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大門優
RES
①『チェンソーマン』(単行本1巻〜11巻)
著:藤本タツキ 集英社
【あらすじ】
悪魔という存在が日常に蔓延る世界で、主人公デンジは父親の借金を返すため、チェンソーの悪魔ポチタと共にデビルハンターとしてド底辺の生活を送っていた。デンジ達はヤクザの斡旋の下、悪魔を駆除していたのだが、ある日、命の危機に陥ったことをきっかけに、唯一の友達だったポチタと融合し、デンジは悪魔の力を手に入れることとなった。やがて公安所属のデビルハンター、マキマに拾われ、「公安対魔特異4課」の一員として働くことになる。死の間際、ポチタと交わした「私の心臓をやるかわりにデンジの夢を見せてほしい」という契約を守るため、チェンソーの悪魔となったデンジは新たな生活を始め、過酷な運命に抗うのだ。
【感想・考察】
全体を通し、人智を越えた存在の描写がとても分かりやすく描かれていると考える。特に3巻、呪いの悪夢カースによるコマ枠外からのデコピンが印象的であった。コマ枠を飛び出すという表現はよくあるものだが、人では無い何かの存在を読者に明確に伝えるのに適した技法であると感じた。
またそのような存在に対する恐怖の描き方にも衝撃を受けるものが多かった。銃の悪魔被害による死亡者の名前をズラッと書き並べる演出や、闇の悪魔登場シーン、11人の真っ二つの宇宙飛行士などの印象が強い。この宇宙飛行士は、1997年までに事故死した宇宙飛行士の数と一致するようだ。人類の恐怖というものを示唆するのに、これ以上の物を見たことがないほど卓越した表現であると感じた。
藤本タツキの作風として、とても単調に物語が進む印象がある。登場キャラクターが、わりとあっさり死亡するのだ。そのため、読んでいてとてもテンポが良く、物語の進展が早いと感じた。その読みやすさは、登場人物の心情を長々と書かないことによる効果であると考える。しかし、まったく書かれていないわけではない。登場人物の死は、確実に残されたキャラクターに影響しているのだ。9巻アキの「怖気づきました」や、アキの死後アイスを吐くデンジなど、確かに描かれるその登場人物の成長や変化が、この作品の魅力なのだと考える。
②『チェンソーマン レゼ篇』(映画)
原作:藤本タツキ
監督:𠮷原達矢 脚本:瀬古浩司
【あらすじ】
原作単行本5巻86p〜6巻までの映画化。主人公デンジが偶然出会った少女、レゼに翻弄されながら、予測不能な運命へと突き進むボーイミーツガールの物語。デンジの新しいバディであるサメの魔人ビームや、天使の悪魔など主要キャラクターが登場する。
【感想・考察】
まず、物語としてのまとまりがとても良いと感じた。長さ的にも、展開的にも、映画化に適した原作部分であったのではないだろうか。
冒頭、いつも見る扉の夢のシーンは白黒から始まり、その後主題化『IRIS OUT』のMV的映像に繋がるため、画面の賑やかさのギャップで視聴者の心を掴んでいるように感じた。
全体を通して、このような急激な展開の切り替わりによる効果があったと考える。特にモンタージュ技術によって展開、構成がより魅力的になっていたのではないだろうか。特に、暗殺者から逃げるレゼのシーンにおけるカットモンタージュ、花火大会でのキスシーンにおけるマッチカットなどは、原作漫画には無い表現であり、映画作品としてさらに作品をよくする表現であったと感じた。
戦闘シーンの迫力は言うまでもないため割愛。ここでは台風の悪魔との戦闘について触れたい。台風の悪魔撃破時の、血しぶきが飛び散るシーンの脚色にて、原作では1コマだけであったこのシーンに、血が海のように街に流れるシーンが追加されていた。まるでエヴァの使徒撃破時のようなこのシーンは、そのオマージュだったのではないだろうか。
映画レゼ篇には、原作漫画ラストシーンよりほんの僅かに救いがあるのかもしれないと考えている。原作では喫茶店の中でデンジが花束を持っている様子を、レゼが視認できていたのか明確ではなかった。しかし映画では該当シーンがPOVショットとなり、まばたきのような演出が加えられているのである。この演出による微かな救いが、物語をより切ないものにし、出会えなかった二人を見た視聴者の余韻を強固なものにしているのではないだろうか。
最後、レゼが訪れなかった喫茶店にパワーが訪れ物語は幕を閉じるのだが、冒頭以来のパワーの登場により日常に戻っていく雰囲気が、よりレゼとの日常の儚さを演出しているように感じた。
③『光の死んだ夏』(単行本1巻〜6巻)
著:モクモクれん KADOKAWA
【あらすじ】
とある集落で暮らす少年、よしきと光。同い年の2人はずっと一緒に育ってきた。しかしある日、光が行方不明になってしまう。帰ってきたのは、光の姿をした、しかし光ではないナニカだった。例え偽物でも、代わりだとしても一緒にいたい。友人の姿をしたナニカとよしきの奇妙な関係を描く、青春ホラー作品。
【感想・考察】
日常に潜む、人ならざる者という恐怖。知り合いや、親しい人が同じような状態になってしまったら、きっと恐れ慄くだろう。私がそのような価値観を持っているからこそ、光とよしきの異様な共依存関係が、より魅力的に感じるのだと思う。
ナニカに入れ替わった光は度々人ならざる価値観を出してしまう。しかしその根本にある寂しさや悲しみがそのナニカのキャラクターを魅力的にすると同時に、光が死んだという現実を叩きつける証拠となり、よしきにダメージを与えているのだ。
はじめは光の代わりとしてナニカを扱っていたよしきも、関係を重ねるうちに彼そのものに向き合うようになる。ナニカもまたよしきとの関係をきっかけに成長していく。この2人の歪な関係とその成長こそがこの作品の魅力であると考える。
物語は現在この2人の成長を中心に、ナニカの正体を探るというストーリー展開である。2人の現実に向き合うその姿を、最後まで見届けたいと思う。
④『怪獣8号 第1期』(アニメ)
原作:松本直也
制作:Production I.G 監督:宮繁之、神谷友美
【あらすじ】
怪獣が人々の生活を脅かす世界。怪獣と戦う日本防衛隊になる夢を諦め、怪獣の死体を片付ける清掃業に就いていた日比野カフカは、ある出会いをきっかけに再び夢を追い始める。しかしその矢先、謎の怪獣によって、怪獣に変化する力を得てしまう。それでも夢を諦めず、カフカは怪獣災害に立ち向かう。
【感想・考察】
物語の始まり、カフカが現状を肯定しようと自分に言い聞かせようとする場面で、対照的に描かれる汚く狭い部屋や、散乱したレトルト食品のごみなどが、夢を諦めた中年男性の現実を生々しく描いているように感じた。このような主人公が力を手に入れるという展開はありふれたものだが、この作品の魅力はそのありふれた主人公カフカの自分への向き合い方にあると考える。
スーツや武器の力をまったく引き出せないカフカは紛れもない防衛隊の落ちこぼれだ。しかしその逆境の中あきらめないその姿が、他の隊員や様々な人物影響を与えていくのだ。彼の素の人間力で築かれていく仲間との関係が、カフカが怪獣であることが露呈した時の展開をより魅力的なものにしていると考えられる。11話にて連行されるカフカに、同乗する上官へのものと称して敬礼するシーンは、特に心揺さぶられるものであった。
映像としては、ゴジラやエヴァの影響を受けていると考えられるシーンが多々見られるように感じた。カフカの一撃必殺的な攻撃により飛び散る怪獣の血液や臓物は、まさにエヴァの使徒のようである。しかし怪獣撃破後に降り注ぐ血の雨、そこに立ち尽くす怪獣8号という絵はこの作品特有のものであり、怪獣8号を象徴するシーンなのではないだろうか。
⑤『怪獣8号 第2期』(アニメ)
原作:松本直也 監督:宮繁之
制作:Production I.G
【あらすじ】
四ノ宮功の判断によって兵器化を免れた怪獣8号・日比野カフカ。そんな彼の前に現れたのは、第1 部隊を率いる防衛隊最強の男・鳴海弦だった。新しい環境にて、カフカは防衛隊の戦力として、新たな生活を始めることになる。防衛隊には暗躍する怪獣9号の脅威も迫り、防衛隊に史上最大の危機が訪れようとしていた。新世代の防衛隊は、この危機を乗り越えることができるのだろうか。
【感想・考察】
第2期ではカフカが自身の持つ怪獣の力と向き合うということについて描かれる。怪獣の力を使いすぎると元に戻れないかもしれない、という事実を知った後も、カフカは戦うことを選ぶのだ。カフカを想う仲間の反応と、カフカのその選択との対比が、彼らが築いてきた関係性を象徴しているのだと考えられる。
また、第2期では他の隊員の成長も描かれる。とある隊員が、努力では変えられない才能という壁を前に、仲間に嫉妬や妬みの感情をぶつけてしまうシーンは、第1期のカフカのような葛藤を想起させた。しかし彼は最終的に仲間を助け、後を追いかける。主人公カフカ同様に、諦めず、前に進むその姿勢と成長こそがこの物語の鍵なのだ。
第2期は、第1期と比べ人型の強力な怪獣が複数登場する。そのため第1期のようなエヴァやゴジラのオマージュ的な描写は減り、変わりにその怪獣の強さを示唆する表現が多いように感じた。その中でも特に23話の怪獣15号戦闘時におけるPOVショットが印象に残っている。そのため戦闘のメリハリという点では第2期のほうが魅力があるのではないかと考える。
⑥『俺だけレベルアップな権』
原作:DUBU、Chugong、h-goon 監督:中重俊祐
制作:A-1 Pictures
【あらすじ】
舞台は異次元と現世界を結ぶゲートという物が登場発生した世界。そこでは特殊能力を発言する人間が現れ、ハンターといえ職業が生まれた。そんな中、人類最弱兵器と呼ばれる主人公水篠旬は、ある事件をきっかけに自分だけがレベルアップする能力を手に入れる。降りかかる試練を乗り越え、水篠旬は力を求め前に進むのだ。
