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3年 髙田(梨)
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夏休み課題1~15
1『オリエント』漫画
著者:大高忍
出版社:講談社
謎の生物「鬼」が神と崇められ、「鬼」を倒す「武士」が忌み嫌われる戦国時代。そんな中、2人の少年・武蔵と小次郎は、「鬼」を倒す武士団を目指す。
「2人は幼少期から武士になる夢を掲げていたが、成長につれて周囲に抗えず、自分に嘘をつくようになっていた。そんな中で、「鬼」は人を殺す怪物だと知った2人は、自身の心に正直に、武士団を作る夢に向かって進み始める。
武蔵と小次郎の2人に加え、旅の途中で出会った少女・つぐみは、育ての親の圧力に逆らえなかったが、2人との出会いをきっかけに自分の意思で生きることを決める。
本作はファンタジーの世界観だが、このように周囲や大人に流されずに生きていくため勇気を出す少年少女の物語であり、読者の共感と応援したい心を呼ぶだろう。
2『凶悪』映画
監督:白石和彌
脚本:高橋泉
雑誌ジャーナリストの藤井は、死刑囚・須藤から世に出ていない3つの殺人事件に関与していることと、それらの首謀者である「先生」と呼ばれる男の存在を聞かされる。「先生」の罪を記事にしてほしいと須藤に頼まれた藤井は、その凶悪な事件の真相に迫るにつれ、正義感と狂気に飲み込まれていく。
原作は実際に起きた事件を描いたノンフィクション『凶悪-ある死刑囚の告発-』である。
人の死を利用して金儲けをする「先生」と須藤の非道さは、実際に起きた事件だという事を疑うほどであり、目をそむけたくなる。しかし本作は同時に、凶悪犯罪を追うジャーナリスト藤井が次第に狂気に陥るさまも描いており、こちらにも須藤らに対するものとは別の恐怖を覚える。正義感から事件を追及する藤井は、家庭の崩壊も意に介さず調査にのめりこむようになる。映画のラストでは、「先生」が逮捕されてもなお、未だ明かされていない犯罪や見つかっていない死体を探す執念を見せる藤井の姿に狂気を感じた。
3『二重生活』映画
監督:岸善幸
原作:小池真理子
哲学科の大学院生・珠は、修士論文のテーマとして、ひとりの人間の生活を記録する「哲学的尾行」を行うことを教授から提案される。珠は次第に「理由なき尾行」に魅力を感じるようになっていく。
尾行対象の姿が物陰に隠れているなど、珠の視点を共有するようなカメラワークが特徴的である。だが、尾行のスリルを経て発覚する尾行対象・石坂の秘密が不倫であることに、物足りなさを感じる。しかし、終盤のワンシーンから、あえてそのような秘密にしたのではないかと考察できる。
尾行に気付かれた珠が自身の人生と不安を吐露すると、石坂は「お前の人生はありきたりで陳腐だ」という旨の発言で一蹴する。珠はその言葉に涙を流すが、映画という媒体で観ている私たちは、石坂にもその言葉が適用されると知っている。
誰しも秘密を持っていると締めくくられる本作で、他人から見れば取るに足らない秘密を登場人物に持たせることで、リアルな人間を描く意図があるのではないかと思った。
4『死刑にいたる病』映画
原作:櫛木理宇
監督:白石和彌
大学生の雅也の元に、24人を殺した殺人犯榛村から手紙が届く。榛村は雅也が中学生の頃、パン屋を営んでおり、雅也は当時榛村に心を開いていた。
榛村は、24人の殺人のうち1件の事件は冤罪であることを主張する。真犯人を突き止めるため事件を調査する雅也は、残酷な真実を知る。
魅力的な人物を装い、本質は人を操り傷つけることに楽しみを見出す殺人鬼・榛村。そんな榛村の狂気に次第に飲まれるような薄暗い画面構成と演出が特徴的だと感じた。薄暗い面会室で、登場人物2人の会話のみで進行する場面の緊張感は、同監督の映画作品『凶悪』にも共通する。加えて本作では、榛村の策略に引き寄せられる雅也の様子の表現が印象的である。ガラス越しの雅也を、ガラスに反射する榛村の姿と重ね合わせるように映すことで、雅也が榛村側に傾いていることを演出しており、場面を活かした表現だと感じた。
