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2年 清水 RES
春期休暇課題11~20

11. 『ソードアート・オンライン ―プログレッシブ-』(ライトノベル)
作者:川原礫 イラスト:abec
2022年、あるゲームが発売された。そのゲームの名はソードアート・オンライン。
人類初のVR型MMORPGということもあり人々は熱狂の渦に沸いた。しかし、サービス開始日にログアウトできないという事象が発生。ログインしていた約一万人のプレイヤーたちは、ゲームマスターから衝撃の事実を告げられる。HP全損と共に現実の自分も死に至る、そんな狂気のソフトであったことを。デスゲームと化した世界で出会う少年と少女。懸命に生き抜く彼らはゲームをクリアし、帰還することが出来るのか。原作者・川原礫によって紡がれるSAOリブートシリーズ。

原作小説第1巻、第2巻で描くことが出来なかったアインクラッド攻略を第1層から描いた作品。映画ではアスナが主人公になっているが、小説ではキリトが主人公となる。
本作はVRゲームが舞台ということもあり、システムの説明やフィールドのコンセプト、クエストの流れの説明が非常に重要な要素である。これらはキリトのベータテスト時代の回想やアスナから投げかけられる質問に返答するという形で過不足なく説明されており、話の流れを切って説明しないため読む側に優しい構成になっている。メインクエストの流れやコンセプトもしっかり練られており、この作者にしか描くことのできない世界観だと感じる。アニメではあまり触れられることのなかったソードスキルについてもしっかり言及されており、アニメに該当する部分は見た後に読んでみるとより楽しめると思われる。
2巻からゲームに必要不可欠なNPCが存在感を増してくる。このNPC達の中にはプレイヤーと遜色ない会話ができる高度なAIを持ったものたちが存在し、まるでアインクラッドという世界の中でずっと生きていたかのような錯覚をもたらす。このNPC達の存在がキリトとアスナがもう一つの現実という考え方を強めるのに大きな影響をもたらしていると考えられる。

12. 『とらドラ!』(アニメ)
原作:竹宮ゆゆこ 監督: 制作:J.C.STAFF
生まれつきの鋭い目つきが災いして、まわりには不良と勘違いされている不憫な高校二年生高須竜児。彼は高校二年生に進級した春、新しいクラスで一人の少女と出会う。少女の名前は逢坂大河。超ミニマムサイズな身長でありながら、わがままで短気、暴れ始めたら、誰にも手が付けられないことから通称手乗りタイガーと呼ばれ、恐れられている少女であった。最初は関わらないようにしていた竜児だったが、ある日の放課後、彼は手乗りタイガーの隠された一面を知ってしまう。それをきっかけとして、竜児は大河と関わりを持つようになっていく。

ライトノベルが原作の青春ラブコメディと言えば真っ先に思い浮かぶ作品。高校生の男女の恋愛模様が描かれる。
本作の素晴らしいところは脚本である。原作が全10巻と2クールで放送するにはやや巻数が多めである。しかしながら各巻のエピソードの核となる部分をきっちりと残しながら必要な場面とそうでない場面を取捨選択しつつ、原作で足りなかった部分をしっかりと補っている。これによって物語のテンポ感も非常に良くなっている。特に原作では語られることのなかった櫛枝と川嶋の心情が台詞によって多数追加されており、物語への没入感をより高めてくれていたと感じる。最後の10巻の内容のみ他の巻と比較すると、大幅な改変が加えられているが、竜児と大河の未来を暗示するかのようであり、個人的にはよかったと感じる。
本作は登場人物全員が優しく、自分のことよりも相手のことを優先して考える傾向が強い。それゆえになかなか進まない恋愛模様が大きな魅力であるのだが、特に主人公二人が顕著である。しかし、主人公二人の相手優先の根幹にはお互いの家庭環境の対照さが絡んでおり、自分にはないものを持っているからこそ、幸せになってほしいという想いがあると思われる。しかし、それは共依存に近いもののようにも感じられ、自分の中に芽生えた本心になかなか気づくことができない要因であったと考えられる。

