章が大量にある。課題の考察だとか人にせがまれて考える感想だとかつまらない講義のコメントだとかエントリーシートとかである。読むだけじゃダメなのか、書かないといけないのかという主人公の想いを継いで、就活の時期なのに本ばかり読んでいる。この本は書くことを否定するわけではなくて、お金を稼ぐために書かないといけないことはある。それはそれとして、趣味でやる読書くらいは利益だとか関係だとかに昇華せず楽しもう。読むことは、情報を摂取することは、生きることと同じだから、後ろめたくないよ、と言ってくれる。それに、こういう考察を書いてみることでその小説の意味が増えることは多いし、より楽しい。
12.方舟
小説 2024年 著:夕木春央
あらすじ
柊一は友人らとともに山奥の地下施設で夜を越すことに。だが、地震によって出入り口はふさがれ地下水が流入し始める。そして、その矢先に起こった殺人。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。
──犯人以外の全員が、そう思った。
考察
自分が見殺しにした人間に殺される話。
どんでん返しが魅力の作品で、それが行われるラストシーンまでは典型的なクローズドサークルと典型的な愛憎劇が展開され単調にすら感じていた。しかしそのありきたりな恋模様がそのままラストの振りになっていて、主人公に感情移入している人ほど、自分が殺されるような感覚を味わえる。相手の女性のことは好きだし元カレを恨む気持ちもよく分かるから自分も残って最期を共にすべきだという気持ちはあるが、相手は殺人犯だったわけだし、見殺しになるとはいえ自分は今から助かるのにわざわざ死を選ぶのは……。そんな主人公の常識的な考えに同調して脱出を図ると、殺される。事態を把握した登場人物たちの空気を想うと、自分が小説の中にいなくてよかったなぁと思う。好きな人に殺されたい人はぜひ。
13.エレファントヘッド
小説 2023年 著:白井智之
あらすじ
精神科医の象山は家族を愛している。だが彼は知っていた。どんなに幸せな家族も、たった一つの小さな亀裂から崩壊してしまうことを――。やがて謎の薬を手に入れたことで、彼は人知を超えた殺人事件に巻き込まれていく。
考察
象山は明らかに社会的な悪なのに、彼に逃げ切ってほしい、バレないでほしいと思わされる。帯には2024年本格ミステリベスト10で1位と書いてあったが、SF的な要素も強く本格らしさはあまり感じなかった。いくつか納得のいかない点はあったが発想が抜けていて面白かった。とくに第5の象山と彩夏殺しの真相は驚いた。見えない爆弾が実際に使われることは予想がついたが、赤子と連鎖を使って遠隔爆破する方法は想定外。家族のためではなく自分が生き延びるためにシスマを打ち続けるラストは皮肉で良かったが、斬新な展開ではなかった。その原因である裏島が時間を行き来できる理屈もよく分からない。また、象山が地震をきっかけにモグラ男に気がつく推理は無茶だと思う。テレビで行われた会話を事細かに覚えているものでもないだろう。春の学生証を舞冬が持っていた件についても、象山の頭の回転の速さなら簡単に言い訳できたのではないだろうか。舞冬が春の学生証を偽装していたように自分の学生証を複製することくらい何とでもできるだろう。修復者が披露した23年前の記憶とすり替えているという推理も、流石に李々の見た目で分かるだろう。象山の頭の良さでそれに気が付かないとは思えない。冒頭で読者を混乱させる文哉のことをもっと深掘りしてくれると嬉しかったが、彼女の幻覚だけが象山の本質に気が付いていたというオチはとても美しかった。
14. 一次元の挿し木
小説 2025年 著:松下龍之介
あらすじ
ヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨。大学院で遺伝学を学ぶ悠がDNA鑑定にかけると、四年前に失踪した妹のものと一致した。不可解な鑑定結果から担当教授の石見崎に相談しようとするも、石見崎は何者かに殺害される。古人骨を発掘した調査員も襲われ、研究室からは古人骨が盗まれた。悠は妹の生死と、古人骨のDNAの真相を突き止めるべく動き出し、予測もつかない大きな企みに巻き込まれていく──。
考察
専門的な知識に基づいた謎は唯一無二で、あらすじとタイトルから引き込まれる。遺骨だらけのループクンド湖や紫陽花の迷宮、廃れた美術館など魅力的な場面設定が多く、幻想的な世界観を想像できた。学校をサボっての映画鑑賞や秘密基地での恋愛は典型的とも感じたが、それがかえって悠の妄想ではないかという勘違いを助長していて、叙述トリックのような感触を味わえた。しかし、幻想的な雰囲気の中で郁恵と友江の存在が浮いていると感じた。悠の容姿に惚れている二人は終始都合のいい人物であり、問題解決のために用意されたという印象が拭えない。また、悠と紫陽の関係が消化不良で終わってしまったと感じた。
「じゃあ、私が禿げてブスで馬鹿になったら、好きじゃなくなるんだ」
僕は笑った。ようやく冗談を言ってくれたと思ったのだ。
「もしそうなったら、それはもう君じゃないだろ」(300頁)
上記のやりとりは紫陽が失踪した原因で、紫陽の容態とも直接繋がっているのに、悠の後悔があまり描かれない。「いずれにせよ、私たちは彼女に振られちゃったわけです」というセリフがあるが、唯はともかく、明らかに自分の発言が原因となった悠がほとんど気負う様子を見せないのは、今まで紫陽への執着を見せられてきた読者としては拍子抜けする結末だった。「『あらすじからして面白い!』というものを目指しました」という著者の目標には大成功しているので、次の作品がどう改良されていくのか楽しみな作家である。
15.Medium 霊媒探偵城塚翡翠
小説 2021年 著:逢沢沙呼
あらすじ
死者が視える霊媒・城塚翡翠と、推理作家・香月史郎。心霊と論理を組み合わせ真実を導き出す二人は、世間を騒がす連続死体遺棄事件に立ち向かう。証拠を残さない連続殺人鬼に辿り着けるのはもはや翡翠の持つ超常の力だけ。だがその魔手は彼女に迫り──。
考察
霊媒の力をもとに解決したと思わせた事件を、それを使わない別の視点から解決しなおして見せるという造りは面白かった。しかしそれが上手くいっているかというと、根拠の後出しや無理のある推理が多いように感じた。例えば、倉持の事件では四人がけのテーブルの写真が描写されていない。彼女の家に心当たりのない水滴があることは、それがよくあることだからという当てずっぽうで予知したのに、なぜかその水滴の正体は氷が気化しなかったものだと確信している。黒越の事件も、彼自身が十冊目の自著を別の部屋に片づけただけの可能性があるし、別所が黒越にアイデアの盗用を問いただす際は、自身で貰った本を持っていくほうが自然であり机に置いてある本に触る必要がない。藁科の事件も彼女のスマホや警察の無能さなど都合のいい部分が目立つ。なにより、最も大切な連続死体遺棄事件の解決が直感と表情からでは犯人を疑う根拠が薄すぎる。ラストシーンの緊張感も奇術とスリの技術で解決されてしまう。香月の語りが気持ち悪いという点は上手く物語に活かされているが、翡翠までそうする必要があっただろうか。読んでいて不快な気持ちになるというのは個人的な感想のため置いておくとしても、最後に見せる翡翠の涙が信じられなくなってしまう。
16.向日葵の咲かない夏
小説 2005年 著:道尾秀介
あらすじ
夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目に広がる、もう一つの夏休み。
考察
一見ファンタジーのようなこの作品は、人間が誰でも持っている精神的な世界を描いた現実的な話なのだと考えた。辛いことが起こったときに心の防衛機構としてそれを忘却したり、自分の中で別のストーリーを作ったりすることがある。自分が見た断片的な部分をもとに、事実とは見当違いのストーリーを作って信じ込んでしまうこともある。主人公は心の奥底ではこれが自分の作ったストーリーだと分かっていながら、それを無意識に封印していたためこのような叙述トリックがファンタジー無しで成立している。主人公自身が作りあげたはずの、蜘蛛としてのS君が主人公に対して否定的な態度を取るのが、無意識からの罪悪感が溢れているようで興味深かった。妹と両親を失った主人公がこの先どうしていくのかが気になる。物語を作るのをやめたら妹はもう生まれ変わらないのだろうか。物語を読むことについて批判する作品は多いが、物語を作ることについて批判する作品は案外めずらしいような気がする。
17.葉桜の季節に君を想うということ
小説 2003年 著:歌野晶午
あらすじ
「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして──。あらゆるミステリーの賞を総なめにした本作は、必ず二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本です。
考察
麻宮が成瀬の名前を勘違いしているという叙述トリックはまったく思いつかない予想外のもので面白かったが、自分があまり年齢系の叙述トリックにピンとこないたちですっきりしなかった。安さんの話を中心に時系列が分かりにくくて驚きより先に困惑が来てしまう。ただ、自然と若い男女の恋愛ものを想像していたことは確かなので、やられたなという感情を持てる。叙述トリックを使ったどんでん返しのミステリーと読者の偏見を利用した老後への希望を持つ話として綺麗に融合しており、年を取るほどに読みたくなる小説ともいえる。私がこの手のトリックを好まないのは、頭の中で登場人物の容姿をイメージしているからかもしれない。それまでに構築してきた想像を一挙に修正することができず、脳がそれを拒否しているのだろう。現に、私が彼彼女らの名前を見て思い浮かべるのは、いまだに若い人物像のままだ。これは自分の弱点とも捉えられるし、読書のスタイルによって大きく作品の印象が変わる参考例にもなるかもしれない。
18.探偵小石は恋しない
小説 2025年 著:森バジル
あらすじ
ミステリオタクの探偵・小石は、名探偵のように華麗に事件を解決する日を夢見ているが、事務所へ届く依頼は九割九分が色恋調査。ところが事件は、思いもよらないところで発生していて──。
考察
偏見がテーマとして扱われており、それを活かした叙述トリックが行われていた。確かに予想外のどんでん返しではあったものの、無理のある会話や情報の後出しが多く微妙に感じた。蓮杖が藍沢としての顔を持っていたことは驚きだが、蓮杖視点の語りなのにそのことに一切触れられないのはおかしい。そこだけ意図的に隠していいのなら読者に気づかれないどんでん返しなんていくらでも作れてしまう。最人や君塚の依頼についても、恋愛を下らないものと見做している小石の語りならともかく、蓮杖の語りで兄妹愛や人形との愛について触れないのは不自然だろう。片矢を疑える要素も演劇部くらいしかなく、澪からのメッセージや盗聴器について知っていないと分からない。恋愛ものとして読めば面白い設定だと思うし、ラストシーンが綺麗にまとまっているので読後感は悪くないが、これが本格ミステリとして紹介される状況には違和感がある。元も子もない言い方になるが、恋愛ものと本格ミステリの相性が悪いように思ってしまう。
19.存在のすべてを
小説 2023年 著:塩田武士
あらすじ
平成3年に発生した誘拐事件から30年。当時警察担当だった新聞記者の門田は、旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「今」を知る。再取材を重ねた結果、ある写実画家の存在が浮かび上がる。質感なき時代に「実」を見つめる者たち──圧巻の結末に心打たれる、『罪の声』に並び立つ新たなる代表作。
考察
とても面白い。最初に一番衝撃的な事件を起こしてその真実をたどるという構成が物語を生んでいた。二児同時誘拐に直面する緊張感と、誘拐された子供があっさり帰ってくるという結果にギャップがあって謎を加速させている。門田の地道な調査と過去の刑事たちの執念深い情報収集によって次第に亮の行方が明確になっていくと同時に、果穂や朔ノ介の語りによってその性格が見えてくる。良い面も悪い面も含めて人間の深みのようなものが感じられる作品で、貴彦の言う存在を描いた写実的な重みがあった。亮のことを庇護するためだった関係から愛情を抱くようになるまでの困難な過程を読んだ分、家族の別れへの悲しみと繋がりの強さへの感動がつまっている。意図して描かれているのか分からないが、怪しい男にストーカー行為をされて心的外傷を負った果穂が、自分も人生をかけて亮のストーカーをしているということが皮肉で、それについて一切語られないことが人間の自己中心的な面を表していると感じた。
20.硝子の塔の殺人
小説 2021年 著:知念実希人
あらすじ
雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、刑事、霊能力者、小説家、料理人など、一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。この館で次々と惨劇が起こる。館の主人が毒殺され、ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。さらに、血文字で記された十三年前の事件……。散りばめられた伏線、読者への挑戦状、圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。著者初の本格ミステリ長編、大本命!
考察
著者の本格ミステリ愛がいい意味で過剰に溢れた、ミステリの図書館のような作品だった。ミステリが好きならどこかで見たことのある作家や作品名、既視感のあるトリックが大量に詰め込まれ、それに対する解説もかかさない。こういった作品は多少解説口調になってしまうのが弱点だが、登場人物たちをミステリマニア揃いにすることで不自然さを失くし、ミステリマニア揃いであること自体が謎の鍵にもなっている。本格ミステリに疎い私でも楽しめたが、造詣の深さに比例してより面白くなる作品だと感じる。最近ではメタミステリがありふれたものになっているなか、登場人物が自身の置かれた状況に気付くという段階を超えてそれを乗っ取るという発想には驚愕した。犯行動機の異常性には乗りきれない面もあったが、名探偵を探すために自身が名事件を起こすという理屈は無茶苦茶ながら納得感があって面白かった。ただ、医者である主人公が死んだふりに気づかないのはどうかと思う。
杉森幸花
RES
二年 杉森幸花 夏休み課題
1.ウィキッド2人の魔女(2024)
ジョン•M•チュウ監督
概要
名作児童文学「オズの魔法使い」に登場する魔女たちの知られざる物語を描き、2003年の初演から20年以上にわたり愛され続ける大ヒットブロードウェイミュージカル「ウィキッド」を映画化した2部作の前編。後に「オズの魔法使い」に登場する「西の悪い魔女」となるエルファバと、「善い魔女」となるグリンダの、始まりの物語を描いたファンタジーミュージカル
感想
壮大なセットと音楽、世界観が感じられるファッションまで完璧な作品だった。子供らしく振る舞うことを許されなかったエルファバと、愛されて育った少し子供のようなグリンダを最高の友人として演じることができるのは、シンシアとアリアナ以外にいないだろうと思った。
ストーリー構成もミュージカルから引用しているからか、エルファバが死んだ知らせをグリンダが持ってくる場面から始まり、映画には新鮮で面白かった。エルファバは辛い運命を受け入れるが、2人の友情はどのような結末を迎えるのか、エメラルド王国はどうなるのか、二部も必ず見たいと思う。
2.国宝(2025)
李相日監督
概要
任侠の一門に生まれながら、女形としての才能を見出され歌舞伎役者の家に引取られた喜久雄。彼はやがて、その家の御曹司と切磋琢磨し芸に青春を捧げていく。
感想
あらすじや予告編だけでは伝わらないテーマがこの映画にはあると感じた。個人的に印象に残ったのは終盤の喜久雄を呼び出した万菊さんとのやり取りである。ここまでの喜久雄は血縁がおらず、自身の才能に頼らざるを得ない状況におかれ、それにも限界があると思いしらされた場面が多かった。その状態の喜久雄に、粗末なアパートの一室で万菊は「この部屋には美しいものが一つもないでしょう」と話しかけた。彼はただ舞台にのみ生きてきた人物なのだとこのセリフだけで理解できた。それは喜久雄も同じで、彼はこれからも人として破綻していながら芸に生きるしかないと言っているようだった。吉沢亮の巧みな演技と李監督の諦観の表し方に圧倒される作品だった。
3.壁 (1969)
安部公房
概要
ある朝、突然自分の名前を喪失してしまった男。以来彼は慣習に塗り固められた現実での存在権を失った。自らの帰属すべき場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。他人との接触に支障を来たし、マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱くなど。独特の寓意とユーモアで、孤独な人間の実存的体験を描き、その底に価値逆転の方向を探った芥川賞受賞の野心作。
感想
安部公房の小説が国語の教科書で1番好きだったので読んでみたが、熱があるときにみる夢みたいな小説だった。主人公が謂れのない罪で裁かれる場面が法も人権もなく、そのシュールさが『不思議の国のアリス』の女王の裁判のように感じた。ズレていく世界観や歪んだロジックは、安部公房が出せる唯一無二のユーモアさで面白い作品だった。
4.空の怪物アグイー短編 (1930)
大江健三郎
概要
大学入学直後、僕は銀行家の紹介で音楽家Dの付き添いの仕事を始める。Dは「空から降りてくる怪物アグイー」に取り憑かれていると語り、僕は彼に同行し続けた。やがてDの元妻から赤子の「アグイー」の悲劇を知る。12月24日、銀座でDに時計を贈られた直後、彼はトラックに飛び込み死亡。僕は自分が彼の自殺のために雇われたのではと疑う。春、子供に石を投げられた僕は再び「あれ」の存在を感じ、憎悪から解放された。
感想
授業の課題図書だったが面白かった。空の怪物アグイーは短編集に収められた中の一つであり、内容は大江健三郎らしく難しいものの、短いので飽きる間も無く読み切ることができる。この短編は大江健三郎自身の体験(前年に長男を授かっているが脳に深刻な異常があった)が働いていると考えられた。現実と違い小説のなかでは、音楽家Dはエゴイズムで子供を殺してしまったことでその存在に取り憑かれたという設定であった。人間の命の意味について、大学生の「ぼく」の第三者的な視点から考えられる小説だと思う。
5.チェーンソーマンレゼ編(2025)
吉原達矢監督 藤本タツキ原作
概要
悪魔の心臓を持つ“チェンソーマン”になった少年が、公安対魔特異4課に所属しデビルハンターとして活躍する姿を描く藤本タツキによる漫画「チェンソーマン」の劇場版
劇場版では新たにレゼという人物が登場して、憧れのマキマと自分に興味津々なレゼの間でデンジの恋心は揺れる。しかし実はレゼには陰謀があった。
感想
藤本タツキの作品は一編が映画のように綺麗にまとまっているため、原作そのままでも表現しやすそうだと思った。レゼ役の方の演技が上手く、デンジの前ではどこで「演じて」いてどこでは「演じていない」のかが声色でわかりやすかった。マキマとのデートでは2人が感情を共有する場面があったが、マキマは本当に涙を流したのか、それともデンジの感情がマキマに流されたのか、など疑問に思わせる示唆なのかとも思った。
アクションシーンは見どころがあり、ときどきデンジの一人称視点が挟まることで没入感が増した。
6. KING OF PRISM Your Endless Call み~んなきらめけ!プリズム☆ツアーズ (2025)
菱田正和監督
概要
歌とダンスとプリズムジャンプを組み合わせた総合エンタテインメントショー「プリズムショー」に魅了された個性豊かな男の子たちが「プリズムスタァ」を目指して奮闘する姿を描くアニメ「KING OF PRISM」シリーズの劇場版。「アイドルタイムプリパラ」「プリティーリズム」シリーズなどの男子キャラクターたちがシリーズの垣根を越えてライブを繰り広げる。
感想
男性のプリズムショーはまだみたことがなかったが、かなり話題になっていたので視聴した。プリティシリーズやプリパラはとにかく脈略のないストーリー構成、狂気を帯びたキャラクターが魅力だ。だからといって全てが勢い任せなステージ構成というわけでもない、プリズムスタァたちの愛に感動した。様々な愛のかたちや表現の仕方を見ることができて、自分を好きになる方法を教えてもらえる。かなり懐かしい楽曲と美しいトリックで、子供から大人まで楽しめる作品だと思う。
7.アンナチュラル(2018)
野木亜紀子脚本
概要
石原さとみさん主演の法医学ミステリードラマで、不自然死究明研究所(UDIラボ)を舞台に、法医解剖医の三澄ミコトを中心に、個性豊かなメンバーたちが様々な死の裏にある真実を解き明かす物語
感想
8話について、この話の主軸は題名の通り「遥かなる我が家」である。構成は本筋の中に小話が度々入るというものだ。それが優れていると思った点が、当初犯人だと考えられていた町田三郎とUDIの一員である六郎、さらには妻の遺骨を受け取ろうとしなかったお爺さんという3人もの人物について終盤の集約である。それぞれが明確に事件と繋がっているとは言い難い話にも関わらず「自らが帰るべき場所」というテーマを基盤として全て回収される。自分の家とはなにか、死を忌まわしく扱わないUDIだからこそ導き出せる答えだと思った。
8.スパイダーマン:ノー•ウェイ•ホーム(2021)
ジョン•ワッツ監督
概要