【感想・考察】
このようなカラー漫画作品のアニメ化は始めて視聴したため、「原作がそのまま動いている!」という印象を普通の漫画のアニメ化より強く感じたように思える。これはメリットである一方、デメリットにもなり得た。私は漫画のアニメ化の大きなメリットは、色が付き、動くことだと考えている。そのため、元から色があるこのような作品において、序盤における動きに対する感動が少ないように感じたのだ。しかし、このアニメの魅力は成長にあるように、その動きに対する感動も、物語が進むと共に進歩していたのではないかと考える。その変化は、戦闘シーンで強く見られる。
前半は泥臭い戦い方が目立つ主人公であったが、物語が進むにつれレベルが上がり、戦闘のテンポや動きが良くなる。その追体験がより戦闘シーンを魅力的にする同時に、カメラワークにも変化を与えているのだと考える。序盤に比べ、明らかにダイナミックに、そして様々な視点で動いているのだ。特に物語終盤のイグリット戦は、多様な視点から描かれる。POVショットや俯瞰視点などを高速に切り替えるその手法は、視聴者に対する「動き」というものへの感動を増幅させているのだ。
主人公の成長と同期して、カメラや映像の動きも素早くなるこの作品は、追体験による新たな感動を与えてくれる作品であった。
⑦『俺だけレベルアップな権 Season2 -Arise from the Shadow-』
原作:DUBU、Chugong、h-goon 監督:中重俊祐
制作:A-1 Pictures
【あらすじ】
レベルアップを続ける水篠旬は、母親の病気を治す薬を作る、という新たな目標のために戦いを続ける。そんな中、過去に多くのハンターが挑むもクリアに失敗した架南島のゲートからは、アリの脅威が迫っていた。
【感想・考察】
Season1と比べ、人間ドラマが多い印象であった。レベルアップによる力を得た水篠旬の人間関係は複雑化し、その裏では様々な権力争いや陰謀が起こることになる。戦闘面だけでなく、このような人間関係の中で彼に守りたい人や物が増えていく様子も、この作品の魅力であると考える。
物語終盤では、水篠旬の強さは圧倒的なものとなる。その戦闘の爽快さは、Season1からの成長の追体験があるからこそ、より際立つものなのではないだろうか。
⑧『その着せ替え人形は恋をする Season2』(アニメ)
原作:福田晋一 監督:篠原啓輔
制作:Clover Works
【あらすじ】
雛人形を作る頭師を目指す五条若菜と、同じクラスの人気者、喜多川海夢。コスプレを通じて交流を深める2人は文化祭でのクラスメイトとの関わりや、新しいコスプレ仲間との出会いの中で、さらに関係を深めていく。
【感想・考察】
この作品で一番特徴的な点は、アニメの中でアニメを流すという、複数のメディアを混在した状態を作り出す点である。Season2ではとあるゲーム作品のコスプレをするのだが、そのゲームを五条若菜がプレイするシーンでは、実際にそのゲーム画面が画面に映っているかのように描写しているのだ。コスプレにおける作品を知ることの大切さという、五条若菜が大切にしている行動を追体験させるこの表現があることにより、視聴者はより作品に、てコスプレに没入することが出来ているのではないだろうか。
またSeason2ではクラスメイトとの関わりが五条に大きな影響を与えている。物語の根幹にもある好きな事をするのはおかしくない、という考えを、クラスメイトを通して改めて実感し、自信を持っていく彼の姿は、視聴者にそれまでとは別の感動を与えているのだ。
⑨『ホリミヤ』(アニメ)
原作:HERO、萩原ダイスケ 監督:石浜真史
制作:Clover Works
【あらすじ】
成績優秀、容姿端麗、クラスの人気者である堀京子は、家では共働きの両親に代わって家事や弟の面倒を見る家庭的な女子高生であった。そんなある日、ケガをした弟を送り届けてくれた宮村伊澄と出会い彼の秘密を知ってしまう。彼らを中心に広がる、でこぼこで、されど心温かい人間関係を描く群像劇。
【感想・考察】
最初に、全体的に大幅に物語がカットされていた。1クールのアニメとして綺麗に収められていたが、カットされている分、原作と比べ展開の早さを若干感じてしまった。ホリミヤ-piece-において追加で人気エピソード描かれているため、こちらも視聴することをオススメしたい。
この作品の魅力は堀京子、宮村伊澄の2人による、お互いの知らていない姿を知ることから始まる。かなり距離の近い状態から始まる2人の関係であるが、関係が進展するにつれ今までにはない表情を見せたり、反応をする2人の独特な距離感は、読者に新鮮な恋愛ストーリーを見せてくれる。またこの2人以外の人間関係においても、クセの強いキャラクターが多く、見ていて飽きない作品であった。
⑩『ソードアート・オンライン』(アニメ1〜25話)
原作:川原礫 監督:伊藤智彦
制作:A-1 Pictures
【あらすじ】
フルダイブシステムが発展した世界、主人公キリトは「ソードアート・オンライン」というVRゲームをスタートする。しかしそれは制作者の野望によって開かれた、ゲームオーバー=死のデスゲームだったのだ。主人公キリトはゲームをクリアし、現実世界に戻ることができるのだろうか。
【感想・考察】
シリーズを通し一番視聴者の心を揺さぶり、感動させたのは、この最初の物語であると私は考える。実際にVRゲームが大きく発展している現代において、そしてさらに発展するであろうこれからの時代で、この作品に対する認識も大きく変化するのではないだろうか。
アニメ全体を通してPOVショットによる影響が大きいように感じた。実際にゲームをプレイしている登場人物の視点を見るその追体験は視聴者の没入感をより強固なものにしている。特にゲームからログイン出来ないことが発覚するシーンでは、これにより不穏感が高まっていたと考える。
作中におけるソードアート・オンラインというゲームは、様々な人間に影響を与え、多くの火種を残し、これからのシリーズ全てに関係してくる。たかがゲームのデータという認識を覆すストーリー展開、そしてキリトの選択と行動は、その後の物語全体に影響を与えているのだと考える。
⑪『ソードアート・オンラインⅡ』(アニメ1〜24話)
原作:川原礫 監督:伊藤智彦
制作:A-1 Pictures
【あらすじ】
ゲーム、ソードアート・オンラインから無事帰還したキリト。SAO生還者として目をつけられたキリトは総務省から依頼を受け、ガンゲイルオンラインというゲームに潜入することになった。目的はゲーム内の銃撃で実際に人を殺すと噂の「デスガン」の調査であった。そのゲームでキリトは凄腕のスナイパー、シノンと出会うことになる。
【感想・考察】
前作同様、POVショットによる描写が見られるが、それに加えスコープ越しの視点、弾道の追従というものがよく用いられるようになっている。これは前作が剣と魔法が中心の戦いであるのに比べ、基本銃撃戦のガンゲイルオンラインとの大きな差である。そのような戦闘において、スローモーション映像を挟むことにより、映像にメリハリをつけているのではないかと感じた。
後半クールに登場する、ユウキというキャラクターも、物語に大きく影響を与えている。ヒロインのアスナは、病気で死ぬ間際のユウキから、特別なスキルを授かる。この技は後々の作品で登場し、視聴者にユウキの存在を想起させる。この技はたかがゲームのデータといえど、それ以上の意味や価値を持つ。そしてここには、それらを受け継ぎ、繋いでいくという、シリーズを通した想いが描かれているのではないだろうか。
⑫『劇場版ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール-』(映画)
原作:川原礫 監督:伊藤智彦
制作:A-1 Pictures
【あらすじ】
AR型情報端末オーグマーが発売され、専用ゲームオーディナル・スケール(OS)が爆発的に人気になった。キリト一行もプレイするのだが、その途中、今は存在しないはずのSAOのボスが登場するイベントの情報を手に入れる。OSの裏で動く野望に、キリト達は新たな戦いを始める。
【感想・考察】
これは劇場版書き下ろしストーリーとなっている。すでに類似するAR機器の発売が可能になっていることを考えると、この映画のような問題が起こってもおかしくない未来も遠くないのかもしれない。そう考えると、この作品も別視点から楽しむことができた。
ストーリー展開的には原作者書き下ろしストーリーということもあり、まったく違和感なく視聴することができた。物語後半、人々を救うため仲間が集結するシーンでは、SAOⅡにおけるユウキの技なども登場し、ベタでありながらもシリーズにおける積み重ねを感じる展開であった。
今回の事件の発端であるSAO被害者について、事件記録全集に1文記述されるという物語の締め方も、受け継いで、紡いでいくというシリーズの流れを感じるものであった。
⑬『百瀬アキラの初恋破綻中。』(単行本1〜2巻)
著:晴川シンタ 小学館
【あらすじ】
ド田舎に暮らす少年、久我山はじめのもとに帰ってきた、かつての憧れの同級生、百瀬アキラ実は彼女は、大好きなはじめと結ばれるため、周到な計画を立てて田舎に帰ってきていた!! しかし、超不器用なアキラの計画は、いつもだいぶ空回り。 一方はじめも超鈍感&先走り体質で、めちゃくちゃにすれ違ってしまう。果たして2人は、思い描いた未来へ進めるのか。
【感想・考察】
