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4年 有田真優美 RES
1,パラサイト 半地下の家族(2019)監督:ポン・ジュノ

あらすじ
キム一家は家族全員が失業中で、その日暮らしの貧しい生活を送っていた。そんなある日、長男ギウがIT企業のCEOであるパク氏の豪邸へ家庭教師の面接を受けに行くことに。そして妹ギジョンも、兄に続いて豪邸に足を踏み入れる。正反対の2つの家族の出会いは、想像を超える悲喜劇へと猛スピードで加速していく。


匂いは身体に染み付いたもので、洗っても取れないその人特有のものであるからこそ、何かが違う、臭い匂いと言われることの残酷さ、それによる富裕層と貧困層の格差がキーになっていた。他にも、ラストシーンまで富裕層は水害が起きてることも知らず、最後の最後まで経済格差の残酷さが苦しい作品だった。映像描写としても、地下に階段から転落する母親は拭えない格差、地下と地上の差という視覚的な表現が見事だった。格差の表現として地下と地上はかなり直接的だが、インパクトだけではなくしっかりと背景が作り込まれていた。

2,怪物(2024) 監督:是枝裕和

あらすじ
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。それは、よくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。


誰が怪物かと考えさせられる物語である。それぞれがそれぞれの考え方があり、生きてきた生活の中で積み上げられた価値観があり、人間はとても多面的だなと思った。母と先生など勧善懲悪や正義と悪が対立を描くことも多い物語という世界の中でしっかりとそれを表現していた。どちらもそれぞれ良い部分悪い部分があり、母の普通に育って欲しいという思いも息子にとってはプレッシャーとなっているところが、必ずしも人を傷つけるものは故意的な感情だけとは限らないところが人間の複雑さをリアルに描いている。
また、ラストシーンでは二人が生まれ変わった、新しい世界へ旅立った、あるいは土砂崩れによって亡くなったなど様々な解釈ができる。こうした結末を観客に委ねることで観客に今現在の問題であるジェンダーなどについてしっかりと考えさせる誘導をしていた。

3,チ。地球の運動について(2025) 監督:清水健一

あらすじ
15世紀のヨーロッパ某国。飛び級で大学への進学を認められた神童・ラファウ。彼は周囲の期待に応え、当時最も重要とされていた神学を専攻すると宣言。が、以前から熱心に打ち込んでいる天文への情熱は捨てられずにいた。ある日、彼はフベルトという謎めいた学者と出会う。異端思想に基づく禁忌に触れたため拷問を受け、投獄されていたというフベルト。彼が研究していたのは、宇宙に関する衝撃的な「ある仮説」だった。



最後の?が浮かぶシーンは個人的にNHKの「マリー&ガリー」を彷彿とさせた。これまでかなり複雑な話をしていたが、結局のところ子どもでもわかるようなシンプルな「なんでだろう」という疑問や好奇心が人を突き動かすのだなというメッセージを感じ、人を魅了する作品の根本はどれも普遍的なメッセージが込められていると考えた。
この作品は常に名も無きキャラクター達が次々と主人公を引き継いでいたが、最後にアルベルト・ブルゼフスキにバトンが引き継がれたことで一気に現実にあったかもしれない、彼らがいたかもしれないというありえた物語に変化したと思う。最終回までは史実を織り交ぜつつも完全なフィクションだったが、逆に現実の人間をほとんど出さなかったことで、史実にはない人々の葛藤の物語として今と繋がる可能性も秘めていて最後の最後までロマンを感じさせる終わり方であった。
また、「君たちは歴史の登場人物じゃない」というセリフは、逆を言えば歴史を形作る当事者であるという意味にもなるのではと思う。

4,天使にラブソングを(1992)監督:エミール・アルドリーノ

あらすじ
とある殺人現場を目撃したために、組織に命を狙われるようになったクラブ歌手のデロリスは、裁判の日まで修道院で匿われることになる。やがて聖歌隊の指揮者を任された彼女は、曲調などをアレンジし始め、保守的な修道院長と対立していく。

