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三年 小林
RES
夏休み課題1~10
1ODDTAXI(アニメ)
企画・原作 P.I.C.S. 脚本 此元和津也 監督 木下麦
主人公の小戸川は、平凡な毎日を送るタクシードライバーである。そんな彼のもとには一癖も二癖もある客たちがたびたび乗車する。そうして彼らの話を聞いていくうちに、小戸川は平凡な日常とはかけ離れた事件に巻き込まれていく。
この物語は登場人物が全員動物の姿をしていることが特徴的だが、かわいらしいキャラクターデザインとは裏腹に、失踪事件やヤクザと警察の癒着など、描いている内容はダークで過激なものとなっている。初回はまだ日常的で、登場人物たちのコミカルな会話劇を楽しむような作品になっているが、回を追うごとにサスペンスの要素が強くなり、最終回付近になるとハラハラドキドキが止まらないような展開が待ち受けているため、まるでジェットコースターにでも乗ったかのような感覚を味わうことが出来る。またこの作品は現代のインターネット社会を風刺するような側面も持ち合わせており、SNSで自己顕示欲を満たそうとする者ややソシャゲ依存により人生を狂わされている者など、コミカルな動物たちを使うことで滑稽に見せながらも実際にありうるような狂気を鮮明に描いている。例示した以外にもそのような描写はたくさんあるので、是非視聴して確かめてみてほしい。
2ワンルームエンジェル(漫画)
著者 はらだ
惰性で毎日を送っていた主人公、幸紀は、とあるいざこざに巻き込まれ、チンピラに刺されて瀕死になった際、遠のく意識の中で、美しい白い羽をもつ天使を見た。その後すっかり完治し、自宅に戻ると、刺された際に見た天使がそこにいた。記憶もなく、身寄りもない天使を不憫に思った幸紀は、その天使を自分の家においてやることにした。社会不適合者の男と、ふてぶてしい天使の奇妙なルームシェアの始まりである。
この作品の見どころは天使と主人公の心の傷をお互いが癒していく過程にある。主人公の幸紀は過去自分が犯した過ちにずっと取りつかれたまま日々を惰性で暮らしており、自分に生きる価値などないと自責の念に駆られ続けている。そのような心の傷に対し、「あなたは悪くない」等、幸紀に許しを与えるような言葉をかける天使の存在により、徐々に彼の傷は癒されていく。物語の中盤になると、天使の重い過去が明らかになっていくのだが、その際には天使を不器用ながらも支えようとする幸紀の姿が描写されている。「言葉」と「行動」にという二つの優しさが彼らの傷をそっと癒すような描写が非常に秀逸で、読者の心に暖かさを残すような作品であるため、是非一度読んでほしい作品である。
3 終点は東京。(漫画)
著者 はやりやまい
サラリーマンの穂村は、長く付き合ってきた同性の恋人、高瀬を誘い、旅行に行くことにした。その旅行を最後の思い出に、高瀬に別れを告げることを決意して。
BL作品を描くうえで重要な要素の一つに、「普通」との乖離に頭を悩ませる登場人物というものがある。この作品はその要素を強く押し出した作品である。主人公の穂村は性的指向が同性に向くタイプの人間であり、そのため「普通」でいることにとてもこだわりのある性格として描かれている。自分が今得ている愛情と世間一般の感性を比較して苦悩する主人公の描写がとても丁寧で、切なさや苦しさがひしひしと伝わってくる。離れなければならないと苦悩する穂村とは裏腹に、高瀬が注ぐ彼への愛情も随所に見られ、それがまた切なさを加速させている。ぜひ読んでいただきたい作品である。
4 五十嵐くんと中原くん(漫画)
著者 イサム
中学時代のトラウマを払拭するために、高校デビューを果たした主人公、中原冬吾と、不真面目ながらもクラスでは人気を誇っている五十嵐桜が、とある衝突をきっかけにその距離を縮め、深くかかわりあっていく物語。
