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佐藤 清大
RES
2年 佐藤清大 夏休み課題
1.ヴァージン・パンク/Clockwork Girl 監督:梅津泰臣
[あらすじ]
西暦2099年、医療用人工人体技術「ソーマディア」を違法に改造した犯罪者と、彼らの殺処分を行うバウンティハンターのいる世界。
児童養護施設出身の神永羽舞は、とある事件からバウンティハンターのMr.エレガンスと因縁を持つ。やがてバウンティハンターとなった羽舞の前に再び現れたMr.エレガンスの手によって、彼女の運命は狂いはじめる。
[考察]
令和に顕現した梅津作画の超大作。YouTubeに載っているティザーPVだけでもぜひ見ていただきたい。10年という長い期間を制作に費やしたとのことで、梅津監督のフェチズムを多分に含んだキャラクター描写と近未来SFの世界で繰り広げられる圧巻のバトルが、きわめてリアルで繊細かつ大胆な作画・演出によって表現されている。30分という短い尺にもかかわらず長編作品を見たと錯覚するような、濃密なストーリーと誰しもが満足する映像表現が素晴らしい。今作も「殺し屋の少女×キモオヤジ」という梅津が長らく用いてきたプラットフォームのストーリー設定であるが、今作におけるキモオヤジ枠、Mr.エレガンスは、前作までの同ポジションのキャラクターと比較して、主人公となる少女へ求めるものが肉欲的なものからより精神的な、愛情ともいえる要素へ傾向しているように感じた。
2.タコピーの原罪(アニメ) 監督:飯野慎也
[あらすじ]
ハッピーを広めるため地球に降り立ったハッピー星人のタコピーは人間の女の子しずかと出会う。ピンチを救ってもらったタコピーは、しずかの笑顔を取り戻すため不思議な力を持つハッピー道具で奔走する。しかし、しずかはおうちと学校で何か事情を抱えているようで…。これは、ぼくときみの最高にハッピーな物語――。
[考察]
視聴後は想像以上に心がえぐられてしまって、さすが配信のみでの公開というだけあるなと感じた。全6話という視聴ハードルの低さも、この泥沼に足を踏み入れるきっかけとして大いに機能している。
この作品のキーパーソンであるタコピーの存在は、人間のコミュニティに介入する上でその複雑で込み入った事情を汲み取ろうとせず、無邪気に“ハッピー”をふりまこうとする底なしの明るさがストーリーやキャラクターの置かれた状況の暗さ・重さと不協和音を奏で、その温度差から不気味さを発生させるものである。
さらにこのアニメでは、広角レンズによってパースが強調されたシーンが多く用いられている。広角レンズは映す対象の形を歪ませ、不安定感を演出することができるとともに、GoProで撮影された映像などを例に挙げると、映像の視聴者がその場にいるような臨場感やダイナミックさ・迫力を演出することもできる。本作で多分に用いられている広角レンズによる映像表現は、ストーリーが描くキャラクターの不安感、怒りや絶望といったネガティブな感情を強調する意味があると考えられる。
3.帰ってきた あぶない刑事 監督:原廣利
[あらすじ]
刑事を定年退職したのち、横浜で探偵業を始めたタカとユージ。ある女性の依頼を受けることになった2人は、やがて巨大な陰謀に巻き込まれていく。
[考察]
あぶない刑事最新作!ほぼカーアクション目当てで観たわけだが、年を重ねて白髪交じりになったタカ&ユージが現役さながらにアクションをこなし、見る側の期待する“お約束”要素も含め曲も車もTVドラマの再現やオマージュがふんだんに盛り込まれており、どの要素をとってもファンの心を刺激しまくるいい作品だと感じた。それと同時に、前作から約10年の時を経てさらに“老い”が明確に強調された部分も多く、それでもなおダンディーで、セクシーであり続ける2人の姿は、この作品とともに年を重ねてきたであろう中年ファンにとって、「年を取ることへの道しるべ」のように映ったのかもしれないと考えた。
4.新幹線大爆破 監督:樋口真嗣
[あらすじ]
新青森から東京へ向けて定刻どおり出発した新幹線「はやぶさ60号」。車掌の高市和也は、いつもと変わらぬ思いで乗客を迎える。そんな中、1本の緊迫した電話が入る。その内容は、はやぶさ60号に爆弾を仕掛けたというものだった。爆弾は、新幹線の時速が100キロを下回ると即座に爆発するという。高市は極限状況の中、乗客を守り、爆発を回避すべく奔走する。一方、犯人は爆弾解除のかわりに1000億円を要求してくる。はやぶさ60号の乗務員・乗客はさまざまな窮地と混乱に直面し、事態は鉄道会社や政府、警察、国民をも巻き込み、犯人とのギリギリの攻防戦へと展開していく。
[考察]
前期の作品紹介で興味を持ち鑑賞するに至ったが、JR東日本全面協力というだけあって映像のクオリティが高く、臨場感があった。矢継ぎ早に指令が飛び交い現場の人間が奮闘する、そういうシーンが大好きなので終始満足感があった。
5.よふかしのうた(アニメ) 監督:板村智幸
[あらすじ]
女子がニガテな中学2年生の夜守コウはただ今、なんとなく不登校中。さらには、夜に眠れない日々が続いている。そんなある日、コウは初めて夜に、誰にも言わずに外に出た。夜風が気持ちよく、どこまでも自由で、昼間とちがう世界。コウは夜に居場所を見つける。そこに突如、謎の美少女・七草ナズナが現れる。彼女は、夜の住人・吸血鬼。コウに、夜の楽しさを教えてくれるナズナ。「今日に満足できるまで、夜ふかししてみろよ。少年」。夜に、そしてナズナに魅了されていくコウは、彼女に頼み込む。「俺を吸血鬼にしてください」。ナズナは吸血鬼になる条件を教える。照れながら。それは……。「人が、吸血鬼に恋をすること!」。果たして恋を知らないコウは、ナズナと恋をして、晴れて吸血鬼になれるのか!? ふたりぼっちの、特別な「よふかし」が始まる――。
[考察]
夜の表現が素晴らしい。コウが夜を未知にあふれた輝かしい世界と捉えていることを、アニメーションでしか表現できない鮮やかで彩度の高いグラフィックによって演出し、基本的にはそこに主要キャラ以外の人間が描かれることはない。全話を通して、主人公たちが主役となれる舞台としての夜を描くことに徹底していた。
6.よふかしのうた season2 監督:板村智幸
[あらすじ]
“夜はまだ終わらない”吸血鬼になることへの戸惑いを乗り越え、ナズナを“好き”になることを決めたコウと、コウに“惚れさせる”決意をしたナズナ。「恋」が一体なんなのか、わからないまま二人の夜は加速していく。吸血鬼を殺そうと企む探偵・鶯 餡子の手が、すぐそこまで迫る。吸血鬼の弱点は「人間時代に思い入れの強かったもの」。その弱点を予め処分しようとするが、ナズナには人間時代の記憶が一切ない。ナズナの隠された過去とは?なぜ餡子は吸血鬼を殺すようになったのか?そして、ナズナと餡子に交錯する“秘密”とは——?コウ、ナズナ、餡子……楽しい「よふかし」では終わらない、新たな“夜”がはじまる!
[考察]
1期においてコウが続けていた、自問自答の「自分探しの旅」という普遍的なテーマが、今度はナズナに焦点を当て、より直接的な意味でキャラクターが自身の過去と向き合い、今まで明かされてこなかったいくつもの過去が、テンポよく進むストーリーの中で徐々にはっきりとした形で表れてくる。
ナズナの営む「添い寝屋」は夜における悩み・不安のあらゆる解決策の提示を行う。10年をかけた餡子の自殺劇が、大まかな部分はハッピーエンドという形で失敗におわり、コンコルド効果によって餡子が積み重ねてしまった10年間という月日と、彼女に重くのしかかる喪失感や無力感を、物語のスタート地点とも言える「添い寝屋」の仕事によって緩和する、という綺麗にまとまった結末だと感じた。
そしてオリジナルストーリーとなった2期最終回では、コウが餡子の家庭を崩壊へと追いやった原因となる吸血鬼を探すこと、それによって餡子を救うことをこれ以降の第二目標として提示している。
7.今夜、世界からこの恋が消えても 著者:一条岬
[あらすじ]
無気力に生きる高校生の神谷透は、人気者の真織に無謀な嘘の告白をする。ところが意外にも本気で好きにならないことを条件に告白は受け入れられ、2人は付き合うことになる。
[考察]
前向性健忘の真織を好きになった透は彼女をその絶望の渦中から救おうとする。その時その一瞬を懸命に生きている真織を毎日あの手この手で楽しませようとする透の姿が丁寧に描かれたあと、彼は突然の死を迎え、透との約束通り泉が彼の記録を真織のもとからすべて消し去ってしまう。そこまでで描かれていたのは記録することでしか維持できない真織の記憶のはかなさであるが、それでも、真織が前向性健忘から立ち直ったあと透の存在に気付いたきっかけとなったのは、彼の提案によって絵を描き始めた真織の体が学習した記憶“手続き記憶”であり、そんな救いを提示してくれる儚くも清々しく慈愛にあふれた落とし方は、喜怒哀楽のどれにも当てはめられない不思議な感情を呼び起こさせる。
8.ミギとダリ(アニメ) 監督:まんきゅう
[あらすじ]
舞台は、1990年神戸市北区。アメリカの郊外をモデルに造られたニュータウン、オリゴン村。裕福な住民が暮らすこの町に、“ひとりの”少年が養子としてやってくる。 少年の名は秘鳥(ひとり)。 美しく聡明な少年・秘鳥に、園山夫婦は魅了されるが、 秘鳥には、大きな秘密と目的があった――。秘密とは、秘鳥は実は一人ではなく、双子の兄弟(ミギとダリ)であること。一人として生活し、学校へも 通う。そして二人はすり替わりながら協力して母の死の真相を探っていく。しだいに明かされる秘密と真実とは?