ゴスペルの音楽もとても良く、実際にゴスペル黒人の教会でも歌われるもので、この作品のように教会の神聖な感じにもでも合うと思った。世俗的ではあるが、下品すぎず、聞いていて明るく、気分が良くなる音楽であり、教会とグロリアという交わらないものが交わった時の化学反応のようなものを感じた。歌唱シーン以外でもBGMのような感じで流れており、そこもストーリーに合っていて良かった。
さらにこの作品は登場人物達に強さがある。グロリアもシスターも環境に順応していく大変さとすごさがある。変わることの怖さもあるが、新鮮なことはやはり楽しいと思わせてくれる作品だと思う。作中でも司教が新鮮で楽しいというような台詞を言っておりメッセージのひとつなのだろうと思った。
また、コメディ部分がジョークという感じで、悪役もベタだが分かりやすく滑稽さに爽快感を感じる。とてもエンタメにふりきった作品であり、教会だってこういう形があってもいいじゃないかという堅苦しいイメージのある教会に対する、そして教会に縁のない人々へのメッセージだと思った。さらにタイトルの「天使にラブソングを」の「天使」はただイエス・キリストというだけではなく、デロリスや尼たちのことかなと思った。形式的な聖歌ではなく主のことを想ったラブソングをデロリスが運んでくれた、生み出してくれた、ということだと考えた。

5.ドールハウス(2025)監督:矢口史靖

あらすじ
最愛の娘を亡くし悲しみに暮れる女性はある日、骨董市で娘によく似た人形を見つける。彼女はその人形を娘のようにかわいがることで少しずつ元気を取り戻していくが、その人形はやがて家族を恐怖に陥れていく。

洗濯機のシーンなど妄想か現実か霊の仕業か分からない目まぐるしくかつ混沌とした映像シーンは観客をハラハラさせ、女の子の叫ぶシーンや暗闇の中のカメラなどエンタメとして驚かせようという演出が多かった。
特にカメラのシーンはホラーゲーム的な雰囲気もあり、恐怖と同時に没入感が強かったと思う。また、ストーリー自体も王道でありながら、上記のような演出と音楽などでじわじわと常に不穏な雰囲気を崩さずにいた。また、めいが死んだ洗濯機と壺の中に入るシーンは重なっており、そこからアヤちゃんを抑え、めいは佳恵を助けたように見えた。しかし、アヤちゃんは実の母に殺された実家には帰りたくなかったため、家に舞い戻り、一度自分の領域に入り込んだ二人を取り込むことに成功したのかなと考えた。

6,タコピーの原罪(2025)監督:飯野慎也

あらすじ
これはぼくときみの最高にハッピーな物語。
ハッピーを広めるため地球に降り立ったハッピー星人のタコピーは人間の女の子しずかと出会う。ピンチを救ってもらったタコピーはしずかの笑顔を取り戻すため不思議な力を持つハッピー道具で奔走する。しかし、しずかはおうちとがっこうでなにか事情を抱えているようで...。

タコピーの純粋さと現実の対比がより現実を残酷なものにしており、善意が刃になることもあるということを突きつけられる作品だった。また、子ども向けのアニメ作品が良いこととして疑わず描いてきたものを真正面から壊すような現実的な大人向けの作品だと思った。特に最終回のしずかの「誰に言えばよかった?」やタコピーの「君たちが大人になれるように」というセリフはしずか達ではなくその周りの大人たち、ひいては視聴者である大人たちに向けたメッセージであり、子どもたちを守っていく義務や責任が親のみならず大人にはあると思った。さらに子どもの社会問題でいうと2025年夏クールドラマで「明日はもっと、いい日になる」という児童相談所を舞台とした作品もあり、社会的にもまさに現代の問題なのだと思った。

7,ひとりでしにたい(ドラマ)(2025)演出:石井永二、小林直希、熊坂出

あらすじ
30代後半の独身女性、山口鳴海が、憧れの伯母の孤独死をきっかけに婚活から終活へと関心を移していく。そして鳴海は、結婚よりも、より良く生き、より良く死ぬための準備、つまり終活について模索していく。


