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橋本
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30『古見さんはコミュ症です(1期)』(アニメ)
“コミュ症”とは――人付き合いを苦手とする症状。またはその症状を持つ人を指す。留意すべきは――苦手とするだけで、他人と係わりを持ちたくない、とは思っていないことだ。
人と喋ることが苦手な古見さんの夢は、友達を100人作ること。最初の友達になったごくごく普通の男子である只野くんに助けてもらいながら、古見さんはクラスメイトと交流を深めていく。
個性的な面々が集まる学校の高嶺の花である古見さんと、名前からも察することができるただの人である只野くんが、クラスメイトと仲良くなりながら距離を縮めていく青春系学生生活物語。コミュニケーションの難しさを感じたことがある人なら共感できるエピソードが含まれており、只野くんのアシストが光る場面も多い。只野くんの行動から、コミュニケーションにおいてどのような要素が大事なのかを知ることができる面もあると考える。
31『MILGRAM-ミルグラム-』(プロジェクト)
ストーリー:山中拓也
監獄の看守となったあなたは、記憶喪失の中、収監されている10人の囚人を管理し、彼らの罪を赦すかどうか選択しなければならない。彼らの罪について分かっていることはただ一つ――『何者かの死に関わった』ということだけ。真相や理由は、彼らの楽曲の歌唱、歌詞、映像などから考察する必要がある。どんどん罪や、その罪に関する彼らの考え方が明らかになっていく中で、すべてを知ったあなたはちゃんと赦せるかな?
視聴者自身の感性と民意によって囚人を裁くことで、展開が変化していく新しい楽曲プロジェクト、『MILGRAM-ミルグラム-』。現在(2022年9月30日)第二審進行中。
二審が始まったことでさらなる盛り上がりが期待されるプロジェクト。一審での結果が囚人たちに変化を与え、赦す、赦さないの判断に新たな基準を生み出した点も面白い。取り扱っている問題は多岐にわたり、考察のし甲斐があるため、ディスカッションの議題にして赦すか赦さないか討論してみるのも面白いだろうと考える。
32『MILGRAM 実験監獄と看守の少女』(小説)
著者:波摘
原案:DECO*27/山中拓也
記憶を失った少女は見知らぬ場所で目覚め、ジャッカロープと名乗る謎の喋るウサギに指示されて「ミルグラム」という監獄の看守エスとなり、5人の囚人を裁くことになる。囚人たちにもまた記憶がなく、エスは彼らの人となりを知るため共に過ごすことになるが、「罪の本」の存在によって彼らの罪は次第に明らかになっていく。そうして彼女は悟る。囚人たちは皆、「ヒトゴロシ」なのだ、と。彼らの罪は一体何なのか。この「ミルグラム」の真相は。
すべてを知ったあなたは赦せるかな?
参加型プロジェクト『MILGRAM』の前日譚にあたる物語だと考えられる。そのため、プロジェクトで明らかになっていなかった部分が色々と明らかになり、さらに想像の余地が広がった。最も特徴的な点として、最後に小説内から読者へ語りかけられるシーンがあるのだが、それだけにとどまらず、5月2日にメディアワークス文庫の公式TwitterでGW期間限定投票が行われた(現在は終了)。「あなたは、小説『MILGRAM 実験監獄と看守の少女』の「××××」を、」という文章で、赦すか赦さないか選択するアンケート形式となっており、「××××」は64%で赦される結果となった。このことが今後プロジェクトの方に関わってくるかどうかも注目していきたい。
33『SPY×FAMILY』(アニメ)
原作:遠藤達哉
制作:WIT STUDIO×CloverWorks
敏腕スパイである黄昏は、精神科医ロイド・フォージャーに扮し、家族を作ることに。
