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宇都穂南
RES
3年 宇都
夏休み課題16〜22
16.あんのこと/監督:入江悠
母親に虐待され売春をさせられている21歳の杏は、覚せい剤にも手を染めていた。ある日警察に捕まった彼女は、刑事の多々羅と出会い更生への道筋を示してもらう。彼の友人で記者の桐野も杏のことを気にかけていく。
本作は実話をもとにしており、児童虐待、薬物依存、性犯罪、コロナ禍での孤立や離職などといったすぐ身近にある社会問題をいくつも取り扱っている。
主人公・杏を過酷な生育環境から救い出してくれた多々羅が性犯罪者だったことが判明した場面は、映画を観てきた視聴者にとっても衝撃的かつ絶望的なシーンだろう。この人が犯罪を犯さなければもしかしたら……と思わずにはいられない。杏は隣人に幼い子どもを預けられ一時的に親代わりとなったことで他人を守るということを知り、一瞬前向きな気持ちを持ったかもしれないが、最終的には覚せい剤にやられてしまう。ここでは杏の書いていた日記が空を舞うことでおそらく投身自殺を表現している。
17.ルックバック Original Storyboard /藤本タツキ
小学4年生の藤野は、学生新聞で4コマ漫画を連載し、クラスメイトたちから絶賛されていた。 ある日、彼女は教師から、学生新聞に不登校の生徒・京本の漫画も載せたいと告げられる。 ふたりの少女は、漫画へのひたむきな思いを注ぎながら成長していくのだが……
この「Original Storyboard」版は、映画館で配布された入場者特典。読み切り作品『ルックバック』の原作ネームが全ページ収録されている。『ルックバック』は若干媒体によって細部が異なり、最初に世に出た読み切り版、単行本、映画、この入場者特典がある。読み切り版での京本の元に現れる男の口走る台詞が京アニ事件を想起させたからなのか、理由を断定することはできないが単行本ではその部分が差し替えられた。映画版では差し替えられた部分が読み切り版と同じ台詞に戻っており、この入場者特典もネームなので読み切りと同じ台詞である。
トップ漫画家のネーム原稿を一作分まるまる見ることができる機会は珍しいのではないだろうか。読み切りとのちょっとした差異を探すのを楽しむことができ、絵を描く人には構図の勉強にもなるだろう。
18. 赤ひげ診療譚/山本周五郎
江戸時代中期の小石川養生所を舞台に、長崎で修行した医師・保本登と、実在した江戸の町医者・小川笙船をモデルとする「赤ひげ」こと新出去定を主人公として、患者との葛藤を描いたヒューマンストーリー。
ヒューマンストーリーがメインの物語だが、江戸時代の貧しい庶民の生活が裏のテーマなのではないかと思わせられる。大抵の登場人物は、貧しく体調も悪いなか強かに生きようとしており魅力的である。そのような庶民たちと養生所の医者たちとの間には貧富の差があり、庶民からのうっすらとした敵視のようなものも描かれている。
19.レオン 完全版 /監督:リュック・ベッソン
外出中に家族を惨殺された12歳の少女・マチルダは、隣に住んでいる男・レオンに助けを求める。レオンが凄腕の殺し屋であることを知り、そして彼の言葉に共感を覚えたマチルダは、殺しの技術を教えてほしいと願い出る。そして奇妙な同居生活を始めた2人は、次第に心を通わせていく。
マチルダが年齢的に必要になってくるであろうブラジャーをずっとつけていないのが気になったが、実親からのネグレクトの描写なのではないかと考えた。
マチルダがレオンに抱いた愛情が本当に恋愛感情なのか、家族愛を初めて知ったせいで勘違いしているのか、あまり明らかにはされないが尊重はされており後味がよい映画と感じた。アメリカの街の撮り方もどの場面でも綺麗な画になっている。