この作品を読んでいて特に印象に残るのは、物語冒頭に挟まる田舎エピソードプロローグである。鎮座する鹿、駆除されたツキノワグマ、ツチノコ捕獲イベント等々、数コマで終わるにも関わらず印象が強い。これらのエピソードは作者の故郷が参考にされているらしい。このプロローグが物語における閑話休題の役割を果たし、ストーリーにメリハリを出しているのではないだろうか。はじめとアキラのグダグダ恋愛にこのような要素が加わることで、2人のうまくいかない奇妙な関係がラブコメ展開に進む繋ぎの役割となり、ギャグと恋愛が織りなす魅力的な作品となっているのではないだろうか。
⑭『Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season』(アニメ51〜66話)
原作:長月達平 監督:篠原正寛
制作:WHITE FOX
【あらすじ】
聖域での戦いから1年が過ぎ、エミリア陣営も平穏な日々を送っていた。しかしその平和は、1枚の書状によって終わりを告げる。アナスタシアの使者としてやってきたヨシュアとミミによって届けられたのは、水門都市プリステラへの招待状。そこには、エミリアが探していた魔晶石を持つ商人がいるという。物語は幕を開け、スバルの新たな戦いが始まった。
【感想・考察】
3期では大きく分けて、スバルの周囲からの認識の変化、そして戦闘という要素が描かれていた。特徴的なのは死に戻りというこの作品のメインともなる能力があまり使われなかった点にある。今まではその死に戻り能力によって情報を得ていたため、今作では上手く行きすぎているとすら思えたのだ。私は原作小説を読んでいないためあくまで推測にしかならないが、ここでは何かしら別の能力の影響があったのではないかと考えている。
スバルの演説シーンも、とても重要であったと考える。卑下から始まるその演説は街でおびえる人々の心をつかみ、前を向かせることに成功する。周囲のスバルの評価を変えることとなる重要なシーンであると同時に、スバルが一人で戦うわけではなくなることを表すシーンでもあるのだ。英雄扱い。負けることが許されなくなった状態で、「いつも通りだ」とつぶやくスバルの姿とその覚悟には心動かされる物があった。
⑮『東京喰種 トーキョーグール』(アニメ1〜12話)
原作:石田スイ 監督:森田修平
制作:studioぴえろ
【あらすじ】
平凡な学生カネキが恋したのは、人喰いの化け物喰種であった。ここから彼の運命の歯車は狂ってしまう。彼女に襲われたカネキは彼女の臓器を移植され、半喰種となってしまう。人ではなくなった彼は化け物と人間の狭間で苦しみ、そして新しい仲間に出会うことになる。
【感想・考察】
正義の反対は別の正義、を体現したかのような作品であると感じた。急に食べ物が食べれなくなり、人間を美味しそうに思ってしまう元人間という不安定な主人公の心情を表す悲痛な叫びなどが、作品の暗さをさらに強調していた。人間側からすれば喰種が、しかし喰種から見れば人間が絶対的悪になるその展開が、その中心にいるカネキ視点で描かれることにより、さらに悲痛なものになっているのだと考える。
また喰種の捕食器官である赫子による戦闘は、その武器の特殊さゆえに、他のアニメには無い独特な立ち回りを感じた。1期はこの戦闘シーンにおいて、一番勢いがあるシーズンであると考える。
このように、戦闘面そして精神面ともに、カネキの成長を通し物語が展開しているのだ。物語の最後、アオギリ樹加入という、原作とは違う展開で物語が進んでいく。
⑯『東京喰種 トーキョーグール√A』(アニメ1〜12話)
原作:石田スイ 監督:森田修平
制作:studioぴえろ
【あらすじ】
東京では好戦的な喰種集団、アオギリの樹、CCG、あんていくの激しい攻防戦が繰り広げられていた。あんていくから去ったカネキはアオギリの樹に加わる。CCGは梟という強力な喰種を捜索し、あんていくの面々は危機に瀕していた。
【感想・考察】
1期で喰種と人間の狭間で苦しんでいたカネキは、今作では喰種としての生活をしている。ここでストーリーは喰種側、人間側2方向から進行し、物語が展開していく。これにより正義の裏は正義というテーマを、さらに強調しているのではないだろうか。
物語の最後に、カネキは自分が守りたいもののために行動する。しかし、守り切ることは出来ず、そして友人まで失ってしまうことになるのだ。燃える思い出の地を後に、友人の亡骸を抱え人間のもとへ歩く彼の静かな彼は、何を思っていたのだろうか。モノローグ無しで、ただ歩くその姿は、物語の終幕を淡々と告げるような役割を果たしていたと思った。
⑰『東京喰種 トーキョーグール:re』(アニメ1〜24話)
原作:石田スイ 監督:渡部穏寛
制作:studioぴえろ
【あらすじ】
喰種を駆逐、研究するCCGが実験体集団を新設した。喰種の力を使い喰種を狩る彼等はクインクス(Qs)と呼ばれた。主人公佐々木琲世は彼らの指導役となり、喰種を狩るCCGの一員として戦う。
【感想・考察】
私はアニメのみ視聴していたため、最初は主人公が変わったことに驚いた。何の前触れもなく突如現れた新しい主人公佐々木琲世。しかし彼こそが、記憶を失った前作主人公カネキであったのだ。
東京喰種:reにおいて、カネキの見た目は何度か劇的に変化する。1期で人間と喰種の狭間にいたカネキは、2期で完全に喰種側になってしまっていた。3期であるreでは、CCGの一員、佐々木琲世と、喰種カネキの間で揺れ動くことになる。不安定な彼の立場や感情はその見た目に大きく反映され、読者にその様子を痛いほどに伝えてくるのだ。
この主人公の安定しない心情がこの作品の魅力であると考える。物語の最後、彼が出した結論は、喰種、そして人間の未来を大きく変える。それは彼が喰種と人間、どちらでもないからこその結末であった。カネキが何を守りたいのか。何のために戦うのか。種族の垣根を越えたその選択は、正義の反対は正義という壁を取り払う大きな行動となったのだ。
⑱『尾守つみきと奇日常』(単行本1〜7巻)
著:森下みゆ 小学館
【あらすじ】
多様性の時代とされる現代、「幻人」たちは人間と関わり合って生活していた。舞台は幻人たちが多く通う景希高校。そこに入学した人間の少年、真層友孝は過去の経験から人に合わせすぎて自分の気持ちが分からなくなっていた。そんな彼はウェアウルフの少女、尾守つみきと出会い、自分の気持ちを見つけていくのだった。
【感想・考察】
それぞれ違った特性を持った幻人のクラスメイト達。彼等はまたそれぞれ違った悩みを抱えていた。多様性を謳う世の中にあるちょっとした理不尽に、真正面からぶつかる尾守つみきとの姿と、それに影響され過去に立ち向かう真層友孝の成長は、微笑ましいものであると同時に、私達に立ち向かう勇気を与えてくれるものでもあると感じた。2人の関係性、そしてほのめかされる幻人と人間の恋愛問題についても、最後まで見届けたい作品である。
⑲『つめたいよるに デューク』(小説)
著:江國香織 新潮社
【あらすじ】
12月のとある日、一人の女が愛犬の死を悲しみ、大泣きしながら歩いていた。そんな彼女に一人の不思議な少年が声をかける。そんな少年になぜか、死んでしまった愛犬、デュークの面影を感じるのだった。
【感想・考察】
ペットを飼っていた人間なら、誰もが味わうこととなる別れの悲しみを、深く、そして丁寧に描いている作品であると感じた。「デュークが死んだ」と何度も繰り返すその表現は、死を受け入れられない主人公の情緒を生々しく描いている。作品全体を通しこの似たような文章を繰り返すことで、拭うことのできない悲しみや、埋めることのできない心の穴が見事に表現されているのだと考える。
最終的に少年がデュークなのか、生まれ変わりなのか。少年が人間だったのかなどは明かされずこの短編は終わる。この点を明確にしないからこそ、物語に余韻が生まれているのだ。
⑳僕の好きな人が好きな人(単行本1〜3巻)
原作:葵せきな 漫画:つづら涼 白泉社
【あらすじ】
主人公、秋月奏良は、思いを寄せていた後輩、不破美夜に告白するも「好きな人がいる」と振られてしまう。彼女の好きな人とは、生徒の様々な依頼を受ける謎の部活、治験部の部長、涼風朝陽。
朝陽の勧誘で治験部に入部することになった奏良だが、そこで朝陽にも幼い頃に出会った思い人がいることを知る。しかしその思い人は、実は秋月奏良だったのだ。
【感想・考察】
よくある三角関係のラブコメストーリーであるが、この作品の魅力はそのラブコメ要素だけではなく、恋敵同士の関係性にもあるのだ。この作品を通して秋月奏良は、想いを大切にするという考えを大切にしている。秋月は、恋を諦めようとする不破に対してその想いを大切にして欲しい、と背中を押すのだ。この3人の複雑な関係の入り混じこそが、この作品の魅力だと考える。
㉑『さらばウィリービンガム』(短編映画)
監督:Matt Richards
【あらすじ】
重犯罪を犯した囚人に対して、新たな量刑制度が設けられることになった。死刑より重いその罰、それは体の部位を少しずつ切断するというもの。刑は医療プロセスに基づき行われ、術後の痛みも少ない。しかし、その切断の内容や回数は被害者遺族が決めることができるのだ。
【感想・考察】
映画の中でこの刑が賛否両論だったように、もし現実に出来たとしても同じように意見が割れるか、反対される内容であると考えられる。刑が進むにつれ立ち会う被害者遺族は減り、ウィリーも、施術する医者もやつれていくその様子は、見ていて辛くなる。
週末になると問題児のいる高校などで見せしめとされるウィリーが、どんどん自分を見失っていく姿は、犯罪者といえど人間であるということを視聴者に思い出させる悲惨なものであった。刑に必要とされること、遺族が望むことについて今一度考えさせられる作品なのではないだろうか。
㉒『死のトンネル』
監督:Andrew Clabaugh、Alex Spear
【あらすじ】