だが、彼が出会った娘・アーニャは心を読むことができる超能力者、妻・ヨルは殺し屋だった!3人の利害が一致したことで、お互いの正体を隠しながら共に暮らすこととなる。
ハプニング連続の仮初めの家族に、世界の平和は託された――。
映像になることで、迫力が増し、家族の日常が具体的に色づいていくのを感じた。特にアーニャについて、漫画で読んでいた時より可愛らしさが強まっている印象がある。
34『東京卍リベンジャーズ(1期)』(アニメ)
原作:和久井健
制作:ライデンフィルム
冴えない26歳の花垣武道は、人生で唯一付き合うことができた中学時代の彼女が事件で死んでしまったことをテレビで知る。そんなある日、何者かに背中を押されて電車に轢かれそうになり、気が付けば12年前の同じ日にタイムリープしていた。過去を変えることで未来で死ぬことになる彼女を救うことができると知った武道は、人生のリベンジを誓い、奔走する。
ストーリーとしては、何度も同じ時間を繰り返すのではなく、12年前の現在時間にしか戻れないことがミソ。未来で起きることなら過去を変えることで回避できるが、戻った過去で起きたことは変えられない一発勝負であることと、主人公が弱くて調子にのることもあり頭もそんなに良くないながらも、耐久力が抜群で粘り強さがあり意外と察しがいいところもある点がうまく嚙み合っていると感じる。アニメで声があてられることによって中学生らしいところがたまに垣間見え、12年前と後の違いが感じられるところが個人的に良いと思っている。
35『逆行した悪役令嬢は、なぜか魔力を失ったので深窓の令嬢になります』〈1・2〉(漫画)
漫画:さかもとびん
原作:蒼伊
豊富な魔力を持つことから王太子の婚約者であったラシェルは、嫉妬による振る舞いで追放される道すがら、自分の行いを改めようとした矢先に不遇の死を遂げた――はずだった。目覚めると魔力は失われ、数年前に逆行していた。これまでの行いを改め、幸せになるために、王太子との婚約を破棄しようとするが、なぜか気に入られてしまい…。
転生ではないため、自分のことを「悪役令嬢」とは認識していないものの、自ずから客観的に見つめ直すことで改心し好転していくストーリー。途中、日本人の転生者らしき人物が出てくるなど、今後どのように展開していくのかいまいち読めない作品でもあると感じる。漫画本でありながら、最後に原作者による書き下ろし小説がある点にも珍しさを感じた。
36『不覚にもきゅんときた』〈1~3(完結)〉(漫画)
著者:凛田百々
線路に落ちてしまった光(みつ)の「宝物」を命がけで拾ってくれたのは、綺麗な涙を流す男の子だった。彼が同じ学校の同級生であることを知った光はお礼を言おうとするが、壁ドンしながら女の子を振っている現場を目撃してしまう。彼、黛廉太郎は、言葉と行動がウラハラな超ツンデレ男子だったのだ。期待すること、されることを嫌う黛と、まっすぐに気持ちを伝えようとする光。二人の行く末とは。
赤面ツンデレ男子と赤面純情素直女子の恋物語。光は陸上、黛はピアノという好きなことがあり、かつそれに関して大事ではあるけれどあまり話したくない思い出があるという共通点があることがキーになっていると感じた。また、現実味よりも少女マンガらしい展開が目立つが、男性側の赤面や葛藤、涙を流す場面が多いという点が他にあまり見られない特徴なのではないかと読んでいて思った。
37『小松原が恋人になりたそうにこちらをみている!』〈1~3(完結)〉(漫画)
著者:かわにし萌
文武両道、真面目で成績優秀な女子高生・草原名雪は、「良い子」になることで「褒められたい」という承認欲求を満たしていた。しかし、やってきた中間試験で学年1位をとったのは、自称闇の勇者ディーン(小松原誠)。対抗意識を燃やす名雪をよそに、痛々しい中二病ながら何かと助けてくれる小松原は、5年前から名雪に恋をしているらしく…?