マチルダ役のナタリー・ポートマンのデビュー作であり見ていてもとても素敵な役者さんだと感じたのだが、少女であるマチルダがセクシーに振る舞うシーンが問題視されたことがあったらしく、ナタリー・ポートマン本人も今見返すと不快な描写があると表明している。欧米では児童を性的に扱うことが日本よりも強くタブー視されていることもあり、その意味では問題がある映画と言うべきかもしれない。
20.パプリカ /監督:今敏
精神医療の研究所に勤める敦子。「夢探偵」パプリカとして患者の夢に侵入して治療を行っていた彼女だったが、その補助装置「DCミニ」が盗まれ、人々の夢が侵略される危機に陥る。事態の収拾のため、パプリカは夢の世界に出動する。
小説版よりも内容はかなり簡略化されている印象だった。作画が素晴らしく、2006年の作品とは思えないほど動きが滑らかかつ色彩が強い。夢の中も舞台となる作品なので、床がぐにゃりと沈んだり、身体がパックリと半分に割れたり、目まぐるしく登場人物の衣装や場面が変わったりと小説では限界がある表現も多く、アニメ化したことでより輝いた作品だと感じられた。平沢進による音楽も有名であり、作品の色と合っている。
21.パーフェクトブルー /監督:今敏
人気絶頂のさなかにアイドル・グループから脱退し、女優に転身を図った美少女・未麻。ある日、彼女のもとに熱狂的ファンらしい人物から脅迫めいたFAXが届く。やがてその行為はエスカレートし、未麻は次第に身の危険を感じ始める。
アイドルを辞めて女優に転身したものの、来る仕事がレイプシーンの撮影やヌード写真集ばかりであること、熱狂的なファンにストーキングされていること、周りの人間が殺されていくこと、この3つが主人公を徐々に病ませていく過程が描かれるホラー色の強い作品である。性的なシーンやグロシーンも多いのだが、印象に残ったのは主人公の飼っているグッピーが死んでいるシーンである。単に一人暮らしの寂しさを紛らわせてくれる存在が失われたことに悲しさとショックをおぼえるだけでなく、ストーカーが部屋に入ってきているのではないか?という不安を掻き立てている。
また、夢と現実が混ざり合い混乱に陥る表現は、本作の8年後に出る『パプリカ』にも通ずるところがある。
22.サスペリアPART2 /監督:ダリオ・アルジェント
ローマで開催された欧州超心霊学会では、超能力を持つヘルガが、突然錯乱し、かつて残虐な殺人を犯した人間が会場内にいると宣言する。その後、部屋に戻ったヘルガは、何者かに惨殺される。偶然その瞬間を目撃したイリギス人のピアニスト、マークは、コートの男が逃げてゆく姿を目撃する。
この映画を観た後、回収されていない伏線らしきもの(主人公が閉所恐怖症、父親との確執etc)が多すぎるし、論理的に不自然な場面や進行もいくつかあると感じた。私の見方が足りなかったのかと思って調べてしまったのだが、どうやら監督が論理性よりも画面の芸術性やインパクトを重視して作った映画らしい。たしかに登場人物が殺害されるシーンは凄惨を極めており、「こんな死に方は絶対に嫌だ」と観客に思わせることに成功していると思った。
日本版タイトルは『サスペリアPART2』だが原題は『Profondo Rosso』(深紅)であり、『サスペリア』という同監督の映画もあるが内容は関係しておらず、制作されたのは『PART2』の方が先である。『サスペリア』を日本で公開したところヒットしたので、それ以前に作られていた『Profondo Rosso』を『サスペリアPART2』として日本でも公開したらしい。昔の映画界ではそんな横暴が許されていたんだと驚いた。
論理性はないが、犯人を隠す映像トリックはかなり驚かされる他に見たことがないようなものだった。また、主人公と誰かしらが2人で喋りながら歩いているというシーンがいくつかあるのだが、そのようなシーンでは周りの街中に立っている人物をほとんど動かさないことで異様な雰囲気が醸し出されている。これも個人的には他の映像作品で見たことがない手法だった。