13. 『とらドラ!』(ライトノベル)
作者:竹宮ゆゆこ イラスト:ヤス
12と同じ

恋愛系の作品としては珍しく、語り手が一人称ではなく三人称の作品。この場合、作品に没入できないことがあるのだが心情描写に全く違和感がなく、作者の文章力の高さが窺える。基本的に主人公である竜児の心情描写と行動がメインで進行していくが、同級生たちの心情が語られないのがやや残念な部分である。竜児の推測で語られる部分が多く、語り手を変えてでも、描いてほしいと思った。
竜児と大河の関係の進行は丁寧に描かれており、つかず離れずを繰り返す様子が非常にもどかしい。特に大河が本心に気づきながらも、櫛枝のために竜児から離れようとする姿が印象的であった。
第1巻では呼称を変化させ大河と竜児を虎と竜に例えて傍らに居続けると宣言する場面がある。ここでは友達として対等にいるという意味が強いを思われる。一方10巻での同じ例えでは恋人としての意味合いが強いと感じられ、二人の距離がより親密になったことを作品全体を通して表現していると考えられる。
  
14. 『わたしはあなたの涙になりたい』(ライトノベル)
作者:四季大雅 イラスト:柳すえ
全身が塩に変わって崩れていく奇病“塩化病”。その病で母親を亡くした少年・三枝八雲は、一人の少女と出会う。天才的なピアノ奏者である少女の名は五十嵐揺月。彼女のピアノに対する真摯さと、その繊細な指でいじめっ子の鼻をひねり上げる奔放さに八雲は我知らず心惹かれていく。しかし高校に進学すると揺月はイタリアへと留学してしまう。自分と彼女の間にある圧倒的な差を痛感した八雲は小説を書き始める。そんなある日、揺月との再会が突然訪れる。それが運命を大きく変えてしまうことを彼はまだ知らなかった。

第16回小学館ライトノベル大賞《大賞》受賞作。八雲と揺月の交流と成長が描かれる。八雲と揺月のやり取りでは、印象操作のような表現で幻想的に語られる部分が多く、読者が感情を想像して楽しめる。
揺月がピアノ奏者ということもあって、ショパンやベートーヴェンといった有名な音楽家たちの名前や生い立ちを重ね合わせることが多かったが、その部分については詳しい説明があったため、音楽に全く詳しくない私でも苦しむことなく読むことができた。
また、本作では親と子という部分にも焦点があてられている。八雲の父親は影と表現されていることが多く、父親と影の表現を使い分けることで親子の時間の始まりと終わりを示唆していると考えられる。一方、揺月の家庭は両親が健在だが父親の存在が薄くなっており、八雲の家庭とやや似ている。しかし、その実態は母親による虐待的な教育指導がされている為、愛情を注がれる存在はピアニストとしての揺月であると考えられる。

15. 『僕が七不思議になったわけ』(ライト文芸)
作者:小川晴央 
石橋を叩いても渡らない心配性の高校生・中崎夕也はある夜、七不思議を司る精霊・テンコと出会う。深夜の校庭に桜が舞い散る中、宙に浮かぶ袴姿の彼女はとんでもないことを告げる。彼は学校の七不思議の空いた枠に仮引継ぎ登録されてしまっていたのであった。夕也は嫌がるも、登録を変えることはできないといわれてしまう。生きながらも七不思議になってしまった彼の日常はいったいどうなってしまうのか。

第20回電撃小説大賞《金賞》受賞作。七不思議となってしまった少年の一年間が描かれる。本作の主人公は非常に心配性な性格をしており、楽観的かつ能天気な性格をしているテンコとは真逆の性格である。しかし、この対照さが会話のテンポを軽いものにしており、飽きることなく読むことが出来る。
本作は四つの章に分かれて構成されており、そのうち三つは主人公が語り手となっているが、一つだけ主人公ではない人物が語り手となっている章がある。そしてすべての出来事は現在進行形で書かれている。これらは意図的にされたものであると考えられ、終盤にて明かされる驚愕の事実への伏線として機能していると考えられる。
また、本作に登場する学校の七不思議そのものは私が小学生くらいの時に聞いたものばかりであったが、それぞれにオリジナルの要素が加えられている。これによってありきたりな七不思議でなくなり、さらにはオリジナルの要素を活かした問題解決もされている。