ヒロインが比喩でもなんでもなく鬼の形相をするラブコメディ。家にお風呂が無い程貧乏で、母親が早くに亡くなり、父親が営むラーメン屋を手伝いながら弟の面倒を見る主人公は、恋愛漫画にありがちな苦労しているヒロイン像に合致しているように思えるが、同情されたくなく、助けられることに屈辱を感じ、慈悲を受け取りたくないというようなメンタルに少女漫画らしくなさを感じる。恋に限らず、綺麗ばかりではない感情と向き合っていく姿が描かれていると考える。
38『千年迷宮の七王子』〈1~4(完結)〉(漫画)
著者:花鶏ハルノ・相川有
辺境の地で普通の学生として暮らしていたユアンは、目を覚ますと全く知らない場所にいた。昔話に登場する千年迷宮城を彷彿とさせるその場所に集まったのは、騎士、盗賊、探偵、歌手、市民運動家と様々。窓も全て塞がれている密室の中で、どうやらこの中から次代の皇帝を決める必要があるようで……。徐々に水没していく城から生きて帰るため、彼らは協力しながら城の謎を解き明かしていく。何らかの事件が起きた形跡、見つかった首の無い死体。それぞれの思惑が渦巻く中、謎と仕掛けだらけの千年迷宮城から脱出することはできるのか。
閉ざされ水没していく城からの脱出を目指すゴシックファンタジー。協力を必要としながらも、「皇帝選び」や「城に隠された秘宝」といった要素によるそれぞれの思惑や、見つかる死体などから、善良な主人公であっても人を疑わざるを得ない環境が整っている。様々な試練や困難があり、それに対しどのように立ち向かっていくかが描かれているため、主人公の王の器をしっかり感じ取ることができる。
王を選ぶという背景があるからか、4巻まで通して女性がほとんど出てこないことも特徴として挙げられる。
39『千年迷宮の七王子―永久回廊の騎士―』(漫画)
著者:花鶏ハルノ・相川有
千年迷宮での試練を経て皇帝になったユアンは、仲間に助けられながら日々を過ごしていた。そんなある日、彼から宣告を受けた者は必ず破滅するという「死神」、ハンニバル・モーガンが現れ、「お前のせいでこの帝国は滅ぶ」と告げられる。居てもたってもいられず城を抜け出したユアンを待ち受けていたのは、街を襲う原因不明の疫病だった。失敗の許されない新体制のお披露目が控える中、彼らは全員で滅びの危機を退けるため奔走する。
本編のその後の漫画。皇帝になったユアンとそれを支える迷宮を共に乗り越えた仲間たちの姿を描く。本編と同様に主人公ユアンの信じる力を生かしたストーリーであり、「永久回廊の騎士」という副題があるように、ユアンと彼に忠誠を誓うロレンスの新たな関係性になっても変わらない絆を見ることができる。また、元奴隷であるハンニバルの生き様にも感銘を受ける部分があった。
40『千年迷宮の七王子外伝―暁の王者―』(漫画・小説)
著者:花鶏ハルノ・相川有
第1巻の『第二幕』と『第三幕』の間のエピソードである番外編『EとSとNの部屋』、ユアン皇帝就任後の皇城での日常を描いた4コマ漫画『千年迷宮の日々』、千年迷宮での出来事を経て故郷ではなく城で過ごすことになったユアンが久しぶりに兄や幼馴染と再会する描き下ろし漫画『再会の時』、ハンニバルによってもたらされた情報によって明らかになるある人物の出生の秘密とその結末について描いた書き下ろし小説『亡国のシャハル』が収録された外伝。
本編後も広がる世界観を味わうことができる外伝。4コマ漫画では緊張感のある本編とは違ったギャグテイストな日常を見ることができる。また、挿絵付きの小説である『亡国のシャハル』は、今まで漫画で楽しんできたこともあり、小説のみのコンテンツに比べて文字を読みながら光景が想像しやすいと感じた。
41『千年迷宮の七王子クロニクル』(ファンブック)
著者:花鶏ハルノ・相川有
本編のシーンのカラーイラストやキャラクタープロフィール、イラストメイキング、ハロウィンやクリスマスなどの行事を楽しんでいる様子を描いた4コマ漫画、ユアンがお忍びで街へ出かける描き下ろし漫画『千年帝国の大脱走』などを収録したファンブック。