夏休み課題16〜22
16.あんのこと/監督:入江悠
母親に虐待され売春をさせられている21歳の杏は、覚せい剤にも手を染めていた。ある日警察に捕まった彼女は、刑事の多々羅と出会い更生への道筋を示してもらう。彼の友人で記者の桐野も杏のことを気にかけていく。
本作は実話をもとにしており、児童虐待、薬物依存、性犯罪、コロナ禍での孤立や離職などといったすぐ身近にある社会問題をいくつも取り扱っている。
主人公・杏を過酷な生育環境から救い出してくれた多々羅が性犯罪者だったことが判明した場面は、映画を観てきた視聴者にとっても衝撃的かつ絶望的なシーンだろう。この人が犯罪を犯さなければもしかしたら……と思わずにはいられない。杏は隣人に幼い子どもを預けられ一時的に親代わりとなったことで他人を守るということを知り、一瞬前向きな気持ちを持ったかもしれないが、最終的には覚せい剤にやられてしまう。ここでは杏の書いていた日記が空を舞うことでおそらく投身自殺を表現している。
17.ルックバック Original Storyboard /藤本タツキ
小学4年生の藤野は、学生新聞で4コマ漫画を連載し、クラスメイトたちから絶賛されていた。 ある日、彼女は教師から、学生新聞に不登校の生徒・京本の漫画も載せたいと告げられる。 ふたりの少女は、漫画へのひたむきな思いを注ぎながら成長していくのだが……
この「Original Storyboard」版は、映画館で配布された入場者特典。読み切り作品『ルックバック』の原作ネームが全ページ収録されている。『ルックバック』は若干媒体によって細部が異なり、最初に世に出た読み切り版、単行本、映画、この入場者特典がある。読み切り版での京本の元に現れる男の口走る台詞が京アニ事件を想起させたからなのか、理由を断定することはできないが単行本ではその部分が差し替えられた。映画版では差し替えられた部分が読み切り版と同じ台詞に戻っており、この入場者特典もネームなので読み切りと同じ台詞である。
トップ漫画家のネーム原稿を一作分まるまる見ることができる機会は珍しいのではないだろうか。読み切りとのちょっとした差異を探すのを楽しむことができ、絵を描く人には構図の勉強にもなるだろう。
18. 赤ひげ診療譚/山本周五郎
江戸時代中期の小石川養生所を舞台に、長崎で修行した医師・保本登と、実在した江戸の町医者・小川笙船をモデルとする「赤ひげ」こと新出去定を主人公として、患者との葛藤を描いたヒューマンストーリー。
ヒューマンストーリーがメインの物語だが、江戸時代の貧しい庶民の生活が裏のテーマなのではないかと思わせられる。大抵の登場人物は、貧しく体調も悪いなか強かに生きようとしており魅力的である。そのような庶民たちと養生所の医者たちとの間には貧富の差があり、庶民からのうっすらとした敵視のようなものも描かれている。
19.レオン 完全版 /監督:リュック・ベッソン
外出中に家族を惨殺された12歳の少女・マチルダは、隣に住んでいる男・レオンに助けを求める。レオンが凄腕の殺し屋であることを知り、そして彼の言葉に共感を覚えたマチルダは、殺しの技術を教えてほしいと願い出る。そして奇妙な同居生活を始めた2人は、次第に心を通わせていく。
マチルダが年齢的に必要になってくるであろうブラジャーをずっとつけていないのが気になったが、実親からのネグレクトの描写なのではないかと考えた。
マチルダがレオンに抱いた愛情が本当に恋愛感情なのか、家族愛を初めて知ったせいで勘違いしているのか、あまり明らかにはされないが尊重はされており後味がよい映画と感じた。アメリカの街の撮り方もどの場面でも綺麗な画になっている。
マチルダ役のナタリー・ポートマンのデビュー作であり見ていてもとても素敵な役者さんだと感じたのだが、少女であるマチルダがセクシーに振る舞うシーンが問題視されたことがあったらしく、ナタリー・ポートマン本人も今見返すと不快な描写があると表明している。欧米では児童を性的に扱うことが日本よりも強くタブー視されていることもあり、その意味では問題がある映画と言うべきかもしれない。