5『20世紀少年』漫画
著者:浦沢直樹
出版社:小学館
小学生の頃仲間たちと、世界滅亡の危機に立ち向かう物語を作っていたケンヂ。大人になり、姪を育てながらコンビニを経営する冴えない日常を過ごすようになったケンヂの周囲で事件が起こり始める。その内容は、小学生の頃の自分が作った物語に沿っていた。
最初は不可解な一家失踪事件から始まった物語が、次第に世界を巻き込む規模になっていく様子に恐ろしさを覚えながら読み進めることになるだろう。
小学生の頃に考えた世界破滅の物語を実現しようともくろむ「トモダチ」だが、その行動やビジュアルの不気味さを持ちながら、子どもの頃の遊びを未だ諦められない幼さも持つアンバランスな人物である。小学生の頃が既に過去の思い出となっていたケンヂ達との対比になっており、大人になるとはどういうことかを考えさせられる作品だ。
6『ジャンケットバンク』漫画
著者:田中一行
出版社:集英社
仕事は優秀だが平凡で退屈な人生を贈っていた銀行員・御手洗は、自身の勤める銀行が賭博の会場になっていることを知る。そこで出会ったギャンブラー・真経津に衝撃を受け、真経津の勝負を間近で見続けるため、賭博の仲介を行うジャンケットの世界に足を踏み入れる。
本作にはオリジナルのゲームが登場する。ゲームのルールを逆手に取った勝利法や読者の目も欺く展開に手に汗握る作品である。
また、ギャンブラーである真経津の勝負と同時に、それをサポートする行員達の駆け引きも行われる。平凡な人物だった御手洗が真経津との出会いによって変化していく点も本作の見所だろう。
7『マリッジトキシン』
原作:静脈
漫画:依田瑞稀
出版社:集英社
殺し屋の家系に生まれ、「毒使い」として裏社会で生きる青年・下呂は、自分に結婚は必要ないと考えていた。しかし、跡継ぎを残そうとする親族は、妹に結婚を強いようとした。それを止めるため、結婚相手を探す下呂は、結婚詐欺師・城崎と出会う。城崎をアドバイザーに、下呂は婚活を始めることとなる。
殺し屋としてのアクションとラブコメディー作品的な婚活が同時に進む新鮮な作品。主人公・下呂と常に行動を共にする城崎は、可愛らしい見た目ながら男性でお互い恋愛感情はなく、章ごとに婚活の相手となるヒロインが変わる構成もおもしろいと感じた。また、ヒロインが複数存在する作品になりながら、下呂が女性慣れしていない点や、真摯に女性たちに向き合う点から、不誠実さを感じないことも魅力だ。
8『チェンソーマン』
著者:藤本タツキ
出版社:集英社
人々の恐怖から生まれる「悪魔」が存在する世界で、デンジはチェンソーの悪魔・ポチ太と共にデビルハンターをしながら父の残した借金を返済する日々を送っていた。ある日、借金取りに騙されて命を落としかけたデンジは、ポチ太と契約することで復活し、公安のデビルハンターとなり、新たな人生を歩み始めることとなる。
悪魔とデビルハンターの熾烈な戦い、悪魔が企てる計画、チェンソーの悪魔とは一体どのような存在なのかといった謎は、壮大で残酷な世界観である。しかし、それに立ち向かうデンジは一貫して、食べ物が不自由なく食べられる毎日を送りたい、女の子と遊びたい、といった普通の生活を望む。この単純な少年らしさが、主人公・デンジの強さであり、切なくも前向きな読後感を生んでいると感じた。
9『容疑者xの献身』映画
原作:東野圭吾
監督:西谷弘
発見された死体は、手足の指紋が焼かれ、顔を潰されていた。身元は判明したものの、容疑者である元妻・靖子と娘・美里にはアリバイがあった。そんな中、新人刑事・内海とその上司・草薙は、草薙の友人である物理学者・湯川に助けを求める。
靖子の隣人が湯川の友人である石神であることが分かり、石神が事件に関与していることを疑った湯川は事件解明に乗り出す。