[考察]
前半はミステリアスな雰囲気とシリアスな空気の中で幾度となく繰り返されるシュールなギャグが癖になる。徐々に彼らの過去や“ふたりでひとり”を演じる理由が明るみになり、後半では2人の確執や一条家の真相といった、シリアスというか半ばホラーのような要素も加わる、
ミギとダリが2人であることが明るみになった最終話で、一連の出来事から3年後、ダリは進学校へ通うために列車に乗り込み旅立つ。真相へたどり着きカルマとも言える呪縛から解放され、ダリの負った火傷痕などから“ふたりでひとり”ではいられなくなった彼らが、互いに別々の人生を歩めるようになる結末には感動した。
9.MIU404
[あらすじ]
警視庁の働き方改革の一環で作られたという架空の設定の臨時部隊「警視庁刑事部・第4機動捜査隊」。機動力と運動神経はピカイチだが機捜経験がなく、考える前に身体が動いてしまう“野生のバカ”伊吹藍(綾野剛)と、観察眼と社交力に長けているものの、自分も他人も信用しない理性的な刑事志摩一未(星野源)がバディを組み、“第4機捜”のメンバーと共にさまざまな事件に臨む姿を描く。
[考察]
これは「誰かが最悪の事態になる前に止められる」、いわば「未来を担う」機捜隊員たちのストーリーである。彼らが見せる、単に善悪という物差しでの判断に限らず「罪を犯していようが救うべきところは救う」という姿勢は、3話にて虚偽通報をした犯罪者でありながら伊吹とともに仲間を救う選択をとった勝俣が、続編「ラストマイル」に伊吹の後輩の機捜隊員として登場していることに表れている。
最終話、現実となることを回避した最悪のエンド、志摩の死を経験した世界線ではコロナパンデミックは発生せず、東京オリンピックが正常に開催される。しかし、真のエンドは伊吹と志摩は死ぬことなく久住を逮捕するハッピーエンドにおわり、コロナ禍によってオリンピックは正常には開催されていない世界線である。そしてこの差を引き起こしたトリガーは伊吹の犯したシンプルで小さい過ちにすぎない。私たちの生きる現実の世界線につながる結末を真のエンドとすることには、時には絶望へもたどり着く選択不可能な「未来」を変えうる些細なきっかけは日常のあらゆる選択の中に潜んでいることを描き、「あおり運転」「留学生や技能実習生のトラブル」「薬物依存」「SNSの脅威」といった、あらゆる“身近に起こりうる危険”をはらんだ現実世界を取り扱った本作だからこそ、これらの脅威を現実世界の時間軸上のストーリーで取り扱うことで“リアルな脅威”の警告として機能させる意味があると考えられる。
10.ラストマイル 監督:塚原あゆ子
[あらすじ]
大手ショッピングサイトの荷物に次々と爆発物が仕掛けられる謎の連続爆破事件が発生。巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナは、未曽有の危機に立ち向かっていく。
[考察]
我々消費者は日々便利な通販サイトを使い商品が指定日通りに届くことを当たり前とし、そうでない場合は不平不満を口にする。そんな利便性と効率を追求した現代社会に仕込まれた爆弾は、ラストワンマイルの運送を担う、顧客一人一人を大切に思うかつて熟練ドライバーとして働いていた軽バン配達員と、消費社会の現代では時代遅れとなった堅牢で高い耐久性を持つ洗濯機によって、最後には最小限の被害をもって処理された。止まらない効率化のアンチテーゼとして機能する“非効率を大切にするベテランの精神”を伏線にとんだ巧みな脚本で描いている。
真犯人であるまりかの死によって明らかになった最後の爆弾が届けられたのは404号室、本作と世界観を共有しているMIU404のタイトルを差し込んできているとともに、それが最後まで見つかるのことなかった、「404 Not found」な爆弾であったことを示していると考えられる。
11.機動戦士ガンダム SEED FREEDOM 監督:福田己津男
[あらすじ]
独立運動や侵攻により、いまだ終結しない争い。やがてキラたちは、沈静化のために創設された世界平和監視機構に参加し、戦闘に加わっていく。
[考察]
美しさや才能だけが愛を構成するのではない。優れた人類“コーディネイター”と自然状態の人類“ナチュラル”という優劣をつけられた異人種間で、コーディネイターらによって定められた運命にキラとラクスは互いの立場から“愛”をもって抗おうとする。
12.デイライト 監督:ロブ・コーエン
[あらすじ]
かつて緊急医療班の隊長を務めていた男。現在はタクシー運転手を職についていた彼だったが、あるとき凄惨なトンネル事故の現場に遭遇する。過去の経験に突き動かされ、彼はトンネル内部への進入を決行。中に閉じこめられた生存者たちを救い出すべく、命懸けで奔走する。
[考察]
スタローン主演のディザスター映画。冒頭のトンネル爆破シーンの撮影ではおそらくミニチュアモデルを使用したのだろうと考えられるが、生々しい崩落の映像と次々に車両を襲う火炎の勢いには圧倒される。
映画のラストシーンでは、公開当初(96年)まだ悲劇に襲われていなかったWTCビルが背景に映し出される。9.11のテロ攻撃でビルを襲った猛火と崩落はそこにいた多くの人の命を奪った。悲劇の中の救出劇をテーマにした本作の締めとしてカメラに収められたWTCビルの存在は、現実にはスタローンのようなヒーローは不在であり、予測できない脅威から犠牲者を増やしてしまう、そんな救われない悲惨な結末を思い出させる。
13.機動警察パトレイバー2 the Movie 監督:押井守
[あらすじ]
2002年、謎の戦闘機が横浜ベイブリッジを爆破、公には自衛隊機であったと報道され、日本は緊張状態に陥る。厳戒態勢の中、警視庁特車二課の後藤は、この事件の容疑者に、1999年のPKFで東南アジアに於いて行方不明になっている元自衛隊員、柘植を挙げて捜索を始めるが、その頃ある飛行船が首都に向かっていた。
[考察]
荒川の指摘した“戦争でない”というだけの偽りの平和、その空虚な平和は実体を持った戦争によって埋め合わされるが、私たちはその成果だけを受け取り、モニターの向こうに戦争を押しやって、自分たちがその戦線のただ後方にいるに過ぎないことを忘れてしまう。現代の戦争およびその報道は、生身の人間を殺戮する現実味のない異常な世界観を安全圏にいる私たちに見せつける。21世紀に入っても変わることのなかったこの問題を提起した本作は、戦争映画とは全く違った視点でその脅威を私たちに伝えてくれる。
14.GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊 監督:押井守
[あらすじ]
西暦2029年。公安の精鋭による特殊部隊「攻殻機動隊」が、国際手配中のハッカー「人形使い」が日本に現れるとの情報を掴む。そんな折に搬送されてきた、事故に遭ったというサイボーグ。その体には、危険な秘密が隠されていた。
[考察]
物語前半にて登場するゴミ収集車の男が犯罪に加担したのは、人形遣いにより改竄された記憶に基づいて、そこに生じた問題を解決しようとした結果であり、これは、記憶のもろさ・記憶を操作されるこの世界がはらんだ危険性を示している。
物語の中盤、船上で素子がバトーとの会話の中で口にしたのは、アイデンティティは自らの身体によってではなく、周囲の情報によっても規定され、意識を作り出すという彼女の立てた仮設であり、自分を規定するアイデンティティの在り方への執着がうかがえる。その後彼女は、謎の義体“人形遣い”の登場にその疑問を解決する糸口を見つける。
人形遣いの電脳に潜り込み、電脳がゴーストを生み出しているのか、そうでないのかを調べることで、素子が悩んでいた自らのアイデンティティが電脳と義体から作り出されたものではないか、という疑問を払拭することができる。しかし人形遣いと同期する形でコミュニケーションを取った結果は、人形遣いと素子の双方が抱いていた進化への欲求のもと、2人が融合して新たな生命体となるものであった。この結末が素子にどのような答えを与えたのかは作中に明記されていない。
15.僕だけがいない街(アニメ) 監督:伊藤智彦
[あらすじ]
漫画家としてデビューするも、いまひとつ結果を出せずに毎日を過ごす青年・藤沼悟。彼は、彼の身にしか起こらない、ある不可思議な現象に不満を感じていた。 ――再上映(リバイバル)。何か「悪い事」が起こる直前まで時が巻き戻る現象。それは、その原因が取り除かれるまで何度も繰り返される。……まるで、誰かに「お前が防げ」と強制されているかのように。しかし、ある日起きた事件をきっかけに、その現象に大きな変化が訪れる。自らの過去に向き合う時、悟が目撃する真実とは?