今までほとんど表紙でしか見ることができなかったカラーイラストや、キャラクターの詳細なプロフィール、イラストメイキングなど、作品をストーリー以外の部分からも細かく楽しむことができるファンブック。作者のコメントも載っているため、より作品を身近に感じることができるのではないかと考える。
42『紅蓮館の殺人』(小説)
著者:阿津川辰海
嘘に敏感な探偵・葛城とその友人でありワトソンのような存在である田所(僕)は、文豪がいるという噂の館を目指して合宿を抜け出す。突然の落雷により山火事が発生し、避難した先で件の館に滞在することになった二人は、人が死ぬ事件に遭遇することになる。この事件は事故か、殺人か。館が燃えるまで35時間。選ぶべきは、生存か、真実か。
主人公と思われる僕だけでなく、回想などで様々な人物の視点が錯綜する点や、時折入る太字が小説全体の緊張感を演出している。ミステリー小説において殺人事件が起きた際、近くに殺人者がいるかもしれない恐怖を感じることがあるが、この小説ではその状況に加え、山火事から脱出するという生を渇望する環境があるため、さらに死を強く意識し、恐ろしさや緊張感が増しているのではないかと考える。内容としては、高校二年生という若さと、生き方について強く印象に残った。
43『復讐を誓った白猫は竜王の膝の上で惰眠をむさぼる』〈1~4〉(漫画)
著者:あき
原作:クレハ
キャラクター原案:ヤミーゴ
容姿端麗で人生勝ち組な普通の大学生…のはずだった瑠璃は、わがままなのになぜか周囲にちやほやされる幼馴染のあさひに懐かれているせいでこれまで散々な人生を送ってきた。ある日突然異世界に召喚された二人。異世界でもちやほやされるあさひは巫女姫として迎えられ、瑠璃はあさひの取り巻きに敵対視され森に捨てられてしまう。土下座させてやる!グーパンチしてやる!踵落ししてやる!絶対復讐してやる!!精霊に愛され、様々な人に出会い力を貸してもらいながら暮らしていく中、ひょんなことから白猫に変身した姿で竜王国へ向かうことになった瑠璃を待ち受ける運命は。復讐は叶うのか。幼馴染との関係はどうなるのか。
異世界×魔法×もふもふ。幼馴染であるあさひがかなり厄介な性格をしており、4巻後どう転ぶかによって物語の雰囲気が大きく変わると考えられる。巻が進むにつれ戦闘の描写も見られるようになるがギャグテイストで描かれており、もともと精霊や生き物がかわいらしく描かれていることもあって、タイトルに「復讐」という言葉があるが血なまぐさくなく楽しめる。精霊など、見た目の雰囲気だけではなく声の雰囲気も想像させるようなふきだしの工夫や、お年寄りを筆頭に登場人物の表情が豊かな点が素敵であると考える。
44『合コンに行ったら女がいなかった話』〈1~4〉(漫画)
著者:蒼川なな
ゼミの女子に合コンに誘われ、待ち合わせ場所に向かった常盤・萩・浅葱の3人。彼らを待ち受けていたのは、花ときらめきのエフェクトが良く似合う3人のイケメンだった。男6人で合コン?いいえ、彼ら、いや彼女らは、男装BARでバイトをしているれっきとした女性なのである。男にしか見えない3人を前に困惑していた常盤たちだったが、常盤を合コンに誘った王子様系イケメン(女子)蘇芳を筆頭に、時折翻弄されながらもそれぞれの形で親密になっていく。
常盤に好意を持っており、時折常盤に向かう女性の視線を奪う様子が見られるように、男装を武器としている蘇芳、男装をすることで描いている同人漫画の参考にもしている趣味と実益を兼ねたスタイルの藤、男装をそつなくこなしながらも実はかわいいものが好きで俺様キャラに悩む琥珀。それぞれのスタイルに合わせて進展の仕方が異なっており、面白いと感じる。特に萩の琥珀に対しての心の揺れ動きが興味深い。
45『ヒロインはじめました』〈1・2〉(漫画)
幼い頃から格闘技ばかり習ってきた周子は、ひょんなことから学校一のモテ男であり、女性関係であまり良い噂を聞かない芹沢という男子生徒と出会う。噂をきっかけとしたトラブルに居合わせた周子がその身体能力を活かして解決へ導くと、周子が女の子らしい学生生活に憧れていることを知った芹沢は、その望みを叶えるかわりにボディーガードをしてくれと頼んできて…?