本作の特徴のひとつは、序盤に事件の犯人が判明していることである。元夫と揉めた末に、靖子と美里が首を絞めて殺しており、それを物音で察した石神が協力していることを視聴者は知っている。しかし、何故アリバイが成立しているのか、事件はどのように解明されていくのかは次第に作中で明らかになっていく。
殺人事件を解明するミステリーという魅力は勿論のこと、登場人物の愛情や友情に心を揺さぶられる作品でもある。
10『真夏の方程式』映画
原作:東野圭吾
監督:西谷弘
「ガリレオシリーズ」映画2作目。
夏休みに親戚の経営する玻璃ヶ浦の旅館で過ごすことになった少年・恭平は、海底鉱物資源開発のアドバイザーとして玻璃ヶ浦に来ていた湯川と出会う。そんな中、同じ旅館の宿泊客・塚原が海辺で死んでいるのが発見される。はじめは転落事故と思われたが、殺害後に遺棄された可能性が浮上し始める。
塚原が元刑事だったことから、上司に命じられ草薙と部下の岸谷は玻璃ヶ浦で調査をすることになる。事件には、塚原が以前担当した事件と旅館を経営する家族の持つ秘密が関係していた。
事故と思われた死が次第に過去の出来事と密接に関係していることが紐解かれていく展開に目が離せない。2件の殺人事件を扱いながらも、互いを思い合う家族の絆に涙する作品である。
また、理科が嫌いだと言う恭平に湯川が科学の楽しさを教える場面は印象深い。勉強の楽しさは出会いだという点で、読書に興味を持たない人生だったが高校生で小説にはまり、作家になった作者の東野圭吾の経験に通じるところがあるのだろうかと感じた。
11『沈黙のパレード』映画
原作:東野圭吾
監督:西谷弘
「ガリレオシリーズ」映画3作目。
5年前に行方不明となった少女・佐織の遺体が発見された。容疑者は、かつて草薙の担当した事件で黙秘を貫き無罪となった男・蓮沼。今回も黙秘を続け、釈放された蓮沼は、遺族や佐織を大切に思っていた町の人々の前に堂々と現れ、憎悪をあおる。そんな中、町でパレードヶ行われた日に蓮沼は遺体となって発見される。
佐織の遺族が営む料理店「なみきや」の常連として関わる湯川と、草薙・内海は、蓮沼の死と佐織の事件を追っていく。
本作は、真相が二転三転し、複雑に絡み合ったミステリー作品である。『容疑者xの献身』『真夏の方程式』と共通し、愛する人を思う人間の行動が、簡単に解くことのできない謎を作り出している。
また、本作では湯川が親友の草薙のことを思う物語でもあり、謎を作り出す者たち、それを解き明かす者たち両者の気持ちに胸を打たれるヒューマンドラマとしても傑作である。
12『禁断の魔術』小説
著者:東野圭吾
出版社:文藝春秋
都内のホテルで女性が子宮外妊娠を原因とした卵管破裂により死亡した。その女性の弟は、高校時代に物理サークルで湯川と関わりがあった青年・古芝伸吾だった。その数か月後、フリーライターが殺害される事件が発生、伸吾が容疑者として浮上する中、湯川は伸吾が高校時代湯川から教わった技術で殺人を計画していることに気付く。
本作もまた、上述のガリレオシリーズ同様に、一つの殺人事件と過去の死亡事故や土地開発による地元民と企業の軋轢など、様々な要素が絡み合う。また、本作では既に起きた殺人事件を調査すると共に、起きようとしている事件を阻止する目的があり、推理小説としてはやや珍しい構成となっている。
自身の教えた技術が殺人に使われようとしている事による湯川の苦悩も本作を読むにあたり見逃せない要素である。
13『HiGH&LOW THE WORST X』映画
企画プロデュース:EXILE HIRO
監督:平沼紀久
脚本:増本庄一郎
『HiGH&LOW』シリーズと高橋ヒロシの漫画作品『クローズ』『ワースト』のクロスオーバー作品。
鬼邪高校のナンバーワンである花岡楓士雄は、最強の伝説を持つ鈴蘭高校のラオウを訪ねる。一方で、瀬ノ門工業高校は他校を傘下に加え、鬼邪高校を狙っていた。