100年時代で独身が増える現代によく合うテーマだと思う。また、ギャグマンガが原作なだけあり、就活や死ぬという重いテーマと反して主人公の妄想や脳内モノローグが常にあり、分かりやすく終活などについて学ぶこともできる。鳴海は現代によくいるオタ活が生きがいのとても現代の人々に共感できるキャラクターとなっている。それだけではなく自分ファーストで人の気持ちを汲みきれない部分などは人との繋がりという部分でいつの時代もどの年代にも共感できる悩みだと思う。
特に独身女性は周りに舐められる、介護問題、嫁姑問題などとてもリアルな部分の悩みで、鳴海自身も擁護できない間違いを犯すこともあり、そういったところも含めて人間らしく身近に感じられる存在になっていると思う。

8,35年目のラブレター(2025)監督:塚本連平

あらすじ
過酷な幼少時代を過ごしてきたゆえに、読み書きができないまま大人になってしまった主人公・西畑保。保を支え続けたしっかり者の妻・皎子 きょうこ 。仲良く寄り添うように生きてきた2人。定年退職を機に、保はあることを決意する。最愛の妻にこれまでの感謝を込めた“ラブレター”を書く。
60歳を超えた保の長い奮闘の日々が始まった。これは実在する西畑夫妻の、本当にあったお話。

ラブレターを書いたあとの変化や起きたことも描かれており、その手紙というターニングポイントだけでない部分も丁寧に描かれているからこそ、得られるものやその先の未来が感じられていくつになっても何かを始めるのに遅いなんてことは無いというメッセージがより響くものになっていた。また、4人が交わり、手紙を読むシーンはベンチという大切な場所をひとつ作ることで、そこで長く連れ添った月日を感じられるようになっていた。
さらに、手紙の文字だからこその良さがあると思うため、ガタガタの字やタイプライターの字がとても温かみを感じるものであり、しっかりと映像に映されることで視聴者の心を揺さぶる演出になっていた。

9,ヴァイオレットエヴァーガーデン(2018)監督:石立太一

あらすじ
感情を持たない一人の少女がいた。彼女の名は、ヴァイオレット・エヴァーガーデン。
戦火の中で、大切な人から告げられた言葉の意味を探している。戦争が終わり、彼女が出会った仕事は誰かの想いを言葉にして届けること。
戦争で生き延びた、たった一人の兄弟への手紙、都会で働き始めた娘から故郷の両親への手紙、飾らないありのままの恋心をつづった手紙、去りゆく者から残される者への最期の手紙、手紙に込められたいくつもの想いは、ヴァイオレットの心に愛を刻んでいく。これは、感情を持たない一人の少女が愛を知るまでの物語。

手紙を誰かに書く、その過程をここまで丁寧に描いた作品はなかなかないこともあり、
手紙を書くことで伝えられる思いがあると視聴者は気付かされる部分があると思う。何より、SNSが発達した今だからこそ、手紙の趣を知らない若者にこそ刺さる作品かもしれないと感じた。
心を知っていくということは視聴者からすれば、忘れていた感情を取り戻す、共感を覚えるなど、そうしたところで自身の人生とリンクさせ、SNSとは違う、手紙でなら伝えられる感情というものをこの作品を通して感じると思う。
ルクリアの生きているだけで嬉しいという言葉や婚約外交の恋文、自分が死んだ後の娘への手紙など、手紙にも様々な形があるが、どれも共通して手紙という少し手間のかかるものだからこそ丁寧で愛のある言葉が使われているように思う。こうしたなかなか言えない言葉を文字ではあるが、直接伝えることのできる手段であると感じた。人同士の話だからこそここまで話を展開できる上に、一話完結的なところもあるため観やすくもなっていると思った。

10,劇場版ポケットモンスター君に決めた!(2017)監督:湯山邦彦

あらすじ
マサラタウンに住む少年サトシは、ポケモントレーナーの資格を得ることができる10歳の誕生日を楽しみにしていた。しかし、オーキド研究所でポケモンをもらえる当日の朝に大寝坊した彼は、残っていた人間に懐かないピカチュウを受け取ることになる。それからも、ことあるごとに衝突するサトシとピカチュウ。しかし次第に友情を深めていった彼らは、伝説のポケモン・ホウオウに出会うためテンセイ山を目指す。