噂はあくまでも噂だが、女癖を治したいと考えている芹沢と、様々な運動部に勧誘されてしまうほど身体能力が高く、女の子らしさに憧れを持つ周子が、互いの思いやりに触れながら親しくなっていく物語。女らしさ男らしさが問題視されやすい昨今では、女の子であることを尊重されるような話は珍しいように感じるが、強要ではなくそれこそ思いやりと表現されるであろう“らしさ”がちりばめられているというように読めた。また、人を色眼鏡で見ることは良くないという教訓も含まれているように感じた。もうすでに完結しているようなので、できるだけ早く最後まで読みたい。
“コミュ症”とは――人付き合いを苦手とする症状。またはその症状を持つ人を指す。留意すべきは――苦手とするだけで、他人と係わりを持ちたくない、とは思っていないことだ。
人と喋ることが苦手な古見さんの夢は、友達を100人作ること。最初の友達になったごくごく普通の男子である只野くんに助けてもらいながら、古見さんはクラスメイトと交流を深めていく。
個性的な面々が集まる学校の高嶺の花である古見さんと、名前からも察することができるただの人である只野くんが、クラスメイトと仲良くなりながら距離を縮めていく青春系学生生活物語。コミュニケーションの難しさを感じたことがある人なら共感できるエピソードが含まれており、只野くんのアシストが光る場面も多い。只野くんの行動から、コミュニケーションにおいてどのような要素が大事なのかを知ることができる面もあると考える。
31『MILGRAM-ミルグラム-』(プロジェクト)
ストーリー:山中拓也
監獄の看守となったあなたは、記憶喪失の中、収監されている10人の囚人を管理し、彼らの罪を赦すかどうか選択しなければならない。彼らの罪について分かっていることはただ一つ――『何者かの死に関わった』ということだけ。真相や理由は、彼らの楽曲の歌唱、歌詞、映像などから考察する必要がある。どんどん罪や、その罪に関する彼らの考え方が明らかになっていく中で、すべてを知ったあなたはちゃんと赦せるかな?
視聴者自身の感性と民意によって囚人を裁くことで、展開が変化していく新しい楽曲プロジェクト、『MILGRAM-ミルグラム-』。現在(2022年9月30日)第二審進行中。
二審が始まったことでさらなる盛り上がりが期待されるプロジェクト。一審での結果が囚人たちに変化を与え、赦す、赦さないの判断に新たな基準を生み出した点も面白い。取り扱っている問題は多岐にわたり、考察のし甲斐があるため、ディスカッションの議題にして赦すか赦さないか討論してみるのも面白いだろうと考える。
32『MILGRAM 実験監獄と看守の少女』(小説)
著者:波摘
原案:DECO*27/山中拓也
記憶を失った少女は見知らぬ場所で目覚め、ジャッカロープと名乗る謎の喋るウサギに指示されて「ミルグラム」という監獄の看守エスとなり、5人の囚人を裁くことになる。囚人たちにもまた記憶がなく、エスは彼らの人となりを知るため共に過ごすことになるが、「罪の本」の存在によって彼らの罪は次第に明らかになっていく。そうして彼女は悟る。囚人たちは皆、「ヒトゴロシ」なのだ、と。彼らの罪は一体何なのか。この「ミルグラム」の真相は。
すべてを知ったあなたは赦せるかな?
参加型プロジェクト『MILGRAM』の前日譚にあたる物語だと考えられる。そのため、プロジェクトで明らかになっていなかった部分が色々と明らかになり、さらに想像の余地が広がった。最も特徴的な点として、最後に小説内から読者へ語りかけられるシーンがあるのだが、それだけにとどまらず、5月2日にメディアワークス文庫の公式TwitterでGW期間限定投票が行われた(現在は終了)。「あなたは、小説『MILGRAM 実験監獄と看守の少女』の「××××」を、」という文章で、赦すか赦さないか選択するアンケート形式となっており、「××××」は64%で赦される結果となった。このことが今後プロジェクトの方に関わってくるかどうかも注目していきたい。
33『SPY×FAMILY』(アニメ)