本作は、『HiGH&LOW』シリーズの特徴であるアクションシーンがふんだんに盛り込まれ、LDHのアーティストによる楽曲が更に迫力を増している。主人公の所属する鬼邪高校と、対立する瀬ノ門工業だけでなく、瀬ノ門工業と同盟を結ぶ高校や最強の不良・ラオウの所属する鈴蘭高校、前作で鬼邪高校とこぶしを交えた鳳仙学園が登場し、大人数の総力戦は圧巻である。
また、本作は各高校の仲間への信頼や絆を感じられるシーンが多々あり、アクションと同様に熱い展開が繰り広げられる。
14『宝石の国』漫画
著者:市川春子
出版社:講談社
人間が絶滅した遥か未来、地球には人の姿をした宝石が暮らしていた。宝石たちは長い月日を生きるが、宝石を狙う「月人」により月に連れ去られる危険があり、生まれる数も少ない。彼らは少人数で穏やかな日々を過ごしていたが、最年少の宝石・フォスフォフィライトが、毒を持つため1人で生きるシンシャのための仕事を探そうと奮闘する内に、隠された事実が明らかになっていく。
繊細な絵柄で描かれる宝石の美しさと、物語が進むにつれ明らかになる真実の残酷さの対比が印象的な作品。最年少で、空回りは多いが愛らしく皆に優しくされるフォスフォフィライトが、見た目も心も次第に変化していく様は、胸が痛くなりながらも目が離せない。
15『告白』映画
原作:湊かなえ
監督:中島哲也
中学教師・森口裕子は自身のクラスで娘の死について語る。娘は事故死と判断されたが、本当はこのクラスの生徒に殺された。犯人は既に分かっている。そして、犯人が飲んだ牛乳のパックにHIVに感染した夫の血液を混入させた。
1年の終業式に告白された事実に、関係者たちの人生は大きく狂っていく。
淡々と娘の死について語る森口と、犯人である生徒・渡辺修也と下村直樹のその後の波乱が対照的に描かれる。1年B組の生徒やその親の視点で次々に語られることで明確になっていく真実は、中学生の心的状況だからこそ起きたものと言えるだろう。森口は直接手を下すことなく彼らに復讐を果たし、取返しの付かない事態になっていく様は湊かなえの作風である「イヤミス」と呼ぶにふさわしい。更に、鬱屈とした場面にあえてポップな演出を施す中島哲也の色が独特の雰囲気を作り出していると感じた。
1『オリエント』漫画
著者:大高忍
出版社:講談社
謎の生物「鬼」が神と崇められ、「鬼」を倒す「武士」が忌み嫌われる戦国時代。そんな中、2人の少年・武蔵と小次郎は、「鬼」を倒す武士団を目指す。
「2人は幼少期から武士になる夢を掲げていたが、成長につれて周囲に抗えず、自分に嘘をつくようになっていた。そんな中で、「鬼」は人を殺す怪物だと知った2人は、自身の心に正直に、武士団を作る夢に向かって進み始める。
武蔵と小次郎の2人に加え、旅の途中で出会った少女・つぐみは、育ての親の圧力に逆らえなかったが、2人との出会いをきっかけに自分の意思で生きることを決める。
本作はファンタジーの世界観だが、このように周囲や大人に流されずに生きていくため勇気を出す少年少女の物語であり、読者の共感と応援したい心を呼ぶだろう。
2『凶悪』映画
監督:白石和彌
脚本:高橋泉
雑誌ジャーナリストの藤井は、死刑囚・須藤から世に出ていない3つの殺人事件に関与していることと、それらの首謀者である「先生」と呼ばれる男の存在を聞かされる。「先生」の罪を記事にしてほしいと須藤に頼まれた藤井は、その凶悪な事件の真相に迫るにつれ、正義感と狂気に飲み込まれていく。
原作は実際に起きた事件を描いたノンフィクション『凶悪-ある死刑囚の告発-』である。
人の死を利用して金儲けをする「先生」と須藤の非道さは、実際に起きた事件だという事を疑うほどであり、目をそむけたくなる。しかし本作は同時に、凶悪犯罪を追うジャーナリスト藤井が次第に狂気に陥るさまも描いており、こちらにも須藤らに対するものとは別の恐怖を覚える。正義感から事件を追及する藤井は、家庭の崩壊も意に介さず調査にのめりこむようになる。映画のラストでは、「先生」が逮捕されてもなお、未だ明かされていない犯罪や見つかっていない死体を探す執念を見せる藤井の姿に狂気を感じた。