とある家族の、海からの帰り道。同じ形の車が整然と並び、ゆっくりと進んでいく。しかしこれはただの渋滞ではない。その先に待つのは死のトンネル、増えすぎた人口を減らす、差別なき口減らしであった。静かな不穏さが続く、ディストピア・スリラー作品。
【感想・考察】
SF作品を書くにあたって、増え続ける人口をどうするのか?というのは作者の腕の見せ所であると考える。その点、この作品の死のトンネルという仕組みはシンプルで、しかし印象的なものであると言える。
家から出なければ良いなどの反論について、作品内で触れられることはない。ニュースでは直近いつトンネルが閉じたかが、淡々と報じられているのだ。まるで日常の一部かのようにそこにあり、人を殺している。生きるか死ぬか、その偶然の残酷さと、従うしかないであろう彼らの現状が、密かに描かれているのだと考えられる。
主人公の車はラスト、ギリギリでトンネルを抜ける。しかし主人公の息子が窓越しに目を合わせた少女の車は、トンネルの中に残されてしまうのだった。死と常に隣り合わせの生存の中で、サバイバーズ・ギルトに悩まされることとなるだろう。
生きるためには他者の犠牲を受け入れる必要があり、自分が次の犠牲者になる可能性に目を瞑らなければならない。その矛盾と葛藤こそがこの映画の魅力であると考える。
㉓『天国大魔境』(単行本1〜5巻)
【あらすじ】
文明が完全に崩壊した廃墟の日本、マルとキコルが旅をしていた。目的地は天国と呼ばれる場所。2人はそれぞれの目的を持ち、人喰いの化け物と戦いながら道を進む。一方、壁に囲まれた施設で外の世界を知らずに育つ子供たちがいた。子供たちはとある目的のため成長させられ、その陰謀は確実に進んでいる。そんな中、外の世界を夢見る子供がいた。この2つの視点から描かれる、近未来SFアドベンチャーである。
【感想・考察】
2つの視点で進むこの物語では、世界の謎が少しずつ解き明かされていく。特に人喰いの化け物ヒルコについては、その正体が人間であるという真実にたどり着くまでの布石が両方の視点から描かれていた。少しずつ世界の秘密が解き明かされるにつれ、新しい疑問が登場人物を襲う。この謎が謎を呼ぶ展開が世界に対する疑念や不安を増幅し、常に緊張感漂う展開を作り出す効果を生んでいると考えられる。
㉔『ドカ食いダイスキ!もちづきさん』(単行本1〜2巻)
著:まるよのかもめ
【あらすじ】
主人公は望月美琴、21歳、営業事務。おっとり、ほんわかな彼女の幸せはドカ食い。カロリーオーバードーズで至る、不健康限界突破、禁断グルメギャグ作品。
【感想・考察】
同じ人間としては信じられない食生活の主人公だが、見ていてどこか満足感のある作品である。彼女の食欲は尋常ではなく、健康診断で絶食を余儀なくされた様子は正気の沙汰ではない。その様子のおかしさからインターネット上で度々話題に上がり、ネットミームとなっている姿を見かけることも多い。良い意味でも悪い意味でも、読者への影響が大きかった作品であると考えられる。一方で、2巻で登場する妹がタバスコ狂であり、姉と共通して食に関する問題を抱えているため、家庭の問題があったのではないか?という見方もされている。
どちらにせよ、登場人物の不健康さは戦慄するほどのものであり、たびたび現れる死神が一番健康などと言われる当作品で、主人公が最後まで生きていることを願うばかりである。
㉕『片田舎のおっさん、剣聖になる』(単行本1〜7巻)
原作:佐賀崎しげる、鍋島テツヒロ
漫画:乍藤和樹 秋田書店
【あらすじ】
片田舎の村で細々と剣術道場を営む男ベリル・ガーデナントは、かつての教え子アリューシアの計らいにより、騎士団付きの特別指南役として王都に向かう事になる。大成した弟子達と再会し、盛り立てられるベリルは自らを卑下するが、その剣の腕は本物であった。
【感想・考察】
展開としてはありふれたものであるが、この作品の魅力は戦闘シーンの迫力にあると考える。登場するキャラクター全員にそれぞれの剣術があり、戦いの中での信念や目標があるのだ。また他作品では省かれがちな立ち回りや、重心の移動、太刀筋の個人差が明確に描かれ、見ていて飽きることの無い戦いが多いのだ。キャラクターの信念、そして丁寧に描からる戦闘シーンこそが、この作品を魅力的なものにしているのだ。
上記したのは剣同士の戦いについてである。作品内には魔法が登場する。現実には無い現象を相手に、剣の腕一つで挑むベリルの戦い方は、読者の感情を沸き立たせるものであると言えるだろう。この剣術の評価というのはアニメ化でも顕著に表れ、その点において海外からの評価も高いのだ。
㉖『ルックバック』(映画)
原作:藤本タツキ 監督:押山清高
【あらすじ】
藤野と京本、2人の少女は、小学校の卒業新聞に漫画を載せることをきっかけに出会った。最初は藤野の一方的なライバル心であったが、引きこもりがちな京本に自分の漫画のファンだと言われ、やがて2人は一緒に漫画を描き始める。中学卒業後も創作に打ち込む日々を送るが、ある日を境に2人は違う道に進むこととなった。そしてそれぞれの思いを胸に、2人は創作活動を続ける。藤野は漫画家として成功した。しかし、そんな彼女の耳に京本の訃報が届くのだった。
【感想・考察】
描くという行為に向き合う2人のすれ違いに心打たれる物語であった。特に印象的なのは藤野の背中を映し、時間だけが過ぎていくという表現である。劇中何度か用いられるこの表現は、まるで京本が見て成長してきたであろう藤野の背中を見ているかのような印象を視聴者に与えているのではないだろうか。
まるであり得た別の世界を描くかのようなシーンと、残酷な現実のと対比、そしてそれでも机に向かうラストシーンの藤野の後ろ姿からは、描くことへの執着、没頭、熱意、孤独、様々な想いが感じられる。この作品は何かを描くすべての人の心をつかむ作品であったと思う。
㉗『グランド・ブダペスト・ホテル』(映画)
監督:ウェス・アンダーソン
【あらすじ】
ヨーロッパ随一の超高級ホテル、グランド・ブダペスト・ホテル。完璧なおもてなしが評判の伝説のコンシェルジュ、グスタヴ・Hは、富豪の常連客が殺された事件であらぬ疑いをかけられる。そして彼は、ベルボーイ見習いの少年ゼロと共に、ホテルで起きた殺人事件の解明に奔走する。
【感想・考察】
魅力的なキャラクター達が織りなすそのストーリーは、コメディ要素とシリアスな要素が見事に噛み合った作品である。特にグスタヴの毒舌と時折見せる優しさ、そして彼が持つ誇りの美しさと、それゆえに生まれるギャグシーンに心を掴まれる視聴者が多いと考える。
また彼に影響されたゼロが、だんだんウィットに富んだ発言をするようになる様子も、彼の成長を感じさせると共にコメディシーンとして成り立ち、感動と笑いを共存させるものであった。
また映像作品としても、どこを切り取っても華やかな画面であり、ミニチュアを見ているかのようなその世界観の作り込みが、より視聴者を物語に没頭させているのではないだろうか。
㉘『HANA-BI』(映画)
監督:北野武
【あらすじ】
不治の病を患う妻を抱える刑事の西。彼は犯人との銃撃戦により部下を失い、また同僚の堀部に重傷を負わせてしまう。そして残された時間で妻と過ごすため、そして堀部のために、銀行強盗を決行しヤクザに追われる身となる物語
【感想・考察】
北野武映画独特のカメラワークと、多くを語らないその世界観に吸い込まれるかのような作品。妻との逃避行の中、追いかけてくるヤクザと戦うシーンは、他作品には無い淡々とした空気とそれゆえの迫力がある。
ラストシーンでは、その結末を映像で描くことはなく、銃声とロングショットのみで、視聴者の想像力に委ねる形をとっている。この描き方により、西と妻との関係の儚さと、物語の余韻を大きく残しているのだと考える。
㉙『ペーパー・ムーン』(映画)
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ
【あらすじ】
だらしなく楽観的なペテン師、モーゼス・プレイは、かつての恋人の葬式で、自らの子供か定かではない、アディ・ロギンズと出会う。狡猾なアディはモーゼに借金をさせ、彼と共にコンビを組み返済のための旅を始めるのだ。
【感想・考察】
狡猾な子供と、楽観的なペテン師というデコボココンビが織りなすコメディ要素の中に、確かな2人の絆の成長を感じることができる、心温まる作品。
特にアディの演技が凄まじく、モーゼとのやり取りがまるで本当に行われているかのように感じた。
本当の親子かも分からない2人が徐々に心を許しあい、最終的にまた旅を共にする展開、そして映画ポスターの2人の写真に、笑いと感動が生まれる。
最後まで2人が本当の親子なのか明かされることはない。しかし、例え偽物の親子だとしても、信じることでその関係は本物の関係になりうるのだと、作品を通して表現しているのだ。
㉚『シックス・センス』(映画)
監督:M・ナイト・シャマラン
【あらすじ】
かつて担当していた患者に銃で撃たれた高名な精神科医、マルコム。彼は複雑な症状を抱えた少年コールの治療に取り掛かる。少年には特殊な第6感があり、その能力のためにいじめられたり、恐怖におののいたりするのだと言う。かつての患者にコールを重ねたマルコムは、少年を治療しながら、妻とうまくいかない自らの心にも安息を見いだしていく。
【感想・考察】
最後のどんでん返しが非常に話題となった作品であり、その話題性に負けない衝撃のラストであった。マルコムとコールの2人が共に認めあい、お互いを信頼することで変わっていくその展開は視聴者の心を温めると共に、それすらラストシーンへの布石であることに驚くこととなる。
思い返してみればマルコムは誰とも会話しておらず、冒頭撃たれたマルコムがどうなったのかは、描かれていなかった。最後の最後までその事実に気が付かず、ゆっくりと進む感動的な物語に隠された伏線が、ラストシーンで伝えられるその衝撃は忘れられない物となるだろう。