この話の肝は中原と五十嵐の立場の違いにある。五十嵐は中原にとって、自分が持ちたくとも持てなかったものをすべて持っていた所謂「勝ち組」のような存在である。中原はそれを実感するたび、自らの内にある劣等感や羨望と対峙することになる。逆に五十嵐が持ちえなかったものをすべて持っているのが中原であり、そんな二人がゆっくりと心の内をさらけ出すたびに、関係に変化が生まれる過程がとても上手に描かれている。作中のセリフを借りて言うならば「どちらかが息を吸っている時は吐いて、吐いているときは吸っているような、息があっているようで合わない関係」の二人の行く末を見守っていきたい所存である。
5 こいにもならない。(漫画)
著者 hagi
主人公の田島は、それまで接点のなかった男子生徒、古賀の泣き顔を偶然見てしまう。その理由をよくよく聞くと、古賀が大事に育てていた金魚を、自分の飼い猫が殺してしまったことが原因であると判明する。何とか謝罪しようとする古賀と仲良くする田島。その過程で、彼は古賀が心に抱えてきた秘密を知る。
この物語は、古賀が抱えるどうしようもない想いと、それを包み込むかのような田島の優しさが織りなす物語であり、夏を題材にしていることもあってか、話の内容の割には爽やかに読むことが出来る作品である。登場人物が全員善人であり、誰も悪くないからこその悩みや虚無感なども非常に繊細に描かれている。またこの作品ではよく金魚鉢の描写が見られるのだが、その使い方も実に素晴らしく、空っぽになっても捨てられず、ただ形骸化した想いをずっと抱えている古賀の心情をよく表している。BL初心者にもお勧めできる作品であると言えよう。
6 窮鼠はチーズの夢を見る(映画)
監督 行定勲 原作 水城せとな
自分を好きになってくれた人間を来るもの拒まず、適当に付き合ってきた主人公、大伴は、ある日後輩である今ヶ瀬と七年ぶりに再会する。その際に告げられたのは、大伴の妻に浮気調査を依頼されており、浮気の証拠を黙る代わりに自分と関係を持ってくれという話だった。最初は証拠のために嫌々関係を持っていた大伴だったが、徐々に今ヶ瀬に絆されていく。
これまで漫画でのBL作品を解説してきたが、今回は実写でのBL作品である。この作品はとにかく空気感を演出することがうまく、主人公を想う今ヶ瀬の気持ちと、今ヶ瀬を想いつつも受け入れることを拒む大伴との関係性を肌で感じることが出来た。視聴しているうちに大伴の煮え切らない態度にイライラし、それでも大伴を想う今ヶ瀬がより健気に見えてきていたたまれない気持ちになるなど、とにかく感情の動きが忙しくなる作品である。できれば時間に余裕があるときに視聴していただきたい。
7 忘却バッテリー(漫画)
著者 みかわ絵子
中学硬式野球界でその名を知らない者はいないほどの天才バッテリー、清峰と要。そんな彼らとの実力差に絶望し、野球を続けることを諦めた山田は、そこで信じられない光景を目にする。確かに自分が打ちのめされた原因である清峰と要が、野球部のない自分と同じ高校に進学している姿だった。かつて智将と呼ばれた要が記憶喪失になってしまっているというおまけ付きで。
この物語はしっかりとスポーツ漫画の王道をなぞっているものの、ちょうどよく挟まれるギャグシーンや、それぞれのキャラクターが非常に際立っている作品である。特にこの物語の根幹である天才バッテリー、その女房役である要は、記憶喪失以前は智将と呼ばれるほど理知的でストイックな人物だったのだが、記憶を失ってからはそんな要素は一切なく、むしろアホになっていた、という設定は実に魅力的である。勢いのあるギャグシーンを生み出しながらも、シリアスなシーンの際はその明るさで人を前向きな気持ちにさせる描写も非常に上手い。記憶喪失で何もかも忘れてしまったからこそ、立ちふさがる強敵だけではなく、「智将」であった自分もライバルであるという描写が生まれ、読んでいて実に胸が躍ったのを覚えている。このようにギャグと熱さの2つを持ち合わせたキャラクターたちが沢山登場し、どのキャラクターにも愛着を持って物語を読むことが出来るため、読んでいて非常に楽しい漫画となっている。現在連載中であり、非常に熱い展開となっているので、是非読んでみてほしい。