3『二重生活』映画
監督:岸善幸
原作:小池真理子
哲学科の大学院生・珠は、修士論文のテーマとして、ひとりの人間の生活を記録する「哲学的尾行」を行うことを教授から提案される。珠は次第に「理由なき尾行」に魅力を感じるようになっていく。
尾行対象の姿が物陰に隠れているなど、珠の視点を共有するようなカメラワークが特徴的である。だが、尾行のスリルを経て発覚する尾行対象・石坂の秘密が不倫であることに、物足りなさを感じる。しかし、終盤のワンシーンから、あえてそのような秘密にしたのではないかと考察できる。
尾行に気付かれた珠が自身の人生と不安を吐露すると、石坂は「お前の人生はありきたりで陳腐だ」という旨の発言で一蹴する。珠はその言葉に涙を流すが、映画という媒体で観ている私たちは、石坂にもその言葉が適用されると知っている。
誰しも秘密を持っていると締めくくられる本作で、他人から見れば取るに足らない秘密を登場人物に持たせることで、リアルな人間を描く意図があるのではないかと思った。
4『死刑にいたる病』映画
原作:櫛木理宇
監督:白石和彌
大学生の雅也の元に、24人を殺した殺人犯榛村から手紙が届く。榛村は雅也が中学生の頃、パン屋を営んでおり、雅也は当時榛村に心を開いていた。
榛村は、24人の殺人のうち1件の事件は冤罪であることを主張する。真犯人を突き止めるため事件を調査する雅也は、残酷な真実を知る。
魅力的な人物を装い、本質は人を操り傷つけることに楽しみを見出す殺人鬼・榛村。そんな榛村の狂気に次第に飲まれるような薄暗い画面構成と演出が特徴的だと感じた。薄暗い面会室で、登場人物2人の会話のみで進行する場面の緊張感は、同監督の映画作品『凶悪』にも共通する。加えて本作では、榛村の策略に引き寄せられる雅也の様子の表現が印象的である。ガラス越しの雅也を、ガラスに反射する榛村の姿と重ね合わせるように映すことで、雅也が榛村側に傾いていることを演出しており、場面を活かした表現だと感じた。
5『20世紀少年』漫画
著者:浦沢直樹
出版社:小学館
小学生の頃仲間たちと、世界滅亡の危機に立ち向かう物語を作っていたケンヂ。大人になり、姪を育てながらコンビニを経営する冴えない日常を過ごすようになったケンヂの周囲で事件が起こり始める。その内容は、小学生の頃の自分が作った物語に沿っていた。
最初は不可解な一家失踪事件から始まった物語が、次第に世界を巻き込む規模になっていく様子に恐ろしさを覚えながら読み進めることになるだろう。
小学生の頃に考えた世界破滅の物語を実現しようともくろむ「トモダチ」だが、その行動やビジュアルの不気味さを持ちながら、子どもの頃の遊びを未だ諦められない幼さも持つアンバランスな人物である。小学生の頃が既に過去の思い出となっていたケンヂ達との対比になっており、大人になるとはどういうことかを考えさせられる作品だ。
6『ジャンケットバンク』漫画
著者:田中一行
出版社:集英社
仕事は優秀だが平凡で退屈な人生を贈っていた銀行員・御手洗は、自身の勤める銀行が賭博の会場になっていることを知る。そこで出会ったギャンブラー・真経津に衝撃を受け、真経津の勝負を間近で見続けるため、賭博の仲介を行うジャンケットの世界に足を踏み入れる。
本作にはオリジナルのゲームが登場する。ゲームのルールを逆手に取った勝利法や読者の目も欺く展開に手に汗握る作品である。
また、ギャンブラーである真経津の勝負と同時に、それをサポートする行員達の駆け引きも行われる。平凡な人物だった御手洗が真経津との出会いによって変化していく点も本作の見所だろう。
7『マリッジトキシン』
原作:静脈
漫画:依田瑞稀
出版社:集英社
殺し屋の家系に生まれ、「毒使い」として裏社会で生きる青年・下呂は、自分に結婚は必要ないと考えていた。しかし、跡継ぎを残そうとする親族は、妹に結婚を強いようとした。それを止めるため、結婚相手を探す下呂は、結婚詐欺師・城崎と出会う。城崎をアドバイザーに、下呂は婚活を始めることとなる。