原作:遠藤達哉
制作:WIT STUDIO×CloverWorks
敏腕スパイである黄昏は、精神科医ロイド・フォージャーに扮し、家族を作ることに。
だが、彼が出会った娘・アーニャは心を読むことができる超能力者、妻・ヨルは殺し屋だった!3人の利害が一致したことで、お互いの正体を隠しながら共に暮らすこととなる。
ハプニング連続の仮初めの家族に、世界の平和は託された――。
映像になることで、迫力が増し、家族の日常が具体的に色づいていくのを感じた。特にアーニャについて、漫画で読んでいた時より可愛らしさが強まっている印象がある。
34『東京卍リベンジャーズ(1期)』(アニメ)
原作:和久井健
制作:ライデンフィルム
冴えない26歳の花垣武道は、人生で唯一付き合うことができた中学時代の彼女が事件で死んでしまったことをテレビで知る。そんなある日、何者かに背中を押されて電車に轢かれそうになり、気が付けば12年前の同じ日にタイムリープしていた。過去を変えることで未来で死ぬことになる彼女を救うことができると知った武道は、人生のリベンジを誓い、奔走する。
ストーリーとしては、何度も同じ時間を繰り返すのではなく、12年前の現在時間にしか戻れないことがミソ。未来で起きることなら過去を変えることで回避できるが、戻った過去で起きたことは変えられない一発勝負であることと、主人公が弱くて調子にのることもあり頭もそんなに良くないながらも、耐久力が抜群で粘り強さがあり意外と察しがいいところもある点がうまく嚙み合っていると感じる。アニメで声があてられることによって中学生らしいところがたまに垣間見え、12年前と後の違いが感じられるところが個人的に良いと思っている。
35『逆行した悪役令嬢は、なぜか魔力を失ったので深窓の令嬢になります』〈1・2〉(漫画)
漫画:さかもとびん
原作:蒼伊
豊富な魔力を持つことから王太子の婚約者であったラシェルは、嫉妬による振る舞いで追放される道すがら、自分の行いを改めようとした矢先に不遇の死を遂げた――はずだった。目覚めると魔力は失われ、数年前に逆行していた。これまでの行いを改め、幸せになるために、王太子との婚約を破棄しようとするが、なぜか気に入られてしまい…。
転生ではないため、自分のことを「悪役令嬢」とは認識していないものの、自ずから客観的に見つめ直すことで改心し好転していくストーリー。途中、日本人の転生者らしき人物が出てくるなど、今後どのように展開していくのかいまいち読めない作品でもあると感じる。漫画本でありながら、最後に原作者による書き下ろし小説がある点にも珍しさを感じた。
36『不覚にもきゅんときた』〈1~3(完結)〉(漫画)
著者:凛田百々
線路に落ちてしまった光(みつ)の「宝物」を命がけで拾ってくれたのは、綺麗な涙を流す男の子だった。彼が同じ学校の同級生であることを知った光はお礼を言おうとするが、壁ドンしながら女の子を振っている現場を目撃してしまう。彼、黛廉太郎は、言葉と行動がウラハラな超ツンデレ男子だったのだ。期待すること、されることを嫌う黛と、まっすぐに気持ちを伝えようとする光。二人の行く末とは。
赤面ツンデレ男子と赤面純情素直女子の恋物語。光は陸上、黛はピアノという好きなことがあり、かつそれに関して大事ではあるけれどあまり話したくない思い出があるという共通点があることがキーになっていると感じた。また、現実味よりも少女マンガらしい展開が目立つが、男性側の赤面や葛藤、涙を流す場面が多いという点が他にあまり見られない特徴なのではないかと読んでいて思った。
37『小松原が恋人になりたそうにこちらをみている!』〈1~3(完結)〉(漫画)
著者:かわにし萌
文武両道、真面目で成績優秀な女子高生・草原名雪は、「良い子」になることで「褒められたい」という承認欲求を満たしていた。しかし、やってきた中間試験で学年1位をとったのは、自称闇の勇者ディーン(小松原誠)。対抗意識を燃やす名雪をよそに、痛々しい中二病ながら何かと助けてくれる小松原は、5年前から名雪に恋をしているらしく…?
