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3年 北元 RES
夏休み課題21~30

21.『サマーウォーズ』
  監督 細田守
  脚本 奥寺佐渡子

 天才的な数学力を持ちながらも内気な性格の小磯健二は高校二年の夏、憧れの先輩である夏希にアルバイトを頼まれる。その内容は、室町時代から続く戦国一家・陣内家の16代当主として、総勢27人の一族を束ねる夏希の曾祖母・栄のために、夏希の彼氏のフリをするというものだった。栄の誕生日を祝うためにはるばる随所から集まった親戚一行と健二は数日間の滞在をすることとなるが、その間に仮想世界「OZ」による大混乱に巻き込まれてしまう。混乱を起こした人工知能を持ったAI、通称「ラブマシーン」に陣内家と健二が立ち向かっていく、ひと夏の壮大な物語。

 この作品の一番の見所は、旧い田舎とハイテクな最新世界との対比である。一見、何の繋がりも持たない二つの要素の融合はそれぞれの不釣り合いな様を浮き彫りにするかと思いきや、誰でも経験できそうで経験したことがない田舎の懐かしさと、すぐ先で待ち構えているかのようで遠い未来の仮想世界の先進性が溶け合い、かえってそれぞれの世界の関係をより強固なものにしている。今となってはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)などのバーチャル空間がだんだんと現実味を帯びてきているが、細田守が『サマーウォーズ』を手がけた2009年当時としては実に躍進的な発想で、細田守監督が切り開いた新境地ともいえる。ただ、人工知能によって「OZ」が乗っ取られた際、「OZ」で格闘ゲームの世界的チャンピオン「格闘王キングカズマ」を操作する池沢桂主馬が言った「OZの世界一高度なセキュリティ能力が裏目に出てるんだよ」という発言には疑問が残る。裏目にでたのは「OZ」のセキュリティではなく、さまざまな機関や公共システムが「OZ」と紐付いていたからである。

22.『竜とそばかすの姫』
  原作・脚本・監督 細田守
  企画・制作 スタジオ地図

 高知の田舎に父と二人で暮らす17歳の女子高校生・内藤鈴は幼い頃に母を亡くしたことから、何よりも好きだった「歌うこと」が出来なくなってしまった。そんな心寂しい日々を過ごしていると、良き理解者である友人のヒロちゃんから全世界で50億人以上が集うインターネット上の仮想世界〈U〉へと誘われる。自分の分身である「As」を「ベル」と名付けた鈴は、〈U〉の世界では歌うことができたため一躍 歌姫に。だがベルとして初のコンサート当日、「竜」と呼ばれるAsが乱入してきてコンサートは中止となってしまう。世界中の人々が竜という謎の存在の正体探しを「正義」と称した興味本位でする最中、竜の抱える心の傷に寄り添いたいと思い始めた鈴は、竜を救うため大きな決断を迫られる。

 この作品は一つ前に取り上げた作品、細田守の『サマーウォーズ』と「仮想世界」の設定が類似している。しかし本作では、『サマーウォーズ』制作当時より具体的な仮想世界の背景が垣間見える。その点として挙げられるのが、50億人以上の利用者による誹謗中傷だ。鈴の母が亡くなった原因は、大雨により増水した川で他所の家の子供が溺れていたのを見捨てられず助けたことにある。命の灯火が目の前で消えることは耐えがたく、ましてや自分が行動できるのに見逃すというのは実に心苦しい。しかし、この行動により亡くなった鈴の母には、インターネット上で「救助の専門家が来るまで素人が手を出してはいけない」「彼女の行動は間違っている、自業自得だ」という否定的な意見が目立った。また現実と仮想世界での竜の正体探しにおいて、竜を〈U〉の秩序を乱す者として世界中で袋だたきにしたり、竜(As)の主と思わしき関係ない人物を傷つけたりして誹謗中傷は激化していく。『サマーウォーズ』では人工知能を持ち暴走したAIのみを「誤り」とし、インターネット上の人間の繋がり、そのポジティブな面を全面的に出していた。それに対し今作は裏に事情を抱える竜を「誤り」として立てながらも、特定のキャラではなく50億人以上の利用者それぞれが「誤り」と「正しさ」を秘めている事実に焦点を当てているのが特徴的である。白と黒の区別が曖昧になっている現代のインターネット世界に寄り添った素晴らしい作品だ。