殺し屋としてのアクションとラブコメディー作品的な婚活が同時に進む新鮮な作品。主人公・下呂と常に行動を共にする城崎は、可愛らしい見た目ながら男性でお互い恋愛感情はなく、章ごとに婚活の相手となるヒロインが変わる構成もおもしろいと感じた。また、ヒロインが複数存在する作品になりながら、下呂が女性慣れしていない点や、真摯に女性たちに向き合う点から、不誠実さを感じないことも魅力だ。
8『チェンソーマン』
著者:藤本タツキ
出版社:集英社
人々の恐怖から生まれる「悪魔」が存在する世界で、デンジはチェンソーの悪魔・ポチ太と共にデビルハンターをしながら父の残した借金を返済する日々を送っていた。ある日、借金取りに騙されて命を落としかけたデンジは、ポチ太と契約することで復活し、公安のデビルハンターとなり、新たな人生を歩み始めることとなる。
悪魔とデビルハンターの熾烈な戦い、悪魔が企てる計画、チェンソーの悪魔とは一体どのような存在なのかといった謎は、壮大で残酷な世界観である。しかし、それに立ち向かうデンジは一貫して、食べ物が不自由なく食べられる毎日を送りたい、女の子と遊びたい、といった普通の生活を望む。この単純な少年らしさが、主人公・デンジの強さであり、切なくも前向きな読後感を生んでいると感じた。
9『容疑者xの献身』映画
原作:東野圭吾
監督:西谷弘
発見された死体は、手足の指紋が焼かれ、顔を潰されていた。身元は判明したものの、容疑者である元妻・靖子と娘・美里にはアリバイがあった。そんな中、新人刑事・内海とその上司・草薙は、草薙の友人である物理学者・湯川に助けを求める。
靖子の隣人が湯川の友人である石神であることが分かり、石神が事件に関与していることを疑った湯川は事件解明に乗り出す。
本作の特徴のひとつは、序盤に事件の犯人が判明していることである。元夫と揉めた末に、靖子と美里が首を絞めて殺しており、それを物音で察した石神が協力していることを視聴者は知っている。しかし、何故アリバイが成立しているのか、事件はどのように解明されていくのかは次第に作中で明らかになっていく。
殺人事件を解明するミステリーという魅力は勿論のこと、登場人物の愛情や友情に心を揺さぶられる作品でもある。
10『真夏の方程式』映画
原作:東野圭吾
監督:西谷弘
「ガリレオシリーズ」映画2作目。
夏休みに親戚の経営する玻璃ヶ浦の旅館で過ごすことになった少年・恭平は、海底鉱物資源開発のアドバイザーとして玻璃ヶ浦に来ていた湯川と出会う。そんな中、同じ旅館の宿泊客・塚原が海辺で死んでいるのが発見される。はじめは転落事故と思われたが、殺害後に遺棄された可能性が浮上し始める。
塚原が元刑事だったことから、上司に命じられ草薙と部下の岸谷は玻璃ヶ浦で調査をすることになる。事件には、塚原が以前担当した事件と旅館を経営する家族の持つ秘密が関係していた。
事故と思われた死が次第に過去の出来事と密接に関係していることが紐解かれていく展開に目が離せない。2件の殺人事件を扱いながらも、互いを思い合う家族の絆に涙する作品である。
また、理科が嫌いだと言う恭平に湯川が科学の楽しさを教える場面は印象深い。勉強の楽しさは出会いだという点で、読書に興味を持たない人生だったが高校生で小説にはまり、作家になった作者の東野圭吾の経験に通じるところがあるのだろうかと感じた。
11『沈黙のパレード』映画
原作:東野圭吾
監督:西谷弘
「ガリレオシリーズ」映画3作目。
5年前に行方不明となった少女・佐織の遺体が発見された。容疑者は、かつて草薙の担当した事件で黙秘を貫き無罪となった男・蓮沼。今回も黙秘を続け、釈放された蓮沼は、遺族や佐織を大切に思っていた町の人々の前に堂々と現れ、憎悪をあおる。そんな中、町でパレードヶ行われた日に蓮沼は遺体となって発見される。
佐織の遺族が営む料理店「なみきや」の常連として関わる湯川と、草薙・内海は、蓮沼の死と佐織の事件を追っていく。