16. 『コロウの空戦日記』(ライトノベル)
作者:山藤豪太 イラスト:つぐぐ
無能な王によって開戦してしまった無謀で無駄な戦争。絶望的な敗戦のなかで、とある事情から戦闘機乗りになった少女コロウは死にたがりであった。そんな彼女が配属されたのは「死なさずの男」と呼ばれるカノ―が率いる国内随一の精鋭部隊であった。
圧倒的な戦力差で襲い来る敵の爆撃機を退け、生きるか死ぬかを繰り返す毎日。危険を顧みないコロウは無茶な飛び方を繰り返すが、仲間は必死に生につなぎとめようとする。彼らの技術を吸収し、コロウは少しずつ成長していく。

戦争ものに分類される本作だが、戦術の説明や機体の説明がしっかりしており、ミリタリー系統にあまり詳しくなくても楽しめる。日記形式で話は進んでいくので、基本的に過去形の文体が使われるが、戦闘の描写は現在形で進んでいく。そのため戦争という行為が書いている時点で終わったものではなく今起こっていることとして捉えさせる効果がある。また、途中で過去の話が入るが日記の日付を見ればわかるようになっているため、戸惑うことなく読むことができる。
王が出す指示はかつての太平洋戦争で東条英機が掲げていた精神論に似ており、ファンタジーでありながら歴史上あった出来事を重ね合わせてしまいそうになる。これは用いられている戦術にも言えることであり、実際の史実に基づく部分を入れることで完全なファンタジーでなくしたと考えられる。

17. 『琥珀の秋、0秒の旅』(ライトノベル)
作者:八目迷 イラスト:くっか
修学旅行で函館を訪れていた内気な高校生・麦野カヤトは世界の時が止まるという信じられない現象に見舞われる。自分以外が完全に静止した街で動けるのは彼一人かと思いきや、もう一人いた。地元の不良少女・井熊あきら。二人で時を動かす方法を模索していると、麦野は数日前に死んだ叔父の「琥珀の世界」という言葉を思い出す。世界の時が止まったことに何か関係があるかもしれないと考えた二人は叔父の家がある東京を目指して旅を始める。

夏季休暇期間に読んだ『夏へのトンネル、さよならの出口』の作者の四季シリーズの一つ。今作も問題解決に向かう中での交流と成長が描かれる。
麦野という人物は世界の時が止まってしまい、食べ物や飲み物を用意しなければならないときに盗みはよくないと常識的な倫理観を持つ人物であるが、この特異な状況においてはやや変わった人物であるかのように感じられる。同行している井熊が平然とコンビニからお菓子や飲み物等を持ってくる方がまだ当たり前のように感じられた。
他人への意識、偏見というものが随所に見受けられ、例えば麦野は叔父に対して「真人間にならないでほしい」と思っており、同族意識を抱いていたことが窺える。井熊もトラブルに見舞われて麦野と和解するまでは下に見ているかのような発言がいくつかあった。このようなきれいではない人の内面を描くことで日常的に抱く感情への共感を持たせ、すべてが終わった後の二人の成長をより印象深いものにしたと考えられる。

18. 『バスタブで暮らす』(ライトノベル)
作者:四季大雅 イラスト:柳すえ
二十二歳の磯原めだかは福島県郡山市出身。ちいさく生まれてちいさく育ち、欲望らしい欲望もほとんどない女性。世間とのずれに生きづらさを感じつつも、愉快な家族に支えられて生きてきた。就職をきっかけに実家を離れて一人暮らしを始めるも職場でのパワハラに耐え切れず、すぐにとんぼ返りしてしまう。逃げ込むように心が落ち着くバスタブの中で暮らし始め、それなりに楽しい毎日を送っていた。しかし、いつまでもそうしているわけにはいかず、親から出てくることを迫られる。これは彼女がもう一度生まれ変わるための物語。

バスタブで暮らすことを通じて、変わっていく女性の物語。この作品におけるバスタブとは人をつなぐ場所、あるいは社会と自分をつないでくれる中間地点のようなもの
であり個を作る場所であると考えられる。
本作では能の面やへのへのもへじを用いた表現が多く登場する。能の面はめだかにとって相手の感情を表しているものであり、能の面がついている時はあまりその人と関わりたくないときと思われる。へのへのもへじというのは何者でもない、言わば個が確立されていない人の象徴のようなものとして用いられていると考えられる。
就職という通過儀礼に失敗して大人になることができず、何者かになりたいという思いを抱えている主人公はどことなく学生の私に似ているように感じ、それゆえに感情移入しやすかった。
めだかは社会保険料や税金を払っていないことに罪悪感を抱きながらも、親に体調を整えることに集中するように言われて安心している。そこでは社会人としての自覚と社会人としてやっていけるのかという不安が同居しているように感じる。しかし、めだかがインターネットを介して、リスナーたちに元気を与え個を確立していくことからは、社会で生きていくことは一種類だけではなく様々な方法があるということを表現していると感じた。