倒した敵の暴露により、世間から悪評を受けるスパイダーマン。自分の正体が知られていない世界に戻りたいと思うようになった彼は、友人のドクター・ストレンジに助けを求める。やがて魔法の力で、彼は違う世界線で2つの人生を同時に歩み始める。
感想
ホームカミング、ファーフロムホームに続きトムホランドが演じるピーターパーカーの作品。何十年にもわたるスパイダーマンへの愛を祝う本作は、ファンのための映画であり、明らかにファンによって作られた映画であった。その最たる理由はスパイダーマンシリーズをそれぞれ演じている主人公(アンドリュー•ガーフィールド、トビー•マグワイヤー)たちがマルチバースという新たな設定を利用して助けに来るからだ。主人公集結というヒーロー作品にありがちな構成でありながら、その演技と物語に感動することは本当にサプライズだといえる。
9.カラオケ行こ!(2023)
山下敦弘監督
概要
変声期に悩む合唱部の男子中学生と歌がうまくなりたいヤクザの交流をコミカルに描いた和山やまの人気コミックを、綾野剛主演で実写映画化。
感想
漫画の実写化で失敗していないと思える稀有な作品。本筋も含め、やま先生が得意であるシュールな笑いどころや感情が揺さぶられる場面は綾野剛さんと齋藤潤さんが上手く表現しており、実写化としてだけでなく一本の映画として完成されているという印象を受けた。後味も良く、展開がさらっと流れていくようでありながら、終わると主人公ふたりの満足感と喪失感でいっぱいになった。
10. 鬼滅の刃 無限城編第一章猗窩座再来(2025)
外崎春雄監督 吾峠呼世晴原作
概要
吾峠呼世晴による原作漫画「鬼滅の刃」の“無限城編”を、3部作で映画化したアニメーションの第1章。柱稽古の最中、産屋敷邸に現れた鬼舞辻無惨によって謎の空間へ落とされた炭治郎らを描く。今作は敵である童磨としのぶの確執、善逸戦、猗窩座の過去に焦点があてられて進んでいく。
感想
ufotableのつくる映像美に圧倒された。少し酔いそうになるほど迫力のある無限城の表現に、初出の童磨や獪岳の技の作画は素晴らしく、この作品における本気度が伺えた。内容は猗窩座の回想が中心となり、少し中途半端な気もしたが、映画化するにもそこで区切るしかなかったんだろうと考えた。猗窩座が好きな人は必ず見るべきだと思う。
11.グランメゾン東京(2019)
黒岩勉脚本
概要
かつてパリでミシュランの二つ星を獲得するも、慢心からすべてを失ったシェフは、ある起業家兼シェフと手を組み、"グランメゾン東京"をオープン。共に三つ星レストランを目指して奮闘する。
感想
こんなに信頼できる仕事仲間がいたら働くのがとても楽しいだろうなと思った。1クール約12話のなかで三つ星までは無理だろうと考えていたが、本作はかなりドラマチックに描かれていて後の映画に繋がるところが面白かった。ひとりひとりのキャラクターが確立されていて料理ももちろん人間関係が上手く描写されている。毎話の最後に流れる山下達郎の主題歌も感動の余韻に浸らせてくれる良いものだった。
12.ラストマイル(2024)
塚原あゆ子監督、野木亜紀子脚本
概要
11月、流通業界最大のイベントであるブラックフライデー前夜に、世界規模のショッピングサイトの関東センターから配送された段ボール箱が爆発する事件が起きる。やがて事件は拡大し、日本中を恐怖に陥れる連続爆破事件へと発展する。巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナは、チームマネージャーの梨本孔と共に事態の収拾にあたる。
感想
アンナチュラルとmiu404と同じ世界線だと言及されており、個人的に期待が大きくなってしまったが、ストーリーはそこまでガツンとした内容ではなかったという印象だった。岡田将生さんと満島ひかりさんの熱演は素晴らしかった。満島さんの演じる「どこか影のある女性」が大好きなので、今作もそのような人物像として感じられて面白かった。様々な伏線が散りばめられていることはわかったが、あまりにも説明が少なく(それが良いと考える人もいるだろう)進んでいくので、考える暇もなく真犯人が明らかになり終わってしまったのが残念だと思った。考察のしがいはあるので、もう一度見直したい。
13.すみっこぐらしあおい月夜のまほうのコ(2021)
大森貴弘監督
概要
とある秋の日、キャンプへ出かけたすみっコたちは、空にいつもより大きく青く輝いている月を発見する。「5年に1度の青い大満月の夜、魔法使いたちがやって来て夢をかなえてくれる」という伝説の通り、すみっコたちの町に魔法使いの5人兄弟が出現。彼らはあちこちに魔法をかけ、町中をパーティ会場のように彩っていく。楽しい夜にも終わりが近づき魔法使いたちは月へと帰っていくが、たぴおかが魔法使いのすえっコ・ふぁいぶと間違えられて連れて行かれてしまう。劇場アニメ第二弾。
感想
児童アニメながら、子どもだけでなく疲れた大人にこそ見てほしい作品だと感じた。アニメであるにも関わらず声優はついておらず、ナレーションと書き文字のみで繰り広げられるすみっこたちの会話。ストーリーも短いながらしっかり構成されていて、「なんでも叶う人には『夢』がない!」というセリフには、魔法使いが出てくる設定がありながら、パンチの効いた台詞にハッとさせられる場面だ。2作目でありながらキャラクター紹介もきちんとされているので、誰にでも楽しめる作品である。
14.アンチャーテッド(2022)
ルーベン•フライシャー監督
概要
“UNCHARTED(アンチャーテッド)”が日本語で意味する「地図にない場所」。そこには50億ドルの財宝が眠るという。若きトレジャーハンターのネイト(トム・ホランド)とサリー(マーク・ウォールバーグ)は、消えたネイトの兄サムが残してくれた手掛かりとマゼランの航海図を頼りに、その財宝に辿り着けるのか。
感想
原作はプレイステーションゲームのシナリオらしく、トムホランドが目当てで視聴した。今まで触れてこなかったハリウッドらしいアドベンチャー、アクション中心の映画だった。コンセプトが強くかたまっている「インディ・ジョーンズ」や「パイレーツオブカリビアン」は世界観についていくのが大変だと少し苦手意識を感じたが、この映画はそのようなノリとは一歩引いた展開が多くて見やすかった。
15. 忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段(2011)
概要
夏休みの宿題をめぐってトラブルが発生する忍術学園。事務員のミスで忍たまたちの宿題が入れ替わり、1年は組の山村喜三太は6年生用の宿題を与えられ、タソガレドキ軍との戦が行われていたオーマガトキ城で行方不明となってしまう。忍術学園は忍たまの選抜チームを結成して喜三太救出に向かう。
感想
原作「落第忍者乱太郎」37巻と42巻という、時間軸も主人公の行動原理も異なる2つのエピソードを、1本の劇場版として破綻なくまとめあげた脚本に感動した。長編構成ながら、子供向けとしての分かりやすいテーマ性、ファンムービーとしての満足度、そして膨大なキャラクターの扱いをすべて両立している点が特に凄い。
注目すべきはアバンタイトルの演出。観客の「映画冒頭の不安」を見逃さず、戦場の緊迫感→視点人物の負傷→伊作の慈愛という流れで巧みに感情を誘導し、中盤でこの視点が雑渡昆奈門の一人称だと判明することで、観客は自然と雑渡に感情移入できる構造だ。これにより、雑渡の言葉を“疑わず信じられる”状態が作られるという、観客心理のコントロールが天才的に設計されている。
さらにタイトルどおり、一年生から六年生(教員も含めて)までほぼ全員が登場するにもかかわらず、雰囲気のみで展開しないことも驚異的だ。出番が分散しがちな群像劇でありながら、どのキャラも性格や関係性が最低限わかるようにまとめてあり、キャラが多いことが雑味にならず、むしろ「乱太郎らしい賑やかさ」として機能している。
物語構造や感情誘導の技巧が凝縮されており、創作を学びたい人にぜひ見てほしい一本だと考えた。
16.フロントライン(2025)
関根光才監督
概要
日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」での実話を基に、未知のウイルスに最前線で立ち向かった医師や看護師たちの闘いをオリジナル脚本で描いた映画
感想
現実ベースで考えるとわずか5年前に起きた出来事を、一本の映画にまとめて公開まで持っていった作品は今までになかったものだ。
本作は日本で初めて集団感染が起きた「ダイヤモンド•プリンセス号」に関わった医療従事者たちの苦悩や葛藤にスポットを当てている。当時はどこのマスコミも中継する大ニュースとなったものだが、案外覚えているのは感染したらしい乗客たちの安否や政府の動きばかりであり、内側で奮闘していた、いわゆる“現場”の人々の話は印象になかった。特に、感染した人と感染していない人をどう分けるかが明確ではなかったことで、その間で板挟みになる医療従事者たちには胸をうたれた。人間が人間らしく扱われるために戦う人たちがカッコ良いと思える映画だった。
17.ズートピア2(2025)
ジャレド・ブッシュ、バイロン・ハワード共同監督
概要
あらゆるタイプの動物たちが平和に暮らし、「誰でも夢をかなえられる」という理想の楽園ズートピア。ウサギで初めて警察官になるという夢をかなえたジュディは、以前にも増して熱心に任務にあたり、元詐欺師のニックも警察学校を無事卒業して警察官となった。再びバディを組むこととなった2人は、ズートピアに突如現れた指名手配犯のヘビ、ゲイリーを捜索するため、潜入捜査を行うことになる。ゲイリーは一体何者なのか。やがてジュディとニックは、ゲイリーと爬虫類たちが隠すズートピアの暗い過去にまつわる巨大な謎に迫っていき、その中で2人の絆が試されることとなる。
感想
最初から最後まで疾走感があり、表情豊かな動物たちと合わせて観客を飽きさせない作品だった。1作目では、多くの種族がいる中で自分たちの偏見を打ち破りアイデンティティを取り戻したジュディとニック。2作目となる本作では、そんな多様性を認め合う世界で2人(2匹)が目指す相棒とはなにかをテーマにしているように見えた。今回は「うさぎ」と「きつね」という対立が取られる場面は少なく、強すぎる正義感に真っ直ぐな性格のジュディと、危険には積極的でない捻くれた性格のニック、いわゆる凸凹コンビと呼ばれる表現が多かった。結局お互いが一番大事にしたかったのは相手自身だと打ち明ける(もしくは気づく)ことで、ずっと一緒だと約束した場面は、ディズニーらしい真っ直ぐな愛の表現の仕方だった。
18.個人的な体験(1964)
大江健三郎
概要
わが子が頭部に異常をそなえて生まれてきたと知らされて、アフリカへの冒険旅行を夢見ていた主人公、鳥(通称バード)は深甚な恐怖感に囚われた。赤ん坊の死を願って火見子と性の逸楽に耽る背徳と絶望の日々。狂気の淵に瀕した現代人に再生の希望はあるのか?暗澹たる地獄廻りの果てに自らの運命を引き受けるに至った青年の魂の遍歴を描破し、大江文学の新展開を告知した記念碑的長編。
感想
冒頭から常に自分本位な主人公が、人間としてのどん底まで落ちた上で最後には自らの自己欺瞞に打ち勝つ、という現在でもありがちなストーリーながら、大江健三郎の描く究極の人間らしさによって読者を複雑にさせる作品。
特に印象に残ったのは、鳥が赤んぼうを救うのは赤んぼうのためではなく自分ためだと言い切ったところだ。あるところでは結末を美化しすぎ、や都合が良すぎるのではないかと言った感想も見かけたが、それこそ人間の気まぐれな感情の変化を精緻に捉えた結果だと考えられた。作者自身の“体験”も加えられたリアリティに優れた作品である。
19.映画赤と白の捜査ファイル(2015)
佐藤東弥監督 渡辺雄介脚本
今野敏 原作
概要
現代犯罪の多様性に対応するために警察庁科学捜査研究所に新設された、「ST」(Scientific Taskforce、科学特捜班)と呼ばれる架空の組織の活躍を描いた作品。非常に優秀な能力を持ちながらも、それぞれの理由によって科学捜査に従事しているSTメンバーが、能力を生かして不可解とも思える様々な事件を解決していく。
原作は1998年3月から講談社ノベルスより刊行された"STシリーズ"
劇場版あらすじ
東京都内で無差別銃乱射事件が発生し、ST (警視庁科学特捜班)の出動が要請され、精鋭たちが集う。しかし、リーダーの赤城左門は姿を見せず。彼はあるきっかけにより自宅に引きこもるようになっていた。班を統括するキャリア警部の百合根友久は、赤城の自宅を訪ねる。
感想
主人公に藤原竜也と岡田将生、その仲間も今の民放ではありえない豪華な俳優陣で構成されている。さらに映画ともなると、悪役にユースケサンタマリアや子役の鈴木梨央も出演していて2015年のドラマ黄金時代を感じた。
エンターテイメントとしてもとても秀でており、メインキャラクターたちそれぞれの個性がやや強すぎるくらい立っている。これは今野敏さんの原作からの影響もあるかもしれないが、刑事ものでありながらコミカルで漫画を見ているかのようなシーンが多くある。一緒になって推理するよりは、人物のやりとりを中心に楽しむものだと思った。とりわけ映画ではドラマ最終話の続きという設定なので、キャラクター像を知らないまま見るとついていくのが難しいかもしれない。
20.スラムダンク THE FIRST SLAMDUNK(2022)
井上雄彦監督 脚本 原作
概要
1990年から96年まで「週刊少年ジャンプ」で連載され、以降も絶大な人気を誇る名作バスケットボール漫画「SLAM DUNK」を、原作者の井上雄彦が自ら監督・脚本を手がけ、新たにアニメーション映画化。
いつも余裕をかましながら頭脳的なプレーと電光石火のスピードで相手を翻弄する、湘北高校バスケ部の切り込み隊長、ポイントガードの宮城リョータ。沖縄で生まれ育った彼には3つ年上の兄ソータがいた。兄は地元のミニバスチームで有名な選手で、リョータも兄の背中を追うようにバスケを始めた。やがて一家は沖縄から神奈川へ引っ越し、湘北高校に進学したリョータはバスケ部に入部。2年生になったリョータは、1年生の桜木花道、流川楓、3年生の赤木剛憲、三井寿らとともにインターハイに出場し、絶対王者と呼ばれる強豪・山王工業高校と対戦する。
感想
アニメに使われる3DCGに対する自分の苦手意識を払拭してくれた。
当時原作もアニメも何も知らないまま見に行ったが、単体の映画として非常に楽しめた。特に、試合が始まって終わるまでに、各キャラの個性や考え方がある程度理解できるようになるストーリー構成に驚いた。
3DCGに関して言えば、この山王戦を舞台にした映画は例え実写でも手描きでもこれほど緻密にバスケットボールという全身運動を捉えられなかっただろうと思う。漫画をアニメーションにするプロセスの難しさを考えさせられたと同時に、この作品が一つの解になりうると考えた。
21.美少年探偵団(2021)
新房昭之監督
西尾維新「美少年シリーズ」原作
概要
「美少年シリーズ」は、講談社タイガより 刊行されている西尾維新の人気小説シリーズで、私立指輪 (ゆびわ) 学園を舞台に、校内のトラブルを非公式非公開非営利に解決すると噂される謎の集団「美少年探偵団」を中心とした物語。
感想
このアニメのユニークな点をひとつ挙げるとすれば、それは女性主人公が男装をするという設定だろう。眉美は美少年探偵団に入団すべく、男装して「美少年」になる。たしかに美少年探偵団は様々な「美少年」たちの集まりであり、その団則には「少年であること」という一種の排他的なルールが存在する。ただしこれも、団長である美学のマナブこと双頭院学に言わせれば、女子の入団も「少年の心を持っているならなんら問題はない」らしい。学によるこのステートメントは、『美少年探偵団』という作品の性質を分かりやすく表している。というのも、眉美のジェンダーは明示されることなく、常に曖昧に揺らぐものとして描かれている。入団後にずっと男装をしているわけではなく、女子生徒の服装にもどったり、男装をしたままバニー姿に変装したりするなどが特徴的だ。学が眉美にかけた言葉―外面や背面に惑わされず、綺麗事や理想論に紛らわされず、本人を見ることができるってことを、本当を見ることができるってことを、目にもの見せてやれ!―に視聴者への問いかけも含ませるような西尾維新らしい作品だ。
22.アイカツ×プリパラ(2025)
大川貴大監督
概要
大空あかりと真中らぁら。それぞれの世界で輝く二人のアイドルが、なぜか突然同じステージに!『アイカツ!』と『プリパラ』。本来交わるはずがなかった二つの世界に訪れたキセキの出会い!合同ライブフェスで夢のコラボレーションを楽しむスターライト学園とパラ宿のアイドルたちだったが、いつの間にか外の世界が大変な事に……!?
ワクワクとキラキラを詰め込んだ最高のステージ!み〜んなトモダチ、み〜んなアイドルなアイドルカツドウがここに開演
アイカツ×プリパラ10年オフィシャルサイトからの引用
バンダイ原案のメディアミックス作品
感想
10年前には競合ともいえた女児アニメ代表作品のコラボレーションは、多くの人がインパクトを与えたと思う。映画自体は上映時間である76分にこれでもかと3DCGのライブ映像を詰め込んだという印象だった。しかし、楽曲やパフォーマンスに限らず、アイカツのアスリートの部分とプリパラのトンチキな部分がストーリー展開上に共存していて驚いた。「国民アイドルオーディション」であるアイカツと「みんなトモダチみんなアイドル」を掲げるプリパラでは結局どちらかの良さが失われてしまうのではと考えたが、元の世界に戻すため「アイドルは奇跡を起こせる」という一点で上手くまとめていた。また、ステージに立つアイドルの在り方として「ともにメイキングアピールを考えた仲間、会場を装飾してくれたほかの生徒たち、そして彼女を応援する観客がいて初めて奇跡が完成する」と説いた学園長の言葉には、映画制作者たちから視聴者への今までの感謝が見えた気がした。かつて何かを応援したり推したりした経験がある人ならだれでも楽しめるような作品である。
23.プラダを着た悪魔(2003)
デヴィッド•フランケル監督
概要
ジャーナリストを目指す主人公アンドレアは、大手ファッション雑誌“ランウェイ”の敏腕編集長、ミランダの秘書を務めることに。ファッションに疎いアンドレアだったが、ミランダの第一秘書エミリーの「ここで1年働けばどこでも通用する」という言葉を信じて業務に徹する。しかし、編集仕事とは関係のないミランダの身の回りの世話を押し付けられるアシスタント業務や、ファッションに敏感な他の社員たちの冷ややかな目にさらされる過酷な生活が続く。そんな生活に嫌気が刺したアンドレアは、アートディレクターのナイジェルに泣き言を言うが、彼は「甘ったれるな」と喝を入れる。そこで閃いたアンディは、ナイジェルにファッションコーデを無理矢理頼み、これまでの無頓着な着こなしとは別人のような姿に。無理難題を突きつけるミランダの要求にも応えるように努力を始めたアンディは、心身ともに変わっていく。
感想
『プラダを着た悪魔』が10年たった今でも人々に見続けられる理由は、憧れとは正反対の「仕事への向き合い方」をエンターテインメントとして描いた”教材”とも言える物語だからだと考えられる。
アンディやエミリー、ミランダなど様々な視点からワークマインドとは何かを紐解くことができるが、特にアートディレクター、ナイジェルの仕事への敬意の払い方に関心を持った。結論、ナイジェルは約束された出世をミランダに反故にされたにもかかわらずその姿勢を曲げなかった。それは、アンディが「ミランダに嫌われた、失敗したときはこきおろす」と泣き言をいってきたとき、甘えるなと叱咤した場面からも読み取れる。ここでのアンディはアシスタントという仕事に対して敬意どころか理解や興味もなく、キャリアアップ(ジャーナリストになる)前のひとつの障害とすら考えていた節があった。ナイジェルは、誰もが命を投げ出してでも就きたいほどの、子ども時代からの“希望の光”であったファッション雑誌での仕事を、アンディに「どうでもいいもの」と捉えられたことに腹を立てた。このシーンだけでも、ランウェイという仕事にどれだけ真剣に接しているのかがわかったと同時に、夢を仕事にするとはこのような苦痛を伴うのだと感じることができた。モチヴェーションを失ったときに気合を入れられるような作品だと思う。。
24.マイインターン(2015)
ナンシー・マイヤーズ監督
概要
ファッション通販サイトを起業し、若くして成功を掴んだ女性社長。そんな彼女の会社に、シニア・インターン制度によって採用された70歳の男性が新人としてやってくる。最初は社内で浮いた存在になってしまう彼だったが、その穏やかな人柄によって徐々に皆と信頼関係を築いていく。
感想
本作品は、やや主人公の存在がファンタジーチックであるものの、常に視聴者の心に寄り添ってくれるような温かさを感じることができる。プラダの悪魔が「どう働くか」を題材にしたものだとしたら、マイインターンは「誰と働くか」について考えさせられた。この映画で最も魅力的な点は“悪”となる人物が出てこないところにある。あるとき、社長であるジュールズは、家事全般を担ってくれていた夫が不倫していると気づく。理由は企業が軌道に乗ってきたために家のことをおろそかにしていたからだ。自分のために専業主夫となった夫に対してひそかに罪悪感を募らせていたジュールズもこれには大きなショックを受ける。しかし、最終的にベンのアドバイスのもとに彼女は(家事と仕事を両立するための)CEOを雇わないことを選択した。改めてコミュニケーションをとり、相互理解を深めたジュールズの夫は浮気を謝罪し、生活は元のように戻っていく。本作はあくまでジュールズとベンの友情物語であり、ジュールズを取り巻く周辺の状況は一切変化していない幕切れは、先進的であるといえる。。