著:藤本タツキ 集英社
【あらすじ】
悪魔という存在が日常に蔓延る世界で、主人公デンジは父親の借金を返すため、チェンソーの悪魔ポチタと共にデビルハンターとしてド底辺の生活を送っていた。デンジ達はヤクザの斡旋の下、悪魔を駆除していたのだが、ある日、命の危機に陥ったことをきっかけに、唯一の友達だったポチタと融合し、デンジは悪魔の力を手に入れることとなった。やがて公安所属のデビルハンター、マキマに拾われ、「公安対魔特異4課」の一員として働くことになる。死の間際、ポチタと交わした「私の心臓をやるかわりにデンジの夢を見せてほしい」という契約を守るため、チェンソーの悪魔となったデンジは新たな生活を始め、過酷な運命に抗うのだ。
【感想・考察】
全体を通し、人智を越えた存在の描写がとても分かりやすく描かれていると考える。特に3巻、呪いの悪夢カースによるコマ枠外からのデコピンが印象的であった。コマ枠を飛び出すという表現はよくあるものだが、人では無い何かの存在を読者に明確に伝えるのに適した技法であると感じた。
またそのような存在に対する恐怖の描き方にも衝撃を受けるものが多かった。銃の悪魔被害による死亡者の名前をズラッと書き並べる演出や、闇の悪魔登場シーン、11人の真っ二つの宇宙飛行士などの印象が強い。この宇宙飛行士は、1997年までに事故死した宇宙飛行士の数と一致するようだ。人類の恐怖というものを示唆するのに、これ以上の物を見たことがないほど卓越した表現であると感じた。
藤本タツキの作風として、とても単調に物語が進む印象がある。登場キャラクターが、わりとあっさり死亡するのだ。そのため、読んでいてとてもテンポが良く、物語の進展が早いと感じた。その読みやすさは、登場人物の心情を長々と書かないことによる効果であると考える。しかし、まったく書かれていないわけではない。登場人物の死は、確実に残されたキャラクターに影響しているのだ。9巻アキの「怖気づきました」や、アキの死後アイスを吐くデンジなど、確かに描かれるその登場人物の成長や変化が、この作品の魅力なのだと考える。
②『チェンソーマン レゼ篇』(映画)
原作:藤本タツキ
監督:𠮷原達矢 脚本:瀬古浩司
【あらすじ】
原作単行本5巻86p〜6巻までの映画化。主人公デンジが偶然出会った少女、レゼに翻弄されながら、予測不能な運命へと突き進むボーイミーツガールの物語。デンジの新しいバディであるサメの魔人ビームや、天使の悪魔など主要キャラクターが登場する。
【感想・考察】
まず、物語としてのまとまりがとても良いと感じた。長さ的にも、展開的にも、映画化に適した原作部分であったのではないだろうか。
冒頭、いつも見る扉の夢のシーンは白黒から始まり、その後主題化『IRIS OUT』のMV的映像に繋がるため、画面の賑やかさのギャップで視聴者の心を掴んでいるように感じた。
全体を通して、このような急激な展開の切り替わりによる効果があったと考える。特にモンタージュ技術によって展開、構成がより魅力的になっていたのではないだろうか。特に、暗殺者から逃げるレゼのシーンにおけるカットモンタージュ、花火大会でのキスシーンにおけるマッチカットなどは、原作漫画には無い表現であり、映画作品としてさらに作品をよくする表現であったと感じた。
戦闘シーンの迫力は言うまでもないため割愛。ここでは台風の悪魔との戦闘について触れたい。台風の悪魔撃破時の、血しぶきが飛び散るシーンの脚色にて、原作では1コマだけであったこのシーンに、血が海のように街に流れるシーンが追加されていた。まるでエヴァの使徒撃破時のようなこのシーンは、そのオマージュだったのではないだろうか。
映画レゼ篇には、原作漫画ラストシーンよりほんの僅かに救いがあるのかもしれないと考えている。原作では喫茶店の中でデンジが花束を持っている様子を、レゼが視認できていたのか明確ではなかった。しかし映画では該当シーンがPOVショットとなり、まばたきのような演出が加えられているのである。この演出による微かな救いが、物語をより切ないものにし、出会えなかった二人を見た視聴者の余韻を強固なものにしているのではないだろうか。
最後、レゼが訪れなかった喫茶店にパワーが訪れ物語は幕を閉じるのだが、冒頭以来のパワーの登場により日常に戻っていく雰囲気が、よりレゼとの日常の儚さを演出しているように感じた。
③『光の死んだ夏』(単行本1巻〜6巻)
著:モクモクれん KADOKAWA
【あらすじ】
とある集落で暮らす少年、よしきと光。同い年の2人はずっと一緒に育ってきた。しかしある日、光が行方不明になってしまう。帰ってきたのは、光の姿をした、しかし光ではないナニカだった。例え偽物でも、代わりだとしても一緒にいたい。友人の姿をしたナニカとよしきの奇妙な関係を描く、青春ホラー作品。
【感想・考察】
日常に潜む、人ならざる者という恐怖。知り合いや、親しい人が同じような状態になってしまったら、きっと恐れ慄くだろう。私がそのような価値観を持っているからこそ、光とよしきの異様な共依存関係が、より魅力的に感じるのだと思う。
ナニカに入れ替わった光は度々人ならざる価値観を出してしまう。しかしその根本にある寂しさや悲しみがそのナニカのキャラクターを魅力的にすると同時に、光が死んだという現実を叩きつける証拠となり、よしきにダメージを与えているのだ。
はじめは光の代わりとしてナニカを扱っていたよしきも、関係を重ねるうちに彼そのものに向き合うようになる。ナニカもまたよしきとの関係をきっかけに成長していく。この2人の歪な関係とその成長こそがこの作品の魅力であると考える。
物語は現在この2人の成長を中心に、ナニカの正体を探るというストーリー展開である。2人の現実に向き合うその姿を、最後まで見届けたいと思う。
④『怪獣8号 第1期』(アニメ)
原作:松本直也
制作:Production I.G 監督:宮繁之、神谷友美
【あらすじ】
怪獣が人々の生活を脅かす世界。怪獣と戦う日本防衛隊になる夢を諦め、怪獣の死体を片付ける清掃業に就いていた日比野カフカは、ある出会いをきっかけに再び夢を追い始める。しかしその矢先、謎の怪獣によって、怪獣に変化する力を得てしまう。それでも夢を諦めず、カフカは怪獣災害に立ち向かう。
【感想・考察】
物語の始まり、カフカが現状を肯定しようと自分に言い聞かせようとする場面で、対照的に描かれる汚く狭い部屋や、散乱したレトルト食品のごみなどが、夢を諦めた中年男性の現実を生々しく描いているように感じた。このような主人公が力を手に入れるという展開はありふれたものだが、この作品の魅力はそのありふれた主人公カフカの自分への向き合い方にあると考える。
スーツや武器の力をまったく引き出せないカフカは紛れもない防衛隊の落ちこぼれだ。しかしその逆境の中あきらめないその姿が、他の隊員や様々な人物影響を与えていくのだ。彼の素の人間力で築かれていく仲間との関係が、カフカが怪獣であることが露呈した時の展開をより魅力的なものにしていると考えられる。11話にて連行されるカフカに、同乗する上官へのものと称して敬礼するシーンは、特に心揺さぶられるものであった。
映像としては、ゴジラやエヴァの影響を受けていると考えられるシーンが多々見られるように感じた。カフカの一撃必殺的な攻撃により飛び散る怪獣の血液や臓物は、まさにエヴァの使徒のようである。しかし怪獣撃破後に降り注ぐ血の雨、そこに立ち尽くす怪獣8号という絵はこの作品特有のものであり、怪獣8号を象徴するシーンなのではないだろうか。
⑤『怪獣8号 第2期』(アニメ)
原作:松本直也 監督:宮繁之
制作:Production I.G
【あらすじ】
四ノ宮功の判断によって兵器化を免れた怪獣8号・日比野カフカ。そんな彼の前に現れたのは、第1 部隊を率いる防衛隊最強の男・鳴海弦だった。新しい環境にて、カフカは防衛隊の戦力として、新たな生活を始めることになる。防衛隊には暗躍する怪獣9号の脅威も迫り、防衛隊に史上最大の危機が訪れようとしていた。新世代の防衛隊は、この危機を乗り越えることができるのだろうか。
【感想・考察】
第2期ではカフカが自身の持つ怪獣の力と向き合うということについて描かれる。怪獣の力を使いすぎると元に戻れないかもしれない、という事実を知った後も、カフカは戦うことを選ぶのだ。カフカを想う仲間の反応と、カフカのその選択との対比が、彼らが築いてきた関係性を象徴しているのだと考えられる。
また、第2期では他の隊員の成長も描かれる。とある隊員が、努力では変えられない才能という壁を前に、仲間に嫉妬や妬みの感情をぶつけてしまうシーンは、第1期のカフカのような葛藤を想起させた。しかし彼は最終的に仲間を助け、後を追いかける。主人公カフカ同様に、諦めず、前に進むその姿勢と成長こそがこの物語の鍵なのだ。
第2期は、第1期と比べ人型の強力な怪獣が複数登場する。そのため第1期のようなエヴァやゴジラのオマージュ的な描写は減り、変わりにその怪獣の強さを示唆する表現が多いように感じた。その中でも特に23話の怪獣15号戦闘時におけるPOVショットが印象に残っている。そのため戦闘のメリハリという点では第2期のほうが魅力があるのではないかと考える。
⑥『俺だけレベルアップな権』
原作:DUBU、Chugong、h-goon 監督:中重俊祐
制作:A-1 Pictures
【あらすじ】
舞台は異次元と現世界を結ぶゲートという物が登場発生した世界。そこでは特殊能力を発言する人間が現れ、ハンターといえ職業が生まれた。そんな中、人類最弱兵器と呼ばれる主人公水篠旬は、ある事件をきっかけに自分だけがレベルアップする能力を手に入れる。降りかかる試練を乗り越え、水篠旬は力を求め前に進むのだ。
【感想・考察】