この節目であえて過去キャラクターの生命を司るポケモン・ホウオウを扱った意味のひとつに「生きるということ」「未来は虹色に輝いている」といったアニメを観る子どもたちへのメッセージ性も含まれていると感じた。
ホウオウとガオガエンといった今だから見ることのできるポケモン達の邂逅がポケモンの歴史を感じさせる。
バタフリーのお別れなど過去のエピソードも交えつつ、オリジナルストーリーとしてとても見応えがあり、過去のファンも新しいファンも楽しめる内容であったと思う。また、ポケモンゲットだぜというシーンなどアニメでは効果線などポップな演出で描かれている部分が、サラッと描かれており、より幅広い年代に向けているように思う。
さらに、レントラーやホウオウ、サトシが倒れたシーンなど生と死、命というものを真正面から描いている。この作品の届けたいメッセージもここにあると思う。仲間、友だちの大切さを子どもだけでなく大人も感じる作品だった。
ピカチュウが喋るシーンは衝撃的で、異空間だからこそ成立する演出であるのはもちろん、20作目の節目にずっとそばにいたピカチュウのずっと明かされることのなかった本心が描かれた。本来であれば、あくまでポケモンは動物のように区別してあまり言葉を喋って欲しくないという気持ちもあるが、その考えを覆すほど大谷育江さんの演技が絶妙で、ポケモンが喋るという異例の演出が成立したのはその演技力の部分が大いにあると感じた。実際、大谷育江さんの好演によりピカチュウのキャラの幅が大きく広がり、ポケモンのキャラクターがより愛されるようになる一助であったのは確かだと思う。そのため声優が作品の一部さらに言えばストーリーにも影響を与えることがあるのだなと感じた。

11,スーパーマリオブラザーズ(2023)監督:アーロン・ホーヴァス、マイケル・ジェレニック

あらすじ
ニューヨーク・ブルックリンで配管工を営む双子の兄弟マリオとルイージは、水道管の修理をしていたところ、謎のパイプを通って、不思議な世界へ迷い込んでしまう。その道中、ルイージと離ればなれになってしまったマリオ。彼が辿り着いたのは「キノコ王国」だった。キノコ王国の住人であるキノピオの助けを借り、強い意思をもつ「キノコ王国」の統治者・ピーチ姫から訓練を受けたマリオは、やがて自らの力を発揮していく。一方、ルイージが辿り着いたのは、カメ族の大魔王・クッパが支配している「闇の国」。マリオは、囚われの身となったルイージを救出すべく、壮大な冒険へと身を投じていく。

マリオカートなど初期のマリオブラザーズだけではなく様々なマリオゲームの要素を取り入れた、歴史を感じる作品になっている。また、マリオたちはゲームでは擬音語のようなものしか喋らないため、最初は言葉を発していることや感情があること自体違和感を感じるが、定番のキャラやマリオが動いているという感動、土管の移動などの視覚的驚きや感動な方が印象が強かった。
この作品での原作との一番の相違点として、現実世界を登場させている。これによりマリオという有名なキャラクターにも共感しやすいようにしているのではないかと思う。
ゲームと違い、映画や物語では自分を重ねた方がより入り込みやすく、感動する部分があると思う。もちろんマリオとルイージの兄弟愛という根幹になる部分も描かれストーリーとしてゲームファンもそうでない人も満足するものだったのではないかと思う。
加えて、ピーチの強さはゲームでもそうだが、精神的にも強いところは近年のジェンダー観などから芯のある女性の方が好感をもてるということだろうと思った。

12,劇場版ポケットモンスター みんなの物語 (2018)監督:矢嶋哲生

あらすじ
人とポケモンが風とともに暮らす街「フウラシティ」では、1年に1度開催される「風祭り」のために、世界各地から様々な人やポケモンが集まっている。伝説のポケモン・ルギアは、人とポケモンの絆を確かめると街に「恵みの風」を送るという約束を、昔から街の人たちと交わしていた。それぞれの想いを持って風祭りに参加している、ラルゴ、リサ、トリト、カガチ、ヒスイ。そして、ポケモンマスターを目指す旅の途中でフウラシティを訪れた、サトシと相棒のピカチュウ。
人とポケモンの絆を軸にして、みんなの物語が大きく動き出す。