そして、悟の未来は――?
[考察]
“リバイバル”の能力によってかつて救えなかった加代の命を誘拐殺人犯から死守しようとする悟。その行動は結果としてその犯人八代学をも救う結果となった。タイムリープモノの作品の中でも結末の丸め方が綺麗でストレスを感じずに見れた。展開が少し異なる原作も読んでみたいと感じた。
16.Catch Me If You Can 監督:スティーヴン・スピルバーグ
[あらすじ]
高校生のフランク・W・アバグネイルは尊敬する父が母と離婚すると聞き、ショックで衝動的に家を飛び出してしまう。そして、生活のため偽造小切手の詐欺を始めるようになる。最初はなかなかうまくいかなかったが、大手航空会社のパイロットに成りすますと誰もがもののみごとに騙された。これに味をしめたフランクは小切手の偽造を繰り返し巨額の資金を手に入れるのだった。一方、巨額小切手偽造詐欺事件を捜査していたFBI捜査官カール・ハンラティは、徐々に犯人に迫っていくのだったが...。
[考察]
家族愛から犯罪に手を染め、大胆な選択と自信満々の行動で逃げ続ける。そんな天才詐欺師の配役にレオナルド・ディカプリオは最適だと感じた。彼を追うFBI捜査官はトム・ハンクスが演じており、この2人の関係性は手に汗握る逃走劇にどこか安心感を感じさせるものがある。これが実話をもとにした作品であるという点、さらに主人公はその能力が買われて後にFBIの下で働くこととなった点は驚くべきポイントだ。
17.ダイ・ハード4.0 監督:レン・ワイズマン
[あらすじ]
コンピュータを狂わすサイバー・テロの猛威により都市部の信号は消え、政府の機能が麻痺するなど、全米がパニックに陥ってしまう。偶然にも事件に巻き込まれてしまったマクレーン刑事は、テロリスト集団に迫ってゆく。
[考察]
スキンヘッドになったマクレーン刑事がワシントンを守るべくオタク少年と大奮闘。サイバー犯罪という新たな脅威に上層部フル無視で敵陣に単身乗り込み組織を壊滅させる。頑固オヤジが魅せるタフなガン&カーアクションはハリウッド映画の醍醐味である。
本作では過去の作品ではあまり前面に押し出されなかった“親子の絆”の要素が追加されており、マクレ-ンの勝利に際し娘が一役買ったシーンがこれにあたる。そしてこの絆の物語は、次作『ダイ・ハード/ラスト・デイ』において最も強化されることとなる。
18.サマーゴースト 監督:loundraw
[あらすじ]
ネットで知り合った高校生の友也、あおい、涼。彼らは、それぞれ家族や友人、将来について悩みを抱えていた。そんなある時、3人は夏にだけ現れると噂されていた若い女性の幽霊「サマーゴースト」に会おうと思い立つ。
[考察]
主人公らはみな、生きることに関する悩みを抱えており、死に近い人間だけが見ることのできる幽霊と会話し、接することができる。涼は病気により余命を宣告され、生きる願望に対し不条理な死が待ち受けている。あおいはスクールカーストによりいじめを受け、死を辛い現実からの解放と見ている。友也は2人とは異なり、優秀さから大人に期待される自らの“生”の状態に対して漠然とした死を望む。そんな3人が“サマーゴースト”に自らの人生の一歩を踏み出すきっかけを求め、結果はサマーゴーストを“精神的な死の世界”から解放するという成功に終わる。
ストーリーの帰結するポイントが若干あいまいな点など少し粗も感じるが、一番に評価できる点は作品全体に透き通るような空気感を演出する美しい背景美術だと感じる。勇気を出して一歩を踏み出してみる、という青春と成長をテーマにした作品にありがちなメッセージを秘めてはいるが、美しい色彩の背景とシンプルかつ空気感の感じられるライティング、レンズフレアなど光の演出には観る側を画面に引き付け、そのテーマを死と生、影と光という二項対立により強調している。若者に共感されやすいキャラクター設定と理解しやすい起承転結のストーリーは30分ほどの尺にキレイに収まっていた。
19.逃亡者(映画) 監督:アンドリュー・デイヴィス
[あらすじ]
シカゴに住む優秀な外科医の男は、妻殺しの容疑で逮捕される。彼は帰宅時に、家から逃げ出す片腕の男を目撃後、瀕死の妻を発見していた。無実を訴えるも死刑判決を受けた彼は、護送中の事故に乗じて逃亡。連邦保安官に追われる身となりつつも、真犯人を探し出そうとする。
[考察]
妻殺しの濡れ衣を着せられた寡黙な医師リチャード・キンブルが、潔白の証明のため逃亡を続ける。
キンブル医師は逃げた先々で医者としての責任から人の命を救いつつ持ち前の信頼と人脈で犯人の手掛かりを探し、連邦保安官のジェラードは迅速で抜かりのない捜査とあくまで真実の究明を目的とした執念の追跡で犯人を特定する。2人のプロフェッショナルが逃げる・追うの関係から共に犯人を追う関係へと変化し、結末はハッピーエンドに終わる。2時間の尺の間まったく退屈させないテンポの良さ、追う側も逃げる側も頭の回転が速くもどかしさを一切感じない構成が素晴らしい。
20.ファイナル・デスティネーション 監督:ジェームズ・ウォン
[あらすじ]
修学旅行で飛行機に乗った高校生が、離陸直前に眠りに落ち、その機体が爆発する夢を見る。彼は混乱し、パニック状態で機内から脱出。彼を連れ戻そうとした6人を残して飛行機は離陸し、そして本当に爆発する。しかしそれは、さらなる悲劇の序章に過ぎなかった。
[考察]
このシリーズが革新的だったのは、主人公らに襲い掛かる敵は見ることのできない“死の運命”である点だ。本シリーズでキーワードとなる“死の順番”は実に秩序立って運命にあらがおうとする登場人物たちを殺しにかかり、そこに目的は存在しない。非情な死が繰り返されるこの映画の見どころは、ピタゴラスイッチのように緻密に計算された殺害方式と、抵抗むなしく死の順番が近づくことにおびえる彼らと同じように、観る側の私たちもその恐怖におびえることができる点だ。“次は俺の番だ!”