20.パプリカ /監督:今敏
精神医療の研究所に勤める敦子。「夢探偵」パプリカとして患者の夢に侵入して治療を行っていた彼女だったが、その補助装置「DCミニ」が盗まれ、人々の夢が侵略される危機に陥る。事態の収拾のため、パプリカは夢の世界に出動する。
小説版よりも内容はかなり簡略化されている印象だった。作画が素晴らしく、2006年の作品とは思えないほど動きが滑らかかつ色彩が強い。夢の中も舞台となる作品なので、床がぐにゃりと沈んだり、身体がパックリと半分に割れたり、目まぐるしく登場人物の衣装や場面が変わったりと小説では限界がある表現も多く、アニメ化したことでより輝いた作品だと感じられた。平沢進による音楽も有名であり、作品の色と合っている。
21.パーフェクトブルー /監督:今敏
人気絶頂のさなかにアイドル・グループから脱退し、女優に転身を図った美少女・未麻。ある日、彼女のもとに熱狂的ファンらしい人物から脅迫めいたFAXが届く。やがてその行為はエスカレートし、未麻は次第に身の危険を感じ始める。
アイドルを辞めて女優に転身したものの、来る仕事がレイプシーンの撮影やヌード写真集ばかりであること、熱狂的なファンにストーキングされていること、周りの人間が殺されていくこと、この3つが主人公を徐々に病ませていく過程が描かれるホラー色の強い作品である。性的なシーンやグロシーンも多いのだが、印象に残ったのは主人公の飼っているグッピーが死んでいるシーンである。単に一人暮らしの寂しさを紛らわせてくれる存在が失われたことに悲しさとショックをおぼえるだけでなく、ストーカーが部屋に入ってきているのではないか?という不安を掻き立てている。
また、夢と現実が混ざり合い混乱に陥る表現は、本作の8年後に出る『パプリカ』にも通ずるところがある。
22.サスペリアPART2 /監督:ダリオ・アルジェント
ローマで開催された欧州超心霊学会では、超能力を持つヘルガが、突然錯乱し、かつて残虐な殺人を犯した人間が会場内にいると宣言する。その後、部屋に戻ったヘルガは、何者かに惨殺される。偶然その瞬間を目撃したイリギス人のピアニスト、マークは、コートの男が逃げてゆく姿を目撃する。
この映画を観た後、回収されていない伏線らしきもの(主人公が閉所恐怖症、父親との確執etc)が多すぎるし、論理的に不自然な場面や進行もいくつかあると感じた。私の見方が足りなかったのかと思って調べてしまったのだが、どうやら監督が論理性よりも画面の芸術性やインパクトを重視して作った映画らしい。たしかに登場人物が殺害されるシーンは凄惨を極めており、「こんな死に方は絶対に嫌だ」と観客に思わせることに成功していると思った。
日本版タイトルは『サスペリアPART2』だが原題は『Profondo Rosso』(深紅)であり、『サスペリア』という同監督の映画もあるが内容は関係しておらず、制作されたのは『PART2』の方が先である。『サスペリア』を日本で公開したところヒットしたので、それ以前に作られていた『Profondo Rosso』を『サスペリアPART2』として日本でも公開したらしい。昔の映画界ではそんな横暴が許されていたんだと驚いた。
論理性はないが、犯人を隠す映像トリックはかなり驚かされる他に見たことがないようなものだった。また、主人公と誰かしらが2人で喋りながら歩いているというシーンがいくつかあるのだが、そのようなシーンでは周りの街中に立っている人物をほとんど動かさないことで異様な雰囲気が醸し出されている。これも個人的には他の映像作品で見たことがない手法だった。
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