人とポケモンの関係性と人と自然の関係性が描かれていた。今回はみんなの物語ということもあり、物語の主軸はサトシではなくリサであり、他にも様々なキャラクターがしっかりと内面描写までされていたことで観客が誰かしらに共感できるようなキャラクター達が揃っている。また、悩みを持つキャラクターに対してサトシの真っ直ぐな姿に心打たれ変わっていくほかのキャラクターという構図もより観客目線に近いストーリーになっていると思う。本作に登場する彼らはポケモンの世界で悩みながらもポケモン達に救われ、勇気をもらい生きており、それはペットや家族に癒しを貰う現実の人々にも重なると思った。また、風がない、有毒ガス、山火事といった自然災害にも着目しており、ポケモンも生き物で、自然を破壊する人間に対する不信感も当然あり、自然と共存していくということの重要さを描いているのは子どもだけではなく大人にも刺さるテーマだと思う。

13,Flow(2025)監督:ギンツ・ジルバロディス

あらすじ
人間がいなくなったポスト・アポカリプスの世界で、森で暮らす1匹のダークグレーの猫が洪水と水位上昇に流され、旅に出る物語。猫は旅の中で犬(ラブラドール・レトリバー)、カピバラ、猿(ワオキツネザル)、鳥(ヘビクイワシ)、謎のクジラなど様々な動物と出会いながら流されていく。

終始台詞は一切なく、人間も出てこない。動物たちは擬人化もせずただの動物のままでいる。アポカリプスの世界で何が起こってこうなったかははっきりとは分からず、猫の行く末を見守りながら観客は彼らが何を考えているのか「考える」必要性が出てくる。また、猫が主人公というところもペットとしても飼われる猫を使うことで、観客は心配してより注意深く観るのではないかと思った。
また洪水のシーンは津波を想起させるようなもので本能的な恐怖を煽られるシーンだった。他にも敵に襲われるシーンなどカメラワークが水から顔を出したカット、水の中の魚の動く音などドキュメンタリーのカメラのようなリアリティがありこちらも実際にその場にいるような感覚になる映像になっていた。そうした音や音楽は台詞のない今作ではとても重要になると思う。また考察として、アポカリプスということもあり彼らが乗る舟はノアの箱舟をイメージしているのではないかと思った。また、ラストでクジラが打ち上げられていたが、あれは水に沈んだ世界でも生きられるもの、陸がなければ生きられないものたちの違いや分かれ道のようなものを感じた。舟では様々な動物が増えていくがそこに肉食も草食もなく、終末世界で生き物関係無く手を取り合う姿から台詞がなくともストーリーを想像できて良かった。

14,正三角関係(2024) 作・演出:野田秀樹

あらすじ
舞台は、日本のとある時代。物語はある花火師一家の三兄弟を軸に展開する。
三兄弟は、長男が花火師。次男が物理学者。三男は聖職者である。
この長男と父親が、一人の“女”を巡る三角関係を織り成し、“父親殺し”へと発展する。


NODA・MAPは抽象的で複雑な作品が多いが、その中では伝えたいことやテーマが分かりやすい方だと感じた。また、古典と日本の文化、現代の社会問題や近年の歴史を混ぜ合わせたことで、観客も没入しやすいと同時に古典作品の普遍性も感じた。さらに、花火と原爆のシーンは戦争の恐怖と花火師なのに花火をあげられない悲痛さを感じた。それを台詞ではなく戦争を想起させる映像などでも表現しており、直接的ではないからこそ観客に考えさせる余白を作っていて、NODA・MAPは難しさもあるがそこをよく分からなかったではなく、考えることで見えてくる過去の歴史に対する解釈もあるのではないかと思った。
NODA・MAPでは他作品でも見たことがあるが、ガムテープを伸ばしてそこに受話器を貼り付けたりボクシングのりんぐにしたりと使い方が面白かった。舞台の面白いところは一瞬で世界が目まぐるしく変化することをこうした独特な表現でリアルタイムで表現できることだと思った。
布の使い方も毎回のごとく綺麗で、布の自然な落ち方と半透明な姿で灰だと認識できるようになっている。他にもグルーシェニカの早着替えなど視覚的に派手な演出も多く、生の迫力が観客席にも伝わると思う。

15,劇場版モノノ怪 唐傘(2024)監督:中村健治

あらすじ
夜ごとに蓄積されていく女たちの情念が、この世ならざる怪異を引き起こすまでに膨れ上がった大奥。謎多き男・薬売りは、「モノノ怪」を追って大奥の中心まで進んでいく。