23.『泣きたい私は猫をかぶる』
  脚本 岡田麿里
  監督 佐藤順一・柴山智隆

 中学二年生の佐々木美代は空気を読まない言動をするため周囲から「ムゲ(無限大謎人間の略)」と呼ばれていた。特に意中のクラスメイト・日之出賢人には、ムゲが編み出した技「日之出サンライズアタック」をしたりしてアピールするが日之出に全く相手にされない毎日。だがムゲはめげるどころか日に日に日之出への思いを募らせていく。それは、ムゲには誰にも言えないとっておきの秘密、猫になって日之出に会いに行くことができるからであった。怪しい猫からもらった「かぶると猫へと姿を変えることのできる」お面を使い、猫の姿・太郎として日之出の傍にいることを望んだムゲは、ある日あの時の怪しい猫にムゲの「顔」を持って行かれてしまう。後悔したのも束の間、猫のお面と顔を交換してしまったら一定時間のうちに取り戻さなければ一生猫のまま生きなければいけない事実を知ったムゲは一人、猫の島へと向かう。

 この作品はタイトルの通り、ムゲが猫(お面)をかぶって生きてしまったことから巻き起こる。周囲からは「無限大謎人間」と呼ばれているムゲだが、実はそれも両親の離婚・父が別の女性(薫さん)と再婚した複雑な家庭事情を周りに隠し、精一杯脳天気な人間を演じていたムゲの猫かぶりの成果であった。だが猫かぶりの原因は家庭にあるため、作中で「家は父と薫さんの場所、私の居場所ではない」と言っているムゲは学校だけではなく家庭内でも“聞き分けの良い子供”かのように猫をかぶって生活する。つまり家庭でも学校でもなく、猫の姿・太郎として日之出と接しているときが一番ありのままで居られたという、なんとも皮肉な猫かぶりがこの作品の主軸として機能している。

24.『人間失格』太宰治
 1948年に発表された太宰治の文学作品。人の営みが理解できず生きにくさを感じている主人公・葉蔵が自分の半生を綴った手記という形の物語。葉蔵は太宰自身がモデルになっていると思われ、本作の完成後入水自殺したことから人間失格は太宰の遺書とも言われている。

 これを読んで葉蔵(太宰)の人生は、悲惨で私のものとは似ても似つかないのに心の奥底に漂う影の部分に深く共感するところがあった。特に人間の表裏への恐怖を紛らわせ、遠ざけるための手段として「道化」を演じる様は自分と同じ生き様だと錯覚させる。私の場合はそれこそ高校生のときから道化を演じ始めたが、幼少期のころから自分を守る術として身につけていた葉蔵(太宰)は相当他人の目を気にして生きてきたのだろうと思うと、その顛末に胸が張り裂けそうになった。人間失格という烙印を押す前に、人間とは未完成で、彼らもまた己を守るために表と裏を使い分けて生きるしかない不憫な生き物なのだということを知り認めることが出来ていればこのような最期を迎えていなかったかもしれないと思った。

25.『時光代理人-LINK CLICK-』
  脚本・監督 李豪凌駕(リ・ハオリン)

 繁華街の一角に佇む「時光写真館」には二人の特殊能力を持ったトキ(程小時)とヒカル(陸光)の青年がいた。トキの幼馴染・リン(蕎葺)を通じて顧客から舞い込む依頼を遂行すべく、「撮影者の意識にリンクし、写真の世界に入ることのできる能力」を持つトキと「その写真の撮影後12時間の出来事を把握できる能力」を持つヒカルはコンビを組み、過去を引きずるクライアントからの依頼を解決していく。

「時光写真館」では『絶対に過去の改変をしてはならない』というルールのもと依頼を遂行していくのだが、写真の世界で出会った人に正義感が強く感情移入しやすいトキがルールを犯して過去に干渉してしまい、少しずつ未来を変えていってしまう。一方で冷静沈着でルールが絶対であるヒカルにとってトキのこのような一面はリスクが大きすぎるため、あえて必要な情報を伝えないことも多々ある。そのためこのアニメは、突然ショックな事実が明かされたり、避けようのないバットエンドになったりと見ていてハラハラする展開が魅力だ。また、中国アニメ独自の洗練された世界観と独自のストーリーに目が離せなくなる。

26.『ACCA 13区監察課』
  原作 オノナツメ
  監督 夏目真悟

 13の区に分かれた地方自治制の国、ドーワー王国。その国では約100年前に起こったクーデターを機に、国民の平和な生活を守るためのACCAと呼ばれる政治と切り離された民間組織が組成された。エリート揃いのACCA本部の監察課 副課長のジーン・オータスは、高額な税金を課せられ「喫煙しているのは金持ちか悪人だけ」と言われる貴重なたばこを常々吸うため「もらいたばこのジーン」の異名がつけられている。そんな掴みどころのないジーンの緩く平和な日々が、不穏な噂によってドーワー王国13区を巻き込むほどの事態に発展していく。