8 その着せ替え人形は恋をする(漫画)
著者 福田晋一
主人公の五条は、幼いころ自分が好きな菊人形の趣味を否定されたことがトラウマになり、高校生になってもいまいち人と関われずにいた。そんなある日、菊人形用の服を家庭科室で作っているところを、自分とは正反対の存在であるクラスメイト、喜多川に見つかってしまう。喜多川は彼が衣服を作れると判明するや否や、こう依頼してくる。「あたしにコス衣装つくってくれないかな……!?」
この物語は正反対の二人がお互いの「好き」をぶつけ合うことで仲を深める過程や、そこに含まれる甘酸っぱい恋模様が描かれている作品である。五条と喜多川は両者ともにジャンルは違えど、マイナーな趣味を持っていることが共通点として挙げられる。ただ五条がその趣味を表に出さないこととは裏腹に、喜多川はその趣味を隠すことはせず、むしろ惜しみなく好きを表現している。そんな正反対な二人が、コスプレを通じて自分の好きなことを最大限表現できる相手として関係を発展させていく様は実にほほえましい。また恋模様に関してだが、普通の恋愛漫画なら何かが起きそうな展開でも、二人が非常に純情で、意識するだけで何も発展しないことがよくあり、読者としてはもどかしいいものの、二人のかわいらしさに心を何度もつかまれるような、とにかくキュンキュンさせられる作品となっている。ぜひ読んでいただきたい。
9 姉の嫁と暮らしています(漫画)
著者 くずしろ
主人公、岸辺志乃は両親も兄も亡くしてしまった高校生の少女である。そんな彼女が今共に暮らしているのは、亡くなった兄の嫁、希。「家族だけど他人」という二人は、今日も穏やかな日常を共に暮らす。
この物語で描かれているのは、血縁関係はないものの義理の家族ではあるという微妙な関係性と、遺されてしまった側の苦悩である。志乃と希は一見非常に仲が良く、周りからもまるで本物の姉妹のようだと評されているのだが、やはりどこか遠慮が見えたり、踏みこもうにも踏み込めないような領域があることをしっかりと描写している。また序盤こそ幸せな二人の描写が多いものの、中盤になるとそれがただの傷のなめあいであり、愛しい人が二度と帰らないという事実から目を背け続けるためのぬるま湯のような関係であることを、登場人物はもちろん、読者にもはっきりと叩きつけてくる。そのような後ろ向きの関係から、どのようにして前向きな関係へと変わっていくのか、そしてその過程で起きる摩擦をどう解決していくのか、是非実際に読んで確かめてみてほしい。
10ラジエーションハウス(漫画)
原作 横幕智裕 漫画 モリタイシ
診療放射線技師の五十嵐は、幼馴染で憧れの女性である杏とかわした「自分が放射線技師、杏が放射線科医として共に働く」という約束を果たすため、甘春総合病院で技師として働くことになる。しかしとうの甘春は彼のことを覚えておらず、それどころか技師の身分でありながら自分より優れた読影技術をもつ五十嵐に対して強く当たってしまう始末。そんな二人と個性豊かな仲間たちがCTやMRIを使い、怪我や病の原因、それに付随する物事の真相を解き明かす医療漫画。
この物語は普通の医療漫画とは違い、手術などのシーンは一切描かれない。その代わり描かれるのはCTやMRIなど、病気を見つけるための現場である。その描き方が非常に詳細であり、放射線科というあまり理解が及んでいない部分においてもわかりやすく説明がなされている。また読影という病気を診断する作業における描画が非常に美しいのも特徴的だ。主人公の五十嵐は読影技術に長けており、そのレベルは放射線科医の権威にも認められるほどである。そんな彼の異次元な読影技術を描写するために見開きのページを丸々使うなどの大胆な表現が使われており、その美しさは漫画というよりかは一種の絵画の域に達していると言えよう。そのような描写と丁寧な解説により、放射線科では何が行われているのか、そこで生じている問題とは何なのかを興味をもって学ぶことが出来、単なる漫画としての面白さだけではなく、学びも得ることができるような作品に感じられた。