グラフィックは元の2007版を引き継ぎつつも、色味はよりビビットでオシャレな雰囲気も醸し出していた。また、音楽もポップチューンで現代の女性がリンクしやすい雰囲気が作られていた。内容自体は女性たちの情念渦巻く世界であった。
人の顔がお面になることで比喩的にモブ的なその他大勢の女達に対してアサやカメが異常であると突きつけている感じがした。華やかな絵柄に対して、愛や地位、憎悪などとても人間らしい醜い情念が描かれており、そこのギャップもまた大奥という一見華やかにも見える世界と重なると思う。また、情念がモノノ怪となり可視化される世界だからこそ、北川などより彼女らの表には出さない秘めた思いが台詞にはなくとも伝わるようになっている。

16,モノノ怪 (2007)監督:中村健治

あらすじ
人の情念た怨念が取り憑いたアヤカシは人に害を成すモノノ怪となる。それを斬るために、退魔の剣を携えて各地を旅をする男・薬売り。薬売りはモノノ怪を斬るために、それの「形」「真(まこと)」「理(ことわり)」を知るために関係者から事情を探っていく。モノノ怪を成した人の心とはなにか。

薬売りという謎の人物の魅力的なキャラクター造形はもちろん、その周りの人々の問題が妊婦や赤子などとても性的に生々しい話もあり、人間の業というものに焦点を当てた作品となっている。
特にグラフィックが独特で、和紙に描いたようなベースの背景、アイキャッチのような形で挟まるキャッチーな文字、場面転換など斬新なアニメーション表現になっていた。また、電車のシーンなどモノノ怪というだけあって何が起きているのか分からない恐怖を煽る感じはホラーとはまた違うが不気味な世界観が上手く作られていた。

17,おそ松さん ~魂のたこ焼きパーティーと伝説のお泊り会~(2023)監督:山口ひかる

あらすじ
十四松の「たこ焼きパーティをしよう」という一言から、たこ焼きパーティが開かれることになった松野家。いつものメンバーが全員集合するが、そこには数々の困難が待ち受けていた。さらに、幼なじみのチビ太らに加え、トト子ら女子メンバーも参加したお泊り会も開かれることに。モテない6つ子に千載一遇の大チャンスが訪れたと思われたが……。

映画のためただふざけるだけではなく、ふざけてばかりの彼らの本心や今までシリーズを積み上げてきたからこその絆を感じられる話だった。特にトト子ちゃんという一番純粋で単細胞な女の子が普段とは違ったことをすることで周りもかき乱され、いつもの安定した日常が崩れることでシリアスな展開になっていて、トト子ちゃんのシリアスな姿は視聴者も気になる変化で良いストーリーだと思った。

18,宇宙よりも遠い場所(2018) 監督:いしづかあつこ

あらすじ
群馬県内の高校に通う主人公(玉木マリ)が、行方不明となった母親を見つけようと南極を目指す同じ高校の同級生(小淵沢報瀬)らと知り合い、南極に向かう「女子高生南極青春グラフィティ」。

「絶交無効」のところのカットは動きのあるカットでキャラの表情を近く見せるところなども実写のような躍動感もあった。
南極の解像度も高く、ちゃんと説明してくれるところは作品のディテールを気にする昨今の視聴者にも納得のいく出来だと思った。
また、それだけではなくそれぞれの人間性がよく描かれていて、意外だなという人柄が見える部分がリアリティを深めていた。
きまりは意外と手先器用だ、しらせは大胆な所とそうじゃないところの差が激しい等、二面性があるのが人間であり、共感度が高い。しかし、物語となるとキャラクターが迷子になる可能性もある。だが、人間模様を丁寧に描いているからこそそういったこともなく真摯に人間模様が描かれていた。他にも、友達の意味など言語化できない難しさについても語られており、可愛い絵柄とのギャップが大きい。
もちろん可愛らしい日常シーンもちゃんとあり、友達や友情も描かれていてロードムービー的な感じで青春ストーリーとしてある種ドキュメントのような感覚さえした。