 この作品は、緩いようで着実と毒を刺してくる独特な空気感が魅力である。作品の序盤は複雑な設定と水面下で進められる策略に頭が混乱するが、次第にその毒に侵蝕されて気づけばどっぷりと浸かってしまっていたという現象が起きるはずだ。ネタバレになるので深く明かせないが、本作は様々な人々の思惑が複雑に絡み合い、その渦に律儀に巻き込まれていくジーンを中心とした“群像劇”として描かれている。こんなにも丁寧に張り巡らされた伏線、その数々の沼から抜け出せなくなる洒落た作品はそうそうない。

27.『ACCA 13区監察課 Regards』
 これはドーワー王国が新体制になったその後の話である。だが、40分の1作品なので大きな陰謀が起こることはなく、日常の延長というくらいのスタンスで見た方が良い。今作は企みの陰をちらつかせて、上層部に裏を取り解決する流れだったので見応えに欠けたように思う。

28.『憂国のモリアーティ』
  原作 (構成:竹内良輔 漫画:三好輝)
  監督 野村和也

 シャーロック・ホームズの宿敵“犯罪卿”モリアーティを主人公に据え、腐敗した国の再建という彼らの正義のために罰を下していくストーリー。王道であるシャーロック・ホームズではなく、悪人側から日の目を見ることのない社会情勢を探っていく展開が希有である作品。薄っぺらくも華やかな貴族社会と非情な現実で生きる貧困層との落差が、作品全体に漂う不穏な空気感を一層引き立てている。

29.『BNA』
  原作 TRIGGER、中島かずき
  監督 吉成曜

 この作品は「人類」と獣化遺伝子・獣因子を生まれながらに持つ「獣人」とが共存する社会を描く。「人類」と「獣人」は世界中に生息するが主にこの作品の舞台は日本であり、人類に差別される獣人が唯一獣人らしく生きられる楽園「アニマシティ」での、人間との表面上での和平、水面下での人類側の陰謀・獣人側の知られざる身体的特質の問題がはびこる様を映し出す。 ―元々は人間として暮らしていた影森みちる(17歳女子高校生)はある日突然タヌキ獣人になるが、産まれたときから獣因子を持たない人類が獣人になることはあり得ず、みちるは生きる場所を失ってしまう。そして「アニマシティ」を訪れたみちるは、獣人の視点になることで「人類」と「獣人」の一筋縄では解決しない問題や、動物たちのユートピアだと信じられていた「アニマシティ」が、実は人間や獣人たちの陰謀が渦巻く場所であった事実を目の当たりにする。そこで、出会った仲間と共に社会をそして世界を変えようとタヌキ獣人みちるが動き出す。― というのが概要である。

 主要キャラクターの「アニマシティのルールは 1 つ、強い者が勝ち弱い者が負ける、ただそれだけだ。」というセリフから分かる通り、動物たちの弱肉強食・同族争いは自然の摂理である。この自然の摂理をあえて人間社会に組み込むことで、人間の言い表せない数々の愚行の陰を垣間見ることができる。この作品で重要なのは、主人公であるみちるが獣人という動物側の社会にいながらも人間側の立場もとることが可能な点である。一般的に動物がでてくる作品の多くは人類か動物のどちらかに属すため、一市民が相手種族と双方向の意思疎通を図ることは容易ではない。だが、みちるはタヌキ獣人となり獣人側の意思を尊重し、居心地の良さ感じるようになってもなお、人間の方が獣人よりも優れているという無意識なステレオタイプを抱いているため、人類と獣人を繋ぐ純粋な架け橋として機能している。

30.『富豪刑事 Balance:UNRIMITED』
  原作 筒井康隆
  監督 伊藤智彦
  アニメーション制作 Clover Works

 元々捜査一課の若手のエースだった加藤春はとある事件をきっかけに、警視庁で問題を起こした人物だけが送られる「現代犯罪対策本部準備室」、通称「現対本部」へと流された。そこへ桁外れの資産を持つ神戸家の御曹司・大助がやってきてバディを組まされる加藤。曲がったことが嫌いな熱血人情派刑事と、有り余る財力・最新のテクノロジーを使って金に物言わす刑事のでこぼこコンビが、常識外れな捜査で事件を解決していく。

 この作品はなんと言ってもでこぼこコンビの対比が見所である。義理人情に厚く、捜査一課を飛ばされてもなお警察の仕事に誇りを持っている加藤が作中で「金じゃねよ、俺たちは正義のためにやってんだ。」と言っているのに対し、問題を金で解決しようとする御曹司の大助は「たいした問題じゃない、2・30億もあれば。」と、その発言から逸脱した金銭感覚を持ち、警察の仕事を正義の象徴と微塵も考えていない様子が窺える。刑事という存在が正義か否か、金か人情か、対局的な二人が巻き起こす化学反応に注目してほしい。
2022/09/30(金) 23:57 No.1931 EDIT DEL