1ODDTAXI(アニメ)
企画・原作 P.I.C.S. 脚本 此元和津也 監督 木下麦
主人公の小戸川は、平凡な毎日を送るタクシードライバーである。そんな彼のもとには一癖も二癖もある客たちがたびたび乗車する。そうして彼らの話を聞いていくうちに、小戸川は平凡な日常とはかけ離れた事件に巻き込まれていく。
この物語は登場人物が全員動物の姿をしていることが特徴的だが、かわいらしいキャラクターデザインとは裏腹に、失踪事件やヤクザと警察の癒着など、描いている内容はダークで過激なものとなっている。初回はまだ日常的で、登場人物たちのコミカルな会話劇を楽しむような作品になっているが、回を追うごとにサスペンスの要素が強くなり、最終回付近になるとハラハラドキドキが止まらないような展開が待ち受けているため、まるでジェットコースターにでも乗ったかのような感覚を味わうことが出来る。またこの作品は現代のインターネット社会を風刺するような側面も持ち合わせており、SNSで自己顕示欲を満たそうとする者ややソシャゲ依存により人生を狂わされている者など、コミカルな動物たちを使うことで滑稽に見せながらも実際にありうるような狂気を鮮明に描いている。例示した以外にもそのような描写はたくさんあるので、是非視聴して確かめてみてほしい。
2ワンルームエンジェル(漫画)
著者 はらだ
惰性で毎日を送っていた主人公、幸紀は、とあるいざこざに巻き込まれ、チンピラに刺されて瀕死になった際、遠のく意識の中で、美しい白い羽をもつ天使を見た。その後すっかり完治し、自宅に戻ると、刺された際に見た天使がそこにいた。記憶もなく、身寄りもない天使を不憫に思った幸紀は、その天使を自分の家においてやることにした。社会不適合者の男と、ふてぶてしい天使の奇妙なルームシェアの始まりである。
この作品の見どころは天使と主人公の心の傷をお互いが癒していく過程にある。主人公の幸紀は過去自分が犯した過ちにずっと取りつかれたまま日々を惰性で暮らしており、自分に生きる価値などないと自責の念に駆られ続けている。そのような心の傷に対し、「あなたは悪くない」等、幸紀に許しを与えるような言葉をかける天使の存在により、徐々に彼の傷は癒されていく。物語の中盤になると、天使の重い過去が明らかになっていくのだが、その際には天使を不器用ながらも支えようとする幸紀の姿が描写されている。「言葉」と「行動」にという二つの優しさが彼らの傷をそっと癒すような描写が非常に秀逸で、読者の心に暖かさを残すような作品であるため、是非一度読んでほしい作品である。
3 終点は東京。(漫画)
著者 はやりやまい
サラリーマンの穂村は、長く付き合ってきた同性の恋人、高瀬を誘い、旅行に行くことにした。その旅行を最後の思い出に、高瀬に別れを告げることを決意して。
BL作品を描くうえで重要な要素の一つに、「普通」との乖離に頭を悩ませる登場人物というものがある。この作品はその要素を強く押し出した作品である。主人公の穂村は性的指向が同性に向くタイプの人間であり、そのため「普通」でいることにとてもこだわりのある性格として描かれている。自分が今得ている愛情と世間一般の感性を比較して苦悩する主人公の描写がとても丁寧で、切なさや苦しさがひしひしと伝わってくる。離れなければならないと苦悩する穂村とは裏腹に、高瀬が注ぐ彼への愛情も随所に見られ、それがまた切なさを加速させている。ぜひ読んでいただきたい作品である。
4 五十嵐くんと中原くん(漫画)
著者 イサム
中学時代のトラウマを払拭するために、高校デビューを果たした主人公、中原冬吾と、不真面目ながらもクラスでは人気を誇っている五十嵐桜が、とある衝突をきっかけにその距離を縮め、深くかかわりあっていく物語。
