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2年 高根 RES
夏休み 作品鑑賞6~12

6.サマータイムレンダ(アニメ) 原作:田中靖規 / 監督:渡辺 歩
 とある和歌山の離島を舞台にしたSFサスペンス。いわゆる死に戻り(ループ)もの。コメディ(希望・平和)なターンとシリアス(絶望)のターンの量の配分が上手く、感情が頻繁に揺さぶられるため、飽きない。
 有名な思考実験であるスワンプマン(沼男)を基にしていると考えられる。しかし思考実験のスワンプマンは「元の人物とスワンプマンを同一人物として見るのか、はたまた別物として見るのか」という部分がテーマだが、本作品では"影"と呼ばれる見た目も声も記憶もそっくりなもう一人の自分を通して自分の本心を見つめ直すという表現があったのが印象的だった。

7.ラストナイト・イン・ソーホー エドガー・ライト監督
 タイムリープ・サイコ・ホラー映画。現実と夢の中(1960年代のソーホー)という2つの舞台と、エロイーズとサンディの2人の少女が入れ代わり立ち代わりで描かれ、いつしかその境界が曖昧になっていく表現がまったく違和感がなく、見事だった。特に序盤のエロイーズとサンディが何度も入れ替わるダンスシーンはとても印象に残った。ジャンルとしてはサスペンスやホラーの位置にありながら、ティーン映画やファンタジー映画の要素も多く含まれていたのが新鮮だった。
 慣れない環境や新しい交友関係に戸惑う少女が精神的に追い込まれていくという状況は私も大学1年のときに経験したため、非常にリアリティを感じた。

8.光が死んだ夏 1巻 (モクモクれん)
とある集落に暮らし、ずっと一緒に育ってきた少年、よしきと光。しかしある日、光だと思っていたものが別のナニカにすり替わっており、本物の光はもう死んでしまっていることによしきは確信を持つ。それでも一緒にいたい、でも本当にこのままでいいのか?目の前の"ヒカル"は何ものなのか?小さな集落が舞台のサスペンスホラー作品。

 セミの鳴き声や自転車の音など環境音・効果音がうるさいほどに文字で主張されており、集落の静けさと作品自体の不気味さが上手く表現されている。
 姿形や声、喋り方は"光"そっくりでも正体は得体の知れないナニカ、それを分かっていても離れたくない。でも本当は怖い。というよしきの葛藤だけでなく、自分が抱いている感情がどこまでが自分の感情で、どこまでが光の感情なのかが分からない"ヒカル"の葛藤の両方が描かれており、すこし切なさも感じた。
 光であって光でないモノとよしきがどんな選択をし、どんな結末を迎えるのか続巻が楽しみ。

9.リリーのすべて(原題:The Danish Girl) トム・フーパー監督
 デンマークで風景画家と肖像画家として暮らす仲睦まじい夫婦、アイナーとゲルダ。しかしある日、夫のアイナーは自分の中にいる女性性・リリーを自覚する。日に日にリリーとして過ごす日数が増え、アイナーはついに性転換手術を受けることを決意する。
 世界で初めて性転換手術を受けた人物リリー・エルベを題材とした小説『The Danish Girl』(2000年刊行)を原作とした伝記映画。
 舞台は1920年代後半。まだこの時代は、同性愛者やトランスジェンダーの人々は精神疾患持ちであるという認識が非常に強い。作中でもアイナーは多くの医者のもとで診てもらうが、どの医者からも「精神疾患」「精神分裂」という診断を受ける。そんな中でも女性になることを諦めなかったアイナーはとても強い人だと感じた。また、愛しているアイナーが次第にリリーに変化し、自分の中の夫への愛情と目の前の変化に苦しみながらも最期まで添い遂げたゲルダもとても強く素晴らしい人だと感じた。
 アイナーが体の性と心の性の違いに戸惑い、苦しみながらも、少しずつリリーという自分が望む"女性"へと変わっていく様は美しく魅力的で、演じるエディ・レッドメインの演技力をひしひしと感じた。一方で妻のエルダの愛する夫がいなくなってしまうという苦しみも、痛いほど理解できた。途中、リリーに「アイナーに会いたい」「夫と話したり抱きしめたりしたい」とえるだが涙ながらに訴えるシーンが忘れられない。

10.夏へのトンネル、さよならの出口 原作 八目迷 / 監督 田口智久
 入れば、欲しいものが何でも手に入るというウラシマトンネル。そのトンネルを巡って共同戦線を結んだ、亡くなった妹を取り戻したい塔野カオルと特別な才能が欲しい花城あんずの2人のひと夏の物語。
 SFな設定と高校生男女の甘酸っぱい青春が良いバランスだった。尺は全体で80分弱と短めだったが、物足りなさは不思議と感じないしっかりとした青春映画だった。作画が非常に美しく、ウラシマトンネル内部の怪しくも美しい背景と花城の揺れる長い黒髪が印象的だった。
 ウラシマトンネルは"欲しいものが手に入る"場所ではなく、"失ったものを取り戻せる"場所であるという事実に塔野が気付いたあとの「失ったもの」「すでに持っているのにそれに気づいていないもの」「捨てたもの」の3つの比較も印象的だった。

11.雨を告げる漂流団地 石田祐康監督
 小学6年生の少年少女6人が取り壊しの進む「おばけ団地」に忍び込み、突然不思議な現象に巻き込まれる。団地の中で出会った謎の少年 のっぽとともに力を合わせ、元の世界に戻ろうと奮闘するひと夏の冒険ファンタジー。『ペンギン・ハイウェイ(2018)』や『泣きたい私は猫をかぶる(2020)』を制作したスタジオコロリドが贈る長編アニメーション映画第3弾。
 謎の少年ののっぽくんは実は鴨の宮団地そのものである(座敷わらしや土地神に似た感じ?)と作品中で明らかになったとき、「人に愛され大切にされてきたものに魂が宿るという日本独特の思考が反映されているな」と感じた。今はもう無くなってしまった、私が好きだった場所も鴨の宮団地と同じようにどこかで漂流しているのだろうかと考えてしまった。
 また、素直に泣いたり怒ったり甘えたりしたら周囲に迷惑をかけるからと自分の気持ちを押し殺しがちな夏芽(アダルトチルドレンに近い)と、素直に泣いたり怒ったり、すぐ他人のせいにしたり、かなり自分勝手な行動が多い子どもらしい令依奈の比較も読み取れた。

12.少年を飼う (青井ぬゐ)
 都内で働くOL・森川藍はある日、自分の家の前にうずくまる16歳の少年・凪沙と出会う。年の差10歳以上、猫のようにマイペースな凪沙との奇妙な同居生活は少しずつ藍の日常を変えていく。

 はじめは表情もほとんど動かず、なにを考えているのか分かりにくい凪沙が物語が進むにつれ、少しずつ表情が柔らかくなり、いろんな表情を見せてくれるようになっていくのがかわいらしく魅力的だった。また、藍や凪沙の同級生の志田さんなど凪沙以外の登場人物の心情描写も丁寧でそれぞれの葛藤が印象的な作品。同じ作者さんの別の読み切り作品も読んだことがあるのだが、同じく登場人物の心情描写が印象的で、特に中高校生いわゆる青年期の子どもたちの複雑な感情を描くのが上手いと思った。
 血の繋がりはない、けれどお互いにお互いを大切に思い、無意識のうちに支え合っている二人がこれからどんな関係になっていくのか楽しみな作品。
2022/09/20(火) 13:06 No.1910 EDIT DEL