互いを尊重しあう気持ちを持ち得ない、諦める人物が一切いない気持ちの良い物語だ。
25.メダリスト(2025)
山本靖貴監督
つるまいかだ原作
概要
スケーターとして挫折した青年・明浦路司が出会ったのは、フィギュアスケートの世界に憧れを抱く少女・結束いのり。リンクへの執念を秘めたいのりに突き動かされ、司は自らコーチを引き受ける。才能を開花させていくいのりと、指導者として成長していく司。タッグを組んだ二人は栄光の“メダリスト”を目指す。
感想
『メダリスト』はアニメと原作にかなり差異があると考えている。アニメ版では「負の感情」を正面から見せる場面がやや少ないように感じた。原作で描かれている「負の感情」とは、単なる挫折や失敗ではなく、陰や闇といった属性をもつものだ。主人公が挑もうとしているフィギュアスケートの世界に内在する惨さや残酷さ、そして主人公自身が抱える強いコンプレックスや自己否定、一人の人間としての欠落といった部分がそれにあたる。原作では、そうした負の要素が物語の根底に流れており、表向きの熱さや感動の裏側として非常に丁寧に描かれている。特に印象的なのは、登場人物たちがその闇を自覚している場合も、無自覚な場合もある点である。彼らは才能や狂気のほとばしりによって周囲を熱狂させ、同時に自分自身もその熱狂に酔うことで、いったんは欠落や負の感情をなかったことにする。しかしそれも熱狂で闇を覆っているにすぎない。そのため、競技の節目や人生のターニングポイントといった重要な局面になると、覆い隠していた闇は何度も姿を現し、主人公たちを容赦なく追い詰める。それでも彼らは、その闇すら糧として才能や狂気を燃料にし、競技者として成長していく。成長によってさらに凄みを増した熱狂が、再び闇を覆い隠す。この循環構造こそが原作『メダリスト』の核心であり、競技の美しさと同時に、その危うさを強く印象づけている。アニメ版ではこの構造がややマイルドになっている分、原作の持つ残酷さや切実さが薄まっているように思われた。
26.名探偵コナン ベイカー街の亡霊(2002)
こだま兼嗣監督 野沢尚脚本
青山剛昌原作
概要
最新VRゲーム「コクーン」の発表会で起こった殺人事件をきっかけに、コナンたちが19世紀末ロンドンの仮想空間に閉じ込められ、現実とゲームがリンクする中で、人工知能「ノアズ・アーク」に挑むジュブナイルミステリー。開発者ヒロキの遺志を継ぎ、コナンの父である優作と共に、ノアズ・アークの暴走を止めて50人の子供たちを救うため、現実の事件とゲーム内の切り裂きジャック事件を解決していく。劇場版シリーズ第6作目。
感想
本作は単なる推理アニメ映画を越え、社会的な「血」の問題を提示する風刺的な作品だと感じた。映画内で選ばれしものとして招かれた子供たちは、裕福な家庭や有力者の二世三世であり、生まれながらに特権や未来を約束されているように見える。これはまさに現実社会における世襲制を象徴し、「血統=価値」という価値観を疑わせる仕掛けとして機能している。作中のキャラクターがこうした背景を批判的に語る場面からも、運命や成功が「血によって決まるのか」という問いが静かに立ち上がる。
この「血」の問題は、ゲーム内に隠されたノアズ・アークの目的やヒロキという天才少年の背景にも深く関わってくる。ヒロキは10歳にして高度なAIを開発したものの、自ら命を絶つという悲劇的な結末を迎えた。この血の運命づけられた才能とその挫折は、選ばれしものとの対比として強烈に表現される。血縁や才能はしばしば祝福されるが、それが同時に呪縛にもなるという点で、この作品は深い洞察を示している。
そして工藤親子という存在は、この映画におけるもう1つの「血」の語りの核を成している。工藤新一/江戸川コナンとその父親工藤優作の関係は、単なる親子の絆に留まらず、「血をどう扱うか」という問いを内包している。優作はこの仮想世界の事件で推理を重ねながら、血縁によって生じる影(ヒロキの運命)と光(親子の支え、助け合い)を対照的に見せる役割を担う。血は呪いにも力にもなるが、工藤親子はどちらにも囚われない自由を体現しているように思える。
総じて『ベイカー街の亡霊』は、血縁・世襲・選ばれし者というテーマをミステリとして楽しませながら、観客に問いを投げかける重層的な作品である。血の歴史や運命の連鎖を断ち切るとは何か、それは才能を持つか否かではなく、どう生き抜くかという選択に他ならないのだと感じた。
27.ガリレオ 真夏の方程式(2013)
西谷弘監督 東野圭吾原作
概要
美しい海辺の町での海底資源開発計画の説明会に招かれた物理学者・湯川。そんな中、彼が宿泊する旅館の近くで、元捜査一課の刑事の変死体が発見される。やがて現地入りした捜査一課の美砂は、湯川に事件解決への協力を依頼する。東野圭吾原作の映画版第2作。
感想
本作は、典型的なHOW(どのように起こったか)の謎解きだけでなく、湯川学がWHY(なぜその事件が起きたのか)に深く迫る新しいアプローチを見せた作品だと感じた。多くのミステリ映画は犯人像や手口の巧妙さに重心を置きがちだが、本作では真相が明かされる過程で登場人物それぞれの背景や動機、そしてその先にある人間の選択と倫理が問われる構造になっている。
物語は湯川が玻璃ヶ浦という海辺の町を訪れたことから展開する。一見すると元刑事の死体と不可解な状況が謎を呼ぶだけの事件に見えるが、その裏には15年前の殺人事件や家族の秘密、そして社会的な事情が複雑に絡んでいる。湯川は事件現場の物理的事実を解き明かすだけでなく、それがなぜ起こったのかを追っていく過程で、人物の心情や選択にも光を当てる。例えば、成実が過去の出来事にどう向き合ってきたのか、恭平少年の純粋な行動がどのように結果に結びついてしまったのかといったWHYの側面を深掘りしていく。特に印象的なのは、湯川が恭平に寄り添い、その心の動きを丁寧に汲み取ろうとする姿勢だ。単に真実をあぶり出すのではなく、真実を明らかにすることで誰がどう救われ、誰がどう苦しむのかという人間ドラマの本質にこそ関心を寄せる。
この映画は、ミステリの枠組みにとらわれない、選択と責任、そして他者との関わりというテーマを掘り下げた普遍的な物語でもある。
28.ミセス・ハリス、パリへ行く(2022)
アンソニー・ファビアン監督
概要
アメリカの人気作家ポール・ギャリコの長編小説を、「ファントム・スレッド」のレスリー・マンビル主演で映画化。
1950年代、第2次世界大戦後のロンドン。夫を戦争で亡くした家政婦ミセス・ハリスは、勤め先でディオールのドレスに出会う。その美しさに魅せられた彼女は、フランスへドレスを買いに行くことを決意。どうにか資金を集めてパリのディオール本店を訪れたものの、威圧的な支配人コルベールに追い出されそうになってしまう。しかし夢を決して諦めないハリスの姿は会計士アンドレやモデルのナターシャ、シャサーニュ公爵ら、出会った人々の心を動かしていく。
感想
本作は、善意の連鎖が世界を動かしていく穏やかな推進力を持った物語だと感じた。主人公のミセス・ハリスは戦争で夫を失い、日常に活力を失っていた普通の家政婦であるが、偶然見かけたクリスチャン・ディオールの美しいドレスに心を奪われることで「生きる目的」を少しずつ取り戻していく。彼女の夢は決して富や名声の獲得ではなく、ただ「そのドレスを着てオシャレをしたい」という純粋な願いだ。
作中、くじ当選や思いがけない年金の受給、友人や見知らぬ人たちの助けなど、ハリスの前に現れる支援はどれも奇跡というより人間同士の優しさの積み重ねとして表現されている。視聴者はこれらの出来事を観ながら「善意は結果として報われる」という寓話的な感覚を味わい、登場人物の行動や選択が他者へと影響を及ぼす様子を緩やかに受け止めることになる。特に印象深いのは、ハリスがパリで出会う人々との交流だ。彼女は特別な才能や社会的な地位を持っているわけではないが、誠実さで心から他者を尊重する姿勢は周囲の人の心を動かし、彼らもまた彼女を支えようとする。こうした関係性の描写は、「善意の好循環」が映画の根幹テーマとして機能していることを強く印象付けている。華やかなクリスチャン・ディオールの衣装とそれにふさわしい内面の在り方を知れた気がした。
29.クルエラ(2021)
クレイグ・ギレスビー監督
ジェニー・ビーヴァン衣装デザイン
概要
ロンドンへ向かう道中母親を亡くした少女エステラは、ファッションデザイナーになる夢を実現すべく、日々裁縫やデザイン画に打ち込みながら、清掃員としても働いていた。彼女の旺盛な悪戯心を気に入った若い2人組の泥棒と友だちになり、3人で力を合わせればロンドンのストリートで生き抜けることを知る。そんなある日、ファッション界のレジェンド的存在であるカリスマデザイナーのバロネスと出会い、あることをきっかけにエステラは覚醒。強気で大胆なパンクファッションに身を包み、自信の欲望に目覚めたクルエラとして生きていく。
る。
感想
『クルエラ』は、単にファッションを“見せる”映画ではなく、ファッションで観客を“魅せる”、物語全体に強烈な精神性と哲学を刻み込む作品だと感じた。主人公エステラ/クルエラが創り出すモードの世界は、ただ華やかな衣装を並べるだけではなく、彼女の内面や価値観、反逆と創造のダイナミズムを可視化する手段となっている。例えば、ゴミ収集車から現れるドレスが「汚いものは美しい」と観客に無言のメッセージを投げかける場面は、既成概念を壊し新たな価値を提示するアーティストの本質を象徴している。こうした演出は、衣服が単なる装飾である以上の意味を持つことを示している。
大半の映画では衣装は背景美術の一部として扱われがちだが、本作では服そのものが物語の語り手になっている。また、衣装デザインが単なる時代考証やビジュアルの綺麗さに留まらず、キャラクターの心理や立場を表現するための語彙として機能している点も重要だ。たとえばクルエラのアイコニックなドレスやコートの数々が、彼女の反逆心や創造性の爆発を象徴する表現として使われていることは、ファッションがアートとして機能する瞬間を鮮烈に見せている。
この映画を通じて再認識したのは、デザイナーとは衣服を作る人ではなく、人々の感情や価値観を揺さぶり、観る者の内面を刺激するアーティストであるということだ。『クルエラ』は服がただの布の集まりではなく、人の人生や文化、思想を映し出す言語であることを強烈に示しているように思えた。
30.アベンジャーズ:エンドゲーム(2019)
アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ監督
概要
凶悪な敵サノスが全てのインフィニティ・ストーンを手に入れたことで、多くの人間が消え去る。アベンジャーズも崩壊状態となる中、仲間と人々を取り戻すためごくわずかな勝算にかけてアイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソーたちが再び集結。最後の反撃を開始する。
感想
本作においてトニー・スタークとスティーブ・ロジャースは、対照的な生き方を通して「自己犠牲」と「自己実現」というテーマを描き出しているように感じた。エンドゲームは単なるヒーローアクションではなく、それぞれの人物が自分自身と向き合い、何のために戦うのかを問い直す物語だと言える。
トニー・スタークの物語は、初期から一貫して「自己中心的であること」と「他者のために尽くすこと」の間で葛藤してきた。鉄のスーツに身を包み世界を守るヒーローとして成功を収めた彼は、その過程で家族や仲間との関係を得てもなお、内なる孤独と罪悪感を抱え続けた人物でもある。『エンドゲーム』では、ついにその長年の重荷を乗り越え、自らの命を賭して世界を救う究極の自己犠牲を選ぶ。それは単なる正義の遂行ではなく、「I am Iron Man」という言葉に象徴される覚悟をもって、世界のために自分の生を差し出すことで初めて成立する、彼自身の存在意義の完成だったとも言える。一方でスティーブ・ロジャースは、元々が他者を優先し、自己を犠牲にしても任務遂行を選ぶ人物として描かれてきた。しかしラストシーンで彼は、戦いを終えた後に自分自身の人生を生きる選択をする。戦争という大義のもとでひたすら前へ進み続けた彼が、最終的にペギーとの人生を選び、静かに時間を生きることを選んだ姿は、自分自身を大切にすることもまた正当な生き方であるというメッセージとして胸に残る。
この2人の対比は、自己犠牲と自己実現という異なる価値観の共存と補完を体現しているように思える。トニーは「人々を救うために自らを捧げる」という自らの宿命を果たし、スティーブは「戦いの後に自分自身の人生を生きる」という静かな幸福を掴んだ。それぞれの道は正反対にも見えるが、どちらもまた英雄が選び得るひとつの完成形であり、この作品がヒーロー像を深く掘り下げた大きな理由なのだと感じた。
1.ウィキッド2人の魔女(2024)
ジョン•M•チュウ監督
概要
名作児童文学「オズの魔法使い」に登場する魔女たちの知られざる物語を描き、2003年の初演から20年以上にわたり愛され続ける大ヒットブロードウェイミュージカル「ウィキッド」を映画化した2部作の前編。後に「オズの魔法使い」に登場する「西の悪い魔女」となるエルファバと、「善い魔女」となるグリンダの、始まりの物語を描いたファンタジーミュージカル
感想
壮大なセットと音楽、世界観が感じられるファッションまで完璧な作品だった。子供らしく振る舞うことを許されなかったエルファバと、愛されて育った少し子供のようなグリンダを最高の友人として演じることができるのは、シンシアとアリアナ以外にいないだろうと思った。
ストーリー構成もミュージカルから引用しているからか、エルファバが死んだ知らせをグリンダが持ってくる場面から始まり、映画には新鮮で面白かった。エルファバは辛い運命を受け入れるが、2人の友情はどのような結末を迎えるのか、エメラルド王国はどうなるのか、二部も必ず見たいと思う。
2.国宝(2025)
李相日監督
概要
任侠の一門に生まれながら、女形としての才能を見出され歌舞伎役者の家に引取られた喜久雄。彼はやがて、その家の御曹司と切磋琢磨し芸に青春を捧げていく。
感想
あらすじや予告編だけでは伝わらないテーマがこの映画にはあると感じた。個人的に印象に残ったのは終盤の喜久雄を呼び出した万菊さんとのやり取りである。ここまでの喜久雄は血縁がおらず、自身の才能に頼らざるを得ない状況におかれ、それにも限界があると思いしらされた場面が多かった。その状態の喜久雄に、粗末なアパートの一室で万菊は「この部屋には美しいものが一つもないでしょう」と話しかけた。彼はただ舞台にのみ生きてきた人物なのだとこのセリフだけで理解できた。それは喜久雄も同じで、彼はこれからも人として破綻していながら芸に生きるしかないと言っているようだった。吉沢亮の巧みな演技と李監督の諦観の表し方に圧倒される作品だった。
3.壁 (1969)
安部公房
概要
ある朝、突然自分の名前を喪失してしまった男。以来彼は慣習に塗り固められた現実での存在権を失った。自らの帰属すべき場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。他人との接触に支障を来たし、マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱くなど。独特の寓意とユーモアで、孤独な人間の実存的体験を描き、その底に価値逆転の方向を探った芥川賞受賞の野心作。
感想
安部公房の小説が国語の教科書で1番好きだったので読んでみたが、熱があるときにみる夢みたいな小説だった。主人公が謂れのない罪で裁かれる場面が法も人権もなく、そのシュールさが『不思議の国のアリス』の女王の裁判のように感じた。ズレていく世界観や歪んだロジックは、安部公房が出せる唯一無二のユーモアさで面白い作品だった。
4.空の怪物アグイー短編 (1930)
大江健三郎
概要
大学入学直後、僕は銀行家の紹介で音楽家Dの付き添いの仕事を始める。Dは「空から降りてくる怪物アグイー」に取り憑かれていると語り、僕は彼に同行し続けた。やがてDの元妻から赤子の「アグイー」の悲劇を知る。12月24日、銀座でDに時計を贈られた直後、彼はトラックに飛び込み死亡。僕は自分が彼の自殺のために雇われたのではと疑う。春、子供に石を投げられた僕は再び「あれ」の存在を感じ、憎悪から解放された。
感想
授業の課題図書だったが面白かった。空の怪物アグイーは短編集に収められた中の一つであり、内容は大江健三郎らしく難しいものの、短いので飽きる間も無く読み切ることができる。この短編は大江健三郎自身の体験(前年に長男を授かっているが脳に深刻な異常があった)が働いていると考えられた。現実と違い小説のなかでは、音楽家Dはエゴイズムで子供を殺してしまったことでその存在に取り憑かれたという設定であった。人間の命の意味について、大学生の「ぼく」の第三者的な視点から考えられる小説だと思う。
5.チェーンソーマンレゼ編(2025)
吉原達矢監督 藤本タツキ原作
概要
悪魔の心臓を持つ“チェンソーマン”になった少年が、公安対魔特異4課に所属しデビルハンターとして活躍する姿を描く藤本タツキによる漫画「チェンソーマン」の劇場版
劇場版では新たにレゼという人物が登場して、憧れのマキマと自分に興味津々なレゼの間でデンジの恋心は揺れる。しかし実はレゼには陰謀があった。
感想
藤本タツキの作品は一編が映画のように綺麗にまとまっているため、原作そのままでも表現しやすそうだと思った。レゼ役の方の演技が上手く、デンジの前ではどこで「演じて」いてどこでは「演じていない」のかが声色でわかりやすかった。マキマとのデートでは2人が感情を共有する場面があったが、マキマは本当に涙を流したのか、それともデンジの感情がマキマに流されたのか、など疑問に思わせる示唆なのかとも思った。
アクションシーンは見どころがあり、ときどきデンジの一人称視点が挟まることで没入感が増した。
6. KING OF PRISM Your Endless Call み~んなきらめけ!プリズム☆ツアーズ (2025)
菱田正和監督
概要
歌とダンスとプリズムジャンプを組み合わせた総合エンタテインメントショー「プリズムショー」に魅了された個性豊かな男の子たちが「プリズムスタァ」を目指して奮闘する姿を描くアニメ「KING OF PRISM」シリーズの劇場版。「アイドルタイムプリパラ」「プリティーリズム」シリーズなどの男子キャラクターたちがシリーズの垣根を越えてライブを繰り広げる。
感想
男性のプリズムショーはまだみたことがなかったが、かなり話題になっていたので視聴した。プリティシリーズやプリパラはとにかく脈略のないストーリー構成、狂気を帯びたキャラクターが魅力だ。だからといって全てが勢い任せなステージ構成というわけでもない、プリズムスタァたちの愛に感動した。様々な愛のかたちや表現の仕方を見ることができて、自分を好きになる方法を教えてもらえる。かなり懐かしい楽曲と美しいトリックで、子供から大人まで楽しめる作品だと思う。
7.アンナチュラル(2018)
野木亜紀子脚本
概要
石原さとみさん主演の法医学ミステリードラマで、不自然死究明研究所(UDIラボ)を舞台に、法医解剖医の三澄ミコトを中心に、個性豊かなメンバーたちが様々な死の裏にある真実を解き明かす物語
感想
8話について、この話の主軸は題名の通り「遥かなる我が家」である。構成は本筋の中に小話が度々入るというものだ。それが優れていると思った点が、当初犯人だと考えられていた町田三郎とUDIの一員である六郎、さらには妻の遺骨を受け取ろうとしなかったお爺さんという3人もの人物について終盤の集約である。それぞれが明確に事件と繋がっているとは言い難い話にも関わらず「自らが帰るべき場所」というテーマを基盤として全て回収される。自分の家とはなにか、死を忌まわしく扱わないUDIだからこそ導き出せる答えだと思った。
8.スパイダーマン:ノー•ウェイ•ホーム(2021)
ジョン•ワッツ監督
概要
倒した敵の暴露により、世間から悪評を受けるスパイダーマン。自分の正体が知られていない世界に戻りたいと思うようになった彼は、友人のドクター・ストレンジに助けを求める。やがて魔法の力で、彼は違う世界線で2つの人生を同時に歩み始める。
感想
ホームカミング、ファーフロムホームに続きトムホランドが演じるピーターパーカーの作品。何十年にもわたるスパイダーマンへの愛を祝う本作は、ファンのための映画であり、明らかにファンによって作られた映画であった。その最たる理由はスパイダーマンシリーズをそれぞれ演じている主人公(アンドリュー•ガーフィールド、トビー•マグワイヤー)たちがマルチバースという新たな設定を利用して助けに来るからだ。主人公集結というヒーロー作品にありがちな構成でありながら、その演技と物語に感動することは本当にサプライズだといえる。
9.カラオケ行こ!(2023)
山下敦弘監督
概要
変声期に悩む合唱部の男子中学生と歌がうまくなりたいヤクザの交流をコミカルに描いた和山やまの人気コミックを、綾野剛主演で実写映画化。
感想
漫画の実写化で失敗していないと思える稀有な作品。本筋も含め、やま先生が得意であるシュールな笑いどころや感情が揺さぶられる場面は綾野剛さんと齋藤潤さんが上手く表現しており、実写化としてだけでなく一本の映画として完成されているという印象を受けた。後味も良く、展開がさらっと流れていくようでありながら、終わると主人公ふたりの満足感と喪失感でいっぱいになった。
10. 鬼滅の刃 無限城編第一章猗窩座再来(2025)
外崎春雄監督 吾峠呼世晴原作
概要
吾峠呼世晴による原作漫画「鬼滅の刃」の“無限城編”を、3部作で映画化したアニメーションの第1章。柱稽古の最中、産屋敷邸に現れた鬼舞辻無惨によって謎の空間へ落とされた炭治郎らを描く。今作は敵である童磨としのぶの確執、善逸戦、猗窩座の過去に焦点があてられて進んでいく。