21.デッドコースター 監督:デヴィッド・エリス
[あらすじ]
友人との旅行で自分の車が大事故に巻き込まれる予知夢を見たキンバリー。実際の事故からは間一髪で危機を逃れた彼女だったが、夢によって救われた人々は運命に追われるように、次々と不可解な死をとげていく。
[考察]
シリーズ2作目。最初のハイウェイでの事故シーンは交通安全ビデオにしても良いくらいよくできている。
前作の生存者とのつながりから得られた情報やや“死の順番”の新たなパターンの展開など前作から内容を発展させつつ、よりテンポよく物語が進んでいくのでシリーズ中でも見やすい1作。
22.ファイナル・デッドブリッジ 監督:スティーヴン・クォーレ
[あらすじ]
会社でチャーターしたバスで遭遇した巨大吊り橋崩落事故。事故直前に橋崩壊の映像が頭の中に浮かんだサムのおかげで、8人が大惨事から生き残った。だが、謎の男から「死は決して騙されない」と宣告され、事故の生存者が次々に悲惨な死をとげていく。だが、“他人に死を贈る”ことで“死の運命”から逃れられることが判明する。
[考察]
シリーズ5作目の本作は3D映画初のR-18指定を受けている。そのぶん死亡描写の気持ち悪さは大幅にアップしていて評価は分かれるだろう。死の連鎖を止めようと奮闘する登場人物の姿もおなじみのものであり、謎の助言者の存在も変わらない。最終的に物語の結末はシリーズ第一作、ファイナル・デスティネーションの冒頭とつながり、本作での生存者は飛行機事故にて死亡する。これは、2011年の映画にしては画面に映る車両がやたら古めかしい事からも示されていた。
23.ラッシュアワー 監督:ブレット・ラトナー
[あらすじ]
愛娘を誘拐された在ロサンゼルスの中国領事が、香港から生え抜きの刑事を呼び寄せる。それが目障りなFBIは、ロス市警きっての破天荒な刑事を監視役として派遣する。最初は反目しあっていた2人だったが次第に結束を固め、やがて意外な黒幕を突き止める。
[考察]
序盤に出てきた2階建てバスでのアクションシーンは、ジャッキーチェンが数多くの香港映画において2階建てバスをアクションの舞台としてきたことを意識していると考えられるし、彼が得意とする“飛び移る”アクションが他のハリウッド作品に比べ多用されていたことも考えると、この映画は今までに出演したハリウッド作品であまりキャラクターが活かされず伸び悩んだ過去をもつジャッキーチェンを、本国作品と同じように輝かせる目的を持った、“ハリウッドの舞台でジャッキーチェンを改めてもてなす映画”としての役割も持っていたのではないかと考えられる。
しかしながら、本作はジャッキーチェン単独ではなくバディものの映画のため、アクションシーンにおいて相方役を務めるクリスタッカーにカメラを向けたショットが度々挟まり、香港映画時代のように比較的長いショットでジャッキーチェンのアクションの巧みさを魅せるようなシーンが少ないようにも感じた。
24.オットーという男 監督:マーク・フォースター
[あらすじ]
妻を亡くして以来、不幸な日々を送るオットー。しかし、近くに引っ越してきた若い家族と出会い、機転の利くマリソルとの友情が、彼の人生を大きく変えることになる。
[考察]
アメリカの隣人文化や各キャラクターの味付け、アメリカ特有の自動車文化など、オリジナルのスウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』をハリウッド映画としてうまく再構築させている。
本作は前期教科書内容との被りが見られ、妻の死や仲たがいしたままコミュニケーションの取れなくなった親友はの存在を原因として自殺願望を抱くようになった彼の心は「治癒なき主体」を形成し、彼の偏屈な人間性をディスアビリティへと変えている。そしてそれは新しい隣人たちとのコミュニケーションにより解消される。
25.チェンソーマン レゼ篇 監督:𠮷原達矢
[あらすじ]
雇い主の裏切りにより命を落としたデンジは、「チェンソーの悪魔」であるポチタとの契約により“チェンソーマン”として蘇り、マキマのスカウトで公安対魔特異4課に所属する。憧れのマキマとのデートで浮かれているなか、雨宿りをしていると、カフェで働く謎の少女レゼと出会う。デンジはなぜか自分に興味津々なレゼを気になり始める。
[考察]
MAPPAの映像美。原作と比較できる点は、漫画の尺よりも繊細に描かれた場面転換と、キャラクターの表情管理の巧みさ、そこから最大限に引き出されるレゼの可愛らしさだと感じた。また、漫画よりも自由なカメラアングルはギャグとシリアスをより効果的に描き、場面にメリハリが生まれていた。
レゼとデビルハンターの戦闘シーンはまるで漫画を見ているかのようなカッティングが用いられ、レゼとデンジの戦闘シーンでは圧倒される大爆発の連続とグラフィカルな一枚絵に魅せられた。レゼがデビルハンターに襲われる直前、天使の悪魔が口パクでなにかを呟くシーンが差し込まれていたが、原作には無い演出であり非常に気になった。
26.宝島(映画) 監督:大友啓史
[あらすじ]
1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民らに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。そんな戦果アギヤーとして、いつか「でっかい戦果」をあげることを夢見るグスク、ヤマコ、レイの幼なじみの若者3人と、彼らにとって英雄的存在であるリーダー格のオン。しかしある夜の襲撃で“予定外の戦果”を手に入れたオンは、そのまま消息を絶ってしまう。残された3人はオンの影を追いながら生き、やがてグスクは刑事に、ヤマコは教師に、そしてレイはヤクザになり、それぞれの道を歩んでいくが、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境で、思い通りにならない現実にやり場のない怒りを募らせていく。そして、オンが基地から持ち出した“何か”を追い、米軍も動き出す。
[考察]
目玉のひとつである旧車を大胆に用いた原作再現を目的に鑑賞したが、それに加え音楽の演出や時間の推移とともに様々に変容するヒューマンドラマ、ラストに明らかになる“あの日”の真相など、3時間の鑑賞中も飽きさせることのない濃い映画だった。原作小説をまだ読んでいないので、読破後にもう一度見比べたいと思った。
27.グリーンブック 監督:ピーター・ファレリー
[あらすじ]
時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無学だが、腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていた。ある日、トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。彼の名前はドクター・シャーリー、カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいた。二人は、〈黒人用旅行ガイド=グリーンブック〉を頼りに、出発するのだが─。
[考察]
60年代のアメリカ南部において起きていた黒人差別は、当時の人間にとっては当たり前のことで、バーの人間・警官・ホテルの支配人など職種問わず差別意識を持っていた。そして現代では、人種差別に加えあらゆるマイノリティへの差別意識が表面化してきている。この作品においては上記の双方の差別が描かれ、それを主人公トニーは最終的には容認する。ドン・シャーリーは自身が被差別の身であることを理解し、その上で自らの才能を評価されようとした。
差別意識を持った人間の言う“差別される理由”は、その人のある一面にしかすぎず本質をとらえられていない。だが盲目な彼らにはそれを認識することはできない。私たちは盲目な人間に成り下がっていないだろうか、そんな問いをこの映画は提示してくれる。
28.マイ・インターン 監督:ナンシー・マイヤーズ
[あらすじ]
ニューヨークに拠点を置く人気ファッションサイトのCEOを務めるジュールスは、仕事と家庭を両立させるという誰もが羨むような人生を歩んでいた。
ところが彼女は仕事と家庭それぞれで問題が発生し、人生最大の試練に立ち向かっていた。
そんな折、会社の福祉事業で雇われたシニアインターンの40歳以上年上のベンが、ジュールスのアシスタントに就く。
初めは年上のベンの言葉など聞き入れようとしなかったジュールズだが、
人生の大先輩であるベンの言葉や行動から次第に一目置くようなり、心を通わせていく…。
[考察]
ロバート・デ・ニーロ演じるベンのユーモアにあふれた柔和な雰囲気は、本作が“老人から学べ”という説教じみた作品でないことを示してくれる。
ベンがシニアインターンに参加する理由は「誰かに必要とされたい」からであり、老後を過ごす多くの高齢者は同じ悩みを抱えている。シニア世代のワークフェアは、この映画が公開された2015年と比較して一般的に認知されるようになったが、高齢者を孤立させない、孤独にさせない社会の実現への道のりは、少なくとも日本においてはまだ遠いように感じる。
29.ターミナル 監督:スティーヴン・スピルバーグ
[あらすじ]
東欧の小国からニューヨークに訪れた男性ビクター・ナボルスキーはジョン・F・ケネディ空港に到着すると祖国クラコウジアがクーデターによって消滅したことを伝えられる。祖国の消滅によりパスポートを使用することができなくなったビクターはニューヨークに降り立つことも祖国クラコウジアに戻ることもできなくなり足止めを喰らってしまうことに。英語もまともに話せないビクターだったが空港のターミナル内で生活を始める。
[考察]
空港で足止めを食らい、そこで生き延びることを決心したビクターは、アメリカへの入国を待ち続けた。この「待つ」行為は、客室乗務員アメリアがが浮気性の彼氏を待ち続けたことにも当てはまる。この2人は望みが叶う時を平すら待っていたのだ。ただ、ビクターは待っている間にも仲間を増やし、収入を得て、英語も学んでいる。そんな努力があったからこそのアメリカ入国であり、結局は彼氏の元へと戻ったアメリアとは対比して描かれている。
また、今作の内容は教科書の“ディスアビリティ”の項目とつながる点があり、主人公ビクターにおいて、空港に通訳がいないために起こる言語の障壁はディスアビリティと言えるのではないかと考えた。