このようなカラー漫画作品のアニメ化は始めて視聴したため、「原作がそのまま動いている!」という印象を普通の漫画のアニメ化より強く感じたように思える。これはメリットである一方、デメリットにもなり得た。私は漫画のアニメ化の大きなメリットは、色が付き、動くことだと考えている。そのため、元から色があるこのような作品において、序盤における動きに対する感動が少ないように感じたのだ。しかし、このアニメの魅力は成長にあるように、その動きに対する感動も、物語が進むと共に進歩していたのではないかと考える。その変化は、戦闘シーンで強く見られる。
前半は泥臭い戦い方が目立つ主人公であったが、物語が進むにつれレベルが上がり、戦闘のテンポや動きが良くなる。その追体験がより戦闘シーンを魅力的にする同時に、カメラワークにも変化を与えているのだと考える。序盤に比べ、明らかにダイナミックに、そして様々な視点で動いているのだ。特に物語終盤のイグリット戦は、多様な視点から描かれる。POVショットや俯瞰視点などを高速に切り替えるその手法は、視聴者に対する「動き」というものへの感動を増幅させているのだ。
主人公の成長と同期して、カメラや映像の動きも素早くなるこの作品は、追体験による新たな感動を与えてくれる作品であった。
⑦『俺だけレベルアップな権 Season2 -Arise from the Shadow-』
原作:DUBU、Chugong、h-goon 監督:中重俊祐
制作:A-1 Pictures
【あらすじ】
レベルアップを続ける水篠旬は、母親の病気を治す薬を作る、という新たな目標のために戦いを続ける。そんな中、過去に多くのハンターが挑むもクリアに失敗した架南島のゲートからは、アリの脅威が迫っていた。
【感想・考察】
Season1と比べ、人間ドラマが多い印象であった。レベルアップによる力を得た水篠旬の人間関係は複雑化し、その裏では様々な権力争いや陰謀が起こることになる。戦闘面だけでなく、このような人間関係の中で彼に守りたい人や物が増えていく様子も、この作品の魅力であると考える。
物語終盤では、水篠旬の強さは圧倒的なものとなる。その戦闘の爽快さは、Season1からの成長の追体験があるからこそ、より際立つものなのではないだろうか。
⑧『その着せ替え人形は恋をする Season2』(アニメ)
原作:福田晋一 監督:篠原啓輔
制作:Clover Works
【あらすじ】
雛人形を作る頭師を目指す五条若菜と、同じクラスの人気者、喜多川海夢。コスプレを通じて交流を深める2人は文化祭でのクラスメイトとの関わりや、新しいコスプレ仲間との出会いの中で、さらに関係を深めていく。
【感想・考察】
この作品で一番特徴的な点は、アニメの中でアニメを流すという、複数のメディアを混在した状態を作り出す点である。Season2ではとあるゲーム作品のコスプレをするのだが、そのゲームを五条若菜がプレイするシーンでは、実際にそのゲーム画面が画面に映っているかのように描写しているのだ。コスプレにおける作品を知ることの大切さという、五条若菜が大切にしている行動を追体験させるこの表現があることにより、視聴者はより作品に、てコスプレに没入することが出来ているのではないだろうか。
またSeason2ではクラスメイトとの関わりが五条に大きな影響を与えている。物語の根幹にもある好きな事をするのはおかしくない、という考えを、クラスメイトを通して改めて実感し、自信を持っていく彼の姿は、視聴者にそれまでとは別の感動を与えているのだ。
⑨『ホリミヤ』(アニメ)
原作:HERO、萩原ダイスケ 監督:石浜真史
制作:Clover Works
【あらすじ】
成績優秀、容姿端麗、クラスの人気者である堀京子は、家では共働きの両親に代わって家事や弟の面倒を見る家庭的な女子高生であった。そんなある日、ケガをした弟を送り届けてくれた宮村伊澄と出会い彼の秘密を知ってしまう。彼らを中心に広がる、でこぼこで、されど心温かい人間関係を描く群像劇。
【感想・考察】
最初に、全体的に大幅に物語がカットされていた。1クールのアニメとして綺麗に収められていたが、カットされている分、原作と比べ展開の早さを若干感じてしまった。ホリミヤ-piece-において追加で人気エピソード描かれているため、こちらも視聴することをオススメしたい。
この作品の魅力は堀京子、宮村伊澄の2人による、お互いの知らていない姿を知ることから始まる。かなり距離の近い状態から始まる2人の関係であるが、関係が進展するにつれ今までにはない表情を見せたり、反応をする2人の独特な距離感は、読者に新鮮な恋愛ストーリーを見せてくれる。またこの2人以外の人間関係においても、クセの強いキャラクターが多く、見ていて飽きない作品であった。
⑩『ソードアート・オンライン』(アニメ1〜25話)
原作:川原礫 監督:伊藤智彦
制作:A-1 Pictures
【あらすじ】
フルダイブシステムが発展した世界、主人公キリトは「ソードアート・オンライン」というVRゲームをスタートする。しかしそれは制作者の野望によって開かれた、ゲームオーバー=死のデスゲームだったのだ。主人公キリトはゲームをクリアし、現実世界に戻ることができるのだろうか。
【感想・考察】
シリーズを通し一番視聴者の心を揺さぶり、感動させたのは、この最初の物語であると私は考える。実際にVRゲームが大きく発展している現代において、そしてさらに発展するであろうこれからの時代で、この作品に対する認識も大きく変化するのではないだろうか。
アニメ全体を通してPOVショットによる影響が大きいように感じた。実際にゲームをプレイしている登場人物の視点を見るその追体験は視聴者の没入感をより強固なものにしている。特にゲームからログイン出来ないことが発覚するシーンでは、これにより不穏感が高まっていたと考える。
作中におけるソードアート・オンラインというゲームは、様々な人間に影響を与え、多くの火種を残し、これからのシリーズ全てに関係してくる。たかがゲームのデータという認識を覆すストーリー展開、そしてキリトの選択と行動は、その後の物語全体に影響を与えているのだと考える。
⑪『ソードアート・オンラインⅡ』(アニメ1〜24話)
原作:川原礫 監督:伊藤智彦
制作:A-1 Pictures
【あらすじ】
ゲーム、ソードアート・オンラインから無事帰還したキリト。SAO生還者として目をつけられたキリトは総務省から依頼を受け、ガンゲイルオンラインというゲームに潜入することになった。目的はゲーム内の銃撃で実際に人を殺すと噂の「デスガン」の調査であった。そのゲームでキリトは凄腕のスナイパー、シノンと出会うことになる。
【感想・考察】
前作同様、POVショットによる描写が見られるが、それに加えスコープ越しの視点、弾道の追従というものがよく用いられるようになっている。これは前作が剣と魔法が中心の戦いであるのに比べ、基本銃撃戦のガンゲイルオンラインとの大きな差である。そのような戦闘において、スローモーション映像を挟むことにより、映像にメリハリをつけているのではないかと感じた。
後半クールに登場する、ユウキというキャラクターも、物語に大きく影響を与えている。ヒロインのアスナは、病気で死ぬ間際のユウキから、特別なスキルを授かる。この技は後々の作品で登場し、視聴者にユウキの存在を想起させる。この技はたかがゲームのデータといえど、それ以上の意味や価値を持つ。そしてここには、それらを受け継ぎ、繋いでいくという、シリーズを通した想いが描かれているのではないだろうか。
⑫『劇場版ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール-』(映画)
原作:川原礫 監督:伊藤智彦
制作:A-1 Pictures
【あらすじ】
AR型情報端末オーグマーが発売され、専用ゲームオーディナル・スケール(OS)が爆発的に人気になった。キリト一行もプレイするのだが、その途中、今は存在しないはずのSAOのボスが登場するイベントの情報を手に入れる。OSの裏で動く野望に、キリト達は新たな戦いを始める。
【感想・考察】
これは劇場版書き下ろしストーリーとなっている。すでに類似するAR機器の発売が可能になっていることを考えると、この映画のような問題が起こってもおかしくない未来も遠くないのかもしれない。そう考えると、この作品も別視点から楽しむことができた。
ストーリー展開的には原作者書き下ろしストーリーということもあり、まったく違和感なく視聴することができた。物語後半、人々を救うため仲間が集結するシーンでは、SAOⅡにおけるユウキの技なども登場し、ベタでありながらもシリーズにおける積み重ねを感じる展開であった。
今回の事件の発端であるSAO被害者について、事件記録全集に1文記述されるという物語の締め方も、受け継いで、紡いでいくというシリーズの流れを感じるものであった。
⑬『百瀬アキラの初恋破綻中。』(単行本1〜2巻)
著:晴川シンタ 小学館
【あらすじ】
ド田舎に暮らす少年、久我山はじめのもとに帰ってきた、かつての憧れの同級生、百瀬アキラ実は彼女は、大好きなはじめと結ばれるため、周到な計画を立てて田舎に帰ってきていた!! しかし、超不器用なアキラの計画は、いつもだいぶ空回り。 一方はじめも超鈍感&先走り体質で、めちゃくちゃにすれ違ってしまう。果たして2人は、思い描いた未来へ進めるのか。
【感想・考察】
この作品を読んでいて特に印象に残るのは、物語冒頭に挟まる田舎エピソードプロローグである。鎮座する鹿、駆除されたツキノワグマ、ツチノコ捕獲イベント等々、数コマで終わるにも関わらず印象が強い。これらのエピソードは作者の故郷が参考にされているらしい。このプロローグが物語における閑話休題の役割を果たし、ストーリーにメリハリを出しているのではないだろうか。はじめとアキラのグダグダ恋愛にこのような要素が加わることで、2人のうまくいかない奇妙な関係がラブコメ展開に進む繋ぎの役割となり、ギャグと恋愛が織りなす魅力的な作品となっているのではないだろうか。