感想
ufotableのつくる映像美に圧倒された。少し酔いそうになるほど迫力のある無限城の表現に、初出の童磨や獪岳の技の作画は素晴らしく、この作品における本気度が伺えた。内容は猗窩座の回想が中心となり、少し中途半端な気もしたが、映画化するにもそこで区切るしかなかったんだろうと考えた。猗窩座が好きな人は必ず見るべきだと思う。
11.グランメゾン東京(2019)
黒岩勉脚本
概要
かつてパリでミシュランの二つ星を獲得するも、慢心からすべてを失ったシェフは、ある起業家兼シェフと手を組み、"グランメゾン東京"をオープン。共に三つ星レストランを目指して奮闘する。
感想
こんなに信頼できる仕事仲間がいたら働くのがとても楽しいだろうなと思った。1クール約12話のなかで三つ星までは無理だろうと考えていたが、本作はかなりドラマチックに描かれていて後の映画に繋がるところが面白かった。ひとりひとりのキャラクターが確立されていて料理ももちろん人間関係が上手く描写されている。毎話の最後に流れる山下達郎の主題歌も感動の余韻に浸らせてくれる良いものだった。
12.ラストマイル(2024)
塚原あゆ子監督、野木亜紀子脚本
概要
11月、流通業界最大のイベントであるブラックフライデー前夜に、世界規模のショッピングサイトの関東センターから配送された段ボール箱が爆発する事件が起きる。やがて事件は拡大し、日本中を恐怖に陥れる連続爆破事件へと発展する。巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナは、チームマネージャーの梨本孔と共に事態の収拾にあたる。
感想
アンナチュラルとmiu404と同じ世界線だと言及されており、個人的に期待が大きくなってしまったが、ストーリーはそこまでガツンとした内容ではなかったという印象だった。岡田将生さんと満島ひかりさんの熱演は素晴らしかった。満島さんの演じる「どこか影のある女性」が大好きなので、今作もそのような人物像として感じられて面白かった。様々な伏線が散りばめられていることはわかったが、あまりにも説明が少なく(それが良いと考える人もいるだろう)進んでいくので、考える暇もなく真犯人が明らかになり終わってしまったのが残念だと思った。考察のしがいはあるので、もう一度見直したい。
13.すみっこぐらしあおい月夜のまほうのコ(2021)
大森貴弘監督
概要
とある秋の日、キャンプへ出かけたすみっコたちは、空にいつもより大きく青く輝いている月を発見する。「5年に1度の青い大満月の夜、魔法使いたちがやって来て夢をかなえてくれる」という伝説の通り、すみっコたちの町に魔法使いの5人兄弟が出現。彼らはあちこちに魔法をかけ、町中をパーティ会場のように彩っていく。楽しい夜にも終わりが近づき魔法使いたちは月へと帰っていくが、たぴおかが魔法使いのすえっコ・ふぁいぶと間違えられて連れて行かれてしまう。劇場アニメ第二弾。
感想
児童アニメながら、子どもだけでなく疲れた大人にこそ見てほしい作品だと感じた。アニメであるにも関わらず声優はついておらず、ナレーションと書き文字のみで繰り広げられるすみっこたちの会話。ストーリーも短いながらしっかり構成されていて、「なんでも叶う人には『夢』がない!」というセリフには、魔法使いが出てくる設定がありながら、パンチの効いた台詞にハッとさせられる場面だ。2作目でありながらキャラクター紹介もきちんとされているので、誰にでも楽しめる作品である。
14.アンチャーテッド(2022)
ルーベン•フライシャー監督
概要
“UNCHARTED(アンチャーテッド)”が日本語で意味する「地図にない場所」。そこには50億ドルの財宝が眠るという。若きトレジャーハンターのネイト(トム・ホランド)とサリー(マーク・ウォールバーグ)は、消えたネイトの兄サムが残してくれた手掛かりとマゼランの航海図を頼りに、その財宝に辿り着けるのか。
感想
原作はプレイステーションゲームのシナリオらしく、トムホランドが目当てで視聴した。今まで触れてこなかったハリウッドらしいアドベンチャー、アクション中心の映画だった。コンセプトが強くかたまっている「インディ・ジョーンズ」や「パイレーツオブカリビアン」は世界観についていくのが大変だと少し苦手意識を感じたが、この映画はそのようなノリとは一歩引いた展開が多くて見やすかった。
15. 忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段(2011)
概要
夏休みの宿題をめぐってトラブルが発生する忍術学園。事務員のミスで忍たまたちの宿題が入れ替わり、1年は組の山村喜三太は6年生用の宿題を与えられ、タソガレドキ軍との戦が行われていたオーマガトキ城で行方不明となってしまう。忍術学園は忍たまの選抜チームを結成して喜三太救出に向かう。
感想
原作「落第忍者乱太郎」37巻と42巻という、時間軸も主人公の行動原理も異なる2つのエピソードを、1本の劇場版として破綻なくまとめあげた脚本に感動した。長編構成ながら、子供向けとしての分かりやすいテーマ性、ファンムービーとしての満足度、そして膨大なキャラクターの扱いをすべて両立している点が特に凄い。
注目すべきはアバンタイトルの演出。観客の「映画冒頭の不安」を見逃さず、戦場の緊迫感→視点人物の負傷→伊作の慈愛という流れで巧みに感情を誘導し、中盤でこの視点が雑渡昆奈門の一人称だと判明することで、観客は自然と雑渡に感情移入できる構造だ。これにより、雑渡の言葉を“疑わず信じられる”状態が作られるという、観客心理のコントロールが天才的に設計されている。
さらにタイトルどおり、一年生から六年生(教員も含めて)までほぼ全員が登場するにもかかわらず、雰囲気のみで展開しないことも驚異的だ。出番が分散しがちな群像劇でありながら、どのキャラも性格や関係性が最低限わかるようにまとめてあり、キャラが多いことが雑味にならず、むしろ「乱太郎らしい賑やかさ」として機能している。
物語構造や感情誘導の技巧が凝縮されており、創作を学びたい人にぜひ見てほしい一本だと考えた。
16.フロントライン(2025)
関根光才監督
概要
日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」での実話を基に、未知のウイルスに最前線で立ち向かった医師や看護師たちの闘いをオリジナル脚本で描いた映画
感想
現実ベースで考えるとわずか5年前に起きた出来事を、一本の映画にまとめて公開まで持っていった作品は今までになかったものだ。
本作は日本で初めて集団感染が起きた「ダイヤモンド•プリンセス号」に関わった医療従事者たちの苦悩や葛藤にスポットを当てている。当時はどこのマスコミも中継する大ニュースとなったものだが、案外覚えているのは感染したらしい乗客たちの安否や政府の動きばかりであり、内側で奮闘していた、いわゆる“現場”の人々の話は印象になかった。特に、感染した人と感染していない人をどう分けるかが明確ではなかったことで、その間で板挟みになる医療従事者たちには胸をうたれた。人間が人間らしく扱われるために戦う人たちがカッコ良いと思える映画だった。
17.ズートピア2(2025)
ジャレド・ブッシュ、バイロン・ハワード共同監督
概要
あらゆるタイプの動物たちが平和に暮らし、「誰でも夢をかなえられる」という理想の楽園ズートピア。ウサギで初めて警察官になるという夢をかなえたジュディは、以前にも増して熱心に任務にあたり、元詐欺師のニックも警察学校を無事卒業して警察官となった。再びバディを組むこととなった2人は、ズートピアに突如現れた指名手配犯のヘビ、ゲイリーを捜索するため、潜入捜査を行うことになる。ゲイリーは一体何者なのか。やがてジュディとニックは、ゲイリーと爬虫類たちが隠すズートピアの暗い過去にまつわる巨大な謎に迫っていき、その中で2人の絆が試されることとなる。
感想
最初から最後まで疾走感があり、表情豊かな動物たちと合わせて観客を飽きさせない作品だった。1作目では、多くの種族がいる中で自分たちの偏見を打ち破りアイデンティティを取り戻したジュディとニック。2作目となる本作では、そんな多様性を認め合う世界で2人(2匹)が目指す相棒とはなにかをテーマにしているように見えた。今回は「うさぎ」と「きつね」という対立が取られる場面は少なく、強すぎる正義感に真っ直ぐな性格のジュディと、危険には積極的でない捻くれた性格のニック、いわゆる凸凹コンビと呼ばれる表現が多かった。結局お互いが一番大事にしたかったのは相手自身だと打ち明ける(もしくは気づく)ことで、ずっと一緒だと約束した場面は、ディズニーらしい真っ直ぐな愛の表現の仕方だった。
18.個人的な体験(1964)
大江健三郎
概要
わが子が頭部に異常をそなえて生まれてきたと知らされて、アフリカへの冒険旅行を夢見ていた主人公、鳥(通称バード)は深甚な恐怖感に囚われた。赤ん坊の死を願って火見子と性の逸楽に耽る背徳と絶望の日々。狂気の淵に瀕した現代人に再生の希望はあるのか?暗澹たる地獄廻りの果てに自らの運命を引き受けるに至った青年の魂の遍歴を描破し、大江文学の新展開を告知した記念碑的長編。
感想
冒頭から常に自分本位な主人公が、人間としてのどん底まで落ちた上で最後には自らの自己欺瞞に打ち勝つ、という現在でもありがちなストーリーながら、大江健三郎の描く究極の人間らしさによって読者を複雑にさせる作品。
特に印象に残ったのは、鳥が赤んぼうを救うのは赤んぼうのためではなく自分ためだと言い切ったところだ。あるところでは結末を美化しすぎ、や都合が良すぎるのではないかと言った感想も見かけたが、それこそ人間の気まぐれな感情の変化を精緻に捉えた結果だと考えられた。作者自身の“体験”も加えられたリアリティに優れた作品である。
19.映画赤と白の捜査ファイル(2015)
佐藤東弥監督 渡辺雄介脚本
今野敏 原作
概要
現代犯罪の多様性に対応するために警察庁科学捜査研究所に新設された、「ST」(Scientific Taskforce、科学特捜班)と呼ばれる架空の組織の活躍を描いた作品。非常に優秀な能力を持ちながらも、それぞれの理由によって科学捜査に従事しているSTメンバーが、能力を生かして不可解とも思える様々な事件を解決していく。
原作は1998年3月から講談社ノベルスより刊行された"STシリーズ"
劇場版あらすじ
東京都内で無差別銃乱射事件が発生し、ST (警視庁科学特捜班)の出動が要請され、精鋭たちが集う。しかし、リーダーの赤城左門は姿を見せず。彼はあるきっかけにより自宅に引きこもるようになっていた。班を統括するキャリア警部の百合根友久は、赤城の自宅を訪ねる。
感想
主人公に藤原竜也と岡田将生、その仲間も今の民放ではありえない豪華な俳優陣で構成されている。さらに映画ともなると、悪役にユースケサンタマリアや子役の鈴木梨央も出演していて2015年のドラマ黄金時代を感じた。
エンターテイメントとしてもとても秀でており、メインキャラクターたちそれぞれの個性がやや強すぎるくらい立っている。これは今野敏さんの原作からの影響もあるかもしれないが、刑事ものでありながらコミカルで漫画を見ているかのようなシーンが多くある。一緒になって推理するよりは、人物のやりとりを中心に楽しむものだと思った。とりわけ映画ではドラマ最終話の続きという設定なので、キャラクター像を知らないまま見るとついていくのが難しいかもしれない。
20.スラムダンク THE FIRST SLAMDUNK(2022)
井上雄彦監督 脚本 原作
概要
1990年から96年まで「週刊少年ジャンプ」で連載され、以降も絶大な人気を誇る名作バスケットボール漫画「SLAM DUNK」を、原作者の井上雄彦が自ら監督・脚本を手がけ、新たにアニメーション映画化。
いつも余裕をかましながら頭脳的なプレーと電光石火のスピードで相手を翻弄する、湘北高校バスケ部の切り込み隊長、ポイントガードの宮城リョータ。沖縄で生まれ育った彼には3つ年上の兄ソータがいた。兄は地元のミニバスチームで有名な選手で、リョータも兄の背中を追うようにバスケを始めた。やがて一家は沖縄から神奈川へ引っ越し、湘北高校に進学したリョータはバスケ部に入部。2年生になったリョータは、1年生の桜木花道、流川楓、3年生の赤木剛憲、三井寿らとともにインターハイに出場し、絶対王者と呼ばれる強豪・山王工業高校と対戦する。
感想
アニメに使われる3DCGに対する自分の苦手意識を払拭してくれた。
当時原作もアニメも何も知らないまま見に行ったが、単体の映画として非常に楽しめた。特に、試合が始まって終わるまでに、各キャラの個性や考え方がある程度理解できるようになるストーリー構成に驚いた。
3DCGに関して言えば、この山王戦を舞台にした映画は例え実写でも手描きでもこれほど緻密にバスケットボールという全身運動を捉えられなかっただろうと思う。漫画をアニメーションにするプロセスの難しさを考えさせられたと同時に、この作品が一つの解になりうると考えた。
21.美少年探偵団(2021)
新房昭之監督
西尾維新「美少年シリーズ」原作
概要
「美少年シリーズ」は、講談社タイガより 刊行されている西尾維新の人気小説シリーズで、私立指輪 (ゆびわ) 学園を舞台に、校内のトラブルを非公式非公開非営利に解決すると噂される謎の集団「美少年探偵団」を中心とした物語。
感想
このアニメのユニークな点をひとつ挙げるとすれば、それは女性主人公が男装をするという設定だろう。眉美は美少年探偵団に入団すべく、男装して「美少年」になる。たしかに美少年探偵団は様々な「美少年」たちの集まりであり、その団則には「少年であること」という一種の排他的なルールが存在する。ただしこれも、団長である美学のマナブこと双頭院学に言わせれば、女子の入団も「少年の心を持っているならなんら問題はない」らしい。学によるこのステートメントは、『美少年探偵団』という作品の性質を分かりやすく表している。というのも、眉美のジェンダーは明示されることなく、常に曖昧に揺らぐものとして描かれている。入団後にずっと男装をしているわけではなく、女子生徒の服装にもどったり、男装をしたままバニー姿に変装したりするなどが特徴的だ。学が眉美にかけた言葉―外面や背面に惑わされず、綺麗事や理想論に紛らわされず、本人を見ることができるってことを、本当を見ることができるってことを、目にもの見せてやれ!―に視聴者への問いかけも含ませるような西尾維新らしい作品だ。
22.アイカツ×プリパラ(2025)
大川貴大監督
概要
大空あかりと真中らぁら。それぞれの世界で輝く二人のアイドルが、なぜか突然同じステージに!『アイカツ!』と『プリパラ』。本来交わるはずがなかった二つの世界に訪れたキセキの出会い!合同ライブフェスで夢のコラボレーションを楽しむスターライト学園とパラ宿のアイドルたちだったが、いつの間にか外の世界が大変な事に……!?
ワクワクとキラキラを詰め込んだ最高のステージ!み〜んなトモダチ、み〜んなアイドルなアイドルカツドウがここに開演
アイカツ×プリパラ10年オフィシャルサイトからの引用
バンダイ原案のメディアミックス作品
感想
10年前には競合ともいえた女児アニメ代表作品のコラボレーションは、多くの人がインパクトを与えたと思う。映画自体は上映時間である76分にこれでもかと3DCGのライブ映像を詰め込んだという印象だった。しかし、楽曲やパフォーマンスに限らず、アイカツのアスリートの部分とプリパラのトンチキな部分がストーリー展開上に共存していて驚いた。「国民アイドルオーディション」であるアイカツと「みんなトモダチみんなアイドル」を掲げるプリパラでは結局どちらかの良さが失われてしまうのではと考えたが、元の世界に戻すため「アイドルは奇跡を起こせる」という一点で上手くまとめていた。また、ステージに立つアイドルの在り方として「ともにメイキングアピールを考えた仲間、会場を装飾してくれたほかの生徒たち、そして彼女を応援する観客がいて初めて奇跡が完成する」と説いた学園長の言葉には、映画制作者たちから視聴者への今までの感謝が見えた気がした。かつて何かを応援したり推したりした経験がある人ならだれでも楽しめるような作品である。
23.プラダを着た悪魔(2003)
デヴィッド•フランケル監督
概要
ジャーナリストを目指す主人公アンドレアは、大手ファッション雑誌“ランウェイ”の敏腕編集長、ミランダの秘書を務めることに。ファッションに疎いアンドレアだったが、ミランダの第一秘書エミリーの「ここで1年働けばどこでも通用する」という言葉を信じて業務に徹する。しかし、編集仕事とは関係のないミランダの身の回りの世話を押し付けられるアシスタント業務や、ファッションに敏感な他の社員たちの冷ややかな目にさらされる過酷な生活が続く。そんな生活に嫌気が刺したアンドレアは、アートディレクターのナイジェルに泣き言を言うが、彼は「甘ったれるな」と喝を入れる。そこで閃いたアンディは、ナイジェルにファッションコーデを無理矢理頼み、これまでの無頓着な着こなしとは別人のような姿に。無理難題を突きつけるミランダの要求にも応えるように努力を始めたアンディは、心身ともに変わっていく。
感想
『プラダを着た悪魔』が10年たった今でも人々に見続けられる理由は、憧れとは正反対の「仕事への向き合い方」をエンターテインメントとして描いた”教材”とも言える物語だからだと考えられる。
アンディやエミリー、ミランダなど様々な視点からワークマインドとは何かを紐解くことができるが、特にアートディレクター、ナイジェルの仕事への敬意の払い方に関心を持った。結論、ナイジェルは約束された出世をミランダに反故にされたにもかかわらずその姿勢を曲げなかった。それは、アンディが「ミランダに嫌われた、失敗したときはこきおろす」と泣き言をいってきたとき、甘えるなと叱咤した場面からも読み取れる。ここでのアンディはアシスタントという仕事に対して敬意どころか理解や興味もなく、キャリアアップ(ジャーナリストになる)前のひとつの障害とすら考えていた節があった。ナイジェルは、誰もが命を投げ出してでも就きたいほどの、子ども時代からの“希望の光”であったファッション雑誌での仕事を、アンディに「どうでもいいもの」と捉えられたことに腹を立てた。このシーンだけでも、ランウェイという仕事にどれだけ真剣に接しているのかがわかったと同時に、夢を仕事にするとはこのような苦痛を伴うのだと感じることができた。モチヴェーションを失ったときに気合を入れられるような作品だと思う。。
24.マイインターン(2015)
ナンシー・マイヤーズ監督
概要
ファッション通販サイトを起業し、若くして成功を掴んだ女性社長。そんな彼女の会社に、シニア・インターン制度によって採用された70歳の男性が新人としてやってくる。最初は社内で浮いた存在になってしまう彼だったが、その穏やかな人柄によって徐々に皆と信頼関係を築いていく。
感想
本作品は、やや主人公の存在がファンタジーチックであるものの、常に視聴者の心に寄り添ってくれるような温かさを感じることができる。プラダの悪魔が「どう働くか」を題材にしたものだとしたら、マイインターンは「誰と働くか」について考えさせられた。この映画で最も魅力的な点は“悪”となる人物が出てこないところにある。あるとき、社長であるジュールズは、家事全般を担ってくれていた夫が不倫していると気づく。理由は企業が軌道に乗ってきたために家のことをおろそかにしていたからだ。自分のために専業主夫となった夫に対してひそかに罪悪感を募らせていたジュールズもこれには大きなショックを受ける。しかし、最終的にベンのアドバイスのもとに彼女は(家事と仕事を両立するための)CEOを雇わないことを選択した。改めてコミュニケーションをとり、相互理解を深めたジュールズの夫は浮気を謝罪し、生活は元のように戻っていく。本作はあくまでジュールズとベンの友情物語であり、ジュールズを取り巻く周辺の状況は一切変化していない幕切れは、先進的であるといえる。。
互いを尊重しあう気持ちを持ち得ない、諦める人物が一切いない気持ちの良い物語だ。
25.メダリスト(2025)
山本靖貴監督
つるまいかだ原作
概要
スケーターとして挫折した青年・明浦路司が出会ったのは、フィギュアスケートの世界に憧れを抱く少女・結束いのり。リンクへの執念を秘めたいのりに突き動かされ、司は自らコーチを引き受ける。才能を開花させていくいのりと、指導者として成長していく司。タッグを組んだ二人は栄光の“メダリスト”を目指す。
感想
『メダリスト』はアニメと原作にかなり差異があると考えている。アニメ版では「負の感情」を正面から見せる場面がやや少ないように感じた。原作で描かれている「負の感情」とは、単なる挫折や失敗ではなく、陰や闇といった属性をもつものだ。主人公が挑もうとしているフィギュアスケートの世界に内在する惨さや残酷さ、そして主人公自身が抱える強いコンプレックスや自己否定、一人の人間としての欠落といった部分がそれにあたる。原作では、そうした負の要素が物語の根底に流れており、表向きの熱さや感動の裏側として非常に丁寧に描かれている。特に印象的なのは、登場人物たちがその闇を自覚している場合も、無自覚な場合もある点である。彼らは才能や狂気のほとばしりによって周囲を熱狂させ、同時に自分自身もその熱狂に酔うことで、いったんは欠落や負の感情をなかったことにする。しかしそれも熱狂で闇を覆っているにすぎない。そのため、競技の節目や人生のターニングポイントといった重要な局面になると、覆い隠していた闇は何度も姿を現し、主人公たちを容赦なく追い詰める。それでも彼らは、その闇すら糧として才能や狂気を燃料にし、競技者として成長していく。成長によってさらに凄みを増した熱狂が、再び闇を覆い隠す。この循環構造こそが原作『メダリスト』の核心であり、競技の美しさと同時に、その危うさを強く印象づけている。アニメ版ではこの構造がややマイルドになっている分、原作の持つ残酷さや切実さが薄まっているように思われた。