30.藁の楯 監督:三池崇史
[あらすじ]
孫娘を惨殺された政財界のドンが、容疑者の首に10億円の懸賞金を懸ける。身の危険を感じたその容疑者は、福岡で自首。そして金目当てに全国民から命を狙われる彼を、5人のSPが48時間以内に警視庁に護送することになる。
[考察]
邦画なのにスケールの大きいストーリー構成と迫力のあるアクションシーンが魅力の一つ。藤原竜也のクズ役演技は見ている側を不快感を植え付けてくるほどによくハマっていたと感じた。
それでもなお、警察サイドの詰めの甘さやタイミングの良すぎる被害者の登場など突っ込みどころは多く、この作品にリアリティを求めるのはナンセンスだと感じた。それでも、積み重なった社会不安や私人逮捕系YouTuberに代表される自警意識、昨今の要人警護で起きる事件を鑑みると、このフィクションにそういった社会性の批判を見出すこともできなくはないのかなと考えた。
1.ヴァージン・パンク/Clockwork Girl 監督:梅津泰臣
[あらすじ]
西暦2099年、医療用人工人体技術「ソーマディア」を違法に改造した犯罪者と、彼らの殺処分を行うバウンティハンターのいる世界。
児童養護施設出身の神永羽舞は、とある事件からバウンティハンターのMr.エレガンスと因縁を持つ。やがてバウンティハンターとなった羽舞の前に再び現れたMr.エレガンスの手によって、彼女の運命は狂いはじめる。
[考察]
令和に顕現した梅津作画の超大作。YouTubeに載っているティザーPVだけでもぜひ見ていただきたい。10年という長い期間を制作に費やしたとのことで、梅津監督のフェチズムを多分に含んだキャラクター描写と近未来SFの世界で繰り広げられる圧巻のバトルが、きわめてリアルで繊細かつ大胆な作画・演出によって表現されている。30分という短い尺にもかかわらず長編作品を見たと錯覚するような、濃密なストーリーと誰しもが満足する映像表現が素晴らしい。今作も「殺し屋の少女×キモオヤジ」という梅津が長らく用いてきたプラットフォームのストーリー設定であるが、今作におけるキモオヤジ枠、Mr.エレガンスは、前作までの同ポジションのキャラクターと比較して、主人公となる少女へ求めるものが肉欲的なものからより精神的な、愛情ともいえる要素へ傾向しているように感じた。
2.タコピーの原罪(アニメ) 監督:飯野慎也
[あらすじ]
ハッピーを広めるため地球に降り立ったハッピー星人のタコピーは人間の女の子しずかと出会う。ピンチを救ってもらったタコピーは、しずかの笑顔を取り戻すため不思議な力を持つハッピー道具で奔走する。しかし、しずかはおうちと学校で何か事情を抱えているようで…。これは、ぼくときみの最高にハッピーな物語――。
[考察]
視聴後は想像以上に心がえぐられてしまって、さすが配信のみでの公開というだけあるなと感じた。全6話という視聴ハードルの低さも、この泥沼に足を踏み入れるきっかけとして大いに機能している。
この作品のキーパーソンであるタコピーの存在は、人間のコミュニティに介入する上でその複雑で込み入った事情を汲み取ろうとせず、無邪気に“ハッピー”をふりまこうとする底なしの明るさがストーリーやキャラクターの置かれた状況の暗さ・重さと不協和音を奏で、その温度差から不気味さを発生させるものである。
さらにこのアニメでは、広角レンズによってパースが強調されたシーンが多く用いられている。広角レンズは映す対象の形を歪ませ、不安定感を演出することができるとともに、GoProで撮影された映像などを例に挙げると、映像の視聴者がその場にいるような臨場感やダイナミックさ・迫力を演出することもできる。本作で多分に用いられている広角レンズによる映像表現は、ストーリーが描くキャラクターの不安感、怒りや絶望といったネガティブな感情を強調する意味があると考えられる。
3.帰ってきた あぶない刑事 監督:原廣利
[あらすじ]
刑事を定年退職したのち、横浜で探偵業を始めたタカとユージ。ある女性の依頼を受けることになった2人は、やがて巨大な陰謀に巻き込まれていく。
[考察]
あぶない刑事最新作!ほぼカーアクション目当てで観たわけだが、年を重ねて白髪交じりになったタカ&ユージが現役さながらにアクションをこなし、見る側の期待する“お約束”要素も含め曲も車もTVドラマの再現やオマージュがふんだんに盛り込まれており、どの要素をとってもファンの心を刺激しまくるいい作品だと感じた。それと同時に、前作から約10年の時を経てさらに“老い”が明確に強調された部分も多く、それでもなおダンディーで、セクシーであり続ける2人の姿は、この作品とともに年を重ねてきたであろう中年ファンにとって、「年を取ることへの道しるべ」のように映ったのかもしれないと考えた。
4.新幹線大爆破 監督:樋口真嗣
[あらすじ]
新青森から東京へ向けて定刻どおり出発した新幹線「はやぶさ60号」。車掌の高市和也は、いつもと変わらぬ思いで乗客を迎える。そんな中、1本の緊迫した電話が入る。その内容は、はやぶさ60号に爆弾を仕掛けたというものだった。爆弾は、新幹線の時速が100キロを下回ると即座に爆発するという。高市は極限状況の中、乗客を守り、爆発を回避すべく奔走する。一方、犯人は爆弾解除のかわりに1000億円を要求してくる。はやぶさ60号の乗務員・乗客はさまざまな窮地と混乱に直面し、事態は鉄道会社や政府、警察、国民をも巻き込み、犯人とのギリギリの攻防戦へと展開していく。
[考察]
前期の作品紹介で興味を持ち鑑賞するに至ったが、JR東日本全面協力というだけあって映像のクオリティが高く、臨場感があった。矢継ぎ早に指令が飛び交い現場の人間が奮闘する、そういうシーンが大好きなので終始満足感があった。
5.よふかしのうた(アニメ) 監督:板村智幸
[あらすじ]
女子がニガテな中学2年生の夜守コウはただ今、なんとなく不登校中。さらには、夜に眠れない日々が続いている。そんなある日、コウは初めて夜に、誰にも言わずに外に出た。夜風が気持ちよく、どこまでも自由で、昼間とちがう世界。コウは夜に居場所を見つける。そこに突如、謎の美少女・七草ナズナが現れる。彼女は、夜の住人・吸血鬼。コウに、夜の楽しさを教えてくれるナズナ。「今日に満足できるまで、夜ふかししてみろよ。少年」。夜に、そしてナズナに魅了されていくコウは、彼女に頼み込む。「俺を吸血鬼にしてください」。ナズナは吸血鬼になる条件を教える。照れながら。それは……。「人が、吸血鬼に恋をすること!」。果たして恋を知らないコウは、ナズナと恋をして、晴れて吸血鬼になれるのか!? ふたりぼっちの、特別な「よふかし」が始まる――。
[考察]
夜の表現が素晴らしい。コウが夜を未知にあふれた輝かしい世界と捉えていることを、アニメーションでしか表現できない鮮やかで彩度の高いグラフィックによって演出し、基本的にはそこに主要キャラ以外の人間が描かれることはない。全話を通して、主人公たちが主役となれる舞台としての夜を描くことに徹底していた。
6.よふかしのうた season2 監督:板村智幸
[あらすじ]
“夜はまだ終わらない”吸血鬼になることへの戸惑いを乗り越え、ナズナを“好き”になることを決めたコウと、コウに“惚れさせる”決意をしたナズナ。「恋」が一体なんなのか、わからないまま二人の夜は加速していく。吸血鬼を殺そうと企む探偵・鶯 餡子の手が、すぐそこまで迫る。吸血鬼の弱点は「人間時代に思い入れの強かったもの」。その弱点を予め処分しようとするが、ナズナには人間時代の記憶が一切ない。ナズナの隠された過去とは?なぜ餡子は吸血鬼を殺すようになったのか?そして、ナズナと餡子に交錯する“秘密”とは——?コウ、ナズナ、餡子……楽しい「よふかし」では終わらない、新たな“夜”がはじまる!
[考察]
1期においてコウが続けていた、自問自答の「自分探しの旅」という普遍的なテーマが、今度はナズナに焦点を当て、より直接的な意味でキャラクターが自身の過去と向き合い、今まで明かされてこなかったいくつもの過去が、テンポよく進むストーリーの中で徐々にはっきりとした形で表れてくる。
ナズナの営む「添い寝屋」は夜における悩み・不安のあらゆる解決策の提示を行う。10年をかけた餡子の自殺劇が、大まかな部分はハッピーエンドという形で失敗におわり、コンコルド効果によって餡子が積み重ねてしまった10年間という月日と、彼女に重くのしかかる喪失感や無力感を、物語のスタート地点とも言える「添い寝屋」の仕事によって緩和する、という綺麗にまとまった結末だと感じた。
そしてオリジナルストーリーとなった2期最終回では、コウが餡子の家庭を崩壊へと追いやった原因となる吸血鬼を探すこと、それによって餡子を救うことをこれ以降の第二目標として提示している。
7.今夜、世界からこの恋が消えても 著者:一条岬
[あらすじ]
無気力に生きる高校生の神谷透は、人気者の真織に無謀な嘘の告白をする。ところが意外にも本気で好きにならないことを条件に告白は受け入れられ、2人は付き合うことになる。
[考察]
前向性健忘の真織を好きになった透は彼女をその絶望の渦中から救おうとする。その時その一瞬を懸命に生きている真織を毎日あの手この手で楽しませようとする透の姿が丁寧に描かれたあと、彼は突然の死を迎え、透との約束通り泉が彼の記録を真織のもとからすべて消し去ってしまう。そこまでで描かれていたのは記録することでしか維持できない真織の記憶のはかなさであるが、それでも、真織が前向性健忘から立ち直ったあと透の存在に気付いたきっかけとなったのは、彼の提案によって絵を描き始めた真織の体が学習した記憶“手続き記憶”であり、そんな救いを提示してくれる儚くも清々しく慈愛にあふれた落とし方は、喜怒哀楽のどれにも当てはめられない不思議な感情を呼び起こさせる。
8.ミギとダリ(アニメ) 監督:まんきゅう
[あらすじ]
舞台は、1990年神戸市北区。アメリカの郊外をモデルに造られたニュータウン、オリゴン村。裕福な住民が暮らすこの町に、“ひとりの”少年が養子としてやってくる。 少年の名は秘鳥(ひとり)。 美しく聡明な少年・秘鳥に、園山夫婦は魅了されるが、 秘鳥には、大きな秘密と目的があった――。秘密とは、秘鳥は実は一人ではなく、双子の兄弟(ミギとダリ)であること。一人として生活し、学校へも 通う。そして二人はすり替わりながら協力して母の死の真相を探っていく。しだいに明かされる秘密と真実とは?