19,教皇選挙(2024) 監督:エドワード・ベルガー

あらすじ
キリスト教最大の教派であるカトリック教会の最高指導者にしてバチカン市国の元首でもあるローマ教皇が亡くなった。悲しみに暮れる暇もないまま、ローレンス枢機卿は新教皇を決めるための教皇選挙を執り仕切ることに。世界中の強力な候補者たちが集い、システィーナ礼拝堂の中で極秘の投票が始まる。選挙をめぐる陰謀や差別、スキャンダルが渦巻くなか、ローレンスはある秘密を知る。

コンクラーベというもの自体初めて知ったが、思っていたより火花を散らしており、キリスト教という宗教の大きさを改めて知った。その分人間の欲望もよく現れており、神を信仰している点では人間の道徳のような部分も大きい気がするため、ある種教皇は大統領などよりも負荷のかかる立場であると映画を観て感じた。また、インターセックスが教皇になるという描写は突飛でありながらも、女性登用に務めたサンフランシスコ教皇の功績もあり、現実の教会と照らし合わせても現実的なものであり、今の教会は変わらなければならない、というメッセージのようなものだと感じた。こうしたメッセージが映画になるほどそれだけ男女平等は当然の世の中になったのだと思う。
映像的には、赤色を全体的に象徴的に使っており、赤と白の衣装などはとても印象的だった。また、白傘のシーンやラストの白い女性、亀、歓声だけで上がった煙の色がわかる場面など、セリフではない映像描写での表現がとにかく綺麗で、意味づけの考察のしがいもあり映画としてのキリスト教や教皇選挙の表現が良かった。
また、リアルとリンクして教皇選挙が行われたことや現実では教皇の政治的な権力の強さから、教皇が変わることの重要性など、宗教の前提やその周りの問題などを知った上で見るとさらに作品そのものの理解も深まると思った。

20,映画ドラえもんのび太の絵世界物語(2025) 監督:寺本幸代

あらすじ
国民的アニメ「ドラえもん」の長編映画44作目で、「映画ドラえもん」シリーズ45周年記念作品。絵の中の世界に飛び込んだドラえもんとのび太たちが、幻の宝石を巡って時空を超えた冒険を繰り広げる。
数十億円の価値がある絵画が発見されたというニュースを横目に、夏休みの宿題である絵に取り組んでいるのび太。そんな彼の前に、突然絵の切れ端が落ちてくる。ひみつ道具「はいりこみライト」を使い、その絵の中に入って探検をしていると、不思議な少女クレアと出会う。彼女の頼みを受けて「アートリア公国」を目指すドラえもんとのび太たちだったが、そこはニュースで話題になっていた絵画に描かれた、中世ヨーロッパの世界だった。その世界には「アートリアブルー」という幻の宝石がどこかに眠っているという。幻の宝石を探すことになったドラえもんとのび太たちだったが、やがてアートリア公国に伝わる世界滅亡の伝説がよみがえってしまい、大ピンチに陥る。


中世ヨーロッパの絵の具の作り方や食事の仕方など時代考証がちゃんとしていてリアリティがあって、アートリア公国という独自の世界観にも入り込みやすかった。
また、良い絵とは。というメッセージ性が絵を描く身としてはよく分かってグッときた。加えて、大好きという気持ちが伝わってくる絵、一生懸命な気持ちが伝わること、という点は表現において大切なことであり、ラストの父やキャスターの言葉などからもそれが重要なメッセージのひとつだとわかる。絵に限らず、誰かが努力したものにはそれだけで価値がある、笑うものではないという普遍的で子どもへのメッセージとしても良いと思う。
水戻しふりかけで最終的に敵を倒すというシナリオも綺麗な伏線回収になっており、絵の世界の絵柄もちゃんと筆感が伝わって細部までこだわっている作品だと感じた。特に、オープニングの絵の世界も作品によって絵柄が違い、アニメだからこそ絵世界を描く意味のようなものを感じて、ミュシャやムンクの絵がドラえもんたちとコラボして動いている部分も美術の歴史を伝えるという意味でも子どもたちの学びにもなる部分だと感じた。
マンガの絵ももちろんあって、45周年で新しい形で原点回帰したような感じもあり、絵によってのび太からドラえもんへの改めて大好きだという愛を伝えた形は綺麗だなと思った。
2025/09/03(水) 14:30 No.2108 EDIT DEL
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