⑭『Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season』(アニメ51〜66話)
原作:長月達平 監督:篠原正寛
制作:WHITE FOX
【あらすじ】
聖域での戦いから1年が過ぎ、エミリア陣営も平穏な日々を送っていた。しかしその平和は、1枚の書状によって終わりを告げる。アナスタシアの使者としてやってきたヨシュアとミミによって届けられたのは、水門都市プリステラへの招待状。そこには、エミリアが探していた魔晶石を持つ商人がいるという。物語は幕を開け、スバルの新たな戦いが始まった。
【感想・考察】
3期では大きく分けて、スバルの周囲からの認識の変化、そして戦闘という要素が描かれていた。特徴的なのは死に戻りというこの作品のメインともなる能力があまり使われなかった点にある。今まではその死に戻り能力によって情報を得ていたため、今作では上手く行きすぎているとすら思えたのだ。私は原作小説を読んでいないためあくまで推測にしかならないが、ここでは何かしら別の能力の影響があったのではないかと考えている。
スバルの演説シーンも、とても重要であったと考える。卑下から始まるその演説は街でおびえる人々の心をつかみ、前を向かせることに成功する。周囲のスバルの評価を変えることとなる重要なシーンであると同時に、スバルが一人で戦うわけではなくなることを表すシーンでもあるのだ。英雄扱い。負けることが許されなくなった状態で、「いつも通りだ」とつぶやくスバルの姿とその覚悟には心動かされる物があった。
⑮『東京喰種 トーキョーグール』(アニメ1〜12話)
原作:石田スイ 監督:森田修平
制作:studioぴえろ
【あらすじ】
平凡な学生カネキが恋したのは、人喰いの化け物喰種であった。ここから彼の運命の歯車は狂ってしまう。彼女に襲われたカネキは彼女の臓器を移植され、半喰種となってしまう。人ではなくなった彼は化け物と人間の狭間で苦しみ、そして新しい仲間に出会うことになる。
【感想・考察】
正義の反対は別の正義、を体現したかのような作品であると感じた。急に食べ物が食べれなくなり、人間を美味しそうに思ってしまう元人間という不安定な主人公の心情を表す悲痛な叫びなどが、作品の暗さをさらに強調していた。人間側からすれば喰種が、しかし喰種から見れば人間が絶対的悪になるその展開が、その中心にいるカネキ視点で描かれることにより、さらに悲痛なものになっているのだと考える。
また喰種の捕食器官である赫子による戦闘は、その武器の特殊さゆえに、他のアニメには無い独特な立ち回りを感じた。1期はこの戦闘シーンにおいて、一番勢いがあるシーズンであると考える。
このように、戦闘面そして精神面ともに、カネキの成長を通し物語が展開しているのだ。物語の最後、アオギリ樹加入という、原作とは違う展開で物語が進んでいく。
⑯『東京喰種 トーキョーグール√A』(アニメ1〜12話)
原作:石田スイ 監督:森田修平
制作:studioぴえろ
【あらすじ】
東京では好戦的な喰種集団、アオギリの樹、CCG、あんていくの激しい攻防戦が繰り広げられていた。あんていくから去ったカネキはアオギリの樹に加わる。CCGは梟という強力な喰種を捜索し、あんていくの面々は危機に瀕していた。
【感想・考察】
1期で喰種と人間の狭間で苦しんでいたカネキは、今作では喰種としての生活をしている。ここでストーリーは喰種側、人間側2方向から進行し、物語が展開していく。これにより正義の裏は正義というテーマを、さらに強調しているのではないだろうか。
物語の最後に、カネキは自分が守りたいもののために行動する。しかし、守り切ることは出来ず、そして友人まで失ってしまうことになるのだ。燃える思い出の地を後に、友人の亡骸を抱え人間のもとへ歩く彼の静かな彼は、何を思っていたのだろうか。モノローグ無しで、ただ歩くその姿は、物語の終幕を淡々と告げるような役割を果たしていたと思った。
⑰『東京喰種 トーキョーグール:re』(アニメ1〜24話)
原作:石田スイ 監督:渡部穏寛
制作:studioぴえろ
【あらすじ】
喰種を駆逐、研究するCCGが実験体集団を新設した。喰種の力を使い喰種を狩る彼等はクインクス(Qs)と呼ばれた。主人公佐々木琲世は彼らの指導役となり、喰種を狩るCCGの一員として戦う。
【感想・考察】
私はアニメのみ視聴していたため、最初は主人公が変わったことに驚いた。何の前触れもなく突如現れた新しい主人公佐々木琲世。しかし彼こそが、記憶を失った前作主人公カネキであったのだ。
東京喰種:reにおいて、カネキの見た目は何度か劇的に変化する。1期で人間と喰種の狭間にいたカネキは、2期で完全に喰種側になってしまっていた。3期であるreでは、CCGの一員、佐々木琲世と、喰種カネキの間で揺れ動くことになる。不安定な彼の立場や感情はその見た目に大きく反映され、読者にその様子を痛いほどに伝えてくるのだ。
この主人公の安定しない心情がこの作品の魅力であると考える。物語の最後、彼が出した結論は、喰種、そして人間の未来を大きく変える。それは彼が喰種と人間、どちらでもないからこその結末であった。カネキが何を守りたいのか。何のために戦うのか。種族の垣根を越えたその選択は、正義の反対は正義という壁を取り払う大きな行動となったのだ。
⑱『尾守つみきと奇日常』(単行本1〜7巻)
著:森下みゆ 小学館
【あらすじ】
多様性の時代とされる現代、「幻人」たちは人間と関わり合って生活していた。舞台は幻人たちが多く通う景希高校。そこに入学した人間の少年、真層友孝は過去の経験から人に合わせすぎて自分の気持ちが分からなくなっていた。そんな彼はウェアウルフの少女、尾守つみきと出会い、自分の気持ちを見つけていくのだった。
【感想・考察】
それぞれ違った特性を持った幻人のクラスメイト達。彼等はまたそれぞれ違った悩みを抱えていた。多様性を謳う世の中にあるちょっとした理不尽に、真正面からぶつかる尾守つみきとの姿と、それに影響され過去に立ち向かう真層友孝の成長は、微笑ましいものであると同時に、私達に立ち向かう勇気を与えてくれるものでもあると感じた。2人の関係性、そしてほのめかされる幻人と人間の恋愛問題についても、最後まで見届けたい作品である。
⑲『つめたいよるに デューク』(小説)
著:江國香織 新潮社
【あらすじ】
12月のとある日、一人の女が愛犬の死を悲しみ、大泣きしながら歩いていた。そんな彼女に一人の不思議な少年が声をかける。そんな少年になぜか、死んでしまった愛犬、デュークの面影を感じるのだった。
【感想・考察】
ペットを飼っていた人間なら、誰もが味わうこととなる別れの悲しみを、深く、そして丁寧に描いている作品であると感じた。「デュークが死んだ」と何度も繰り返すその表現は、死を受け入れられない主人公の情緒を生々しく描いている。作品全体を通しこの似たような文章を繰り返すことで、拭うことのできない悲しみや、埋めることのできない心の穴が見事に表現されているのだと考える。
最終的に少年がデュークなのか、生まれ変わりなのか。少年が人間だったのかなどは明かされずこの短編は終わる。この点を明確にしないからこそ、物語に余韻が生まれているのだ。
⑳僕の好きな人が好きな人(単行本1〜3巻)
原作:葵せきな 漫画:つづら涼 白泉社
【あらすじ】
主人公、秋月奏良は、思いを寄せていた後輩、不破美夜に告白するも「好きな人がいる」と振られてしまう。彼女の好きな人とは、生徒の様々な依頼を受ける謎の部活、治験部の部長、涼風朝陽。
朝陽の勧誘で治験部に入部することになった奏良だが、そこで朝陽にも幼い頃に出会った思い人がいることを知る。しかしその思い人は、実は秋月奏良だったのだ。
【感想・考察】
よくある三角関係のラブコメストーリーであるが、この作品の魅力はそのラブコメ要素だけではなく、恋敵同士の関係性にもあるのだ。この作品を通して秋月奏良は、想いを大切にするという考えを大切にしている。秋月は、恋を諦めようとする不破に対してその想いを大切にして欲しい、と背中を押すのだ。この3人の複雑な関係の入り混じこそが、この作品の魅力だと考える。
㉑『さらばウィリービンガム』(短編映画)
監督:Matt Richards
【あらすじ】
重犯罪を犯した囚人に対して、新たな量刑制度が設けられることになった。死刑より重いその罰、それは体の部位を少しずつ切断するというもの。刑は医療プロセスに基づき行われ、術後の痛みも少ない。しかし、その切断の内容や回数は被害者遺族が決めることができるのだ。
【感想・考察】
映画の中でこの刑が賛否両論だったように、もし現実に出来たとしても同じように意見が割れるか、反対される内容であると考えられる。刑が進むにつれ立ち会う被害者遺族は減り、ウィリーも、施術する医者もやつれていくその様子は、見ていて辛くなる。
週末になると問題児のいる高校などで見せしめとされるウィリーが、どんどん自分を見失っていく姿は、犯罪者といえど人間であるということを視聴者に思い出させる悲惨なものであった。刑に必要とされること、遺族が望むことについて今一度考えさせられる作品なのではないだろうか。
㉒『死のトンネル』
監督:Andrew Clabaugh、Alex Spear
【あらすじ】
とある家族の、海からの帰り道。同じ形の車が整然と並び、ゆっくりと進んでいく。しかしこれはただの渋滞ではない。その先に待つのは死のトンネル、増えすぎた人口を減らす、差別なき口減らしであった。静かな不穏さが続く、ディストピア・スリラー作品。