[考察]
前半はミステリアスな雰囲気とシリアスな空気の中で幾度となく繰り返されるシュールなギャグが癖になる。徐々に彼らの過去や“ふたりでひとり”を演じる理由が明るみになり、後半では2人の確執や一条家の真相といった、シリアスというか半ばホラーのような要素も加わる、
ミギとダリが2人であることが明るみになった最終話で、一連の出来事から3年後、ダリは進学校へ通うために列車に乗り込み旅立つ。真相へたどり着きカルマとも言える呪縛から解放され、ダリの負った火傷痕などから“ふたりでひとり”ではいられなくなった彼らが、互いに別々の人生を歩めるようになる結末には感動した。
9.MIU404
[あらすじ]
警視庁の働き方改革の一環で作られたという架空の設定の臨時部隊「警視庁刑事部・第4機動捜査隊」。機動力と運動神経はピカイチだが機捜経験がなく、考える前に身体が動いてしまう“野生のバカ”伊吹藍(綾野剛)と、観察眼と社交力に長けているものの、自分も他人も信用しない理性的な刑事志摩一未(星野源)がバディを組み、“第4機捜”のメンバーと共にさまざまな事件に臨む姿を描く。
[考察]
これは「誰かが最悪の事態になる前に止められる」、いわば「未来を担う」機捜隊員たちのストーリーである。彼らが見せる、単に善悪という物差しでの判断に限らず「罪を犯していようが救うべきところは救う」という姿勢は、3話にて虚偽通報をした犯罪者でありながら伊吹とともに仲間を救う選択をとった勝俣が、続編「ラストマイル」に伊吹の後輩の機捜隊員として登場していることに表れている。
最終話、現実となることを回避した最悪のエンド、志摩の死を経験した世界線ではコロナパンデミックは発生せず、東京オリンピックが正常に開催される。しかし、真のエンドは伊吹と志摩は死ぬことなく久住を逮捕するハッピーエンドにおわり、コロナ禍によってオリンピックは正常には開催されていない世界線である。そしてこの差を引き起こしたトリガーは伊吹の犯したシンプルで小さい過ちにすぎない。私たちの生きる現実の世界線につながる結末を真のエンドとすることには、時には絶望へもたどり着く選択不可能な「未来」を変えうる些細なきっかけは日常のあらゆる選択の中に潜んでいることを描き、「あおり運転」「留学生や技能実習生のトラブル」「薬物依存」「SNSの脅威」といった、あらゆる“身近に起こりうる危険”をはらんだ現実世界を取り扱った本作だからこそ、これらの脅威を現実世界の時間軸上のストーリーで取り扱うことで“リアルな脅威”の警告として機能させる意味があると考えられる。
10.ラストマイル 監督:塚原あゆ子
[あらすじ]
大手ショッピングサイトの荷物に次々と爆発物が仕掛けられる謎の連続爆破事件が発生。巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナは、未曽有の危機に立ち向かっていく。
[考察]
我々消費者は日々便利な通販サイトを使い商品が指定日通りに届くことを当たり前とし、そうでない場合は不平不満を口にする。そんな利便性と効率を追求した現代社会に仕込まれた爆弾は、ラストワンマイルの運送を担う、顧客一人一人を大切に思うかつて熟練ドライバーとして働いていた軽バン配達員と、消費社会の現代では時代遅れとなった堅牢で高い耐久性を持つ洗濯機によって、最後には最小限の被害をもって処理された。止まらない効率化のアンチテーゼとして機能する“非効率を大切にするベテランの精神”を伏線にとんだ巧みな脚本で描いている。
真犯人であるまりかの死によって明らかになった最後の爆弾が届けられたのは404号室、本作と世界観を共有しているMIU404のタイトルを差し込んできているとともに、それが最後まで見つかるのことなかった、「404 Not found」な爆弾であったことを示していると考えられる。
11.機動戦士ガンダム SEED FREEDOM 監督:福田己津男
[あらすじ]
独立運動や侵攻により、いまだ終結しない争い。やがてキラたちは、沈静化のために創設された世界平和監視機構に参加し、戦闘に加わっていく。
[考察]
美しさや才能だけが愛を構成するのではない。優れた人類“コーディネイター”と自然状態の人類“ナチュラル”という優劣をつけられた異人種間で、コーディネイターらによって定められた運命にキラとラクスは互いの立場から“愛”をもって抗おうとする。
12.デイライト 監督:ロブ・コーエン
[あらすじ]
かつて緊急医療班の隊長を務めていた男。現在はタクシー運転手を職についていた彼だったが、あるとき凄惨なトンネル事故の現場に遭遇する。過去の経験に突き動かされ、彼はトンネル内部への進入を決行。中に閉じこめられた生存者たちを救い出すべく、命懸けで奔走する。
[考察]
スタローン主演のディザスター映画。冒頭のトンネル爆破シーンの撮影ではおそらくミニチュアモデルを使用したのだろうと考えられるが、生々しい崩落の映像と次々に車両を襲う火炎の勢いには圧倒される。
映画のラストシーンでは、公開当初(96年)まだ悲劇に襲われていなかったWTCビルが背景に映し出される。9.11のテロ攻撃でビルを襲った猛火と崩落はそこにいた多くの人の命を奪った。悲劇の中の救出劇をテーマにした本作の締めとしてカメラに収められたWTCビルの存在は、現実にはスタローンのようなヒーローは不在であり、予測できない脅威から犠牲者を増やしてしまう、そんな救われない悲惨な結末を思い出させる。
13.機動警察パトレイバー2 the Movie 監督:押井守
[あらすじ]
2002年、謎の戦闘機が横浜ベイブリッジを爆破、公には自衛隊機であったと報道され、日本は緊張状態に陥る。厳戒態勢の中、警視庁特車二課の後藤は、この事件の容疑者に、1999年のPKFで東南アジアに於いて行方不明になっている元自衛隊員、柘植を挙げて捜索を始めるが、その頃ある飛行船が首都に向かっていた。
[考察]
荒川の指摘した“戦争でない”というだけの偽りの平和、その空虚な平和は実体を持った戦争によって埋め合わされるが、私たちはその成果だけを受け取り、モニターの向こうに戦争を押しやって、自分たちがその戦線のただ後方にいるに過ぎないことを忘れてしまう。現代の戦争およびその報道は、生身の人間を殺戮する現実味のない異常な世界観を安全圏にいる私たちに見せつける。21世紀に入っても変わることのなかったこの問題を提起した本作は、戦争映画とは全く違った視点でその脅威を私たちに伝えてくれる。
14.GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊 監督:押井守
[あらすじ]
西暦2029年。公安の精鋭による特殊部隊「攻殻機動隊」が、国際手配中のハッカー「人形使い」が日本に現れるとの情報を掴む。そんな折に搬送されてきた、事故に遭ったというサイボーグ。その体には、危険な秘密が隠されていた。
[考察]
物語前半にて登場するゴミ収集車の男が犯罪に加担したのは、人形遣いにより改竄された記憶に基づいて、そこに生じた問題を解決しようとした結果であり、これは、記憶のもろさ・記憶を操作されるこの世界がはらんだ危険性を示している。
物語の中盤、船上で素子がバトーとの会話の中で口にしたのは、アイデンティティは自らの身体によってではなく、周囲の情報によっても規定され、意識を作り出すという彼女の立てた仮設であり、自分を規定するアイデンティティの在り方への執着がうかがえる。その後彼女は、謎の義体“人形遣い”の登場にその疑問を解決する糸口を見つける。
人形遣いの電脳に潜り込み、電脳がゴーストを生み出しているのか、そうでないのかを調べることで、素子が悩んでいた自らのアイデンティティが電脳と義体から作り出されたものではないか、という疑問を払拭することができる。しかし人形遣いと同期する形でコミュニケーションを取った結果は、人形遣いと素子の双方が抱いていた進化への欲求のもと、2人が融合して新たな生命体となるものであった。この結末が素子にどのような答えを与えたのかは作中に明記されていない。
15.僕だけがいない街(アニメ) 監督:伊藤智彦
[あらすじ]
漫画家としてデビューするも、いまひとつ結果を出せずに毎日を過ごす青年・藤沼悟。彼は、彼の身にしか起こらない、ある不可思議な現象に不満を感じていた。 ――再上映(リバイバル)。何か「悪い事」が起こる直前まで時が巻き戻る現象。それは、その原因が取り除かれるまで何度も繰り返される。……まるで、誰かに「お前が防げ」と強制されているかのように。しかし、ある日起きた事件をきっかけに、その現象に大きな変化が訪れる。自らの過去に向き合う時、悟が目撃する真実とは?