この話の肝は中原と五十嵐の立場の違いにある。五十嵐は中原にとって、自分が持ちたくとも持てなかったものをすべて持っていた所謂「勝ち組」のような存在である。中原はそれを実感するたび、自らの内にある劣等感や羨望と対峙することになる。逆に五十嵐が持ちえなかったものをすべて持っているのが中原であり、そんな二人がゆっくりと心の内をさらけ出すたびに、関係に変化が生まれる過程がとても上手に描かれている。作中のセリフを借りて言うならば「どちらかが息を吸っている時は吐いて、吐いているときは吸っているような、息があっているようで合わない関係」の二人の行く末を見守っていきたい所存である。
5 こいにもならない。(漫画)
著者 hagi
主人公の田島は、それまで接点のなかった男子生徒、古賀の泣き顔を偶然見てしまう。その理由をよくよく聞くと、古賀が大事に育てていた金魚を、自分の飼い猫が殺してしまったことが原因であると判明する。何とか謝罪しようとする古賀と仲良くする田島。その過程で、彼は古賀が心に抱えてきた秘密を知る。
この物語は、古賀が抱えるどうしようもない想いと、それを包み込むかのような田島の優しさが織りなす物語であり、夏を題材にしていることもあってか、話の内容の割には爽やかに読むことが出来る作品である。登場人物が全員善人であり、誰も悪くないからこその悩みや虚無感なども非常に繊細に描かれている。またこの作品ではよく金魚鉢の描写が見られるのだが、その使い方も実に素晴らしく、空っぽになっても捨てられず、ただ形骸化した想いをずっと抱えている古賀の心情をよく表している。BL初心者にもお勧めできる作品であると言えよう。
6 窮鼠はチーズの夢を見る(映画)
監督 行定勲 原作 水城せとな
自分を好きになってくれた人間を来るもの拒まず、適当に付き合ってきた主人公、大伴は、ある日後輩である今ヶ瀬と七年ぶりに再会する。その際に告げられたのは、大伴の妻に浮気調査を依頼されており、浮気の証拠を黙る代わりに自分と関係を持ってくれという話だった。最初は証拠のために嫌々関係を持っていた大伴だったが、徐々に今ヶ瀬に絆されていく。
これまで漫画でのBL作品を解説してきたが、今回は実写でのBL作品である。この作品はとにかく空気感を演出することがうまく、主人公を想う今ヶ瀬の気持ちと、今ヶ瀬を想いつつも受け入れることを拒む大伴との関係性を肌で感じることが出来た。視聴しているうちに大伴の煮え切らない態度にイライラし、それでも大伴を想う今ヶ瀬がより健気に見えてきていたたまれない気持ちになるなど、とにかく感情の動きが忙しくなる作品である。できれば時間に余裕があるときに視聴していただきたい。
7 忘却バッテリー(漫画)
著者 みかわ絵子
中学硬式野球界でその名を知らない者はいないほどの天才バッテリー、清峰と要。そんな彼らとの実力差に絶望し、野球を続けることを諦めた山田は、そこで信じられない光景を目にする。確かに自分が打ちのめされた原因である清峰と要が、野球部のない自分と同じ高校に進学している姿だった。かつて智将と呼ばれた要が記憶喪失になってしまっているというおまけ付きで。
この物語はしっかりとスポーツ漫画の王道をなぞっているものの、ちょうどよく挟まれるギャグシーンや、それぞれのキャラクターが非常に際立っている作品である。特にこの物語の根幹である天才バッテリー、その女房役である要は、記憶喪失以前は智将と呼ばれるほど理知的でストイックな人物だったのだが、記憶を失ってからはそんな要素は一切なく、むしろアホになっていた、という設定は実に魅力的である。勢いのあるギャグシーンを生み出しながらも、シリアスなシーンの際はその明るさで人を前向きな気持ちにさせる描写も非常に上手い。記憶喪失で何もかも忘れてしまったからこそ、立ちふさがる強敵だけではなく、「智将」であった自分もライバルであるという描写が生まれ、読んでいて実に胸が躍ったのを覚えている。このようにギャグと熱さの2つを持ち合わせたキャラクターたちが沢山登場し、どのキャラクターにも愛着を持って物語を読むことが出来るため、読んでいて非常に楽しい漫画となっている。現在連載中であり、非常に熱い展開となっているので、是非読んでみてほしい。
8 その着せ替え人形は恋をする(漫画)
著者 福田晋一