本作は、真相が二転三転し、複雑に絡み合ったミステリー作品である。『容疑者xの献身』『真夏の方程式』と共通し、愛する人を思う人間の行動が、簡単に解くことのできない謎を作り出している。
また、本作では湯川が親友の草薙のことを思う物語でもあり、謎を作り出す者たち、それを解き明かす者たち両者の気持ちに胸を打たれるヒューマンドラマとしても傑作である。
12『禁断の魔術』小説
著者:東野圭吾
出版社:文藝春秋
都内のホテルで女性が子宮外妊娠を原因とした卵管破裂により死亡した。その女性の弟は、高校時代に物理サークルで湯川と関わりがあった青年・古芝伸吾だった。その数か月後、フリーライターが殺害される事件が発生、伸吾が容疑者として浮上する中、湯川は伸吾が高校時代湯川から教わった技術で殺人を計画していることに気付く。
本作もまた、上述のガリレオシリーズ同様に、一つの殺人事件と過去の死亡事故や土地開発による地元民と企業の軋轢など、様々な要素が絡み合う。また、本作では既に起きた殺人事件を調査すると共に、起きようとしている事件を阻止する目的があり、推理小説としてはやや珍しい構成となっている。
自身の教えた技術が殺人に使われようとしている事による湯川の苦悩も本作を読むにあたり見逃せない要素である。
13『HiGH&LOW THE WORST X』映画
企画プロデュース:EXILE HIRO
監督:平沼紀久
脚本:増本庄一郎
『HiGH&LOW』シリーズと高橋ヒロシの漫画作品『クローズ』『ワースト』のクロスオーバー作品。
鬼邪高校のナンバーワンである花岡楓士雄は、最強の伝説を持つ鈴蘭高校のラオウを訪ねる。一方で、瀬ノ門工業高校は他校を傘下に加え、鬼邪高校を狙っていた。
本作は、『HiGH&LOW』シリーズの特徴であるアクションシーンがふんだんに盛り込まれ、LDHのアーティストによる楽曲が更に迫力を増している。主人公の所属する鬼邪高校と、対立する瀬ノ門工業だけでなく、瀬ノ門工業と同盟を結ぶ高校や最強の不良・ラオウの所属する鈴蘭高校、前作で鬼邪高校とこぶしを交えた鳳仙学園が登場し、大人数の総力戦は圧巻である。
また、本作は各高校の仲間への信頼や絆を感じられるシーンが多々あり、アクションと同様に熱い展開が繰り広げられる。
14『宝石の国』漫画
著者:市川春子
出版社:講談社
人間が絶滅した遥か未来、地球には人の姿をした宝石が暮らしていた。宝石たちは長い月日を生きるが、宝石を狙う「月人」により月に連れ去られる危険があり、生まれる数も少ない。彼らは少人数で穏やかな日々を過ごしていたが、最年少の宝石・フォスフォフィライトが、毒を持つため1人で生きるシンシャのための仕事を探そうと奮闘する内に、隠された事実が明らかになっていく。
繊細な絵柄で描かれる宝石の美しさと、物語が進むにつれ明らかになる真実の残酷さの対比が印象的な作品。最年少で、空回りは多いが愛らしく皆に優しくされるフォスフォフィライトが、見た目も心も次第に変化していく様は、胸が痛くなりながらも目が離せない。
15『告白』映画
原作:湊かなえ
監督:中島哲也
中学教師・森口裕子は自身のクラスで娘の死について語る。娘は事故死と判断されたが、本当はこのクラスの生徒に殺された。犯人は既に分かっている。そして、犯人が飲んだ牛乳のパックにHIVに感染した夫の血液を混入させた。
1年の終業式に告白された事実に、関係者たちの人生は大きく狂っていく。
淡々と娘の死について語る森口と、犯人である生徒・渡辺修也と下村直樹のその後の波乱が対照的に描かれる。1年B組の生徒やその親の視点で次々に語られることで明確になっていく真実は、中学生の心的状況だからこそ起きたものと言えるだろう。森口は直接手を下すことなく彼らに復讐を果たし、取返しの付かない事態になっていく様は湊かなえの作風である「イヤミス」と呼ぶにふさわしい。更に、鬱屈とした場面にあえてポップな演出を施す中島哲也の色が独特の雰囲気を作り出していると感じた。