そして、悟の未来は――?
[考察]
“リバイバル”の能力によってかつて救えなかった加代の命を誘拐殺人犯から死守しようとする悟。その行動は結果としてその犯人八代学をも救う結果となった。タイムリープモノの作品の中でも結末の丸め方が綺麗でストレスを感じずに見れた。展開が少し異なる原作も読んでみたいと感じた。
16.Catch Me If You Can 監督:スティーヴン・スピルバーグ
[あらすじ]
高校生のフランク・W・アバグネイルは尊敬する父が母と離婚すると聞き、ショックで衝動的に家を飛び出してしまう。そして、生活のため偽造小切手の詐欺を始めるようになる。最初はなかなかうまくいかなかったが、大手航空会社のパイロットに成りすますと誰もがもののみごとに騙された。これに味をしめたフランクは小切手の偽造を繰り返し巨額の資金を手に入れるのだった。一方、巨額小切手偽造詐欺事件を捜査していたFBI捜査官カール・ハンラティは、徐々に犯人に迫っていくのだったが...。
[考察]
家族愛から犯罪に手を染め、大胆な選択と自信満々の行動で逃げ続ける。そんな天才詐欺師の配役にレオナルド・ディカプリオは最適だと感じた。彼を追うFBI捜査官はトム・ハンクスが演じており、この2人の関係性は手に汗握る逃走劇にどこか安心感を感じさせるものがある。これが実話をもとにした作品であるという点、さらに主人公はその能力が買われて後にFBIの下で働くこととなった点は驚くべきポイントだ。
17.ダイ・ハード4.0 監督:レン・ワイズマン
[あらすじ]
コンピュータを狂わすサイバー・テロの猛威により都市部の信号は消え、政府の機能が麻痺するなど、全米がパニックに陥ってしまう。偶然にも事件に巻き込まれてしまったマクレーン刑事は、テロリスト集団に迫ってゆく。
[考察]
スキンヘッドになったマクレーン刑事がワシントンを守るべくオタク少年と大奮闘。サイバー犯罪という新たな脅威に上層部フル無視で敵陣に単身乗り込み組織を壊滅させる。頑固オヤジが魅せるタフなガン&カーアクションはハリウッド映画の醍醐味である。
本作では過去の作品ではあまり前面に押し出されなかった“親子の絆”の要素が追加されており、マクレ-ンの勝利に際し娘が一役買ったシーンがこれにあたる。そしてこの絆の物語は、次作『ダイ・ハード/ラスト・デイ』において最も強化されることとなる。
18.サマーゴースト 監督:loundraw
[あらすじ]
ネットで知り合った高校生の友也、あおい、涼。彼らは、それぞれ家族や友人、将来について悩みを抱えていた。そんなある時、3人は夏にだけ現れると噂されていた若い女性の幽霊「サマーゴースト」に会おうと思い立つ。
[考察]
主人公らはみな、生きることに関する悩みを抱えており、死に近い人間だけが見ることのできる幽霊と会話し、接することができる。涼は病気により余命を宣告され、生きる願望に対し不条理な死が待ち受けている。あおいはスクールカーストによりいじめを受け、死を辛い現実からの解放と見ている。友也は2人とは異なり、優秀さから大人に期待される自らの“生”の状態に対して漠然とした死を望む。そんな3人が“サマーゴースト”に自らの人生の一歩を踏み出すきっかけを求め、結果はサマーゴーストを“精神的な死の世界”から解放するという成功に終わる。
ストーリーの帰結するポイントが若干あいまいな点など少し粗も感じるが、一番に評価できる点は作品全体に透き通るような空気感を演出する美しい背景美術だと感じる。勇気を出して一歩を踏み出してみる、という青春と成長をテーマにした作品にありがちなメッセージを秘めてはいるが、美しい色彩の背景とシンプルかつ空気感の感じられるライティング、レンズフレアなど光の演出には観る側を画面に引き付け、そのテーマを死と生、影と光という二項対立により強調している。若者に共感されやすいキャラクター設定と理解しやすい起承転結のストーリーは30分ほどの尺にキレイに収まっていた。
19.逃亡者(映画) 監督:アンドリュー・デイヴィス
[あらすじ]
シカゴに住む優秀な外科医の男は、妻殺しの容疑で逮捕される。彼は帰宅時に、家から逃げ出す片腕の男を目撃後、瀕死の妻を発見していた。無実を訴えるも死刑判決を受けた彼は、護送中の事故に乗じて逃亡。連邦保安官に追われる身となりつつも、真犯人を探し出そうとする。
[考察]
妻殺しの濡れ衣を着せられた寡黙な医師リチャード・キンブルが、潔白の証明のため逃亡を続ける。
キンブル医師は逃げた先々で医者としての責任から人の命を救いつつ持ち前の信頼と人脈で犯人の手掛かりを探し、連邦保安官のジェラードは迅速で抜かりのない捜査とあくまで真実の究明を目的とした執念の追跡で犯人を特定する。2人のプロフェッショナルが逃げる・追うの関係から共に犯人を追う関係へと変化し、結末はハッピーエンドに終わる。2時間の尺の間まったく退屈させないテンポの良さ、追う側も逃げる側も頭の回転が速くもどかしさを一切感じない構成が素晴らしい。
20.ファイナル・デスティネーション 監督:ジェームズ・ウォン
[あらすじ]
修学旅行で飛行機に乗った高校生が、離陸直前に眠りに落ち、その機体が爆発する夢を見る。彼は混乱し、パニック状態で機内から脱出。彼を連れ戻そうとした6人を残して飛行機は離陸し、そして本当に爆発する。しかしそれは、さらなる悲劇の序章に過ぎなかった。
[考察]
このシリーズが革新的だったのは、主人公らに襲い掛かる敵は見ることのできない“死の運命”である点だ。本シリーズでキーワードとなる“死の順番”は実に秩序立って運命にあらがおうとする登場人物たちを殺しにかかり、そこに目的は存在しない。非情な死が繰り返されるこの映画の見どころは、ピタゴラスイッチのように緻密に計算された殺害方式と、抵抗むなしく死の順番が近づくことにおびえる彼らと同じように、観る側の私たちもその恐怖におびえることができる点だ。“次は俺の番だ!”