【感想・考察】
SF作品を書くにあたって、増え続ける人口をどうするのか?というのは作者の腕の見せ所であると考える。その点、この作品の死のトンネルという仕組みはシンプルで、しかし印象的なものであると言える。
家から出なければ良いなどの反論について、作品内で触れられることはない。ニュースでは直近いつトンネルが閉じたかが、淡々と報じられているのだ。まるで日常の一部かのようにそこにあり、人を殺している。生きるか死ぬか、その偶然の残酷さと、従うしかないであろう彼らの現状が、密かに描かれているのだと考えられる。
主人公の車はラスト、ギリギリでトンネルを抜ける。しかし主人公の息子が窓越しに目を合わせた少女の車は、トンネルの中に残されてしまうのだった。死と常に隣り合わせの生存の中で、サバイバーズ・ギルトに悩まされることとなるだろう。
生きるためには他者の犠牲を受け入れる必要があり、自分が次の犠牲者になる可能性に目を瞑らなければならない。その矛盾と葛藤こそがこの映画の魅力であると考える。
㉓『天国大魔境』(単行本1〜5巻)
【あらすじ】
文明が完全に崩壊した廃墟の日本、マルとキコルが旅をしていた。目的地は天国と呼ばれる場所。2人はそれぞれの目的を持ち、人喰いの化け物と戦いながら道を進む。一方、壁に囲まれた施設で外の世界を知らずに育つ子供たちがいた。子供たちはとある目的のため成長させられ、その陰謀は確実に進んでいる。そんな中、外の世界を夢見る子供がいた。この2つの視点から描かれる、近未来SFアドベンチャーである。
【感想・考察】
2つの視点で進むこの物語では、世界の謎が少しずつ解き明かされていく。特に人喰いの化け物ヒルコについては、その正体が人間であるという真実にたどり着くまでの布石が両方の視点から描かれていた。少しずつ世界の秘密が解き明かされるにつれ、新しい疑問が登場人物を襲う。この謎が謎を呼ぶ展開が世界に対する疑念や不安を増幅し、常に緊張感漂う展開を作り出す効果を生んでいると考えられる。
㉔『ドカ食いダイスキ!もちづきさん』(単行本1〜2巻)
著:まるよのかもめ
【あらすじ】
主人公は望月美琴、21歳、営業事務。おっとり、ほんわかな彼女の幸せはドカ食い。カロリーオーバードーズで至る、不健康限界突破、禁断グルメギャグ作品。
【感想・考察】
同じ人間としては信じられない食生活の主人公だが、見ていてどこか満足感のある作品である。彼女の食欲は尋常ではなく、健康診断で絶食を余儀なくされた様子は正気の沙汰ではない。その様子のおかしさからインターネット上で度々話題に上がり、ネットミームとなっている姿を見かけることも多い。良い意味でも悪い意味でも、読者への影響が大きかった作品であると考えられる。一方で、2巻で登場する妹がタバスコ狂であり、姉と共通して食に関する問題を抱えているため、家庭の問題があったのではないか?という見方もされている。
どちらにせよ、登場人物の不健康さは戦慄するほどのものであり、たびたび現れる死神が一番健康などと言われる当作品で、主人公が最後まで生きていることを願うばかりである。
㉕『片田舎のおっさん、剣聖になる』(単行本1〜7巻)
原作:佐賀崎しげる、鍋島テツヒロ
漫画:乍藤和樹 秋田書店
【あらすじ】
片田舎の村で細々と剣術道場を営む男ベリル・ガーデナントは、かつての教え子アリューシアの計らいにより、騎士団付きの特別指南役として王都に向かう事になる。大成した弟子達と再会し、盛り立てられるベリルは自らを卑下するが、その剣の腕は本物であった。
【感想・考察】
展開としてはありふれたものであるが、この作品の魅力は戦闘シーンの迫力にあると考える。登場するキャラクター全員にそれぞれの剣術があり、戦いの中での信念や目標があるのだ。また他作品では省かれがちな立ち回りや、重心の移動、太刀筋の個人差が明確に描かれ、見ていて飽きることの無い戦いが多いのだ。キャラクターの信念、そして丁寧に描からる戦闘シーンこそが、この作品を魅力的なものにしているのだ。
上記したのは剣同士の戦いについてである。作品内には魔法が登場する。現実には無い現象を相手に、剣の腕一つで挑むベリルの戦い方は、読者の感情を沸き立たせるものであると言えるだろう。この剣術の評価というのはアニメ化でも顕著に表れ、その点において海外からの評価も高いのだ。
㉖『ルックバック』(映画)
原作:藤本タツキ 監督:押山清高
【あらすじ】
藤野と京本、2人の少女は、小学校の卒業新聞に漫画を載せることをきっかけに出会った。最初は藤野の一方的なライバル心であったが、引きこもりがちな京本に自分の漫画のファンだと言われ、やがて2人は一緒に漫画を描き始める。中学卒業後も創作に打ち込む日々を送るが、ある日を境に2人は違う道に進むこととなった。そしてそれぞれの思いを胸に、2人は創作活動を続ける。藤野は漫画家として成功した。しかし、そんな彼女の耳に京本の訃報が届くのだった。
【感想・考察】
描くという行為に向き合う2人のすれ違いに心打たれる物語であった。特に印象的なのは藤野の背中を映し、時間だけが過ぎていくという表現である。劇中何度か用いられるこの表現は、まるで京本が見て成長してきたであろう藤野の背中を見ているかのような印象を視聴者に与えているのではないだろうか。
まるであり得た別の世界を描くかのようなシーンと、残酷な現実のと対比、そしてそれでも机に向かうラストシーンの藤野の後ろ姿からは、描くことへの執着、没頭、熱意、孤独、様々な想いが感じられる。この作品は何かを描くすべての人の心をつかむ作品であったと思う。
㉗『グランド・ブダペスト・ホテル』(映画)
監督:ウェス・アンダーソン
【あらすじ】
ヨーロッパ随一の超高級ホテル、グランド・ブダペスト・ホテル。完璧なおもてなしが評判の伝説のコンシェルジュ、グスタヴ・Hは、富豪の常連客が殺された事件であらぬ疑いをかけられる。そして彼は、ベルボーイ見習いの少年ゼロと共に、ホテルで起きた殺人事件の解明に奔走する。
【感想・考察】
魅力的なキャラクター達が織りなすそのストーリーは、コメディ要素とシリアスな要素が見事に噛み合った作品である。特にグスタヴの毒舌と時折見せる優しさ、そして彼が持つ誇りの美しさと、それゆえに生まれるギャグシーンに心を掴まれる視聴者が多いと考える。
また彼に影響されたゼロが、だんだんウィットに富んだ発言をするようになる様子も、彼の成長を感じさせると共にコメディシーンとして成り立ち、感動と笑いを共存させるものであった。
また映像作品としても、どこを切り取っても華やかな画面であり、ミニチュアを見ているかのようなその世界観の作り込みが、より視聴者を物語に没頭させているのではないだろうか。
㉘『HANA-BI』(映画)
監督:北野武
【あらすじ】
不治の病を患う妻を抱える刑事の西。彼は犯人との銃撃戦により部下を失い、また同僚の堀部に重傷を負わせてしまう。そして残された時間で妻と過ごすため、そして堀部のために、銀行強盗を決行しヤクザに追われる身となる物語
【感想・考察】
北野武映画独特のカメラワークと、多くを語らないその世界観に吸い込まれるかのような作品。妻との逃避行の中、追いかけてくるヤクザと戦うシーンは、他作品には無い淡々とした空気とそれゆえの迫力がある。
ラストシーンでは、その結末を映像で描くことはなく、銃声とロングショットのみで、視聴者の想像力に委ねる形をとっている。この描き方により、西と妻との関係の儚さと、物語の余韻を大きく残しているのだと考える。
㉙『ペーパー・ムーン』(映画)
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ
【あらすじ】
だらしなく楽観的なペテン師、モーゼス・プレイは、かつての恋人の葬式で、自らの子供か定かではない、アディ・ロギンズと出会う。狡猾なアディはモーゼに借金をさせ、彼と共にコンビを組み返済のための旅を始めるのだ。
【感想・考察】
狡猾な子供と、楽観的なペテン師というデコボココンビが織りなすコメディ要素の中に、確かな2人の絆の成長を感じることができる、心温まる作品。
特にアディの演技が凄まじく、モーゼとのやり取りがまるで本当に行われているかのように感じた。
本当の親子かも分からない2人が徐々に心を許しあい、最終的にまた旅を共にする展開、そして映画ポスターの2人の写真に、笑いと感動が生まれる。
最後まで2人が本当の親子なのか明かされることはない。しかし、例え偽物の親子だとしても、信じることでその関係は本物の関係になりうるのだと、作品を通して表現しているのだ。
㉚『シックス・センス』(映画)
監督:M・ナイト・シャマラン
【あらすじ】
かつて担当していた患者に銃で撃たれた高名な精神科医、マルコム。彼は複雑な症状を抱えた少年コールの治療に取り掛かる。少年には特殊な第6感があり、その能力のためにいじめられたり、恐怖におののいたりするのだと言う。かつての患者にコールを重ねたマルコムは、少年を治療しながら、妻とうまくいかない自らの心にも安息を見いだしていく。
【感想・考察】
最後のどんでん返しが非常に話題となった作品であり、その話題性に負けない衝撃のラストであった。マルコムとコールの2人が共に認めあい、お互いを信頼することで変わっていくその展開は視聴者の心を温めると共に、それすらラストシーンへの布石であることに驚くこととなる。
思い返してみればマルコムは誰とも会話しておらず、冒頭撃たれたマルコムがどうなったのかは、描かれていなかった。最後の最後までその事実に気が付かず、ゆっくりと進む感動的な物語に隠された伏線が、ラストシーンで伝えられるその衝撃は忘れられない物となるだろう。
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