ヒロインが比喩でもなんでもなく鬼の形相をするラブコメディ。家にお風呂が無い程貧乏で、母親が早くに亡くなり、父親が営むラーメン屋を手伝いながら弟の面倒を見る主人公は、恋愛漫画にありがちな苦労しているヒロイン像に合致しているように思えるが、同情されたくなく、助けられることに屈辱を感じ、慈悲を受け取りたくないというようなメンタルに少女漫画らしくなさを感じる。恋に限らず、綺麗ばかりではない感情と向き合っていく姿が描かれていると考える。
38『千年迷宮の七王子』〈1~4(完結)〉(漫画)
著者:花鶏ハルノ・相川有
辺境の地で普通の学生として暮らしていたユアンは、目を覚ますと全く知らない場所にいた。昔話に登場する千年迷宮城を彷彿とさせるその場所に集まったのは、騎士、盗賊、探偵、歌手、市民運動家と様々。窓も全て塞がれている密室の中で、どうやらこの中から次代の皇帝を決める必要があるようで……。徐々に水没していく城から生きて帰るため、彼らは協力しながら城の謎を解き明かしていく。何らかの事件が起きた形跡、見つかった首の無い死体。それぞれの思惑が渦巻く中、謎と仕掛けだらけの千年迷宮城から脱出することはできるのか。
閉ざされ水没していく城からの脱出を目指すゴシックファンタジー。協力を必要としながらも、「皇帝選び」や「城に隠された秘宝」といった要素によるそれぞれの思惑や、見つかる死体などから、善良な主人公であっても人を疑わざるを得ない環境が整っている。様々な試練や困難があり、それに対しどのように立ち向かっていくかが描かれているため、主人公の王の器をしっかり感じ取ることができる。
王を選ぶという背景があるからか、4巻まで通して女性がほとんど出てこないことも特徴として挙げられる。
39『千年迷宮の七王子―永久回廊の騎士―』(漫画)
著者:花鶏ハルノ・相川有
千年迷宮での試練を経て皇帝になったユアンは、仲間に助けられながら日々を過ごしていた。そんなある日、彼から宣告を受けた者は必ず破滅するという「死神」、ハンニバル・モーガンが現れ、「お前のせいでこの帝国は滅ぶ」と告げられる。居てもたってもいられず城を抜け出したユアンを待ち受けていたのは、街を襲う原因不明の疫病だった。失敗の許されない新体制のお披露目が控える中、彼らは全員で滅びの危機を退けるため奔走する。
本編のその後の漫画。皇帝になったユアンとそれを支える迷宮を共に乗り越えた仲間たちの姿を描く。本編と同様に主人公ユアンの信じる力を生かしたストーリーであり、「永久回廊の騎士」という副題があるように、ユアンと彼に忠誠を誓うロレンスの新たな関係性になっても変わらない絆を見ることができる。また、元奴隷であるハンニバルの生き様にも感銘を受ける部分があった。
40『千年迷宮の七王子外伝―暁の王者―』(漫画・小説)
著者:花鶏ハルノ・相川有
第1巻の『第二幕』と『第三幕』の間のエピソードである番外編『EとSとNの部屋』、ユアン皇帝就任後の皇城での日常を描いた4コマ漫画『千年迷宮の日々』、千年迷宮での出来事を経て故郷ではなく城で過ごすことになったユアンが久しぶりに兄や幼馴染と再会する描き下ろし漫画『再会の時』、ハンニバルによってもたらされた情報によって明らかになるある人物の出生の秘密とその結末について描いた書き下ろし小説『亡国のシャハル』が収録された外伝。
本編後も広がる世界観を味わうことができる外伝。4コマ漫画では緊張感のある本編とは違ったギャグテイストな日常を見ることができる。また、挿絵付きの小説である『亡国のシャハル』は、今まで漫画で楽しんできたこともあり、小説のみのコンテンツに比べて文字を読みながら光景が想像しやすいと感じた。
41『千年迷宮の七王子クロニクル』(ファンブック)
著者:花鶏ハルノ・相川有
本編のシーンのカラーイラストやキャラクタープロフィール、イラストメイキング、ハロウィンやクリスマスなどの行事を楽しんでいる様子を描いた4コマ漫画、ユアンがお忍びで街へ出かける描き下ろし漫画『千年帝国の大脱走』などを収録したファンブック。
今までほとんど表紙でしか見ることができなかったカラーイラストや、キャラクターの詳細なプロフィール、イラストメイキングなど、作品をストーリー以外の部分からも細かく楽しむことができるファンブック。作者のコメントも載っているため、より作品を身近に感じることができるのではないかと考える。
42『紅蓮館の殺人』(小説)
著者:阿津川辰海