21.デッドコースター 監督:デヴィッド・エリス
[あらすじ]
友人との旅行で自分の車が大事故に巻き込まれる予知夢を見たキンバリー。実際の事故からは間一髪で危機を逃れた彼女だったが、夢によって救われた人々は運命に追われるように、次々と不可解な死をとげていく。
[考察]
シリーズ2作目。最初のハイウェイでの事故シーンは交通安全ビデオにしても良いくらいよくできている。
前作の生存者とのつながりから得られた情報やや“死の順番”の新たなパターンの展開など前作から内容を発展させつつ、よりテンポよく物語が進んでいくのでシリーズ中でも見やすい1作。
22.ファイナル・デッドブリッジ 監督:スティーヴン・クォーレ
[あらすじ]
会社でチャーターしたバスで遭遇した巨大吊り橋崩落事故。事故直前に橋崩壊の映像が頭の中に浮かんだサムのおかげで、8人が大惨事から生き残った。だが、謎の男から「死は決して騙されない」と宣告され、事故の生存者が次々に悲惨な死をとげていく。だが、“他人に死を贈る”ことで“死の運命”から逃れられることが判明する。
[考察]
シリーズ5作目の本作は3D映画初のR-18指定を受けている。そのぶん死亡描写の気持ち悪さは大幅にアップしていて評価は分かれるだろう。死の連鎖を止めようと奮闘する登場人物の姿もおなじみのものであり、謎の助言者の存在も変わらない。最終的に物語の結末はシリーズ第一作、ファイナル・デスティネーションの冒頭とつながり、本作での生存者は飛行機事故にて死亡する。これは、2011年の映画にしては画面に映る車両がやたら古めかしい事からも示されていた。
23.ラッシュアワー 監督:ブレット・ラトナー
[あらすじ]
愛娘を誘拐された在ロサンゼルスの中国領事が、香港から生え抜きの刑事を呼び寄せる。それが目障りなFBIは、ロス市警きっての破天荒な刑事を監視役として派遣する。最初は反目しあっていた2人だったが次第に結束を固め、やがて意外な黒幕を突き止める。
[考察]
序盤に出てきた2階建てバスでのアクションシーンは、ジャッキーチェンが数多くの香港映画において2階建てバスをアクションの舞台としてきたことを意識していると考えられるし、彼が得意とする“飛び移る”アクションが他のハリウッド作品に比べ多用されていたことも考えると、この映画は今までに出演したハリウッド作品であまりキャラクターが活かされず伸び悩んだ過去をもつジャッキーチェンを、本国作品と同じように輝かせる目的を持った、“ハリウッドの舞台でジャッキーチェンを改めてもてなす映画”としての役割も持っていたのではないかと考えられる。
しかしながら、本作はジャッキーチェン単独ではなくバディものの映画のため、アクションシーンにおいて相方役を務めるクリスタッカーにカメラを向けたショットが度々挟まり、香港映画時代のように比較的長いショットでジャッキーチェンのアクションの巧みさを魅せるようなシーンが少ないようにも感じた。
24.オットーという男 監督:マーク・フォースター
[あらすじ]
妻を亡くして以来、不幸な日々を送るオットー。しかし、近くに引っ越してきた若い家族と出会い、機転の利くマリソルとの友情が、彼の人生を大きく変えることになる。
[考察]
アメリカの隣人文化や各キャラクターの味付け、アメリカ特有の自動車文化など、オリジナルのスウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』をハリウッド映画としてうまく再構築させている。
本作は前期教科書内容との被りが見られ、妻の死や仲たがいしたままコミュニケーションの取れなくなった親友はの存在を原因として自殺願望を抱くようになった彼の心は「治癒なき主体」を形成し、彼の偏屈な人間性をディスアビリティへと変えている。そしてそれは新しい隣人たちとのコミュニケーションにより解消される。
25.チェンソーマン レゼ篇 監督:𠮷原達矢
[あらすじ]
雇い主の裏切りにより命を落としたデンジは、「チェンソーの悪魔」であるポチタとの契約により“チェンソーマン”として蘇り、マキマのスカウトで公安対魔特異4課に所属する。憧れのマキマとのデートで浮かれているなか、雨宿りをしていると、カフェで働く謎の少女レゼと出会う。デンジはなぜか自分に興味津々なレゼを気になり始める。
[考察]
MAPPAの映像美。原作と比較できる点は、漫画の尺よりも繊細に描かれた場面転換と、キャラクターの表情管理の巧みさ、そこから最大限に引き出されるレゼの可愛らしさだと感じた。また、漫画よりも自由なカメラアングルはギャグとシリアスをより効果的に描き、場面にメリハリが生まれていた。
レゼとデビルハンターの戦闘シーンはまるで漫画を見ているかのようなカッティングが用いられ、レゼとデンジの戦闘シーンでは圧倒される大爆発の連続とグラフィカルな一枚絵に魅せられた。レゼがデビルハンターに襲われる直前、天使の悪魔が口パクでなにかを呟くシーンが差し込まれていたが、原作には無い演出であり非常に気になった。
26.宝島(映画) 監督:大友啓史
[あらすじ]
1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民らに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。そんな戦果アギヤーとして、いつか「でっかい戦果」をあげることを夢見るグスク、ヤマコ、レイの幼なじみの若者3人と、彼らにとって英雄的存在であるリーダー格のオン。しかしある夜の襲撃で“予定外の戦果”を手に入れたオンは、そのまま消息を絶ってしまう。残された3人はオンの影を追いながら生き、やがてグスクは刑事に、ヤマコは教師に、そしてレイはヤクザになり、それぞれの道を歩んでいくが、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境で、思い通りにならない現実にやり場のない怒りを募らせていく。そして、オンが基地から持ち出した“何か”を追い、米軍も動き出す。
[考察]
目玉のひとつである旧車を大胆に用いた原作再現を目的に鑑賞したが、それに加え音楽の演出や時間の推移とともに様々に変容するヒューマンドラマ、ラストに明らかになる“あの日”の真相など、3時間の鑑賞中も飽きさせることのない濃い映画だった。原作小説をまだ読んでいないので、読破後にもう一度見比べたいと思った。
27.グリーンブック 監督:ピーター・ファレリー
[あらすじ]
時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無学だが、腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていた。ある日、トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。彼の名前はドクター・シャーリー、カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいた。二人は、〈黒人用旅行ガイド=グリーンブック〉を頼りに、出発するのだが─。
[考察]
60年代のアメリカ南部において起きていた黒人差別は、当時の人間にとっては当たり前のことで、バーの人間・警官・ホテルの支配人など職種問わず差別意識を持っていた。そして現代では、人種差別に加えあらゆるマイノリティへの差別意識が表面化してきている。この作品においては上記の双方の差別が描かれ、それを主人公トニーは最終的には容認する。ドン・シャーリーは自身が被差別の身であることを理解し、その上で自らの才能を評価されようとした。
差別意識を持った人間の言う“差別される理由”は、その人のある一面にしかすぎず本質をとらえられていない。だが盲目な彼らにはそれを認識することはできない。私たちは盲目な人間に成り下がっていないだろうか、そんな問いをこの映画は提示してくれる。
28.マイ・インターン 監督:ナンシー・マイヤーズ
[あらすじ]
ニューヨークに拠点を置く人気ファッションサイトのCEOを務めるジュールスは、仕事と家庭を両立させるという誰もが羨むような人生を歩んでいた。
ところが彼女は仕事と家庭それぞれで問題が発生し、人生最大の試練に立ち向かっていた。
そんな折、会社の福祉事業で雇われたシニアインターンの40歳以上年上のベンが、ジュールスのアシスタントに就く。
初めは年上のベンの言葉など聞き入れようとしなかったジュールズだが、
人生の大先輩であるベンの言葉や行動から次第に一目置くようなり、心を通わせていく…。
[考察]
ロバート・デ・ニーロ演じるベンのユーモアにあふれた柔和な雰囲気は、本作が“老人から学べ”という説教じみた作品でないことを示してくれる。
ベンがシニアインターンに参加する理由は「誰かに必要とされたい」からであり、老後を過ごす多くの高齢者は同じ悩みを抱えている。シニア世代のワークフェアは、この映画が公開された2015年と比較して一般的に認知されるようになったが、高齢者を孤立させない、孤独にさせない社会の実現への道のりは、少なくとも日本においてはまだ遠いように感じる。
29.ターミナル 監督:スティーヴン・スピルバーグ
[あらすじ]
東欧の小国からニューヨークに訪れた男性ビクター・ナボルスキーはジョン・F・ケネディ空港に到着すると祖国クラコウジアがクーデターによって消滅したことを伝えられる。祖国の消滅によりパスポートを使用することができなくなったビクターはニューヨークに降り立つことも祖国クラコウジアに戻ることもできなくなり足止めを喰らってしまうことに。英語もまともに話せないビクターだったが空港のターミナル内で生活を始める。
[考察]
空港で足止めを食らい、そこで生き延びることを決心したビクターは、アメリカへの入国を待ち続けた。この「待つ」行為は、客室乗務員アメリアがが浮気性の彼氏を待ち続けたことにも当てはまる。この2人は望みが叶う時を平すら待っていたのだ。ただ、ビクターは待っている間にも仲間を増やし、収入を得て、英語も学んでいる。そんな努力があったからこそのアメリカ入国であり、結局は彼氏の元へと戻ったアメリアとは対比して描かれている。
また、今作の内容は教科書の“ディスアビリティ”の項目とつながる点があり、主人公ビクターにおいて、空港に通訳がいないために起こる言語の障壁はディスアビリティと言えるのではないかと考えた。
30.藁の楯 監督:三池崇史
[あらすじ]
孫娘を惨殺された政財界のドンが、容疑者の首に10億円の懸賞金を懸ける。身の危険を感じたその容疑者は、福岡で自首。そして金目当てに全国民から命を狙われる彼を、5人のSPが48時間以内に警視庁に護送することになる。
[考察]
邦画なのにスケールの大きいストーリー構成と迫力のあるアクションシーンが魅力の一つ。藤原竜也のクズ役演技は見ている側を不快感を植え付けてくるほどによくハマっていたと感じた。
それでもなお、警察サイドの詰めの甘さやタイミングの良すぎる被害者の登場など突っ込みどころは多く、この作品にリアリティを求めるのはナンセンスだと感じた。それでも、積み重なった社会不安や私人逮捕系YouTuberに代表される自警意識、昨今の要人警護で起きる事件を鑑みると、このフィクションにそういった社会性の批判を見出すこともできなくはないのかなと考えた。
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