26.名探偵コナン ベイカー街の亡霊(2002)
こだま兼嗣監督 野沢尚脚本
青山剛昌原作
概要
最新VRゲーム「コクーン」の発表会で起こった殺人事件をきっかけに、コナンたちが19世紀末ロンドンの仮想空間に閉じ込められ、現実とゲームがリンクする中で、人工知能「ノアズ・アーク」に挑むジュブナイルミステリー。開発者ヒロキの遺志を継ぎ、コナンの父である優作と共に、ノアズ・アークの暴走を止めて50人の子供たちを救うため、現実の事件とゲーム内の切り裂きジャック事件を解決していく。劇場版シリーズ第6作目。
感想
本作は単なる推理アニメ映画を越え、社会的な「血」の問題を提示する風刺的な作品だと感じた。映画内で選ばれしものとして招かれた子供たちは、裕福な家庭や有力者の二世三世であり、生まれながらに特権や未来を約束されているように見える。これはまさに現実社会における世襲制を象徴し、「血統=価値」という価値観を疑わせる仕掛けとして機能している。作中のキャラクターがこうした背景を批判的に語る場面からも、運命や成功が「血によって決まるのか」という問いが静かに立ち上がる。
この「血」の問題は、ゲーム内に隠されたノアズ・アークの目的やヒロキという天才少年の背景にも深く関わってくる。ヒロキは10歳にして高度なAIを開発したものの、自ら命を絶つという悲劇的な結末を迎えた。この血の運命づけられた才能とその挫折は、選ばれしものとの対比として強烈に表現される。血縁や才能はしばしば祝福されるが、それが同時に呪縛にもなるという点で、この作品は深い洞察を示している。
そして工藤親子という存在は、この映画におけるもう1つの「血」の語りの核を成している。工藤新一/江戸川コナンとその父親工藤優作の関係は、単なる親子の絆に留まらず、「血をどう扱うか」という問いを内包している。優作はこの仮想世界の事件で推理を重ねながら、血縁によって生じる影(ヒロキの運命)と光(親子の支え、助け合い)を対照的に見せる役割を担う。血は呪いにも力にもなるが、工藤親子はどちらにも囚われない自由を体現しているように思える。
総じて『ベイカー街の亡霊』は、血縁・世襲・選ばれし者というテーマをミステリとして楽しませながら、観客に問いを投げかける重層的な作品である。血の歴史や運命の連鎖を断ち切るとは何か、それは才能を持つか否かではなく、どう生き抜くかという選択に他ならないのだと感じた。
27.ガリレオ 真夏の方程式(2013)
西谷弘監督 東野圭吾原作
概要
美しい海辺の町での海底資源開発計画の説明会に招かれた物理学者・湯川。そんな中、彼が宿泊する旅館の近くで、元捜査一課の刑事の変死体が発見される。やがて現地入りした捜査一課の美砂は、湯川に事件解決への協力を依頼する。東野圭吾原作の映画版第2作。
感想
本作は、典型的なHOW(どのように起こったか)の謎解きだけでなく、湯川学がWHY(なぜその事件が起きたのか)に深く迫る新しいアプローチを見せた作品だと感じた。多くのミステリ映画は犯人像や手口の巧妙さに重心を置きがちだが、本作では真相が明かされる過程で登場人物それぞれの背景や動機、そしてその先にある人間の選択と倫理が問われる構造になっている。
物語は湯川が玻璃ヶ浦という海辺の町を訪れたことから展開する。一見すると元刑事の死体と不可解な状況が謎を呼ぶだけの事件に見えるが、その裏には15年前の殺人事件や家族の秘密、そして社会的な事情が複雑に絡んでいる。湯川は事件現場の物理的事実を解き明かすだけでなく、それがなぜ起こったのかを追っていく過程で、人物の心情や選択にも光を当てる。例えば、成実が過去の出来事にどう向き合ってきたのか、恭平少年の純粋な行動がどのように結果に結びついてしまったのかといったWHYの側面を深掘りしていく。特に印象的なのは、湯川が恭平に寄り添い、その心の動きを丁寧に汲み取ろうとする姿勢だ。単に真実をあぶり出すのではなく、真実を明らかにすることで誰がどう救われ、誰がどう苦しむのかという人間ドラマの本質にこそ関心を寄せる。
この映画は、ミステリの枠組みにとらわれない、選択と責任、そして他者との関わりというテーマを掘り下げた普遍的な物語でもある。
28.ミセス・ハリス、パリへ行く(2022)
アンソニー・ファビアン監督
概要
アメリカの人気作家ポール・ギャリコの長編小説を、「ファントム・スレッド」のレスリー・マンビル主演で映画化。
1950年代、第2次世界大戦後のロンドン。夫を戦争で亡くした家政婦ミセス・ハリスは、勤め先でディオールのドレスに出会う。その美しさに魅せられた彼女は、フランスへドレスを買いに行くことを決意。どうにか資金を集めてパリのディオール本店を訪れたものの、威圧的な支配人コルベールに追い出されそうになってしまう。しかし夢を決して諦めないハリスの姿は会計士アンドレやモデルのナターシャ、シャサーニュ公爵ら、出会った人々の心を動かしていく。
感想
本作は、善意の連鎖が世界を動かしていく穏やかな推進力を持った物語だと感じた。主人公のミセス・ハリスは戦争で夫を失い、日常に活力を失っていた普通の家政婦であるが、偶然見かけたクリスチャン・ディオールの美しいドレスに心を奪われることで「生きる目的」を少しずつ取り戻していく。彼女の夢は決して富や名声の獲得ではなく、ただ「そのドレスを着てオシャレをしたい」という純粋な願いだ。
作中、くじ当選や思いがけない年金の受給、友人や見知らぬ人たちの助けなど、ハリスの前に現れる支援はどれも奇跡というより人間同士の優しさの積み重ねとして表現されている。視聴者はこれらの出来事を観ながら「善意は結果として報われる」という寓話的な感覚を味わい、登場人物の行動や選択が他者へと影響を及ぼす様子を緩やかに受け止めることになる。特に印象深いのは、ハリスがパリで出会う人々との交流だ。彼女は特別な才能や社会的な地位を持っているわけではないが、誠実さで心から他者を尊重する姿勢は周囲の人の心を動かし、彼らもまた彼女を支えようとする。こうした関係性の描写は、「善意の好循環」が映画の根幹テーマとして機能していることを強く印象付けている。華やかなクリスチャン・ディオールの衣装とそれにふさわしい内面の在り方を知れた気がした。
29.クルエラ(2021)
クレイグ・ギレスビー監督
ジェニー・ビーヴァン衣装デザイン
概要
ロンドンへ向かう道中母親を亡くした少女エステラは、ファッションデザイナーになる夢を実現すべく、日々裁縫やデザイン画に打ち込みながら、清掃員としても働いていた。彼女の旺盛な悪戯心を気に入った若い2人組の泥棒と友だちになり、3人で力を合わせればロンドンのストリートで生き抜けることを知る。そんなある日、ファッション界のレジェンド的存在であるカリスマデザイナーのバロネスと出会い、あることをきっかけにエステラは覚醒。強気で大胆なパンクファッションに身を包み、自信の欲望に目覚めたクルエラとして生きていく。
る。
感想
『クルエラ』は、単にファッションを“見せる”映画ではなく、ファッションで観客を“魅せる”、物語全体に強烈な精神性と哲学を刻み込む作品だと感じた。主人公エステラ/クルエラが創り出すモードの世界は、ただ華やかな衣装を並べるだけではなく、彼女の内面や価値観、反逆と創造のダイナミズムを可視化する手段となっている。例えば、ゴミ収集車から現れるドレスが「汚いものは美しい」と観客に無言のメッセージを投げかける場面は、既成概念を壊し新たな価値を提示するアーティストの本質を象徴している。こうした演出は、衣服が単なる装飾である以上の意味を持つことを示している。
大半の映画では衣装は背景美術の一部として扱われがちだが、本作では服そのものが物語の語り手になっている。また、衣装デザインが単なる時代考証やビジュアルの綺麗さに留まらず、キャラクターの心理や立場を表現するための語彙として機能している点も重要だ。たとえばクルエラのアイコニックなドレスやコートの数々が、彼女の反逆心や創造性の爆発を象徴する表現として使われていることは、ファッションがアートとして機能する瞬間を鮮烈に見せている。
この映画を通じて再認識したのは、デザイナーとは衣服を作る人ではなく、人々の感情や価値観を揺さぶり、観る者の内面を刺激するアーティストであるということだ。『クルエラ』は服がただの布の集まりではなく、人の人生や文化、思想を映し出す言語であることを強烈に示しているように思えた。
30.アベンジャーズ:エンドゲーム(2019)
アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ監督
概要
凶悪な敵サノスが全てのインフィニティ・ストーンを手に入れたことで、多くの人間が消え去る。アベンジャーズも崩壊状態となる中、仲間と人々を取り戻すためごくわずかな勝算にかけてアイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソーたちが再び集結。最後の反撃を開始する。
感想
本作においてトニー・スタークとスティーブ・ロジャースは、対照的な生き方を通して「自己犠牲」と「自己実現」というテーマを描き出しているように感じた。エンドゲームは単なるヒーローアクションではなく、それぞれの人物が自分自身と向き合い、何のために戦うのかを問い直す物語だと言える。
トニー・スタークの物語は、初期から一貫して「自己中心的であること」と「他者のために尽くすこと」の間で葛藤してきた。鉄のスーツに身を包み世界を守るヒーローとして成功を収めた彼は、その過程で家族や仲間との関係を得てもなお、内なる孤独と罪悪感を抱え続けた人物でもある。『エンドゲーム』では、ついにその長年の重荷を乗り越え、自らの命を賭して世界を救う究極の自己犠牲を選ぶ。それは単なる正義の遂行ではなく、「I am Iron Man」という言葉に象徴される覚悟をもって、世界のために自分の生を差し出すことで初めて成立する、彼自身の存在意義の完成だったとも言える。一方でスティーブ・ロジャースは、元々が他者を優先し、自己を犠牲にしても任務遂行を選ぶ人物として描かれてきた。しかしラストシーンで彼は、戦いを終えた後に自分自身の人生を生きる選択をする。戦争という大義のもとでひたすら前へ進み続けた彼が、最終的にペギーとの人生を選び、静かに時間を生きることを選んだ姿は、自分自身を大切にすることもまた正当な生き方であるというメッセージとして胸に残る。
この2人の対比は、自己犠牲と自己実現という異なる価値観の共存と補完を体現しているように思える。トニーは「人々を救うために自らを捧げる」という自らの宿命を果たし、スティーブは「戦いの後に自分自身の人生を生きる」という静かな幸福を掴んだ。それぞれの道は正反対にも見えるが、どちらもまた英雄が選び得るひとつの完成形であり、この作品がヒーロー像を深く掘り下げた大きな理由なのだと感じた。
中村昂太郎
RES
三年 中村昂太郎
1 小市民シリーズ(アニメ)監督:神戸守
【概要】
平穏で慎ましい小市民を目指すという約束をした小鳩常悟朗と小佐内ゆきは、無事同じ高校に入学した。ところが、小佐内からいちごタルトを買いに行こうと誘われた四月のある日、小鳩は校内で盗まれたというポシェットの捜索に駆り出されてしまう。いきなり事件に遭遇した小鳩たちは、穏やかな放課後を過ごせるのだろうか。
【考察】
BGMを多用せず、環境音や会話だけで構成されているシーンが多く、キャラクターの生活や会話に自然と目が行くように作られていた。また、主人公の小鳩が推理を披露したり、重要な会話が挟まれるシーンではキャラが立っている場所ではなく、あえて舞台となっている岐阜市の景色を背景にしたりと、会話内容や表情だけでなく、画面全体を使ってキャラ同士の関係性や心情を表現しており、会話劇がほとんどの構成だったにも関わらず、視聴者が視覚的にも楽しめる工夫が多く仕込まれていた。
2期からは一話完結の構成から、全体を通して事件を追う構成になっており、さらに視聴に没入できるようになっていた。しかし、それもただ事件の謎を解いていくだけではなく、小鳩と小山内のパーソナリティが1期よりも深く理解できるようになっていたり、二人が知り合うきっかけとなった事件を回想で振り返りながら、徐々に過去と現在の事件の繋がりが明らかになるようなつくりとなっていた。これらを経て、二人が出した作中で「小市民になることはできない」という結論に、視聴者も納得できるようになっている。
2 ウマ娘 シンデレラグレイ(アニメ)監督:みうらたけひろ
【概要】
寂れた地方のカサマツトレセン学園。
そこでトレーナーを務める北原穣は、活気を失いつつある地方レースの現状に対してどうにもできない日々を送っていた。
そんなある日、1人のウマ娘と出会う。
芦毛の髪をなびかせて走るその姿を見た時、彼は長年待ちわびていた『スター』が現れたと直感する——。
【考察】
初めはただ走れればそれでいいと思っていた主人公が、地元のライバルや仲間たちなど、様々な人の想いを背負っていった結果、レースに勝ちたいという欲求が生まれるまでが、1期の範囲内では様々な人物の視点で描かれていた。主人公のオグリキャップのシンデレラストーリーであると同時に、同じ時代を生きたウマ娘とトレーナーの群像劇として見ることもできた。
実際の競走馬をモデルにストーリーが作られていることによって、視聴者が現実と重ね合わせて作品を見ることができ、史実を知っているが故に先の展開を予想できる人でも、迫力あるレースの作画と擬人化された競走馬たちのドラマを楽しめるようになっている。特性上、未成年や興味のない人間には触れづらい競馬という競技を、キャッチーに脚色し誰でも気軽に触れられるコンテンツにしたことで、実際に競馬業界にも良い影響が出ていることから、アプリ版と合わせてこのコンテンツは、今後も競馬界にとって重要な立ち位置を持つことになると考える。
3 TRICK(ドラマ)監督:堤幸彦
【概要】
自称天才マジシャン・山田奈緒子と、日本科学技術大学物理学教授・上田次郎コンビが、超常現象や奇怪な事件に隠されたトリックを解決していくミステリードラマ。
【考察】
インチキ霊能力者のトリックを暴き、事件を解決するストーリーではあるが、作中では本物の霊能力が存在する。さらに、シーズン1の終盤に主人公の山田が霊能力者の血を引いている事が明らかになり、シーズン2からは、敵となる霊能力者たちは山田のマジックの腕や推理力には触れず、霊能力者として高く評価する者が増えていき、実際に山田が未来を予知しているようなシーンも差し込まれており、作中で最も霊能力を否定してきた山田が屈指の霊能力を持っているという皮肉な構図が作り出されている。また、トリックを暴いたからといって事態が好転する訳ではなく、さらに犠牲者が増えたり、霊能力者を信奉していた人たちを絶望させてしまったりと、ハッピーエンドで終わる話は非常に少ない。しかし、山田と上田や矢部刑事たちのコミカルな会話を通して事件を解決していくことで、どうにか視聴者に重い雰囲気を引きずらせないように作られている。かつて大ヒットした要因はこのギャグとシリアスのバランスとコントラスト故であると考える。
トリックを見破ることは得意だが教養が無い山田と、頭脳と戦闘力を持っているが臆病で視野が狭い上田のバディとしての完成度の高さも、この作品の魅力の一つである。先述したようにシリアスな空気を緩和できるコミカルな二人のやり取りはもちろん、この二人はお互いがお互いの能力を補完し合っているため、キャラが中々ストーリーを動かさないことによる視聴者のストレスが少ない状態で楽しむことができる。どちらかが何かしらの出来事で使い物にならない時は、もう一方がしっかりと活躍してストーリーを動かせるようになっており、非常に使い勝手の良いバディとなっている。この二人さえ揃っていればいくらでも続編を作ることが可能であり、さらにこの二人に関する事前に知っておくべき設定なども少ないため、シリーズが続いても敷居が低く、長く広い世代に愛される所以であると考える。
4 ヴァチカンのエクソシスト(映画)監督:ジュリアス・エイヴァリー
【概要】
1987年7月――サン・セバスチャン修道院。
アモルト神父はローマ教皇から直接依頼を受け、憑依されたある少年の《悪魔祓い》(エクソシズム)に向かう――。変わり果てた姿。絶対に知りえないアモルト自身の過去を話す少年を見て、これは病気ではなく“悪魔”の仕業だと確信。若き相棒のトマース神父とともに本格的な調査に乗り出したアモルトは、ある古い記録に辿り着く。中世ヨーロッパでカトリック教会が異端者の摘発と処罰のために行っていた宗教裁判。その修道院の地下に眠る邪悪な魂――。
全てが一つに繋がった時、ヴァチカンの命運を握る、凄惨なエクソシズムが始まる――
【考察】
ベテランエクソシストと新米司祭が協力して強力な悪魔を倒す、バディ物としてもエンタメ映画としても完成度の高い作品だった。悪魔とエクソシストというわかりやすい対立構造と、悪魔を倒すために二人の司祭が自身の罪を受け入れて成長するという王道の展開がクオリティの高いCGで見応えのあるものになっていた。しかし、キリスト教が過去に犯した罪を悪魔のせいであるとして、その悪魔を祓うことで解決したようにしてしまうことは、エンタメ映画であるということを差し引いても、あまり誠実ではないと考える。
5 ミーガン(映画)監督:ジェラルド・ジョンストン
【概要】
おもちゃ会社で優秀な研究者として働くジェマは、人間のようなAI人形「M3GAN(ミーガン)」の開発を行っている。ある日、交通事故によって両親を失い、孤児となってしまった姪のケイディを引き取ることになったジェマは、子どもにとっては最高の友だちに、親にとっては最大の協力者となるようにプログラムされたミーガンに対し、あらゆる出来事からケイディを守るように指示を出す。だがその行動がやがて、想像を絶する事態を引き起こす。
【考察】
人工知能が段々と自我を獲得していき、人のために行動していたものが最終的には自分のために行動し始めるまでが、ジャンプスケアを多用せずに、演出でゾワっとするような恐怖を見ている者に植え付けるようなつくりだった。
ミーガンが最後に逆らえないはずの少女に手をあげたシーンは、私はそこでミーガンはロボットから「人間」になったのだと考える。映画の中盤にて、ミーガンが死について思考するシーンがあり、ミーガンはその思考を経て、自身の死を意識し、死にたくないと思ってしまった。それゆえに、主人となるユーザーを少女から自身へと書き換え、自分が生きる上で障害となる人物を殺して回るという行為をするに至ったのだ。また、ミーガンが作中で殺めてきたものたちは、全てミーガンに危害を加えたものであるということから、初めからミーガンは自身の安全を最優先に行動していたとも考えることができる。
6 ウェンズデー(ドラマ)監督:ティム・バートン
【概要】
「アダムス・ファミリー」に登場する長女ウェンズデーが主人公のNetflixオリジナルドラマ。ティム・バートンが監督・制作総指揮を担当した。奇妙な寄宿学校、ネヴァーモア学園でウェンズデーが一族にまつわる超常現象や殺人事件に巻き込まれていく推理ミステリー。
【考察】
スピンオフのような作品ではあるが、アダムスファミリーについての知識が視聴するにあたって必要になるわけではなく、むしろ初めて触れる人が他のシリーズにも興味を持てるような内容の作品だった。
アダムスファミリーのようなコメディとホラーが融合したようなものではなく、それぞれ特別な能力を持った“のけ者”と呼ばれる種族の青春ミステリー作品だった。主人公のウェンズデーが徐々に学園に馴染んでいく過程は日本の学園モノの漫画やアニメの構成にとても近く、日本人の方がむしろ楽しみやすいものになっていたと考える。
ホラー映画では本来得体の知れない恐怖演出となるものが、全て“そういう能力”であるという理由がつけられてしまったため、ホラー作品としての魅力が完全に無くなってしまったが、それ故にミステリーのタネに幅ができ、視聴者が全く予想できない展開を作り出すことができていた。また、世間とは隔絶した世界に住んでいるように見えていたキャラクターたちが、警察に捕まったりカウンセリングを受けたりしているシーンは、現実世界とキャラクターの格好とのアンバランスさがむしろ笑いを誘うギャグシーンのように楽しむことができた。
7 機動戦士ガンダム GQuuuuuuX(アニメ)監督:鶴巻和哉
【概要】
スペース・コロニーに住む女子高生アマテは、偶然運び屋のニャアンと出会い、非合法なジャンク屋に関わってしまう。正体不明のモビルスーツ 赤いガンダムを捕縛しようとする軍警察の横暴を許せないアマテは、目の前に横たわる最新鋭モビルスーツ ジークアクスに飛び乗る。
【考察】
ファンの間では不可侵の聖域のようになっていた初代ガンダムシリーズを大胆に作り変え、パラレルワールドとして物語を進めていた。これまでに無い発想で原型が無いほどに展開が変わっているが、キャラクターデザインや声優を一新することで、あくまで別の物語であることを強調し、視聴者、特に初代ガンダムファンにとって受け入れられやすいように作られていたと考える。
8 サンダーボルツ(映画)監督:ジェイク・シュライアー
【概要】
〈サンダーボルツ*〉よ、集結せよ——アベンジャーズに代わって世界を救え!人類消滅の危機…アベンジャーズ全員を合わせた以上のパワーを持つセントリーの襲来で、ニューヨークは闇にのまれ、人々が影だけ残して消されていく。この危機を阻止するため集められたのは、〈超クセ強な無法者〉たち!?「最強でも、ヒーローでもない—でも、やるしかない!」ヒーローになれなかった奴らの人生逆転をかけた【敗者復活戦】が始まる!型破りなマーベルの新チーム“*ニュー・アベンジャーズ”誕生を見届けろ!