主人公の五条は、幼いころ自分が好きな菊人形の趣味を否定されたことがトラウマになり、高校生になってもいまいち人と関われずにいた。そんなある日、菊人形用の服を家庭科室で作っているところを、自分とは正反対の存在であるクラスメイト、喜多川に見つかってしまう。喜多川は彼が衣服を作れると判明するや否や、こう依頼してくる。「あたしにコス衣装つくってくれないかな……!?」
この物語は正反対の二人がお互いの「好き」をぶつけ合うことで仲を深める過程や、そこに含まれる甘酸っぱい恋模様が描かれている作品である。五条と喜多川は両者ともにジャンルは違えど、マイナーな趣味を持っていることが共通点として挙げられる。ただ五条がその趣味を表に出さないこととは裏腹に、喜多川はその趣味を隠すことはせず、むしろ惜しみなく好きを表現している。そんな正反対な二人が、コスプレを通じて自分の好きなことを最大限表現できる相手として関係を発展させていく様は実にほほえましい。また恋模様に関してだが、普通の恋愛漫画なら何かが起きそうな展開でも、二人が非常に純情で、意識するだけで何も発展しないことがよくあり、読者としてはもどかしいいものの、二人のかわいらしさに心を何度もつかまれるような、とにかくキュンキュンさせられる作品となっている。ぜひ読んでいただきたい。
9 姉の嫁と暮らしています(漫画)
著者 くずしろ
主人公、岸辺志乃は両親も兄も亡くしてしまった高校生の少女である。そんな彼女が今共に暮らしているのは、亡くなった兄の嫁、希。「家族だけど他人」という二人は、今日も穏やかな日常を共に暮らす。
この物語で描かれているのは、血縁関係はないものの義理の家族ではあるという微妙な関係性と、遺されてしまった側の苦悩である。志乃と希は一見非常に仲が良く、周りからもまるで本物の姉妹のようだと評されているのだが、やはりどこか遠慮が見えたり、踏みこもうにも踏み込めないような領域があることをしっかりと描写している。また序盤こそ幸せな二人の描写が多いものの、中盤になるとそれがただの傷のなめあいであり、愛しい人が二度と帰らないという事実から目を背け続けるためのぬるま湯のような関係であることを、登場人物はもちろん、読者にもはっきりと叩きつけてくる。そのような後ろ向きの関係から、どのようにして前向きな関係へと変わっていくのか、そしてその過程で起きる摩擦をどう解決していくのか、是非実際に読んで確かめてみてほしい。
10ラジエーションハウス(漫画)
原作 横幕智裕 漫画 モリタイシ
診療放射線技師の五十嵐は、幼馴染で憧れの女性である杏とかわした「自分が放射線技師、杏が放射線科医として共に働く」という約束を果たすため、甘春総合病院で技師として働くことになる。しかしとうの甘春は彼のことを覚えておらず、それどころか技師の身分でありながら自分より優れた読影技術をもつ五十嵐に対して強く当たってしまう始末。そんな二人と個性豊かな仲間たちがCTやMRIを使い、怪我や病の原因、それに付随する物事の真相を解き明かす医療漫画。
この物語は普通の医療漫画とは違い、手術などのシーンは一切描かれない。その代わり描かれるのはCTやMRIなど、病気を見つけるための現場である。その描き方が非常に詳細であり、放射線科というあまり理解が及んでいない部分においてもわかりやすく説明がなされている。また読影という病気を診断する作業における描画が非常に美しいのも特徴的だ。主人公の五十嵐は読影技術に長けており、そのレベルは放射線科医の権威にも認められるほどである。そんな彼の異次元な読影技術を描写するために見開きのページを丸々使うなどの大胆な表現が使われており、その美しさは漫画というよりかは一種の絵画の域に達していると言えよう。そのような描写と丁寧な解説により、放射線科では何が行われているのか、そこで生じている問題とは何なのかを興味をもって学ぶことが出来、単なる漫画としての面白さだけではなく、学びも得ることができるような作品に感じられた。
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