19. 『さようなら、私たちに優しくなかった、すべての人たち』(ライトノベル)
作者:中西鼎 イラスト:しおん
「姉を死に追いやった七人の人間を皆殺しにしてやりたいの」と冥は栞に言った―。四方を山に囲まれた田舎町で、三年前、冥の姉・明里は凄惨ないじめに遭い自ら命を絶った。その復讐のために冥はこの町に戻ってきたのだ。冥は巨大な蛇の神を自分に憑かせ、超常の力を得る封印された祭儀『オカカシツツミ』を行い、神様の力を借りて栞と共に一人ずつ標的を殺していく。復讐と逃避行の日々の中で二人は恋に落ちるが、やがて力を借りた代償としての〈死の運命〉が冥の身に降りかかってくる。(裏表紙より)

命と引き換えに復讐を行う少女を描いた作品。超常の力を用いた復讐が執念深さを感
じさせ、復讐された者たちの凄惨な死にざまが繊細な筆致によって描写されている。
復讐の進行と合わせて章ごとに佐藤明里の自殺の真相が明かされていく。佐藤明里が自殺に至るまでの過程で心をすり減らしていく描写あるのだが、これが特に丁寧に描写されている。実際に作者が精神科の友人に取材しながら執筆したということもあり、リアリティがあり、読んでいるこちらも心をすり減らしそうになった。
田舎と都会の違いが空気感や近所の情報網で表現されており、栞が田舎特有の事象に批判的であることから都会への憧れが強いと思われる。そんな彼は復讐の手伝いを通して自分の生き方を見直すことになる。姉の死、母親との別れ、父親の姿を頭に思い浮かべながらも、自己満足を満たそうと考えるのだがそれは冥という少女に強烈に惹かれているからである。しかし、そこには年上として見守りたいという保護者的な感覚と復讐を楽しみたいという感覚があるように感じた。

20. 『星降る夜になったら』(ライトノベル)
作者:あまさきみりと イラスト:Nagu
高校三年生の花菱准汰の日常は起きて、学校へ行き、遊んで、寝る。ただそれだけであり、省エネで適当であることは彼らしさですらあった。そんな彼は担任から美術の補習を言い渡されてしまう。しぶしぶ美術室に向かった彼が出会ったのは一学年下の渡良瀬佳乃。彼女は准汰と真逆で超が付くほどこだわり派の人間であった。最初こそ険悪であったものの徐々に仲を深める二人。そんな中、佳乃が奇病に伏してしまう。しかし、奇跡が起きた。彼と彼女は他人となり、性格も変更され、生きることが許された。互いを想うがゆえにすれ違うことを選んだ、儚い青春の物語。

スノードロップ彗星に願った二人のすれ違いが描かれる作品。正反対故に互いの当たり前が嚙み合わず、最悪な空気になることも多いが、逆に考えると正反対だからこその発見や憧れがあるように感じた。
本作は前半と後半で語り手が変わっており、前半では高校生活と彗星の真実が、後半で佳乃の成長と過去が主に描かれている。これらはここまで完全に分けることなく、混ぜ合わせてもいい要素だったのではないかと考えもしたが、あえて完全に分けることによって准汰が佳乃の物語にほんの少しだけ関わった人のように感じさせてくれる。
子供のころに関わった人がもしかしたら身近にいるかもしれないというのが本作のテーマであり、声をかければ変わった未来というのが様々なところにある。それを体現したのが准汰と佳乃の物語だと思った。また、佳乃が生きているだけで周囲の人の未来を奪ってきていることを自覚して、絵を描く動機と存在意義を見失う場面は、生きる中で無意識に人と関わっていることの例のように感じた。
2024/04/15(月) 16:09 No.2016 EDIT DEL
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