【考察】
これまでのマーベル映画で敵としてヒーローに立ちはだかったキャラクターたちが、ヒーローとして再起する作品だった。物語全体を通して“やり直す”ことをテーマとして扱っており、ヴィランとして犯した過ちと向き合いやり直すこと、また、エレーナとアレクセイの血の繋がっていない親子関係を新たにやり直すことなど、それぞれのキャラクターの抱える問題を浮き彫りにした上で、最終的にチームでそれらを乗り越えるという構成だった。
ヒーローチームの不在により勢いが無くなっていたマーベルシリーズにとって、新たなスタートを切る作品としての役割があると考える。しかし、メインのキャラクターは過去作品に登場した敵となっているため、視聴者が過去作を全て知っている前提で話が進むため、初めてマーベル作品に触れる人には若干のハードルの高い作品となっている。
9 ファンタスティックフォー(映画)監督:マット・シャクマン
【概要】
宇宙ミッション中の事故で特殊能力を得た4人のヒーロー・チームは、その力と正義感で人々を救い、“ファンタスティック4”と呼ばれている。 世界中で愛され、強い絆で結ばれた彼ら“家族”には、間もなく“新たな命”も加わろうとしていた。 しかし、チームリーダーで天才科学者リードのある行動がきっかけで、惑星を食い尽くす規格外の敵”宇宙神ギャラクタス”の脅威が地球に迫る! 滅亡へのカウントダウンが進む中、一人の人間としての葛藤を抱えながらも、彼らはヒーローとして立ち向かう。 いま、全人類の運命は、この4人に託された——。
【考察】
今まで存在する過去作品が膨大すぎることから敬遠されることがマーベル作品の弱点だったが、この作品は要求される事前知識が全く必要のない、まさしく新世代のマーベル作品と言えるものだった。四人のヒーローが家族として一緒に暮らしている様子はホームドラマのような作りになっており、敵と戦うアクションシーンとは違う魅力があった。また、ヒーローたちが能力を得たきっかけや現在の世界での立ち位置などをダイジェストで初めに流しておくことで、その後の展開にしっかりと時間を使うことができていた。
家族がテーマとなっているため、古き良き家族の形が描かれており、とても懐かしく感じた。特に子を産み、母となった女性の強さがこれでもかと描かれていて、昨今ハリウッドなどで多く登場する“強い女性”とは違い、強いことに納得感がありつつ、強さが世界をまとめ上げるカリスマや敵を追い詰める強さに繋がっており、今の時代の流れから少し外れつつも古臭さを感じさせない描写となっていた。
10 恋する寄生虫(小説)作者:三秋縋
【概要】
失業中の青年・高坂賢吾と不登校の少女・佐薙ひじり。一見何もかもが噛み合わない二人は、社会復帰に向けてリハビリを共に行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる。しかし、幸福な日々はそう長くは続かなかった。彼らは知らずにいた。二人の恋が、<虫>によってもたらされた「操り人形の恋」に過ぎないことを……。
【考察】
設定の斬新さはありながらも、主な魅力はキャラ同士のかけ合いとなっており、三秋縋から生まれたキャラクターであることははっきりとわかるにもかかわらず、しっかりと口調や価値観などでそれぞれのキャラが立っていた。主人公とヒロインがお互いに惹かれ合う過程がとても丁寧に描かれており、だからこそ中盤で真相が明かされた際に読者と主人公の思考が一致し、より感情移入することができるつくりになっていた。作中には合理よりも感情を優先するキャラが多く、しかし先述したようにこの作品はキャラへの感情移入がとてもしやすいつくりになっているので、読者を俯瞰した位置からキャラの視点まで引きずり込み、読者の中でノイズが生まれることを防いでいると考える。
ただ、読み進めるうちに寄生虫の設定が描きたい展開のためのものであると読者が分かってしまい、斬新な設定に惹かれて読み始めた者にとっては肩透かしを食らったように感じてしまうと考える。しかし、斬新な設定と世界観で等身大の男女の出会いと別れを描くのが三秋縋作品の魅力であるので、三秋にはそのままでいて欲しい。
11 るろうに剣心 the final(映画)監督:大友啓史
【概要】
日本転覆を企てた志々雄真実との死闘を終えた剣心たちは、神谷道場で平穏な日々を送っていた。そんなある日、何者かが東京中心部を相次いで攻撃。やがて剣心は、ある理由から剣心に強烈な恨みを持つ上海の武器商人・縁との戦いに身を投じていく。キャストには緋村剣心役の佐藤健、神谷薫役の武井咲、相楽左之助役の青木崇高、高荷恵役の蒼井優、斎藤一役の江口洋介らおなじみの俳優陣が再結集。新たなメンバーとして、シリーズ史上最恐の敵となる縁役を新田真剣佑、かつての剣心の妻で、剣心が不殺の誓いを立てる理由となった女性・雪代巴役を有村架純がそれぞれ演じる。
【考察】
戦いの規模や危機感などは前作よりも下がっているが、その分アクションシーンのクオリティは前作から経った年数の分だけ上がっているため、見ている内にそれが気になることは無いようになっている。るろうに剣心のアクションの醍醐味である多対一の戦闘だけでなく、一対一の戦闘も、前作を超えるレベルに仕上げられており、総決算として相応しい出来であったと考える。
敵である縁を演じる新真剣佑の演技が素晴らしく、マフィアのボスとしての底知れなさ、悪辣さと、一人の姉を想う弟としての幼さという正反対の性質を別人ではなく同一人物として演じ切ることができていた。初めはバランス良く保たれていたその性質が、戦闘が長引くごとにバランスが崩れ、ぐちゃぐちゃに混ざっていく様が描かれ、視聴者側は縁を敵ではなく遺された可哀想な弟として認識してしまうような作りとなっていた。
12 来る(映画)監督:中島哲也
【概要】
恋人の香奈との結婚式を終え、幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に謎の来訪者が現れ、取り次いだ後輩に「知紗さんの件で」との伝言を残していく。知紗とは妊娠した香奈が名づけたばかりの娘の名前で、来訪者がその名を知っていたことに、秀樹は戦慄を覚える。そして来訪者が誰かわからぬまま、取り次いだ後輩が謎の死を遂げる。それから2年、秀樹の周囲で不可解な出来事が次々と起こり、不安になった秀樹は知人から強い霊感を持つ真琴を紹介してもらう。得体の知れぬ強大な力を感じた真琴は、迫り来る謎の存在にカタをつけるため、国内一の霊媒師で真琴の姉・琴子をはじめ、全国から猛者たちを次々と召集するが……。
【考察】
前半の完成度の高いホラー演出から、一気に霊能力者バトルに変わっていく様がとても爽快で、エンタメ映画として非常に満足度の高いものとなっていた。霊能力者たちのキャラが、すぐに出番が無くなる者であってもしっかりと立てられており、少ない出番でも視聴者に強烈なインパクトを残せられるようになっていた。
13 ゴールデンカムイ(ドラマ)監督:久保茂昭
【概要】
明治末期の北海道。日露戦争を生き抜いた元軍人・杉元(山﨑賢人)は、アイヌの少女・アシ(リ)パ(山田杏奈)、網走監獄の脱獄囚・白石(矢本悠馬)とともに、金塊のありかを示す暗号を彫られた24人の“刺青囚人”を探していた。だが、「第七師団」を率いる鶴見(玉木宏)や尾形(眞栄田郷敦)、元新撰組「鬼の副長」こと土方(舘ひろし)も囚人たちを狙う。杉元たちは旅路で、アシ(リ)パの父の古き友のキロランケ(池内博之)、アイヌの女 ・インカ(ラ)マッ(高橋メアリージュン)、「札幌世界ホテル」の女将(おかみ)の家永(桜井ユキ)、元ヤクザの若衆の夏太郎(塩野瑛久)など、腹の中が読めない者たちと出会う。
さらには、鶴見の忠臣・鯉登(中川大志)、網走監獄典獄の犬童(北村一輝)、伝説的な熊撃ち、“煌めき”を追い求める男、ヤクザの親分、天才剝製職人、詐欺師などクセ者たちが次々に現われる!波乱の金塊争奪戦が幕を開ける!
【考察】
ただ原作を再現するだけでなく、漫画と実写の媒体の違いを活かし、実写ならではのアクションと演出が多く使われていた。中盤にて谷垣が旅立ちを決意するシーンでは、漫画には無かった朝日が差し込む演出を採用し、画としての見応えを増し、谷垣の心情をよく描写することができていた。
原作でよく語られているギャグシーンは、漫画の誇張表現をそのまま再現することはせず、あくまでそれがメインにはならないような工夫がされていたように感じた。
14 九龍ジェネリックロマンス(アニメ)監督:岩崎良明
【概要】
人々の活気とどこか懐かしい空気に溢れる街・九龍城砦で鯨井令子は、不動産会社 “旺来地産” に勤めている。先輩の工藤発は遅刻の常習犯にして何事にも大雑把な性格だが、九龍の街をこよなく愛している。
ある日、九龍から懐かしさは特に感じないと言う令子に、その魅力を伝えるため街に連れ出した工藤。最後にたどり着いた「金魚茶館」という工藤行きつけの不思議な喫茶店で、令子は店員のグエンに工藤の恋人と間違われる。人々の活気とどこか懐かしい空気に溢れる街・九龍城砦くーろんじょうさいで鯨井令子は、不動産会社 “旺来地産” に勤めている。先輩の工藤発は遅刻の常習犯にして何事にも大雑把な性格だが、九龍の街をこよなく愛している。
ある日、九龍から懐かしさは特に感じないと言う令子に、その魅力を伝えるため街に連れ出した工藤。最後にたどり着いた「金魚茶館」という工藤行きつけの不思議な喫茶店で、令子は店員のグエンに工藤の恋人と間違われる。
【考察】
実際に存在する九龍城塞を舞台にしており、背景はかなり現実と近いものになっており、制作のこだわりを感じさせるものとなっていた。また、九龍で暮らす人々も止め画だけでなくしっかりと描写することで、緻密な背景も合わせて物語への没入を促す役割を担っていた。まず、再現された九龍が舞台で主人公が死んだ人間のコピーであるという設定が斬新で、先の展開を予想させず、視聴者を飽きさせないようになっていた。
アニメの放送期間が終わった直後に実写映画を公開するというマーケティングも、今までにないもので興味を引くようになっていた。しかし、アニメの視聴者がそのまま実写映画を見てくれるとは少し考え難く、このマーケティングが正しいものであるとは現状では言えないと考える。
15 パンティ&ストッキングwithガーターベルト(アニメ)監督:今石洋之
【概要】
神と悪魔の狭間の街、ダテンシティ。
今日も人知れず恐ろしい悪霊<ゴースト>たちが街を蝕む。
そんな時、人々の欲望や怨念の魂たる悪霊<ゴースト>を、人知の及ばぬ光をもって消し去る者達がいた。
その名は、天使 パンティ&ストッキング!!
地上に蔓延る闇を祓う使命を託された堕天使姉妹。
その正体は果たして神の使いか…悪魔の僕しもべか…。
【考察】
海外のカートゥーンのような絵柄のキャラがどぎつい下ネタを叫ぶというギャップが見ていて面白く、所々に挟まれる様々な作品のオマージュがカオスさを呼び、この作品でしか味わえない魅力が生まれていた。1期では全体的に品がない下ネタが多く、視聴者を選ぶものとなっていたが、振り切った下ネタが作品特有の魅力となり15年経っても2期を望むファンが多くいたことの理由の一つとなった。
2期からは下ネタもさらに下品になり、さらに毎話必ずオマージュが差し込まれるようになり、そのオマージュも有名なものから日本人がほとんど知らないものまで様々なバリエーションがあり、さらに登場キャラも増えたため、見応えという意味では1期から大幅に進化したものであると言える。
16 無職転生 ~異世界行ったら本気だす~(アニメ)監督:岡本学
【概要】
34歳・童貞・無職の引きこもりだった男は車に撥ねられ、その一生を終える……はずだった。しかし、男が次に目を覚ましたとき、そこは剣と魔法の異世界であった。少年・ルーデウスとして転生した男は考える、この世界ならば、自分も本気で生きていくことができるかもしれない……と。
【考察】
転生もののテンプレをなぞりながらも、転生してからの人生を丁寧に描いているため、視聴者が主人公を成人男性としてではなくその世界の子供として認識するようになり、子供の中身が中年男性であることへの嫌悪感をあまり抱かせないつくりになっていたと考える。全体を通して“家族”をテーマにしており、転生者として異世界の住人としての自覚が薄かった主人公が、家族との交流を経てその自覚を持つまでを描いており、中世ヨーロッパに近い世界観であるがゆえに、家族との繋がりを重視するある意味前時代的な物語でも違和感なく展開できている。
また、アニメではそれぞれの種族で独自の言語を使用していることを表現するために一から言葉を作っており、異世界としてのリアリティが出ると同時に、主人公が日本語を話すシーンではそれを上手く活かした演出をしていた。
幼少期から青年期までを丁寧に描いているため、主人公へ感情移入しやすくなる作りとなっていた。
17 負けヒロインが多すぎる!(アニメ)監督:北村翔太郎
【概要】
ライトノベル好きの達観系ぼっち・温水和彦は、ある日偶然クラスの人気女子・八奈見杏菜が幼馴染の男子生徒に振られている現場を目撃してしまい、その後立て続けに、陸上部の焼塩檸檬、文芸部の小鞠知花という負け感漂う女子たちと関わりを持つようになる。
負けヒロイン――マケインたちになぜか絡まれる温水の謎の青春が、ここに幕を開ける!
【考察】
負けヒロインという立ち位置をコメディチックに描きながらも、キャラクターが失恋と向き合い、新たに前を向くまでの過程はしっかりと真面目に描くため、メリハリのきいたつくりになっている。アニメの範囲では主人公は傍観者の立ち位置を貫いており、主人公と視聴者の視点が一致し、視聴者の気持ちを代弁するという役割も持っていると考える。
18 ダンジョン飯(アニメ)監督:宮島善博
【概要】
ダンジョン深奥で、レッドドラゴンに妹が喰われた! 命からがら地上へ生還した冒険者のライオス。 再びダンジョンへ挑もうとするも、お金や食糧は迷宮の奥底……。 妹が消化されてしまうかもしれない危機的な状況の中、ライオスは決意する。
「食糧は、迷宮内で自給自足する!」 スライム、バジリスク、ミミック、そしてドラゴン! 襲い来る魔物たちを食べながらダンジョン踏破を目指せ、冒険者よ!
【考察】
常に食べることをテーマにしており、西洋風の世界観で日本的な「食」の価値観が掲示されることによるアンバランスさがあると初めは感じたが、すぐに気にならなくなるほど作品の雰囲気に馴染んでいた。
細かな設定がとても練られており、その世界の言語や魔法などにおいて、通常では考えないようなところまで設定があり、その上で作中で細かな設定をひけらかすようなシーンが無いことによって、設定がそのまま作品のリアリティの向上に繋がっている。
19 うずまき(アニメ)監督:長濱博史
【概要】
女子高生の五島桐絵と恋人の斉藤秀一が暮らす町が、異様なうずまきに汚染され始める。町の誰もがうずまきの呪いに侵されるなか、桐絵と秀一は果てしない恐怖と絶望にのみ込まれてゆく。
【考察】
「うずまき」をテーマに一つの町を舞台にして一話完結形式で物語が進められていく。どんな怪奇現象が起きても舞台となっている町そのものが崩壊することは無かったが、物語が進むごとに町にも被害が及ぶことが多くなり、次第に怪奇現象が一つの災害となって町を襲うことになる。話のスケールがどんどん大きくなっていき、最後にはジャンルがホラーから変わってしまっているように感じたが、最後まで「うずまき」が何なのか視聴者には明かされず、正体不明の恐怖がずっと続いているため、ホラーという軸から逸脱してはいなかったと考える。
20 マン・オブ・スティール(映画)監督:ザック・スナイダー
【概要】
無敵の能力を備えながらも、それゆえに苦悩して育った青年クラーク・ケントが、いかにしてスーパーマンとして立ち上がったのか、これまで描かれてこなかったスーパーマン誕生の物語を描く。
【考察】
ヒーローとしてのスーパーマンと言うよりは、圧倒的強さを持った“最強”としてのスーパーマンを描いた作品だった。スーパーマンのルーツを初めに掲示しつつ、彼がどういう思いで地球で育ったのかは中盤まで明確にしないことで、スーパーマンの真意が気になるつくりになっている。
クリプトン星人との戦いで街を破壊しまくるシーンは迫力満点で緊迫感あふれるシーンであると同時に、視聴者がスーパーマンの強すぎる力を恐れてしまい、作中のアメリカ国民と同じ気持ちになるようになっている。そしてこのつくりが次作以降の展開へと繋がっていくため、DCUの始まりに位置する作品として非常に完成度の高いものとなっている。
21 寄生獣 ザ・グレイ(ドラマ)監督:岩明均
【概要】
人間を宿主として寄生し、全身を支配しようとする正体不明の寄生生物が人間社会に混乱をもたらし始めたこの邪悪な存在の台頭を阻止すべく立ち上がる人間と寄生生物の戦いを描く SF スリラー。
【考察】
原作のテーマである「寄り添い生きる獣」という意味での寄生獣というものは全体を通して一貫しているように感じたが、主人公に寄生した寄生生物があまりにも初めから主人公に対して友好的すぎるように思えた。そのため原作にあった寄生生物と宿主の人間との交流によって生まれるドラマが無く、人間と寄生生物の戦いを描くモンスターパニックアクション作品としての魅力が主だったと考える。
カメラワークやCGが現代の最新技術を駆使したものとなっており、とても見応えのあるものとなっていた。特にドローンを使用したカーチェイスシーンのカメラワークは疾走感あふれるシーンもなっていて、主な戦闘シーンがCGメインであったことが惜しく思えるほどだった。
22 CITY(アニメ)監督:石立太一
【概要】
実況は黒部五郎がお伝えします。
何かが芽吹いて参りました、ここCITY。
誰が信じましょう! まさかのカバンに固焼きそばがダイビング!!
まつりとえっちゃんの大冒険! 楽しいが渋滞しております。
鬼カマボコ、ネタの代わりに出てきたのは涙だー!!
とかく前代未聞! それがCITY!
【考察】
タイトルの通り、一つの町に住む人々の生活を描いたコメディ作品だった。原作者のあらゐけいいちの代表作である『日常』のエッセンスを感じながらも、スポットライトがより広く多くの人物に当たるようになっており、また当時より作画も進化しており、京都アニメーションにおける『日常』の正統進化と言える作品だった。
多くの人物に焦点を当てながらも、メインとなる三人のパーソナリティはしっかりと描き、視聴者に愛着を持たせられるようにつくられており、また、その他の登場人物も少ない出番で強烈な印象を残すキャラであったり、何度もギャグを繰り返す「天丼」を駆使したりなどで、より多くのキャラを視聴者に覚えてもらえる取り組みがされていた。
23 銀河特急ミルキーサブウェイ(アニメ)監督:亀山陽平
【概要】
銀河道路交通法違反で逮捕された強化人間の
チハルとサイボーグのマキナ。
同じタイミングで警察に捕まった、強化人間のアカネとカナタ、サイボーグのカートとマックスらクセのあるコンビを集め、警察官・リョーコが全員に課したのは、奉仕活動として惑星間走行列車・通称”ミルキー☆サブウェイ”の清掃をすること。
簡単な任務だったはずが、突如暴走し始める”ミルキー☆サブウェイ”!
車内で慌てふためくメンバーたちは、やがて大事件に巻き込まれていってしまう!
【考察】
CGが他にない独特な味を出しており、不気味の谷現象などによる視聴前のハードルの高さなど、CGアニメーションで発生する問題が発生しづらくなっているように感じた。キャラクターの動きや表情がとても自然で、アニメーションではなく実写の映像を見ているような気にさせるほどであり、また、声優の演技も実際の日常会話になるべく近づけた自然なものとなっているため、SFという世界観でありながらも、リアリティのある空気感が生まれていた。
24 メイドインアビス(アニメ)監督:小島正幸
【概要】
巨大な大穴『アビス』の縁に築かれた街、『オース』で暮らす探窟家見習いの少女・リコ。ある日、探窟中に孤児院の仲間の少年・ナットが巨大な蛇状の生物「ベニクチナワ」に襲われているところに遭遇する。とっさの機転で注意を逸らしたリコだったが、今度は自分がベニクチナワに襲われてしまう。絶体絶命のその瞬間、突然辺りが閃光と轟音に包まれて・・・。
【考察】
メインとなる登場人物たちが、一度入れば戻って来られないかもしれないアビスに潜ることへの葛藤が全く無く、まだ見ぬ冒険への浪漫を全面に出しているため、視聴者も命の危険などはあまり気にせず同じ気持ちで視聴することができた。ただ、アビスへ潜ってからは主人公の女児がかなりの頻度で酷い目に遭わされるため、アビスを甘く見ていた主人公と同様に視聴者にもアビスの厳しさを思い知らせられるつくりになっていた。そのような目に遭わされても、先述されたように主人公が冒険を恐れたり諦めようとすることは無く、段々と視聴者が主人公の精神の異常性に気づくようになっている。
また、アビス内の生態系は細かに設定されており、それらに翻弄され、時には利用するやり方でキャラの個性が演出されている。アビスに初めて入った主人公と視聴者の視点が重なり、物語が進むごとに先の景色が気になるようになっている。
25 メダリスト(アニメ)監督:山本靖貴
【概要】
スケーターとして挫折した⻘年・明浦路司が出会ったのは、フィギュアスケートの世界に 憧れを抱く少⼥・結束いのり。
リンクへの執念を秘めたいのりに突き動かされ、司は⾃らコーチを引き受ける。
才能を開花させていくいのりと、指導者として成⻑していく司。
タッグを組んだ⼆⼈は栄光の“メダリスト”を⽬指す−−−!