嘘に敏感な探偵・葛城とその友人でありワトソンのような存在である田所(僕)は、文豪がいるという噂の館を目指して合宿を抜け出す。突然の落雷により山火事が発生し、避難した先で件の館に滞在することになった二人は、人が死ぬ事件に遭遇することになる。この事件は事故か、殺人か。館が燃えるまで35時間。選ぶべきは、生存か、真実か。
主人公と思われる僕だけでなく、回想などで様々な人物の視点が錯綜する点や、時折入る太字が小説全体の緊張感を演出している。ミステリー小説において殺人事件が起きた際、近くに殺人者がいるかもしれない恐怖を感じることがあるが、この小説ではその状況に加え、山火事から脱出するという生を渇望する環境があるため、さらに死を強く意識し、恐ろしさや緊張感が増しているのではないかと考える。内容としては、高校二年生という若さと、生き方について強く印象に残った。
43『復讐を誓った白猫は竜王の膝の上で惰眠をむさぼる』〈1~4〉(漫画)
著者:あき
原作:クレハ
キャラクター原案:ヤミーゴ
容姿端麗で人生勝ち組な普通の大学生…のはずだった瑠璃は、わがままなのになぜか周囲にちやほやされる幼馴染のあさひに懐かれているせいでこれまで散々な人生を送ってきた。ある日突然異世界に召喚された二人。異世界でもちやほやされるあさひは巫女姫として迎えられ、瑠璃はあさひの取り巻きに敵対視され森に捨てられてしまう。土下座させてやる!グーパンチしてやる!踵落ししてやる!絶対復讐してやる!!精霊に愛され、様々な人に出会い力を貸してもらいながら暮らしていく中、ひょんなことから白猫に変身した姿で竜王国へ向かうことになった瑠璃を待ち受ける運命は。復讐は叶うのか。幼馴染との関係はどうなるのか。
異世界×魔法×もふもふ。幼馴染であるあさひがかなり厄介な性格をしており、4巻後どう転ぶかによって物語の雰囲気が大きく変わると考えられる。巻が進むにつれ戦闘の描写も見られるようになるがギャグテイストで描かれており、もともと精霊や生き物がかわいらしく描かれていることもあって、タイトルに「復讐」という言葉があるが血なまぐさくなく楽しめる。精霊など、見た目の雰囲気だけではなく声の雰囲気も想像させるようなふきだしの工夫や、お年寄りを筆頭に登場人物の表情が豊かな点が素敵であると考える。
44『合コンに行ったら女がいなかった話』〈1~4〉(漫画)
著者:蒼川なな
ゼミの女子に合コンに誘われ、待ち合わせ場所に向かった常盤・萩・浅葱の3人。彼らを待ち受けていたのは、花ときらめきのエフェクトが良く似合う3人のイケメンだった。男6人で合コン?いいえ、彼ら、いや彼女らは、男装BARでバイトをしているれっきとした女性なのである。男にしか見えない3人を前に困惑していた常盤たちだったが、常盤を合コンに誘った王子様系イケメン(女子)蘇芳を筆頭に、時折翻弄されながらもそれぞれの形で親密になっていく。
常盤に好意を持っており、時折常盤に向かう女性の視線を奪う様子が見られるように、男装を武器としている蘇芳、男装をすることで描いている同人漫画の参考にもしている趣味と実益を兼ねたスタイルの藤、男装をそつなくこなしながらも実はかわいいものが好きで俺様キャラに悩む琥珀。それぞれのスタイルに合わせて進展の仕方が異なっており、面白いと感じる。特に萩の琥珀に対しての心の揺れ動きが興味深い。
45『ヒロインはじめました』〈1・2〉(漫画)
幼い頃から格闘技ばかり習ってきた周子は、ひょんなことから学校一のモテ男であり、女性関係であまり良い噂を聞かない芹沢という男子生徒と出会う。噂をきっかけとしたトラブルに居合わせた周子がその身体能力を活かして解決へ導くと、周子が女の子らしい学生生活に憧れていることを知った芹沢は、その望みを叶えるかわりにボディーガードをしてくれと頼んできて…?
噂はあくまでも噂だが、女癖を治したいと考えている芹沢と、様々な運動部に勧誘されてしまうほど身体能力が高く、女の子らしさに憧れを持つ周子が、互いの思いやりに触れながら親しくなっていく物語。女らしさ男らしさが問題視されやすい昨今では、女の子であることを尊重されるような話は珍しいように感じるが、強要ではなくそれこそ思いやりと表現されるであろう“らしさ”がちりばめられているというように読めた。また、人を色眼鏡で見ることは良くないという教訓も含まれているように感じた。もうすでに完結しているようなので、できるだけ早く最後まで読みたい。