【考察】
躍動感や迫力あふれる見開きや表情などで魅せていた原作から、演出面では多くの変更があった。演技シーンでは実際のプロスケーターの動きをモーションキャプチャで取り入れているため、映像作品ならではの魅力が生まれている。また、その結果、演技中のキャラのセリフなども削られ、表情や息づかいでその時の感情を表現する演出となっていた。その他にも、原作が月刊誌での連載であり、アニメが1クールしかないという問題から、話の構成も変更が加えられており、原作とアニメではほぼ別作品と言っていいほどとなっていた。しかし、原作にあった夢を追う少年少女とコーチたちの熱い様などはそのままにアニメに落とし込んでいるため、作品の軸となる部分は変わらないままにできていたと考える。
26 パシフィック・リム(映画)監督:ギレルモ・デル・トロ
【概要】
13年に突如、太平洋の深海から巨大生命体が出現し、世界中の大都市は次々と破壊され、人類は絶滅の危機にさらされる。そこで人類は巨大生命体と戦うために英知を結集し、人型巨大兵器“イェーガー”を開発。一時は巨大生命体の侵攻を食い止める事に成功するが、再び彼らの猛威にさらされる事に。
【考察】
初めにダイジェスト方式で作品の世界観を説明していたが、怪獣と巨大ロボのバトル、またそのロボの設定もかなり複雑という非現実的な題材であるにもかかわらず、クオリティの高いCGによってリアリティが増しており、視聴者はすんなりと設定を受け入れることができるようになっていた。また、その説明パートで主人公の過去を同時に開示するため、現代のパートに尺を存分に使うことができていた。
敵となる怪獣を意思のない化け物とすることによって、メインとなる主人公二人の掘り下げが十分に行われており、感情移入が容易となっていた。また、サブキャラの掘り下げはあまり行われていなかったが、その分佇まいや使っているロボの見た目や性能でどのような性格なのかある程度予想できるようになっており、画面上に写っているもの全てを活用してキャラの掘り下げをしていたと考える。
27 デッドマウント・デスプレイ(漫画)原作:成田良悟
【概要】
はるか遠い異世界――世界を救うため、「災厄潰し」と呼ばれる英雄シャグルアは希代の死霊使い(ネクロマンサー)「屍神殿」に立ち向かう。
熾烈な戦いの末にシャグルアが屍神殿を打倒したかに見えたその時、魔術が発動し周囲は光に包まれる。
その瞬間、魂は遠い異世界へ転移し現代の新宿で「四乃山ポルカ」という少年の体で目覚めていた。
喉を切り裂かれ、殺害されたばかりの体で新宿の街をさまよっていた彼は、一人の少女に救われる。
崎宮ミサキと名乗ったその少女と対峙しているうちにポルカの記憶が徐々に蘇ってくる。
四乃山ポルカを殺害したのは目の前の少女、「崎宮ミサキ」だった。
再びポルカを殺そうと、彼女は襲いかかってくる。
【考察】
まず異世界の住人が日本の新宿に転生するというアイデアが斬新で目を引くものとなっており、またそれが単なる出オチで終わらず、しっかりとその後の展開に深く関わってくるようになっている。異世界の住人だからといって新宿でいわゆる無双をするというわけではなく、新宿の住人たちがパワーバランスとしては上で、主人公は彼らがしらない魔法を使うことで対等になっているという状況で、それも斬新な設定となっている。
登場人物がとても多く、ジャンルは群像劇と言えるのだが、各キャラのデザインや性格が個性的なので、名前を覚えられなくても展開についていくことができるようにつくられていた。
28 ヴァニタスの手記(漫画)作者:望月淳
【概要】
吸血鬼(ヴァンピール)の青年 ノエは師から頼まれ、吸血鬼に呪いを振り撒くという魔導書“ヴァニタスの書”を探しにパリへ向かっていた。
パリへ向かう飛空船の中で、ある事件に巻き込まれたノエは、吸血鬼の専門医を自称する人間 青い瞳の青年ヴァニタスと出会う。
【考察】
メインのヴァニタスとノエがバディとしてひとまず形におさまるまで相当な時間を使っており、これは初めにメイン二人の行動原理をはっきりさせておくことで、その後の群像劇へと移行する際に、話を展開させやすいようにするためと、より多くのキャラに尺を使えるようにするためであると考える。
人間と吸血鬼という二つの種族の物語であるため、人間から吸血鬼への差別などが初めは描かれるが、物語が進んでいくにつれて吸血鬼の間にも差別が存在することがわかり、被差別種族の中にもさらに被差別種族が存在するという、リアルな展開となっている。また、作中で人格者とされているキャラも自然と差別を行うなど、差別描写に関してはとてもリアリティのある描写がされている。
29 君が死ぬまであと100日(漫画)作者:右腹
【概要】
津田林太郎は一見普通の高校生。彼は幼稚園の頃からの幼なじみ・神崎うみに片想い中。何度告白しても、うまく伝わらなかった想い…しかし!人生4度目の告白で、やっと彼女からOKが!長年の恋がついに実った、その瞬間…彼の普通ではない能力が発動してしまう。「…うみ。余命が見える。」100日限定で生きものが死ぬまでの余命が、林太郎には見えてしまうのだ。長年の恋が実った瞬間から、愛しい彼女の余命のカウントダウンが始まってしまった。
【考察】
タイトルにもある通りのわかりやすいテーマがあり、終盤まで一貫して寄り道することなく100日を超えることを目標としているため、とてもわかりやすく読みやすいようにまとまった物語となっている。ただ、終盤からなぜか林太郎が記憶喪失になり、うみが記憶を取り戻させるために奔走するというパートになり、お互いがお互いを助け合うことで二人が対等な関係であることの表現であると考えられるが、うみの寿命を延ばすパートに比べて、林太郎の記憶を取り戻すパートは少々短く、運命に抗うことをテーマにしているならば、もう少し尺を使って劇的に描くべきだったと考える。
キャラ同士のかけあい、特にワードチョイスが独特で、この作品特有の魅力であると考える。基本的にゆるめの絵柄だが、キャラが感情を吐露するシーンでは細かな表情が描かれており、キャラの感情が直に伝わるようになっている。
30 夢と魔法の国のリドル(小説)作者:七河迦南
【概要】
楽しい遊園地デートになるはずだった杏那と優。しかし二人は突如別々の世界に引き裂かれた。杏那は異世界を魔王から救う役目を担わされ、残された優は遊園地で起きた密室殺人事件の謎を解く羽目に……。現実と夢の国、二つの密室、パズルと魔法の謎を解き、二人は再会できるのか? 紙とペンを用意して読んでも必ず欺される、異色の新感覚本格ミステリ。
【考察】
作中に登場する謎が絵として載せられており、読者も一緒に謎解きに挑戦することができた。自分で答えが分からなくても、読み進めれば解説してくれるので不都合がある訳ではなく、謎解きが得意な人も不得意な人も楽しめる作品となっていた。
現実と異世界の両方で同時に物語が進められるが、分かりづらさや冗長さは全く無く、読みやすい文章でありつつ、先が気になるようにつくられていた。また、主人公の性格が初めから完成しており、未熟さから発生する問題などが無く、物語としても読者としても、謎解きに集中することができていた。
1 小市民シリーズ(アニメ)監督:神戸守
【概要】
平穏で慎ましい小市民を目指すという約束をした小鳩常悟朗と小佐内ゆきは、無事同じ高校に入学した。ところが、小佐内からいちごタルトを買いに行こうと誘われた四月のある日、小鳩は校内で盗まれたというポシェットの捜索に駆り出されてしまう。いきなり事件に遭遇した小鳩たちは、穏やかな放課後を過ごせるのだろうか。
【考察】
BGMを多用せず、環境音や会話だけで構成されているシーンが多く、キャラクターの生活や会話に自然と目が行くように作られていた。また、主人公の小鳩が推理を披露したり、重要な会話が挟まれるシーンではキャラが立っている場所ではなく、あえて舞台となっている岐阜市の景色を背景にしたりと、会話内容や表情だけでなく、画面全体を使ってキャラ同士の関係性や心情を表現しており、会話劇がほとんどの構成だったにも関わらず、視聴者が視覚的にも楽しめる工夫が多く仕込まれていた。
2期からは一話完結の構成から、全体を通して事件を追う構成になっており、さらに視聴に没入できるようになっていた。しかし、それもただ事件の謎を解いていくだけではなく、小鳩と小山内のパーソナリティが1期よりも深く理解できるようになっていたり、二人が知り合うきっかけとなった事件を回想で振り返りながら、徐々に過去と現在の事件の繋がりが明らかになるようなつくりとなっていた。これらを経て、二人が出した作中で「小市民になることはできない」という結論に、視聴者も納得できるようになっている。
2 ウマ娘 シンデレラグレイ(アニメ)監督:みうらたけひろ
【概要】
寂れた地方のカサマツトレセン学園。
そこでトレーナーを務める北原穣は、活気を失いつつある地方レースの現状に対してどうにもできない日々を送っていた。
そんなある日、1人のウマ娘と出会う。
芦毛の髪をなびかせて走るその姿を見た時、彼は長年待ちわびていた『スター』が現れたと直感する——。
【考察】
初めはただ走れればそれでいいと思っていた主人公が、地元のライバルや仲間たちなど、様々な人の想いを背負っていった結果、レースに勝ちたいという欲求が生まれるまでが、1期の範囲内では様々な人物の視点で描かれていた。主人公のオグリキャップのシンデレラストーリーであると同時に、同じ時代を生きたウマ娘とトレーナーの群像劇として見ることもできた。
実際の競走馬をモデルにストーリーが作られていることによって、視聴者が現実と重ね合わせて作品を見ることができ、史実を知っているが故に先の展開を予想できる人でも、迫力あるレースの作画と擬人化された競走馬たちのドラマを楽しめるようになっている。特性上、未成年や興味のない人間には触れづらい競馬という競技を、キャッチーに脚色し誰でも気軽に触れられるコンテンツにしたことで、実際に競馬業界にも良い影響が出ていることから、アプリ版と合わせてこのコンテンツは、今後も競馬界にとって重要な立ち位置を持つことになると考える。
3 TRICK(ドラマ)監督:堤幸彦
【概要】
自称天才マジシャン・山田奈緒子と、日本科学技術大学物理学教授・上田次郎コンビが、超常現象や奇怪な事件に隠されたトリックを解決していくミステリードラマ。
【考察】
インチキ霊能力者のトリックを暴き、事件を解決するストーリーではあるが、作中では本物の霊能力が存在する。さらに、シーズン1の終盤に主人公の山田が霊能力者の血を引いている事が明らかになり、シーズン2からは、敵となる霊能力者たちは山田のマジックの腕や推理力には触れず、霊能力者として高く評価する者が増えていき、実際に山田が未来を予知しているようなシーンも差し込まれており、作中で最も霊能力を否定してきた山田が屈指の霊能力を持っているという皮肉な構図が作り出されている。また、トリックを暴いたからといって事態が好転する訳ではなく、さらに犠牲者が増えたり、霊能力者を信奉していた人たちを絶望させてしまったりと、ハッピーエンドで終わる話は非常に少ない。しかし、山田と上田や矢部刑事たちのコミカルな会話を通して事件を解決していくことで、どうにか視聴者に重い雰囲気を引きずらせないように作られている。かつて大ヒットした要因はこのギャグとシリアスのバランスとコントラスト故であると考える。
トリックを見破ることは得意だが教養が無い山田と、頭脳と戦闘力を持っているが臆病で視野が狭い上田のバディとしての完成度の高さも、この作品の魅力の一つである。先述したようにシリアスな空気を緩和できるコミカルな二人のやり取りはもちろん、この二人はお互いがお互いの能力を補完し合っているため、キャラが中々ストーリーを動かさないことによる視聴者のストレスが少ない状態で楽しむことができる。どちらかが何かしらの出来事で使い物にならない時は、もう一方がしっかりと活躍してストーリーを動かせるようになっており、非常に使い勝手の良いバディとなっている。この二人さえ揃っていればいくらでも続編を作ることが可能であり、さらにこの二人に関する事前に知っておくべき設定なども少ないため、シリーズが続いても敷居が低く、長く広い世代に愛される所以であると考える。
4 ヴァチカンのエクソシスト(映画)監督:ジュリアス・エイヴァリー
【概要】
1987年7月――サン・セバスチャン修道院。
アモルト神父はローマ教皇から直接依頼を受け、憑依されたある少年の《悪魔祓い》(エクソシズム)に向かう――。変わり果てた姿。絶対に知りえないアモルト自身の過去を話す少年を見て、これは病気ではなく“悪魔”の仕業だと確信。若き相棒のトマース神父とともに本格的な調査に乗り出したアモルトは、ある古い記録に辿り着く。中世ヨーロッパでカトリック教会が異端者の摘発と処罰のために行っていた宗教裁判。その修道院の地下に眠る邪悪な魂――。
全てが一つに繋がった時、ヴァチカンの命運を握る、凄惨なエクソシズムが始まる――
【考察】
ベテランエクソシストと新米司祭が協力して強力な悪魔を倒す、バディ物としてもエンタメ映画としても完成度の高い作品だった。悪魔とエクソシストというわかりやすい対立構造と、悪魔を倒すために二人の司祭が自身の罪を受け入れて成長するという王道の展開がクオリティの高いCGで見応えのあるものになっていた。しかし、キリスト教が過去に犯した罪を悪魔のせいであるとして、その悪魔を祓うことで解決したようにしてしまうことは、エンタメ映画であるということを差し引いても、あまり誠実ではないと考える。
5 ミーガン(映画)監督:ジェラルド・ジョンストン
【概要】
おもちゃ会社で優秀な研究者として働くジェマは、人間のようなAI人形「M3GAN(ミーガン)」の開発を行っている。ある日、交通事故によって両親を失い、孤児となってしまった姪のケイディを引き取ることになったジェマは、子どもにとっては最高の友だちに、親にとっては最大の協力者となるようにプログラムされたミーガンに対し、あらゆる出来事からケイディを守るように指示を出す。だがその行動がやがて、想像を絶する事態を引き起こす。
【考察】
人工知能が段々と自我を獲得していき、人のために行動していたものが最終的には自分のために行動し始めるまでが、ジャンプスケアを多用せずに、演出でゾワっとするような恐怖を見ている者に植え付けるようなつくりだった。
ミーガンが最後に逆らえないはずの少女に手をあげたシーンは、私はそこでミーガンはロボットから「人間」になったのだと考える。映画の中盤にて、ミーガンが死について思考するシーンがあり、ミーガンはその思考を経て、自身の死を意識し、死にたくないと思ってしまった。それゆえに、主人となるユーザーを少女から自身へと書き換え、自分が生きる上で障害となる人物を殺して回るという行為をするに至ったのだ。また、ミーガンが作中で殺めてきたものたちは、全てミーガンに危害を加えたものであるということから、初めからミーガンは自身の安全を最優先に行動していたとも考えることができる。
6 ウェンズデー(ドラマ)監督:ティム・バートン
【概要】
「アダムス・ファミリー」に登場する長女ウェンズデーが主人公のNetflixオリジナルドラマ。ティム・バートンが監督・制作総指揮を担当した。奇妙な寄宿学校、ネヴァーモア学園でウェンズデーが一族にまつわる超常現象や殺人事件に巻き込まれていく推理ミステリー。
【考察】
スピンオフのような作品ではあるが、アダムスファミリーについての知識が視聴するにあたって必要になるわけではなく、むしろ初めて触れる人が他のシリーズにも興味を持てるような内容の作品だった。
アダムスファミリーのようなコメディとホラーが融合したようなものではなく、それぞれ特別な能力を持った“のけ者”と呼ばれる種族の青春ミステリー作品だった。主人公のウェンズデーが徐々に学園に馴染んでいく過程は日本の学園モノの漫画やアニメの構成にとても近く、日本人の方がむしろ楽しみやすいものになっていたと考える。
ホラー映画では本来得体の知れない恐怖演出となるものが、全て“そういう能力”であるという理由がつけられてしまったため、ホラー作品としての魅力が完全に無くなってしまったが、それ故にミステリーのタネに幅ができ、視聴者が全く予想できない展開を作り出すことができていた。また、世間とは隔絶した世界に住んでいるように見えていたキャラクターたちが、警察に捕まったりカウンセリングを受けたりしているシーンは、現実世界とキャラクターの格好とのアンバランスさがむしろ笑いを誘うギャグシーンのように楽しむことができた。
7 機動戦士ガンダム GQuuuuuuX(アニメ)監督:鶴巻和哉
【概要】
スペース・コロニーに住む女子高生アマテは、偶然運び屋のニャアンと出会い、非合法なジャンク屋に関わってしまう。正体不明のモビルスーツ 赤いガンダムを捕縛しようとする軍警察の横暴を許せないアマテは、目の前に横たわる最新鋭モビルスーツ ジークアクスに飛び乗る。
【考察】
ファンの間では不可侵の聖域のようになっていた初代ガンダムシリーズを大胆に作り変え、パラレルワールドとして物語を進めていた。これまでに無い発想で原型が無いほどに展開が変わっているが、キャラクターデザインや声優を一新することで、あくまで別の物語であることを強調し、視聴者、特に初代ガンダムファンにとって受け入れられやすいように作られていたと考える。
8 サンダーボルツ(映画)監督:ジェイク・シュライアー
【概要】
〈サンダーボルツ*〉よ、集結せよ——アベンジャーズに代わって世界を救え!人類消滅の危機…アベンジャーズ全員を合わせた以上のパワーを持つセントリーの襲来で、ニューヨークは闇にのまれ、人々が影だけ残して消されていく。この危機を阻止するため集められたのは、〈超クセ強な無法者〉たち!?「最強でも、ヒーローでもない—でも、やるしかない!」ヒーローになれなかった奴らの人生逆転をかけた【敗者復活戦】が始まる!型破りなマーベルの新チーム“*ニュー・アベンジャーズ”誕生を見届けろ!
【考察】
これまでのマーベル映画で敵としてヒーローに立ちはだかったキャラクターたちが、ヒーローとして再起する作品だった。物語全体を通して“やり直す”ことをテーマとして扱っており、ヴィランとして犯した過ちと向き合いやり直すこと、また、エレーナとアレクセイの血の繋がっていない親子関係を新たにやり直すことなど、それぞれのキャラクターの抱える問題を浮き彫りにした上で、最終的にチームでそれらを乗り越えるという構成だった。
ヒーローチームの不在により勢いが無くなっていたマーベルシリーズにとって、新たなスタートを切る作品としての役割があると考える。しかし、メインのキャラクターは過去作品に登場した敵となっているため、視聴者が過去作を全て知っている前提で話が進むため、初めてマーベル作品に触れる人には若干のハードルの高い作品となっている。
9 ファンタスティックフォー(映画)監督:マット・シャクマン
【概要】
宇宙ミッション中の事故で特殊能力を得た4人のヒーロー・チームは、その力と正義感で人々を救い、“ファンタスティック4”と呼ばれている。 世界中で愛され、強い絆で結ばれた彼ら“家族”には、間もなく“新たな命”も加わろうとしていた。 しかし、チームリーダーで天才科学者リードのある行動がきっかけで、惑星を食い尽くす規格外の敵”宇宙神ギャラクタス”の脅威が地球に迫る! 滅亡へのカウントダウンが進む中、一人の人間としての葛藤を抱えながらも、彼らはヒーローとして立ち向かう。 いま、全人類の運命は、この4人に託された——。
【考察】
今まで存在する過去作品が膨大すぎることから敬遠されることがマーベル作品の弱点だったが、この作品は要求される事前知識が全く必要のない、まさしく新世代のマーベル作品と言えるものだった。四人のヒーローが家族として一緒に暮らしている様子はホームドラマのような作りになっており、敵と戦うアクションシーンとは違う魅力があった。また、ヒーローたちが能力を得たきっかけや現在の世界での立ち位置などをダイジェストで初めに流しておくことで、その後の展開にしっかりと時間を使うことができていた。
家族がテーマとなっているため、古き良き家族の形が描かれており、とても懐かしく感じた。特に子を産み、母となった女性の強さがこれでもかと描かれていて、昨今ハリウッドなどで多く登場する“強い女性”とは違い、強いことに納得感がありつつ、強さが世界をまとめ上げるカリスマや敵を追い詰める強さに繋がっており、今の時代の流れから少し外れつつも古臭さを感じさせない描写となっていた。
10 恋する寄生虫(小説)作者:三秋縋
【概要】
失業中の青年・高坂賢吾と不登校の少女・佐薙ひじり。一見何もかもが噛み合わない二人は、社会復帰に向けてリハビリを共に行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる。しかし、幸福な日々はそう長くは続かなかった。彼らは知らずにいた。二人の恋が、<虫>によってもたらされた「操り人形の恋」に過ぎないことを……。
【考察】
設定の斬新さはありながらも、主な魅力はキャラ同士のかけ合いとなっており、三秋縋から生まれたキャラクターであることははっきりとわかるにもかかわらず、しっかりと口調や価値観などでそれぞれのキャラが立っていた。主人公とヒロインがお互いに惹かれ合う過程がとても丁寧に描かれており、だからこそ中盤で真相が明かされた際に読者と主人公の思考が一致し、より感情移入することができるつくりになっていた。作中には合理よりも感情を優先するキャラが多く、しかし先述したようにこの作品はキャラへの感情移入がとてもしやすいつくりになっているので、読者を俯瞰した位置からキャラの視点まで引きずり込み、読者の中でノイズが生まれることを防いでいると考える。
ただ、読み進めるうちに寄生虫の設定が描きたい展開のためのものであると読者が分かってしまい、斬新な設定に惹かれて読み始めた者にとっては肩透かしを食らったように感じてしまうと考える。しかし、斬新な設定と世界観で等身大の男女の出会いと別れを描くのが三秋縋作品の魅力であるので、三秋にはそのままでいて欲しい。
11 るろうに剣心 the final(映画)監督:大友啓史
【概要】
日本転覆を企てた志々雄真実との死闘を終えた剣心たちは、神谷道場で平穏な日々を送っていた。そんなある日、何者かが東京中心部を相次いで攻撃。やがて剣心は、ある理由から剣心に強烈な恨みを持つ上海の武器商人・縁との戦いに身を投じていく。キャストには緋村剣心役の佐藤健、神谷薫役の武井咲、相楽左之助役の青木崇高、高荷恵役の蒼井優、斎藤一役の江口洋介らおなじみの俳優陣が再結集。新たなメンバーとして、シリーズ史上最恐の敵となる縁役を新田真剣佑、かつての剣心の妻で、剣心が不殺の誓いを立てる理由となった女性・雪代巴役を有村架純がそれぞれ演じる。
【考察】
戦いの規模や危機感などは前作よりも下がっているが、その分アクションシーンのクオリティは前作から経った年数の分だけ上がっているため、見ている内にそれが気になることは無いようになっている。るろうに剣心のアクションの醍醐味である多対一の戦闘だけでなく、一対一の戦闘も、前作を超えるレベルに仕上げられており、総決算として相応しい出来であったと考える。
敵である縁を演じる新真剣佑の演技が素晴らしく、マフィアのボスとしての底知れなさ、悪辣さと、一人の姉を想う弟としての幼さという正反対の性質を別人ではなく同一人物として演じ切ることができていた。初めはバランス良く保たれていたその性質が、戦闘が長引くごとにバランスが崩れ、ぐちゃぐちゃに混ざっていく様が描かれ、視聴者側は縁を敵ではなく遺された可哀想な弟として認識してしまうような作りとなっていた。
12 来る(映画)監督:中島哲也
【概要】
恋人の香奈との結婚式を終え、幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に謎の来訪者が現れ、取り次いだ後輩に「知紗さんの件で」との伝言を残していく。知紗とは妊娠した香奈が名づけたばかりの娘の名前で、来訪者がその名を知っていたことに、秀樹は戦慄を覚える。そして来訪者が誰かわからぬまま、取り次いだ後輩が謎の死を遂げる。それから2年、秀樹の周囲で不可解な出来事が次々と起こり、不安になった秀樹は知人から強い霊感を持つ真琴を紹介してもらう。得体の知れぬ強大な力を感じた真琴は、迫り来る謎の存在にカタをつけるため、国内一の霊媒師で真琴の姉・琴子をはじめ、全国から猛者たちを次々と召集するが……。
【考察】
前半の完成度の高いホラー演出から、一気に霊能力者バトルに変わっていく様がとても爽快で、エンタメ映画として非常に満足度の高いものとなっていた。霊能力者たちのキャラが、すぐに出番が無くなる者であってもしっかりと立てられており、少ない出番でも視聴者に強烈なインパクトを残せられるようになっていた。
13 ゴールデンカムイ(ドラマ)監督:久保茂昭
【概要】
明治末期の北海道。日露戦争を生き抜いた元軍人・杉元(山﨑賢人)は、アイヌの少女・アシ(リ)パ(山田杏奈)、網走監獄の脱獄囚・白石(矢本悠馬)とともに、金塊のありかを示す暗号を彫られた24人の“刺青囚人”を探していた。だが、「第七師団」を率いる鶴見(玉木宏)や尾形(眞栄田郷敦)、元新撰組「鬼の副長」こと土方(舘ひろし)も囚人たちを狙う。杉元たちは旅路で、アシ(リ)パの父の古き友のキロランケ(池内博之)、アイヌの女 ・インカ(ラ)マッ(高橋メアリージュン)、「札幌世界ホテル」の女将(おかみ)の家永(桜井ユキ)、元ヤクザの若衆の夏太郎(塩野瑛久)など、腹の中が読めない者たちと出会う。
さらには、鶴見の忠臣・鯉登(中川大志)、網走監獄典獄の犬童(北村一輝)、伝説的な熊撃ち、“煌めき”を追い求める男、ヤクザの親分、天才剝製職人、詐欺師などクセ者たちが次々に現われる!波乱の金塊争奪戦が幕を開ける!
【考察】
ただ原作を再現するだけでなく、漫画と実写の媒体の違いを活かし、実写ならではのアクションと演出が多く使われていた。中盤にて谷垣が旅立ちを決意するシーンでは、漫画には無かった朝日が差し込む演出を採用し、画としての見応えを増し、谷垣の心情をよく描写することができていた。
原作でよく語られているギャグシーンは、漫画の誇張表現をそのまま再現することはせず、あくまでそれがメインにはならないような工夫がされていたように感じた。
14 九龍ジェネリックロマンス(アニメ)監督:岩崎良明
【概要】
人々の活気とどこか懐かしい空気に溢れる街・九龍城砦で鯨井令子は、不動産会社 “旺来地産” に勤めている。先輩の工藤発は遅刻の常習犯にして何事にも大雑把な性格だが、九龍の街をこよなく愛している。
ある日、九龍から懐かしさは特に感じないと言う令子に、その魅力を伝えるため街に連れ出した工藤。最後にたどり着いた「金魚茶館」という工藤行きつけの不思議な喫茶店で、令子は店員のグエンに工藤の恋人と間違われる。人々の活気とどこか懐かしい空気に溢れる街・九龍城砦くーろんじょうさいで鯨井令子は、不動産会社 “旺来地産” に勤めている。先輩の工藤発は遅刻の常習犯にして何事にも大雑把な性格だが、九龍の街をこよなく愛している。
ある日、九龍から懐かしさは特に感じないと言う令子に、その魅力を伝えるため街に連れ出した工藤。最後にたどり着いた「金魚茶館」という工藤行きつけの不思議な喫茶店で、令子は店員のグエンに工藤の恋人と間違われる。
【考察】
実際に存在する九龍城塞を舞台にしており、背景はかなり現実と近いものになっており、制作のこだわりを感じさせるものとなっていた。また、九龍で暮らす人々も止め画だけでなくしっかりと描写することで、緻密な背景も合わせて物語への没入を促す役割を担っていた。まず、再現された九龍が舞台で主人公が死んだ人間のコピーであるという設定が斬新で、先の展開を予想させず、視聴者を飽きさせないようになっていた。
アニメの放送期間が終わった直後に実写映画を公開するというマーケティングも、今までにないもので興味を引くようになっていた。しかし、アニメの視聴者がそのまま実写映画を見てくれるとは少し考え難く、このマーケティングが正しいものであるとは現状では言えないと考える。
15 パンティ&ストッキングwithガーターベルト(アニメ)監督:今石洋之
【概要】
神と悪魔の狭間の街、ダテンシティ。
今日も人知れず恐ろしい悪霊<ゴースト>たちが街を蝕む。
そんな時、人々の欲望や怨念の魂たる悪霊<ゴースト>を、人知の及ばぬ光をもって消し去る者達がいた。
その名は、天使 パンティ&ストッキング!!
地上に蔓延る闇を祓う使命を託された堕天使姉妹。
その正体は果たして神の使いか…悪魔の僕しもべか…。
【考察】
海外のカートゥーンのような絵柄のキャラがどぎつい下ネタを叫ぶというギャップが見ていて面白く、所々に挟まれる様々な作品のオマージュがカオスさを呼び、この作品でしか味わえない魅力が生まれていた。1期では全体的に品がない下ネタが多く、視聴者を選ぶものとなっていたが、振り切った下ネタが作品特有の魅力となり15年経っても2期を望むファンが多くいたことの理由の一つとなった。
2期からは下ネタもさらに下品になり、さらに毎話必ずオマージュが差し込まれるようになり、そのオマージュも有名なものから日本人がほとんど知らないものまで様々なバリエーションがあり、さらに登場キャラも増えたため、見応えという意味では1期から大幅に進化したものであると言える。
16 無職転生 ~異世界行ったら本気だす~(アニメ)監督:岡本学
【概要】
34歳・童貞・無職の引きこもりだった男は車に撥ねられ、その一生を終える……はずだった。しかし、男が次に目を覚ましたとき、そこは剣と魔法の異世界であった。少年・ルーデウスとして転生した男は考える、この世界ならば、自分も本気で生きていくことができるかもしれない……と。
【考察】
転生もののテンプレをなぞりながらも、転生してからの人生を丁寧に描いているため、視聴者が主人公を成人男性としてではなくその世界の子供として認識するようになり、子供の中身が中年男性であることへの嫌悪感をあまり抱かせないつくりになっていたと考える。全体を通して“家族”をテーマにしており、転生者として異世界の住人としての自覚が薄かった主人公が、家族との交流を経てその自覚を持つまでを描いており、中世ヨーロッパに近い世界観であるがゆえに、家族との繋がりを重視するある意味前時代的な物語でも違和感なく展開できている。
また、アニメではそれぞれの種族で独自の言語を使用していることを表現するために一から言葉を作っており、異世界としてのリアリティが出ると同時に、主人公が日本語を話すシーンではそれを上手く活かした演出をしていた。
幼少期から青年期までを丁寧に描いているため、主人公へ感情移入しやすくなる作りとなっていた。
17 負けヒロインが多すぎる!(アニメ)監督:北村翔太郎
【概要】
ライトノベル好きの達観系ぼっち・温水和彦は、ある日偶然クラスの人気女子・八奈見杏菜が幼馴染の男子生徒に振られている現場を目撃してしまい、その後立て続けに、陸上部の焼塩檸檬、文芸部の小鞠知花という負け感漂う女子たちと関わりを持つようになる。
負けヒロイン――マケインたちになぜか絡まれる温水の謎の青春が、ここに幕を開ける!
【考察】
負けヒロインという立ち位置をコメディチックに描きながらも、キャラクターが失恋と向き合い、新たに前を向くまでの過程はしっかりと真面目に描くため、メリハリのきいたつくりになっている。アニメの範囲では主人公は傍観者の立ち位置を貫いており、主人公と視聴者の視点が一致し、視聴者の気持ちを代弁するという役割も持っていると考える。
18 ダンジョン飯(アニメ)監督:宮島善博
【概要】
ダンジョン深奥で、レッドドラゴンに妹が喰われた! 命からがら地上へ生還した冒険者のライオス。 再びダンジョンへ挑もうとするも、お金や食糧は迷宮の奥底……。 妹が消化されてしまうかもしれない危機的な状況の中、ライオスは決意する。
「食糧は、迷宮内で自給自足する!」 スライム、バジリスク、ミミック、そしてドラゴン! 襲い来る魔物たちを食べながらダンジョン踏破を目指せ、冒険者よ!
【考察】
常に食べることをテーマにしており、西洋風の世界観で日本的な「食」の価値観が掲示されることによるアンバランスさがあると初めは感じたが、すぐに気にならなくなるほど作品の雰囲気に馴染んでいた。
細かな設定がとても練られており、その世界の言語や魔法などにおいて、通常では考えないようなところまで設定があり、その上で作中で細かな設定をひけらかすようなシーンが無いことによって、設定がそのまま作品のリアリティの向上に繋がっている。
19 うずまき(アニメ)監督:長濱博史
【概要】
女子高生の五島桐絵と恋人の斉藤秀一が暮らす町が、異様なうずまきに汚染され始める。町の誰もがうずまきの呪いに侵されるなか、桐絵と秀一は果てしない恐怖と絶望にのみ込まれてゆく。
【考察】
「うずまき」をテーマに一つの町を舞台にして一話完結形式で物語が進められていく。どんな怪奇現象が起きても舞台となっている町そのものが崩壊することは無かったが、物語が進むごとに町にも被害が及ぶことが多くなり、次第に怪奇現象が一つの災害となって町を襲うことになる。話のスケールがどんどん大きくなっていき、最後にはジャンルがホラーから変わってしまっているように感じたが、最後まで「うずまき」が何なのか視聴者には明かされず、正体不明の恐怖がずっと続いているため、ホラーという軸から逸脱してはいなかったと考える。
20 マン・オブ・スティール(映画)監督:ザック・スナイダー
【概要】
無敵の能力を備えながらも、それゆえに苦悩して育った青年クラーク・ケントが、いかにしてスーパーマンとして立ち上がったのか、これまで描かれてこなかったスーパーマン誕生の物語を描く。
【考察】
ヒーローとしてのスーパーマンと言うよりは、圧倒的強さを持った“最強”としてのスーパーマンを描いた作品だった。スーパーマンのルーツを初めに掲示しつつ、彼がどういう思いで地球で育ったのかは中盤まで明確にしないことで、スーパーマンの真意が気になるつくりになっている。
クリプトン星人との戦いで街を破壊しまくるシーンは迫力満点で緊迫感あふれるシーンであると同時に、視聴者がスーパーマンの強すぎる力を恐れてしまい、作中のアメリカ国民と同じ気持ちになるようになっている。そしてこのつくりが次作以降の展開へと繋がっていくため、DCUの始まりに位置する作品として非常に完成度の高いものとなっている。
21 寄生獣 ザ・グレイ(ドラマ)監督:岩明均
【概要】
人間を宿主として寄生し、全身を支配しようとする正体不明の寄生生物が人間社会に混乱をもたらし始めたこの邪悪な存在の台頭を阻止すべく立ち上がる人間と寄生生物の戦いを描く SF スリラー。
【考察】
原作のテーマである「寄り添い生きる獣」という意味での寄生獣というものは全体を通して一貫しているように感じたが、主人公に寄生した寄生生物があまりにも初めから主人公に対して友好的すぎるように思えた。そのため原作にあった寄生生物と宿主の人間との交流によって生まれるドラマが無く、人間と寄生生物の戦いを描くモンスターパニックアクション作品としての魅力が主だったと考える。
カメラワークやCGが現代の最新技術を駆使したものとなっており、とても見応えのあるものとなっていた。特にドローンを使用したカーチェイスシーンのカメラワークは疾走感あふれるシーンもなっていて、主な戦闘シーンがCGメインであったことが惜しく思えるほどだった。
22 CITY(アニメ)監督:石立太一
【概要】
実況は黒部五郎がお伝えします。
何かが芽吹いて参りました、ここCITY。
誰が信じましょう! まさかのカバンに固焼きそばがダイビング!!
まつりとえっちゃんの大冒険! 楽しいが渋滞しております。
鬼カマボコ、ネタの代わりに出てきたのは涙だー!!
とかく前代未聞! それがCITY!
【考察】
タイトルの通り、一つの町に住む人々の生活を描いたコメディ作品だった。原作者のあらゐけいいちの代表作である『日常』のエッセンスを感じながらも、スポットライトがより広く多くの人物に当たるようになっており、また当時より作画も進化しており、京都アニメーションにおける『日常』の正統進化と言える作品だった。
多くの人物に焦点を当てながらも、メインとなる三人のパーソナリティはしっかりと描き、視聴者に愛着を持たせられるようにつくられており、また、その他の登場人物も少ない出番で強烈な印象を残すキャラであったり、何度もギャグを繰り返す「天丼」を駆使したりなどで、より多くのキャラを視聴者に覚えてもらえる取り組みがされていた。
23 銀河特急ミルキーサブウェイ(アニメ)監督:亀山陽平
【概要】
銀河道路交通法違反で逮捕された強化人間の
チハルとサイボーグのマキナ。
同じタイミングで警察に捕まった、強化人間のアカネとカナタ、サイボーグのカートとマックスらクセのあるコンビを集め、警察官・リョーコが全員に課したのは、奉仕活動として惑星間走行列車・通称”ミルキー☆サブウェイ”の清掃をすること。
簡単な任務だったはずが、突如暴走し始める”ミルキー☆サブウェイ”!
車内で慌てふためくメンバーたちは、やがて大事件に巻き込まれていってしまう!
【考察】
CGが他にない独特な味を出しており、不気味の谷現象などによる視聴前のハードルの高さなど、CGアニメーションで発生する問題が発生しづらくなっているように感じた。キャラクターの動きや表情がとても自然で、アニメーションではなく実写の映像を見ているような気にさせるほどであり、また、声優の演技も実際の日常会話になるべく近づけた自然なものとなっているため、SFという世界観でありながらも、リアリティのある空気感が生まれていた。
24 メイドインアビス(アニメ)監督:小島正幸
【概要】
巨大な大穴『アビス』の縁に築かれた街、『オース』で暮らす探窟家見習いの少女・リコ。ある日、探窟中に孤児院の仲間の少年・ナットが巨大な蛇状の生物「ベニクチナワ」に襲われているところに遭遇する。とっさの機転で注意を逸らしたリコだったが、今度は自分がベニクチナワに襲われてしまう。絶体絶命のその瞬間、突然辺りが閃光と轟音に包まれて・・・。
【考察】
メインとなる登場人物たちが、一度入れば戻って来られないかもしれないアビスに潜ることへの葛藤が全く無く、まだ見ぬ冒険への浪漫を全面に出しているため、視聴者も命の危険などはあまり気にせず同じ気持ちで視聴することができた。ただ、アビスへ潜ってからは主人公の女児がかなりの頻度で酷い目に遭わされるため、アビスを甘く見ていた主人公と同様に視聴者にもアビスの厳しさを思い知らせられるつくりになっていた。そのような目に遭わされても、先述されたように主人公が冒険を恐れたり諦めようとすることは無く、段々と視聴者が主人公の精神の異常性に気づくようになっている。
また、アビス内の生態系は細かに設定されており、それらに翻弄され、時には利用するやり方でキャラの個性が演出されている。アビスに初めて入った主人公と視聴者の視点が重なり、物語が進むごとに先の景色が気になるようになっている。
25 メダリスト(アニメ)監督:山本靖貴
【概要】
スケーターとして挫折した⻘年・明浦路司が出会ったのは、フィギュアスケートの世界に 憧れを抱く少⼥・結束いのり。
リンクへの執念を秘めたいのりに突き動かされ、司は⾃らコーチを引き受ける。
才能を開花させていくいのりと、指導者として成⻑していく司。
タッグを組んだ⼆⼈は栄光の“メダリスト”を⽬指す−−−!
【考察】
躍動感や迫力あふれる見開きや表情などで魅せていた原作から、演出面では多くの変更があった。演技シーンでは実際のプロスケーターの動きをモーションキャプチャで取り入れているため、映像作品ならではの魅力が生まれている。また、その結果、演技中のキャラのセリフなども削られ、表情や息づかいでその時の感情を表現する演出となっていた。その他にも、原作が月刊誌での連載であり、アニメが1クールしかないという問題から、話の構成も変更が加えられており、原作とアニメではほぼ別作品と言っていいほどとなっていた。しかし、原作にあった夢を追う少年少女とコーチたちの熱い様などはそのままにアニメに落とし込んでいるため、作品の軸となる部分は変わらないままにできていたと考える。
26 パシフィック・リム(映画)監督:ギレルモ・デル・トロ
【概要】
13年に突如、太平洋の深海から巨大生命体が出現し、世界中の大都市は次々と破壊され、人類は絶滅の危機にさらされる。そこで人類は巨大生命体と戦うために英知を結集し、人型巨大兵器“イェーガー”を開発。一時は巨大生命体の侵攻を食い止める事に成功するが、再び彼らの猛威にさらされる事に。
【考察】
初めにダイジェスト方式で作品の世界観を説明していたが、怪獣と巨大ロボのバトル、またそのロボの設定もかなり複雑という非現実的な題材であるにもかかわらず、クオリティの高いCGによってリアリティが増しており、視聴者はすんなりと設定を受け入れることができるようになっていた。また、その説明パートで主人公の過去を同時に開示するため、現代のパートに尺を存分に使うことができていた。
敵となる怪獣を意思のない化け物とすることによって、メインとなる主人公二人の掘り下げが十分に行われており、感情移入が容易となっていた。また、サブキャラの掘り下げはあまり行われていなかったが、その分佇まいや使っているロボの見た目や性能でどのような性格なのかある程度予想できるようになっており、画面上に写っているもの全てを活用してキャラの掘り下げをしていたと考える。
27 デッドマウント・デスプレイ(漫画)原作:成田良悟
【概要】
はるか遠い異世界――世界を救うため、「災厄潰し」と呼ばれる英雄シャグルアは希代の死霊使い(ネクロマンサー)「屍神殿」に立ち向かう。
熾烈な戦いの末にシャグルアが屍神殿を打倒したかに見えたその時、魔術が発動し周囲は光に包まれる。
その瞬間、魂は遠い異世界へ転移し現代の新宿で「四乃山ポルカ」という少年の体で目覚めていた。
喉を切り裂かれ、殺害されたばかりの体で新宿の街をさまよっていた彼は、一人の少女に救われる。
崎宮ミサキと名乗ったその少女と対峙しているうちにポルカの記憶が徐々に蘇ってくる。
四乃山ポルカを殺害したのは目の前の少女、「崎宮ミサキ」だった。
再びポルカを殺そうと、彼女は襲いかかってくる。
【考察】
まず異世界の住人が日本の新宿に転生するというアイデアが斬新で目を引くものとなっており、またそれが単なる出オチで終わらず、しっかりとその後の展開に深く関わってくるようになっている。異世界の住人だからといって新宿でいわゆる無双をするというわけではなく、新宿の住人たちがパワーバランスとしては上で、主人公は彼らがしらない魔法を使うことで対等になっているという状況で、それも斬新な設定となっている。
登場人物がとても多く、ジャンルは群像劇と言えるのだが、各キャラのデザインや性格が個性的なので、名前を覚えられなくても展開についていくことができるようにつくられていた。
28 ヴァニタスの手記(漫画)作者:望月淳
【概要】
吸血鬼(ヴァンピール)の青年 ノエは師から頼まれ、吸血鬼に呪いを振り撒くという魔導書“ヴァニタスの書”を探しにパリへ向かっていた。
パリへ向かう飛空船の中で、ある事件に巻き込まれたノエは、吸血鬼の専門医を自称する人間 青い瞳の青年ヴァニタスと出会う。
【考察】
メインのヴァニタスとノエがバディとしてひとまず形におさまるまで相当な時間を使っており、これは初めにメイン二人の行動原理をはっきりさせておくことで、その後の群像劇へと移行する際に、話を展開させやすいようにするためと、より多くのキャラに尺を使えるようにするためであると考える。
人間と吸血鬼という二つの種族の物語であるため、人間から吸血鬼への差別などが初めは描かれるが、物語が進んでいくにつれて吸血鬼の間にも差別が存在することがわかり、被差別種族の中にもさらに被差別種族が存在するという、リアルな展開となっている。また、作中で人格者とされているキャラも自然と差別を行うなど、差別描写に関してはとてもリアリティのある描写がされている。
29 君が死ぬまであと100日(漫画)作者:右腹
【概要】
津田林太郎は一見普通の高校生。彼は幼稚園の頃からの幼なじみ・神崎うみに片想い中。何度告白しても、うまく伝わらなかった想い…しかし!人生4度目の告白で、やっと彼女からOKが!長年の恋がついに実った、その瞬間…彼の普通ではない能力が発動してしまう。「…うみ。余命が見える。」100日限定で生きものが死ぬまでの余命が、林太郎には見えてしまうのだ。長年の恋が実った瞬間から、愛しい彼女の余命のカウントダウンが始まってしまった。
【考察】
タイトルにもある通りのわかりやすいテーマがあり、終盤まで一貫して寄り道することなく100日を超えることを目標としているため、とてもわかりやすく読みやすいようにまとまった物語となっている。ただ、終盤からなぜか林太郎が記憶喪失になり、うみが記憶を取り戻させるために奔走するというパートになり、お互いがお互いを助け合うことで二人が対等な関係であることの表現であると考えられるが、うみの寿命を延ばすパートに比べて、林太郎の記憶を取り戻すパートは少々短く、運命に抗うことをテーマにしているならば、もう少し尺を使って劇的に描くべきだったと考える。
キャラ同士のかけあい、特にワードチョイスが独特で、この作品特有の魅力であると考える。基本的にゆるめの絵柄だが、キャラが感情を吐露するシーンでは細かな表情が描かれており、キャラの感情が直に伝わるようになっている。
30 夢と魔法の国のリドル(小説)作者:七河迦南
【概要】
楽しい遊園地デートになるはずだった杏那と優。しかし二人は突如別々の世界に引き裂かれた。杏那は異世界を魔王から救う役目を担わされ、残された優は遊園地で起きた密室殺人事件の謎を解く羽目に……。現実と夢の国、二つの密室、パズルと魔法の謎を解き、二人は再会できるのか? 紙とペンを用意して読んでも必ず欺される、異色の新感覚本格ミステリ。
【考察】
作中に登場する謎が絵として載せられており、読者も一緒に謎解きに挑戦することができた。自分で答えが分からなくても、読み進めれば解説してくれるので不都合がある訳ではなく、謎解きが得意な人も不得意な人も楽しめる作品となっていた。
現実と異世界の両方で同時に物語が進められるが、分かりづらさや冗長さは全く無く、読みやすい文章でありつつ、先が気になるようにつくられていた。また、主人公の性格が初めから完成しており、未熟さから発生する問題などが無く、物語としても読者としても、謎解きに集中することができていた。
Sponsored link
This advertisement is displayed when there is no update for a certain period of time.
It will return to non-display when content update is done.
Also, it will always be hidden when becoming a premium user.